(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150823
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】電力消費抑制装置および電力消費抑制方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063799
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 弘人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707HS27
3C707LS15
3C707LT01
3C707LV21
3C707LW08
3C707MT13
(57)【要約】
【課題】従来に対し、ロボットアームが軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えることを可能とする。
【解決手段】軌道上の中間点ごとかつロボットアーム2が有する軸ごとに、当該軸に設けられたモータの出力を算出するモータ出力算出部103と、モータ出力算出部103による算出結果に基づいて、軌道に対し、ピーク電力を抑えるように、ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングを補正する動作タイミング補正部104とを備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上の中間点ごとかつロボットアームが有する軸ごとに、当該ロボットアームが当該軌道を移動する場合での、当該軸に設けられたモータの出力を算出するモータ出力算出部と、
前記モータ出力算出部による算出結果に基づいて、前記ロボットアームが軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えるよう、当該ロボットアームが有する各軸の動作タイミングを補正する動作タイミング補正部と
を備えた電力消費抑制装置。
【請求項2】
前記動作タイミング補正部は、
前記モータ出力算出部による算出結果に基づいて、前記ロボットアームが有する各軸について、処理対象とする順序を、消費電力の大きい順に設定する処理順序設定部と、
前記処理順序設定部により設定された1軸目の軸に対しては、動作時間の範囲内で任意に目標時間を定め、前記処理順序設定部により設定された2軸目以降の軸に対しては、動作時間の範囲内で、当該軸より前に処理対象であった全ての軸での消費電力の合計が小さい時間を目標時間に定める目標時間設定部と、
前記ロボットアームが軌道を移動する場合において、処理対象の軸に対し、前記目標時間設定部により設定された目標時間に消費電力がピーク値となるタイミングが重なるよう、動作タイミングを調整する動作タイミング調整部と、
前記動作タイミング調整部により調整された動作タイミングが制約条件の範囲内であるかを判定する制約条件判定部とを備え、
前記目標時間設定部は、前記制約条件判定部により動作タイミングが制約条件の範囲内ではないと判定された場合、目標時間を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の電力消費抑制装置。
【請求項3】
前記動作タイミング補正部は、
閾値を設定する閾値設定部を備え、
前記目標時間設定部は、前記閾値設定部による設定結果に基づいて、動作時間を設定する
ことを特徴とする請求項2記載の電力消費抑制装置。
【請求項4】
モータ出力算出部が、軌道上の中間点ごとかつロボットアームが有する軸ごとに、当該ロボットアームが当該軌道を移動する場合での、当該軸に設けられたモータの出力を算出するステップと、
動作タイミング補正部が、前記モータ出力算出部による算出結果に基づいて、前記ロボットアームが軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えるよう、当該ロボットアームが有する各軸の動作タイミングを補正するステップと
を有する電力消費抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットアームが軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑える電力消費抑制装置および電力消費抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアームとして、複数の関節を有し、各関節に設けられてアームを回転駆動させるモータによって動作する多関節形ロボットが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなロボットアームでは、任意の軌道で動作させる場合に動作中の最大モータ出力を実現できるように、電源および配線の設計が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ロボットアームを大きい負荷で高速で動かすような動作を実施させる場合には、出力が大きくなるため、電源の容量に大きくマージンを持たせる必要がある。
