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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150926
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20241017BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F16H1/16 Z
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063977
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中里 洋平
【テーマコード(参考)】
3J009
5H607
【Fターム(参考)】
3J009DA11
3J009EA23
3J009EA32
3J009EC10
3J009FA04
3J009FA14
5H607AA04
5H607BB01
5H607DD03
5H607EE32
(57)【要約】
【課題】モータが回転駆動する際の異音をより小さくすることが可能な減速装置を提供すること。
【解決手段】ウォームシャフトハウジングを含む減速機ハウジングを備える。ウォームシャフトハウジングは、筒状部と、モータに設けられるモータ側フランジがボルトを介して締結されるモータ取付けフランジと、を有する。モータ取付けフランジの環状平面部は、軸方向から見て、第1孔および第2孔を含むボルト孔の周縁部と、周縁部から内周側に向けて突出する突出部と、周縁部から環状平面部に沿って弧状に延びる延設部と、突出部に対して周方向に隣接して配置され且つ突出部よりも軸方向の他方側に向けて凹む凹部と、を有し、凹部は、内周側が開いている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸に取り付けられ且つウォームホイールに噛み合うウォームシャフトを収容するウォームシャフトハウジングを含む減速機ハウジングを備え、
前記ウォームシャフトハウジングは、
前記ウォームシャフトの中心軸の軸回りの周方向に沿って延びる筒状部と、
前記筒状部における軸方向の一方側の端部に設けられ且つ前記モータに設けられるモータ側フランジがボルトを介して締結されるモータ取付けフランジと、を有し、
前記モータ側フランジおよび前記モータ取付けフランジの一方には、前記ボルトの雄ねじ部が貫通する第1孔が設けられ、他方には前記ボルトの雄ねじ部が噛み合う雌ねじ部が設けられる第2孔が設けられ、
前記モータ取付けフランジにおける軸方向の一方側の端面には、周方向に沿って環状に延び且つ前記中心軸に直交する平坦な環状平面部が設けられ、
当該環状平面部は、軸方向から見て、
前記第1孔および前記第2孔を含むボルト孔の周縁部と、当該周縁部から内周側に向けて突出する突出部と、当該周縁部から前記環状平面部に沿って弧状に延びる延設部と、前記突出部に対して周方向に隣接して配置され且つ前記突出部よりも軸方向の他方側に向けて凹む凹部と、を有し、
当該凹部は、内周側が開いている、
減速装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記突出部に対して周方向の両側に配置される、
請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
軸方向から見て、前記突出部は、
周方向中央部に位置する本体部と、
当該本体部の周方向の縁から周方向に突き出る突起部と、を有する、
請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項4】
軸方向から見て、
前記突出部および前記凹部は、前記中心軸を挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ配置される、
請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項5】
軸方向から見て、
前記突出部の内周面および前記延設部の内周縁は、前記中心軸の軸回りの周方向に沿って延びる、
請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項6】
軸方向から見て、
前記ボルト孔は、前記中心軸を挟んで対称な位置に設けられる、
請求項1または2に記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のステアリング装置は、中心軸の軸方向に延びるステアリングコラムと、ステアリングコラムに取り付けられる減速装置と、を備える。特許文献1の図3に示すように、減速装置は、モータ取付けフランジを有する。当該モータ取付けフランジには、ボルト孔が設けられ、図示しないモータのフランジが当該モータ取付けフランジのボルト孔にボルトを介して締結される。当該モータ取付けフランジには、ボルト孔の内周側に開口部を有する。当該開口部は、例えばモータ取付けフランジの軽量化のために設けられる。当該開口部は、所謂閉じた形状を有する。なお、閉じた形状とは、開口部の縁が閉じていることを意味する。
【0003】
