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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001508
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】表面性状推定装置及び研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/10 20060101AFI20231227BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20231227BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231227BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B49/04 A
B24B55/06
B24B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100197
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 稜平
(72)【発明者】
【氏名】野々山 眞
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶太
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034BB92
3C034CA02
3C034CA16
3C034CA24
3C034CB03
3C034DD01
3C043AA01
3C043CC03
3C043DD01
3C043DD03
3C043DD05
3C043DD06
3C047FF01
3C047FF11
3C047HH11
(57)【要約】
【課題】加速度センサの耐久性を向上させることができる表面性状推定装置を提供する。
【解決手段】表面性状推定装置2は、研削盤1の砥石車12によって研削加工される工作物Wの研削周面W1の径を研削加工中に測定する定寸装置3と、研削加工後に定寸装置3から出力される信号データに基づいて、研削周面W1の表面性状を推定する演算処理装置20とを備える。定寸装置3は、工作物Wの研削周面W1の凹凸に倣って変位する接触部材31と、接触部材31が工作物Wの研削周面W1に接触するよう付勢する付勢部材と、接触部材31に配置された加速度センサ32と、クーラントK及び切屑の少なくとも一方から加速度センサ32を防護するためのセンサ防護部材4とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削盤の砥石車によって研削加工される工作物の研削周面の径を研削加工中に測定する定寸装置と、
研削加工後に前記定寸装置から出力される信号データに基づいて、前記研削周面の表面性状を推定する演算処理装置と、
を備え、
前記定寸装置は、
定寸装置本体と、
前記定寸装置本体に対して移動可能に設けられ、前記工作物の前記研削周面に接触して、前記研削周面の凹凸に倣って変位する接触部材と、
前記接触部材が前記研削周面に接触するよう前記定寸装置本体に対して前記接触部材を付勢する付勢部材と、
前記接触部材に配置され、前記接触部材の変位、及び前記接触部材の変位に伴う加速度の少なくとも一方を検出するセンサと、
前記センサの周囲に配置され、前記研削周面が研削加工される際に用いられるクーラント及び研削加工により生じる切屑の少なくとも一方から前記センサを防護するためのセンサ防護部材と、
を有する、表面性状推定装置。
【請求項2】
前記センサは、
前記接触部材の先端側部位に配置されたセンサ本体部と、
前記センサ本体部から前記接触部材の後端側に引き出されたセンサ信号線と、を有し、
前記センサ防護部材は、
前記センサ信号線が引き出された後端側が開口されるとともに、前記センサ本体部の先端側及び側方側の全体を覆う形状のカバーを有する、請求項1に記載の表面性状推定装置。
【請求項3】
前記センサ防護部材は、前記カバー内を充填し、前記センサ及び前記カバーを前記接触部材に接着する充填材料をさらに有する、請求項2に記載の表面性状推定装置。
【請求項4】
前記カバーにおける、前記センサ本体部の後端側には、前記充填材料の供給口を構成する開口が形成されている、請求項3に記載の表面性状推定装置。
【請求項5】
前記カバーにおける、前記センサ本体部の先端側に配置された表面は、研削加工中の前記砥石車が位置する側に向けられ、
前記カバーにおける、前記センサ本体部の後端側の開口は、研削加工中の前記砥石車が位置する側の反対側に向けられる、請求項4に記載の表面性状推定装置。
【請求項6】
前記定寸装置には、前記センサ信号線の接続を中継する中継コネクタが配置されており、
前記センサ信号線は、
前記センサ本体部から前記中継コネクタまで引き出された第1信号線と、
前記中継コネクタから引き出された第2信号線と、を有する、請求項2~5のいずれか1項に記載の表面性状推定装置。
【請求項7】
前記接触部材は、
前記工作物の前記研削周面に接触する接触子と、
前記接触子が取り付けられ、前記定寸装置本体に移動可能に支持されるフィーラと、を有し、
前記接触子、前記フィーラ、前記センサ本体部、前記センサ防護部材、及び前記第1信号線は、一体化された状態で前記定寸装置本体に対して着脱されるよう構成されている、請求項6に記載の表面性状推定装置。
【請求項8】
前記第2信号線は、前記第1信号線に比べて太い、請求項6に記載の表面性状推定装置。
【請求項9】
前記演算処理装置は、前記工作物を回転させながら前記定寸装置と前記工作物とを前記工作物の軸方向に相対移動させる際に、前記センサから出力される前記信号データに基づいて、前記砥石車の凹凸表面が前記研削周面に転写された砥石車起因による凹凸面状態を表面性状として推定する、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面性状推定装置。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の表面性状推定装置を備える研削盤。
【請求項11】
前記表面性状推定装置が推定した前記表面性状に基づいて、前記工作物の研削加工の良否判定、次回以降に加工する前記工作物の加工条件の調整の必要性の判定、及び前記砥石車の修正タイミングの調整の必要性の判定のうちの少なくとも1つを実行する判定部を備える、請求項10に記載の研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状推定装置及び研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
表面性状推定装置は、研削盤に回転可能に支持された工作物の表面における凹凸等の表面性状を推定(測定)するために用いられる。研削盤の砥石車の砥石表面には、多数の砥粒による凹凸が形成されており、研削加工時には、この砥粒による凹凸が工作物の表面に反映される。そして、研削盤における、砥石車の砥粒の状態、砥石車の回転速度、工作物の回転速度等の加工条件、及び工作物の形状などに応じて、工作物の表面に形成される表面性状が変化する。表面性状推定装置においては、センサを有する定寸装置等を用いて、工作物の表面の、周方向及び軸方向に生じた凹凸を測定し、この凹凸の測定結果を利用して工作物の表面の表面性状を推定している。
【0003】
例えば、特許文献1の表面性状推定システムにおいては、工作物の表面における測定位置を周方向及び軸方向に螺旋状に移動させたときに、定寸装置のセンサによって工作物の表面における凹凸を検出し、この検出に関する時系列データに基づいて工作物の表面の表面性状を生成することが記載されている。定寸装置は、一対の接触部材に設けられた接触子の間に工作物を挟み込み、工作物の表面の凹凸に応じて接触部材が振動するときに生じる加速度をセンサによって測定し、センサの信号のデータ処理を行って工作物の表面の表面性状を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-79534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサを有する定寸装置は、研削加工中において、研削盤の砥石車によって研削加工された工作物の径を測定するために用いられる。また、砥石車による研削加工を行う際には、砥粒と工作物の接触部分の潤滑、接触部分の温度上昇の抑制、破砕・脱落した砥粒又は切屑の洗浄・排除等を目的として、砥粒と工作物の接触部分にクーラントが供給される。
【0006】
このとき、定寸装置は、砥石車によって工作物を研削する付近に配置されていることがある。そして、定寸装置のセンサが露出された状態にあると、センサにクーラント又は切屑がかかるおそれがあり、センサの故障、寿命低下等の原因になるおそれがある。特に、表面性状推定装置に用いられる定寸装置は、クーラント又は切屑がかかりやすい状況に置かれることが多い。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、センサの耐久性を向上させることができる表面性状推定装置及び研削盤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
研削盤の砥石車によって研削加工される工作物の研削周面の径を研削加工中に測定する定寸装置と、
研削加工後に前記定寸装置から出力される信号データに基づいて、前記研削周面の表面性状を推定する演算処理装置と、
を備え、
前記定寸装置は、
定寸装置本体と、
前記定寸装置本体に対して移動可能に設けられ、前記工作物の前記研削周面に接触して、前記研削周面の凹凸に倣って変位する接触部材と、
前記接触部材が前記研削周面に接触するよう前記定寸装置本体に対して前記接触部材を付勢する付勢部材と、
前記接触部材に配置され、前記接触部材の変位、及び前記接触部材の変位に伴う加速度の少なくとも一方を検出するセンサと、
前記センサの周囲に配置され、前記研削周面が研削加工される際に用いられるクーラント及び研削加工により生じる切屑の少なくとも一方から前記センサを防護するためのセンサ防護部材と、
を有する、表面性状推定装置にある。
【0009】
本発明の他の態様は、上述の一態様の表面性状推定装置を備える研削盤にある。
【発明の効果】
【0010】
前記一態様の表面性状推定装置における定寸装置は、センサを防護するためのセンサ防護部材を有する。表面性状推定装置に用いられる定寸装置は、研削加工中において工作物の研削周面の径を測定するために、研削周面が研削加工される際に用いられるクーラント又は研削加工により生じる切屑がかかりやすい状況に置かれることが多い。このとき、定寸装置のセンサがセンサ防護部材によって覆われていることにより、クーラント及び切屑の少なくとも一方からセンサを防護することができる。そのため、センサの耐久性を向上させることができる。
【0011】
前記一態様の表面性状推定装置によれば、センサの耐久性を向上させることができる。
【0012】
前記他の態様の研削盤によれば、上述した一態様の表面性状推定装置による効果と同様の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態にかかる、表面性状推定装置を含む研削盤を示す説明図。
