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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150912
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】切断システム
(51)【国際特許分類】
   B21F 11/00 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B21F11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063955
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】391029624
【氏名又は名称】滝川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角光 貴典
(72)【発明者】
【氏名】広田 雅則
【テーマコード(参考)】
4E070
【Fターム(参考)】
4E070AC01
4E070BF03
4E070CA03
(57)【要約】
【課題】複数の長尺材(二次品)の長さの寸法精度を高めることが可能となる切断システムを提供する。
【解決手段】切断システム7は、長手方向を搬送方向として搬送される長尺材A1を、複数まとめて規定長さに切断する。切断システム7は、複数の長尺材A1を前後方向に搬送する搬送装置11と、搬送される複数の長尺材A1の前端Fに接触する接触面21を有するゲージストッパ12と、ゲージストッパ12の高さ方向の位置を変更するための昇降アクチュエータ13と、接触面21に接触した複数の長尺材A1の後側の部分Rを、左右方向の一直線に沿ってまとめて切断する切断刃50を有する切断機14とを有する。接触面21は、前後方向に直交する基準仮想面Kに対して、高さ方向及び左右方向に傾く斜面22を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を搬送方向として搬送される長尺材を、複数まとめて規定長さに切断する切断システムであって、
前記搬送方向を前後方向、水平面に沿った方向であって前記前後方向の直交方向を左右方向、前記前後方向及び前記左右方向に直交する方向を高さ方向と定義した場合に、
前記複数の長尺材を前記前後方向に搬送する搬送装置と、
搬送される前記複数の長尺材の前端に接触する接触面を有するゲージストッパと、
前記ゲージストッパの高さ方向の位置を変更するための昇降アクチュエータと、
前記接触面に接触した前記複数の長尺材の後側の部分を、左右方向の一直線に沿ってまとめて切断する切断刃を有する切断機と、
を有し、
前記接触面は、前記前後方向に直交する基準仮想面に対して、前記高さ方向及び前記左右方向に傾く斜面を有する、
切断システム。
【請求項2】
前記ゲージストッパは、前記前後方向に間隔をあけて複数設置されている、
請求項1に記載の切断システム。
【請求項3】
前記左右方向の一方側の端に位置する前記長尺材の温度と、前記左右方向の他方側の端に位置する前記長尺材の温度と、を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に応じて前記昇降アクチュエータを制御する制御装置と、
を有する、
請求項1又は請求項2に記載の切断システム。
【請求項4】
前記搬送装置、及び、前記ゲージストッパを搭載する可動フレームと、
前記可動フレームを前記前後方向に変位可能に支持する支持フレームと、
前記可動フレームを変位させる前後動アクチュエータと、
を有する、
請求項1又は請求項2に記載の切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製の長尺材を切断するための切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋棒鋼(異形棒鋼)や丸棒鋼等の長尺材の製造は、次のようにして行われる。鋼片(ビレット)を熱間圧延することにより全長80~120m程度の長尺材(一次品)を次々に製造し、冷却床において、長尺材(一次品)を、その長手方向に直交する方向(以下、「左右方向」)に、次々と並べて冷却する。その後、複数の長尺材を、並べた状態で、長尺材の長手方向を搬送方向として切断場所に搬送し、規定長さ(例えば8m)毎にまとめて切断し、複数の長尺材(二次品)を得る。長尺材(二次品)は指定された本数毎に集積され、一つに束ねられた状態となって出荷される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-204140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、冷却床において冷却した複数の長尺材(一次品)を、並べた状態で切断場所に搬送し、これらをまとめて規定長さ(例えば8m)毎に切断し、複数の長尺材(二次品)とする。冷却床に、最初に載せられる長尺材(一次品:最初の長尺材)は、冷却が進むのに対し、最後に載せられる長尺材(一次品:最後の長尺材)は、冷却が遅れる。
