(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150927
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】エレベーター運転制御システム、及び、エレベーターの運転制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20241017BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B66B5/02 G
B66B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063985
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 威裕
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA01
3F304EB02
3F304ED15
3F304ED16
(57)【要約】
【課題】エレベーター利用者の需要を考慮した冠水退避運転を行うことができ、かつ、エレベーター利用者の利便性向上と浸水被害に対するリスク低減が図られたエレベーター運転制御システム、及び、エレベーターの運転制御方法を提供する。
【解決手段】過去のエレベーター運行情報、及び、設定された日時における天気予報を含む外部情報を抽出すると共に、過去のエレベーター運行情報から、設定された日時における時間帯別利用人数予測を算出する情報抽出部と、時間帯別利用人数予測、及び、外部情報を所定の表示端末に出力する出力部と、時間帯別利用人数予測、及び、外部情報を表示端末に出力した後、設定された日時における時間帯別の運転制御方式が入力される運転設定情報入力部と、運転制御方式に基づく運転指令を対象となるエレベーターに送信する運転指令部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの冠水退避運転を実施する日時を事前に設定可能なエレベーター運転制御システムにおいて、
過去のエレベーター運行情報、及び、設定された日時における天気予報を含む外部情報を抽出すると共に、前記過去のエレベーター運行情報から、設定された日時における時間帯別利用人数予測を算出する情報抽出部と、
前記時間帯別利用人数予測、及び、前記外部情報を所定の表示端末に出力する出力部と、
前記時間帯別利用人数予測、及び、前記外部情報を前記表示端末に出力した後、設定された日時における時間帯別の運転制御方式が入力される運転設定情報入力部と、
前記運転制御方式に基づく運転指令を、対象となるエレベーターに送信する運転指令部と、
を備えるエレベーター運転制御システム。
【請求項2】
前記情報抽出部は、前記過去のエレベーター運行情報から、設定された日時と同条件におけるエレベーターの時間帯別利用人数を抽出すると共に、当該抽出された時間帯別利用人数の平均値を算出することで、前記時間帯別利用人数予測を算出する
請求項1に記載のエレベーター運転制御システム。
【請求項3】
前記外部情報は、設定された日時において、前記エレベーターが設置されたビルで実施される予定のイベント情報を含む
請求項2に記載のエレベーター運転制御システム。
【請求項4】
前記運転設定情報入力部には、通常運転を行う通常運転制御、かごの待機階を最上階等に変更し、継続的に運行を行う冠水退避運転制御、又は、かごを最上階等に退避させ、エレベーターの運行を休止する冠水退避運転制御のいずれかの運転制御方式が時間帯別に入力される
請求項1に記載のエレベーター運転制御システム。
【請求項5】
前記情報抽出部は、曜日、日付の情報、及び、前記エレベーターが設置されたビルの近隣地域の学校の休暇情報を含むカレンダー情報を抽出し、前記カレンダー情報に基づいて、前記設定された日時と同条件の日時におけるエレベーターの時間帯別利用人数を抽出する
請求項2に記載のエレベーター運転制御システム。
【請求項6】
過去のエレベーター運行情報、及び、設定された日時における天気予報を含む外部情報を抽出すると共に、前記過去のエレベーター運行情報から設定された日時における時間帯別利用人数予測を算出し、
設定された日時の前記時間帯別利用人数予測、及び、前記外部情報を表示端末に出力し、
前記時間帯別利用人数予測、及び、前記外部情報が前記表示端末に出力された後に入力されてきた時間帯別の運転制御方式に基づいて、対象となるエレベーターに運転指令を送信する
エレベーターの運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター運転制御システム、及び、エレベーターの運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、一般的に、かごドアの動作を制御するドア制御装置、エレベーターの運行動作や速度を制御する制御盤等、各種の機器を備えている。それらの機器は、乗りかご、及び、昇降路のピット内に設置されていることが多い。仮にエレベーターが台風や集中豪雨等により、昇降路内に水が入り込んだ場合、エレベーターの機器が冠水して正常に動作しなくなる恐れがある。
【0003】
したがって、エレベーターが冠水してしまった場合、エレベーターのドアが開かなくなり乗客が乗りかご内に閉じ込められたり、乗りかごが停止して乗客がエレベーターを利用できなくなったり等の不都合が生じる。万一、このような不都合が生じた場合は、まず、顧客からのオンコールや監視端末からの通知によって、エレベーターに異常が発生した旨の情報をエレベーター保守会社の監視センターやサービス拠点へ伝達する。そして、伝達を受けた専門技術者が当該現場に出動し、昇降路内の排水作業、冠水した機器の水分除去作業、または冠水した機器の部品交換作業を実施する。その後、当該エレベーターの点検運転を実施、安全を確認して復旧作業を完了している。
【0004】
このように、昇降路内に水が入り込んでエレベーターの機器が冠水した場合には、エレベーターのサービス性が低下し、煩雑な復旧作業を必要とし、復旧までに大変な時間を要する。そこで、昇降路内への浸水によるエレベーターへの被害を抑制するための発明として特許文献1ででは、管理者が冠水退避運転の設定または解除を行う判断をし易くすることを可能とした冠水退避運転システムが提案されている。
【0005】
特許文献1では、台風等により大雨が予想される場合に、現在の気象データや近隣河川水位データを取得し、過去の冠水情報と比較することで自動的に冠水退避運転の必要性を判定している。そして、この判定結果および周辺地域の冠水退避設定状況に基づいて、管理者が、該当エレベーターの冠水退避運転を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明では、エレベーターの利用者の需要を考慮していないため、利用者が多い時間帯に不便を強いる不都合がある。
【0008】
