(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150857
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ダイスセット及び転造盤
(51)【国際特許分類】
B21H 7/14 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B21H7/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063860
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】星野 数之
(57)【要約】
【課題】加工工程を集約することで加工時間の短縮を図ることができるダイスセット及び転造盤を提供する。
【解決手段】ダイスセット30は、歯すじ方向に延びる複数の歯をブランク材50Bに形成するための複数のセレーション溝部32を有するセレーションダイス31と、ブランク材50Bに形成される歯の端部から歯すじ方向に当該歯から離れるにつれて歯幅が小さくなる逃げ部を形成するための複数のレリービング溝部36を有し、ブランク材50Bに歯と同時に逃げ部が形成可能となるようにセレーションダイス31と組み合わされるレリービングダイス35と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯すじ方向に延びる複数の歯を転造対象品に形成するための複数のセレーション溝部を有するセレーションダイスと、
転造対象品に形成される歯の端部から前記歯すじ方向に当該歯から離れるにつれて幅が小さくなる逃げ部を形成するための複数の逃げ形成溝部を有し、転造対象品に歯と同時に逃げ部が形成可能となるように前記セレーションダイスと組み合わされる逃げ形成ダイスと、を備える、
ダイスセット。
【請求項2】
2つの前記逃げ形成ダイスは、前記ダイスセットの回転軸方向において前記セレーションダイスの両側に設けられ、前記複数の逃げ形成溝部により転造対象品の歯の両端側に逃げ部を形成する、
請求項1に記載のダイスセット。
【請求項3】
前記逃げ形成溝部は、前記ダイスセットの回転軸方向において前記セレーションダイスから遠ざかるほど溝幅が小さく、かつ、前記溝部の深さが深くなるにつれて溝幅が小さくなる形状で形成されている、
請求項1又は2に記載のダイスセット。
【請求項4】
前記逃げ形成ダイスは、レリービングダイスであり、
前記レリービングダイスは、前記複数の逃げ形成溝部である複数のレリービング溝部を有する、
請求項1又は2に記載のダイスセット。
【請求項5】
複数設けられた請求項1又は2に記載のダイスセットと、
前記複数のダイスセットの間に転造対象品を支持する支持部と、
歯と逃げ部が同時に形成されるように転造対象品を転造するために、前記複数のダイスセットを回転させつつ、前記複数のダイスセットが転造対象品に当たるように前記複数のダイスセットを転造対象品に対して相対移動させる転造動作機構と、を備える、
転造盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスセット及び転造盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の転造加工装置は、第1及び第2の転造ダイスの間に位置する線材に加圧した状態で、第1及び第2の転造ダイスを同じ方向に回転させることにより、線材の外周面上にセレーションを形成する(特許文献1の明細書段落0020等参照)。
特許文献2に記載の加工装置は、切削加工により、レリービング等の連続的に変化する歯形を形成可能である(特許文献2の明細書段落0098等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-145243号公報