【0005】
左右方向に並ぶ複数の長尺材を、まとめて規定長さに切断する際、これら長尺材のうち、最初の長尺材と最後の長尺材との温度差は大きく、温度が高い長尺材から低い長尺材の順に、左右方向に並ぶ。最初の長尺材と最後の長尺材とは、同じ長さ(例えば8m)に切断されても、熱収縮の差により、最終的に長さが異なる。近年では、特に、ミリメートル単位で、長尺材の長さの寸法精度を高くすることが必要とされることがある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の長尺材(二次品)の長さの寸法精度を高めることが可能となる切断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の切断システムは、長手方向を搬送方向として搬送される長尺材を、複数まとめて規定長さに切断する切断システムであって、前記搬送方向を前後方向、水平面に沿った方向であって前記前後方向の直交方向を左右方向、前記前後方向及び前記左右方向に直交する方向を高さ方向と定義した場合に、前記複数の長尺材を前記前後方向に搬送する搬送装置と、搬送される前記複数の長尺材の前端に接触する接触面を有するゲージストッパと、前記ゲージストッパの高さ方向の位置を変更するための昇降アクチュエータと、前記接触面に接触した前記複数の長尺材の後側の部分を、左右方向の一直線に沿ってまとめて切断する切断刃を有する切断機と、を有し、前記接触面は、前記前後方向に直交する基準仮想面に対して、前記高さ方向及び前記左右方向に傾く斜面を有する。
【0008】
前記切断システムによれば、切断の際、複数の長尺材(一次品)は、温度が高い物から低い物の順に、左右方向に並ぶ。これら長尺材の前端がゲージストッパの接触面に接触すると、これら長尺材に関して、前端の位置は、前後方向について異なるのに対し、切断位置は、前後方向について同じとなり、切断された複数の長尺材(二次品)の長さは異なる。接触面の斜面の向きは、温度の高い長尺材(一次品)が長くなって切断されるように設定される。その後、温度が高く、延びている長尺材(二次品)ほど、大きく熱収縮する。その結果、複数の長尺材(二次品)の長さはそろい、寸法精度を高めることが可能となる。
【0009】
ゲージストッパの接触面は、前記基準仮想面に対して、高さ方向及び左右方向に傾く斜面を有する。ゲージストッパの高さを変更することで、接触面の左右方向の傾斜の度合が変更される。このため、まとめて切断する複数の長尺材の温度差に応じて、ゲージストッパの高さを変えることで、前記温度差が変化しても、対応可能である。
【0010】
(2)好ましくは、前記ゲージストッパは、前記前後方向に間隔をあけて複数設置されている。
前記構成によれば、使用するゲージストッパを一つ選択することで、同じ切断刃を用いて、前記規定長さを変更して長尺材を切断することが可能となる。
【0011】
(3)好ましくは、前記左右方向の一方側の端に位置する前記長尺材の温度と、前記左右方向の他方側の端に位置する前記長尺材の温度と、を検出する温度センサと、前記温度センサの検出結果に応じて前記昇降アクチュエータを制御する制御装置と、を有する。
前記構成によれば、左右方向の一方側の端に位置する長尺材と、左右方向の他方側の端に位置する長尺材の温度との差に応じて、ゲージストッパの高さ方向の位置が変更される。
【0012】
(4)好ましくは、前記(1)から(3)のいずれか一つの切断システムは、前記搬送装置、及び、前記ゲージストッパを搭載する可動フレームと、前記可動フレームを前記前後方向に変位可能に支持する支持フレームと、前記可動フレームを変位させる前後動アクチュエータと、を有する。
前記構成によれば、可動フレームを前後方向に移動させると、ゲージストッパの前後方向の位置が変更される。このため、長尺材の切断長さの微調整が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の長尺材(二次品)の長さの寸法精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の切断システムを有する棒鋼材製造設備の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、切断システムの概略構成を示す平面図である。