図2】実施形態にかかる、工作物の研削加工後の測定時における定寸装置の周辺を示す説明図。
図3】実施形態にかかる、図2の一部を拡大して示す説明図。
図4】実施形態にかかる、工作物の研削加工時における定寸装置の周辺を示す説明図。
図5】実施形態にかかる、定寸装置の加速度センサを後端側から見た状態で示す説明図。
図6】実施形態にかかる、研削盤によって研削された工作物の研削周面の表面性状を示す説明図。
図7】実施形態にかかる、表面性状推定装置の構成を示す説明図。
図8】実施形態にかかる、加速度センサによる第1スパイラルデータの分割データを示す説明図。
図9】実施形態にかかる、加速度センサによる第1スパイラルデータの位相合わせデータを示す説明図。
図10】実施形態にかかる、加速度センサによる第1スパイラルデータに基づくびびりマップを示す説明図。
図11】実施形態にかかる、変位センサによる第2スパイラルデータ及び回転データに基づく半径マップを示す説明図。
図12】実施形態にかかる、びびりマップと半径マップとが合成された表面性状マップを示す説明図。
図13】実施形態にかかる、研削盤の研削工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述した表面性状推定装置及び表面性状推定装置を備える研削盤にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態)
【0015】
1.研削盤1の構成
研削盤1の構成について説明する。図1に示すように、研削盤1は、表面性状推定装置2を備える。表面性状推定装置2は、研削盤1における研削状態の解析装置として使用される。特に、表面性状推定装置2は、研削盤1にて砥石車12により研削加工された工作物Wの研削周面W1の表面性状Sを推定するものである。研削盤1は、表面性状推定装置2によって推定された工作物Wの研削周面W1の表面性状Sを、マップ化された画像としての表面性状マップMによって出力する画像出力装置100を備える。
【0016】
研削盤1は、工作物W及び砥石車12を回転させながら、工作物Wと砥石車12とを相対移動させることにより、工作物Wの研削周面W1の研削加工を行う。研削盤1は、工作物Wをトラバースさせるテーブルトラバース型研削盤に適用することもできるし、砥石車12を支持する砥石台13をトラバースさせる砥石台トラバース型研削盤に適用することもできる。以下には、研削盤1の例として、テーブルトラバース型研削盤について説明する。
【0017】
研削盤1は、ベッド11、砥石車12、砥石台13、主軸台14、心押台15、主軸テーブル16、制御装置10及び表面性状推定装置2を備える。工作物Wは、その軸線方向の両端が主軸台14及び心押台15に支持され、主軸台14によって駆動されて回転する。工作物Wの形状は、特に限定されず、円柱状、円筒状等の形状とすればよい。図2に示すように、工作物Wの研削周面W1は、円柱状又は円筒状の工作物Wの外周面だけでなく、円筒状の工作物Wの内周面としてもよい。
【0018】
本実施形態においては、工作物Wが円柱状である場合を例示する。研削盤1は、回転する工作物Wの研削周面W1としての外周面に砥石車12を当接させ、砥石車12によって工作物Wの外周面を研削する。
【0019】
ここで、主軸台14及び心押台15に支持された工作物Wの軸線方向に平行な方向をZ軸方向といい、Z軸方向に直交して、工作物Wに対して砥石車12が接近する方向をX軸方向という。各図においては、Z軸方向を符号Zによって示し、X軸方向を符号Xによって示す。砥石車12は、Z軸方向に平行な軸線回りに回転可能な状態で砥石台13に支持されている。ベッド11上には、砥石台案内部11aが設けられており、砥石台13は、X軸方向に移動可能に砥石台案内部11aに支持されており、制御装置10によって制御される駆動源(図示略)によってX軸方向に移動する。
【0020】
砥石車12は、制御装置10によって制御される、砥石台13の砥石回転モータ12aによって駆動されて回転する。砥石車12は、砥石台13がX軸方向に移動することにより、工作物Wの研削周面W1に接近し、工作物Wの研削周面W1を研削する。
【0021】
主軸テーブル16は、ベッド11上に設けられた主軸テーブル案内部11bによって、Z軸方向に移動可能に支持されており、制御装置10によって制御される駆動源(図示略)によってZ軸方向に移動する。主軸台14及び心押台15は、主軸テーブル16上に対向配置されている。工作物Wは、制御装置10によって制御される、主軸台14の主軸回転モータ14aによって駆動されて回転する。
【0022】
2.表面性状推定装置2の概要
表面性状推定装置2の概要について説明する。図2は、工作物Wの研削加工後の測定時における表面性状推定装置2を示し、図4は、工作物Wの研削加工時(単に加工時ということがある。)における表面性状推定装置2を示す。図2及び図4に示すように、表面性状推定装置2は、研削盤1の砥石車12によって研削加工される工作物Wの研削周面W1の径を研削加工中に測定する定寸装置3と、研削加工後に定寸装置3から出力される信号データに基づいて、研削周面W1の表面性状Sを推定する演算処理装置20とを備える。
【0023】
本実施形態の演算処理装置20は、工作物Wを回転させながら定寸装置3と工作物Wとを工作物WのZ軸方向に相対移動させる際に、センサとしての加速度センサ32から出力される信号データに基づいて、砥石車12の凹凸表面が研削周面W1に転写された、砥石車12に起因する凹凸面状態を、表面性状Sとして推定する。
【0024】
3.表面性状推定装置2の定寸装置3の構成
