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特開2024-150906プラント監視システム及びプラント監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150906
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】プラント監視システム及びプラント監視方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/042 20060101AFI20241017BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241017BHJP
   G05B 9/03 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G05B19/042
G05B23/02 Z
G05B9/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063940
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 一真
【テーマコード(参考)】
3C223
5H209
5H220
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA02
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223GG01
3C223HH02
5H209AA02
5H209DD20
5H209GG20
5H209HH13
5H209SS01
5H220AA02
5H220BB09
5H220CC06
5H220CX01
5H220FF01
5H220HH08
5H220JJ12
5H220JJ16
5H220JJ28
5H220JJ51
(57)【要約】
【課題】処理負荷を分散することができるプラント監視システムを提供する。
【解決手段】プラント監視システム2は、プラントデータを収集してプラントを監視するための複数の機能を行う計算機サーバーと、プラントに対する監視及び操作を行い、複数の機能を実行可能であり、複数の機能が予め主系機能と従系機能とに分類され、割り当てられた他装置と異なる主系機能を実行する複数の端末装置と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントデータを収集してプラントを監視するための複数の機能を行う計算機サーバーと、
前記プラントに対する監視及び操作を行い、複数の前記機能を実行可能であり、複数の前記機能が予め主系機能と従系機能とに分類され、割り当てられた他装置と異なる前記主系機能を実行する複数の端末装置と、を備える
プラント監視システム。
【請求項2】
前記機能を前記主系機能として実行する前記端末装置は、当該機能の主系端末装置であり、前記主系端末装置以外の前記端末装置は、当該機能の従系端末装置である
請求項1に記載のプラント監視システム。
【請求項3】
前記機能が異常状態になった場合、当該機能の前記従系端末装置は、複数の前記端末装置の処理負荷に基づいて、当該機能の前記主系端末装置に切り替えるか否かを判断する
請求項2に記載のプラント監視システム。
【請求項4】
前記従系端末装置は、自装置の前記処理負荷が、複数の前記端末装置の中最も小さいであると判定した場合、前記異常状態になった前記機能の前記主系端末装置に切り替える
請求項3に記載のプラント監視システム。
【請求項5】
前記処理負荷は、前記端末装置の前記主系機能の総合処理負荷を示す情報である
請求項4に記載のプラント監視システム。
【請求項6】
複数の前記端末装置は、互いに通信できるように接続され、前記機能の前記従系端末装置は、自装置の記憶データを、所定周期で当該機能の前記主系端末装置の記憶データと一致化する
請求項5に記載のプラント監視システム。
【請求項7】
プラントデータを収集してプラントを監視するための複数の機能を行う計算機サーバーと、前記プラントに対する監視及び操作を行う複数の端末装置とを備えるプラント監視システムの前記端末装置におけるプラント監視方法であって、
複数の前記機能を実行可能であり、複数の前記機能が予め主系機能と従系機能とに分類され、割り当てられた他装置と異なる前記主系機能を実行する
プラント監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント監視システム及びプラント監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント監視システムは、主に発電所内の中央操作室等に設置され、発電プラントの運転管理、監視、自動化、及び性能計算等を目的に活用される。また、プラント監視システムは、HMI(Human Machine Interface)、計算機サーバー、PI/O(Programmed I/O)等で構成される。HMIは、運転員がプラントの監視制御を行うための画面を表示する端末装置である。計算機サーバーは、プラントから各種情報データ(以下では、「プラントデータ」と称する)を入力し、プラントの運行状況を監視するための各種計算処理を行う。PI/Oは、プラントとの間の各種データの入出力処理を行う。