図3図3は、切断システムの概略構成を示す側面図である。
図4図4は、ゲージストッパの斜視図である。
図5図5は、ゲージストッパの斜視図である。
図6図6は、図5のVI矢視の断面図である。
図7図7は、図5のVII矢視の断面図である。
図8図8は、図5のVIII矢視の断面図である。
図9図9は、図5のIX矢視の断面図である。
図10図10は、図5のX矢視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔棒鋼材製造設備について〕
図1は、本発明の切断システムを有する棒鋼材製造設備の概略構成を示す平面図である。この棒鋼材製造設備は、加熱炉2、圧延機3、検査装置4、分割装置5、冷却床6、切断システム7、精整機8、及び結束機9を有する。
【0016】
加熱炉2は、製造する棒鋼材の素材である鋼片を加熱する。圧延機3は、前記鋼片を圧延し、所定断面形状を有する鋼製の条材A0を連続的に形成する。検査装置4は、条材A0を検査する熱間探傷機からなり、条材A0に生じている形状異常や傷等の不良部を検出する。分割装置5は、切断機(分割シャー)からなり、条材A0を切断して所定長さの長尺材(一次品)A1とする。
【0017】
冷却床6は、中間材である長尺材(一次品)A1を並べて冷却(空冷)する。冷却床6は、長尺材(一次品)A1をその長手方向に直交する方向に搬送する機能を有する。長尺材(一次品)A1は、冷却床6の一方側の領域B1から他方側の領域B2へ搬送される。領域B2から、複数本の長尺材(一次品)A1が取り出される。冷却床6での搬送の間に、長尺材(一次品)A1は冷却されるが、領域B2に到達しても、高温状態にあり、熱によって長尺材(一次品)A1は、常温の場合よりも、延びた状態にある。
【0018】
切断システム7は、冷却床6から送られた複数本の長尺材(一次品)A1を規定長さ毎に切断する。この切断により、長尺材(二次品)A2が得られる。所定数の長尺材(二次品)A2が一つの群とされ、各群が順に精整設備8が有する棒鋼材集積装置へ搬送される。長尺材(二次品)A2は指定された本数毎に集積され、一つに束ねられ出荷される。切断システム7による切断前の長尺材(一次品)A1を、第一長尺材A1と呼び、切断後の長尺材(二次品)A2を第二長尺材A2と呼ぶことができる。
なお、図1に示す棒鋼材製造設備は一例であり、他の構成であってもよい。
【0019】
〔切断システム7について〕
図2は、切断システム7の概略構成を示す平面図である。図3は、切断システム7の概略構成を示す側面図である。切断システム7は、搬送される複数の長尺材(一次品)A1を、複数まとめて規定長さに切断し、規定長さの長尺材(二次品)A2を得る装置である。前記規定長さは、例えば、4メートル、6メートル、8メートル等である。切断システム7において、長尺材(一次品)A1は、複数本が左右方向に並んだ状態で、その長手方向を搬送方向として搬送(搬入)され、切断されて得た長尺材(二次品)A2は、複数本が左右方向に並んだ状態で、その長手方向を搬送方向として搬送(搬出)される。
【0020】
切断システム7における各方向について定義する。長尺材(一次品)A1及び長尺材(二次品)A2の搬送方向を前後方向と定義する。搬送方向の下流側が「前」であり、搬送方向の上流側が「後」である。図2に示す平面図では、下から上に向かう方向が搬送方向であり、その図の下側が「後側」であり、上側が「前側」である。図3に示す側面図では、左から右に向かう方向が搬送方向であり、その図の左側が「後側」であり、右側が「前側」である。
水平面に沿った方向であって前後方向の直交方向を左右方向と定義する。前後方向及び左右方向に直交する方向を高さ方向と定義する。
【0021】
切断システム7は、搬送装置11、ゲージストッパ12、昇降アクチュエータ13、切断機14、温度センサ15、制御装置16、可動フレーム17、支持フレーム18、及び、前後動アクチュエータ19を有する。
【0022】
搬送装置11は、前後方向に間隔をあけて設けられている複数のローラ31を有し、ローラテーブル式の装置である。ローラ31は、可動フレーム17に回転可能となって設けられている。複数(例えば60本)の長尺材A1は、ローラ31の上に載って切断位置に搬入され、切断後の複数(例えば60本)の長尺材A2は、ローラ31の上に載って切断位置から搬出される。このように、搬送装置11は、複数の長尺材A1(A2)を、左右方向に並べた状態で、前後方向にまとめて搬送する。
