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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150917
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20241017BHJP
   H03K 17/12 20060101ALI20241017BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H02M1/00 F
H03K17/12
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063962
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 一
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB02
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740MM01
5H740PP02
5H740PP03
5J055AX07
5J055AX26
5J055AX44
5J055AX55
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX08
5J055CX20
5J055CX28
5J055DX09
5J055DX12
5J055DX59
5J055DX73
5J055DX83
5J055EX06
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY05
5J055EY17
5J055EY21
5J055EZ14
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX05
5J055GX06
5J055GX08
(57)【要約】
【課題】ゲートコンデンサを備えることによって発生する電気的振動を簡易な追加回路で抑制する半導体装置を提供する。
【解決手段】第1基準電位端子9aおよび第1制御信号入力端子8aを備えた第1パワーモジュール7aと、第1パワーモジュール7aに並列に接続され、第2基準電位端子9bおよび第2制御信号入力端子8bを備えた第2パワーモジュール7bと、第1制御信号入力端子8aおよび第1基準電位端子9aの間に接続された第1コンデンサ16aと、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aを経由して第2制御信号入力端子8bまでの制御端子間経路において、第1コンデンサ16aに直列に接続された第1フィルタ17aとを備え、第1フィルタ17aは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電圧出力端子からスイッチング制御信号を出力する駆動回路と、
第1半導体スイッチング素子を内包し、第1基準電位端子および前記スイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子を備えた第1パワーモジュールと、
前記第1パワーモジュールに並列に接続され、第2半導体スイッチング素子を内包し、第2基準電位端子および前記スイッチング制御信号が入力される第2制御信号入力端子を備えた第2パワーモジュールと、
前記ゲート電圧出力端子および前記第1制御信号入力端子の間に接続された第1抵抗と、
前記ゲート電圧出力端子および前記第2制御信号入力端子の間に接続された第2抵抗と、
前記第1制御信号入力端子および前記第1基準電位端子の間に接続された第1コンデンサと、
前記第2制御信号入力端子および前記第2基準電位端子の間に接続された第2コンデンサと、
前記第1制御信号入力端子から前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサを経由して前記第2制御信号入力端子までの制御端子間経路において、前記第1コンデンサに直列に接続された第1フィルタとを備え、
前記第1フィルタは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2制御信号入力端子および前記第2基準電位端子の間において前記第2コンデンサに直列に接続され、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有する第2フィルタを備え、
前記第1フィルタは、前記第1制御信号入力端子および前記第1基準電位端子の間において前記第1コンデンサに直列に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、1MHz以下の周波数におけるインピーダンスが前記制御端子間経路を含む経路で発生する電気的振動の周波数におけるインピーダンスよりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1フィルタの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、前記第1抵抗の抵抗値よりも小さく、
前記第2フィルタの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、前記第2抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、0Hzにおけるインピーダンスが1オーム以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ビーズ素子であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、プリント基板配線で構成されたコイルであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1制御信号入力端子から前記第1コンデンサを経由して前記第1基準電位端子までの第1ループ経路において前記第1コンデンサに直列に接続された第3抵抗と、
前記第2制御信号入力端子から前記第2コンデンサを経由して前記第2基準電位端子までの第2ループ経路において前記第2コンデンサに直列に接続された第4抵抗とを備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3抵抗の抵抗値は前記第1抵抗の抵抗値よりも小さく、
前記第4抵抗の抵抗値は前記第2抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3抵抗および前記第4抵抗の抵抗値は、1オームよりも大きいことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1半導体スイッチング素子および前記第2半導体スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体から成るものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、前記駆動回路、前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサは、1つの基板上に実装されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項13】