また、モータの出力軸には、ウォームシャフトが取り付けられており、当該ウォームシャフトはウォームホイールに噛み合う。従って、モータが回転駆動すると、ウォームシャフトおよびウォームホイールが回転する。そして、ウォームシャフトには、ウォームホイールからの反力が、ウォームシャフトの軸方向に向けて作用する。従って、ウォームホイールからの反力によって、モータは、モータ取付けフランジから遠ざかる方向またはモータ取付けフランジに近づく方向に僅かに移動するため、モータの回転駆動時には、モータ取付けフランジのボルト孔の周縁部に最も力が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-35486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、前述のように、特許文献1では、ボルト孔の内周側に、閉じた形状の開口部が設けられている。従って、ボルト孔の周縁部に掛かる力は、ボルト孔の周縁部から当該開口部の外周側および内周側を伝わって移動する。具体的には、当該開口部の周方向中央部における当該開口部の外周側から当該開口部の周方向端部に向けて移動する第1の経路と、当該開口部の周方向中央部における当該開口部の内周側から当該開口部の周方向端部に向けて移動する第2の経路と、が設けられる。第1の経路を伝わる力および第2の経路を伝わる力は、当該開口部の周方向端部において交差して合流し、当該合流部分で流れが滞留してしまう。即ち、ウォームホイールからの反力に基づく力は、モータ取付けフランジにおけるボルト孔の周縁部の近傍域という狭い領域でしか吸収することができず、モータが回転駆動する際に発生する音や振動音などの異音が生じやすくなる。
【0006】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、モータが回転駆動する際の異音をより小さくすることが可能な減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本開示の一態様の減速装置は、モータの出力軸に取り付けられ且つウォームホイールに噛み合うウォームシャフトを収容するウォームシャフトハウジングを含む減速機ハウジングを備え、前記ウォームシャフトハウジングは、前記ウォームシャフトの中心軸の軸回りの周方向に沿って延びる筒状部と、前記筒状部における軸方向の一方側の端部に設けられ且つ前記モータに設けられるモータ側フランジがボルトを介して締結されるモータ取付けフランジと、を有し、前記モータ側フランジおよび前記モータ取付けフランジの一方には、前記ボルトの雄ねじ部が貫通する第1孔が設けられ、他方には前記ボルトの雄ねじ部が噛み合う雌ねじ部が設けられる第2孔が設けられ、前記モータ取付けフランジにおける軸方向の一方側の端面には、周方向に沿って環状に延び且つ前記中心軸に直交する平坦な環状平面部が設けられ、当該環状平面部は、軸方向から見て、前記第1孔および前記第2孔を含むボルト孔の周縁部と、当該周縁部から内周側に向けて突出する突出部と、当該周縁部から前記環状平面部に沿って弧状に延びる延設部と、前記突出部に対して周方向に隣接して配置され且つ前記突出部よりも軸方向の他方側に向けて凹む凹部と、を有し、当該凹部は、内周側が開いている。
【0008】
前述のように、特許文献1では、ウォームホイールからの反力によって、モータは、モータ取付けフランジから遠ざかる方向またはモータ取付けフランジに近づく方向に僅かに移動するため、モータの回転駆動時には、モータ取付けフランジのボルト孔の周縁部に最も力が掛かる。ここで、特許文献1では、ボルト孔の内周側に、閉じた形状の開口部が設けられているため、ウォームホイールからの反力に基づく力は、モータ取付けフランジにおけるボルト孔の周縁部の近傍領域でしか吸収することができず、モータが回転駆動する際に発生する音や振動音などの異音が生じやすくなる。以下、簡単に説明する。
【0009】
特許文献1では、ボルト孔の周縁部に掛かる力は、ボルト孔の周縁部から当該開口部の外周側および内周側を伝わって移動する。具体的には、当該開口部の周方向中央部における当該開口部の外周側から当該開口部の周方向端部に向けて移動する第1の経路と、当該開口部の周方向中央部における当該開口部の内周側から当該開口部の周方向端部に向けて移動する第2の経路と、が設けられる。第1の経路を伝わる力および第2の経路を伝わる力は、当該開口部の周方向端部において交差して合流し、当該合流部分で流れが滞留してしまう。
【0010】
これに対して、本開示では、突出部に対して周方向に隣接する凹部を有し、凹部は、内周側が開いている。従って、例えば、ウォームホイールからの反力に起因する力(面圧)は、凹部の外周側を通る経路のみとなる。即ち、特許文献1では、開口部の内周側と外周側とにそれぞれ力が伝達する経路が設けられるが、本開示では、凹部の外周側を通る経路のみとなるため、伝わる力が合流して滞留することが生じにくくなる。よって、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部のより広い(長い)範囲に亘って広がるため、本開示によれば、モータが回転駆動する際の異音をより小さくすることが可能な減速装置を提供することが可能となる。
【0011】
望ましい態様として、前記凹部は、前記突出部に対して周方向の両側に配置される。これによれば、突出部に対して周方向の一方側に位置する凹部の外周側を通る経路と、突出部に対して周方向の他方側に位置する凹部の外周側を通る経路と、の2つの経路を設けることができる。よって、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部のより広い(長い)範囲に亘って広がる。
【0012】
望ましい態様として、軸方向から見て、前記突出部は、周方向中央部に位置する本体部と、当該本体部の周方向の縁から周方向に突き出る突起部と、を有する。これによれば、本体部のみの突出部の場合である場合と比較して、突出部における内周縁の周方向長さをより長く設定することができる。よって、モータの端部をモータ取付けフランジに対して所謂インロー結合する場合に、より安定してモータの端部を支持することができる。
【0013】
望ましい態様として、軸方向から見て、前記突出部および前記凹部は、前記中心軸を挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ配置される。これによれば、中心軸を挟んだ一方側にのみ突出部および凹部を設ける場合に対して、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部のより広い(長い)範囲に亘って広がる。
【0014】