次に、定寸装置3について説明する。本実施形態においては、図2に示すように、円柱状の工作物Wの研削周面W1としての外周面が研削され、定寸装置3は、外径測定装置として工作物Wの外周面の外径を測定する。定寸装置3は、工作物Wの研削周面W1としての内周面の内径を測定するものとしてもよい。定寸装置3によって測定された工作物Wの研削周面W1の径は、研削工程の切替のために用いられる。ただし、本実施形態においては、定寸装置3は、表面性状推定装置2による工作物Wの研削周面W1の表面性状Sの推定のためにも用いられる。
【0025】
定寸装置3は、定寸装置本体30、接触部材31、付勢部材33、センサとしての加速度センサ32及びセンサ防護部材4を有する。定寸装置本体30は、研削盤1のベッド11上に配置された軸方向移動装置36に取り付けられている。定寸装置本体30は、接触部材31が移動するときの基台を構成する。
【0026】
接触部材31は、定寸装置本体30に対して移動可能に設けられており、工作物Wの研削周面W1に接触して、研削周面W1の凹凸に倣って変位する。接触部材31は、定寸装置本体30に一対に設けられており、各接触部材31は、工作物Wの研削周面W1に接触する接触子311と、接触子311が取り付けられて定寸装置本体30に移動可能に支持されるフィーラ312とを有する。接触子311は、フィーラ312の先端部に設けられている。接触子311は、工作物Wの回転中心Oを挟んだ2点において工作物Wの研削周面W1に当接し、研削周面W1に形成された凹凸面に倣って変位する。
【0027】
フィーラ312は、定寸装置本体30に回動軸313によって回動可能に支持されており、接触子311の変位を受けて回動する。フィーラ312が回動するときの変位は、変位センサ34によって測定される。変位センサ34には、例えば、機械的な直線運動を変位量として電気信号に変換する差動トランス等が用いられる。
【0028】
定寸装置3は、接触子311の機械的変位を、変位センサ34によって電気信号である信号データに変換することにより工作物Wの研削周面W1の外径を測定する。また、定寸装置3は、加速度センサ32によって検出される加速度を、変位に変換するとともに電気信号である信号データに変換することにより、工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態を測定する。工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態の測定には、変位センサ34による信号データが併用されてもよい。図1に示すように、定寸装置3は、制御装置10によって制御される軸方向移動装置36により、工作物Wの中心軸線に平行なZ軸方向に移動可能である。
【0029】
付勢部材33は、一対の接触部材31の接触子311のそれぞれが工作物Wの研削周面W1に接触するよう、定寸装置本体30に対して一対の接触部材31を付勢する。付勢部材33は、種々のバネによって構成される。付勢部材33の付勢力により、接触部材31の接触子311が工作物Wの研削周面W1から離れにくくすることができる。
【0030】
加速度センサ32は、接触部材31の先端側位置に配置されており、接触部材31の変位に伴う加速度を検出する。加速度センサ32を用いることにより、工作物Wの研削周面W1における高周波成分の凹凸面の測定が容易になる。加速度センサ32は、工作物Wの研削周面W1の凹凸による接触子311の振動を適切に測定するために、接触子311に近いフィーラ312の先端側部位に配置されている。つまり、図4に示すように、加速度センサ32は、砥石車12による工作物Wの研削加工の際に、クーラントK又は切屑の飛散による影響を受けやすい位置に配置されている。
【0031】
図3は、図2の一部を拡大して示す。図3に示すように、加速度センサ32は、一方の接触部材31の先端側部位に配置されたセンサ本体部321と、センサ本体部321から一方の接触部材31の後端側に引き出されたセンサ信号線322とを有する。本実施形態のセンサ本体部321は、上側の接触部材31に配置されている。センサ本体部321は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたセンサ素子とによって構成されている。
【0032】
定寸装置本体30には、センサ信号線322の接続を中継する中継コネクタ35が配置されている。本実施形態の中継コネクタ35は、定寸装置本体30の外側に取り付けられている。中継コネクタ35は、定寸装置本体30の内部に収納するようにしてもよい。センサ信号線322は、センサ本体部321から中継コネクタ35まで引き出された第1信号線323と、中継コネクタ35から引き出された第2信号線324とによって構成されている。
【0033】
本実施形態の中継コネクタ35は、第1信号線323に接続された第1中継コネクタ部351と、第2信号線324に接続された第2中継コネクタ部352とによって構成されている。そして、第1中継コネクタ部351と第2中継コネクタ部352とが嵌合されることにより、第1信号線323と第2信号線324とが電気的に接続される。
【0034】
第1信号線323及び第2信号線324は、グラウンドに接続される外側導体c2の内部に、演算処理装置20に接続される内側導体c1が配置された同軸ケーブルによって構成されている。第1信号線323の太さは、加速度センサ32の規格によって決定されている。ただし、第1信号線323は、接触部材31の動きを工作物Wの研削周面W1の凹凸に追従させるためには、細い方が好ましい。一方、第2信号線324の太さは、任意に決定することができる。第2信号線324の太さは、第1信号線323の太さに比べて大きくしている。この構成により、センサ信号線322が損傷しにくくすることができる。