そこで、本発明は、エレベーター利用者の需要を考慮した冠水退避運転を行うことができ、かつ、エレベーター利用者の利便性向上と浸水被害に対するリスク低減が図られたエレベーター運転制御システム、及び、エレベーターの運転制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のエレベーター運転制御システムは、エレベーターの冠水退避運転を実施する日時を事前に設定可能なエレベーター運転制御システムである。エレベーター運転制御システムは、過去のエレベーター運行情報、及び、設定された日時における天気予報を含む外部情報を抽出すると共に、過去のエレベーター運行情報から、設定された日時における時間帯別利用人数予測を算出する情報抽出部とを備える。また、時間帯別利用人数予測、及び、外部情報を所定の表示端末に出力する出力部と、時間帯別利用人数予測、及び、外部情報を前記表示端末に出力した後、設定された日時における時間帯別の運転制御方式が入力される運転設定情報入力部とを備える、さらに、運転制御方式に基づく運転指令を対象となるエレベーターに送信する運転指令部を備える。
【0010】
また、本発明のエレベーターの運転制御方法は、過去のエレベーター運行情報、及び、設定された日時における天気予報を含む外部情報を抽出すると共に、過去のエレベーター運行情報から設定された日時における時間帯別利用人数予測を算出する。次に、設定された日時の時間帯別利用人数予測、及び、外部情報を表示端末に出力する。次に、時間帯別利用人数予測、及び、外部情報が表示端末に出力された後に入力されてきた時間帯別の運転制御方式に基づいて、対象となるエレベーターに運転指令を送信する。
【発明の効果】
【0011】
本発発明によれば、利用者の需要を考慮したエレベーターの冠水退避運転を行うことが可能となり、エレベーター利用者の利便性向上と浸水被害に対するリスク低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーター運転制御システム100の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステム30の制御系の構成を示したブロック図である。
【
図3】冠水退避運転制御を実施するために、顧客3が実施する作業フローを示した図である。
【
図4】顧客3が顧客端末4から冠水退避運転の対象となるエレベーターを選択する際に表示する画面の一例を示した図である。
【
図5】
図4の「選択」ボタン103を選択した後に遷移した顧客端末4の表示画面を示した図である。
【
図6】
図5の「冠水退避運転設定」ボタン201を選択した後に遷移する顧客端末4の画面の一例である。
【
図7】エレベーター運行情報データベース23のテーブル700の構成例を示す図である。
【
図8】カレンダー情報データベース19のテーブル800の構成例を示す図である。
【
図9】
図5、又は、
図6の画面42から遷移する画面の一例であり、時間帯別冠水退避運転の設定状況の確認や設定解除をするための画面の例である。
【
図10】運転設定情報データベース11に蓄積されている運転設定情報テーブル500の構成例である。
【
図11】遠隔操作指令IDのそれぞれに割り当てられた遠隔操作内容例を示したテーブル600の構成例である。
【
図12】冠水退避運転実行時において、利用者1が所有する利用者携帯端末2の画面に表示される表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るエレベーター運転制御システム、及び、エレベーターの制御方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0014】
1.エレベーター運転制御システムの構成
まず、本発明の一実施形態に係るエレベーター運転制御システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態とする)に係るエレベーター運転制御システム100の概略構成図である。本発明のエレベーター運転制御システム100は、エレベーターの冠水時における退避運転を行うための冠水退避運転を制御するためのシステムである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のエレベーター運転制御システム100は、主に、監視センター5内に構成された情報処理部6、ビル・エレベーター情報記憶部13、外部情報記憶部16、エレベーター運行情報記憶部22、通信装置20、及び、運行データ収集装置21で構成されている。
【0016】
[情報処理部]
情報処理部6は、運転設定部50と、情報抽出部12と、運転設定情報データベース11と、運転指令部10とを備える。
【0017】
運転設定部50は、出力部7、情報生成部8、及び、運転設定情報入力部9を備えている。運転設定部50は、利用者1が操作する利用者携帯端末2や、顧客3が操作する顧客端末4(本発明の表示端末に相当)との間で情報の送受信を行う。ここで、利用者1は、対象となるエレベーターシステム30が備えられたビルを利用する人を指しており、例えば、マンションの住人や、ビル内で就業する利用者に相当する。また、利用者1が使用する利用者携帯端末2としては、例えば、スマートフォンやタブレットが挙げられる。利用者1は、利用者携帯端末2を用いて、ビル内の連絡事項やエレベーターの運行情報等を確認できる。
【0018】
一方、顧客3は、対象となるエレベーターシステム30が備えられたビルを所有するオーナーや管理者を指している。顧客3が操作する顧客端末4としては、ビル内に設置されたパーソナルコンピューターや、タブレット、スマートフォン等が挙げられる。本実施形態では、後で詳述するが、顧客3が顧客端末4から必要事項を入力することで、冠水時に対応した運転制御を行うことができる。利用者携帯端末2及び顧客端末4と、運転設定部50は、インターネット等の通信網により接続されている。
【0019】
出力部7は、利用者携帯端末2、及び、顧客端末4に表示する画面データを出力する。出力部7は、情報生成部8と情報を送受信可能に接続されている。情報生成部8は、情報抽出部12及び運転設定情報入力部9と接続されている。情報生成部8は、後述する情報抽出部12及び運転設定情報入力部9から受信した情報に基づいて、利用者携帯端末2及び/又は顧客端末4に表示する画面データを生成する。情報生成部8は、生成した画面データを出力部7に送信する。運転設定情報入力部9は、運転設定情報データベース11に接続されている。運転設定情報入力部9は、顧客端末4から入力された情報に基づいて、エレベーターの冠水退避運転の計画情報を、号機、時間帯別に設定すると共に、運転設定情報データベース11に登録する。
【0020】
情報抽出部12は、ビル・エレベーター情報記憶部13、外部情報記憶部16、及び、エレベーター運行情報記憶部22に接続されている。情報抽出部12は、ビル・エレベーター情報記憶部13、外部情報記憶部16、及び、エレベーター運行情報記憶部22のそれぞれから、冠水退避運転の設定に必要な情報を抽出する。具体的には、情報抽出部12は、ビル・エレベーター情報記憶部13から、対象となるエレベーターの積載量の情報等を抽出する。また、情報抽出部12は、外部情報記憶部16から、気象情報、ビル内で実施されるイベント情報、カレンダー情報を抽出する。また、情報抽出部12は、エレベーター運行情報記憶部22から、エレベーターの運行情報を抽出する。さらに、情報抽出部12は、抽出した情報に基づいて、対象となるエレベーターの時間帯別利用人数予測を算出する。そして、情報抽出部12は、算出した時間帯別利用人数予測を情報生成部8に出力する。なお、情報抽出部12において抽出される各情報、及び、時間帯別利用人数予測の算出方法については後で詳述する。