特に、複数軸を同時に加速させる動作を実施させる場合には、同じタイミングで各軸のモータが駆動するため、ロボットアーム全体での電力消費が大きくなる。その結果、電源の容量を大きくする必要がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来に対し、ロボットアームが軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えることが可能となる電力消費抑制装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力消費抑制装置は、軌道上の中間点ごとかつロボットアームが有する軸ごとに、当該軸に設けられたモータの出力を算出するモータ出力算出部と、モータ出力算出部による算出結果に基づいて、軌道に対し、ピーク電力を抑えるように、ロボットアームが有する各軸の動作タイミングを補正する動作タイミング補正部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、上記のように構成したので、従来に対し、ロボットアームが軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電力消費抑制装置を含むロボットシステムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力消費抑制装置の構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態1における動作タイミング補正部の構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る電力消費抑制装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1における動作タイミング補正部の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1における動作タイミング補正部の動作例を説明する図であって、動作タイミング補正部による動作タイミングの補正前の状態の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における動作タイミング補正部の動作例を説明する図であって、動作タイミング補正部により2軸目の軸まで動作タイミングの調整が完了した状態の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1における動作タイミング補正部の動作例を説明する図であって、動作タイミング補正部により3軸目の軸まで動作タイミングの調整が完了した状態の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1における動作タイミング補正部の動作例を説明する図であって、動作タイミング補正部による動作タイミングの補正後の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電力消費抑制装置1を含むロボットシステムの構成例を示す図である。
ロボットシステムは、
図1に示すように、電力消費抑制装置1およびロボットアーム2を備えている。
【0010】
電力消費抑制装置1は、ロボットアーム2が軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えるよう、ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングの補正を行う。この電力消費抑制装置1の構成例については後述する。
なお、電力消費抑制装置1は、システムLSI(Large Scale Integration)等の処理回路、またはメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0011】
ロボットアーム2は、複数の軸を有する多軸ロボットアームである。このロボットアーム2は、軌道を移動する場合に、電力消費抑制装置1による補正後の動作タイミングに従って各軸に設けられたモータの動作を制御する。
【0012】
次に、
図1に示す実施の形態1に係る電力消費抑制装置1の構成例について、
図2を参照しながら説明する。
電力消費抑制装置1は、
図2に示すように、パラメータ取得部101、軌道取得部102、モータ出力算出部103、および、動作タイミング補正部104を備えている。
【0013】
