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特開2024-150860木質材利用カーテンウォール外壁素材、木質材利用カーテンウォール構造、木質材利用カーテンウォール外壁素材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150860
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】木質材利用カーテンウォール外壁素材、木質材利用カーテンウォール構造、木質材利用カーテンウォール外壁素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/92 20060101AFI20241017BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20241017BHJP
   E04C 2/288 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
E04B2/92
E04C2/26 Z
E04C2/288
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063871
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(71)【出願人】
【識別番号】592095631
【氏名又は名称】高橋カーテンウォール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 勝英
(72)【発明者】
【氏名】染谷 朝幸
(72)【発明者】
【氏名】石崎 樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 秀文
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀憲
【テーマコード(参考)】
2E002
2E162
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NA04
2E002NB01
2E002NB06
2E002PA04
2E002PA08
2E002WA06
2E002WA19
2E002XA01
2E002XA03
2E162CA05
2E162CA11
2E162CA16
2E162CA21
2E162CC01
2E162CC02
(57)【要約】
【課題】木質材をカーテンウォールの外壁として利用し、環境負荷の低減を図ることができるほか、良好な難燃又は耐火性を示すものとする。
【解決手段】コンクリート層部10と、パネル状の木質材20と、コンクリート層部10と木質材20との間に介在された断熱性層30とを有し、コンクリート層部10と木質材20とが断熱性層30を貫通する連結材40により連結されているものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート層部と、
パネル状の木質材と、
前記コンクリート層部と木質材との間に介在された断熱性層とを有し、
前記コンクリート層部と前記木質材とが前記断熱性層を貫通する連結材により連結されている、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁素材。
【請求項2】
コンクリート層部と、
パネル状の木質材と、
前記コンクリート層部と前記木質部との間に介在された断熱性層とを有し、
前記コンクリート層部と前記木質材とが前記断熱性層を貫通する連結材により連結されており、
前記コンクリート層部にファスナー用スタッドが埋設され、前記スタッドに連結されたファスナーが、建築物の構造材に対して支承されている、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール構造。
【請求項3】
前記コンクリート層部は、外周囲部に張出し部を有し、前記張出し部で囲まれる領域内に前記木質材が設けられている請求項2記載の木質材利用カーテンウォール構造。
【請求項4】
前記コンクリート層部は、外周囲部に周囲張出し部を有し、前記周囲張出し部で囲まれる領域内にも中間張出し部を有し、
前記中間張出し部にファスナー用スタッドが埋設され、前記スタッドに連結されたファスナーが、建築物の構造材に対して支承されている、
請求項1記載の木質材利用カーテンウォール構造。
【請求項5】