ゲート電圧出力端子からスイッチング制御信号を出力する駆動回路と、
第1半導体スイッチング素子を内包し、第1基準電位端子および前記スイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子を備えた第1パワーモジュールと、
前記ゲート電圧出力端子および前記第1制御信号入力端子の間に接続された第1抵抗と、
前記第1制御信号入力端子および前記第1基準電位端子の間に接続された第1コンデンサと、
前記第1制御信号入力端子から前記第1コンデンサを経由して前記第1基準電位端子までの第1ループ経路において前記第1コンデンサに直列に接続された第3抵抗とを備える半導体装置。
【請求項14】
前記第3抵抗の抵抗値は前記第1抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第3抵抗の抵抗値は、1オームよりも大きいことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1半導体スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体から成るものであることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記駆動回路、前記第1抵抗および前記第1コンデンサは1つの基板上に実装されていることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車あるいは電気自動車などの電動パワートレイン用の電力変換装置に備えられた半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)あるいはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチング素子を内蔵したパワーモジュールにより構成されている。大きい電力を処理する場合には、複数のスイッチング素子あるいはパワーモジュールを並列接続して同時にスイッチング駆動し、処理可能な電力容量を増大化させている。
【0003】
スイッチング素子は、制御信号入力端子(例えば、MOSFETのゲート端子)に接続した駆動回路により動作させる。そのようなスイッチング素子のスイッチング速度、すなわち電流変化速度di/dtと電圧変化速度dv/dtは、駆動回路のゲート抵抗とスイッチング素子の寄生容量(例えば、MOSFETのCgsおよびCgd)で決まる。これらのスイッチング速度を決める要素に加えて、dv/dtを調整するためにゲートコンデンサを用いる場合がある。一般的に、ゲートコンデンサは、スイッチング素子の制御信号入力端子に接続され、例えばdv/dtを調整することによりスイッチング損失を低減したり急峻な電圧変化を抑制したりする目的で使用される。
【0004】
しかし、ゲートコンデンサは一般的に駆動回路とともに制御基板上に実装されるため、例えば、MOSFETのゲート端子とソース端子との間の寄生容量、ゲートコンデンサ、制御基板の配線、および、パワーモジュールの端子などの配線でループ回路が形成され、このループ回路においてLC共振あるいはLC発振が起こる。また、複数のモジュールを並列接続している場合、ゲートコンデンサを経由することでモジュール同士のゲート間のインピーダンスが低下し、モジュール間の共振あるいは発振現象が発生する。それらのような電気的振動が発生すると、スイッチング素子の誤動作、スイッチング素子の耐圧超過による破壊、あるいは、制御基板上の部品の破壊により、電力変換装置の制御が失われるおそれがある。
【0005】
ゲートコンデンサを備えた半導体装置における電気的振動を抑制する技術として、ゲートコンデンサとスイッチング素子のゲートとを接続または遮断するスイッチを設け、ゲートコンデンサが不要なタイミングにおいてゲートコンデンサとスイッチング素子のゲートとを遮断することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-41081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された半導体装置では、ゲートコンデンサとスイッチング素子のゲートとを接続および遮断するスイッチを制御するための回路を設け、所望のタイミングを判断してスイッチを動作させて、ゲートコンデンサとスイッチング素子のゲートとを接続および遮断する制御を行う必要がある。所望のタイミングを判断する回路あるいはスイッチを制御するための回路がノイズあるいは部品のばらつきなどにより誤動作した場合、例えば遮断したいタイミングで接続されると電気的振動が発生し、接続したいタイミングで遮断されるとゲートコンデンサの効果が得られずスイッチング素子のスイッチング速度が設計から外れた値となり過大なサージが発生してスイッチング素子が耐圧破壊するおそれがある。このように、接続および遮断するスイッチの動作タイミング制御の必要性により設計の難易度が上がる。さらに、ゲートコンデンサとスイッチング素子のゲートとを接続および遮断するスイッチ、および、ゲートコンデンサを接続および遮断するタイミングを判断してスイッチを動作させる制御回路といった、大規模な追加回路が必要となるという課題があった。
【0008】
本願は、上述の課題を解決するためになされたものであり、ゲートコンデンサを備えることによって発生する電気的振動を簡易な追加回路で抑制する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される半導体装置は、ゲート電圧出力端子からスイッチング制御信号を出力する駆動回路と、第1半導体スイッチング素子を内包し、第1基準電位端子およびスイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子を備えた第1パワーモジュールと、第1パワーモジュールに並列に接続され、第2半導体スイッチング素子を内包し、第2基準電位端子およびスイッチング制御信号が入力される第2制御信号入力端子を備えた第2パワーモジュールと、ゲート電圧出力端子および第1制御信号入力端子の間に接続された第1抵抗と、ゲート電圧出力端子および第2制御信号入力端子の間に接続された第2抵抗と、第1制御信号入力端子および第1基準電位端子の間に接続された第1コンデンサと、第2制御信号入力端子および第2基準電位端子の間に接続された第2コンデンサと、第1制御信号入力端子から第1コンデンサおよび第2コンデンサを経由して第2制御信号入力端子までの制御端子間経路において、第1コンデンサに直列に接続された第1フィルタとを備え、第1フィルタは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される半導体装置は、ゲート電圧出力端子からスイッチング制御信号を出力する駆動回路と、第1半導体スイッチング素子を内包し、第1基準電位端子およびスイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子を備えた第1パワーモジュールと、第1パワーモジュールに並列に接続され、第2半導体スイッチング素子を内包し、第2基準電位端子およびスイッチング制御信号が入力される第2制御信号入力端子を備えた第2パワーモジュールと、ゲート電圧出力端子および第1制御信号入力端子の間に接続された第1抵抗と、ゲート電圧出力端子および第2制御信号入力端子の間に接続された第2抵抗と、第1制御信号入力端子および第1基準電位端子の間に接続された第1コンデンサと、第2制御信号入力端子および第2基準電位端子の間に接続された第2コンデンサと、第1制御信号入力端子から第1コンデンサおよび第2コンデンサを経由して第2制御信号入力端子までの制御端子間経路において、第1コンデンサに直列に接続された第1フィルタとを備え、第1フィルタは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有するので、ゲートコンデンサを備えることによって発生する電気的振動を簡易な追加回路で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1における電力変換装置の概略図である。
図2】実施の形態1による半導体装置の回路図である。
図3】比較例による半導体装置の回路図である。
図4】比較例の半導体装置におけるゲートノードとソースノードとの間のインピーダンスの周波数特性を示す図である。
図5】実施の形態1の半導体装置におけるゲートノードとソースノードとの間のインピーダンスの周波数特性を示す図である。
図6】実施の形態2による半導体装置の回路図である。
図7】パワーモジュールのゲート-ソース間電流の時間変化を示した図である。
図8】パワーモジュールのゲート-ソース間電圧の時間変化を示した図である。
図9】実施の形態2による半導体装置の基板への配置例を示す図である。
図10】実施の形態2による半導体装置の変形例の回路図である。
図11】実施の形態3による半導体装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における電力変換装置の概略図である。実施の形態1における電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路1であり、入力部に直流電源2が接続され、インバータ回路1の出力には負荷であるモータ3が接続されている。ここで、この電力変換装置が電気自動車あるいはハイブリッド自動車に適用された場合には、直流電源2は蓄電装置であり、代表的にはニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の二次電池からなるバッテリであり、その電圧は200Vから1000V程度である。インバータ回路1は、入力段に電圧リプルあるいはノイズを除去するための平滑コンデンサ4と、半導体スイッチング素子を備えた半導体装置5a、5b、5c、5d、5e、5fとを備えた三相インバータであり、直流電源2の電力を電力変換し、電力出力ノード6a、6b、6cから電気自動車あるいはハイブリッド自動車の駆動輪を駆動するモータ3へ交流電力を出力する。
【0014】
図2は、実施の形態1による半導体装置5aの回路図である。実施の形態1における電力変換装置を構成する三相はそれぞれ同じ構成であり、各相のハイサイドアームとローサイドアームは同じ構成となるため、ローサイドアームの半導体装置5aについて説明する。
【0015】
半導体装置5aは、第1半導体スイッチング素子11aを内包した第1パワーモジュール7aと、第2半導体スイッチング素子11bを内包した第2パワーモジュール7bとを備えており、第1パワーモジュール7aと第2パワーモジュール7bとは並列接続されている。第1パワーモジュール7aは、スイッチング制御信号が入力されるゲート端子である第1制御信号入力端子8aと、ソース端子である第1基準電位端子9aと、電力出力ノード6aに接続されるドレイン端子10aを備えている。第2パワーモジュール7bは、スイッチング制御信号が入力されるゲート端子である第2制御信号入力端子8bと、ソース端子である第2基準電位端子9bと、電力出力ノード6aに接続されるドレイン端子10bを備えている。第1パワーモジュール7aと第2パワーモジュール7bとは、組をなして同時に動作して同一の電力出力ノード6aに交流電力を出力するものである。
【0016】
第1パワーモジュール7aおよび第2パワーモジュール7bは、例えば、モールド樹脂により封止されたものであるが、ゲルなどで封止されたものであってもよい。また、ローサイドアームとハイサイドアームとが同一のパッケージ内にモールド樹脂によって封印された2in1形態のパワーモジュールを、2つ並列接続して使用してもよい。また、実施の形態1における電力変換装置では、大電力を出力するために一相につき2つのパワーモジュールを並列に接続する構成としているが、ターゲットとなる出力電力に応じて並列に接続するパワーモジュールの数を変更してもよい。
【0017】
第1半導体スイッチング素子11aおよび第2半導体スイッチング素子11bは、MOSFETあるいはIGBTなどの電力制御用の半導体スイッチング素子である。第1半導体スイッチング素子11aおよび第2半導体スイッチング素子11bは、これらに限るものではなく、バイポーラトランジスタなどのその他の半導体スイッチング素子でも構わない。第1半導体スイッチング素子11aおよび第2半導体スイッチング素子11bは、図2においてはMOSFETを用いて、MOSFETの寄生ダイオードを還流ダイオードとして使用する構成としているが、IGBT等の寄生ダイオードを有さないスイッチング素子を用いる場合において還流ダイオードを並列に接続する構成としてもよい。
【0018】
第1半導体スイッチング素子11aおよび第2半導体スイッチング素子11bは、ケイ素、炭化ケイ素、もしくは窒化ガリウムなどの材料からなる半導体基板に形成され、第1半導体スイッチング素子11aおよび第2半導体スイッチング素子11bはバンドギャップがケイ素よりも広いワイドバンドギャップ半導体から成るものでもよい。ワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素によって形成されたMOSFETは、トランスコンダクタンスが高く、導通時の損失の低減が可能であり、スイッチング時に生じる電流の時間変化量di/dtを大きくすることによってスイッチング損失の低減が可能である。このようなトランスコンダクタンスが大きい半導体スイッチング素子は、一般的に電気的振動が発生しやすい。そのため、ワイドバンドギャップ半導体を実施の形態1による半導体装置に適用することにより、実施の形態1による半導体装置の効果の有用性がより顕著に示されることとなる。
【0019】
