(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150914
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】塞栓部材
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063957
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュティマ ラタナヌクル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD63
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】塞栓部材により複雑な形状の脳動脈瘤を閉塞する。
【解決手段】塞栓部材を構成する線状体は、第1,第2のループ部と、第1~第4の湾曲部群とを有する。第1の湾曲部群は、第1のループ部に連続し、第2の方向に凸な湾曲部と第1の方向に凸な湾曲部とを含み、第1の方向に偏って配置されている。第2の湾曲部群は、第2のループ部に連続し、第1の方向に凸な湾曲部と第2の方向に凸な湾曲部とを含み、第2の方向に偏って配置されている。第3の湾曲部群は、第1の湾曲部群に連続し、第2の方向に凸な湾曲部と第1の方向に凸な湾曲部と第2の方向に凸な湾曲部とを含み、第2の方向に偏って配置されている。第4の湾曲部群は、第2の湾曲部群と第3の湾曲部群とに連続し、第1の方向に凸な湾曲部と第2の方向に凸な湾曲部と第1の方向に凸な湾曲部とを含み、第1の方向に偏って配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の線状体により構成されたコイル状の塞栓部材であって、
前記線状体は、
第1の方向に偏って配置され、前記線状体の一方の端部を構成する第1のループ部と、
前記第1の方向とは逆向きの第2の方向に偏って配置され、前記線状体の他方の端部を構成する第2のループ部と、
前記第1のループ部に連続し、前記第1の方向に偏って配置され、前記第1のループ部との接続箇所から順に連続した、前記第2の方向に凸な湾曲部と、前記第1の方向に凸な湾曲部と、を含む第1の湾曲部群と、
前記第2のループ部に連続し、前記第2の方向に偏って配置され、前記第2のループ部との接続箇所から順に連続した、前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第2の方向に凸な湾曲部と、を含む第2の湾曲部群と、
前記第1の湾曲部群に連続し、前記第2の方向に偏って配置され、前記第1の湾曲部群との接続箇所から順に連続した、前記第2の方向に凸な湾曲部と、前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第2の方向に凸な湾曲部と、を含む第3の湾曲部群と、
前記第2の湾曲部群と前記第3の湾曲部群とに連続し、前記第1の方向に偏って配置され、前記第2の湾曲部群との接続箇所から順に連続した、前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第2の方向に凸な湾曲部と、前記第1の方向に凸な湾曲部と、を含む第4の湾曲部群と、
を有する、塞栓部材。
【請求項2】
請求項1に記載の塞栓部材であって、
前記第1の湾曲部群と前記第4の湾曲部群とは、前記第1の方向における端部の位置が互いに揃っている、塞栓部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塞栓部材であって、
前記第2の湾曲部群と前記第3の湾曲部群とは、前記第2の方向における端部の位置が互いに揃っている、塞栓部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の塞栓部材であって、
前記第3の湾曲部群に含まれる2つの前記第2の方向に凸な湾曲部の間の最短距離L1は、前記第1の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第3の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、の間の最短距離L2より長い、塞栓部材。
【請求項5】
請求項4に記載の塞栓部材であって、
前記最短距離L1は、前記第4の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第3の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、の間の最短距離L3より長い、塞栓部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の塞栓部材であって、
前記線状体が配置された領域を前記第1の方向の端部から前記第2の方向の端部に向けて第1の小領域から第3の小領域の3つの小領域に等分したとき、前記線状体の少なくとも一部は、順に連続した、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、から構成されている、塞栓部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、塞栓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