望ましい態様として、軸方向から見て、前記突出部の内周面および前記延設部の内周縁は、前記中心軸の軸回りの周方向に沿って延びる。これによれば、モータの端部をモータ取付けフランジに対して所謂インロー結合する場合、例えば、突出部の内周縁および延設部の内周縁によってガイドされ、モータに設けられる環状凸部の径方向の位置が位置決めされる。
【0015】
望ましい態様として、軸方向から見て、前記ボルト孔は、前記中心軸を挟んで対称な位置に設けられる。これによれば、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部全体で均等にバランスよく、広い(長い)範囲に亘って広がる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、モータが回転駆動する際の異音をより小さくすることが可能な減速装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2A図2Aは、第1実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aを正面から見た模式図である。
図3図3は、図2Aのモータの斜視図である。
図4図4は、第1実施形態の減速機ハウジングの斜視図である。
図5図5は、図4を上側から見た平面図である。
図6図6は、図5のモータ取付けフランジを拡大した平面図である。
図7図7は、図6の一部を拡大した模式図である。
図8A図8Aは、第1実施形態において、ボルトを締め付けたときのモータ取付けフランジに加わる面圧を示す模式図である。
図8B図8Bは、比較例において、ボルトを締め付けたときのモータ取付けフランジに加わる面圧を示す模式図である。
図9図9は、第1変形例に係るモータ取付けフランジを示す模式図である。
図10図10は、第2変形例に係るモータ取付けフランジを示す模式図である。
図11図11は、第2実施形態の減速機ハウジングの斜視図である。
図12図12は、図11を上側から見た平面図である。
図13図13は、図12のモータ取付けフランジを拡大した平面図である。
図14図14は、図13の一部を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、図面中X方向は、ウォームホイールの中心軸の軸方向を示す。X1側は、X2側の反対側である。Y方向は、ウォームシャフトの中心軸の軸方向を示す。Y1側は、Y2側の反対側である。Y方向は、X方向に直交する。Z方向は、X方向およびY方向に直交する。Z1側は、Z2側の反対側である。
【0019】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
【0020】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、中間シャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ステアリングギヤ88と、ECU90と、車速センサ95と、イグニッションスイッチ98と、電源装置99と、を備える。
【0021】
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと出力軸82bとを有する。入力軸82aの前方端部は、出力軸82bの内側に挿入される。操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、モータ93と、トルクセンサ1と、を含む。操舵力アシスト機構83については、詳細に後述する。中間シャフト85は、ユニバーサルジョイント84とユニバーサルジョイント86とを連結している。中間シャフト85の一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87の一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、ピニオンシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。ユニバーサルジョイント84及びユニバーサルジョイント86は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転が中間シャフト85を介してピニオンシャフト87に伝わる。すなわち、中間シャフト85はステアリングシャフト82に伴って回転する。
【0022】
ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを含む。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0023】
電動パワーステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ1と、車速センサ95と、を含む。モータ93、トルクセンサ1及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ1は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、電動パワーステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に設けられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0024】
ECU90は、モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ1及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいてモータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、モータ93の誘起電圧の情報又はモータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90がモータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0025】