【0003】
一般的には、プラントの運行状況を監視するための各種機能(各種計算処理)は、プラントデータを用いて、計算機サーバーに集中されて実行される。計算機サーバーでの処理結果は、HMIに送られ、運転員は、HMIの表示装置に表示されるプラントの監視制御を行うための画面を介して、プラントの監視及び運転管理を実施する。従来のプラント監視システムでは、計算機サーバーは、主系サーバー及び従系サーバーに分けて運用される。このようなプラント監視システムは、いわゆる、二重化プラント監視システムである。二重化プラント監視システムでは、通常、主系サーバーが各種機能を実行する。主系サーバーが故障になった際、従系サーバーが瞬時に主系に切り替わって各種機能を実行する。
【0004】
また、HMIに計算機サーバーと同じ機能を持たせる多重化プラント監視システム、例えば、特許文献1に記載のプラント管理システムも知られている。多重化プラント監視システムは、一つの主系HMIと、複数の従系HMIとを有する。プラントを監視する各種機能は、主系HMIにより実行される。主系HMIの異常時に、予め決められた優先度に従い、優先度の最も高い従系HMIが主系に切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-34307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来、多重化プラント監視システムにおいて、主系HMIが異常になったとき、優先度の最も高い従系HMIが主系に切り替わる。しかし、このような多重化プラント監視システムでは、主系HMIには、各種機能が集中され、主系HMIのCPU(Central Processing Unit)負荷が高くなるため、システムの処理遅延が発生する可能性も高くなる。ところで、発電プラントは、世界規模環境の配慮要請等により、更なる高効率が求められている。したがって、複雑な処理を高効率に実行するプラント監視システムも求められている。そこで、主系HMIに集中される機能を分散することができるプラント監視システムが望ましい。
【0007】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、処理負荷を分散することができるプラント監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラント監視システムは、プラントデータを収集してプラントを監視するための複数の機能を行う計算機サーバーと、プラントに対する監視及び操作を行い、複数の機能を実行可能であり、複数の機能が予め主系機能と従系機能とに分類され、割り当てられた他装置と異なる主系機能を実行する複数の端末装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明によれば、処理負荷を分散することができるプラント監視システムを提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムの各HMIのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムの各HMIの状態遷移を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムにおける従系HMIの記憶データと主系HMIの記憶データとの一致化を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムの各HMIにおける機能の死活監視を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムにおける機能の主系HMIの切り替えを説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係るプラント監視システムの各HMIにおけるプラント監視処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
<一実施形態>
[プラント監視システムの構成例]
まず、本実施形態に係るプラント監視システムの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプラント監視システム2の構成例を示すブロック図である。プラント監視システム2は、多重化プラント監視システムであり、プラントの運行に関する各種データであるプラントデータを収集してプラントを監視するための複数の機能を行う、不図示の計算機サーバーを備える。また、プラント監視システム2は、図1に示す、複数のHMI21と、複数のHMI21のそれぞれに接続される複数の表示装置22と、複数の表示装置22のそれぞれに接続される複数の入力装置23とを備える。また、プラント監視システム2は、プラントの複数の主機及び補機24と、複数の主機及び補機24のそれぞれを制御する複数の制御装置25とを備える。複数のHMI21及び複数の制御装置25は、ネットワーク26を介して、互いに情報データの送受信ができるように接続する。ネットワーク26は、専用回線等の閉回路網、又は、インターネット等の公衆回線等で構成される。