パラメータ取得部101は、軌道取得部102により取得される軌道に関するパラメータを取得する。この際、パラメータ取得部101は、例えばユーザにより設定されたパラメータを取得する。パラメータ取得部101が取得するパラメータには、軌道取得部102により取得される軌道の始点、終点および全体動作時間が含まれる。
【0014】
軌道取得部102は、軌道を取得する。この際、軌道取得部102は、例えばユーザによりロボットアーム2に対してティーチングされた軌道を取得する。この軌道には、ロボットアーム2が有する各軸の速度および加速度を示す情報が含まれている。
【0015】
モータ出力算出部103は、パラメータ取得部101による取得結果および軌道取得部102による取得結果に基づいて、軌道上の複数の中間点ごとかつロボットアーム2が有する軸ごとに、当該ロボットアーム2が当該軌道を移動する場合での、当該軸に設けられたモータの出力を算出する。なお、モータの出力は、モータの速度とトルクとを乗算することで算出可能である。また、モータの速度およびトルクは、パラメータ取得部101による取得結果および軌道取得部102による取得結果から算出可能である。また、モータの出力は、該当する軸での消費電力に対応する。
【0016】
動作タイミング補正部104は、パラメータ取得部101により取得結果およびモータ出力算出部103による算出結果に基づいて、ロボットアーム2が軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えるよう、当該ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングを補正する。この際、例えば、動作タイミング補正部104は、消費電力の平均化を行うように各軸の速度または加速度を調整することで、ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングを補正する。
【0017】
次に、動作タイミング補正部104の構成例について、
図3を参照しながら説明する。
動作タイミング補正部104は、
図3に示すように、処理順序設定部1041、閾値設定部1042、目標時間設定部1043、動作タイミング調整部1044、および、制約条件判定部1045を有している。
【0018】
処理順序設定部1041は、モータ出力算出部103による算出結果に基づいて、ロボットアーム2が有する各軸について、処理対象とする順序を、消費電力の大きい順に設定する。
【0019】
閾値設定部1042は、閾値を設定する。
【0020】
目標時間設定部1043は、パラメータ取得部101による取得結果および閾値設定部1042による設定結果に基づいて、処理対象である軸に対する目標時間を定める。目標時間は、処理対象である軸に対し、消費電力のピーク値となるタイミングを調整するための時間である。
【0021】
この際、まず、目標時間設定部1043は、軌道の全体動作時間および閾値に基づいて、全体動作時間のうち、動作開始タイミングに閾値を加えた時間から動作終了タイミングから閾値を差し引いた時間までの範囲を動作時間として設定する。
そして、目標時間設定部1043は、処理順序設定部1041により設定された1軸目の軸に対しては、動作時間の範囲内で任意の目標時間を定める。
また、目標時間設定部1043は、処理順序設定部1041により設定された2軸目以降の軸に対しては、動作時間の範囲内で、当該軸より前に処理対象であった全ての軸での消費電力の合計が小さい時間を目標時間に定める。この際、目標時間設定部1043は、上記消費電力の合計が最小の時間を目標時間に定めることが望ましい。
【0022】
また、目標時間設定部1043は、制約条件判定部1045により動作タイミングが制約条件の範囲内ではないと判定された場合、目標時間を変更する。
【0023】
動作タイミング調整部1044は、ロボットアーム2が軌道を移動する場合において、処理対象の軸に対し、目標時間設定部1043により設定された目標時間に消費電力がピーク値となるタイミングが重なるよう、動作タイミングを調整する。この際、動作タイミング調整部1044は、処理対象の軸における速度または加速度を調整することで、動作タイミングを調整する。
【0024】
制約条件判定部1045は、動作タイミング調整部1044により調整された動作タイミングが制約条件の範囲内であるかを判定する。制約条件としては、動作時間、速度または加速度などが挙げられる。
【0025】
なお、
図3では、動作タイミング補正部104に閾値設定部1042が設けられた場合を示した。しかしながら、閾値設定部1042は動作タイミング補正部104に必須の構成ではなく、閾値設定部1042が動作タイミング補正部104に設けられていなくてもよい。この場合、目標時間設定部1043は、パラメータ取得部101により取得された軌道の全体動作時間を動作時間とする。