【0035】
図4に示すように、センサ防護部材4は、加速度センサ32の周囲に配置されており、工作物Wの研削周面W1が研削加工される際に用いられるクーラントK及び研削加工により生じる切屑の少なくとも一方から加速度センサ32を防護する。センサ防護部材4は、センサ本体部321を覆うカバー41と、カバー41内に充填された充填材料42とによって構成されている。
【0036】
ここで、砥石車12と工作物WとはX軸方向において向き合い、定寸装置3において、先端側とは、X軸方向の先端側X1のことをいい、後端側とは、X軸方向の後端側X2のことをいう。換言すれば、先端側X1とは、定寸装置3に対して砥石車12が位置する側のことをいい、後端側X2とは、先端側とは反対側のことをいう。図4及び図5において、先端側X1及び後端側X2を示す。
【0037】
図5は、センサ本体部321及びセンサ防護部材4を、開口部411が形成された、カバー41の後端側X2から見た状態で示す。図5においては、充填材料42を省略して示す。カバー41は、センサ信号線322の第1信号線323が引き出された後端側X2が開口されるとともに、センサ本体部321の先端側X1及び側方側の全体を覆う形状を有する。
【0038】
カバー41内には、センサ本体部321と第1信号線323の一部とが配置されている。センサ本体部321は、上側の接触部材31のフィーラ312の先端部における上面に取り付けられている。カバー41は、センサ本体部321の先端側X1と、側方側としての上側及び一対の横側との全体を覆っている。カバー41の後端側X2には、第1信号線323がカバー41の内部から外部へ引き出された開口部411が形成されている。開口部411は、カバー41における、センサ本体部321の後端側X2に形成された、充填材料42の供給口を構成するものである。
【0039】
充填材料42は、加速度センサ32のセンサ本体部321及びカバー41を接触部材31のフィーラ312に接着するために用いられる。充填材料42は、種々の接着剤によって構成すればよい。本実施形態の充填材料42は、2液混合タイプのエポキシ樹脂接着剤によって構成されている。上側のフィーラ312の先端部の上面にセンサ本体部321を配置するとともにセンサ本体部321の周囲にカバー41を配置し、カバー41における、センサ信号線322が引き出された開口部411から充填材料42を注入することによって、センサ本体部321及びカバー41を上側のフィーラ312と一体化する。
【0040】
図2に示すように、接触子311、フィーラ312、センサ本体部321、センサ防護部材4、及び第1信号線323は、上側の接触部材31として一体化された状態で定寸装置本体30に対して着脱されるよう構成されている。本実施形態においては、接触子311が設けられたフィーラ312に、充填材料42によって、センサ本体部321及びカバー41が接着されていることにより、上側の接触部材31を構成する、接触子311が設けられたフィーラ312、センサ本体部321、カバー41、充填材料42、及び第1信号線323が一体化されている。この構成により、接触子311が摩耗したとき、センサ本体部321及び第1信号線323を含む加速度センサ32に故障が生じたとき等には、上側の接触部材31を取り外し、他の接触部材31等に交換することができる。
【0041】
図3に示すように、研削盤1において、砥石車12による工作物Wの研削加工中には、定寸装置3の変位センサ34によって工作物Wの研削周面W1の外径が測定される。研削盤1の制御装置10には、変位センサ34による電気信号が送信され、制御装置10は、変位センサ34の信号データに基づいて推定される工作物Wの研削周面W1の外径が目標とする外径となるよう、砥石車12によって工作物Wの研削周面W1を研削加工する。
【0042】
砥石車12による工作物Wの研削加工中には、砥石車12による工作物Wの研削位置に、クーラントノズル122からクーラントKが供給される。クーラントKは、砥石車12の砥粒と工作物Wの接触部分の潤滑、接触部分の温度上昇の抑制、破砕・脱落した砥粒又は切屑の洗浄・排除等を目的として使用される。砥石車12による工作物Wの研削位置にクーラントKが供給されるときには、クーラントKの一部が砥石車12又は工作物Wに当たって、定寸装置3の接触部材31の方向へ飛散することが想定される。また、砥石車12によって研削された切屑が、定寸装置3の接触部材31の方向へ飛散することも想定される。
【0043】
ここで、図3においては、砥石車12と工作物Wとが、これらの接触位置において互いに同じ方向に回転する場合を示す。砥石車12と工作物Wとは、これらの接触位置において互いに逆方向に回転してもよい。
【0044】
砥石車12による工作物Wの研削加工中において、センサ防護部材4のカバー41における、センサ本体部321の先端側X1に配置された表面は、砥石車12が位置する側に向けられる。また、研削加工中において、カバー41における、センサ本体部321の後端側X2の開口部411は、砥石車12が位置する側の反対側に向けられる。この構成により、カバー41によって、加速度センサ32のセンサ本体部321をクーラントK及び切屑から容易に防護することができる。また、カバー41の開口部411が砥石車12に向けられていないことにより、カバー41の開口部411から充填材料42にクーラントK又は切屑が当たらないようにすることができる。
【0045】
4.センサ防護部材4の他の構成