【0013】
各HMI21、例えば、図1に示すHMI-1、HMI-2~HMI-nは、プラント(主機及び補機24)に対する監視及び操作を行い、計算機サーバーの複数の機能を実行可能な端末装置である。各HMI21において、複数の機能(機能-1~機能-x)が予め主系機能と従系機能とに分類されており、すなわち、各HMI21には、図に示すように、主系機能と従系機能とが割り当てられる。また、各HMI21には他装置と異なる主系機能が割り当てられ、各HMI21は、割り当てられた主系機能のみを実行する。
【0014】
また、各HMI21において、主系機能及び従系機能は、それぞれ複数に存在することが可能である。例えば、HMI-1には、主系機能として機能-1及び機能-2が存在し、従系機能として機能-3及び機能-4が存在する。
【0015】
また、ある機能を主系機能として実行するHMI21は、当該機能の主系HMI(主系端末装置)であり、主系HMI(主系端末装置)以外のHMI(端末装置)は、当該機能の従系HMI(従系端末装置)である。各機能は、1つの主系HMIのみを有する。例えば、機能-1の主系HMIは、HMI-1のみである。このため、機能-1は、HMI-1以外のHMI21、例えば、HMI-2及びHMI-xでは、従系機能である。
【0016】
表示装置22は、プラントに対する監視及び操作を行うための監視及び操作画面等を表示する装置である。入力装置23は、運転員が表示装置22に表示される監視及び操作画面等に操作内容を入力する際に使用する装置である。なお、入力装置23は、運転員により入力された操作内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を後述の図2に示すCPU21aに供給する。また、表示装置22は、後述のCPU21aから供給される表示信号に基づいて、プラントの監視及び操作画面を表示する。また、表示装置22は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-luminescence)ディスプレイなどの表示デバイス等で構成される。入力装置23は、キーボード、マウス、タッチセンサー等で構成される。また、表示装置22及び入力装置23は、例えばタッチパネルとして一体に形成されてもよい。
【0017】
なお、本実施形態では、表示装置22及び入力装置23を、HMI21の外部に設置される例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、表示装置22及び入力装置23は、HMI21の内部に含まれてもよい。
【0018】
複数の主機及び補機24は、ボイラ、タービン、発電機等の主要機器、及び、プラントを効率よく、安定に運転させるために設置される熱交換器、過熱器等の補機である。
【0019】
複数の制御装置25、例えば、制御装置-1~制御装置-mは、情報処理装置等で構成され、それぞれ、複数の主機及び補機24の動作を制御する。また、制御装置25は、主機及び補機24からプラントデータを取得してHMI21に送信する。なお、プラントデータは、主機及び補機24によりHMI21に送信されてもよい。この場合、主機及び補機24は、例えば、ネットワーク26に接続され、HMI21と情報データの送受信ができるように接続される必要がある。また、各制御装置25は、制御対象となる主機及び補機24に応じて異なる制御機能を有する。ここで、各制御装置25の制御機能の詳細説明を省略する。
【0020】
[HMIのハードウェア構成]
次に、プラント監視システム2のHMI21のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態に係るプラント監視システム2の各HMI21のハードウェア構成例を示すブロック図である。HMI21は、図2に示すように、CPU21aと、ROM(Read Only Memory)21bと、RAM(Random Access Memory)21cと、記憶装置21dと、通信インターフェース21eとを備える。CPU21a、ROM21b、RAM21c、記憶装置21d及び通信インターフェース21eは、バス21fにより、互いに情報データの送受信ができるように接続される。
【0021】
CPU21aは、HMI21の各機能を実行する。また、CPU21aは、後述の図7に示プラント監視処理を制御する。なお、CPU21aに代えてGPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよく、CPU21aとGPU(Graphics Processing Unit)を併用してもよい。
【0022】
ROM21bは、例えば不揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、CPU21aが実行及び参照するプログラムやデータ等を記憶する。
【0023】
RAM21cは、例えば揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、CPU21aが行う各処理に必要な情報(データ)を一時的に記憶する。
【0024】