図2Aは、第1実施形態の操舵力アシスト機構の斜視図である。図2Bは、図2Aを正面から見た模式図である。図3は、図2Aのモータの斜視図である。
【0026】
図2Aに示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、モータ93とを含む。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。図2Bに示すように、減速装置92は、ウォームシャフト922と、ウォームホイール921と、減速機ハウジング100と、を有する。ウォームシャフト922は、ウォームホイール921に噛みあう。ウォームシャフト922は、モータ93の出力軸93dに取り付けられる。ウォームシャフト922は、中心軸AX1の軸回り方向に回転する。ウォームホイール921は、中心軸AX2の軸回り方向に回転する。ウォームホイール921は、ウォームシャフト922に対して直交する。即ち、中心軸AX2は、中心軸AX1に対して直交する。中心軸AX1の軸方向は、Y方向である。中心軸AX2の軸方向は、X方向である。
【0027】
図2Aおよび図2Bに示すように、ウォームシャフトハウジング2は、ウォームホイールハウジング3に対してZ1側に隣接する。具体的には、ウォームシャフトハウジング2とウォームホイールハウジング3とは、例えば鋳造によって一体成形される。ウォームシャフトハウジング2に対してY2側には、モータ93が取り付けられる。ウォームシャフトハウジング2のモータ取付けフランジ21にモータ用ハウジング93aが取り付けられる。具体的には、モータ用ハウジング93aには、モータ側フランジ93bが設けられ、モータ側フランジ93bにはボルト用嵌合孔93c(第2孔、ボルト孔)が設けられる。ボルト用嵌合孔93cには、雌ねじが形成され、当該雌ねじには、ボルトBLの雄ねじ部が噛み合う。モータ取付けフランジ21には、ボルトBLが貫通するボルト貫通孔211a(図4参照)が形成される。ボルト貫通孔211aは、第1孔またはボルト孔とも称する。モータ取付けフランジ21のボルト貫通孔211a(第1孔、ボルト孔)にボルトBLの雄ねじ部を通し、当該雄ねじ部をモータ側フランジ93bのボルト用嵌合孔93cの雌ねじに噛み合わせることによって、モータ取付けフランジ21とモータ側フランジ93bとは、ボルトBLを介して締結される。
【0028】
図3に示すように、モータ93のモータ用ハウジング93aは、ハウジング本体部93gと、コネクタ部93eと、2つのモータ側フランジ93bと、環状凸部93fと、出力軸93dと、を備える。
【0029】
ハウジング本体部93gは、略円柱形状を有する。ハウジング本体部93gは、中心軸AX1の軸方向に延びる。ハウジング本体部93gの外周面は、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って延びる円筒面である。モータ側フランジ93bは、ハウジング本体部93gにおける下端部の側面に設けられる。2つのモータ側フランジ93bは、軸方向から見て、中心軸AX1を挟んで一対に設けられる。具体的には、2つのモータ側フランジ93bのうちの一方は、中心軸AX1に対してX1側に設けられ、2つのモータ側フランジ93bのうちの他方は、中心軸AX1に対してX2側に設けられる。ハウジング本体部93gの底面93hは、平面である。底面93hは、後述するモータ取付けフランジ21の環状平面部211に当接する。環状凸部93fは、ハウジング本体部93gの底面に設けられる。環状凸部93fは、中心軸AX1の軸回りの周方向に延びる。環状凸部93fは、下方側(Y1側)に突出する。軸方向から見て、2つのモータ側フランジ93bは、環状凸部93fの外側に位置する。なお、モータ93の出力軸93dは、下方側(Y1側)に突出する。
【0030】
図4は、第1実施形態の減速機ハウジングの斜視図である。図4に示すように、減速機ハウジング100は、ウォームシャフトハウジング2と、ウォームホイールハウジング3と、を含む。
【0031】
ウォームシャフトハウジング2は、ウォームシャフト922(図2B参照)を収容する。ウォームシャフトハウジング2は、筒状部22と、モータ取付けフランジ21と、補強リブ41、42と、を有する。
【0032】
図4に示すように、筒状部22は、ウォームシャフト922の中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って延びる。
【0033】
モータ取付けフランジ21は、筒状部22におけるY2側の端部に設けられる。モータ取付けフランジ21は、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。中心軸AX1に直交する断面において、モータ取付けフランジ21におけるX1側およびX2側の部位には、径方向の外側に突出する突起部分210がそれぞれ一対に設けられる。突起部分210に、前述したボルト貫通孔211aが設けられる。
【0034】
モータ取付けフランジ21は、Y2側からY1側に向かうに従って、環状平面部211と、環状面212と、底面213と、環状面214と、が設けられる。環状平面部211および底面213は、中心軸AX1に直交して平面状に延びる。環状面212および環状面214は、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。環状平面部211における径方向の内側の端部からY1側に向けて環状面212が延びる。環状面212における軸方向の端部から径方向の内側に向けて底面213が延びる。底面213における径方向の内側の端部からY1側に向けて環状面214が延びる。環状面212の内周側には、モータ用ハウジング93aの端部が挿入される。換言すると、モータ用ハウジング93aの端部は、モータ取付けフランジ21に対して所謂インロー結合される。従って、モータ用ハウジング93aがモータ取付けフランジ21に結合された状態においては、環状凸部93fは、環状面212の内周側に近接して対向配置される。
【0035】
