(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150969
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法及び再生樹脂原料
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20241017BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
C08J11/08 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064046
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 宰
【テーマコード(参考)】
4F071
4F401
【Fターム(参考)】
4F071AA14
4F071AA20
4F071AA22
4F071AA39
4F071AA54
4F071AA81
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF21
4F071AF30Y
4F071AF34
4F071AF54
4F071AF61
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F401AA08
4F401AA09
4F401AA10
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4F401AA24
4F401AB07
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4F401BA13
4F401CA14
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4F401CA57
4F401EA54
4F401EA56
4F401EA59
4F401EA60
4F401EA62
4F401EA68
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】再生樹脂原料から劣化の少ないフィルムを製造する製造方法を提供する。
【解決手段】ここでのフィルムの製造方法は、樹脂製の容器及び包装材料の少なくとも一方を出発原料として、粉体又は造粒物の形状の再生樹脂原料を製造することと、前記再生樹脂原料を原料の少なくとも一部とするフィルムを製造することとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の容器及び包装材料の少なくとも一方を出発原料として、粉体又は造粒物の形状の再生樹脂原料を製造することと、
前記再生樹脂原料を原料の少なくとも一部とするフィルムを製造することと
を含む、フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記再生樹脂原料を製造することは、
2種類以上の樹脂を含有する前記容器及び前記包装材料の少なくとも一方を前記出発原料として、1又は複数種類の樹脂を含有する前記再生樹脂材料を製造すること
を含む、
請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記再生樹脂原料を製造することは、
前記出発原料を粉砕し、粉砕物を得ることと、
前記粉砕物を溶媒に浸漬し、前記粉砕物に含まれる樹脂成分の少なくとも一部が溶解した溶液を生成することと、
前記溶液から前記樹脂成分の少なくとも一部を析出させ、析出物を生成することと、
前記析出物を前記粉体又は前記造粒物に加工することと
を含む、
請求項1又は2に記載フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムのヘイズ値は、10パーセント以下である、
請求項1又は2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
樹脂製の容器及び包装材料の少なくとも一方を出発原料として製造され、粉体又は造粒物の形状を有する、再生樹脂原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造方法及び再生樹脂原料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品、医療品、化学品、化粧品、トイレタリー、工業用品等の様々な分野で、樹脂製の容器及び包装材料が広く利用されている。近年、このような樹脂成形物から樹脂材料を再生原料として回収するリサイクル技術の開発が盛んである。回収された樹脂材料は、再利用しやすいように、加熱溶融されてペレット形状に再形成されることが多い。特許文献1は、樹脂製の包装資材からペレットを製造し、これを熱収縮性フィルムへと加工する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、回収された樹脂材料をペレット形状に再形成するためには、回収された樹脂材料を加熱溶融する必要がある。しかし、そうすると、加熱溶融の過程で与えられる熱履歴により樹脂材料が熱劣化を引き起こし、樹脂材料の機能性が損なわれ得る。
【0005】
本発明の目的は、劣化の少ない再生樹脂原料を提供すること、及び、そのような再生樹脂原料から劣化の少ないフィルムを製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従うフィルムの製造方法は、樹脂製の容器及び包装材料の少なくとも一方を出発原料として、粉体又は造粒物の形状の再生樹脂原料を製造することと、再生樹脂原料を原料の少なくとも一部とするフィルムを製造することとを含む。