センサ防護部材4は、充填材料42を用いずに、カバー41によって構成してもよい。この場合には、センサ本体部321は、ビス等の取付具によってフィーラ312又はカバー41に取り付ければよく、カバー41は、ビス等の取付具によってフィーラ312に取り付ければよい。また、この場合にも、研削加工中において、カバー41の開口部411が、砥石車12が位置する側の反対側に向けられていることにより、カバー41の開口部411からセンサ本体部321にクーラントK又は切屑が当たらないようにすることができる。
【0046】
5.工作物Wの研削周面W1の表面性状S
次に、工作物Wの研削周面W1の表面性状Sについて説明する。図6に示すように、研削盤1によって研削された工作物Wの研削周面W1の表面性状Sは、種々の要因に起因して形成される。本実施形態においては、表面性状Sは、砥石車12の研削外周面の表面状態としての凹凸表面が転写された、砥石車12に起因するものを示すこととする。
【0047】
砥石車12に起因する研削周面W1の表面性状Sは、砥石車12の凹凸表面が転写された表面性状S1と、工作物Wの周方向Cにおける基準半径のばらつきによる表面性状S2とに分離される。表面性状Sは、表面性状S1,S2を合成する(加算する)ことによって生成される。工作物Wの周方向Cにおける基準半径のばらつきは、真円度等として表され、主に、研削加工時における砥石車12の中心と工作物Wの中心との間の距離がずれることによって生じると考えられる。
【0048】
6.表面性状推定装置2の演算処理装置20の構成
次に、表面性状推定装置2の演算処理装置20について説明する。図2に示すように、研削盤1において、砥石車12による工作物Wの研削加工後には、定寸装置3の変位センサ34及び加速度センサ32によって、工作物Wの研削周面W1の外径及び凹凸が測定され、工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態が推定される。演算処理装置20は、研削加工後の測定時において、工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態を、変位センサ34の信号データに基づいて検知される低周波数成分の凹凸面と、加速度センサ32の信号データに基づいて検知される高周波成分の凹凸面として測定される。測定時において、定寸装置3の変位センサ34及び加速度センサ32によって工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態を測定するときには、工作物Wを回転させながら定寸装置3と工作物Wとを工作物WのZ軸方向に相対移動させる、換言すれば定寸装置3を工作物Wに対してZ軸方向に螺旋状に相対移動させる。
【0049】
図7に示すように、演算処理装置20は、信号データ取得部21及び表面性状推定部22を備える。信号データ取得部21は、定寸装置3を工作物Wに対してZ軸方向に螺旋状に相対移動させるときに、定寸装置3の加速度センサ32による信号データと、定寸装置3の変位センサ34による信号データとを、研削周面W1の凹凸面状態に対応して取得する。加速度センサ32による信号データは、高周波成分の第1スパイラルデータD1として取得され、変位センサ34による信号データは、低周波成分の第2スパイラルデータD2として取得される。また、信号データ取得部21は、定寸装置3と工作物WとのZ軸方向の相対位置を固定して工作物Wを回転させる際に、変位センサ34による信号データを、回転データD3として取得する。
【0050】
図6においては、定寸装置3によって第1スパイラルデータD1及び第2スパイラルデータD2が測定される状態と、定寸装置3によって回転データD3が測定される状態とを破線によって示す。第1スパイラルデータD1及び第2スパイラルデータD2は、工作物Wの研削周面W1のZ軸方向の一部及び周方向Cの一部のデータとして、同時に取得される。第1スパイラルデータD1の周方向Cの一部は、工作物Wの研削周面W1に対して砥石車12の砥石表面121が複数回転写される範囲として抽出される。この研削周面W1の周方向Cの一部の範囲内には、砥石車12の各砥粒による研削痕が繰り返し出現する。加速度センサ32による第1スパイラルデータD1は、工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態を測定するために用いられる。
【0051】
変位センサ34による第2スパイラルデータD2は、工作物WのZ軸方向における半径の違いを測定するために用いられる。工作物WのZ軸方向における半径の違いは、本来は、定寸装置3を工作物WのZ軸方向に相対移動させれば測定できる。ただし、第2スパイラルデータD2は、接触子311が、加速度センサ32と同時に周方向C及びZ軸方向に螺旋状に相対移動するときに取得される。そのため、第2スパイラルデータD2による工作物Wの研削周面W1のZ軸方向における半径の変化及び工作物Wの研削周面W1の周方向Cにおける半径の変化から、回転データD3による工作物Wの研削周面W1の周方向Cにおける半径の変化を除外することにより、工作物Wの研削周面W1のZ軸方向における半径の変化を取得する。
【0052】
回転データD3は、第1スパイラルデータD1及び第2スパイラルデータD2のZ軸方向の一部の範囲と重なるZ軸方向の同一位置において、周方向Cの全周分のデータとして取得される。真円度等によって示される、工作物Wの研削周面W1の周方向Cにおける半径の変化は、Z軸方向において同様の状態が維持されていると考えられる。そのため、回転データD3は、Z軸方向の1箇所の位置において取得すればよい。ただし、精度を向上させるために、第1スパイラルデータD1及び第2スパイラルデータD2のZ軸方向の範囲において、回転データD3をZ軸方向の複数位置について取得してもよい。
【0053】