【特許文献2】特開2019-018335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、セレーションにレリービングを形成する場合には、上記特許文献1に記載のセレーションを形成する工程と上記特許文献2に記載のレリービングを形成する工程を別の工程として行う必要があり、加工工程を集約できず、加工時間が長くなる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、加工工程を集約することで加工時間の短縮を図ることができるダイスセット及び転造盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るダイスセットは、歯すじ方向に延びる複数の歯を転造対象品に形成するための複数のセレーション溝部を有するセレーションダイスと、転造対象品に形成される歯の端部から前記歯すじ方向に当該歯から離れるにつれて幅が小さくなる逃げ部を形成するための複数の逃げ形成溝部を有し、転造対象品に歯と同時に逃げ部が形成可能となるように前記セレーションダイスと組み合わされる逃げ形成ダイスと、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る転造盤は、複数設けられた前記ダイスセットと、前記複数のダイスセットの間に転造対象品を支持する支持部と、歯と逃げ部が同時に形成されるように転造対象品を転造するために、前記複数のダイスセットを回転させつつ、前記複数のダイスセットが転造対象品に当たるように前記複数のダイスセットを転造対象品に対して相対移動させる転造動作機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工工程を集約することで加工時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る転造盤の平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る転造盤の正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る転造盤の側面図である。
【
図4】(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係る転造時のダイスセット、転造品(ブランク材)及びセンタの概略図である。
【
図5】
図4(B)の矢印Aから見たダイスセットの一部を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るレリービング溝部が形成されている側から見たレリービングダイスの模式的な斜視図である。
【
図7】(A)はブランク材の側面図であり、(B)は転造品の側面図であり、(C)は転造品の正面図であり、(D)は当該(B)の一部の拡大図である。
【
図8】(A)は
図4の矢印Bから見たレリービングダイスの図であり、(B)は当該(A)の矢印Cから見たレリービングダイスの一部を示す図である。
【
図9】(A),(B)は、本発明の第2実施形態に係る転造時のダイスセット、転造品(ブランク材)及びセンタの概略図である。
【
図10】
図9(B)の矢印Dから見たダイスセットの一部を示す図である。
【
図11】(A)はブランク材の側面図であり、(B)は転造品の側面図であり、(C)は転造品の正面図であり、(D)は当該(B)の一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るダイスセット及び転造盤について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る転造盤は、インフィード転造方式を用いて、ブランク材に、複数の歯を形成するセレーション加工と、歯の端部に歯幅が徐々に小さくなる逃げ部を形成するレリービング加工とを、転造加工により同時に施す転造盤である。
【0011】
図1、
図2及び
図3に示すように、転造盤1は、ダイスセット30,40と、主軸13,14と、複数のカラー13a~13e,14a~14eと、主軸台15,16と、駆動部であるサーボモータ17,18,21と、ベッドSと、台本体20と、ボールネジ22と、支持装置23と、支持台座24と、ガイド25a,25bと、制御部3と、を備える。
以下の説明では、Z軸方向は主軸13の回転軸に平行な方向であり、Y軸方向はZ軸方向に直交する高さ方向であり、X軸方向はY軸方向及びZ軸方向に直交する方向である。
【0012】
ベッドSは、主軸台15、台本体20及びガイド25a,25bを固定するための台である。ガイド25a,25bは、ベッドSに固定されて、主軸台16と支持台座24をX軸方向に案内する。
【0013】
主軸13,14は、それぞれ、ダイスセット30,40が取り付けられた状態で、サーボモータ17,18からの駆動力を受けてダイスセット30,40とともに回転する。主軸13,14は、Z軸方向に延びる形状をなし、ダイスセット30,40が主軸13,14に挿通可能に形成されている。ダイスセット30,40は、主軸13,14が嵌合する中央孔30h,40h(
図4(A)と
