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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150956
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】摩耗量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/14 20060101AFI20241017BHJP
   F17B 1/08 20060101ALI20241017BHJP
   F17B 1/24 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01B3/14
F17B1/08
F17B1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064019
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石井 克憲
(72)【発明者】
【氏名】白神 裕也
(72)【発明者】
【氏名】冨山 僚介
(72)【発明者】
【氏名】末元 秀昌
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA14
2F061BB02
2F061CC09
2F061DD24
2F061DD25
2F061FF03
2F061FF09
2F061FF10
2F061FF34
2F061FF56
2F061FF58
2F061FF76
2F061GG04
2F061GG07
2F061GG11
2F061HH02
2F061HH11
2F061HH79
2F061JJ02
2F061JJ06
(57)【要約】
【課題】シール部材の摩耗量の測定作業に際し、永久磁石や磁力検出器などの機器の設置を不要とし、シール部材の摩耗量の測定作業を精度高く簡易かつ容易に行うことができる、摩耗量測定装置を提供する。
【解決手段】摩耗量測定装置20は、シール部材13a及び取付金具14aに押し当てられることで形状が変形し、側板3と取付金具14aとの間の距離L1,L1’に応じてシール部材13aに接触する部分21Cの長さL21C,L21C‘が変化する測定部材21と、測定部材21を保持する保持部材24と、一端が保持部材24に取り付けられ、他端に垂直測定補助バー26が設けられる棒状部材25とを備える。垂直測定補助バー26は、垂直測定補助バー26の一端面26aが保持部材24の一端面24aと面一になるように、棒状部材25の長手方向に対して交差して設けられる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの貯留量に応じてガスホルダーの側板に沿って上下方向に移動するピストンの外周部と前記側板との間の気密保持をするためのシール装置であって、該シール装置が、前記側板に押し付けられて前記ピストンの外周部と前記側板との間をシールするシール部材と、該シール部材を前記ピストンの外周部に取り付ける取付金具とを備えている、前記シール装置における前記シール部材の摩耗量を測定するために用いられる摩耗量測定装置であって、
前記シール部材及び前記取付金具に押し当てられることで形状が変形し、前記側板と前記取付金具との間の距離に応じて前記シール部材に接触する部分の長さが変化する測定部材と、
該測定部材を保持する保持部材と、
一端が前記保持部材に取り付けられ、他端に垂直測定補助バーが設けられる棒状部材とを備え、
前記垂直測定補助バーは、該垂直測定補助バーの一端面が前記保持部材の一端面と面一になるように、前記棒状部材の長手方向に対して交差して設けられることを特徴とする摩耗量測定装置。
【請求項2】
前記棒状部材には、前記測定部材の形状を、前記シール部材及び前記取付金具に押し当てられて形状が変化した変化状態から初期状態に復帰させる形状復帰部材が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の摩耗量測定装置。
【請求項3】
前記棒状部材は、伸縮可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の摩耗量測定装置。
【請求項4】
前記棒状部材には、作業者の手首に巻き付け可能な落下防止ワイヤが取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の摩耗量測定装置。
【請求項5】