また、実施の形態1による半導体装置では、第1パワーモジュール7aは1つの第1半導体スイッチング素子11aを備えるものとしているが、ターゲットとなる出力電力に応じて大電力を出力するために1つのパワーモジュールが2つ以上の半導体スイッチング素子を備えるものとしてもよい。1つのパワーモジュールの内部において2つ以上の半導体スイッチング素子が並列接続される構成では、半導体スイッチング素子の間で電気的振動が発生するおそれがあり、そのような電気的振動を抑制するためにゲートコンデンサが用いられる場合がある。そのため、1つのパワーモジュールの内部において2つ以上の半導体スイッチング素子が並列接続される構成を実施の形態1による半導体装置に適用することにより、実施の形態1による半導体装置の効果の有用性がより顕著に示されることとなる。
【0020】
第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8a(ゲート端子)はゲート抵抗である第1抵抗12aに接続され、第1抵抗12aのもう一方の端子はゲートドライバである駆動回路13のゲート電圧出力端子14に接続される。すなわち、ゲート抵抗である第1抵抗12aの一方の端子はゲートノード18aに接続され、第1抵抗12aのもう一方の端子は駆動回路13のゲート電圧出力端子14に接続される。第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8b(ゲート端子)はゲート抵抗である第2抵抗12bに接続され、第2抵抗12bのもう一方の端子はゲートドライバである駆動回路13のゲート電圧出力端子14に接続される。すなわち、ゲート抵抗である第2抵抗12bの一方の端子はゲートノード18bに接続され、第2抵抗12bのもう一方の端子は駆動回路13のゲート電圧出力端子14に接続される。駆動回路13は、第1抵抗12aを介して第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8aにスイッチング制御信号を出力し、第2抵抗12bを介して第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8bにスイッチング制御信号を出力し、第1パワーモジュール7aおよび第2パワーモジュール7bをほとんど同時に駆動させる。第1パワーモジュール7aの第1基準電位端子9a(ソース端子)はソース配線を介して駆動回路13のソース電位端子15に接続され、第2パワーモジュール7bの第2基準電位端子9b(ソース端子)はソース配線を介して駆動回路13のソース電位端子15に接続される。このようにゲート抵抗である第1抵抗12aおよび第2抵抗12bを接続することにより、第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8aと第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8bとの間のインピーダンスを上げる効果があり、第1パワーモジュール7aと第2パワーモジュール7bとの間の電気的振動を抑制する効果がある。なお、第1抵抗12aおよび第2抵抗12bを取り除き第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8aおよび第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8bを接続するノードとゲート電圧出力端子14との間にゲート抵抗を配置する構成は、第1パワーモジュール7aと第2パワーモジュール7bとの間の電気的振動を発生し得るため、望ましくない。
【0021】
ゲートコンデンサである第1コンデンサ16aと第1フィルタ17aとは直列に接続され、第1コンデンサ16aの一方の端子はゲートノード18aに接続され、第1フィルタ17aの一方の端子はソースノード19に接続されている。すなわち、第1コンデンサ16aは第1制御信号入力端子8aおよび第1基準電位端子9aの間に接続されており、第1フィルタ17aは第1コンデンサ16aに直列に接続されている。ゲートコンデンサである第2コンデンサ16bと第2フィルタ17bとは直列に接続され、第2コンデンサ16bの一方の端子はゲートノード18bに接続され、第2フィルタ17bの一方の端子はソースノード19に接続されている。すなわち、第2コンデンサ16bは第2制御信号入力端子8bおよび第2基準電位端子9bの間に接続されており、第2フィルタ17bは第2コンデンサ16bに直列に接続されている。第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bは、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bを経由して第2制御信号入力端子8bまでの制御端子間経路で発生する電気的振動を抑制するものである。第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有している。図2に示す例では、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの2つのフィルタを備えているが、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bのどちらかを備えるものでもよく、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bを経由して第2制御信号入力端子8bまでの制御端子間経路において第1コンデンサ16aに直列に接続された第1フィルタ17aを備えていれば制御端子間経路で発生する電気的振動を抑制することができる。
【0022】
なお、ゲート抵抗である第1抵抗12aおよび第2抵抗12bを有する構成において、ゲートコンデンサをゲート電圧出力端子14とソースノード19との間に接続すると、あたかもゲートコンデンサが接続されていないかのようにふるまう。そのような状態では、dv/dtを調整することによってスイッチング損失を低減するあるいは急峻な電圧変化を抑制するといったゲートコンデンサの機能が果たされない。
【0023】
図3は、比較例による半導体装置の回路図である。図3の比較例による半導体装置と図2の実施の形態1による半導体装置5aとを比較すると、比較例による半導体装置は第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bを備えていない。比較例による半導体装置の他の構成は、実施の形態1による半導体装置5aと同じである。
【0024】
図3に示す比較例による半導体装置では、第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8aからゲートノード18aおよび第1コンデンサ16aを通ってソースノード19に至り、ソースノード19から第2コンデンサ16bおよびゲートノード18bを通って第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8bに至る制御端子間経路で、電気的振動が発生するおそれがある。これは、ゲートコンデンサである第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bのインピーダンスが高周波数帯域において低いために、10数MHzから200MHz程度の帯域において、ゲートノード18aとソースノード19との間のインピーダンス、および、ゲートノード18bとソースノード19との間のインピーダンスが小さくなり、制御端子間経路において10数MHzから200MHz程度の電気的振動が発生しやすくなっているからである。すなわち、図2に示す実施の形態1の半導体装置においては、制御端子間経路において第1コンデンサ16aと第2コンデンサ16bと配線によって生じる電気的振動の周波数が、例えば、10数MHzから200MHzである。このような電気的振動は、パワーモジュールのゲート間で電荷のやり取りを行ういわゆるモジュール間の共振現象であり、ゲートコンデンサに起因して発生する振動現象の一つである。場合によっては、スイッチング素子の誤動作、スイッチング素子の耐圧超過による破壊、あるいは、制御基板上の部品の破壊が発生する可能性がある。