図6参照)を有する。中央孔30h,40hは、中央孔30h,40hの周面の一部に形成され、主軸13,14の外周面に形成されるキー(図示略)が嵌まるキー溝30k,40kを有する。主軸13,14のキーがキー溝30k,40kに嵌まることにより、主軸13,14の回転方向にダイスセット30,40が固定され、主軸13,14の回転がダイスセット30,40に伝達可能となる。
複数のカラー13a~13eは、Z軸方向に並べられ、主軸13の外周全域を囲む筒状に形成されている。
図1では、主軸13は、カラー13a~13eによって隠れるため、破線で図示されている。カラー13a~13eとダイスセット30は、サーボモータ17に近い方から、カラー13a→13b→ダイスセット30→カラー13c→13d→13eの順で配置されている。複数のカラー13bと13cとの間には、ダイスセット30がZ軸方向の両側から挟み込まれる。カラー13aのダイスセット30とは反対側の端部が主軸13の段差部(図示略)に接触した状態で、カラー13eのダイスセット30とは反対側の端部が接触する座金(図示略)は、主軸13の端面にネジでネジ止めされている。これにより、カラー13bと13cがダイスセット30を挟んだ状態で主軸13に対してZ軸方向に固定される。カラー13a,13bの合計長さと13c~13eの合計長さの比率を変更することにより、ダイスセット30のZ軸方向の固定位置が変更可能となる。また、カラー14a~14eは、カラー13a~13eと同様に構成され、主軸14の段差部と主軸14の端面にネジでネジ止めされる座金との間で、ダイスセット40をZ軸方向の両側から挟み込む。これにより、カラー14bと14cがダイスセット40を挟んだ状態で主軸14に対してZ軸方向に固定される。
上記により、ダイスセット30,40が主軸13,14に対して回転方向及びZ軸方向に固定される。
なお、カラー13a~13e,14a~14eの数及び長さは、適宜、変更可能である。
【0014】
主軸台15,16は、それぞれ、主軸13,14を回転可能に主軸13,14の両端を支持する。主軸台16はガイド25a,25b上を移動可能に構成され、主軸台15はベッドSに対して移動不能に構成されている。
【0015】
サーボモータ17,18は、それぞれ、主軸台15,16に取り付けられ、制御部3による制御のもと、主軸13,14をダイスセット30,40とともに回転軸K,Jを中心に回転させる。
【0016】
台本体20にはサーボモータ21が取り付けられている。サーボモータ21は、ボールネジ22を回転させることにより主軸台16をX軸方向に移動させる。なお、サーボモータ21の向きは、
図1の例に限らず、適宜変更可能である。
【0017】
支持装置23は、ブランク材50B又は転造品50を支持するためのものであり、センタ231,232を備える。センタ231,232は、ブランク材50B又は転造品50がその中心軸Gを中心に回転するようにブランク材50B又は転造品50を支持する。センタ231,232は、それぞれ、円錐形の先端部を有し、先端部でブランク材50B又は転造品50の中心を支持する。
【0018】
支持台座24は、支持装置23を支持するための台であり、支持台座24と主軸台16とは、連結部材(図示せず)によって連結されている。この連結部材は、支持台座24を、主軸台16の移動距離に対して1/2の距離だけ同じ方向に移動させるように構成されている。これにより、ダイスセット40が移動しても支持台座24をダイスセット30,40の中央に位置させることが可能となる。
【0019】
ダイスセット30,40は、円環状に形成されており、それぞれ主軸13,14の外周に装着されている。ダイスセット30,40は、回転軸K,Jを中心に回転した状態で、支持装置23により支持されたブランク材50Bに対して相対的に近づくように移動し、それぞれの外周面でブランク材50BをX軸方向の両側から挟み込む。これにより、ダイスセット30,40は、外周面の形状をブランク材50Bの外周面に転写する。
【0020】
以下では、ダイスセット30についてのみ説明するが、ダイスセット40もダイスセット30と同様の構成を有する。
図4と
図5に示すように、ダイスセット30は、互いに分離可能に別体をなすセレーションダイス31とレリービングダイス35が回転軸Kの方向から組み合わされて構成されている。本実施形態では、レリービングダイス35はセレーションダイス31の一方側(
図4中の右側)にのみ設けられている。
【0021】