また、補強リブ41、42は、モータ取付けフランジ21および筒状部22の外周面220に跨って固定される。補強リブ41は、筒状部22のX1側およびX2側にそれぞれ設けられる。補強リブ42は、筒状部22のZ1側に設けられる。
【0036】
ウォームホイールハウジング3は、ウォームホイール921(図2B参照)を収容する。ウォームホイールハウジング3は、円板部31からX方向に突出するリブ33を有する。また、ウォームホイールハウジング3は、車体取付部34を有し、車体取付部34が図示しない車体部材に取り付けられる。なお、ウォームホイールハウジング3には、円形の貫通孔Hが設けられる。
【0037】
次に、モータ取付けフランジ21について更に詳しく説明する。図5は、図4を上側から見た平面図である。図6は、図5のモータ取付けフランジを拡大した平面図である。図7は、図6の一部を拡大した模式図である。
【0038】
図5に示すように、環状平面部211には、X1側およびX2側に突起部分210がそれぞれ設けられる。突起部分210は、環状平面部211の外周から径方向外側へ向けて突き出る部分である。環状平面部211は、中心軸AX1に直交する平坦面である。即ち、モータ取付けフランジ21におけるY2側(軸方向の一方側)の端面には、周方向に沿って環状に延びる環状平面部211が設けられる。環状平面部211に、モータ用ハウジング93aの底面93hが当接する。本実施形態では、突起部分210は、平面視で略三角形の形状を有する。即ち、X1側の突起部分210は、X1側へ向けて突き出る平面視で略三角形の形状を有する。X2側の突起部分210は、X2側へ向けて突き出る平面視で略三角形の形状を有する。
【0039】
中心軸AX1の軸方向から見て、中心軸AX1を通りX方向に延びる直線を直線L1とし、中心軸AX1を通りZ方向に延びる直線を直線L2とする。直線L1は、直線L2に直交する。直線L1は、X1側の突起部分210およびX2側の突起部分210を通る。
【0040】
図5に示すように、環状平面部211は、ボルト貫通孔211a(ボルト孔)の周縁部と、当該周縁部から内周側に向けて突出する突出部51、52と、当該周縁部から環状平面部211に沿って円弧状に延びる延設部211eと、突出部51、52に対して周方向に隣接して配置され且つ突出部51、52よりもY1側(軸方向の他方側)に向けて凹む凹部53、54、55、56と、を有する。
【0041】
X1側においては、突出部51は、ボルト貫通孔211aに対してX2側(中心軸AX1側)に位置する。凹部53は、突出部51に対してZ2側に隣接する。凹部53は、底面213と繋がる。即ち、凹部53の底面は底面213と面一である。凹部54は、突出部51に対してZ1側に隣接する。凹部54は、底面213と繋がる。即ち、凹部54の底面は底面213と面一である。このように、凹部53および凹部54は、X2側が開放される。
【0042】
X2側においては、突出部52は、ボルト貫通孔211aに対してX1側(中心軸AX1側)に位置する。凹部55は、突出部52に対してZ2側に隣接する。凹部55は、底面213と繋がる。即ち、凹部55の底面は底面213と面一である。凹部56は、突出部52に対してZ1側に隣接する。凹部56は、底面213と繋がる。即ち、凹部56の底面は底面213と面一である。このように、凹部55および凹部56は、X1側が開放される。X1側の突起部分210およびX2側の突起部分210は、中心軸AX1を挟んで対称に配置される。換言すると、突出部51および突出部52は、中心軸AX1を挟んで対称に配置され、凹部53および凹部56は、中心軸AX1を挟んで対称に配置され、凹部54および凹部55は、中心軸AX1を挟んで対称に配置される。
【0043】
図6および図7を参照して、X1側の突起部分210を詳細に説明するが、X2側の突起部分210についても同様の形状を有する。ボルト貫通孔211aは、中心Cを有する。即ち、ボルト貫通孔211aの内周は、中心Cの軸回りの周方向に延びる円である。突起部分210の外周縁210aは、中心Cの軸回りの周方向に延びる円弧である。外周縁210aとボルト貫通孔211aの内周との最小距離は、距離D2である。X方向から見て、突出部51は、ボルト貫通孔211aと重なる。突出部51は、中心軸AX1の軸方向から見た平面視で矩形状である。突出部51の周方向に沿った幅は、距離D1である。。突出部51の縁は、縁511と、縁512と、縁513と、を有する。縁511は、Z方向に延びる。縁512は、X方向に延びる。縁513は、X方向に延びる。縁512と縁513とは、略平行に延びる。縁512と縁513とは、縁511に対して略直交する。中心Cと縁511とのX方向に沿った距離は、距離D3である。距離D2よりも距離D1が大きく、距離D1よりも距離D3が大きい。直線L1は、突起部分210およびボルト貫通孔211aを通る。なお、図5に示すように、中心軸AX1に対してX1側のボルト貫通孔211aの中心と、中心軸AX1に対してX2側のボルト貫通孔211aの中心と、を結ぶ直線は、直線L1に対してZ方向に僅かにずれて配置される。
【0044】
凹部53は、縁512、縁516、縁518a、縁518bに面する。縁512および縁516は、X方向に延びる。即ち、縁512および縁516は、略平行に延びる。環状面212は、前述したように、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。端211dは、環状面212の角部に位置する。従って、縁516は、端211dからX1側に向けて延びる。縁512と縁516とは、縁518aおよび縁518bを介して繋がる。縁518aおよび縁518bは、中心軸AX1の軸方向(Y方向)から見て、略V字状である。このように、凹部53は、Y方向から見て、開いた形状を有する。
【0045】
凹部54は、縁513、縁515、縁517a、縁517bに面する。縁513および縁515は、X方向に延びる。即ち、縁513および縁515は、略平行に延びる。端211cは、環状面212の角部に位置する。従って、縁515は、端211cからX1側に向けて延びる。縁513と縁515とは、縁517aおよび縁517bを介して繋がる。縁517aおよび縁517bは、中心軸AX1の軸方向(Y方向)から見て、略V字状である。