記憶装置21dは、CPU21aによって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体で構成され、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置で構成される。記憶装置21dは、CPU21aが各部を制御するためのプログラム、OS(Operating System)、コントローラー等のプログラム、データを記憶する。また、記憶装置21dは、後述の処理用ストレージ31及び一致化用ストレージ32(図4参照)を含んでもよい。なお、記憶装置21dに記憶されるプログラム、データの一部は、ROM21bに記憶されてもよい。また、CPU21aによって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体は、HDDに限定されず、例えば、SSD(Solid State Drive)、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0025】
通信インターフェース21eは、NIC(Network Interface Card)やモデム等で構成され、CPU21aの制御により、表示装置22、入力装置23、及び制御装置25との情報データの送受信を行う。
【0026】
[HMIの状態遷移]
次に、プラント監視システム2のHMI21の状態遷移について説明する。図3は、本実施形態に係るプラント監視システム2のHMI21の状態遷移を示す図である。HMI21の初期状態は、HMI21が起動する前の状態、すなわち、電源が入れていない「HMI停止」の状態ST10である。HMI21が起動した後、「HMI停止」の状態ST10は、各機能が起動される前の「機能停止」の状態ST11に遷移する。
【0027】
以下に説明する状態遷移、すなわち、図3において一点鎖線により囲まれる状態遷移は、HMI21の各機能に対応して同様であり、機能ごとの状態遷移である。HMI21の各機能が起動すると、「機能停止」の状態ST11は、機能を実行させるためのプラントデータ取得処理等の前準備処理が行われる「イニシャルモード」の状態ST12に遷移する。状態ST12は、機能を実行させるための前準備処理が完了するまで、自身に自動遷移して、イニシャルモードが継続する。なお、状態ST12において、機能を実行させるための前準備処理が失敗した場合、機能が起動されないため、状態ST12は、「機能停止」の状態ST11に遷移する。また、状態ST12において、HMI21の電源が切れた場合、状態ST12は、「HMI停止」の状態ST10に遷移する。
【0028】
一方、機能を実行させるための前準備処理が成功で完了し、起動される機能が主系機能である場合、状態ST12は、主系機能に対応する「主系」の状態ST13に自動遷移する。主系機能が異常状態になった場合、状態ST13は、「機能停止」の状態ST11に遷移する。また、状態ST13において、HMI21の電源が切れた場合、状態ST13は、「HMI停止」の状態ST10に遷移する。また、例えば、運転員が表示装置22及び入力装置23を介して主系機能を従系機能に変更する(系切替)操作を行った場合、状態ST13は、従系機能に対応する「従系」の状態ST14に遷移する。
【0029】
また、機能を実行させるための前準備処理が成功で完了し、起動される機能が従系機能である場合、状態ST12は、従系機能に対応する「従系」の状態ST14に自動遷移する。なお、HMI21は主系機能のみを実行するので、従系機能は実行されず、従系機能に対応する「従系」の状態ST14は待機状態となる。このため、状態ST14は、「機能停止」の状態ST11に遷移しない。また、状態ST14において、HMI21の電源が切れた場合、状態ST14は、「HMI停止」の状態ST10に遷移する。また、例えば、運転員が表示装置22及び入力装置23を介して従系機能を主系機能に変更する(系切替)操作を行った場合、状態ST14は、主系機能に対応する「主系」の状態ST13に遷移する。また、従系機能が、他のHMIの主系機能であり、他のHMIにおいて異常状態になったことにより、自体のHMIが当該従系機能の主系HMIに切り替わる場合、当該従系機能に対応する状態ST14は、主系機能に対応する「主系」の状態ST13に自動遷移する。
【0030】
次に、プラント監視システム2における従系HMIの記憶データと主系HMIの記憶データとの一致化について説明する。図4は、本実施形態に係るプラント監視システム2における従系HMIの記憶データと主系HMIの記憶データとの一致化を説明するための図である。図4には、ある機能の主系HMI及び複数の従系HMIが示されている。図4に示すように、主系HMI及び複数の従系HMIは、それぞれ、処理用ストレージ31及び一致化用ストレージ32を有する。
【0031】
処理用ストレージ31は、各主機及び補器24から取得されたプラントデータ、HMI21の各機能に関するデータ(処理結果及び実行履歴データ等)を記憶する。また、処理用ストレージ31は、後述のプラント監視処理で利用される、カウンタデータ40(図5参照)、機能管理テーブル51及び重み値管理テーブル52(図6参照)を記憶する。以下では、処理用ストレージ31の記憶データを、「HMI(端末装置)の記憶データ」とも称する。処理用ストレージ31は、例えば、図2に示す記憶装置21dで構成されてもよいし、専用の記憶装置であってもよい。各HMI21では、一致化用ストレージ32は、所定周期で(例えば0.5秒毎に)処理用ストレージ31と一致化される。このため、一致化用ストレージ32の記憶データは、処理用ストレージ31の記憶データと同じである。また、一致化用ストレージ32は、例えば、図2に示す記憶装置21dで構成されてもよいし、専用の記憶装置であってもよい。