【0007】
このフィルムの製造方法において、再生樹脂原料を製造することは、2種類以上の樹脂を含有する容器及び包装材料の少なくとも一方を出発原料として、1又は複数種類の樹脂を含有する再生樹脂材料を製造することを含んでもよい。
【0008】
このフィルムの製造方法において、再生樹脂原料を製造することは、出発原料を粉砕し、粉砕物を得ることと、粉砕物を溶媒に浸漬し、粉砕物に含まれる樹脂成分の少なくとも一部が溶解した溶液を生成することと、溶液から樹脂成分の少なくとも一部を析出させ、析出物を生成することと、析出物を粉体又は造粒物に加工することとを含んでもよい。
【0009】
このフィルムの製造方法において、フィルムのヘイズ値は、10パーセント以下であってもよい。
【0010】
本発明の他の局面に従う再生樹脂原料は、樹脂製の容器及び包装材料の少なくとも一方を出発原料として製造され、粉体又は造粒物の形状を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、劣化の少ない再生樹脂原料を提供することができる。あるいは、そのような再生樹脂原料から劣化の少ないフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法の流れを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法及び再生樹脂原料について説明する。
【0014】
<1.概要>
図1に、本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法の流れを示すフローチャートを示す。
図1には、フローチャートに含まれる各工程が実施される様子を模式的に示す図も併せて示す。この製造方法によれば、まず、出発原料1から再生樹脂原料2が製造され、続いて、再生樹脂原料2からフィルム3が製造される。出発原料1は、リサイクルされる物品であり、製品として使用済みのもの、未使用品、製造過程における廃棄品、廃棄過程における中間処理品等とすることができる。
【0015】
再生樹脂原料2は、粉体21又は造粒物22として製造される。詳細は後述するが、このような形状の再生樹脂原料2は、ペレットの製造時のような加熱溶融の工程を経ることなく製造される。そのため、再生樹脂原料2においては、ペレットの製造時のような熱履歴により過度に熱劣化が引き起こされることがなく、その機能性の低下が抑制される。その結果、劣化の少ない再生樹脂原料2を製造することができ、ひいては、そのような再生樹脂原料2から劣化の少ないフィルム3を製造することができる。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0016】
<1―1.フィルムの製造方法の詳細>
まず、工程S101では、出発原料1を用意し、これを粉砕し、それにより、粉砕物10が得られる。粉砕方法は、特に限定されず、出発原料1の種類に応じて適宜選択することができ、公知の粉砕機、破砕機、裁断機等を適宜使用することができる。粉砕物10の各片のサイズは特に限定されない。ただし、出発原料1がフィルムである場合、粉砕されたフィルムの面積は、500mm2以下が好ましく、300mm2以下がより好ましく、200mm2以下がさらに好ましく、100mm2以下が特に好ましい。
【0017】
出発原料1は、樹脂製の容器及び包装材料の少なくとも一方である。ここでいう容器及び包装材料には、物品を収容又は包装するためのトレー、ボトル、パウチ、袋、フィルム、ラップ、不織布及びシートが含まれる他、ラベルやキャップ等のこれらの付属品、物品の収容又は包装を補助するための発泡材やエアパックのような緩衝材等も含まれる。
【0018】
また、出発原料1には、以上に例示した容器及び包装材料の少なくとも一方が製造される過程で生じた端材や不良品等の廃棄品も含まれる。例えば、端材とは、成型機や押出機等の始動又は停止時、あるいは原料替え時に押し出される団子状のプラスチックの固まり(樹脂団子)、成型加工で発生するランナーやスプレー、フィルム成形時に発生する延伸する前のプラスチックシート、品質確認のために抜き取り評価された試験サンプルや破壊品等が該当する。不良品とは、検品によって区別され、市場に流通しなかった製品等が該当する。つまり、出発原料1は、市場に流通して消費者が使用した後に回収された製品由来の原料(ポストコンシューマ材料)であってもよいし、消費者に製品が渡る前の製造段階で発生した端材や不良品等の廃棄品由来の原料(プレコンシューマ材料)であってもよい。
【0019】
出発原料1は、1種類の樹脂を含有する成形物であってもよいし、2種類以上の樹脂を含有する成形物であってもよい。出発原料1として、2種類以上の樹脂を含有するフィルムが使用される場合、当該フィルムは、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。当該フィルムは、異なる種類の樹脂を混合した層を有していてもよいし、異なる種類の樹脂をそれぞれ含有する複数の層を有していてもよい。また、出発原料1は、樹脂以外の成分を含有していてもよい。出発原料1は、アルミニウム等の金属成分、インク等の着色成分、アンチブロッキング剤、添加剤等を含有し得る。添加剤の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤等が挙げられる。