前記保持部材には、前記測定部材の前記シール部材に接触する部分の長さを測定する目盛りが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の摩耗量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの貯留量に応じてガスホルダーの内壁に沿って上下動するピストンの外周に配設され、当該ピストンとガスホルダーの内壁との間の気密保持をするためのシール部材の摩耗量を測定するために用いられる摩耗量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、例えば、高炉で発生したガスを回収して貯留し、製鉄所内の他の工場にガスを供給するためのガスホルダーが設置されている。ここで、乾式ガスホルダーは、内部にガスの貯留量に応じてガスホルダーの側板(内壁)に沿って上下動するピストンを備えている。ガスはピストンの下部に貯留され、ピストンの上部は作業者が進入可能となっている。ピストンの外周には、ピストンとガスホルダーの側壁との間の気密保持をするためのシール装置が配設されている。
【0003】
このシール装置には、シール油の静圧でガスをシールするシール油方式があり、本発明では、シール油方式のシール装置を対象としている。シール油方式のシール装置は、シール油の静圧をガス圧以上に保つことでガスをシールするとともに、ガスホルダーの側壁に対して摺動するシール部材をカウンタウェイトによる押し付け機構によって当該側壁に押し付けて、その面圧でシール油とガスとの間(ピストンの外周部とガスホルダーの側板との間)をシールする。
【0004】
シール装置のシール部材は、ピストンの外周部に取り付けられてガスホルダーの側板に対して摺動するため経年変化により摩耗する。シール部材は、乾式ガスホルダーの心臓部であり、その摩耗量を正確に測定、評価することが防災上非常に重要となっている。このため、シール部材の摩耗量を定期又は不定期に検査する。
ここで、シール装置のシール部材はシール油に浸っており、ピストンの上部から作業者が目視にてその摩耗量を確認することが困難である。このため、シール部材の摩耗量を正確に測定するために、ガスホルダーの運転を停止してガスを一時的に別のホルダーに移し、シール油を除去した後、シール材を取り外してシール部材の摩耗量の測定を行っていた。
【0005】
ガスホルダーの運転を停止してのシール部材の摩耗量の測定は、ガスを別のホルダーに移す際に一部のガスが放散してしまい、また、その作業時間に膨大な時間が必要となる。このため、ガスホルダーの運転を停止することなく乾式ガスホルダーのシール部材の摩耗量を正確に測定するものとして、従来、例えば、特許文献1に示す乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出装置が提案されている。
【0006】
特許文献1に示す乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出装置は、シール装置のシール材(シールゴム)の摩耗にともなって側板に近づくようにシール装置に取り付けられた永久磁石と、その永久磁石の磁力をガスホルダーの外部から測定することによってシール材の摩耗量を検出するための磁力検出器とを備えているものである。
これにより、乾式ガスホルダーの心臓部であるシール材の摩耗量を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-102008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この従来の特許文献1に示す乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出装置にあっては、以下の課題があった。
即ち、特許文献1に示す乾式ガスホルダーのシール材摩耗量検出装置の場合、永久磁石をシール装置に取り付けるとともに、ガスホルダーの側板の外面に磁力検出器を設置する必要がある。ここで、永久磁石の磁力を安定して検出するためには、磁力検出器の保守、点検を行う必要があり、シール材の摩耗量の測定作業に加えて磁力検出器の保守、点検作業が必要となり、シール材の摩耗量の測定作業が複雑かつ面倒なものとなっていた。