セレーションダイス31は、略円環状をなす。セレーションダイス31の外周面には複数のセレーション溝部32が形成されている。複数のセレーション溝部32は、回転軸Kの方向に延び、ダイスセット30の周方向Eに並べられている。各セレーション溝部32は、溝幅が溝底に近づくにつれて小さくなる形状をなす。
図5の一点鎖線は、セレーション溝部32の最も深い位置に引かれている。転造によりブランク材に対して複数のセレーション溝部32の形状に応じた複数の歯、即ち、セレーションが転写される。
【0022】
レリービングダイス35は、セレーションダイス31と同一の外径と内径を有する略円環状をなす。レリービングダイス35の外周面には複数のレリービング溝部36が形成されている。複数のレリービング溝部36は、それぞれ、複数のセレーション溝部32に1対1で対応する位置に設けられている。各レリービング溝部36は、各セレーション溝部32に連続するように各セレーション溝部32の端部に位置する。複数のレリービング溝部36は、
図6に示すように、レリービングダイス35の角部35cに位置する。
図6では、理解を容易とするため、レリービング溝部36のサイズを大きくし、かつ3つのレリービング溝部36のみ図示しているが、実際には、
図8(A),(B)に示すように、レリービング溝部36は、
図6よりも小さいサイズにて、レリービングダイス35の全周にわたって形成されている。
【0023】
レリービング溝部36は、ダイスセット30の回転軸Kの方向から見て三角形状をなし、詳しくは、頂点36aを有する二等辺三角形状をなす。また、レリービング溝部36は、レリービングダイス35の径方向から見て三角形状をなし、詳しくは、頂点36bを有する二等辺三角形状をなす。頂点36aはレリービングダイス35の端面に位置し、頂点36bはレリービングダイス35の外周面に位置する。頂点36a,36bは、レリービング溝部36が形成されるレリービングダイス35の角部35cから離れた位置にある。レリービング溝部36には、2つの頂点36a,36bを結ぶ線分に谷底線36cが形成されている。レリービング溝部36の溝幅Mは、ダイス30の回転軸Kの方向においてセレーションダイス部31から遠ざかるほど小さく、かつ、レリービング溝部36の深さが深くなるにつれて小さくなる形状で形成されている。転造によりブランク材に対してレリービング溝部36の形状に応じた逃げ部が転写される。各レリービング溝部36は図示しない研削盤の砥石により形成される。
ダイスセット30のキー溝30kは、セレーションダイス31とレリービングダイス35の位相(正確には、各セレーション溝部32の位相と各レリービング溝部36の位相)が合うようにセレーションダイス31とレリービングダイス35が組み合わされた状態で加工される。これにより、キー溝30kと各セレーション溝部32及び各リービング溝部36の位相との間の位置関係は一定となる。一方、ダイスセット30と40の間では、位相を合わせずにそれぞれ別々にキー溝30k,40kを加工するため、この位置関係は異なる。このため、ダイスセット30,40の主軸13,14への取り付け後、ダイスセット30と40の間の位相が合うように、主軸13又は14を回転させてダイスセット30と40の位相の関係を調整する。
【0024】
制御部3は、転造盤1全体(サーボモータ17,18,21等)を制御する。制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等からなる。制御部3は、予め設定されたNC(Numerical Control)プログラムに従ってブランク材50Bを転造加工することで転造品50を製造する転造処理を実行する。
図7(A)に示すように、ブランク材50Bは、ダイスセット30,40により転造される転造面50Cを有する。転造面50Cは、ブランク材50Bの中心軸Gの方向に延びる歯形成面50Dと、中心軸Gに対して傾斜する方向に延びる逃げ部形成面50Fと、を備える。逃げ部形成面50Fは、歯形成面50Dの前端側(図中の右側)に位置する傾斜面として形成されている。
【0025】
次に、転造処理について説明する。
まず、ブランク材50Bがセンタ231,232の間に支持されるようにセットされる。次に、主軸13,14は、指令に基づき、ダイスセット30,40を