【0020】
出発原料1に含有される樹脂の種類の例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、環状ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリスチレン系樹脂の例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体が挙げられる。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン6系樹脂、ナイロン66系樹脂、ナイロン12系樹脂等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリエステル系樹脂の例としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。上記ジカルボン酸成分の種類は特に限定されず、テレフタル酸、o-フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等を例示することができる。上記ジオール成分の種類も特に限定されず、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール類、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等を例示することができる。
【0021】
続く工程S102では、粉砕物10が洗浄(脱墨)され、粉砕物10からインク等の着色成分を含有する印刷層が除去される。以下、印刷層が除去された粉砕物10を、粉砕物11と表す。なお、粉砕物10に印刷層が含まれない場合の他、粉砕物10に印刷層が含まれる場合であっても、工程S102は、適宜省略することができる。工程S102が省略される場合、工程S103~S107についての以下の説明においては、粉砕物11を粉砕物10に読み替えることができる。
【0022】
印刷層の除去方法は、特に限定されないが、一例として、粉砕物10を洗浄液に浸漬する方法がある。洗浄液としては、粉砕物10から印刷層を除去することができる一方で、回収しようとしている樹脂成分(以下、リサイクル対象成分ということがある)の劣化を引き起こさない溶媒を含有するものが望ましい。粉砕物10を浸漬させつつ、洗浄液を適宜加温及び/又は攪拌することにより、印刷層を効率よく除去することができる。
【0023】
洗浄液に含まれる溶媒の好ましい例としては、アルコール系溶媒、環状エーテル系溶媒、酢酸エステル系溶媒、ケトン系溶媒等の有機溶媒を挙げることができる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等の1価アルコール、グリコール系のアルコール等を用いることができる。環状エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等を用いることができる。酢酸エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等を用いることができる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を用いることができる。このような様々な溶媒の中から、粉砕物10の材質に合わせて、適した溶媒を含有する洗浄液を適宜選定することができる。使用する溶媒は1種類でも良く、2種類以上を組み合わせた混合溶媒でもよい。さらに、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等の無機水酸化物や、アミン化合物等のアルカリを含むアルカリ系溶媒も使用可能である。アルカリ系溶媒は、洗浄液中に1~50v/v%の比率で含まれることが好ましい。洗浄液には、洗浄効果を調整するために水を加えることも可能である。また、洗浄液には、中性系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等の界面活性剤成分を含む溶媒を加えることも可能である。界面活性剤を加えることで、印刷層を粉砕物10から浮かせて、印刷層の除去を促進することができる。また、界面活性剤を加えることで、洗浄液に溶解せず、洗浄液中に浮遊している印刷剥離片や不溶印刷層成分を凝集させて、これらが再び粉砕物10に付着することを抑制することができる。界面活性剤溶媒は、洗浄液中に1~10v/v%の比率で含まれることが好ましい。界面活性剤溶媒を調整する溶媒は特に限定されないが、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、酢酸エステル系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。
【0024】
続く工程S103では、粉砕物11を溶媒40に浸漬し、粉砕物11に含まれるリサイクル対象成分を溶媒40に溶解させる。例えば、タンクに溶媒40を貯め、その中に粉砕物11を投入する。工程S103では、溶媒40を適宜加温及び/又は攪拌することにより、リサイクル対象成分を効率よく溶解させることができる。溶媒40の種類は、リサイクル対象成分の種類に応じて適宜選択される。
【0025】