【0009】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、シール部材の摩耗量の測定作業に際し、永久磁石や磁力検出器などの機器の設置を不要とし、シール部材の摩耗量の測定作業を精度高く簡易かつ容易に行うことができる、摩耗量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る摩耗量測定装置は、ガスの貯留量に応じてガスホルダーの側板に沿って上下方向に移動するピストンの外周部と前記側板との間の気密保持をするためのシール装置であって、該シール装置が、前記側板に押し付けられて前記ピストンの外周部と前記側板との間をシールするシール部材と、該シール部材を前記ピストンの外周部に取り付ける取付金具とを備えている、前記シール装置における前記シール部材の摩耗量を測定するために用いられる摩耗量測定装置であって、前記シール部材及び前記取付金具に押し当てられることで形状が変形し、前記側板と前記取付金具との間の距離に応じて前記シール部材に接触する部分の長さが変化する測定部材と、該測定部材を保持する保持部材と、
一端が前記保持部材に取り付けられ、他端に垂直測定補助バーが設けられる棒状部材とを備え、前記垂直測定補助バーは、該垂直測定補助バーの一端面が前記保持部材の一端面と面一になるように、前記棒状部材の長手方向に対して交差して設けられることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る摩耗量測定装置によれば、シール装置のシール部材の摩耗量の測定作業に際し、永久磁石や磁力検出器などの機器の設置を不要とし、シール部材の摩耗量の測定作業を精度高く簡易かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る摩耗量測定装置が用いられるシール装置を備えたガスホルダーを示す図である。
図2図1に示すガスホルダーにおけるシール装置及びその周辺を詳細に示す図である。
図3図2におけるシール装置の拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る摩耗量測定装置の正面図である。
図5図4に示す摩耗量測定装置の左側面図である。
図6】第2棒状部材及び垂直測定補助バーの正面図である。
図7】形状復帰部材を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
図8】形状復帰部材が後退位置にあり、測定部材の第1部分が第1位置にあり、測定部材の第2部分が第2位置にある状態を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図である。但し、(a),(b)においては、保持部材の第1平板が取外した状態が示されている。
図9】形状復帰部材が図8に示す後退位置から初期位置に移動し、測定部材の全て部分が第1位置に復帰した状態を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図である。但し、(a),(b)においては、保持部材の第1平板が取外した状態が示されている。
図10】摩耗量測定装置を用いてシール装置のシール部材の摩耗量を測定する様子を示す図である。
図11】摩耗量測定装置の測定部材を摩耗していない初期状態のシール部材及び取付金具に押し当てた後、摩耗量測定装置を引き上げた状態を示す図である。
図12】摩耗量測定装置の測定部材を摩耗している状態のシール部材及び取付金具に押し当てた後、摩耗量測定装置を引き上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る摩耗量測定装置が用いられるシール装置を備えたガスホルダーが示されている。
図1に示すガスホルダー1は、乾式ガスホルダーであり、基柱2と円筒状の側板3とからなる側壁構造と、円盤状のピストン4と、屋根5及び底板6とで構成されている。ガスホルダー1は、例えば、製鉄所における高炉で発生したガスGを回収して貯留し、製鉄所内の他の工場にガスGを供給するためのものである。
【0015】
ガスホルダー1におけるピストン4は、基柱2または側板3をガイドとして、ガスGの貯留量に応じて側板3に沿って上下方向に移動する。
そして、ピストン4の外周部4a(図2参照)には、ピストン4の外周部4aと側板3との間の気密保持をするためのシール装置10が設けられている。シール装置10は、シール油方式のシール装置である。シール装置10は、シール油Oの静圧をガスGのガス圧以上に保つことでガスをシールするとともに、図3に示すように、複数(本実施形態にあっては4つ)のシール部材13a~13dを押し付け機構8により側板3に押し付けてその面圧でシール油OとガスGとの間(ピストン4の外周部4aと側板3との間)をシールする。シール装置10は、これら複数のシール部材13a~13dと、これら複数のシール部材13a~13dをピストン4の外周部4に取り付ける2つの取付金具14a,14bとを備えている。