【0021】
運転設定情報データベース11は、顧客端末4から運転設定情報入力部9に入力された号機、時間帯別のエレベーターの冠水退避運転の計画情報を記憶する。
【0022】
運転指令部10は、運転設定情報データベース11に接続されている。運転指令部10は、運転設定情報データベース11に蓄積されたエレベーターの冠水退避運転の設定情報を抽出すると共に、対象となるエレベーターに、冠水退避運転の設定情報に基づいた運転制御指令を出力する。
【0023】
[ビル・エレベーター情報記憶部]
ビル・エレベーター情報記憶部13は、ビル、及び、各ビルに設置されたエレベーターの情報を記憶するための記憶部である。ビル・エレベーター情報記憶部13は、ビルマスタ情報データベース14と、エレベーター情報データベース15とを有する。ビルマスタ情報データベース14には、管理するビルの情報が格納されている。また、エレベーター情報データベース15には、各エレベーターの定員(積載量)や速度等の機器情報が格納されている。ビルマスタ情報データベース14、及び、エレベーター情報データベース15に格納されたそれぞれの情報は、情報抽出部12に適宜抽出される。
【0024】
[外部情報記憶部]
外部情報記憶部16は、外部端末24から入力されることによって得られる情報を記憶するための記憶部である。外部情報記憶部16は、気象情報データベース17と、ビルイベント情報データベース18と、カレンダー情報データベース19とを有する。気象情報データベース17には、時間毎の降水量を含む気象情報が格納されている。さらに、気象情報データベース17には、管理するビルの所在地情報に基づいて、所在地毎の気象情報が格納される。ビルイベント情報データベース18には、ビルの保守、点検のスケジュール情報、及び、顧客ビルで開催されるイベントスケジュールの情報が格納されている。カレンダー情報データベース19には、曜日や日付の情報、及び、管理するビルの近隣地域の学校の休暇情報等が格納されている。気象情報データベース17、ビルイベント情報データベース18、及び、カレンダー情報データベース19に格納されたそれぞれの情報は、情報抽出部12に適宜抽出される。
【0025】
[エレベーター運行情報記憶部]
エレベーター運行情報記憶部22は、後述する運行データ収集装置21で収集されたエレベーターの運行情報を格納するエレベーター運行情報データベース23を備える。エレベーター運行情報データベース23には、曜日、日付、時間毎のエレベーターの運行回数や、エレベーターの荷重データ等が格納される。エレベーター運行情報データベース23に格納されたそれぞれの情報は、情報抽出部12に適宜抽出される。
【0026】
[運行データ収集装置]
運行データ収集装置21は、通信装置20を介してエレベーターシステム30から送信されてくる運行情報を収集する。運行データ収集装置21で収集された各種運行情報は、エレベーター運行情報記憶部22のエレベーター運行情報データベース23に登録される。
【0027】
[通信装置]
通信装置20は、管理しているビルに設置されたエレベーターシステム30との間で情報の送受信を行う。通信装置20は、図示を省略する高速通信網を介してエレベーターシステム30に接続されている。本実施形態では、通信装置20を介してエレベーターシステム30の運行情報を取得する他、運転指令部10から送信されてくる運転制御指令をエレベーターシステム30に送信する。
【0028】
2.エレベーターシステムの構成
次に、本実施形態のエレベーター運転制御システム100によって制御されるエレベーターシステム30の制御系の構成について説明する。
図2は、エレベーターシステム30の制御系の構成を示したブロック図である。
【0029】
図2に示すように、エレベーターシステム30は、監視センター5が管理する顧客のビルに設置された各エレベーター36-1~36-nと、エレベーター36-1~36-n毎に設けられたエレベーター制御装置35-1~35-n、遠隔監視装置32-1~32-n、及び、通信装置31-1~31-nと、を有する。エレベーター36-1~36-nは、それぞれ、乗りかごと、乗りかごを昇降駆動する巻上機と、利用者が操作する操作盤と、乗りかごに積載された荷重を検知する荷重検知装置等を備える。本実施形態では、エレベーター36-1~36-nは、通常運転の他、監視センター5から送信されてくる運転制御指令に基づいて、冠水退避運転を行う。
【0030】
エレベーター制御装置35-1~35-nは、エレベーター36-1~36-nの操作盤から入力された情報や、監視センター5から送信されてきた運転指令に基づいて、エレベーター36-1~36-nの運転を制御する。また、エレベーター制御装置35-1~35-nは、遠隔監視装置32-1~32-nと情報を送受信可能に接続されている。遠隔監視装置32-1~32-nは、エレベーター制御装置35-1~35-nから送信されてきたそれぞれのエレベーター36-1~36-nの運行情報を取得する。そして、遠隔監視装置32-1~32-nは、運行情報記憶部33-1~33-nのエレベーター運行情報データベース34-1~34-nに格納する。運行情報記憶部33-1~33-nは、例えば、SDカード等のメモリカードで構成される。また、エレベーター制御装置35-1~35-nは、通信装置31-1~31-nに接続されている。
【0031】
通信装置31-1~31-nは、高速通信網に接続されている。通信装置31-1~31-nは、監視センター5の通信装置20との間で情報の送受信を行う。本実施形態では、通信装置31-1~31-nを介して、監視センター5側に、エレベーター運行情報データベース34-1~34-nに格納されたエレベーター36-1~36-nの運行情報を送信する。また、通信装置31-1~31-nを介して、監視センター5側から受信した運転制御指令を、遠隔監視装置32-1~32-nを介してそれぞれのエレベーター制御装置35-1~35-nに送信する。
【0032】
ここで、監視センター5の運行データ収集装置21で定期的に実施されるエレベーター36-1~36-nの運行情報の収集方法について説明する。監視センター5の運行データ収集装置21は、所定の時間毎に、定期的に通信装置20を介して、エレベーターシステム30の通信装置31-1~31-nに接続する。運行データ収集装置21のエレベーターシステム30への接続頻度は、適宜設定可能であるが、例えば、1日1回程度であればよい。
【0033】
エレベーターシステム30では、監視センター5からの接続後、運行情報記憶部33-1~33-nのエレベーター運行情報データベース34-1~34-nに記憶されたエレベーター36-1~36-n運行情報を監視センター5に送信する。そして、エレベーター36-1~36-n運行情報は、監視センター5のエレベーター運行情報記憶部22のエレベーター運行情報データベース23に格納される。