【0023】
前記のとおり、冷却床6(図1)において、長尺材(一次品)A1は、分割装置5による切断順に並ぶ。冷却床6の領域B2から、複数本の長尺材(一次品)A1が並んだ状態で取り出され、そのままの姿勢で、搬送装置11により切断システム7の切断位置に搬入される。このため、切断システム7による切断の際、複数の長尺材(一次品)A1は、温度が高い物から低い物の順に、左右方向に並ぶ。
【0024】
図2において、説明のために、左右方向に並ぶ複数の長尺材A1に、番号(1)から番号(60)を付している。図2では、いくつかの長尺材A1のみが記載されており、残りの長尺材A1の記載を省略している。図2において、右側に位置する番号(1)の長尺材A1の温度は最も高く、左側に向かって徐々に温度は低くなり、左側に位置する番号(60)の長尺材A1の温度は最も低い。
【0025】
ゲージストッパ12は、板状の部材であり、その板厚方向が前後方向となって、可動フレーム17に搭載されている。可動フレーム17は、ゲージストッパ12を高さ方向に変位可能として支持する支持部材32を有する。ゲージストッパ12は、搬送装置11による複数の長尺材A1(A2)の搬送位置、つまり、ローラ31の天位置31aよりも低い位置まで、降下可能である。ゲージストッパ12の高さ方向の位置の変更は、昇降アクチュエータ13によって行われる。
【0026】
ゲージストッパ12は、搬送される複数の長尺材(一次品)A1の前端Fに接触する接触面21を有する。本実施形態の場合、ゲージストッパ12は、前後方向に間隔をあけて複数設置されている。使用するゲージストッパ12は、一つ選択され、使用されないゲージストッパ12は、ローラ31の天位置31aよりも低い位置にある。
【0027】
ゲージストッパ12に、複数の長尺材(一次品)A1の前端Fを接触させるために、そのゲージストッパ12の接触面21を、複数の長尺材A1(A2)の搬送位置と同じ高さとする。切断機14による複数の長尺材(一次品)A1の切断後、そのゲージストッパ12は、ローラ31の天位置31aよりも低い位置に移動する。
【0028】
昇降アクチュエータ13は、ゲージストッパ12の高さ方向の位置を変更するための装置である。本実施形態の場合、昇降アクチュエータ13は、流体シリンダ34と、リンク機構37とを有する。リンク機構37が有するリンクアーム37bは、流体シリンダ34のロッド35とゲージストッパ12のブラケット36との間を繋ぐ。リンク機構37は、流体シリンダ34の伸縮動作をゲージストッパ12の高さ方向の移動に変換する。
【0029】
流体シリンダ34は、サブフレーム38に搭載されている。サブフレーム38は、可動フレーム17に前後方向に変位可能として支持されている。リンク機構37のブラケット37aは、サブフレーム38に搭載されておらず、可動フレーム17の固定部材40に固定されている。可動フレーム17は、ゲージストッパ12の高さ調整用のアクチュエータ39を有する。アクチュエータ39は、伸縮することで、サブフレーム38を前後方向に変位させる。
【0030】
サブフレーム38が前後方向に変位すると、流体シリンダ34及びリンクアーム37bを介して、ゲージストッパ12が高さ方向に移動する。サブフレーム38は、複数のゲージストッパ12のための複数の流体シリンダ34を搭載する。このため、サブフレーム38が前後方向に移動することで、複数のゲージストッパ12の高さ方向の位置を微調整することが可能である。
【0031】
可動フレーム17は、前後方向に長い鋼製のフレームである。可動フレーム17は、搬送装置11、及び、ゲージストッパ12を搭載する。
支持フレーム18は、前後方向に長い鋼製のフレームである。支持フレーム18は、可動フレーム17を前後方向に変位可能に支持する。
前後動アクチュエータ19は、例えばモータ及び減速機を有して構成されていて、支持フレーム18に対して、可動フレーム17を前後方向に変位させる。
【0032】
切断機14が有する切断刃50は、高さ方向に移動することで、複数の長尺材(一次品)A1をまとめて切断する。切断刃50は、前後方向に移動しない。可動フレーム17を、前後方向に変位させることで、その可動フレーム17に搭載されるゲージストッパ12の前後方向の位置を変更することが可能である。
【0033】