【0016】
複数のシール部材13a~13dは、図3に示すように、ピストン4の外周部4aに取り付けられた環状の取付板11の外周面に外方に突出するように設けられた環状板12に対し、上側のシール部材13a,13bが環状板12の上側に、下側のシール部材13c,13dが環状板12の下側に上下から2つの取付金具14a,14bによって挟み込むようにして取り付けられている。複数のシール部材13a~13dの各々は、所定の板厚を有する合成ゴム製の円環状の板材である。2つの取付金具14a,14bによって複数のシール部材13a~13dを環状板12に取り付けるに際し、ボルト15とナット16により抱き締めすることにより複数のシール部材13a~13dを取り付ける。つまり、2つの取付金具14a,14bによって複数のシール部材13a~13dをピストン4の外周部4aに取り付けることになる。2つの取付金具14a,14bの各々は、図3に示すように、断面形状が略L字形をなしている。
【0017】
そして、複数のシール部材13a~13dを側板3に押し付ける押し付け機構7は、ピストン4の上面に取り付けられる支持部材7aと、支持部材7aに対し回転可能に軸支された第1リンク7bと、第1リンク7bの先端に回転可能に軸支された第2リンク7dと、第2リンク7dの先端に設けられた揺動部材7eと、揺動部材7eに対して一端が回転可能に軸支されるとともにシール装置10の取付板11に他端が取り付けられた第3リンク7fとを備えている。図2及び図3に示すように、第1リンク7bの後端にはカウンタウェイト7cが取り付けられ、カウンタウェイト7cの自重により第1リンク7b、第2リンク7d、揺動部材7e、及び第3リンク7fが作動して、シール装置10の取付板11が複数のシール部材13a~13dを側板3に押し付けるようになっている。
【0018】
ここで、複数のシール部材13a~13dは、ガスホルダー1の側板3に対して摺動するため経年変化により摩耗する。シール部材13a~13dは、ガスホルダー1の心臓部であり、その摩耗量を正確に測定、評価することが防災上非常に重要となっている。このため、本実施形態にあっては、図4及び図5に示す摩耗量測定装置20を用いて最も上側のシール部材13aの摩耗量を測定するようにしている。なお、複数のシール部材13a~13dのうち最も上側のシール部材13aのみの摩耗量を測定するのは、複数のシール部材13a~13dは押し付け機構8による上下方向に亘っての均一の押し付け力によって側板3に押し付けられているので、それらの摩耗量は均一であり、最も上側のシール部材13aのみの摩耗量を測定すれば足りるからである。
【0019】
摩耗量測定装置20は、図4及び図5に示すように、測定部材21、保持部材24、及び棒状部材25を備えている。以下に述べる摩耗量測定装置20の説明においては、棒状部材25の長手方向が上下方向と一致し、棒状部材25の下端に保持部材24が位置している場合を想定して説明する。
測定部材21は、図11及び図12に示すように、シール装置10のシール部材13a及び上側の取付金具14aに押し当てられることで形状が変形し、側板3と取付金具14a(14aa)との間の距離L1,L1’に応じてシール部材13aに接触する部分21C,21C’の長さL21C,L21C’が変化するものである。
【0020】
測定部材21は、上下方向に延びる複数のプラスチック製又は金属製の線状材で構成され、各線状材が保持部材24の後述する第1保持部材22に対し上下方向に摺動自在に保持されている。測定部材21の各線状材は、図8(a),(b)に示すように、測定部材21の下端面21bが第1保持部材22の下端面22aから距離aだけ突出する第1位置(初期状態)と、測定部材21の下端面21bが第1保持部材22の下端面22aから距離bだけ突出する第2位置との間を移動可能に第1保持部材22に保持されている。図8(a),(b)においては、測定部材21の第1部分21Aが第1位置にあり、測定部材の第2部分21Bが第2位置にある状態が示されている。図9(a),(b)においては、測定部材21の全ての部分が第1位置にある状態が示されている。測定部材21において、全ての線状材は同一長さを有し、全ての線状材が上下で揃っているときには、測定部材21は直方体となっている。
【0021】
保持部材24は、測定部材21を保持するものであり、図4及び図5に示すように、第1保持部材22及び第2保持部材23を備えている。第1保持部材22は、直方体の樹脂部材であり、測定部材21の各線状材を上下方向に摺動自在に保持する。