図2の左回りに回転させる。このとき、ダイスセット30,40の回転速度及び回転位相は制御部3により制御されている。そして、サーボモータ21は、ボールネジ22を回転させて、主軸台16、ひいては図示しない連結部材を介して支持台座24を主軸台15に近づけるように移動させる。これにより、ブランク材50Bから見ればダイスセット30,40が均等に近づき、ダイスセット30,40の間にブランク材50Bが挟み込まれる。これにより、ブランク材50Bへの転造が開始する。ダイスセット30,40とブランク材50Bとは、同期して回転し、ダイスセット30,40の外周面形状により、ブランク材50Bの外周面は徐々に塑性変形する。詳しくは、このとき、ブランク材50Bの歯形成面50Dにはセレーションダイス31,41のセレーション溝部32,42を含む凹凸形状が当たり、これと同時にブランク材50Bの逃げ部形成面50Fにはレリービングダイス35,45のレリービング溝部36,46を含む凹凸形状が当たる。そして、ダイスセット30,40が、ブランク材50Bの仕上げ径に到達したときに、それぞれ数回程度回転すると、その後、主軸台16を主軸台15から遠ざけるように移動させ、ダイスセット30,40の回転を停止させる。これにより、ブランク材50Bの転造が完了して転造品50が出来上がる。そして、転造品50は支持装置23から取り出される。
以上で、転造処理の1サイクルが完了する。この転造処理は、繰り返し実行されてもよい。この転造処理を繰り返し実行する際には、ダイスセット30,40の回転を停止させなくてもよい。
【0026】
上記の転造により、
図7(A),(B),(C),(D)に示すように、ブランク材50Bの歯形成面50Dには複数の歯52が形成され、逃げ部形成面50Fには各歯52の端部に位置する複数の逃げ部53が形成される。
各歯52の歯すじ方向Lは、それぞれ、転造品50の中心軸Gの方向に延びるように形成されている。複数の歯52は転造品50の周方向に一定のピッチで配置されている。各歯52は、歯すじ方向Lから見て、三角形の山型をなす。歯52の頂部は、
図7(B),(D)の一点鎖線上に延びている。
なお、
図7(B)では、転造品50の中心軸Gから遠い部分に位置する歯52と逃げ部53の図示が省略されている。後述する第2実施形態の
図11(B)も同様に図示が省略されている。
【0027】
複数の逃げ部53は、それぞれ、複数の歯52の端部に位置し、他の歯車との歯当たりを歯幅中央部に集中するために歯52よりも細く狭められた形状をなす。詳しくは、逃げ部53の歯幅Wは、歯すじ方向Lにおいて歯52から遠ざかるにつれて小さくなる形状をなす。また、逃げ部53の高さ(転造品50の径方向の長さ)も、歯すじ方向Lにおいて歯52から遠ざかるにつれて低くなる形状をなす。逃げ部53は、略三角錐形状をなし、転造品50の径方向外側から見て二等辺三角形状をなし、歯幅Wの方向から見て直角三角形状をなす。
【0028】
次に、転造品50、セレーションダイス31及びレリービングダイス35それぞれの諸元の一例について以下の(a)~(c)に示す。
(a)転造品50の各歯52からなるセレーションの諸元
歯形:インボリュート
モジュール:0.5
歯数:42
圧力角:45°
ピッチ円径:φ21.0mm
(b)セレーションダイス31の諸元
歯形:インボリュート
モジュール:0.5
歯数:318
圧力角:45°
ピッチ円径:φ158.884mm
(c)レリービングダイス35の諸元
歯数:318
なお、上記各諸元は、一例であり、これら諸元に限定されない。
【0029】
(効果)
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ダイスセット30は、(i)歯すじ方向Lに延びる複数の歯52を転造対象品(ブランク材50B)に形成するための複数のセレーション溝部32を有するセレーションダイス31と、(ii)ブランク材50Bに形成される歯52の端部から歯すじ方向Lに当該歯52から離れるにつれて歯幅Wが小さくなる逃げ部53を形成するための複数の逃げ形成溝部の一例であるレリービング溝部36を有し、ブランク材50Bに歯52と同時に逃げ部53が形成可能となるようにセレーションダイス31と組み合わされる逃げ形成ダイスの一例であるレリービングダイス35と、を備える。
この構成によれば、歯52と逃げ部53を同一の工程にて形成することができる。これにより、加工工程を集約することができ、ひいては加工時間の短縮を図ることができる。
【0030】
(2)レリービング溝部36は、ダイスセット30の回転軸Kの方向においてセレーションダイス31から遠ざかるほど溝幅Mが小さく、かつ、レリービング溝部36の深さが深くなるにつれて溝幅Mが小さくなる形状で形成されている。
この構成によれば、レリービングダイス35にレリービング溝部36を形成するだけで、簡単に逃げ部53を形成可能となる。
【0031】
(3)上記逃げ形成ダイスは、レリービングダイス35である。レリービングダイス35は、上記複数の逃げ形成溝部である複数のレリービング溝部36を有する。