【0025】
図2に示す実施の形態1による半導体装置では、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bを備えているため、ゲートコンデンサである第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bが備えられていても、制御端子間経路における電気的振動の周波数を含む10数MHzから200MHz程度の帯域において制御端子間経路のインピーダンスを大きくすることができるため、電気的振動を抑制することができる。
【0026】
図4は、図3に示す比較例による半導体装置におけるゲートノード18aとソースノード19との間のインピーダンスの周波数特性であり、ゲートノード18bとソースノード19との間のインピーダンスの周波数特性である。周波数が高くなるにつれてインピーダンスが小さくなっている。図5は、図2に示す実施の形態1の半導体装置5aにおけるゲートノード18aとソースノード19との間のインピーダンスの周波数特性であり、ゲートノード18bとソースノード19との間のインピーダンスの周波数特性である。10数MHzから200MHz程度の帯域においてインピーダンスが高くなっており、実施の形態1の半導体装置5aにおいて10数MHzから200MHz程度の帯域における電気的振動が抑制される。
【0027】
第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bのインピーダンスの周波数特性は、ゲートコンデンサである第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bの役割を妨げることが無いように、0Hz付近のインピーダンスは、制御端子間経路を含む経路で発生する電気的振動の周波数である10数MHzから200MHz程度の帯域におけるインピーダンスよりも小さくすることが望ましい。例えば、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bは、1MHz以下の周波数におけるインピーダンスが、制御端子間経路を含む経路で発生する電気的振動の周波数におけるインピーダンスよりも小さいことが望ましい。また、第1フィルタ17aの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、ゲート抵抗である第1抵抗12aの抵抗値よりも小さく1オーム以下であることが望ましく、第2フィルタ17bの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、ゲート抵抗である第2抵抗12bの抵抗値よりも小さく1オーム以下であることが望ましい。
【0028】
第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの0Hz付近のインピーダンスが大きいと、例えば、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの1MHz以下の周波数におけるインピーダンスが大きいと、ゲートコンデンサである第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bへのチャージが遅くなり、あたかもゲートコンデンサである第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bが接続されていないかのような振る舞いになる。このような状態では、dv/dtを調整することによりスイッチングを低減するあるいは急峻な電圧変化を抑制するといったゲートコンデンサの機能が果たされない。したがって、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの0Hz付近のインピーダンスは、例えば、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの1MHz以下の周波数におけるインピーダンスは、小さい方がよい。さらに、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、ゲート抵抗である第1抵抗12aおよび第2抵抗12bの抵抗値よりも小さければ、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの抵抗成分の製造ばらつきなどの公差が大きい場合であっても、第1パワーモジュール7aおよび第2パワーモジュール7bのスイッチング速度が第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの製造ばらつきによる影響を受けることが無い。
【0029】
第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bは、表面実装タイプのフェライトビーズに代表されるビーズ素子であってもよい。ビーズ素子は、高周波数帯域でインピーダンスが高くなる周波数特性を有しており、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bとしてビーズ素子を用いることにより、10数MHzから200MHzにおけるゲートノード18aとソースノード19との間のインピーダンスが大きくなり、10数MHzから200MHzにおけるゲートノード18bとソースノード19との間のインピーダンスが大きくなり、電気的振動を抑制することができる。また、ビーズ素子は様々なインピーダンスの周波数特性を持つものが提供されており、実装形態が変化して電気的振動の周波数帯域が変化しても、適切な特性のビーズ素子を選定することで、所望の周波数帯域でゲートノード18aとソースノード19との間、および、ゲートノード18bとソースノード19との間のインピーダンスを大きくして電気的振動を抑制することができる。
【0030】
また、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bは、プリント基板配線で構成されたコイルであってもよい。第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bをプリント基板配線で構成されたコイルによって実現することによって、実装部品を減らすことが可能である。コイルは0Hz程度の低周波数の帯域から高周波数の帯域になるにつれインピーダンスが高くなる周波数特性を有するため、電気的振動の周波数帯域でインピーダンスが大きくなり振動を抑制することができる。