第2保持部材23は、端板23a、第1平板23b及び第2平板23cを備えている。端板23aは、左右方向及び前後方向に延び、上下方向に所定の板厚を有する矩形状の鋼製板である。第1平板23bは、図4に示すように、上下方向及び左右方向に延び、前後方向に所定の板厚を有する矩形状の鋼製板であり、図5に示すように、端板23aの前端に取り付けられている。第1平板23bには、後述する形状復帰部材28の棒状部28aの移動を可能とする開口23dが形成されている。第2平板23cは、上下方向及び左右方向に延び、前後方向に所定の板厚を有する矩形状の鋼製板であり、図5に示すように、端板23aの後端に取り付けられている。第1平板23b及び第2平板23cのそれぞれの左右方向の長さは、端板23aの左右方向の長さと同一であり、第1平板23b、端板23a、及び第2平板23cのそれぞれの左端面24a(図4参照)は面一となり、第1平板23b、端板23a、及び第2平板23cのそれぞれの右端面は面一となるように取り付けられている。第2保持部材23は、第1保持部材22を第1平板23b及び第2平板23cにより前後で挟むようにして保持し、端板23a、第1平板23b及び第2平板23cにより測定部材21の各線状材を上下方向に移動可能とする空間を形成する。
【0022】
また、第2保持部材23の第1平板23bには、図4図11及び図12に示すように、測定部材21のシール部材13aに接触する部分21C,21C’の長さL21C,L21C’を測定する目盛り30が設けられている。目盛り30は、左右方向に細長く延びるように形成され、第1平板23bの下端縁に取り付けられる。
そして、保持部材24を構成する第2保持部材23の左端面24aは、図10乃至図12に示すように、摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する際に、ガスホルダー1の側板3に沿って下降される。
【0023】
また、棒状部材25は、第1棒状部材25a及び第2棒状部材25bを備えている。第1棒状部材25aは、上下方向と同一の長手方向に細長く延びる角筒状の鋼製部材であり、下端が第2保持部材23の端板23aに取り付けられている。第1棒状部材25aには、図4及び図5に示すように、摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する際における作業者の把持部25eが設けられている。把持部25eは、滑り止め加工が施されており、例えば、第1棒状部材25aの外周に巻回される滑り止めテープで構成される。
【0024】
また、第1棒状部材25aには、図4及び図5に示すように、摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する際に、作業者の手首に巻き付け可能な落下防止ワイヤ27が取付部材25dにより取り付けられている。
また、第2棒状部材25bは、図4乃至図6に示すように、第1棒状部材25a内において上下方向に移動自在に配置される上下方向と同一の長手方向に細長く延びる角状の鋼製部材である。棒状部材25は、第2棒状部材25bを第1棒状部材25a内において上下方向に移動させることにより、伸縮可能(棒状部材25の長さの調整が可能)となっている。棒状部材25は、本実施形態においては、1500mmから2500mmの間で伸縮可能である。そして、第2棒状部材25bは、第1棒状部材25aに取り付けられた固定部材25cによって締め付け固定されることにより、その上下方向の位置の位置決めがなされる。
【0025】
また、棒状部材25の第2棒状部材25bの上端には、図4乃至図6に示すように、垂直測定補助バー26が設けられている。垂直測定補助バー26は、垂直測定補助バー26の左端面(一端面)26aが、第1平板23b、端板23a、及び第2平板23cの左端面(一端面)24aと面一になるように、第2棒状部材25bの長手方向に対して交差して設けられている。本実施形態においては、垂直測定補助バー26は、第2棒状部材25bの長手方向に対して直角に設けられている。垂直測定補助バー26の左端面26aは、図10に示すように、摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する際に、ガスホルダー1の側板3に沿うように下降される。保持部材24を構成する第2保持部材23の左端面24aが、摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する際に、ガスホルダー1の側板3に沿うように下降されるのみでは、測定部材21が上下方向に対して傾いてしまい、測定誤差のおそれがある。これに対して、垂直測定補助バー26の左端面26aを、摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する際に、ガスホルダー1の側板3に沿うように併せて下降させることで、測定部材21の上下方向に対する傾きを阻止し、測定誤差のおそれを回避することができる。