【0034】
なお、上述したエレベーター運転制御システム100、及び、エレベーターシステム30の各部は、それぞれ、図示を省略す制御処理部の制御の下、制御処理される。それぞれの制御処理部は、例えば、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)RAM(Random Access Memory)、不揮発性ストレージを備える。
【0035】
CPUは、各部に構成された各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROMから読み出してRAMに展開して実行する。なお、制御処理部は、CPUの代わりに、MPU(Micro-Processing Unit)等の処理装置を備えてもよい。RAMには、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0036】
不揮発性ストレージとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。この不揮発性ストレージには、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、制御処理部を機能させるためのプログラム等が記録される。なお、プログラムは、ROMに格納されてもよい。
【0037】
プログラムは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。つまり、ROM又は不揮発性ストレージは、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0038】
3.エレベーターの運転制御方法
次に、本実施形態のエレベーター運転制御システム100で実施されるエレベーターの運転制御方法について説明する。
図3は、冠水退避運転制御を実施するために、顧客3が実施する作業フローを示した図である。本実施形態では、主に、顧客3が実施する作業フローに沿って、エレベーターの制御方法を説明する。
【0039】
図3に示す作業フローは、顧客3が管理するビルの地域に、台風等による大雨が予想され、管理ビルを含めた近隣地域に浸水の怖れがある場合において、エレベーターの冠水退避運転を実施するために顧客3が行う作業手順を示したものである。
【0040】
まず、顧客3は、冠水退避運転を実施するため、顧客端末4の表示画面から、冠水退避運転の対象となるエレベーターを選択する(ステップS1)。
図4は、ステップS1において顧客3が顧客端末4から冠水退避運転の対象となるエレベーターを選択する際に表示する画面の一例を示した図である。
図4に示すように、顧客端末4の表示画面には、『管理対象ビル設備選択』の画面40が表示される。『管理対象ビル設備選択』の画面40には、ビル名、ビルに設置されたエレベーター、及びその号機番号で識別可能なエレベーター情報表示欄101と、エレベーター選択欄102と、選択されたエレベーターを決定する「選択」ボタン103が表示される。
【0041】
図4に示した画面40に表示される情報は、例えば、顧客3が顧客IDを入力することで表示される情報である。入力された顧客IDに基づいて監視センター5の情報抽出部12が、ビル・エレベーター情報記憶部13のビルマスタ情報データベース14及びエレベーター情報データベース15から各種情報を抽出する。そして、抽出された各種情報に基づいて、情報生成部8が顧客端末4の画面40に表示する情報を生成することで表示される。
【0042】
ステップS1では、顧客3は、
図4の画面40に表示されたエレベーター情報表示欄101を用いて、管理対象ビルにおけるエレベーターの設備名、号機を確認し、エレベーター選択欄102から冠水退避運転の対象となるエレベーターを選択する。エレベーター選択欄102における選択を行った後、顧客3は、表示画面の「選択」ボタン103を選択する。「選択」ボタン103は、エレベーター選択欄102における選択が実施された後に選択できる(操作できる)ように構成される。
【0043】
ステップS1において、「選択」ボタン103が選択されることで、
図4に示す画面40から次の表示画面(
図5参照)に遷移する。なお、本実施形態では、顧客3がエレベーター選択欄102から対象となるエレベーターを選択する構成としたが、顧客3が管理するビルが複数ある場合には、さらに、対象となるビルを選択することができるボタンが構成されていてもよい。
【0044】
図5は、
図4の「選択」ボタン103を選択した後に遷移した顧客端末4の表示画面を示した図である。
図5に示すように、顧客端末4には、『エレベーター冠水退避運転遠隔操作設定メニュー』の画面41が表示される。『エレベーター冠水運転遠隔操作設定メニュー』の画面41には、冠水退避運転の設定を行う対象のエレベーターに対する「冠水退避運転設定」ボタン201と、現在のエレベーターの設定状況の確認や、設定の解除を操作できる「設定状況確認・解除」ボタン202が表示される。また、前の『管理対象ビル設備選択』の画面40(
図4)に戻ることができる「戻る」ボタン203が表示される。『エレベーター冠水退避運転遠隔操作設定メニュー』の画面41には、その他、必要なメニューボタンが設定されていてもよい。
【0045】
冠水退避運転を設定する場合、顧客3は、『エレベーター冠水退避運転遠隔操作設定メニュー』の画面41から、「冠水退避運転設定」ボタン201を選択する(ステップS2)。「冠水退避運転設定」ボタン201が選択されることによって、顧客端末4側から監視センター5の情報処理部6の運転設定情報入力部9に、冠水退避運転の対象となるエレベーターの情報が入力される。その後、監視センター5側では、情報処理部6における情報生成部8において、顧客端末4の表示画面に表示する情報が生成されると共に、情報生成部8で生成された情報は、出力部7を介して顧客端末4に送信される。ステップS2の操作に伴って情報生成部8で生成される情報については後で詳述する。
【0046】
図6は、
図5の「冠水退避運転設定」ボタン201を選択した後に遷移する顧客端末4の画面の一例である。
図6に示すように、
図5の「冠水退避運転設定」ボタン201が選択された後に、『エレベーター冠水退避運転計画設定』の画面42が表示される。
【0047】
図6に示すように、『エレベーター冠水退避運転計画設定』の画面42には、「開始日」プルダウン301、「終了日」プルダウン302、「検索」ボタン303、「前日」ボタン304、「翌日」ボタン305、天気予報表示欄306、エレベーター利用人数予測表示欄307、時間帯別混雑度表示欄308、冠水退避運転設定欄309、310、「次へ」ボタン318が表示される。
【0048】
「開始日」プルダウン301は、冠水退避運転の設定の開始日を選択することができるプルダウンである。「終了日」プルダウン302は、冠水退避運転の設定の終了日を選択することができるプルダウンである。
【0049】