【0031】
以上のように、実施の形態1による半導体装置は、ゲート電圧出力端子14からスイッチング制御信号を出力する駆動回路13と、第1半導体スイッチング素子11aを内包し、第1基準電位端子9aおよびスイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子8aを備えた第1パワーモジュール7aと、第1パワーモジュール7aに並列に接続され、第2半導体スイッチング素子11bを内包し、第2基準電位端子9bおよびスイッチング制御信号が入力される第2制御信号入力端子8bを備えた第2パワーモジュール7bと、ゲート電圧出力端子14および第1制御信号入力端子8aの間に接続された第1抵抗12aと、ゲート電圧出力端子14および第2制御信号入力端子8bの間に接続された第2抵抗12bと、第1制御信号入力端子8aおよび第1基準電位端子9aの間に接続された第1コンデンサ16aと、第2制御信号入力端子8bおよび第2基準電位端子9bの間に接続された第2コンデンサ16bと、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bを経由して第2制御信号入力端子8bまでの制御端子間経路において、第1コンデンサ16aに直列に接続された第1フィルタ17aとを備え、第1フィルタ17aは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有するので、ゲートコンデンサを備えることによって発生する電気的振動を簡易な追加回路で抑制することができる。
【0032】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2による半導体装置5aの回路図である。図6に示す実施の形態2による半導体装置5aの回路図を図2に示す実施の形態1による半導体装置5aの回路図と比較すると、第3抵抗20aおよび第4抵抗20bが追加されている。実施の形態2による半導体装置の他の構成は、実施の形態1による半導体装置の構成と同じである。
【0033】
第3抵抗20aは、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aを経由して第1基準電位端子9aまでの第1ループ経路において第1コンデンサ16aに直列に接続されている。図6においては、第3抵抗20aは、第1フィルタ17aとソースノード19との間に接続されている。第4抵抗20bは、第2制御信号入力端子8bから第2コンデンサ16bを経由して第2基準電位端子9bまでの第2ループ経路において第2コンデンサ16bに直列に接続されている。図6においては、第4抵抗20bは、第2フィルタ17bとソースノード19との間に接続されている。パワーモジュールは一般的に寄生容量を有しており、第1パワーモジュール7aは、ゲート端子である第1制御信号入力端子8aとソース端子である第1基準電位端子9aとの間にゲート-ソース間寄生容量Cgsである寄生容量71aを有し、ゲート端子である第1制御信号入力端子8aとドレイン端子10aとの間にゲート-ドレイン間寄生容量Cgdである寄生容量72aを有し、ドレイン端子10aとソース端子である第1基準電位端子9aとの間にドレイン-ソース間寄生容量Cdsである寄生容量73aを有している。同様に、第2パワーモジュール7bは、寄生容量71bと寄生容量72bと寄生容量73bとを有している。例えば、図3に示した比較例による半導体装置においては、第1制御信号入力端子8aおよび第1基準電位端子9aの間にゲートコンデンサである第1コンデンサ16aが接続されることにより、第1コンデンサ16aからゲートノード18aを通り、第1制御信号入力端子8aに入り、寄生容量71aを経由して、第1基準電位端子9a、ソースノード19、第1コンデンサ16aに戻る第1ループ経路が形成され、この第1ループ経路において電気的振動であるLC共振が発生する。ゲートコンデンサが接続されることによってLC共振が発生すると、第1パワーモジュール7aのゲート端子である第1制御信号入力端子8aとソース端子である第1基準電位端子9aとの間の電圧が振動し、その影響を受けてドレイン端子10aと第1基準電位端子9aとの間の電流が振動することで、急峻な電流変化が発生し得る。このような急峻な電流変化が発生させるサージが半導体スイッチング素子の耐圧を超えると、半導体スイッチング素子が破壊されるおそれがある。
【0034】
図6に示す実施の形態2による半導体装置のように、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aを経由して第1基準電位端子9aまでの第1ループ経路において第1コンデンサ16aに直列に第3抵抗20aを接続することによって、第1パワーモジュール7aの寄生容量71aに流れるゲート-ソース間電流に重畳するLC共振を抑制することができ、その結果、第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電圧に重畳するLC共振を抑制することができ、半導体スイッチング素子の破壊を防止することができる。第4抵抗20bについても、第2パワーモジュール7bのゲート-ソース間電圧に重畳するLC共振を抑制することができ、半導体スイッチング素子の破壊を防止することができる。
【0035】
図7は、第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電流である第1制御信号入力端子8aと第1基準電位端子9aとの間の電流の時間変化を示した図であり、点線は図3に示す比較例の第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電流の時間変化を示しており、実線は図6に示す実施の形態2の第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電流の時間変化を示している。点線の比較例のゲート-ソース間電流ではゲートコンデンサを実装することによるLC共振が発生しているが、実線の実施の形態2のゲート-ソース間電流ではLC共振が抑制されている。図8は、第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電圧である第1制御信号入力端子8aと第1基準電位端子9aとの間の電圧の時間変化を示したものであり、点線は図3に示す比較例の第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電圧の時間変化を示しており、実線は図6に示す実施の形態2の第1パワーモジュール7aのゲート-ソース間電圧の時間変化を示している。点線の比較例のゲート-ソース間電圧ではゲートコンデンサを実装することによるLC共振が発生しているが、実線の実施の形態2のゲート-ソース間電圧ではLC共振が抑制されている。
【0036】