リサイクル対象成分がポリオレフィン系樹脂又はポリスチレン系樹脂である場合、溶媒40の好ましい例として、リモネン、ピネン等の環状テルペン系溶媒、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状脂肪族系溶媒を挙げることができる。リサイクル対象成分がポリアミド系樹脂である場合、溶媒40の好ましい例として、エチレングリコール系の、脂肪族環状アルコール、脂肪族アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールを挙げることができる。リサイクル対象成分がポリエステル系樹脂である場合、溶媒40の好ましい例として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。
【0026】
工程S103が終了すると、溶液42が生成される。溶液42には、粉砕物11に含まれる成分のうち、溶媒40に溶解した溶解成分(リサイクル対象成分)が含まれる。また、溶液42中には、粉砕物11に含まれる成分のうち、溶媒40に不溶の不溶成分12が沈殿又は浮遊した状態で混在している。不溶成分12には、出発原料1にリサイクル対象成分以外の樹脂成分が含まれる場合、そのような樹脂成分が含まれ得る。
【0027】
続く工程S104では、溶液42と、不溶成分12とが分離される。分離の方法は、特に限定されないが、好ましい例として、濾過を挙げることができる。この場合、フィルタを通過した溶液42が濾液として回収され、フィルタを通過できなかった不溶成分12が濾物として回収される。なお、工程S103において粉砕物11が全て溶媒40に溶解した場合には、不溶成分12が生じないため、工程S104は省略することができる。
【0028】
続く工程S105では、溶液42からリサイクル対象成分を析出させる。例えば、溶液42を冷却することで、リサイクル対象成分を析出させることができる。これに代えて又は加えて、溶液42に貧溶媒を投入してもよい、あるいは、貧溶媒に溶液42を投入してもよい。その後、濾過等を行い、生成されたリサイクル対象成分の析出物13を溶媒40から分離し、回収する。他の方法としては、溶液42を加熱して溶媒40を蒸発させることにより、リサイクル対象成分を析出させてもよい。その際、減圧下で加熱して、効率よく溶媒40を蒸発させてもよい。
【0029】
続く工程S106では、析出物13から再生樹脂原料2を製造する。再生樹脂原料2は、粉体21又は造粒物22として製造される。すなわち、工程S106では、析出物13が、粉体21又は造粒物22の形状に加工される。なお、造粒物22とは、ペレットのように原料を加熱溶融した後、固めたものではなく、粉末状の原料を加熱溶融することなく、圧縮して固めた塊である。造粒物22は、典型的には不透明な塊である。
【0030】
析出物13の粉体21への加工は、例えば、析出物13を乾燥させることにより行うことができる。乾燥には、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機等の熱風乾燥機を好ましく用いることができる。また、例えば、遠赤外線ヒーターで析出物13を加熱して乾燥させる遠赤外線乾燥機や、析出物13に含まれる水分や溶媒をマイクロ波で振動させることで発熱及び蒸発させて、析出物13を乾燥させるマイクロ波乾燥機を用いることもできる。また、例えば、これらの乾燥機構を適宜組み合わせた乾燥機を用いることもできる。
【0031】
析出物13の造粒物22への加工は、例えば、公知の造粒機を用いて行うことができる。造粒方法としては、以下の例が挙げられる。なお、以下の(1)~(5)中の粉体とは、析出物13である。
(1)粉体に結合剤等を加えて混練した後、圧力を加えて、混錬した粉体を多数の孔を有するスクリーンより押し出して造粒する押出造粒方法
(2)粉体を攪拌しながら、結合剤等の溶液を滴下して、粉体を球形や楕円形の粒子に凝集させて造粒する攪拌造粒方法
(3)下部から熱風を送り込み、流動させている粉体に対し、結合剤等の溶液を噴霧して、粉体を凝集させる又は被覆することにより粒状に成長させる流動層造粒方法
(4)回転するパンまたはドラム等の造粒容器に粉体を投入して、結合剤等の溶液を噴霧し、粒子同士を衝突及び結合させて成長させることで、粉体を粒状にする転動造粒方法
(5)所要の形状及びサイズの窪みをもつ金型ロール等で粉体を圧縮成形した後、必要に応じて破砕して粒状物を得る圧縮造粒方法
【0032】
以上の造粒方法では、必ずしも結合剤を加える必要はなく、必要に応じて適切な結合剤を加えることができる。結合剤の例としては、水、セルロース系、ビニル系、デンプン系等のバインダー剤、アルコール系、グリコール系、酢酸エステル系、ケトン系、エーテル系等の有機溶剤等が挙げられる。また、造粒中、あるいは造粒前に、粉体へ熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤等の添加剤を加えてもよい。
【0033】
なお、造粒前に析出物13を乾燥させるか、造粒後に造粒物22を乾燥させることが好ましい。ここでの乾燥にも、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機等の熱風乾燥機を好ましく用いることができる。また、例えば、上述の遠赤外線乾燥機やマイクロ波乾燥機を用いることもできるし、上述の乾燥機構を適宜組み合わせた乾燥機を用いることもできる。また、造粒物22を造粒しながら乾燥させることもできる。この場合、例えば、析出物13を真空状態で撹拌しながら乾燥させることにより、造粒物22を生成することもできる。なお、造粒前、造粒中及び造粒後の3つのタイミングのうち、複数回のタイミングで乾燥工程を実施することもできる。
【0034】