【0026】
次に、
図2に示す実施の形態1に係る電力消費抑制装置1の動作例について、
図4を参照しながら説明する。
実施の形態1に係る電力消費抑制装置1では、2点間の軌道に対し、ロボットアーム2が有する各軸に設けられたモータの動くタイミングを補正する。これにより、実施の形態1に係る電力消費抑制装置1では、ロボットアーム2全体での電気的負荷を抑えることができる。
【0027】
図2に示す実施の形態1に係る電力消費抑制装置1の動作例では、
図4に示すように、まず、パラメータ取得部101は、軌道取得部102により取得される軌道に関するパラメータを取得する(ステップST101)。この際、パラメータ取得部101は、例えばユーザにより設定されたパラメータを取得する。パラメータ取得部101が取得するパラメータには、軌道取得部102により取得される軌道の始点、終点および全体動作時間が含まれる。
【0028】
また、軌道取得部102は、軌道を取得する(ステップST102)。この際、軌道取得部102は、例えばユーザによりロボットアーム2に対してティーチングされた軌道を取得する。この軌道には、ロボットアーム2が有する各軸の速度および加速度を示す情報が含まれている。
【0029】
次いで、モータ出力算出部103は、パラメータ取得部101による取得結果および軌道取得部102による取得結果に基づいて、軌道上の複数の中間点ごとかつロボットアーム2が有する軸ごとに、当該ロボットアーム2が当該軌道を移動する場合での、当該軸に設けられたモータの出力を算出する(ステップST103)。なお、モータの出力は、モータの速度とトルクとを乗算することで算出可能である。また、モータの速度およびトルクは、パラメータ取得部101による取得結果および軌道取得部102による取得結果から算出可能である。また、モータの出力は、該当する軸での消費電力に対応する。
【0030】
次いで、動作タイミング補正部104は、パラメータ取得部101により取得結果およびモータ出力算出部103による算出結果に基づいて、ロボットアーム2が軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えるよう、当該ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングを補正する(ステップST104)。この際、例えば、動作タイミング補正部104は、消費電力の平均化を行うように各軸の速度または加速度を調整することで、ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングを補正する。
【0031】
次に、
図3に示す実施の形態1における動作タイミング補正部104の動作例について、
図5を参照しながら説明する。なお、以下では、ロボットアーム2が6軸を有するロボットアームである場合を例に説明を行う(n=1,2,・・・,6)。
【0032】
実施の形態1における動作タイミング補正部104では、ロボットアーム2が有する各軸について、消費電力の大きい軸から優先的に動作タイミングの調整を行う。
そして、
図5に示すフローチャートのうち、ステップST203~ST206における処理は、最も消費電力が大きい1軸目の軸に対する動作タイミングの補正動作例を示している。この1軸目の軸に対する動作タイミングの補正動作例では、消費電力がピーク値となる目標時間t0を任意の時間に設定してそのタイミングに合わせて動作タイミングを調整する。なお、動作タイミングの調整の結果、消費電力のピーク値のタイミングが目標時間t0からずれていても問題なしとする。ただし、動作タイミングが制約条件に違反する場合には、目標時間t0の値を変更する。
また、
図5に示すフローチャートのうち、ステップST207~ST213の処理は、2軸目以降の軸に対する動作タイミングの補正動作例を示している。この2軸目以降の軸に対する動作タイミングの補正動作例では、調整済みの軸での合計の消費電力が最小となるタイミングを目標時間tnに設定し、そのタイミングに合わせて動作タイミングを調整する。
【0033】
図3に示す実施の形態1における動作タイミング補正部104の動作例では、
図5に示すように、まず、処理順序設定部1041は、モータ出力算出部103による算出結果に基づいて、ロボットアーム2が有する各軸について、処理対象とする順序を、消費電力の大きい順に設定する(ステップST201)。すなわち、処理順序設定部1041は、消費電力の大きい軸の順に、1軸目の軸、2軸目の軸、・・・、6軸目の軸として設定する。
【0034】
また、閾値設定部1042は、閾値tmを設定する(ステップST202)。