なお、図6に示す実施の形態2における半導体装置については、第1フィルタ17aとソースノード19との間に第3抵抗20aを接続し、第2フィルタ17bとソースノード19との間に第4抵抗20bを接続することにより、実装を容易にしているが、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aを経由して第1基準電位端子9aまでの第1ループ経路において第1コンデンサ16aに直列に第3抵抗20aが接続され、第2制御信号入力端子8bから第2コンデンサ16bを経由して第2基準電位端子9bまでの第2ループ経路において第2コンデンサ16bに直列に第4抵抗20bが接続されていれば、電気的振動であるLC共振を抑制する同様の効果を得ることができる。
【0037】
なお、第3抵抗20aの抵抗値は、ゲート抵抗である第1抵抗12aの抵抗値よりも小さく、1オームよりも大きなものを選定すれば、第1フィルタ17aはゲートコンデンサである第1コンデンサ16aの役割を妨げずに電気的振動であるLC共振を抑制することができる。同様に、第4抵抗20bの抵抗値は、ゲート抵抗である第2抵抗12bの抵抗値よりも小さく、1オームよりも大きなものを選定すれば、第2フィルタ17bはゲートコンデンサである第2コンデンサ16bの役割を妨げずに電気的振動であるLC共振を抑制することができる。
【0038】
図9は、図6に示す実施の形態2による半導体装置5aの基板への配置例を示す図である。図9は、基板21に、駆動回路13、第1抵抗12a、第2抵抗12b、第1コンデンサ16a、第1フィルタ17a、第3抵抗20a、第2コンデンサ16b、第2フィルタ17bおよび第4抵抗20bが配置されている様子を示している。第1抵抗12a、第2抵抗12b、第1フィルタ17a、第2フィルタ17b、第3抵抗20a、第4抵抗20b、第1コンデンサ16a、第2コンデンサ16bおよび駆動回路13は、図9に示すように1つの基板上に実装してもよい。第1フィルタ17a、第2フィルタ17b、第3抵抗20a、第4抵抗20b、第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bは、表面実装タイプの素子によって容易に構成することができる。例えば、第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bをチップビーズ素子によって構成し、第3抵抗20aおよび第4抵抗20bをチップ抵抗素子によって構成し、第1コンデンサ16aおよび第2コンデンサ16bをチップコンデンサ素子によって構成することにより、駆動回路13と同一の基板上に容易に実装でき、追加のスペースを用意する必要が無く、電気的振動の抑制の機能追加による半導体装置の大型化を避けることができる。
【0039】
図10は、実施の形態2による半導体装置5aの変形例の回路図である。図10に示す実施の形態2による半導体装置5aの変形例の回路図を図6に示す実施の形態2による半導体装置5aの回路図と比較すると、第1フィルタおよび第2フィルタの接続位置が異なっており、図10に示す変形例では、第1フィルタ17cは第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8aとゲートノード18aとの間に接続されており、第2フィルタ17dは第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8bとゲートノード18bとの間に接続されている。すなわち、第1フィルタ17cは第1パワーモジュール7aの第1制御信号入力端子8aと第1コンデンサ16aとの間に接続されており、第2フィルタ17dは第2パワーモジュール7bの第2制御信号入力端子8bと第2コンデンサ16bとの間に接続されている。制御端子間経路における電気的振動の周波数において、第1パワーモジュール7aとゲートノード18aとの間のインピーダンスが大きくなり、第2パワーモジュール7bとゲートノード18bとの間のインピーダンスが大きくなるので、図10に示す半導体装置5aの変形例においても電気的振動を抑制することができる。実際の回路においては、図6に示す半導体装置の回路と図10に示す半導体装置の回路のうち、より効果の出る方を選択してもよく、図7に示す第1フィルタ17aおよび第2フィルタ17bの位置と図10に示す第1フィルタ17cおよび第2フィルタ17dの位置の両方の位置に第1フィルタおよび第2フィルタを配置してもよい。
【0040】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3による半導体装置5aの回路図である。実施の形態3による半導体装置5aは、1つのパワーモジュールである第1パワーモジュール7aのみを備えている。また、図6に示す実施の形態2による半導体装置5aと同様に、駆動回路13のゲート電圧出力端子14と第1制御信号入力端子8aとの間に第1抵抗12aが接続されており、第1制御信号入力端子8aと第1基準電位端子9aとの間に第1コンデンサ16aが接続されており、第1制御信号入力端子8aから第1コンデンサ16aを経由して第1基準電位端子9aまでの第1ループ経路において第1コンデンサ16aに直列に第3抵抗20aが接続されている。
【0041】
実施の形態1および実施の形態2においては、第1パワーモジュール7aおよび第2パワーモジュール7bの2つのパワーモジュールを備えた半導体装置について説明したが、半導体装置が1つのパワーモジュールである第1パワーモジュール7aのみを備えている場合は、パワーモジュール間の電気的振動が発生しないため、図11に示すように第1フィルタ17aを有しない構成としてもよい。図11に示す実施の形態3による半導体装置5aにおいても、第1コンデンサ16aからゲートノード18aを通り、第1制御信号入力端子8aに入り、寄生容量71aを経由して、第1基準電位端子9a、ソースノード19、第1コンデンサ16aに戻る第1ループ経路で発生する電気的振動であるLC共振を、第3抵抗20aによって抑制することができる。
【0042】
なお、実施の形態3による半導体装置5aを構成するそれぞれの部品は、実施の形態1あるいは実施の形態2による半導体装置5aと同様の変形、数値設定、実装および部品選定を行うことができる。例えば、第3抵抗20aの抵抗値は第1抵抗12aの抵抗値よりも小さく、1オームよりも大きいことが望ましい。また、第1半導体スイッチング素子11aは、ワイドバンドギャップ半導体から成るものでもよい。さらに、第1抵抗12a、第3抵抗20a、第1コンデンサ16aおよび駆動回路13は、1つの基板上に実装してもよい。
【0043】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0044】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0045】
(付記1)
ゲート電圧出力端子からスイッチング制御信号を出力する駆動回路と、
第1半導体スイッチング素子を内包し、第1基準電位端子および前記スイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子を備えた第1パワーモジュールと、
前記第1パワーモジュールに並列に接続され、第2半導体スイッチング素子を内包し、第2基準電位端子および前記スイッチング制御信号が入力される第2制御信号入力端子を備えた第2パワーモジュールと、