この構成によれば、レリービングダイス35により、歯当たりを歯幅中央部に集中するレリービング加工を行うことができる。
【0032】
(4)転造盤1は、複数設けられたダイスセット30,40と、複数のダイスセット30,40の間にブランク材50Bを支持する支持部の一例である支持装置23と、歯52と逃げ部53が同時に形成されるようにブランク材50Bを転造するために、複数のダイスセット30,40を回転させつつ、複数のダイスセット30,40がブランク材50Bに当たるように複数のダイスセット30,40をブランク材50Bに対して相対移動させる転造動作機構の一例であるサーボモータ17,18,21、主軸13,14、ボールネジ22、主軸台16及び連結部材と、を備える。
この構成によれば、ブランク材50Bに歯52と逃げ部53を同一の工程にて形成することができる。これにより、加工工程を集約することができ、ひいては加工時間の短縮を図ることができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るダイス及び転造盤について図面を参照して説明する。本実施形態では、セレーションダイスの両側にレリービングダイスが設けられている点が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0034】
図9(A),(B)と
図10に示すように、転造盤に装着されるダイスセット130は、セレーションダイス131と、セレーションダイス131を両側から挟み込むように位置する2つのレリービングダイス135,235と、を備える。セレーションダイス131と2つのレリービングダイス135,235は、一体的に組み合わされている。レリービングダイス135,235は、それぞれ、上記第1実施形態のレリービングダイス35と同様に、複数のレリービング溝部136,236を有する。円板状をなすセレーションダイス131は、上記第1実施形態のセレーションダイス31と同様に、複数のセレーション溝部132を有する。各レリービング溝部136,236は、各セレーション溝部132に対向するように位置し、セレーションダイス131の回転軸Kの方向の中心を通過するXY平面を対称面として面対称に形成されている。
図10に示すように、各セレーション溝部132の回転軸Kの方向の両端に、それぞれ、レリービング溝部136,236が位置する。
ダイスセット140は、ダイスセット130と同様に構成されている。
【0035】
上記第1実施形態と同様に、ダイスセット130,140によりブランク材150Bが転造されることで転造品150が出来上がる。
図11(A)に示すように、ブランク材150Bは、転造面150Cを有する。転造面150Cは、ブランク材150Bの中心軸Gの方向に延びる歯形成面150Dと、2つの逃げ部形成面150F,250Fと、を備える。2つの逃げ部形成面150F,250Fは、歯形成面150Dの両端側に位置し、傾斜面として形成されている。
【0036】
図11(B),(C),(D)に示すように、転造品150の歯形成面150Dには、上記第1実施形態の複数の歯52と同様に、複数の歯152が形成されている。
逃げ部形成面150F,250Fには、歯すじ方向Lの各歯152の端部に複数の逃げ部153,253が形成されている。逃げ部153,253は、上記第1実施形態の複数の逃げ部53と同様の形状をなす。逃げ部153,253は、歯形成面150Dの中心軸Gの方向の中心を通過し、かつ中心軸Gに直交する平面を対称面として面対称な形状をなす。
【0037】
(効果)
以上、説明した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)2つのレリービングダイス135,235は、ダイスセット130の回転軸Kの方向におけるセレーションダイス131の両側に設けられ、複数のレリービング溝部136,236によりブランク材150Bの歯152の両端側に逃げ部153,253を形成する。
この構成によれば、ブランク材150Bに複数の歯152と各歯152の両側の2つの逃げ部153,253とを1回の加工工程にて形成することができる。これにより、加工工程を集約することができ、ひいては加工時間の短縮を図ることができる。
【0038】