前記のとおり、切断システム7は、搬送される複数の長尺材(一次品)A1を、複数まとめて規定長さに切断する。前記規定長さを、例えば8メートルとすることが可能であるが、可動フレーム17を前後方向に変位させて(例えば5センチメートル変位させて)、ゲージストッパ12の前後方向の位置を変更することで、前記規定長さを(例えば8メートル5センチメートルに)変更することが可能となる。
【0034】
切断機14は、ゲージストッパ12の接触面21に接触した複数の長尺材(一次品)A1をまとめて切断する切断刃50を有する。切断刃50は、図示しない昇降装置によって高さ方向に移動する。切断刃50は、接触面21に接触した複数の長尺材(一次品)A1の後側の部分Rを、左右方向の一直線に沿ってまとめて切断する。
【0035】
温度センサ15は、ゲージストッパ12に接触する前であって左右方向に並ぶ複数の長尺材(一次品)A1の温度を検出する。温度センサ15は、非接触式のセンサである。温度センサ15は、少なくとも、左右方向の一方側の端に位置する長尺材(一次品)A1の温度と、左右方向の他方側の端に位置する前記長尺材(一次品)A1の温度とを検出する。つまり、温度センサ15により、最も温度の高い番号(1)の長尺材A1の温度と、最も温度の低い番号(60)の長尺材A1の温度とが検出される。
【0036】
制御装置16は、コンピュータにより構成されている。制御装置16は、温度センサ15の検出結果に応じて昇降アクチュエータ13を制御する。昇降アクチュエータ13を動作させることで、切断のために用いるゲージストッパ12の高さが変更される。これにより、後に説明するが、ゲージストッパ12が有する接触面21の左右方向の傾斜の度合が変更される。まとめて切断する複数の長尺材(一次品)A1の温度差に応じて、ゲージストッパ12の高さが変更される。
【0037】
切断システム7は(図3参照)、可動フレーム17と支持フレーム18との間に設けられているダンパ装置45を有する。ダンパ装置45は、搬送される複数の長尺材(一次品)A1がゲージストッパ12に接触した際の衝撃を、可動フレーム17を介して吸収する。
【0038】
〔ゲージストッパ12の接触面21について〕
図4及び図5は、ゲージストッパ12の斜視図である。図4は、接触面21側を見た図であり、図5は、接触面21と反対の背面26側を見た図である。図6から図8は、ゲージストッパ12を高さ方向に沿って切断した場合の断面図である。図6は、図5のVI矢視の断面図であり、図7は、図5のVII矢視の断面図であり、図8は、図5のVIII矢視の断面図である。図9及び図10は、ゲージストッパ12を左右方向に沿って切断した場合の断面図である。図9は、図5のIX矢視の断面図であり、図10は、図5のX矢視の断面図である。
【0039】
接触面21は、前後方向に直交する基準仮想面Kに対して、高さ方向及び左右方向の双方に傾く斜面22を有する。本実施形態の場合、背面26は、前後方向に直行する平面である。そこで、ここでは、前記基準仮想面Kを、背面26として説明する。
温度の異なる複数の長尺材(一次品)A1は、左右方向に並んで搬送され、これら長尺材(一次品)A1は、接触面21の斜面22に接触し、搬送が一次停止される。斜面22の向きは、温度の高い長尺材(一次品)A1が長くなって切断されるように設定されている。
【0040】
図6から図8に示すように、ゲージストッパ12の下面12bにおける前後方向の寸法は一定である。その下面12bから上に向かうにしたがって、前後方向の寸法t1が小さくなり、しかも、前後方向の寸法t1の変化の割合が、左右方向の位置で異なる。
切断刃50(図3参照)の前後方向の位置は変化しないことから、図8に示すように、長尺材(一次品)A1が、斜面22の上部に接触する場合と、斜面22の下部に接触する場合とで、長尺材(一次品)A1の切断後の長さが変化する。
【0041】
図9及び図10に示すように、ゲージストッパ12の左右方向の一方の側面12sにおける前後方向の寸法は一定である。その側面12sから左右方向の他方に向かうにしたがって、前後方向の寸法t2が小さくなり、しかも、前後方向の寸法t2の変化の割合が、高さ方向の位置で異なる。
【0042】
図9に示すように、温度が最も高い番号(1)の長尺材(一次品)A1が最も長くなって切断され、温度が最も低い番号(60)の長尺材(一次品)A1が最も短くなって切断されるように、斜面22の向きは設定されている。
なお、本実施形態では、接触面21は、高さ方向及び左右方向に直線的に変化する斜面22を有するが、曲線的に変化する斜面22を有していてもよい。
【0043】
〔本実施形態の切断システム7について〕