前記ゲート電圧出力端子および前記第1制御信号入力端子の間に接続された第1抵抗と、
前記ゲート電圧出力端子および前記第2制御信号入力端子の間に接続された第2抵抗と、
前記第1制御信号入力端子および前記第1基準電位端子の間に接続された第1コンデンサと、
前記第2制御信号入力端子および前記第2基準電位端子の間に接続された第2コンデンサと、
前記第1制御信号入力端子から前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサを経由して前記第2制御信号入力端子までの制御端子間経路において、前記第1コンデンサに直列に接続された第1フィルタとを備え、
前記第1フィルタは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有することを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記第2制御信号入力端子および前記第2基準電位端子の間において前記第2コンデンサに直列に接続され、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが高くなる周波数特性を有する第2フィルタを備え、
前記第1フィルタは、前記第1制御信号入力端子および前記第1基準電位端子の間において前記第1コンデンサに直列に接続されたことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、1MHz以下の周波数におけるインピーダンスが前記制御端子間経路を含む経路で発生する電気的振動の周波数におけるインピーダンスよりも小さいことを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記第1フィルタの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、前記第1抵抗の抵抗値よりも小さく、
前記第2フィルタの0Hzにおけるインピーダンスの大きさは、前記第2抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする付記2または3に記載の半導体装置。
(付記5)
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、0Hzにおけるインピーダンスが1オーム以下であることを特徴とする付記2から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、ビーズ素子であることを特徴とする付記2から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、プリント基板配線で構成されたコイルであることを特徴とする付記2から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記第1制御信号入力端子から前記第1コンデンサを経由して前記第1基準電位端子までの第1ループ経路において前記第1コンデンサに直列に接続された第3抵抗と、
前記第2制御信号入力端子から前記第2コンデンサを経由して前記第2基準電位端子までの第2ループ経路において前記第2コンデンサに直列に接続された第4抵抗とを備えることを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記第3抵抗の抵抗値は前記第1抵抗の抵抗値よりも小さく、
前記第4抵抗の抵抗値は前記第2抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする付記8に記載の半導体装置。
(付記10)
前記第3抵抗および前記第4抵抗の抵抗値は、1オームよりも大きいことを特徴とする付記9に記載の半導体装置。
(付記11)
前記第1半導体スイッチング素子および前記第2半導体スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体から成るものであることを特徴とする付記1から10のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記12)
前記第1フィルタ、前記第2フィルタ、前記駆動回路、前記第1抵抗、前記第2抵抗、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサは、1つの基板上に実装されていることを特徴とする付記2から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記13)
ゲート電圧出力端子からスイッチング制御信号を出力する駆動回路と、
第1半導体スイッチング素子を内包し、第1基準電位端子および前記スイッチング制御信号が入力される第1制御信号入力端子を備えた第1パワーモジュールと、
前記ゲート電圧出力端子および前記第1制御信号入力端子の間に接続された第1抵抗と、
前記第1制御信号入力端子および前記第1基準電位端子の間に接続された第1コンデンサと、
前記第1制御信号入力端子から前記第1コンデンサを経由して前記第1基準電位端子までの第1ループ経路において前記第1コンデンサに直列に接続された第3抵抗とを備える半導体装置。
(付記14)
前記第3抵抗の抵抗値は前記第1抵抗の抵抗値よりも小さいことを特徴とする付記13に記載の半導体装置。
(付記15)
前記第3抵抗の抵抗値は、1オームよりも大きいことを特徴とする付記14に記載の半導体装置。
(付記16)
前記第1半導体スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体から成るものであることを特徴とする付記13から15のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記17)
前記駆動回路、前記第1抵抗および前記第1コンデンサは1つの基板上に実装されていることを特徴とする付記13から16のいずれか1項に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0046】
1 インバータ回路、2 直流電源、3 モータ、4 平滑コンデンサ、5a、5b、5c、5d、5e、5f 半導体装置、6a、6b、6c 電力出力ノード、7a 第1パワーモジュール、7b 第2パワーモジュール、8a 第1制御信号入力端子、8b 第2制御信号入力端子、9a 第1基準電位端子、9b 第2基準電位端子、10a、10b ドレイン端子、11a 第1半導体スイッチング素子、11b 第2半導体スイッチング素子、12a 第1抵抗、12b 第2抵抗、13 駆動回路、14 ゲート電圧出力端子、15 ソース電位端子、16a 第1コンデンサ、16b 第2コンデンサ、17a 第1フィルタ、17b 第2フィルタ、17c 第1フィルタ、17d 第2フィルタ、18a、18b ゲートノード、19 ソースノード、20a 第3抵抗、20b 第4抵抗、21 基板、71a、71b、72a、72b、73a、73b 寄生容量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11