前記断熱性層は、石膏ボード、珪酸カルシウム板及び木毛セメント板の群から選ばれた請求項1記載の木質材利用カーテンウォール構造。
【請求項6】
前記コンクリート層部の外面に化粧材が固定されている請求項1記載の木質材利用カーテンウォール構造。
【請求項7】
コンクリート層部と、
パネル状の木質材と、
前記コンクリート層部と前記木質材との間に介在された断熱性層とを有し、
前記コンクリート層部と前記木質材とが前記断熱性層を貫通する連結材により連結されている、木質材利用カーテンウォール外壁素材を製造する方法であって、
型枠内の上から前記型枠内に前記コンクリート層部を構成する材料を打設し、その後に前記断熱性層と前記木質材を順に上方に配置する、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁素材の製造方法。
【請求項8】
前記コンクリート層部にインサートを埋設し、このインサートと連結するボルトを前記断熱性層及び前記木質材を貫通させておき、後に前記木質材の外表面側において前記ボルトをナットで締結する、請求項1記載の木質材利用カーテンウォール外壁素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材利用カーテンウォール外壁素材、木質材利用カーテンウォール構造、及び木質材利用カーテンウォール外壁素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(高層)建築物の外壁には、カーテンウォール構造が汎用されている。
カーテンウォールは、建物自体の荷重を負担しない耐力壁以外の内部と外部の空間をカーテンのように仕切る壁であり、地震や台風などの外力に対して十分な耐力を持ち、上下階に変位が生じても、外壁が脱落、破損することなく追従する。カーテンウォールの素材又はユニットは工場で製造され、ファスナーと呼ばれる取付金物を用いて建物に取り付けられる。
【0003】
カーテンウォールの外壁としては、例えばガラスカーテンウォールと呼ばれる全面ガラス張りの外壁、ハニカムアルミパネル、チタンパネル、セラミックパネル、PCa(プレキャスト)カーテンウォールなどがある。
【0004】
これらは概して環境負荷が大きい材料である。
本発明者は、環境負荷の低減、天然材料の有効利用などの観点から、カーテンウォールの外壁に木質材を利用することに着眼した。
【0005】
他方、近年、木質材の利用について着目され、木質材そのもののほか、他の部材との複合材として利用することも指向されている。
例えば、強度を高めたCLTを利用することが指向されている、CLTとは、Cross Laminated Timberの略で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質材である。
【0006】
CLTについては種々の応用例が知られている。
本発明者は、CLTなどの木質材をカーテンウォールの外壁として利用することの先行技術として特許文献1を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-183726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術はCLT木質材の外面を被覆材で覆うという思想であり、「外面被覆部」として難燃又は耐火性のコンクリートを使用しようとするものである。
【0009】
しかし、先行技術では難燃又は耐火性の点で十分ではなく、また、「外面被覆部」と木質材と一体性も十分でない。
さらに、カーテンウォール外壁においては、室外側外面に高い意匠性が求められることが多いものの、コンクリート面を均一に作ることが難しく、この観点からの追求に余地があることが判った。
【0010】
したがって、本発明の主たる課題は、CLTなどの木質材をカーテンウォールの外壁として利用し、環境負荷の低減を図ることができるほか、良好な難燃又は耐火性を示す、木質材利用カーテンウォール外壁素材構造、木質材利用カーテンウォール外壁構造、木質材利用カーテンウォール外壁構築工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する手段として、以下の態様を含む。
<第1の態様>
コンクリート層部と、
パネル状の木質材と、
前記コンクリート層部と木質材との間に介在された断熱性層とを有し、
前記コンクリート層部と前記木質材とが前記断熱性層を貫通する連結材により連結されている、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁素材。