【0032】
また、主系HMIにおいて、一致化用ストレージ32が処理用ストレージ31と一致化された後、一致化用ストレージ32の記憶データが、所定周期で(例えば0.5秒毎に)従系HMIの処理用ストレージ31に送信される。そして、従系HMIの処理用ストレージ31が、主系HMIの一致化用ストレージ32と一致化される。すなわち、各機能の従系HMIは、自装置の記憶データを、所定周期で当該機能の主系HMIの記憶データと一致化する。
【0033】
なお、従系HMIの処理用ストレージ31と主系HMIの一致化用ストレージ32との一致化の周期は、各HMI内部の処理用ストレージ31と一致化用ストレージ32との一致化の周期と同様に設定されてもよいし、各HMI内部の一致化の周期より長い他の周期に設定されてもよい。
【0034】
また、上述した記憶データとの一致化により、ある機能の従系HMIが主系HMIに切り換わった場合、新しい主系HMIは、元の主系HMIと同じデータを用いて同じ機能(上記ある機能)を実行するので、同じ処理結果を出力する。なお、各機能の処理結果は、当該機能を実行する主系HMIのみにより出力され、従系HMIからは出力されない。
【0035】
次に、プラント監視システム2の各HMI21における機能の死活監視について説明する。図5は、本実施形態に係るプラント監視システム2の各HMI21における機能の死活監視を説明するための図である。図5に示すカウンタデータ40は、各HMI21において、機能の死活監視を行うために設けられ、機能の実行状態に関する情報である。カウンタデータ40は、処理用ストレージ31と一致化用ストレージ32と別に設けられたストレージに記憶される。以下では、カウンタデータ40を記憶するストレージを「転写メモリ」と称する。なお、転写メモリは、記憶装置22dに含まれてもよいし、専用の記憶装置に含まれてもよい。また、転写メモリは、従系HMIの記憶データと主系HMIの記憶データとの一致化において、所定周期で一致化される。
【0036】
カウンタデータ40は、HMI21の機能ごとのカウンタ値である「機能-1」、「機能-2」~「機能-x」を有する。図5(a)には、カウンタデータ40の初期データが示されている。「機能-1」、「機能-2」~「機能-x」の初期データは、「0」である。
【0037】
図5(b)には、1秒後のカウンタデータ40が示されている。各HMI21は、自装置の各機能の実行状態を確認し、正常運行の状態であれば、カウンタデータ40における当該機能のカウンタ値に「1」を加算する。例えば、図5(b)に示す「機能-1」及び「機能-2」は、「1」に更新された。また、各HMI21は、自装置の各機能の実行状態を確認し、異常状態であれば、カウンタデータ40における当該機能のカウンタ値を更新しない。例えば、図5(b)に示す「機能-x」は、更新されず、図5(a)に示す「機能-x」のカウンタ値(「0」)と同じである。
【0038】
また、各HMI21は、さらに1秒後(初期状態から2秒後)に、自装置の各機能の実行状態を確認してカウンタデータ40を更新する。図5(c)には、さらに1秒後のカウンタデータ40が示されている。図5(c)に示すように、「機能-1」及び「機能-2」は、「2」に更新され、「機能-x」のカウンタ値は更新されず、「0」である。
【0039】
ここで、各HMI21は、1秒毎にカウンタデータ40を更新し、2秒毎にカウンタデータ40を確認することを想定する。このため、さらに2秒後に、各HMI21は、カウンタデータ40を再度確認する。図5(d)には、さらに2秒後(初期状態から4秒後)のカウンタデータ40が示されている。図5(d)に示すように、「機能-1」及び「機能-2」は、「4」に更新され、「機能-x」のカウンタ値は更新されず、「0」である。各HMI21は、「機能-x」のカウンタ値が所定の時間(4秒)で更新されていないことを確認すること、すなわち、連続2回で更新されていないことを確認するにより、機能-xが異常状態になったことを検出する。
【0040】
なお、上記説明では、HMI21が1秒毎にカウンタデータ40を更新し、2秒毎にカウンタデータ40を確認し、4秒毎に(連続2回確認で)各機能の異常状態を検出する動作例を説明したが、本発明はこれに限定されない。HMI21がカウンタデータ40を更新する周期は、主系HMIの記憶データと従系HMIの記憶データとの一致化の所定周期より長ければ、適当に任意の周期に設定されてもよい。また、HMI21がカウンタデータ40を確認する周期は、カウンタデータ40を更新する周期より長ければ、適当に任意の周期に設定されてもよい。また、HMI21が各機能の異常状態を検出する周期は、カウンタデータ40を確認する周期と同じに設定されてもよいし、カウンタデータ40を確認する周期より長い周期に設定されてもよい。
【0041】