すなわち、軌道の全体動作時間のうち、動作開始タイミング付近および動作終了タイミング付近に消費電力のピーク値が発生するようにロボットアーム2を動作させると、モータに過大な負荷がかかると予想される。そのため、閾値設定部1042は、上記のような閾値tmを設定し、消費電力のピーク値を発生させるタイミングから上記動作開始タイミング付近および上記動作終了タイミング付近を除外することが望ましい。
【0035】
次いで、目標時間設定部1043は、パラメータ取得部101による取得結果および閾値設定部1042による設定結果に基づいて、処理順序設定部1041により設定された1軸目の軸に対し、動作時間tm~T-tmの範囲内で任意の目標時間t0を定める(ステップST203)。
【0036】
次いで、動作タイミング調整部1044は、ロボットアーム2が軌道を移動する場合において、処理順序設定部1041により設定された1軸目の軸に対し、目標時間設定部1043により設定された目標時間t0に消費電力がピーク値となるタイミングが重なるよう、動作タイミングを調整する(ステップST204)。この際、動作タイミング調整部1044は、1軸目の軸における速度または加速度を調整することで、動作タイミングを調整する。
【0037】
次いで、制約条件判定部1045は、動作タイミング調整部1044により調整された動作タイミングが制約条件の範囲内であるかを判定する(ステップST205)。制約条件としては、動作時間、速度または加速度などが挙げられる。
【0038】
このステップST205において、制約条件判定部1045が動作タイミングが制約条件の範囲内ではないと判定した場合、目標時間設定部1043は目標時間t0を変更する(ステップST206)。その後、シーケンスはステップST204に戻る。
【0039】
一方、ステップST205において、制約条件判定部1045が動作タイミングが制約条件の範囲内であると判定した場合、動作タイミング補正部104は、処理順序設定部1041により設定された2軸目の軸(n=2)を処理対象とする(ステップST207)。
【0040】
次いで、目標時間設定部1043は、パラメータ取得部101による取得結果および閾値設定部1042による設定結果に基づいて、処理順序設定部1041により設定されたn軸目の軸に対し、動作時間tm~T-tmの範囲内で、n軸目の軸よりも前に処理対象であった全ての軸での消費電力の合計が小さい時間を目標時間tnに定める(ステップST208)。この際、目標時間設定部1043は、上記消費電力の合計が最小の時間を目標時間tnに定めることが望ましい。
【0041】
次いで、動作タイミング調整部1044は、ロボットアーム2が軌道を移動する場合において、処理順序設定部1041により設定されたn軸目の軸に対し、目標時間設定部1043により設定された目標時間tnに消費電力がピーク値となるタイミングが重なるよう、動作タイミングを調整する(ステップST209)。この際、動作タイミング調整部1044は、n軸目の軸における速度または加速度を調整することで、動作タイミングを調整する。
【0042】
次いで、制約条件判定部1045は、動作タイミング調整部1044により調整された動作タイミングが制約条件の範囲内であるかを判定する(ステップST210)。制約条件としては、動作時間、速度または加速度などが挙げられる。
【0043】
このステップST210において、制約条件判定部1045が動作タイミングが制約条件の範囲内ではないと判定した場合、目標時間設定部1043は目標時間tnを変更する(ステップST211)。その後、シーケンスはステップST209に戻る。
【0044】
一方、ステップST210において、制約条件判定部1045が動作タイミングが制約条件の範囲内であると判定した場合、動作タイミング補正部104は、処理順序設定部1041により設定された次の軸(n=n+1)を処理対象とする(ステップST212)。
【0045】
次いで、動作タイミング補正部104は、n>6であるかを判定する(ステップST213)。すなわち、動作タイミング補正部104は、ロボットアーム2が有する全ての軸について、動作タイミングの補正が完了したかを判定する。
【0046】
このステップST212において、動作タイミング補正部104がn>6ではないと判定した場合、シーケンスはステップST208に戻る。
【0047】
一方、ステップST212において、動作タイミング補正部104がn>6であると判定した場合、シーケンスは終了する。
【0048】
次に、
図3に示す実施の形態1における動作タイミング補正部104の動作の具体例について、
図6~
図9を参照しながら説明する。
【0049】
図6は6軸を有するロボットアーム2を特定の軌道で移動させた場合での消費電力を時系列で示した図であって、電力消費抑制装置1による動作タイミングの補正前の状態の一例を示す図である。
図6では、ロボットアーム2が有する各軸について、消費電力の大きい軸から順に、1軸目、2軸目、・・・、6軸目とラベリングし、各軸の消費電力を積み重ねて表示している。