【0012】
<第2の態様>
コンクリート層部と、
パネル状の木質材と、
前記コンクリート層部と前記木質部との間に介在された断熱性層とを有し、
前記コンクリート層部と前記木質材とが前記断熱性層を貫通する連結材により連結されており、
前記コンクリート層部にファスナー用スタッドが埋設され、前記スタッドに連結されたファスナーが、建築物の構造材に対して支承されている、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール構造。
【0013】
<第3の態様>
コンクリート層部と、
パネル状の木質材と、
前記コンクリート層部と前記木質材との間に介在された断熱性層とを有し、
前記コンクリート層部と前記木質材とが前記断熱性層を貫通する連結材により連結されている、木質材利用カーテンウォール外壁素材を製造する方法であって、
型枠内の上から前記型枠内に前記コンクリート層部を構成する材料を打設し、その後に前記断熱性層と前記木質材を順に上方に配置する、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁素材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CLTなどの木質材をカーテンウォールの外壁として利用し、環境負荷の低減を図ることができるほか、良好な難燃又は耐火性を示すものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】カーテンウォール構造材の一例を示す室外側からの部分破断斜視図である。
図2】2―2線矢視断面図である。
図3】3―3線矢視断面図である。
図4】4―4線矢視断面図である。
図5】連結材例の説明図である。
図6】カーテンウォール構造材の他の例を示す室外側からの部分破断斜視図である。
図7】7―7線矢視断面図である。
図8】8―8線矢視断面図である。
図9】カーテンウォール外壁素材の製造方法を説明するための、図4に相当する断面図である。
図10】試験体Xについての加熱炉内の温度のグラフである。
図11】試験体Xについてのコンクリート層側の内部面の温度のグラフである。
図12】試験体XについてのCLT側の内部面の温度のグラフである。
図13】試験体YについてのCLTの内部温度のグラフである。
図14】カーテンウォール外壁素材の他の例を示す断面図である。
図15】カーテンウォール外壁素材のさらに別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
(木質材利用カーテンウォール外壁素材)
図1図5は、外壁素材の例を示したものである。ただし、カーテンウォール構造として、建築物の構造材に対してカーテンウォール外壁素材を支承するためのファスナーなども図示してある。
【0017】
実施の形態のカーテンウォール外壁素材は、コンクリート層部10と、パネル状の木質材20と、コンクリート層部10と木質材20との間に介在された断熱性層30とを有し、コンクリート層部10と木質材20とが断熱性層30を貫通する連結材40により連結されているものである。
【0018】
コンクリート層部10は、コンクリート材料を打設してパネル状にしたものとして得ることができる。必要により、コンクリート層部10内に補強鉄筋、補強繊維材料などを混入してもよい。
繊維補強コンクリートの繊維としては、ガラス繊維(GRC)、炭素繊維(CFRC)、ポリプロピレン樹脂繊維、鋼繊維(SFRC)、ステンレス繊維などを挙げることができる。
【0019】
コンクリート層部10は、全体が平面状のほか、他の形態として図示例のように、外周囲部に張出し部11を有し、張出し部11で囲まれる領域内に木質材20を設けることができる。
外周囲部に張出し部11を形成すると、外周囲部の強度向上とともに、止水性能を発揮する止水材の取り付けを可能となる。また、張出し部11は木質材20の荷重の支承部ともなるとともに、木質材20端面からの雨水の浸入防止効果も発揮する。
【0020】
他方、コンクリート層部10には、ある形態として図示例のように、高さ方向中間に中間張出し部12を形成することができる。
また、図示していないが、コンクリート層部10の幅方向中間に幅方向中間張出し部を設けてもよい。
高さ方向中間張出し部12は、ファスナー用スタッド50の埋設部分として利用でき、スタッド50と連結されたファスナー52が、図示していない建築物の構造材に対して、例えばブラケット(図示せず)を介して支承させることができる。