ある機能が異常状態になった場合、すなわち、HMI21がカウンタデータ40に基づいて異常状態になった機能を検出した場合、当該機能の従系HMIは、各HMI21の処理負荷に基づいて、当該機能の主系HMIに切り替えるか否かを判断する。具体的には、HMI21は、後述の機能管理テーブル51に基づいて、自装置が当該機能の主系HMIであるか従系HMIであるかを判定する。HMI21は、自装置が当該機能の主系HMIであると判定した場合、当該機能が機能停止になることを確定する。一方、HMI21は、自装置が当該機能の従系HMIであると判定した場合、後述の重み値管理テーブル52に基づいて、自装置の処理負荷が、各HMIの中最も小さいであるか否かを判定する。HMI21は、自装置の処理負荷が、各HMIの中最も小さいであると判定した場合、当該機能の主系HMIに切り替える。
【0042】
図6は、本実施形態に係るプラント監視システム2における機能の主系HMIの切り替えを説明するための図である。図6では、機能-1が異常状態になったことを想定する。図6(a)には、機能-1が異常状態になった際の機能管理テーブル51及び重み値管理テーブル52が示されている。図6(b)には、機能-1の主系HMIを切り替えた後の機能管理テーブル51及び重み値管理テーブル52が示されている。
【0043】
機能管理テーブル51は、「機能名=重み値」の欄と「主系HMI」の欄とを有する。「機能名=重み値」の欄は、機能を唯一に識別する名称、及び、当該機能に設定された重み値が、「=」で紐付けられた情報、例えば、「機能-1=1」を格納する。ここで、機能の重み値は、当該機能を実行する際に、HMI21のCPU21aにかかる負荷に基づいて、予め設定される。重み値は、例えば、「1」、「2」、「3」等の数値であり、機能がCPU21aにかかる負荷が大きい場合に、重み値が大きい数値に設定され、機能がCPU21aにかかる負荷が小さい場合に、重み値が小さい数値に設定される。「主系HMI」の欄は、「機能名=重み値」の欄に格納される機能の主系HMIの識別情報、例えば、「HMI-1」、「HMI-2」等を格納する。
【0044】
なお、「機能名=重み値」の欄において、機能を唯一に識別する名称を機能の識別子とするが、本発明これに限定されず、機能名の他、例えば、機能を唯一に識別できるID(Identity)等を機能の識別子としてもよい。また、「機能名=重み値」の欄において、「=」で機能と重み値とを紐付けるが、本発明はこれに限定されず、機能と重み値との対応関係を表せる任意方式の情報を適用してもよい。また、「主系HMI」の欄において、主系HMIの識別情報は、「HMI-1」、「HMI-2」等名称に限定されず、各HMI21を唯一に識別できる識別子であれば、任意方式の情報であてもよい。
【0045】
重み値管理テーブル52は、「HMI名=重み値総和」の欄を有する。「HMI名=重み値総和」の欄は、HMI21を唯一に識別できる名称、及び、当該HMI21における主系機能の重み値の合計値である重み値総和が、「=」で紐付けられた情報、例えば、「HMI-1=20」を格納する。なお、重み値総和は、機能管理テーブル51のデータに基づいて算出される。例えば、機能管理テーブル51において、「HMI-1」が主系HMIとなる、「機能-1=1」、「機能-2=1」、「機能-5=3」、及び不図示機能の重み値の合計(「1」+「1」+「3」+…)が「20」である。それゆえ、重み値管理テーブル52において、「HMI-1=20」が格納されている。重み値総和、すなわち、HMI21の処理負荷は、HMI21の主系機能の総合処理負荷を示す情報である。HMI21は、自装置の処理負荷が、各HMIの中最も小さいであるか否かを確認する際は、重み値管理テーブル52に基づいて確認を行う。
【0046】
図6(a)に示す機能管理テーブル51及び重み値管理テーブル52に状態において、機能-1が異常状態になり、すなわち、機能-1が、主系HMIであるHMI-1において機能停止(図3のST13からST11への遷移を参照)になった。この場合、図5で説明した機能の死活監視により、各HMI21が機能-1の異常状態を検出し、自装置が、機能-1の主系HMIに切り替える第1順位であるか否かを判定する。主系HMIに切り替える順位は、重み値管理テーブル52の重み値総和の昇順である。すなわち、現状の処理負荷が最も小さい(重み値総和が一番小さい)従系HMIは、異常が発生した機能の主系HMIに切り替わる。
【0047】
ここで、図6(a)に示す重み値管理テーブル52において、HMI-2の重み総和(「16」)が一番小さいことを想定する。このため、HMI-2が機能-1の主系HMIに切り替わる。
【0048】
HMI-2が機能-1の主系HMIに切り替わった後の機能管理テーブル51では、図6(b)に示すように、「機能-1=1」に対応する主系HMIが「HMI-2」に更新された。また、HMI-2が機能-1の主系HMIに切り替わった後の重み値管理テーブル52では、図6(b)に示すように、「HMI-1」の重み総和が「20」から「19」に更新された。これは、機能-1の主系HMIがHMI-2に切り替わったので、HMI-1の重み総和から、機能-1の重み値「1」が除かれたためである。また、図6(b)に示すように、「HMI-2」の重み総和が「16」から「17」に更新された。これは、機能-1の主系HMIがHMI-2に切り替わったので、HMI-2の重み総和に、機能-1の重み値「1」が加算されたためである。