脳動脈瘤の治療法として、塞栓部材を脳動脈瘤内に詰め、脳動脈瘤への血液の流入を阻止する塞栓術が行われている。塞栓部材としては、例えば、1本の線状体により構成されたコイル状のものが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0327868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塞栓部材には、脳動脈瘤の壁部に沿うように脳動脈瘤内に挿入され、該壁部付近に隙間が形成されることを抑制できる性能が求められる。他方、脳動脈瘤は、例えば略球形や略洋なし形といった比較的単純な形状のものもある一方、例えば多葉性形状のような比較的複雑な形状のものもある。従来の塞栓部材では、比較的複雑な形状の脳動脈瘤について、脳動脈瘤の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ脳動脈瘤を閉塞することが困難な場合がある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される塞栓部材は、1本の線状体により構成されたコイル状の部材である。前記線状体は、第1のループ部と、第2のループ部と、第1の湾曲部群と、第2の湾曲部群と、第3の湾曲部群と、第4の湾曲部群とを有する。第1のループ部は、線状体の一方の端部を構成する。第1のループ部は、第1の方向に偏って配置されている。第2のループ部は、線状体の他方の端部を構成する。第2のループ部は、第1の方向とは逆向きの第2の方向に偏って配置されている。第1の湾曲部群は、第1のループ部に連続している。第1の湾曲部群は、第1のループ部との接続箇所から順に連続した、第2の方向に凸な湾曲部と、第1の方向に凸な湾曲部とを含む。第1の湾曲部群は、第1の方向に偏って配置されている。第2の湾曲部群は、第2のループ部に連続している。第2の湾曲部群は、第2のループ部との接続箇所から順に連続した、第1の方向に凸な湾曲部と、第2の方向に凸な湾曲部とを含む。第2の湾曲部群は、第2の方向に偏って配置されている。第3の湾曲部群は、第1の湾曲部群に連続している。第3の湾曲部群は、第1の湾曲部群との接続箇所から順に連続した、第2の方向に凸な湾曲部と、第1の方向に凸な湾曲部と、第2の方向に凸な湾曲部とを含む。第3の湾曲部群は、第2の方向に偏って配置されている。第4の湾曲部群は、第2の湾曲部群と第3の湾曲部群とに連続している。第4の湾曲部群は、第2の湾曲部群との接続箇所から順に連続した、第1の方向に凸な湾曲部と、第2の方向に凸な湾曲部と、第1の方向に凸な湾曲部とを含む。第4の湾曲部群は、第1の方向に偏って配置されている。
【0008】
このように、本塞栓部材を構成する線状体は、第1の方向に偏って配置された部分と第2の方向に偏って配置された部分とが交互に並ぶように構成されている。そのため、線状体における第1の方向の端部および第2の方向の端部は、ジグザグ形状となっている。従って、より3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材を実現することができる。これにより、例えば多葉性形状のような比較的複雑な形状の脳動脈瘤についても、脳動脈瘤の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材によって脳動脈瘤を閉塞することができる。
【0009】
(2)上記塞栓部材において、前記第1の湾曲部群と前記第4の湾曲部群とは、前記第1の方向における端部の位置が互いに揃っている構成としてもよい。本構成を採用すれば、比較的複雑な形状の脳動脈瘤の閉塞性を高めつつ、デリバリーシステムへの塞栓部材の搭載性を向上させることができる。
【0010】
(3)上記塞栓部材において、前記第2の湾曲部群と前記第3の湾曲部群とは、前記第2の方向における端部の位置が互いに揃っている構成としてもよい。本構成を採用すれば、比較的複雑な形状の脳動脈瘤の閉塞性を高めつつ、デリバリーシステムへの塞栓部材の搭載性を向上させることができる。
【0011】
(4)上記塞栓部材において、前記第3の湾曲部群に含まれる2つの前記第2の方向に凸な湾曲部の間の最短距離L1は、前記第1の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第3の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、の間の最短距離L2より長い構成としてもよい。本構成を採用すれば、さらに3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材を実現することができ、比較的複雑な形状の脳動脈瘤についても、脳動脈瘤の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材によって脳動脈瘤を閉塞することができる。
【0012】