【0021】
この種の、中間張出し部12などを設けた例においては、張出し部11と中間張出し部12とで囲まれる領域に木質材20が設けられる。
【0022】
木質材20としては、繊維方向が直交するように積層接着したパネル状の(CLT)木質材を使用するのが、強度や耐曲げ性などの点で最適であるが、単板などの他の木質材も使用可能である。
木質材は、木材又は集成材からなる板状部材により形成できる。集成材としては、複数の平面視略長方形状のひき板(ラミナ)が、長辺を互いに接触接合されてなる配向板が含まれる。木質材のラミナ積層は3枚以上9枚以下であることが好ましい。2枚以下では、十分な強度が得られず、10枚以上では、嵩張り過ぎ取り扱いが困難となる傾向がある。
単位ラミナの厚さが1cm以上3.6cm以下であることが好ましい。1cm未満では、十分な強度が得られず、3.6cm超では、嵩張り過ぎて取り扱いが困難となることがある。
木質材20として、必要により、難燃性薬剤を注入した木材を使用して耐火性をより高めることができる。
【0023】
実施の形態では、コンクリート層部10、木質材20、断熱性層30を四角形で形成した例であるが、他の矩形、円形、楕円形、曲線形などの形状を排除するものではない。
【0024】
木質材20の表面(コンクリート層部10と接する室外側面、張出し部11と接する端面、必要ならば室外側面も含めた面を防水処理により防水処理部を形成してもよい。
【0025】
本発明の実施の形態においては、コンクリート層部10と木質材20との間に介在された断熱性層30を有する。
断熱性層30を形成する材料としては、石膏ボード、珪酸カルシウム板及び木毛セメント板のなどから選ばれた一種又は複合材を使用できる。複合材の例としては、これらの材料の板を積層した状態で使用する例を挙げることができる。
断熱性層30は、準耐火材又は不燃材と称呼されるものが好ましい。難燃又は耐火性材料としては、建築基準法施行令第107条に適合するものが望ましい。
【0026】
コンクリートには耐火性及び止水性がある反面、重量があり、その製造時の排出炭素量が多いため、コンクリート層部10は可能なかぎり層厚を薄くして、準耐火材を使用して、所定の耐火性能を発揮させることが好ましい。
【0027】
断熱性層30を形成する材料として特に好適なものは、安価であり、環境保護の観点から炭素貯蔵ができる木材を利用した木毛セメント板である。
木毛セメント板は、主に間伐材・未利用材及び製材残材等をリボン状に削り出した木毛をセメントと混練し圧縮・成型した建築用のボードである。
その品質は昭和初期に臨時日本標準規格が制定され、今日のJIS規格の基になっている。
昭和20年代には、建設省建築基準法施行令に準不燃材料の代表として例示され、防耐火構造にも多く告示化されている。
木毛セメント板の性能は多岐にわたり、防火、断熱、吸音、遮音、調湿などの性能があり、JIS規格は性能と品質を明確にし、適切な部位に適用されるための指針に沿って、普通木毛セメント板、中質木毛セメント板、硬質木毛セメント板の3種類に分類されている。
この種の特性やJIS規格などは、一般社団法人全国木質セメント板工業会発行の「木質セメント板ガイドブック」(2011年3月)に詳細が記載される。
木毛セメント板には、優れた調湿機能があり、八畳間の天井と壁に木毛セメント板を使用したと仮定すると、10日間で約24リットルの水分を吸収し、室内が乾燥するとその水分を放出することにより自動的に調湿を行い、快適な空間を作ることができるというものである。
石膏ボード、珪酸カルシウム板についても、種々のものを使用できる。例えば強化石膏ボードも有用である。
【0028】
ちなみに、コンクリートの比重は2.4~2.0程度であるのに対し、木毛セメント板の比重は0.5~0.6程度、石膏ボード板は約0.7、珪酸カルシウム板は約0.8である。
【0029】
コンクリート層部10は耐火性を発揮する。しかし、例えばコンクリート層部10及び木質材20のみのパネル構成により、十分な耐火性又は不燃性を担保しようとすると、高層建築の外壁として例えば約15~25cmの厚みが必要となる。
上記例示の断熱性層30は、コンクリート層部と比較すると約1/2.5~1/5程度の比重を示し軽いものである。
コンクリート層部10と木質材20との間に断熱性層30を設けると、耐火性又は不燃性を高める。
【0030】