図6において、1軸目の軸での波形と電力が0である軸線との間の領域、1軸目の軸での波形と2軸目の軸での波形との間の領域、・・・、5軸目の軸の波形と6軸目の軸の波形との間の領域の順に領域が狭くなっており、すなわち消費電力が小さくなっていることがわかる。
【0050】
この
図6において、動作開始タイミングおよび動作終了タイミングはロボットアーム2が停止状態であるため、消費電力は0である。また、
図6では、動作してから4、5秒後が消費電力のピーク値のタイミングとなっている。
【0051】
そして、実施の形態1に係る電力消費抑制装置1は、
図6に示す動作タイミングに対して補正を行う。
【0052】
図7では、動作タイミング補正部104が、2軸目の軸までの動作タイミングの調整が完了している状態の一例を示している。すなわち、次の処理対象の軸は、3軸目の軸(n=3)である。なお、
図7では、モータの負荷が大きくなると考えられる動作開始タイミング付近と動作終了タイミング付近は動作時間から除外している。
図7では、動作タイミング補正部104は、1軸目の軸の動作タイミングについては、
図6に示す動作タイミングから変更していない。そして、動作タイミング補正部104は、2軸目の軸の動作タイミングについては、1軸目の軸で消費電力が最小となるタイミングを目標時間t2とし、この目標時間t2に消費電力のピーク値が重なるように動作タイミングを調整している。
そして、
図7では、動作時間tm~T-tmの範囲内で、3軸目の軸よりも前に処理対象であった全ての軸、すなわち1軸目の軸と2軸目の軸での消費電力の合計が最小となるタイミングは矢印に示すタイミングであり、このタイミングを目標時間tnとする。
【0053】
図8では、動作タイミング補正部104が、3軸目の軸における電力のピークが目標時間tnと重なるように、調整した状態の一例を示している。
図8の場合、動作タイミング補正部104は、7~8秒のタイミングで速度または加速度が制約条件内に収まるか判定する。そして、動作タイミング補正部104は、仮に制約条件を超える場合には、例えば、目標時間tnをより早いタイミング、例えば駆動開始から6秒後などにずらすことで、制約条件に収まるよう調整する。
【0054】
その後、動作タイミング補正部104は、4軸目以降についても同様に動作タイミングの調整を行う。
このように、動作タイミング補正部104は、消費電力のピーク値を抑えるため、平均化のような処理を加え、台形に近い形に補正する。なお、台形の斜辺の傾きは、速度または加速度の制約で決まる。
【0055】
そして、
図9は6軸を有するロボットアーム2を特定の軌道パターンで動作させた場合での消費電力を時系列で示した図であって、電力消費抑制装置1による動作タイミングの補正後の状態の一例を示す図である。すなわち、
図9は、
図6に対してピーク電力を抑える補正を行った場合での消費電力の一例を時系列で示した図である。
この
図9では、動作タイミング補正部104は、
図7,8に示すように、消費電力の大きい1軸目の軸の動作タイミングは変更せず、2軸目の軸以降は全体の消費電力が小さくなる動作になるようタイミングをずらしている。
この結果、
図6に示す補正前の状態では、最大で200W近くの電力を消費しているのに対し、
図9に示す補正後の状態では、最大で150W程度となっており、補正前の状態に対して小さくなっていることがわかる。
【0056】
なお、上記では、電力消費抑制装置1は、1軸目の軸以外の2軸目から6軸目の軸の動作タイミングを変更する場合を示した。しかしながら、これに限らず、電力消費抑制装置1は、ロボットアーム2が有する軸のうちの少なくとも1つ以上の軸の動作タイミングを変更すればよい。
【0057】
以上のように、この実施の形態1によれば、電力消費抑制装置1は、軌道上の中間点ごとかつロボットアーム2が有する軸ごとに、当該軸に設けられたモータの出力を算出するモータ出力算出部103と、モータ出力算出部103による算出結果に基づいて、軌道に対し、ピーク電力を抑えるように、ロボットアーム2が有する各軸の動作タイミングを補正する動作タイミング補正部104とを備えた。これにより、実施の形態1に係る電力消費抑制装置1は、従来に対し、ロボットアーム2が軌道を移動する場合での消費電力のピーク値を抑えることが可能となる。その結果、実施の形態1に係る電力消費抑制装置1では、ロボットアーム2に対する電源の容量を小さくすることが可能となる。
【0058】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 電力消費抑制装置
2 ロボットアーム
101 パラメータ取得部
102 軌道取得部
103 モータ出力算出部
104 動作タイミング補正部
1041 処理順序設定部
1042 閾値設定部
1043 目標時間設定部
1044 動作タイミング調整部
1045 制約条件判定部