(5)上記塞栓部材において、前記最短距離L1は、前記第4の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、前記第3の湾曲部群に含まれる前記第1の方向に凸な湾曲部と、の間の最短距離L3より長い構成としてもよい。本構成を採用すれば、さらに3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材を実現することができ、比較的複雑な形状の脳動脈瘤についても、脳動脈瘤の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材によって脳動脈瘤を閉塞することができる。
【0013】
(6)上記塞栓部材において、前記線状体が配置された領域を前記第1の方向の端部から前記第2の方向の端部に向けて第1の小領域から第3の小領域の3つの小領域に等分したとき、前記線状体の少なくとも一部は、順に連続した、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第1の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、前記第2の小領域に主として位置する部分と、前記第3の小領域に主として位置する部分と、から構成されている構成としてもよい。本構成を採用すれば、さらに3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材を実現することができ、比較的複雑な形状の脳動脈瘤についても、脳動脈瘤の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材によって脳動脈瘤を閉塞することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、塞栓部材、塞栓部材を備える塞栓部材デリバリーシステム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における塞栓部材デリバリーシステムの構成を概略的に示す説明図
【
図4】本実施形態の塞栓部材の製造に用いられる治具の外観構成を示す説明図
【
図5】本実施形態の塞栓部材の製造に用いられる治具の一部の外観構成を拡大して示す説明図
【
図6】本実施形態の塞栓部材の使用状態の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.塞栓部材デリバリーシステム100の構成:
図1は、本実施形態における塞栓部材デリバリーシステム100の構成を概略的に示す説明図である。本明細書では、塞栓部材デリバリーシステム100およびその構成部材について、先端側(遠位側)の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側(近位側)の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0017】
塞栓部材デリバリーシステム100は、体内留置医療器具(インプラント)としての塞栓部材30を体内の目標位置に搬送して離脱させるためのシステムである。より詳細には、塞栓部材デリバリーシステム100は、脳動脈瘤80の治療のために、デリバリーチューブ40内を介して塞栓部材30を脳動脈瘤80内に搬送し、その位置で塞栓部材30を離脱させることによって塞栓部材30を脳動脈瘤80内に詰めるための医療用デバイスである。
【0018】
塞栓部材デリバリーシステム100は、ポジショナー10と、塞栓部材30と、離脱機構20と、デリバリーチューブ40とを備える。
【0019】
デリバリーチューブ(マイクロカテーテル)40は、可撓性を有する長尺の筒状部材である。デリバリーチューブ40は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金等の金属材料、または、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびフッ素樹脂等の樹脂材料により形成されている。
【0020】
ポジショナー10は、可撓性を有する長尺部材である。ポジショナー10は、デリバリーチューブ40の内腔に挿入可能に構成されている。ポジショナー10は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金等の金属材料、または、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびフッ素樹脂等の樹脂材料により形成されている。
【0021】
塞栓部材30は、塞栓部材デリバリーシステム100によって目標位置(脳動脈瘤80の位置)に搬送される部材であり、離脱機構20を介してポジショナー10の先端に取り付けられている。塞栓部材30は、1本の線状体により構成されたコイル状の部材である。塞栓部材30は、例えば、白金、金、タングステン、又はこれらの金属の合金等の放射線不透過性の金属材料により形成されている。塞栓部材30の構成については、後に詳述する。
【0022】
離脱機構20は、脳動脈瘤80の位置で塞栓部材30をポジショナー10から離脱させるための公知の機構である。離脱機構20は、塞栓部材30のデリバリー中は塞栓部材30をポジショナー10に固定し、脳動脈瘤80の位置で、例えば機械的に、電気的に、または、水圧を利用して、塞栓部材30をポジショナー10から離脱させる。