しかるに、断熱性層30の介在によって耐火性又は不燃性を高める機能を発揮することは、コンクリート層部10の厚みを減らすことが可能であることを意味し、しかも、コンクリート層部10の厚みを減らし、断熱性層30の厚みとの合計で、例えば約9.5cmとした場合、コンクリート層部10と断熱性層30との合計重量は、比重の関係で圧倒的な減量となる。
例えば層の厚みは次の範囲が好適である。
コンクリート層部10の厚み:8cm~10cm
断熱性層30の厚み:1.0cm~2.5cm
コンクリート層部10の厚みが減ることになれば、外壁の荷重の減少になり、カーテンウォール構造としての大幅な設計荷重の減少に繋がる。
【0031】
木毛セメント板については、耐火性又は不燃性を高める機能のほか、既述の高い調湿機能を有することに着目される。この調湿機能は、後に説明するカーテンウォール外壁素材の製造方法の一例において特に顕著な機能を発揮する。
【0032】
コンクリート層部10と木質材20との間に断熱性層30を介在させ、断熱性層30を貫通する連結材40により連結する。
すなわち、薄いコンクリート層部10だけでは対風性能を確保できにくい可能性があるところ、連結構造とすることにより対風性能が高まる。
【0033】
連結材40及び連結構造に限定されないが、その例としては、コンクリート層部10内に埋設したインサート41に、ボルト42を螺入し、コンクリート層部10に固定するための第1ナット43と、木質材20の室内側面を固定する第2ナット44により連結する例を挙げることができる。
ボルト42の外周と木質材20の挿通孔との間隙は無収縮モルタル(図示せず)で充填しておくのが好ましく、これによればガタがなく、連結により耐久性が高まる。モルタルに代えて無機系のグラウト材などでもよい。
【0034】
45は空気抜け孔であり、コンクリート層部10を打設により行った場合において、火災時に浸出する可能性のあるコンクリート材料の水分、蒸気を外部に逃がすためのものである。
なお、コンクリート層部10の四周の隙間を十分確保などすれば、水分、蒸気を外部に逃がすことができるならば、空気抜け孔45は不要である。
【0035】
(実施形態2)
(カーテンウォール構造)
実施の形態のカーテンウォール構造は、コンクリート層部10と、パネル状の木質材20と、コンクリート層部10と木質材20との間に介在された断熱性層30とを有し、コンクリート層部10と木質材20とが断熱性層30を貫通する連結材40により連結されているカーテンウォール外壁素材を含む。
このカーテンウォール外壁素材のコンクリート層部10にファスナー用スタッドが埋設され、スタッドに連結されたファスナーが、建築物の構造材に対して支承されているものである。
このようにすることにより、建物内部での火炎で木質材20が燃えたとしてもコンクリート層部10は支持されているために脱落する可能性を排除できる。
【0036】
実施の形態では、張出し部11、幅方向の中間張出し部、あるいは高さ方向の中間張出し部12に、ファスナー用スタッド50が埋設されており、このスタッド50にファスナー52が例えば溶接により固定され、ファスナー52が、図示していない建築物の構造材に対して、例えば支承ブラケット(図示せず)を介して支承させることができるものである。
例えばファスナー52は、(高層)建築物の躯体側に設けた、例えば鉄骨梁や柱に固定したカーテンウォールの支承ブラケットに係止、溶接、ボルト連結などにより連結され、カーテンウォール外壁が構築される。
ファスナー52の数は、外壁構造の大きさなどに応じて適宜、その数を決定すればよい。
【0037】
上記例のカーテンウォール外壁素材は、隣接して配置されてある広がりの外壁を構成するので、隣接側面には止水ゴムによるシール材60を予め連結させておくことができる。雨水の浸入や、火災時における外から放水に対して、外壁構造材より内方の材料への防護を図ることができる。
【0038】
(実施形態3)
(カーテンウォール外壁素材の製造方法)
実施の形態のカーテンウォール外壁素材の製造方法は、コンクリート層部10と、パネル状の木質材20と、コンクリート層部10と木質材20との間に介在された断熱性層30とを有し、コンクリート層部10と木質材20とが断熱性層30を貫通する連結材40により連結されているカーテンウォール外壁素材を含む。
このカーテンウォール外壁素材に製造に指しては、図9に例示として示すように、型枠70内の上から型枠70内にコンクリート層部10を構成する材料を打設し、コンクリート層部10が硬化した後に断熱性層30と木質材20を順に上方に配置して製造するものである。
【0039】
この場合において、連結材40、スタッド50、ファスナー52、シール材60の配置は適宜の時点で行うことができる。