【0049】
[プラント監視処理の手順]
次に、プラント監視システム2の各HMI21におけるプラント監視処理の手順について説明する。図7は、本実施形態に係るプラント監視システム2の各HMI21におけるプラント監視処理の手順を示すフローチャートである。以下に説明する処理は、HMI21が起動されると開始する。
【0050】
まず、HMI21のCPU21aは、各機能の死活監視(図5参照)を行う(ステップS21)。この処理において、CPU21aは、例えば、自装置により実行される機能の実行状態に基づいて、1秒毎にこれらの機能のカウンタ値、すなわち、図5に示すカウンタデータ40を更新する。また、CPU21aは、例えば、2秒毎にカウンタデータ40における各機能のカウンタ値の更新状態を確認する。
【0051】
次に、CPU21aは、異常機能が存在するか否かを判定する(ステップS22)。この処理において、CPU21aは、カウンタデータ40における各機能のカウンタ値の更新状態を確認する際、例えば、連続2回(4秒間)でカウンタ値が更新されていない機能を検出した場合、当該機能を異常機能であると判定する。この場合、ステップS21はYES判定となる。また、CPU21aは、各機能のカウンタ値を連続2回(4秒間)で確認し、カウンタ値が更新されていない機能を検出しなかった場合、異常機能が存在しないと判定し、ステップS21はNO判定となる。
【0052】
ステップS22の処理において、CPU21aは、異常機能が存在しないと判定した場合(ステップS22のNO判定)、ステップS21の処理に戻し、ステップS21~ステップS22の処理を繰り返して実行する。
【0053】
一方、ステップS22の処理において、CPU21aは、異常機能が存在すると判定した場合(ステップS22のYES判定)、機能管理テーブル51(図6参照)に基づいて、当該異常機能が自装置の主系機能であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0054】
ステップS23の処理において、CPU21aは、当該異常機能が自装置の主系機能であると判定した場合(ステップS23のYES判定)、当該異常機能の機能停止状態を確定する(ステップS24)。ステップS24の処理後、CPU21aは、ステップS21~ステップS23の処理を繰り返して実行する。
【0055】
一方、ステップS23の処理において、CPU21aは、当該異常機能が自装置の主系機能でないと判定した場合(ステップS23のNO判定)、重み値管理テーブル52(図6参照)に基づいて、自装置が主系HMIに切り替わる第1順位であるか否かを判定する(ステップS25)。
【0056】
ステップS25の処理において、CPU21aは、自装置が主系HMIに切り替わる第1順位でないと判定した場合(ステップS25のNO判定)、ステップS21の処理に戻し、ステップS21~ステップS25の処理を繰り返して実行する。
【0057】
一方、ステップS25の処理において、CPU21aは、自装置が主系HMIに切り替わる第1順位であると判定した場合(ステップS25のYES判定)、自装置を当該異常機能の主系HMIに切り替える(ステップS26)。
【0058】
次いで、CPU21aは、機能管理テーブル51を更新する(ステップS27)。この処理では、CPU21aは、機能管理テーブル51における、当該異常機能に紐付けている主系HMIの名称を自装置の名称に更新する。
【0059】
次いで、CPU21aは、重み値管理テーブル52を更新する(ステップS28)。この処理では、CPU21aは、重み値管理テーブル52における自装置の重み総和に当該異常機能の重み値を加算し、当該異常機能の元の主系HMIの重み総和から、当該異常機能の重み値を除く。ステップS28の処理後、CPU21aは、ステップS21の処理に戻し、ステップS21~ステップS28の処理を繰り返して実行する。
【0060】
[効果]
上述したように、本実施形態に係るプラント監視システム2では、プラントの運行状況を監視するための各機能は1つのHMIに集中されない。各機能は、プラント監視システム2が有する複数のHMI21に分散され、予め決まられた主系HMIのみで実行される。また、プラント監視システム2では、異常機能が検出された場合、当該異常機能の主系HMIが、現在の主系HMIから、現状の処理負荷が最も小さい他のHMIに切り替わる。このため、本実施形態に係るプラント監視システム2によれば、処理負荷を分散することができる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにプラント監視システムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0062】
2…プラント監視システム、21…HMI、22…表示装置、23…入力装置、24…主機及び補機、25…制御装置、26…ネットワーク、31…処理用ストレージ、32…一致化用ストレージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7