図7に示すように、表面性状推定部22は、第1スパイラルデータD1、第2スパイラルデータD2及び回転データD3について信号処理を行って、工作物Wの研削周面W1の表面性状Sを推定し、表面性状Sを色の違いによって視覚的に表現する表面性状マップMを作成する。表面性状マップMは、砥石車12の凹凸表面に起因する研削周面W1の表面性状S1を示すびびりマップM1と、研削周面W1の真円度、半径等の誤差に起因する研削周面W1の表面性状S2を示す半径マップM2とを合成することによって作成される。
【0054】
びびりマップM1は、加速度センサ32による信号データである第1スパイラルデータD1について、信号処理が行われて作成される。この信号処理は、ゲイン補正処理221a、分割処理222、高周波成分解析223a及び位相合わせ処理224の各工程によって行われる。ゲイン補正処理221aにおいては、加速度センサ32が、特定の周波数を超える入力信号に対する出力信号を減衰させる入出力特性を有することが考慮され、加速度センサ32の出力信号のばらつきが小さくなるように、周波数ごとの出力信号が補正される。
【0055】
図8に示すように、分割処理222においては、工作物Wの研削周面W1についての螺旋状の第1スパイラルデータD1が、Z軸方向に所定間隔で設定されたZ軸方向の各位置についての、周方向Cに所定間隔で設定された周方向Cの各位置のデータとしての複数の分割データD11に分割される。高周波成分解析223aにおいては、各分割データD11について高速フーリエ変換(FFT)が行われる。そして、砥石車12の各砥粒による砥粒痕が繰り返し形成された研削周面W1の凹凸面状態について、各砥粒痕の形成状態が、周波数(又は周期)及び振幅によって表される高周波成分のフーリエ変換データとして抽出される。
【0056】
その後、高周波成分のフーリエ変換データにおけるノイズ成分を除去するように特定の高周波成分を抽出し、抽出した高周波成分について逆高速フーリエ変換(逆FFT)が行われる。これにより、各分割データD11におけるノイズ成分が除去される。ノイズ成分には、機械振動等によるノイズが含まれる。
【0057】
図9に示すように、位相合わせ処理224においては、Z軸方向の各位置であって周方向Cの各位置にずれて設定されたノイズ成分除去後の分割データD11が、周方向Cの同じ部位に位置するように位相合わせが行われ、位相合わせデータD12が作成される。この位相合わせが行われるときには、位相合わせデータD12における研削周面W1の凹凸面状態が、Z軸方向において断続的にならないように周方向Cの位相が微調整される。こうして、図10に示すように、加速度センサ32による第1スパイラルデータD1についてのびびりマップM1が作成される。
【0058】
半径マップM2は、定寸装置3の変位センサ34による信号データである第2スパイラルデータD2及び回転データD3について、信号処理が行われて作成される。この信号処理は、第2スパイラルデータD2についてのゲイン補正処理221b及び低周波成分解析223bの各工程と、回転データD3についてのゲイン補正処理221c及び真円度解析225の各工程とに分けて行われ、その後、真円度分除去処理226として、低周波成分解析223bが行われた後の第2スパイラルデータD2と、真円度解析225が行われた後の回転データD3とが用いられて、工作物Wの研削周面W1におけるZ軸方向の半径の変化が取得される。
【0059】
第2スパイラルデータD2及び回転データD3のゲイン補正処理221b,221cにおいては、変位センサ34が、特定の周波数を超える入力信号に対する出力信号を減衰させる入出力特性を有することが考慮され、変位センサ34の出力信号のばらつきが小さくなるように、周波数ごとの出力信号が補正される。
【0060】
第2スパイラルデータD2の低周波成分解析223bにおいては、第2スパイラルデータD2について高速フーリエ変換(FFT)が行われる。そして、工作物Wの研削周面W1のZ軸方向及び周方向Cにおける半径の変化が、周波数(又は周期)及び振幅によって表される低周波成分のフーリエ変換データとして抽出される。
【0061】
その後、低周波成分のフーリエ変換データにおけるノイズ成分を除去するように特定の低周波成分を抽出し、抽出した低周波成分について逆高速フーリエ変換(逆FFT)が行われる。これにより、第2スパイラルデータD2におけるノイズ成分が除去される。ノイズ成分には、機械振動等によるノイズが含まれる。第2スパイラルデータD2においては、工作物Wの研削周面W1のZ軸方向における半径の変化も含まれている。
【0062】
回転データD3の真円度解析225においては、工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態に、真円度の誤差による凹凸がどれだけ生じているかを解析する。そして、真円度分除去処理226においては、低周波成分解析223bが行われた後の第2スパイラルデータD2に真円度解析225が行われた後の回転データD3が照合され、第2スパイラルデータD2から、周方向C及びZ軸方向における凹凸の影響、及び真円度の誤差による凹凸の影響が除外される。そして、Z軸方向の各位置についての半径の違いを示す半径データが取得され、図11に示すように、半径データに基づいて半径マップM2が作成される。
【0063】
その後、図12に示すように、びびりマップM1と半径マップM2とが合成されて表面性状マップMが作成される。表面性状マップMにおいては、Z軸方向の各位置における半径の違いが反映された、工作物Wの研削周面W1の凹凸面状態が、色分け等によって可視化される。図12においては、工作物Wの研削周面W1の周方向Cにおいて、砥石車12の1回転分が転写された幅を示す。
【0064】
7.研削盤1の研削工程