【0040】
このような製造方法を採用すれば、張出し部11、張出し部12の形成、スタッド50の埋設が容易になる。
さらに特徴的なのは、型枠70の内面を平滑や、場合により意匠的な凹凸を形成することにより、コンクリート層部(カーテンウォール外壁)10の外面を目的の意匠を確実に得ることができることである。
【0041】
断熱性層30として木毛セメント板を使用すると、外壁側の火炎でコンクリート層部10が熱せられても、その熱が木毛セメント板の空隙を介してゆっくり木質材20に伝搬するので、木質材20の温度上昇を抑制できる。この意味で木毛セメント板の使用が有効であることが分かり、その効果は石膏ボードまたは珪酸カルシウム板より高いことも当然に予想できる。
【0042】
(実施形態4)
(カーテンウォール外壁素材の他の例)
カーテンウォール外壁素材の外面には適宜の化粧材80を固定することができる。
この化粧材80として、例えば木質系の化粧材を使用することができ、外部から木質を把握でき、外壁としての美観性を向上させることができるとともに、環境負荷の少ない材料を使用している建築物であることを強調できる。
【0043】
(実施形態5)
(カーテンウォール外壁素材の他の例)
張出し部を形成することなく、例えば図14に示すように、平面状のコンクリート層部10であってもよいことは前述のとおりである。
【0044】
(実施形態6)
(カーテンウォール外壁素材の他の例)
さらに、例えば図15に示すように、平面状のコンクリート層部10Aの外周部に段部を設けて、段部で囲まれる領域に断熱性層30を設け、コンクリート層部10Aと木質材20とで外壁素材の外周面を形成した態様であってもよい。平面状のコンクリート層部10Aの外周面には必要によりシール材60を設けることができる。
【0045】
上記実施の形態5及び6の場合においても、化粧材を設けることができる。
【0046】
実験例を示す。
(第1の実験)
80mm厚のコンクリート層部と15mmの木毛セメント板の断熱性層と、90mmのCLTからなる木質材とかならなる、全厚185mmの層構造を有する1200mm×1200mmサイズの試験体Xについて、加熱炉内に装入し、図10の加熱パターンで加熱した。
試験体については、予め、RC面側及びCLT側の木質材内部のそれぞれに、ほぼ等間隔で(すなわち四隅部及び中心部に)符号1~5の熱電対、及び符号6~10の熱電対を装着して温度の経時変化を調べた。
【0047】
その結果、図11及び図12に示すように、RC面の温度上昇は、加熱炉内温度の低下開始後も上昇する。
しかし、CLTからなる木質材面の温度は、加熱炉内温度の低下開始時(約60分経時)以前の約30分経時から90分経時までの期間において、約100℃の温度を維持し、90分経時後において穏やかな温度上昇を示すことが判った。
これは、木毛セメント板の断熱性層がコンクリート層部からの水分蒸気を保持しながら断熱を図っていることが理由であろうと推測される。
【0048】
(第2の実験)
比較として、80mm厚のコンクリート層部と、90mmのCLTからなる木質材とを有し、これらの間に15mmの間隙を確保したうえで、複数の個所で連結ボルトによりコンクリート層部と木質材とを連結した全厚185mmの層構造を有する1200mm×1200mmサイズの(断熱性層を有しない)試験体Yについて、加熱炉内に装入し、ほぼ図10の加熱パターンと同様なパターンで加熱した。
結果として、試験体YのCLT側の木質材内部における四隅部及び中心部に設置した熱電対1~5点における、CLTからなる木質材の内部温度は図13に示すように、加熱経時に伴って温度上昇を続け、約100分経時には一部の個所では約260℃を超える温度に上昇し、また、試験体Xのような温度(変化)挙動は示さなかった。なお、約260℃は、一般的なCLTからなる木質材の発火温度である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の木質材利用カーテンウォール外壁は、軽く、取り扱いやすいという木質材の特性を生かしつつ、十分な強度、耐火性を有するものなので、木質系の(高層)建築物の構造材(木質材利用の(耐火性)カーテンウォール)として活用が期待できる。
【符号の説明】
【0050】
10…コンクリート層部、20…木質材、30…断熱性層、40…連結材、50…スタッド、52…ファスナー、60…シール材、70…型枠。
図1
図2
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