「検索」ボタン303は、冠水退避運転の開始日から終了日を設定した後に押すことができるボタンであり、冠水退避運転の開始日から終了日までの期間における天気予報、エレベーター利用人数予測、イベント情報の検索を開始するボタンである。「検索」ボタン303が押されることで、監視センター5側では、情報抽出部12が、ビル・エレベーター情報記憶部13、外部情報記憶部16、エレベーター運行情報記憶部22から各種情報を抽出する。「検索」ボタン303を押すことによって監視センター5側で実施される各種情報の抽出方法については後で詳述する。
【0050】
なお、「検索」ボタン303が選択されるまでは、天気予報表示欄306、エレベーター利用人数予測表示欄307、時間帯別混雑度表示欄308、イベント表示欄317はブランクになっている。
【0051】
「前日」ボタン304は、設定された冠水退避運転の開始日から終了日までの間で、画面42に表示する情報を「前日」の日付の情報に変更できるボタンである。すなわち、「前日」ボタン304を選択することで、現在表示されている日付の前日の情報を表示する画面に遷移する。「翌日」ボタン305は、設定された冠水退避運転の開始日から終了日までの間で、画面42に表示する情報を「翌日」の日付の情報に変更できるボタンである。すなわち、「翌日」ボタン305を選択することで、現在表示されている日付の翌日の情報を表示する画面に遷移する。
【0052】
天気予報表示欄306は、設定された冠水退避運転の開始日から終了日までの間の日付であって、現在表示されている日付における時間毎の天気予報を表示する欄である。エレベーター利用人数予測表示欄307は、設定された冠水退避運転の開始日から終了日までの間であって、現在表示されている日付における時間毎の利用人数予測を表示する欄である、エレベーター利用人数予測表示欄307では、1時間毎の利用人数予測が表示される。時間帯別混雑度表示欄308には、時間帯別に、エレベーターがどの程度混雑するかの予測が表示される。
【0053】
冠水退避運転設定欄309、310では、
図4の『管理対象ビル設備選択』の画面で選択したエレベーターの号機毎に、時間帯別の運転制御方式を選択できるチェックボックスが表示されている。運転制御方式は、本実施形態では、3種類あり、通常運転、継続運転、又は、運転休止のいずれかを設定可能である。冠水退避運転設定欄309、310では、それぞれ、通常運転を選択できる通常運転設定欄311、314、継続運転を選択できる継続運転設定欄312、315、運転休止を選択できる運転休止設定欄313、316が設けられている。
【0054】
通常運転設定欄311、314には、冠水退避運転を実施せずに通常運転を行う通常運転制御を時間定別に選択するためのチェックボックスが設けられている。継続運転設定欄312、315には、エレベーターの運行を休止せずにかごの待機階を最上階等に変更し、継続的に運行を行う冠水退避運転の制御方式を時間帯別に選択するためのチェックボックスが設けられている。運転休止設定欄313、316には、かごを最上階等に退避させ、エレベーターの運行を休止する冠水退避運転の制御方式を時間帯別に選択するためのチェックボックスが設けられている。これらの運転制御方式は、各チェックボックスの選択により1時間ごとに設定可能であり、同じ時間帯に複数の運転設定欄を同時に選択する操作が出来ないように構成されている。
【0055】
なお、通常運転設定欄311、314、継続運転設定欄312、315、運転休止設定欄313、316の各チェックボックスは、「検索」ボタン303が選択された後に操作可能に構成されている。すなわち、顧客3が、
図6の画面42において、設定された期間における天気予報表示欄306、エレベーター利用人数予測表示欄307、時間帯別混雑度表示欄308、イベント表示欄317で各情報を確認できる状態となった後に、各チェックボックスを選択することができる。
図6の画面42における操作手順については後で詳述する。
【0056】
イベント表示欄317には、設定された冠水退避運転の開始日から終了日までの間に、該当のビル内で行われるイベントや、作業予定が表示される。
【0057】
「次へ」ボタン318は、顧客が『エレベーター冠水退避運転計画設定』の画面42で設定を完了した後に選択することができるボタンであり、次の画面に遷移するためのボタンである。
【0058】
図3の作業フローに戻り、
図6の画面42の操作方法について説明する。
図6に示す『エレベーター冠水退避運転計画設定』の画面42が表示された後、まず、顧客3は、「開始日」プルダウン301及び「終了日」プルダウン302から任意の日付を設定することで、冠水退避運転の対象期間を選択する(ステップS3)。次に、顧客3は、
図6に示す『エレベーター冠水退避運転計画設定』の画面42から「検索」ボタン303を選択する(ステップS4)。これにより、
図6に示すように、設定された日付(期間)における天気予報表示欄306、エレベーター利用人数予測表示欄307、時間帯別混雑度表示欄308が表示される。
【0059】
ここで、
図6で示す画面42において「検索」ボタン303が選択されることによって監視センター5の情報抽出部12で実施される各情報の抽出方法について説明する。
【0060】
運転設定情報入力部9において、顧客端末4における「検索」ボタン303の入力が検知された場合、情報生成部8を介して、情報抽出部12に、各種情報の抽出指令が入力される。情報抽出部12では、まず、
図6の画面42で設定された冠水退避運転の開始日から終了日に応じた天気予報を気象情報データベース17から抽出する。また、情報抽出部12では、エレベーター運行情報データベース23から対象となるエレベーターの運行情報を抽出すると共に、カレンダー情報データベース19からカレンダー情報を抽出する。
【0061】
図7は、エレベーター運行情報データベース23のテーブル構成例を示す図である。エレベーター運行情報データベース23のテーブル700は、「エレベーターID」701、「号機」702、「日付」703、「開始時刻」704、「終了時刻」705、「利用人数」706、「平均待ち時間」707、「平均乗車率」708の各項目で構成される。「エレベーターID」701は、エレベーターの固有の識別情報を表す英数字で構成される。「号機」702は、該当ビルのエレベーターを管理するための英数字の識別子で構成される。「日付」703は、エレベーターの運行日である。「開始時間」704は集計される種々の運行情報データの一単位分(1レコード分)の開始時刻である。「終了時間」705は集計される種々の運行情報データの一単位分(1レコード分)の終了時刻である。
【0062】
「利用人数」706は、単位時間あたりの利用人数で、単位時間のエレベーターの積載量(kg)を人の体重(日本の基準:65kg)で割った値で算出する。「平均待ち時間」707は、単位時間あたりの平均待ち時間(秒)で、エレベーターのホールから利用者がかご呼びボタンを押し、かごが到着するまでの時間の平均値を算出したものである。「平均乗車率」708は、単位時間当たりの平均乗車率(%)でエレベーターの定員に対して何人乗車しているかの平均値を算出したものである。