(2)転造盤は、複数設けられたダイスセット130,140と、複数のダイスセット130,140の間にブランク材150Bを支持する支持部の一例である支持装置23と、歯152と逃げ部153,253が同時に形成されるようにブランク材150Bを転造するために、複数のダイスセット130,140を回転させつつ、複数のダイスセット130,140がブランク材150Bに当たるように複数のダイスセット130,140をブランク材150Bに対して相対移動させる転造動作機構の一例であるサーボモータ17,18,21等と、を備える。
この構成によれば、転造盤において、ブランク材150Bに複数の歯152と各歯152の両側の2つの逃げ部153,253とを1回の加工工程にて形成することができる。これにより、加工工程を集約することができ、ひいては加工時間の短縮を図ることができる。
【0039】
(変形例)
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0040】
上記各実施形態において、レリービングダイス35,45,135,235は、歯当たりを歯幅中央部に集中するレリービング加工を行う目的で逃げ部53,153,253を形成していたが、レリービング加工としてではなく、複数の歯52,152の間への他の歯の挿入を容易とするための面取りとして逃げ部53,153,253を形成してもよい。
【0041】
上記各実施形態においては、一対のダイスセット30,40,130,140のうち一方のダイスセット40,140のみを移動可能な構成であったが、これに限らず、一対のダイスセット30,40,130,140の両方が支持装置23に対して移動可能に構成されてもよい。この場合、支持台座24は、ベッドSに対して移動不能に構成され、転造の際には一対のダイスセット30,40,130,140の両方が均等に移動してブランク材50B,150Bに接触する。
【0042】
上記各実施形態において、ダイスセット30,40,130,140の回転方向は任意であり、正転、逆転させることもできる。
【0043】
上記各実施形態では、2つ(一対)のダイスセット30,40,130,140を用いて転造を行うようにした。しかし、ダイスの数は2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0044】
上記各実施形態に係る転造盤は、NC転造盤に限られるものではなく、油圧式転造盤等の他の方式の転造盤であってもよい。
上記各実施形態に係るダイスセット30,40,130,140は、丸ダイスに限らず、平ダイスであってもよい。
【0045】
レリービングダイス35,45,135,235の形状、例えば、レリービング溝部36,46,136,236の形状は、上記各実施形態に限らず、適宜変更可能である。例えば、レリービング溝部は、セレーション溝部32,42,132から離れるにつれて溝幅が小さくなる台形柱状の溝穴を有していてもよい。
上記各実施形態において、セレーション溝部32,42,132は、ダイスセット30,40,130,140の回転軸K,Jの方向に延びていたが、回転軸K,Jに対して傾斜していてもよい。これにより、転造品50,150の歯52,152が延びる歯すじ方向Lは、転造品50,150の中心軸Gに対して傾斜して形成される。
上記各実施形態においては、キー溝30k,40kの位置に対する各セレーション溝部32,42及び各リービング溝部36,46の位相は関連付けられていなかったが、関連付けられてもよい。これにより、各ダイス31,41,131,35,45,135,235のうち何れか一つのダイスを摩耗や欠損により交換しても、交換した新しいダイスの位相を交換していないダイスの位相と合わせることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 転造盤
3 制御部
13,14 主軸
13a~13e,14a~14e カラー
15,16 主軸台
17,18,21 サーボモータ
20 台本体
22 ボールネジ
23 支持装置
24 支持台座
25a,25b ガイド
30,40,130,140 ダイスセット
30h,40h 中央孔
30k,40k キー溝
31,41,131 セレーションダイス
35,45,135,235 レリービングダイス
35c 角部
32,42,132 セレーション溝部
36,46,136,236 レリービング溝部
36a,36b 頂点
36c 谷底線
50,150 転造品
50B,150B ブランク材
50C,150C 転造面
50D,150D 歯形成面
50F,150F,250F 逃げ部形成面
52,152 歯
53,153,253 逃げ部
231,232 センタ
E 周方向
G 中心軸
K,J 回転軸
L 歯すじ方向
M 溝幅
S ベッド
W 歯幅