【0046】
次に、図8Aおよび図8Bを参照して、減速機ハウジング100のモータ取付けフランジ21に掛かる面圧について説明する。詳細には、モータ用ハウジング93aを減速機ハウジング100のモータ取付けフランジ21にボルトBLを介して締結した状態において、モータ取付けフランジ21に掛かる面圧について説明する。図8Aは、第1実施形態において、ボルトを締め付けたときのモータ取付けフランジに加わる面圧を示す模式図である。図8Bは、比較例において、ボルトを締め付けたときのモータ取付けフランジに加わる面圧を示す模式図である。
【0047】
前述のように、環状平面部211に、モータ用ハウジング93aの底面93h(図3参照)が当接する。また、図2Aに示すように、突起部分210がモータ側フランジ93bにボルトBLを介して締結される。即ち、前述のように、モータ取付けフランジ21には、ボルトBLが貫通するボルト貫通孔211a(図4参照)が形成される。モータ取付けフランジ21のボルト貫通孔211aにボルトBLの雄ねじ部を通し、当該雄ねじ部をモータ側フランジ93bの雌ねじに噛み合わせることによって、モータ取付けフランジ21とモータ側フランジ93bとは、ボルトBLを介して締結される。
【0048】
モータ取付けフランジ21とモータ側フランジ93bとが当接し、モータ取付けフランジ21の環状平面部211には、モータ側フランジ93bからの押圧力によって面圧が掛かる。図8Aおよび図8Bにおいて、第1圧力以上の面圧が掛かる部位を斜線部(ハッチング部)で示した。
【0049】
ボルトBLを締めた状態では、環状平面部211のうち最も面圧が高い部位は、ボルト貫通孔211aの外周縁部である。即ち、ボルトBLを締めると、X1側のボルト貫通孔211aの外周縁部から、図5に矢印で示すように経路P1および経路P2を通って面圧が環状平面部211の周方向に沿って伝わる。従って、図8Aに示すように、面圧が第1圧力以上の部位である部位SP1、SP2も、X1側のボルト貫通孔211aの外周縁部から環状平面部211の周方向に沿って経路P1および経路P2を通る部位となる。
【0050】
また、同様に、X2側のボルト貫通孔211aの外周縁部から、図5に矢印で示すように経路P3および経路P4を通って面圧が環状平面部211の周方向に沿って伝わる。従って、図8Aに示すように、面圧が第1圧力以上の部位である部位SP3、SP4も、X2側のボルト貫通孔211aの外周縁部から環状平面部211の周方向に沿った部位となる。
【0051】
これに対して、図8Bに示すモータ取付けフランジ21Aにおいて、凹部53Aは、底部53Aaと側部53Abとに面する。底部53Aaと側部53Abとは交差する。即ち、側部53Abは、底部53Aaから中心軸AX1の軸方向(Y2側)に立ち上がる。凹部53Aは、Y方向から見て、閉じた形状を有する。凹部53Aについて「閉じた形状」とは、凹部53Aが面する側部53Abが全周に亘って繋がっており、凹部53Aの縁である側部53Abが閉じていることを意味する。また、凹部55Aは、凹部53Aと対称な形状を有する。即ち、凹部55Aは、底部55Aaと側部55Abとに面する。底部55Aaと側部55Abとは交差する。凹部55Aは、Y方向から見て、閉じた形状を有する。
【0052】
X1側のボルトBLを締めると、X1側のボルト貫通孔211Aaの外周縁部から、図8Bに矢印で示すように経路P11、P12、P13および経路P14を通って面圧が環状平面部211Aの周方向に沿って伝わる。ここで、図8Aを参照すると、比較例においては、面圧が移動する経路が2つ増えて、凹部53Aの内周側である経路P13および経路P14を介してボルトBLの締結時に面圧が移動する。経路P11と経路P13とが交差し、経路P12と経路P14とが交差する。従って、経路P11に沿って移動する面圧と経路P13に沿って移動する面圧とが合流して当該合流した面圧の移動が抑制される。また、経路P12に沿って移動する面圧と経路P14に沿って移動する面圧とが合流して当該合流した面圧の移動が抑制される。この結果、X1側において、面圧が第1圧力以上の部位は、部位SP1A、SP2Aとなる。
【0053】
X2側においては、経路P15と経路P17とが交差し、経路P16と経路P18とが交差する。従って、経路P15に沿って移動する面圧と経路P17に沿って移動する面圧とが合流して当該合流した面圧の移動が抑制される。また、経路P16に沿って移動する面圧と経路P18に沿って移動する面圧とが合流して当該合流した面圧の移動が抑制される。この結果、X2側において、面圧が第1圧力以上の部位は、部位SP3A、SP4Aとなる。
【0054】
従って、図8A図8Bを比較すると、本実施形態の方が比較例よりも、環状平面部211における周方向に長い範囲に面圧が広がる。具体的には、図8Aに示すように、部位SP1の長さは、距離L10である。図8Bに示すように、部位SP1Aの長さは、距離L10Aである。距離L10は、距離L10Aよりも長い。
【0055】
以上説明したように、減速装置92は、ウォームシャフトハウジング2を含む減速機ハウジング100を備える。ウォームシャフトハウジング2は、筒状部22と、筒状部22におけるY2側の端部に設けられ且つモータ93に設けられるモータ側フランジ93bがボルトBLを介して締結されるモータ取付けフランジ21と、を有する。モータ側フランジ93bおよびモータ取付けフランジ21の一方には、ボルトBLの雄ねじ部が貫通するボルト貫通孔211a(第1孔)が設けられ、他方にはボルトBLの雄ねじ部が噛み合う雌ねじ部が設けられるボルト用嵌合孔93c(第2孔)が設けられる。モータ取付けフランジ21におけるY2側(軸方向の一方側)の端面には、周方向に沿って環状に延び且つ中心軸AX1に直交する平坦な環状平面部211が設けられる。環状平面部211は、軸方向から見て、第1孔および第2孔を含むボルト孔の周縁部と、周縁部から内周側に向けて突出する突出部51、52と、周縁部から環状平面部211に沿って弧状に延びる延設部211eと、突出部51、52に対して周方向に隣接して配置され且つ突出部51、52よりもY1側に向けて凹む凹部53、54、55、56と、を有し、凹部53、54、55、56は、内周側が開いている。