【0026】
また、棒状部材25の第1棒状部材25aの下端近傍には、図4図5図7図8図9図11、及び図12に示すように、測定部材21の形状を、シール部材13a及び取付金具14aに押し当てられて形状が変化した変化状態(測定部材21の該当部分が変化した状態)から初期状態(測定部材21の全ての部分が第1位置にある状態)に復帰させる形状復帰部材28が取り付けられている。
【0027】
形状復帰部材28は、図4図5、及び図7に示すように、第1棒状部材25aに固定された支持部材29に上下動自在に支持された棒状部28aと棒状部28aの下端から左右方向に延びる形状復帰バー28bとを備えている。形状復帰バー28bは、図4及び図5に示すように、第2保持部材23の端板23a、第1平板23b及び第2平板23cにより画定される空間内であって、測定部材21の上方の位置に配置される。
【0028】
形状復帰部材28の操作に際し、棒状部28aを下方に移動させることにより、形状復帰バー28bも下方に移動して測定部材21を下方に押圧する。これにより、測定部材21は、測定部材21が第2位置にある状態(図8(a),(b)においては、測定部材21の第2部分21Bが第2位置にある状態が示されている)から測定部材21が第1位置にある状態(図9(a),(b)においては、測定部材21の全ての部分が第1位置にある状態が示されている)まで移動させることが可能である。
【0029】
なお、測定部材21の上端面21aには、形状復帰バー28bが当接可能な切欠き21cが形成されている。
次に、このように構成された摩耗量測定装置20を用いてシール部材13aの摩耗量を測定する方法について、図10乃至図12を参照して説明する。図10には、摩耗量測定装置20を用いてシール装置10のシール部材13aの摩耗量を測定する様子が示されている。図11には、摩耗量測定装置20の測定部材21を摩耗していない初期状態のシール部材13a及び取付金具14aに押し当てた後、摩耗量測定装置20を引き上げた状態が示されている。図12には、摩耗量測定装置20の測定部材21を摩耗している状態のシール部材13a及び取付金具14aに押し当てた後、摩耗量測定装置20を引き上げた状態が示されている。
【0030】
先ず、シール部材13aの摩耗量を測定するに際し、作業者は、ガスホルダー1の内部のピストン4の上において、落下防止ワイヤ27を手首に装着する。この段階では、第2棒状部材25bが第1棒状部材25a内で縮んだ状態となっている。
次いで、形状復帰部材28の棒状部28aを作業者が押し込むことにより、形状復帰バー28bによって測定部材21の全ての部分を第1位置にある状態(初期状態)に位置させる。
【0031】
次いで、作業者が固定部材25cを緩め、第2棒状部材25bを伸長させ、固定部材25cを締めて第2棒状部材25bを伸長させた状態で固定する。
次いで、作業者は、図10に示すように、保持部材24を下側にして垂直測定補助バー26の左端面26a及び測定部材21を保持する保持部材24(第2保持部材23)の左端面24aをガスホルダー1の側板3に押し当て、棒状部材25の長手方向を上下方向に一致させる。
【0032】
次いで、作業者は、垂直測定補助バー26の左端面26a及び保持部材24(第2保持部材23)の左端面24aを側板3に押し当てたまま、図10に示すように、摩耗量測定装置20全体を垂直に下降させ、図11及び図12に示すように、シール油O中にあるシール装置10のシール部材13a及び取付金具14aに測定部材21を押し当てる。
これにより、測定部材21は、図11及び図12に示すように、シール部材13aの表面13aa、取付金具14aの第1側面14aa、第1平面14ab、第2側面14ac、及び第2平面14adに倣って変形する。そして、測定部材21には、シール部材13aの表面13aaに接触する部分(シール部材13aに接触する部分)21C,21C’、取付金具14aの第1平面14abに接触する部分21D,21D’、及び取付金具14aの第2平面14adに接触する部分21E,21E’が形成される。
【0033】
ここで、保持部材24の左端面24aのみならず、垂直測定補助バー26の左端面26aを側板3に押し当てて摩耗量測定装置20全体を垂直に下降させるので、測定部材21の上下方向に対する傾きを阻止でき、測定誤差のおそれを回避することができる。
次いで、作業者は、摩耗量測定装置20を引き上げる。