【0063】
図8は、カレンダー情報データベース19のテーブル800の構成例を示す図である。カレンダー情報データベース19のテーブル800は、「日付」801、「曜日」802、「学校休暇区分」803の各項目で構成される。
【0064】
図6に示した画面42において、「開始日」プルダウン301から開始日を‘2023/9/1’に設定し、「終了日」プルダウン302から終了日を‘2023/9/3’に設定し、「検索」ボタン303を選択した場合について説明する。この場合、初めに、情報抽出部12は、
図8に示したカレンダー情報データベース19のテーブル800を参照する。前述の開始日から終了日の期間で「検索」ボタンが選択された場合、情報抽出部12は、
図6の画面42で設定された期間と、
図8に示したテーブル800のうち、日付が一致するレコード806、807、808を参照する。ここで、「レコード」は、テーブル800の1行分に記録されたデータの集合体を指す。以下に記す「レコード」も同様の意味である。
【0065】
これらのレコード806、807、808の「曜日」802は、それぞれ金曜日、土曜日、日曜日となる。次に、情報抽出部12は、レコード806、807、808の「曜日」と同じ過去数か月間(3か月程度)の金曜日~日曜日に該当するデータをエレベーター運行情報データベース23より抽出する。
【0066】
但し、マンション等の住居ビルの場合、小学校や中学校が長期休みの場合に時間帯別利用人数の傾向が変わる。したがって、本実施形態では、それを考慮し、カレンダー情報データベース19のテーブル800に「学校休日区分」803を設け、夏休み等の学校が休みの日は‘1’、それ以外は‘0’を外部システム(不図示)で設定し、そのデータを取得するようにする。本実施形態では、
図8で示したテーブル800において、レコード806と同じ曜日で、且つ、「学校休暇区分」803が‘0’であるレコード804の日付と紐づく
図7のテーブル700のレコード709~714は抽出対象とする。一方、
図8で示したテーブル800において、レコード805と同じ日付の運行情報レコードは、「学校休暇区分」803が‘1’であるため、抽出対象としないようにする。
【0067】
このように、カレンダー情報データベース19の情報に基づいて、抽出条件を設定することで、より精度の高い情報の抽出が可能となる。カレンダー情報データベース19のテーブル800において、小学校や中学校の長期休みの予定以外にも、時間帯別利用人数の傾向が変わると想定される項目を追加することができる。これにより、より精度高い利用人数の予測が可能となる。
【0068】
次に、情報抽出部12は、エレベーター運行情報データベース23から該当するデータを抽出後、日付、時間単位ごとに利用人数の平均と混雑度を算出する。ここで算出された時間単位ごとの利用人数の平均が
図6のエレベーター利用人数予測表示欄307に表示される。また、
図6の時間帯別混雑度表示欄308に表示する混雑度は、
図7のエレベーター運行情報テーブル700の平均待ち時間707や平均乗車率708の値を基に判定される。この場合、混雑状況は、混雑、やや混雑、閑散等、混雑度合いによって判定される。
【0069】
そして、情報抽出部12で抽出された各種情報に基づいて、情報生成部8は、
図6の画面42に表示する情報を生成し、生成された情報を顧客端末4側に送信する。これにより、
図6に示す、天気予報表示欄306、エレベーター利用人数予測表示欄307、及び、時間帯別混雑度表示欄308に、それぞれの情報が表示される。例えば、天気予報表示欄306には、数時間毎の天気予報及び降水量予測が表示される。エレベーター利用人数予測表示欄307には、予測される利用人数が棒グラフで表示される。また、時間帯別混雑度表示欄308には、混雑度が、混雑状況に応じて色分けして表示される。
【0070】
さらに、
図6のイベント表示欄317には、ビルイベント情報データベース18から取得された該当日に実施予定のビル内設備の点検情報や清掃情報、各種イベント情報が表示される。
【0071】
再度、
図4の作業フローに戻り、
図6の画面42の操作方法について説明する。顧客3は、
図6の画面42の冠水退避運転設定欄309、310において、時間帯別に所望の運転制御方式を示すチェックボックスを選択して運転制御方式を設定する(ステップS5)。例えば、通常運転制御を選択する場合には、通常運転設定欄311、314のチェックボックスを選択する。冠水退避運転制御として、待機階を最上階等に設定して継続運転を行う場合には、継続運転設定欄312、315のチェックボックスを選択する。また、冠水退避運転制御として、かごを最上階に退避させてエレベーターの運行を休止する場合には、運転休止設定欄313、316のチェックボックスを選択する。
【0072】
これらの設定は、天気予報表示欄306に表示される天気予報(降水量)やエレベーター利用人数予測表示欄307に表示された時間帯別利用人数、時間帯別混雑度表示欄308に表示された混雑度を参考に顧客が適宜設定する。例えば、エレベーター利用人数予測表示欄307の利用人数予測を確認し、朝の通勤時間帯の7時~9時にエレベーターの混雑が予想される場合、その時間帯だけ、冠水退避運転を解除し、2台のエレベーター共に通常運転にすることも可能である。その場合、1号機の通常運転設定欄311と、2号機の通常運転設定欄314の該当時間帯のチェックボックスを選択する。
【0073】
その他、例えば、やや利用人数が多い混雑した時間帯について、待機階を最上階等とし、継続した運行を行う冠水退避運転を1号機、および2号機にて実施するように設定することもできる。また、2号機については、混雑していない時間帯について、かごを退避階に停止させ、エレベーターの運行を休止させることも可能である。このように、冠水退避運転設定欄309、310において、時間帯別に1号機、2号機でそれぞれの運行設定が可能である。
【0074】
さらに、顧客3は、
図6の画面42のイベント表示欄317に表示されたイベントの時間や内容を、運転設定の参考とすることもできる。また、日付を変更して設定を行う場合は、表示された日付の前日の情報を表示するための「前日」ボタン304、あるいは翌日の情報を表示するための「翌日」ボタン305を選択し、設定したい日付を変更する。なお、通常運転設定欄311、314、継続運転設定欄312、315、運転休止設定欄313、316に入力したデータについて、指定した日付のデータを他の日付にコピー出来る機能を設けても良い。
【0075】
そして、
図6の画面42において、運転設定完了後、冠水退避運転を実行する場合には、顧客3は、
図6の画面42における「次へ」ボタン318を選択する(ステップS6)。
図6の画面42において「次へ」ボタン318が選択されることによって、監視センター5側では、運転設定情報入力部9には、
図6の画面42で入力された運転制御方式の設定情報が入力される。そして、運転設定情報入力部9は、その運転制御方式の設定情報を運転設定情報データベース11に記録すると共に、情報生成部8に送信する。
【0076】