【0056】
前述のように、特許文献1では、ウォームホイールからの反力によって、モータは、モータ取付けフランジから遠ざかる方向またはモータ取付けフランジに近づく方向に僅かに移動するため、モータの回転駆動時には、モータ取付けフランジのボルト孔の周縁部に最も力が掛かる。ここで、特許文献1では、ボルト孔の内周側に、閉じた形状の開口部が設けられているため、ウォームホイールからの反力に基づく力は、モータ取付けフランジにおけるボルト孔の周縁部の近傍領域でしか吸収することができず、モータが回転駆動する際に発生する音や振動音などの異音が生じやすくなる。以下、簡単に説明する。
【0057】
特許文献1では、ボルト孔の周縁部に掛かる力は、ボルト孔の周縁部から当該開口部の外周側および内周側を伝わって移動する。具体的には、当該開口部の周方向中央部における当該開口部の外周側から当該開口部の周方向端部に向けて移動する第1の経路と、当該開口部の周方向中央部における当該開口部の内周側から当該開口部の周方向端部に向けて移動する第2の経路と、が設けられる。第1の経路を伝わる力および第2の経路を伝わる力は、当該開口部の周方向端部において交差して合流し、当該合流部分で流れが滞留してしまう。
【0058】
これに対して、本実施形態では、突出部51、52に対して周方向に隣接して配置されてY1側に向けて凹む凹部53、54、55、56を有し、凹部53、54、55、56は、内周側が開いている。従って、例えば、ウォームホイール921からの反力に起因する面圧は、図5に示すように、経路P1、P2、P3、P4を通って伝わる。即ち、特許文献1では、開口部の内周側と外周側とにそれぞれ力が伝達する経路が設けられるが、本実施形態では、凹部の外周側を通る経路のみとなるため、伝わる力が合流して滞留することが生じにくくなる。よって、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部211のより広い(長い)範囲に亘って広がるため、本実施形態によれば、モータ93が回転駆動する際の異音をより小さくすることが可能な減速装置92を提供することが可能となる。
【0059】
凹部53、54は、突出部51に対して周方向の両側に配置される。従って、突出部51に対して周方向の一方側に位置する凹部53の外周側を通る経路P1と、突出部51に対して周方向の他方側に位置する凹部54の外周側を通る経路P2と、の2つの経路を設けることができる。よって、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部211のより広い(長い)範囲に亘って広がる。
【0060】
Y方向(軸方向)から見て、突出部51、52および凹部53、54、55、56は、中心軸AX1を挟んだX1側(一方側)とX2側(他方側)とにそれぞれ配置される。これによれば、中心軸AX1を挟んだ一方側にのみ突出部および凹部を設ける場合に対して、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部211のより広い(長い)範囲に亘って広がる。
【0061】
図7に示すように、Y方向(軸方向)から見て、突出部51の縁511および延設部211eの内周縁は、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って延びる。これによれば、モータ93の端部をモータ取付けフランジ21に対して所謂インロー結合する場合、例えば、突出部51の縁511および延設部211eの内周縁によってガイドされ、モータ93に設けられる環状凸部93fの径方向の位置が位置決めされる。
【0062】
Y方向(軸方向)から見て、ボルト貫通孔211aは、中心軸AX1を挟んで対称な位置に設けられる。これによれば、ボルト孔の周縁部に掛かる力(面圧)は、環状平面部211全体で均等にバランスよく、広い(長い)範囲に亘って広がる。
【0063】
[第1変形例]
次に、第1変形例について説明する。図9は、第1変形例に係るモータ取付けフランジを示す模式図である。第1変形例は、第1実施形態に対して、突出部5Bが相違する。以下、突出部5Bを中心に説明する。
【0064】
図7に示す第1実施形態の突出部5の上面5aは平面である。図9に示す第1変形例のモータ取付けフランジ21Bにおいて、突出部5B(突出部51B)の上面5Baは、中央部分が僅かに凹んでいる。上面5Baは、二点鎖線で囲んだ矩形状の部位5Baaと、矩形状の部位5Baaの外周側に位置する外周部5Babと、を有する。矩形状の部位5Baaは、外周部5Babに対して図9の紙面の奥側(Y1側)に凹んでいる。従って、図3に示すハウジング本体部93gの底面93hに対して、矩形状の部位5Baaは、当接しない。即ち、底面93hに外周部5Babが当接し、矩形状の部位5Baaとの間には隙間が生じる。
【0065】
以上説明したように、第1変形例では、図3に示すハウジング本体部93gの底面93hに対して、矩形状の部位5Baaは、当接しない。即ち、モータ93との接触面積がより小さいため、モータ93の異音をより小さくすることができる。
【0066】
[第2変形例]
次に、第2変形例について説明する。図10は、第2変形例に係るモータ取付けフランジを示す模式図である。第2変形例は、第1実施形態に対して、凹部53および凹部54の形状が相違する。以下、凹部53および凹部54を中心に説明する。
【0067】
図7に示す凹部53はX方向に延びる縁516に面し、凹部54はX方向に延びる縁515に面する。縁516と環状面212とで、中心軸AX1側へ向けて突き出る平面視が略三角状の突起が形成される。また、縁515と環状面212とで、中心軸AX1側へ向けて突き出る平面視が略三角状の突起が形成される。