次いで、作業者は、測定部材21におけるシール部材13aの表面13aa及び取付金具14aの第1側面14aaに接する部分(シール部材13aに接触する部分)21C,21C’の長さL21C,L21C’を目盛り30を読んで測定する。
【0034】
ここで、シール部材13aに接触する部分21Cの長さL21Cは、摩耗していない初期状態のシール部材13aに接触する部分21Cの長さであり、シール部材13aに接触する部分21C’の長さL21C’は摩耗している状態のシール部材13aに接触する部分の長さである。
従って、長さL21Cから長さL21C’を差し引くことにより、シール部材13aの摩耗量を把握することができる。
【0035】
つまり、先ず、シール部材13aが新品の時における測定部材21のシール部材13aに接触する部分21Cの長さL21Cを測定しておき、次いで、シール部材13aの摩耗量を把握したいときに測定部材21のシール部材13aに接触する部分21C’の長さL21C’を測定し、長さL21Cから長さL21C’を差し引くことにより、シール部材13aの摩耗量を把握することができる。
【0036】
なお、シール部材13aが摩耗していない初期状態のときの側板3と取付金具14aとの間の距離はL1であり、シール部材13aが摩耗すると、押し付け機構7による押し付け力によって取付金具14aが側板3に近づき、側板3と取付金具14aとの間の距離はL1’となり短くなる。これにともなって、シール部材13aに接触する部分21Cの長さL21Cがシール部材13aに接触する部分21C‘の長さL21C’に短くなる。従って、側板3と取付金具14aとの間の距離L1,L1’に応じてシール部材13aに接触する部分21C,21C’の長さL21C,L21C’が変化する。図11及び図12において、L21D、L21D’は測定部材21の取付金具14aの第1平面14abに接触する部分21D,21D’の長さ、L21E、L21E’は測定部材21の取付金具14aの第2平面14adに接触する部分21E,21E’の長さ、L21、L21’は測定部材21の全体の長さ(左右方向)である。なお、測定部材21の全体の長さ(左右方向)L21、L21’は変化しない。
【0037】
このように、本実施形態に係る摩耗量測定装置20によれば、シール部材13a及び取付金具14aに押し当てられることで形状が変形し、側板3と取付金具14aとの間の距離L1,L1’に応じてシール部材13aに接触する部分21C,21C’の長さL21C,L21C’が変化する測定部材21を備えている。また、摩耗量測定装置20は、測定部材21を保持する保持部材24と、一端が保持部材24に取り付けられ、他端に垂直測定補助バー26が設けられる棒状部材25とを備えている。そして、垂直測定補助バー26は、垂直測定補助バー26の一端面26aが保持部材24の一端面24aと面一になるように、棒状部材25の長手方向に対して交差して設けられる。
【0038】
これにより、作業者がピストン4の上からシール油O中のシール部材13aの摩耗量を測定することが可能となり、ガスホルダー1の運転を停止してガスGを一時的に別のホルダーに移したり、シール油Oを除去した後、シール部材13a~13dを取り外すことなく、シール部材13aの摩耗量を正確に測定することができる。
そして、シール部材13aの摩耗量の測定作業に際し、永久磁石や磁力検出器などの機器の設置が不要であり、シール部材13aの摩耗量の測定作業を精度高く簡易かつ容易に行うことができる。
【0039】
また、垂直測定補助バー26の一端面26aが保持部材24の一端面24aと面一になるように、棒状部材25の長手方向に対して交差して設けられる垂直測定補助バー26を備えている。これにより、保持部材24の一端面24aのみならず、垂直測定補助バー26の一端面26aをガスホルダー1の側板3に押し当てて摩耗量測定装置20全体を垂直に下降させることで、測定部材21の上下方向に対する傾きを阻止でき、測定誤差のおそれを回避することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る摩耗量測定装置20によれば、棒状部材25には、測定部材21の形状を、シール部材13a及び取付金具14aに押し当てられて形状が変化した変化状態から初期状態に復帰させる形状復帰部材28が取り付けられる。
これにより、形状復帰部材28により測定部材21の形状を、シール部材13a及び取付金具14aに押し当てられて形状が変化した変化状態から初期状態に復帰させることができるので、摩耗量測定装置20を用いて何回でもシール部材13aの摩耗量を測定することができる。
【0041】