情報生成部8では、運転設定情報入力部9から送信されてきた運転制御方式の設定情報に基づいて、次の顧客端末4に送信する情報を生成すると共に、生成した情報を顧客端末4に送信する。これにより、顧客端末4の画面は、
図6の画面42から
図9の画面43に遷移する。
図9は、
図5、又は、
図6の画面42から遷移する画面の一例であり、時間帯別冠水退避運転の設定状況の確認や設定解除をするための画面の例である。
【0077】
ここで、
図9に示された『エレベーター冠水退避運転設定状況確認』の画面43について説明する。
図9の『エレベーター冠水退避運転設定状況確認』の画面43には、冠水退避運転実行中表示欄401が表示される。そのほか、
図9の画面43には、「設定変更」ボタン404、「設定解除」ボタン405、「全運転休止」ボタン406、「冠水退避運転計画実行」ボタン407が表示される。
【0078】
冠水退避運転実行中表示欄401は、
図6で選択したエレベーターの冠水退避運転の実行状況を表示する欄である。冠水退避運転実行中表示欄401には、前述の
図6の画面42で設定した日時、号機毎の冠水退避運転設定状況表示欄402、403が表示されている。例えば、冠水退避運転設定状況表示欄402には、1号機のエレベーターの運転設定が表示され、冠水退避運転設定表示欄403には、2号機のエレベーターの運転設定が表示される。
【0079】
冠水退避運転設定状況表示欄402、403では、
図6の画面42における通常運転設定欄311、314、継続運転設定欄312、315、運転休止設定欄313、316におけるチェックボックスの選択によって設定した時間毎の運転制御方式が表示されている。
【0080】
「設定変更」ボタン404は、冠水退避運転の設定を変更するためのボタンである。「設定変更」ボタン404を選択することで、
図6の画面42に遷移する。これにより、顧客3は、再度、
図6の画面42から、冠水退避運転の設定を入力することができる。
【0081】
「設定解除」ボタン405は、冠水退避運転の設定をすべて解除するためのボタンである。「設定解除」ボタン405を選択することで、エレベーターの冠水退避運転の設定内容が取り消され、冠水退避運転設定に係るすべての設定が解除される。
【0082】
「全運転休止」ボタン406は、対象となるエレベーターの運転をすべて休止するためのボタンである。例えば、周辺地域の急な浸水への対応として、「全運転休止」ボタン406を選択することで、対象となる全てのエレベーターのかごを最上階等の浸水の影響を受けない階に退避させ、エレベーターの運行を休止する冠水退避運転への変更が実施される。浸水等への対応として、対象となるエレベーターの運行を休止する処理は、エレベーターのピット内に設置した浸水を感知するセンサー(図示を省略する)と連動することで実行してもよい。
【0083】
「冠水退避運転計画実行」ボタン407は、
図9の冠水退避運転実行中表示欄401に表示された設定内容で冠水退避運転を実行するためのボタンである。したがって、冠水退避運転を実行する場合は、
図3の作業フローで示すように、「冠水退避運転計画実行」ボタン407を選択する(ステップS7)。これにより、冠水退避運転実行中表示欄401に表示された設定内容で指定の時間帯に冠水退避運転が実行される。
【0084】
ここで、
図3のステップS7において、「冠水退避運転計画実行」ボタン407が選択された場合において、監視センター5側で実行される制御処理について説明する。顧客端末4において、「冠水退避運転計画実行」ボタン407が選択された場合、監視センター5側では、情報処理部6の運転指令部10が、設定された冠水退避運転の情報を運転設定情報データベース11から読み出す。運転設定情報データベース11に記録された冠水退避運転の設定情報は、ステップS5において
図6の画面42から設定されると共に、ステップS6の段階で運転設定情報入力部9から運転設定情報データベース11に記録された設定情報である。
【0085】
そして、運転指令部10は運転設定情報データベース11から読み出した運転制御方式の設定情報に基づいて、所定の遠隔操作指令(運転指令)をエレベーターシステム30側に送信する。
【0086】
図10は、運転設定情報データベース11に蓄積されている運転設定情報テーブル500の構成例である。運転設定情報テーブル500は、「エレベーターID」501、「号機」502、「開始日」503、「開始時刻」504、「終了日」505、「終了時刻」506、「遠隔操作指令ID」507、「操作指令送信フラグ」508の各項目で構成される。
【0087】
「エレベーターID」501には、エレベーターの固有の識別情報を表す英数字で構成されるエレベーターのIDが記録されている。「号機」502には、対象のビルのエレベーターを管理するための英数字の識別子で構成される号機が記録されている。「開始日」503には、
図6の画面42で指定した冠水退避運転を開始する日付が記録されている。「開始時刻」504には、対応する日付において冠水退避運転を開始する時刻が記録されている。「終了日」505には、
図6の画面42で指定した冠水退避運転を終了する日付が記録されている。「終了時刻」506には、対応する日付において冠水退避運転を終了する時刻が記録されている。「遠隔操作指令ID」507には、対象となるエレベーター(例えば、
図2のエレベーター36-1~36-n)を遠隔操作により冠水退避運転を実施するための遠隔操作指令IDが記録されている。
【0088】
図11に、遠隔操作指令IDのそれぞれに割り当てられた遠隔操作内容例を示したテーブル600の構成例を示す。
図11に示すテーブル600は、「遠隔操作指令ID」601、及び、「遠隔操作内容」602の項目で構成される。「遠隔操作指令ID」601には、「01」、「02」、「03」等、操作内容を示す固有の識別番号が記録されている。「遠隔操作内容」602には、「遠隔操作指令ID」601に対応する運転制御の設定内容が記録されている。本実施形態では、「遠隔操作指令ID」601が「01」の場合には、「遠隔操作内容」602には、エレベーターの運転を休止せずにかごの待機階を最上階等に変更し、継続的に運行を行う冠水退避運転を実行する設定内容が記録されている。「隔操作指令ID」601が「02」の場合には、「遠隔操作内容」602には、かごを最上階などに退避し、エレベーターの運行を休止する冠水退避運転を実行する設定内容が記録されている。「遠隔操作指令ID」が「03」の場合には、「遠隔操作内容」602には、対象のエレベーターに設定した冠水退避運転を解除し、通常運転とする設定内容が記録されている。
【0089】
したがって、運転指令部10が
図10に示す運転設定情報テーブル500に従って遠隔操作指令を出力する場合には、「遠隔操作指令ID」507に記録された遠隔操作指令IDに応じて、
図11テーブル600に示す遠隔操作指令内容を読み出す。そして、運転指令部10は、遠隔操作指令IDに基づく遠隔操作指令をエレベーターシステム30の遠隔監視装置32-1~32-nに送信する。
【0090】
例えば、