【0023】
脳動脈瘤80の治療の際には、塞栓部材デリバリーシステム100を用いて1つまたは複数の塞栓部材30を脳動脈瘤80内に詰め、脳動脈瘤80への血液の流入を阻止する手技が行われる。
【0024】
A-2.塞栓部材30の詳細構成:
次に、塞栓部材30の詳細構成について説明する。
図2は、塞栓部材30の外観構成を示す説明図であり、
図3は、塞栓部材30を2次元的に展開した展開図である。
図2および
図3には、互いに直交するXYZ軸を示している。以下の説明では、便宜上、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向ということがある。上方向は第1の方向の一例であり、下方向は第2の方向の一例である。
【0025】
上述したように、塞栓部材30は、1本の線状体38に立体形状が付与されたコイル状の部材である。塞栓部材30は、拡縮可能に構成されている。塞栓部材30は、デリバリーチューブ40内に収容されているときには収縮状態となっており、デリバリーチューブ40から外部に排出されると、
図2に示すように全体として略球形の状態となる。
【0026】
図3に示すように、塞栓部材30を構成する1本の線状体38は、展開された状態において、複数のループ部および湾曲部群から構成されている。より具体的には、線状体38は、第1のループ部31と、第2のループ部32と、第1の湾曲部群33と、第2の湾曲部群34と、第3の湾曲部群35と、第4の湾曲部群36とを有する。
【0027】
第1のループ部31は、線状体38の一方(
図3における右方向)の端部を構成する。第1のループ部31は、上方向に偏って配置されている。なお、本明細書において、線状体38のある部分が「上方向に偏って配置されている」とは、該部分の過半が線状体38を上下方向に2分割する仮想直線VL0より上側に位置することを意味し、反対に、ある部分が「下方向に偏って配置されている」とは、該部分の過半が仮想直線VL0より下側に位置することを意味する。本実施形態では、第1のループ部31の全体が、線状体38における上側に位置する。
【0028】
第2のループ部32は、線状体38の他方(
図3における左方向)の端部を構成する。第2のループ部32は、下方向に偏って配置されている。本実施形態では、第2のループ部32の全体が、線状体38における下側に位置する。
【0029】
第1の湾曲部群33は、第1のループ部31に連続している。第1の湾曲部群33は、第1のループ部31との接続箇所から順に連続した、下方向に凸な湾曲部33aと、上方向に凸な湾曲部33bとを含む。第1の湾曲部群33は、上方向に偏って配置されている。
【0030】
第2の湾曲部群34は、第2のループ部32に連続している。第2の湾曲部群34は、第2のループ部32との接続箇所から順に連続した、上方向に凸な湾曲部34aと、下方向に凸な湾曲部34bとを含む。第2の湾曲部群34は、下方向に偏って配置されている。
【0031】
第3の湾曲部群35は、第1の湾曲部群33に連続している。第3の湾曲部群35は、第1の湾曲部群33との接続箇所から順に連続した、下方向に凸な湾曲部35aと、上方向に凸な湾曲部35bと、下方向に凸な湾曲部35cとを含む。第3の湾曲部群35は、下方向に偏って配置されている。
【0032】
第4の湾曲部群36は、第2の湾曲部群34と第3の湾曲部群35とに連続している。第4の湾曲部群36は、第2の湾曲部群34との接続箇所から順に連続した、上方向に凸な湾曲部36aと、下方向に凸な湾曲部36bと、上方向に凸な湾曲部36cとを含む。第4の湾曲部群36は、上方向に偏って配置されている。
【0033】
このように、塞栓部材30を構成する線状体38は、上方向に偏って配置された部分と下方向に偏って配置された部分とが交互に並ぶように構成されている。そのため、線状体38における上方向の端部および下方向の端部は、ジグザグ形状となっている。
【0034】
図3に示すように、線状体38が配置された領域を、上方向の端部(
図3における仮想直線VL1の位置)から下方向の端部(同仮想直線VL2の位置)に向けて3つの小領域(第1の小領域R1、第2の小領域R2および第3の小領域R3)に等分する。このとき、線状体38は、第1のループ部31から第2のループ部32に向けて順に連続した、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、から構成されている。
【0035】
また、線状体38において、上方向に偏って配置された2つの湾曲部群である第1の湾曲部群33と第4の湾曲部群36とは、上方向における端部の位置が、仮想直線VL1の位置で互いに揃っている。本実施形態では、さらに、第1のループ部31の上方向における端部の位置も、仮想直線VL1の位置に揃っている。
【0036】
同様に、線状体38において、下方向に偏って配置された2つの湾曲部群である第2の湾曲部群34と第3の湾曲部群35とは、下方向における端部の位置が、仮想直線VL2の位置で互いに揃っている。本実施形態では、さらに、第2のループ部32の下方向における端部の位置も、仮想直線VL2の位置に揃っている。
【0037】