また、棒状部材25は、伸縮可能に構成されるので、摩耗量測定装置20を使用しない時は棒状部材25を縮ませた状態にしておき、嵩張らない状態で摩耗量測定装置20を保管しておくことができる。そして、摩耗量測定装置20を使用するときに棒状部材25を伸長させてシール部材13aの摩耗量を測定するようにすればよい。
また、本実施形態に係る摩耗量測定装置20によれば、棒状部材25には、作業者の手首に巻き付け可能な落下防止ワイヤ27が取り付けられる。これにより、作業者が摩耗量測定装置20を用いてピストン4上からシール部材13aの摩耗量を測定するに際し、摩耗量測定装置20の落下を防止することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る摩耗量測定装置20によれば、保持部材24には、測定部材21のシール部材13aに接触する部分21C,21C’の長さL21C,L21C’を測定する目盛り30が設けられている。これにより、目盛り30によって測定部材21のシール部材13aに接触する部分21C,21C’の長さL21C,L21C’を測定し、シール部材13aの摩耗量を把握することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、形状復帰部材28を棒状部材25に取り付ける必要は必ずしもない。
また、棒状部材25は、伸縮可能に構成される必要は必ずしもない。
また、棒状部材25に落下防止ワイヤ27を取り付ける必要は必ずしもない。
【0044】
更に、保持部材24に目盛り30を設ける必要は必ずしもない。
また、垂直測定補助バー26は、第2棒状部材25bの長手方向に対して直角に設けられている場合に限らず、垂直測定補助バー26の左端面(一端面)26aが、第1平板23b、端板23a、及び第2平板23cの左端面(一端面)24aと面一になるのであれば、第2棒状部材25bの長手方向に対して斜めに設けられていてもよい。
【0045】
また、シール部材13a~13dの数は、本実施形態では4つであるが、1つ又は4つ以外の複数であってもよい。
【実施例0046】
図4及び図5に示す摩耗量測定装置20を用いてピストン4の上からシール部材13aの摩耗量を測定することで、ガスホルダー1の運転の停止が不要となり、ガス放散が0Nm、ガス抜き及びガス通し(ガス入れ)の作業時間が0時間、摩耗量測定の作業時間が3時間(3人×1時間)となった。
また、ガス抜き及びガス通し作業を必要としないため、作業者が燃料ガスに含まれるCOに曝露されることなく、安全に測定できた。
【0047】
また、永久磁石や磁力検出器などの機器の設置が不要で、設備改造を必要としないため、それらの機器の設置コスト及び設備改造コストがかからなかった。
一方、図4及び図5に示す摩耗量測定装置20を用いずに、従前の方法によりシール部材13aの摩耗量を測定する場合、ガスホルダー1の運転の停止が必要であり、ガス放散が240万Nm、ガス抜き及びガス通し(ガス入れ)の作業時間が144時間(6人×24時間)、摩耗量測定の作業時間が6時間(6人×1時間)であった。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスホルダー
2 基柱
3 側板
4 ピストン
4a 外周部
5 屋根
6 底板
7 押し付け機構
7a 支持部材
7b 第1リンク
7c カウンタウェイト
7d 第2リンク
7e 揺動部材
7f 第3リンク
10 シール装置
11 取付板
12 環状板
13a~13d シール部材
13aa 表面
14a 取付金具
14aa 第1側面
14ab 第1平面
14ac 第2側面
14ad 第2平面
14b 取付金具
15 ボルト
16 ナット
20 摩耗量測定装置
21 測定部材
21a 上端面
21b 下端面
21c 切欠き
21A 第1部分
21B 第2部分
21C,21C’ シール部材に接触する部分
21D,21D’ 取付金具の第1平面に接触する部分
21E,21E’ 取付金具の第2平面に接触する部分
22 第1保持部材
23 第2保持部材
23a 端板
23b 第1平板
23c 第2平板
24 保持部材
24a 左端面(一端面)
25 棒状部材
25a 第1棒状部材
25b 第2棒状部材
25c 固定部材
25d 取付部材
25e 把持部
26 垂直測定補助バー
26a 左端面(一端面)
27 落下防止ワイヤ
28 形状復帰部材
28a 棒状部
28b 形状復帰バー
29 支持部材
30 目盛り
O シール油
G ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12