以上のように、本実施形態の切断システム7は(図2及び図3参照)、搬送装置11、ゲージストッパ12、昇降アクチュエータ13、及び、切断機14を有する。搬送装置11は、複数の長尺材A1(A2)を、左右方向に並べた状態で、前後方向にまとめて搬送する。ゲージストッパ12は、搬送される複数の長尺材(一次品)A1の前端Fに接触する接触面21を有する。昇降アクチュエータ13は、ゲージストッパ12の高さ方向の位置を変更する。切断機14は、接触面21に接触した複数の長尺材(一次品)A1の後側の部分Rを、左右方向の一直線に沿ってまとめて切断する切断刃50を有する。
図4から図10に示すように、接触面21は、前後方向に直交する基準仮想面Kに対して、高さ方向及び左右方向に傾く斜面22を有する。
【0044】
本実施形態の切断システム7において、切断刃50による切断の際、複数の長尺材(一次品)A1は、温度が高い物から低い物の順に、左右方向に並ぶ(図2参照)。これら長尺材A1の前端Fがゲージストッパ12の接触面21に接触すると、これら長尺材A1に関して、前端Fの位置は、前後方向について異なる。これに対し、切断刃50による切断位置は、前後方向について同じである。このため、切断刃50により切断された複数の長尺材(二次品)A2それぞれの長さは異なる。
【0045】
前記のとおり、接触面21の斜面22の向きは、温度の高い長尺材(一次品)が長くなって切断されるように設定される。
左右方向に並ぶ複数(60本)の長尺材(一次品)A1は、最も温度の低い番号(60)の長尺材(一次品)A1から、最も温度の高い番号(1)の長尺材(一次品)A1まで、徐々に長くなるように切断される。
【0046】
切断刃50による切断の後、温度が高く、延びている長尺材(二次品)A2ほど、大きく熱収縮する。その結果、まとめて切断した複数(60本)の長尺材(二次品)A2の長さは、常温でそろう。よって、複数の長尺材(一次品)A1の寸法精度を高めることが可能となる。
【0047】
ゲージストッパ12の接触面21は、前記基準仮想面Kに対して、高さ方向及び左右方向に傾く斜面22を有する。ゲージストッパ12の高さを変更することで、接触面21の左右方向の傾斜の度合が変更される。このため、まとめて切断する複数の長尺材(一次品)A1の温度差に応じて、ゲージストッパ12の高さを変えることで、前記温度差が変化しても、対応可能である。
【0048】
本実施形態の場合、切断システム7は、長尺材(一次品)A1の温度を検出する温度センサ15を有する。温度センサ15は、左右方向の一方側の端に位置する長尺材(一次品)A1の温度と、左右方向の他方側の端に位置する前記長尺材(一次品)A1の温度と、を検出する。制御装置16は、温度センサ15の検出結果に応じて昇降アクチュエータ13を制御する。
【0049】
温度センサ15及び制御装置16によれば、左右方向の一方側の端に位置する長尺材(一次品)A1と、左右方向の他方側の端に位置する長尺材(一次品)A1の温度との差に応じて、ゲージストッパ12の高さ方向の位置が変更される。同時にまとめて切断される複数の長尺材(一次品)A1の温度差に対応して、切断長さの調整が可能となる。
【0050】
本実施形態の場合、ゲージストッパ12は、前後方向に間隔をあけて複数設置されている。ゲージストッパ12は、例えば、前後方向に0.5メートル間隔で配置されていて、切断に用いるためのゲージストッパ12が択一的に選択される。この構成により、同じ切断刃50を用いて、4メートル、4.5メートル、5メートル・・・等のように、規定長さを変更して、長尺材(一次品)A2を切断することが可能となる。
【0051】
本実施形態の場合、更に、切断システム7は、搬送装置11及びゲージストッパ12を搭載する可動フレーム17と、可動フレーム17を前後方向に変位可能に支持する支持フレーム18と、可動フレーム17を変位させる前後動アクチュエータ19とを有する。可動フレーム17を前後方向に移動させると、ゲージストッパ12の前後方向の位置が変更される。このため、長尺材(一次品)A1の切断長さの微調整が可能となる。
【0052】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0053】
7 切断システム
11 搬送装置
12 ゲージストッパ
13 昇降アクチュエータ
14 切断機
15 温度センサ
16 制御装置
17 可動フレーム
18 支持フレーム
19 前後動アクチュエータ
21 接触面
22 斜面
50 切断刃
A1 長尺材(一次品)
A2 長尺材(二次品)
F 前端
K 基準仮想面
R 長尺材の後側の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10