また、線状体38において、第3の湾曲部群35に含まれる2つの下方向に凸な湾曲部35a,35cの間の最短距離L1は、第1の湾曲部群33に含まれる上方向に凸な湾曲部33bと、第3の湾曲部群35に含まれる上方向に凸な湾曲部35bと、の間の最短距離L2より長い。また、線状体38において、上記最短距離L1は、第4の湾曲部群36に含まれる上方向に凸な湾曲部(第3の湾曲部群35に最も近いもの)36cと、第3の湾曲部群35に含まれる上方向に凸な湾曲部35bと、の間の最短距離L3よりも長い。
【0038】
A-3.塞栓部材30の製造方法:
次に、本実施形態の塞栓部材30の製造方法を説明する。
図4は、本実施形態の塞栓部材30の製造に用いられる治具90の外観構成を示す説明図であり、
図5は、本実施形態の塞栓部材30の製造に用いられる治具90の一部の外観構成を拡大して示す説明図である。
図4および
図5には、説明の便宜上、線状体38を治具90に巻き付ける際の巻き付け順を特定する数字を示している。
【0039】
図5に示すように、治具90は、3つのレイヤー(第1レイヤー91、第2レイヤー92、第3レイヤー93)を有している。各レイヤー91,92,93の軸は、互いに交差している。例えば、第1レイヤー91は上方に傾くように延伸しており、第2レイヤー92は真っ直ぐに延伸しており、第3レイヤー93は下方に傾くように延伸している。
【0040】
塞栓部材30の製造の際には、1本の線状体38を、
図5に示す順番に沿って、時計回りおよび反時計回りに交互に治具90に巻き付ける。より具体的には、1本の線状体38を、順に、第1レイヤー91、第2レイヤー92、第1レイヤー91、第3レイヤー93、第2レイヤー92、第3レイヤー93、第1レイヤー91、第2レイヤー92、第1レイヤー91、第3レイヤー93、第2レイヤー92、第3レイヤー93に巻き付ける。
【0041】
線状体38を治具90に巻き付けた後、熱処理によって塞栓部材30の形状付けを行う。これにより、上述した構成の塞栓部材30が製造される。
【0042】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の塞栓部材30は、1本の線状体38により構成されたコイル状の部材である。線状体38は、第1のループ部31と、第2のループ部32と、第1の湾曲部群33と、第2の湾曲部群34と、第3の湾曲部群35と、第4の湾曲部群36とを有する。
【0043】
第1のループ部31は、線状体38の一方の端部を構成する。第1のループ部31は、上方向に偏って配置されている。第2のループ部32は、線状体38の他方の端部を構成する。第2のループ部32は、下方向に偏って配置されている。第1の湾曲部群33は、第1のループ部31に連続している。第1の湾曲部群33は、第1のループ部31との接続箇所から順に連続した、下方向に凸な湾曲部33aと、上方向に凸な湾曲部33bとを含む。第1の湾曲部群33は、上方向に偏って配置されている。第2の湾曲部群34は、第2のループ部32に連続している。第2の湾曲部群34は、第2のループ部32との接続箇所から順に連続した、上方向に凸な湾曲部34aと、下方向に凸な湾曲部34bとを含む。第2の湾曲部群34は、下方向に偏って配置されている。第3の湾曲部群35は、第1の湾曲部群33に連続している。第3の湾曲部群35は、第1の湾曲部群33との接続箇所から順に連続した、下方向に凸な湾曲部35aと、上方向に凸な湾曲部35bと、下方向に凸な湾曲部35cとを含む。第3の湾曲部群35は、下方向に偏って配置されている。第4の湾曲部群36は、第2の湾曲部群34と第3の湾曲部群35とに連続している。第4の湾曲部群36は、第2の湾曲部群34との接続箇所から順に連続した、上方向に凸な湾曲部36aと、下方向に凸な湾曲部36bと、上方向に凸な湾曲部36cとを含む。第4の湾曲部群36は、上方向に偏って配置されている。
【0044】
このように、本実施形態の塞栓部材30を構成する線状体38は、上方向に偏って配置された部分と下方向に偏って配置された部分とが交互に並ぶように構成されている。そのため、線状体38における上方向の端部および下方向の端部は、ジグザグ形状となっている。従って、より3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材30を実現することができる。これにより、
図6に示すように、例えば多葉性形状のような比較的複雑な形状の脳動脈瘤80についても、脳動脈瘤80の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材30によって脳動脈瘤80を閉塞することができる。もちろん、本実施形態の塞栓部材30によれば、例えば略球形や略洋なし形といった比較的単純な形状の脳動脈瘤80についても、問題無く閉塞することができる。
【0045】