次に、研削盤1の研削工程について説明する。図13に示すように、研削工程は、砥石車12のX軸方向への送り速度の違いによって分けられ、粗研削工程St1、精研削工程St2、微研削工程St3及びスパークアウト工程St4の順で行われる。各工程の砥石車12の送り速度は、粗研削工程St1>精研削工程St2>微研削工程St3>スパークアウト工程St4となる。粗研削工程St1では、工作物Wの大まかな形状を形成する。続く精研削工程St2及び微研削工程St3では、砥石車12の送り速度を小さくしながら、工作物Wの表面形状を整える。最後のスパークアウト工程St4では、工作物Wの表面の仕上げを行い、工作物Wを完成させる。
【0065】
研削工程の切替には、定寸装置3によって測定された工作物Wの研削周面W1の径が用いられる。研削盤1の制御装置10においては、粗研削工程St1と精研削工程St2との切替時の工作物Wの径、精研削工程St2と微研削工程St3との切替時の工作物Wの径、及び微研削工程St3とスパークアウト工程St4との切替時の工作物Wの径が設定されている。研削加工中において、定寸装置3によって測定される工作物Wの径が設定された径に到達した際には、研削盤1の制御装置10によって研削工程が切り替えられる。
【0066】
ここで、表面性状推定装置2においては、研削が完了するスパークアウト工程St4後の工作物Wの表面性状Sを推定することが好ましい。表面性状推定装置2は、インプロセスにおいて、工作物Wの表面性状Sを推定するものである。インプロセスとは、工作物Wが、研削加工された後、研削盤1から取り外されるまでの期間であって、スパークアウト工程St4後も含む。本形態の表面性状推定装置2は、工作物Wの研削完了後に工作物Wの研削加工時の回転状態を維持して、工作物Wの表面性状Sを推定する。
【0067】
8.研削盤1の他の構成
図1に示すように、研削盤1は、表面性状推定装置2が推定して作成された表面性状マップMを利用して種々の判定を行う判定部101を有していてもよい。判定部101は、表面性状マップMに基づいて、工作物Wの研削加工の良否判定を行ってもよい。表面性状推定装置2は、工作物Wに対して良好な研削加工が行われた場合についての基準となる基準表面性状マップを記憶し、判定部101は、研削盤1において工作物Wの研削加工を1回又は所定回行うごとに作成される表面性状マップMを基準表面性状マップと照合する。そして、判定部101は、基準表面性状マップにおける表面性状と比較して、研削加工を行った工作物Wの研削周面W1の表面性状Sが悪化したときには、研削加工が不良であることを判定してもよい。
【0068】
判定部101は、表面性状マップMに基づいて、次回以降に加工する工作物Wの加工条件の調整の必要性の判定を行ってもよい。工作物Wの加工条件には、砥石車12の加工時回転速度、工作物Wの加工時回転速度、砥石車12のX軸方向への送り速度(切り込み量)等がある。この場合にも、表面性状推定装置2は、基準表面性状マップを記憶し、判定部101は、研削盤1において工作物Wの研削加工を1回又は所定回行うごとに作成される表面性状マップMを基準表面性状マップと照合する。そして、判定部101は、基準表面性状マップにおける表面性状と比較して、研削加工を行った工作物Wの研削周面W1の表面性状Sが悪化したときには、加工条件の調整の必要性があることを判定してもよい。
【0069】
判定部101は、表面性状マップMに基づいて、砥石車12の修正タイミングの調整の必要性の判定を行ってもよい。砥石車12の修正タイミングは、砥石車12の修正を行う頻度を示す。砥石車12の修正には、砥石車12の振れ、形状等の修正としてのツルーイング(形直し)、砥粒の突き出し量、砥粒の切れ刃の創生等の修正としてのドレッシング(目直し)などがある。この場合にも、表面性状推定装置2は、基準表面性状マップを記憶し、判定部101は、研削盤1において工作物Wの研削加工を1回又は所定回行うごとに作成される表面性状マップMを基準表面性状マップと照合する。そして、判定部101は、基準表面性状マップにおける表面性状と比較して、研削加工を行った工作物Wの研削周面W1の表面性状Sが悪化したときには、砥石車12を修正する頻度を短くする必要性があることを判定してもよい。
【0070】
9.作用効果
本実施形態の表面性状推定装置2における定寸装置3は、加速度センサ32を防護するためのセンサ防護部材4を有する。表面性状推定装置2に用いられる定寸装置3は、研削加工中において工作物Wの研削周面W1の径を測定するために、研削周面W1が研削加工される際に用いられるクーラントK又は研削加工により生じる切屑がかかりやすい状況に置かれることが多い。このとき、定寸装置3の加速度センサ32がセンサ防護部材4によって覆われていることにより、クーラントK及び切屑の少なくとも一方から加速度センサ32を防護することができる。そのため、加速度センサ32の耐久性を向上させることができる。
【0071】
本実施形態の表面性状推定装置2によれば、加速度センサ32の耐久性を向上させることができる。
【0072】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 研削盤
10 制御装置
12 砥石車
2 表面性状推定装置
20 演算処理装置
3 定寸装置
30 定寸装置本体
31 接触部材
311 接触子
312 フィーラ
32 加速度センサ
321 センサ本体部
322 センサ信号線
323 第1信号線
324 第2信号線
33 付勢部材
34 変位センサ
35 中継コネクタ
4 センサ防護部材
41 カバー
411 開口部
42 充填材料
W 工作物
W1 研削周面
S 表面性状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13