図10の、レコード511で示す設定に基づいて運転指令部10が運転指令を送信する場合について説明する。レコード511では、「エレベーターID」501が‘T00001-01’、「開始日」503が’2023/09/01’、「開始時刻」504が’00:00’、「終了日」505が‘2023/09/01’、「終了時刻」506が’07:00’、「遠隔隔操作指令ID」507が「01」である。この場合には、2023年9月1日0:00~7:00まで、遠隔操作指令ID「01」に基づく冠水退避運転を行う遠隔指令が運転指令部10からエレベーターシステム30側に送信される。これにより、エレベーターIDが‘T00001-01’のエレベーターにおいて、2023年9月1日0:00~7:00の期間で、エレベーターの運行を休止せずに、かごの待機階を最上階などに変更して継続的に運行を行う冠水退避運転が実施される。その後、7:00以降は、エレベーターは、自動で通常運転状態となる。
【0091】
また、
図10のレコード512で示す設定に基づいて運転指令部10が運転指令を発令する場合について説明する。レコード512では、「エレベーターID」501が‘T00002-01’、「開始日」503が’2023/09/01’で、「開始時刻」504が’09:00’、「終了日」505が‘2023/09/01’、「終了時刻」506が’12:00’、「遠隔操作指令ID」507が「02」である。この場合には、2023年9月1日9:00~12:00まで、遠隔操作指令ID「02」に基づく遠隔指令が運転指令部10からエレベーターシステム30側に送信される。これにより、エレベーターIDが’T00002-01’のエレベーターにおいて、2023年9月1日9:00~12:00の期間で、かごを最上階などに退避し、エレベーターの運行を休止する冠水退避運転が実施される。
【0092】
次に、
図10の運転設定情報テーブル500における「操作指令送信フラグ」508について説明する。「操作指令送信フラグ」508には、運転指令部10から送信される遠隔操作指令の発信状態が記録される。「操作指令送信フラグ」508には、例えば、遠隔操作指令の発信状態を示す数値として「0」又は「1」が記録される。「0」は、運転指令部10からの遠隔操作指令が未送信(何等かの原因による接続エラーによる未送信を含む)の場合に記録される値である。「1」は、運転指令部10からの遠隔操作指令が送信済みである場合に記録される値である。
【0093】
図9の画面43において「冠水退避運転計画実行」ボタン407が選択された場合、運転指令部10は、
図10に示すテーブルから、下記の条件1~条件3に全て当てはまるレコードのデータを順次抽出する。そして、条件1~条件3に全て当てはまるレコードに示された遠隔操作指令の内容を、エレベーターシステム30の遠隔監視装置32-1~32-nに送信する。
条件1:「開始日」503及び「開始時刻」504で定められた開始日時が、システム日時以前である場合
条件2:「終了日」505及び「終了時刻」506で定められた開始日時が、システム日時以後である場合
条件3:「操作指令送信フラグ」508が、「0」である場合
なお、システム日時とは現在の日時に相当する。
【0094】
例えば、「操作指令送信フラグ」508が「1」である場合は、条件3を満たさない。このため、
図10のレコード511、512、514における遠隔操作指令は送信されない。一方、システム日時が2023年9月1日、9:00ちょうどにおいて、レコード515のデータは、条件1~3を全て満たす。このため、レコード515に示された設定内容の遠隔操作指令が、運転指令部10からエレベーターシステム30側に送信される。なお、レコード515における遠隔操作指令が運転指令部10から送信された場合には、レコード515の「操作指令送信フラグ」508は、「1」に書き換えられる。
【0095】
以上のようにして、冠水退避運転が実施される。冠水退避運転実行時には、利用者1に、冠水退避運転が実施される旨が通知されることが好ましい。
図12に、冠水退避運転実行時において、利用者1が所有する利用者携帯端末2の画面に表示される表示画面の一例を示す。
【0096】
図12に示すように、利用者1が所有する利用者携帯端末2の画面には、お知らせ表示欄901、該当期間表示欄902、エレベーター運行予定情報欄903が表示される。お知らせ表示欄901には、冠水退避運転を行うことを伝える内容が記載される。該当期間表示欄902には、冠水退避運転を実施する期間(開始日、終了日)が表示される。エレベーター運行予定情報欄903には、対象となるエレベーター毎に、例えば、利用可(通常運転)、利用可(利用後最上階でかごが待機)、又は、利用不可(運転休止)の状態が時間帯別に分かるように表示される。
【0097】
本実施形態では、例えば、
図9の画面43において「冠水退避運転計画実行」ボタン407を選択するタイミングで
図12に示す画面を利用者の利用者携帯端末2に表示することができる。本実施形態では、「冠水退避運転計画実行」ボタン407を選択されたタイミングにおいて、情報生成部8が運転設定情報データベース11から冠水退避運転の設定情報を抽出すると共に、利用者携帯端末2に表示する情報を生成する。そして、情報生成部8で生成された冠水退避運転に係る情報は、出力部7を介して利用者携帯端末に送信される。これにより、利用者携帯端末2では、その旨を伝える通知メッセージが表示されると共に、利用者向けのアプリケーションやWEB画面から内容を確認することができる。
【0098】
以上のように、本実施形態では、顧客3は、天気予報の他、ビルの利用人数予測やイベント情報を参照することで、利用者の需要を考慮したエレベーターの冠水退避運転の設定を行うことができる。したがって、エレベーターシステムにおいて、利用者の利便性を低下させることなく、浸水被害に対するリスクを低減させることができる。
【0099】
なお、本実施形態のエレベーター運転制御システム100は、主に、監視センター5に構成された各部によって構成される例としたが、エレベーター運転制御システムが、顧客端末4や、利用者携帯端末2を含む構成であってもよい。さらに、本実施形態では、顧客端末4に各種の情報が表示されると共に、顧客端末4から各操作を行う例について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、監視センター5に設置された表示端末に各種の情報が表示されると共に、その表示端末から運転設定情報の入力される構成としてもよい。
【0100】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…利用者、2…利用者携帯端末、3…顧客、4…顧客端末、5…監視センター、6…情報処理部、7…出力部、8…情報生成部、9…運転設定情報入力部、10…運転指令部、11…運転設定情報データベース、12…情報抽出部、13…ビル・エレベーター情報記憶部、14…ビルマスタ情報データベース、15…エレベーター情報データベース、16…外部情報記憶部、17…気象情報データベース、18…ビルイベント情報データベース、19…カレンダー情報データベース、20…通信装置、21…運行データ収集装置、22…エレベーター運行情報記憶部、23…エレベーター運行情報データベース、24…外部端末、30…エレベーターシステム