本実施形態の塞栓部材30では、線状体38が配置された領域を上方向の端部から下方向の端部に向けて3つの小領域(第1の小領域R1、第2の小領域R2および第3の小領域R3)に等分したとき、線状体38の少なくとも一部は、順に連続した、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第1の小領域R1に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、第2の小領域R2に主として位置する部分と、第3の小領域R3に主として位置する部分と、から構成されている。そのため、さらに3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材30を実現することができ、比較的複雑な形状の脳動脈瘤80についても、脳動脈瘤80の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材30によって脳動脈瘤80を閉塞することができる。
【0046】
本実施形態の塞栓部材30では、線状体38において、上方向に偏って配置された2つの湾曲部群である第1の湾曲部群33と第4の湾曲部群36とは、上方向における端部の位置が互いに揃っている。そのため、比較的複雑な形状の脳動脈瘤80の閉塞性を高めつつ、塞栓部材デリバリーシステム100への搭載性を向上させることができる。同様に、本実施形態の塞栓部材30では、線状体38において、下方向に偏って配置された2つの湾曲部群である第2の湾曲部群34と第3の湾曲部群35とは、下方向における端部の位置が互いに揃っている。そのため、比較的複雑な形状の脳動脈瘤80の閉塞性を高めつつ、塞栓部材デリバリーシステム100への搭載性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態の塞栓部材30では、線状体38において、第3の湾曲部群35に含まれる2つの下方向に凸な湾曲部35a,35cの間の最短距離L1は、第1の湾曲部群33に含まれる上方向に凸な湾曲部33bと、第3の湾曲部群35に含まれる上方向に凸な湾曲部35bと、の間の最短距離L2より長い。そのため、さらに3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材30を実現することができ、比較的複雑な形状の脳動脈瘤80についても、脳動脈瘤80の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材30によって脳動脈瘤80を閉塞することができる。また、上記最短距離L1は、第4の湾曲部群36に含まれる上方向に凸な湾曲部36cと、第3の湾曲部群35に含まれる上方向に凸な湾曲部35bと、の間の最短距離L3よりも長い。そのため、さらに3次元的に湾曲した複雑な形状の塞栓部材30を実現することができ、比較的複雑な形状の脳動脈瘤80についても、脳動脈瘤80の壁部付近に隙間が形成されることを抑制しつつ、塞栓部材30によって脳動脈瘤80を閉塞することができる。
【0048】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
上記実施形態における塞栓部材デリバリーシステム100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、塞栓部材30を構成する1本の線状体38が、第1のループ部31と、第2のループ部32と、第1の湾曲部群33と、第2の湾曲部群34と、第3の湾曲部群35と、第4の湾曲部群36とから構成されているが、塞栓部材30がこれら以外の他の部分を有していていもよい。
【0050】
上記実施形態では、線状体38の第1の湾曲部群33が、2つの湾曲部33aから構成されているが、第1の湾曲部群33がこれら以外の他の部分を有していていもよい。線状体38の第2の湾曲部群34、第3の湾曲部群35および第4の湾曲部群36についても同様である。
【0051】
上記実施形態では、線状体38において、上方向に偏って配置された2つの湾曲部群である第1の湾曲部群33と第4の湾曲部群36とは、上方向における端部の位置が互いに揃っているが、両者の端部の位置が揃っていなくてもよい。同様に、上記実施形態では、線状体38において、下方向に偏って配置された2つの湾曲部群である第2の湾曲部群34と第3の湾曲部群35とは、下方向における端部の位置が互いに揃っているが、両者の端部の位置が揃っていなくてもよい。
【0052】
上記実施形態における線状体38の各部の間の距離(間隔)は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態のように上記最短距離L1が上記最短距離L2より長いことが好ましいが、この点は必須事項ではなく、上記最短距離L1が上記最短距離L2以下であってもよい。また、上記実施形態のように上記最短距離L1が上記最短距離L3より長いことが好ましいが、この点は必須事項ではなく、上記最短距離L1が上記最短距離L3以下であってもよい。
【0053】
上記実施形態において、各部材の形成材料は、あくまで一例であり、他の材料により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10:ポジショナー 20:離脱機構 30:塞栓部材 31:第1のループ部 32:第2のループ部 33:第1の湾曲部群 34:第2の湾曲部群 35:第3の湾曲部群 36:第4の湾曲部群 38:線状体 40:デリバリーチューブ 80:脳動脈瘤 90:治具 91:第1レイヤー 92:第2レイヤー 93:第3レイヤー 100:塞栓部材デリバリーシステム R1:第1の小領域 R2:第2の小領域 R3:第3の小領域