【0068】
これに対して、第2変形例のモータ取付けフランジ21Cでは、図10に示すように、縁516および縁515がないため、前述の略三角状の突起がない。即ち、縁518aの端518cと環状面212の端212aとは、連結部212cを介して連結される。縁517aの端517cと環状面212の端212bとは、連結部212dを介して連結される。連結部212cおよび連結部212dは、平面視で略直線状である。
【0069】
以上説明したように、第2変形例では、中心軸AX1側へ向けて突き出る平面視が略三角状の突起が形成されないため、モータ93との接触面積がより小さくなり、モータ93の異音をより小さくすることができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図11は、第2実施形態の減速機ハウジングの斜視図である。図12は、図11を上側から見た平面図である。図13は、図12のモータ取付けフランジを拡大した平面図である。図14は、図13の一部を拡大した模式図である。第2実施形態は、第1実施形態に対して、突出部5Cの形状が相違する。以下、突出部5Cを中心に説明する。
【0071】
図11から図14に示すように、モータ取付けフランジ21Dは、筒状部22におけるY2側の端部に設けられる。モータ取付けフランジ21Dは、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。中心軸AX1に直交する断面において、モータ取付けフランジ21DにおけるX1側およびX2側の部位には、径方向の外側に突出する突起部分210がそれぞれ一対に設けられる。突起部分210にボルト貫通孔211aがそれぞれ設けられる。
【0072】
図11および図12に示すように、突出部5Cは、X1側の突出部51Cと、X2側の突出部52Cとを備える。突出部51Cおよび突出部52Cは、中心軸AX1を挟んで対称に配置される。
【0073】
図13および図14に示すように、突出部51Cは、突出部51(図7参照)に対して、突起部515Cおよび突起部516Cが追加されている。即ち、突出部51Cは、本体部514Cと、突起部515Cと、突起部516Cと、を有し、軸方向(Y方向)から見た平面視で略T字状である。突出部51Cの内周縁511Cは、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って円弧状に延びる。
【0074】
本体部514Cは、Z2側に縁514Ca(二点鎖線)を有し、Z1側に縁514Cb(二点鎖線)を有する。換言すると、本体部514Cは、縁514Caと縁514Cbとの間に位置する。突起部515Cは、本体部514Cに対してZ2側に隣接する。突起部515Cは、Z2側に向けて延びる。具体的には、突起部515Cは、縁514Caから縁512Cまで延びる。突起部516Cは、本体部514Cに対してZ1側に隣接する。突起部516Cは、Z1側に向けて延びる。具体的には、突起部516Cは、縁514Cbから縁513Cまで延びる。
【0075】
以上説明したように、第2実施形態によれば、Y方向(軸方向)から見て、突出部51Cは、本体部514Cと、本体部514Cの周方向の縁から周方向に突き出る突起部515C、516Cと、を有する。
【0076】
これによれば、本体部514Cのみの突出部の場合である場合と比較して、突出部51Cにおける内周縁511Cの周方向長さをより長く設定することができる。よって、モータ93の端部をモータ取付けフランジ21Dに対して所謂インロー結合する場合に、より安定してモータ93の端部を支持することができる。
【符号の説明】
【0077】
2 ウォームシャフトハウジング
21、21A、21B、21C、21D モータ取付けフランジ
210 突起部分
210a 外周縁
211 環状平面部
211A 環状平面部
211a ボルト貫通孔(第1孔、ボルト孔)
211Aa ボルト貫通孔
211c 端
211d 端
211e 延設部
212 環状面
212a 端
212b 端
212c 連結部
212d 連結部
213 底面
214 環状面
22 筒状部
220 外周面
3 ウォームホイールハウジング
31 円板部
33 リブ
34 車体取付部
41 補強リブ
42 補強リブ
5 突出部
5a 上面
5B 突出部
5Ba 上面
5Baa 部位
5Bab 外周部
5C 突出部
51 突出部
511 縁
512 縁
513 縁
515 縁
516 縁
518a 縁
518b 縁
51B 突出部
51C 突出部
511C 内周縁
512C 縁
513C 縁
514C 本体部
514Ca 縁
514Cb 縁
515C 突起部
516C 突起部
52 突出部
52C 突出部
53 凹部
53A 凹部
54 凹部
55 凹部
55A 凹部
56 凹部
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
84 ユニバーサルジョイント
85 中間シャフト
86 ユニバーサルジョイント
87 ピニオンシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
92 減速装置
921 ウォームホイール
922 ウォームシャフト
93 モータ
93a モータ用ハウジング
93b モータ側フランジ
93c ボルト用嵌合孔(第2孔、ボルト孔)
93d 出力軸
93e コネクタ部
93f 環状凸部
93g ハウジング本体部
93h 底面
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
100 減速機ハウジング
AX1 中心軸
AX2 中心軸
BL ボルト
C 中心
D1 距離
D2 距離
L1 直線
L2 直線
P1、P2、P3、P4 経路
P11、P12、P13、P14、P15、P16、P17、P18 経路
SP1、SP2、SP3、SP4 部位
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14