再生樹脂原料2は、1又は複数種類の樹脂を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。再生樹脂原料2に含有される樹脂及び樹脂以外の成分の配合は、工程S101で用意された出発原料1や、工程S103で使用された溶媒40等、工程S101~S106の詳細に応じて決定される。
【0035】
続く工程S107では、再生樹脂原料2のみを用いて、又は再生樹脂原料2に加えてその他の原料も用いて、フィルム3を製造する。すなわち、再生樹脂原料2は、フィルム3の原料の一部又は全部として用いることができる。なお、その他の原料は、樹脂であっても、樹脂以外の原料であってもよく、又はその両方を含むものであってもよい。その他の原料としては、バージン樹脂原料を用いることができる。フィルム3は、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。いずれの場合も、再生樹脂原料2とその他の原料とを混合した層を形成してもよいし、再生樹脂原料2を含有する層と、その他の原料からなる層とを積層させてもよい。フィルム3は、1又は複数種類の樹脂を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。フィルム3に含有される樹脂及び樹脂以外の成分の配合は、工程S101で用意された出発原料1や、工程S103で使用された溶媒40等、工程S101~S107の詳細に応じて決定される。
【0036】
フィルム3の製造方法としては、公知の成膜方法を利用することができる。例えば、再生樹脂原料2、及び必要に応じてその他の原料を押出機に供給し、これを加熱溶融した後、ダイから押し出す押出成形を行ってもよい。このとき、共押出しすることにより、フィルム3として、積層フィルムを製造することができる。フィルム3は、成形後、適宜延伸される。
【0037】
フィルム3の透明性を確保する観点から、フィルム3のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
ところで、再生樹脂原料2及びこれから再生されるフィルム3は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することがある。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、しばしば、フィルム等の樹脂成形物の印刷層の表面にオーバーコートとして塗布される。しかし、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、印刷層を除去するための洗浄液(アルカリ水等)に対する耐性が強く、工程S102を実施した後も粉砕物11の中に残留し得るからである。一方で、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、樹脂成形物の透明性を低下させる虞があるため、一般に、フィルム等の樹脂成形物の主成分としては使用されない。従って、樹脂原料が(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する場合、そのような樹脂原料は再生品であることが分かる。また、フィルムが、オーバーコート層以外に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する層を有する場合、そのようなフィルムは、再生品であることが分かる。
【0039】
<1―2.特徴>
上記実施形態では、再生樹脂原料2は、ペレットの製造時のような加熱溶融の工程を経ることなく、粉体21又は造粒物22として製造される。そのため、再生樹脂原料2においては、熱履歴による機能性の低下が抑制される。その結果、劣化の少ない再生樹脂原料2を製造することができ、ひいては、そのような再生樹脂原料2から劣化の少ないフィルム3を製造することができる。
【0040】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0041】
<2―1>
上記実施形態では、出発原料1を粉砕した後で、粉砕物10を洗浄(脱墨)したが、出発原料1を洗浄(脱墨)した後で、粉砕してもよい。
【0042】
<2―2>
上記実施形態では、リサイクル対象成分は溶液42から回収されたが、これに代えて又は加えて、不溶成分12から回収されてもよい。この場合、不溶成分12を任意の方法で加工し、フィルムやその他用途の原料として再利用することができる。例えば、不溶成分12は、必要があれば洗浄した後、乾燥させ、得られた乾固物を適宜加工することで、再利用することができる。また、例えば、不溶成分12に対し、不溶成分12に含まれるリサイクル対象成分を溶解可能な溶媒を用いて工程S103と同様の工程を実施し、続いて工程S104~S107と同様の工程を実施してもよい。つまり、不溶成分12から上述した粉体21又は造粒物22の形状の再生樹脂原料2を製造し、さらにフィルム3を製造してもよい。
【0043】
出発原料1が2種類以上の樹脂を含有する場合、溶液42及び不溶成分12のそれぞれから異なる樹脂成分(リサイクル対象成分)を回収することができる。そして、溶液42及び不溶成分12のそれぞれから回収したリサイクル対象成分を用いて、出発原料1と同じ製品を製造する、すなわち水平リサイクルを実施することもできる。この場合において、溶液42及び不溶成分12のそれぞれから回収したリサイクル対象成分をいずれも上述した再生樹脂原料2に加工し、それらの再生樹脂原料2を用いて出発原料1と同じ製品を製造してもよい。
【0044】
<2―3>
出発原料1は、上記実施形態における方法で製造された再生樹脂原料2及びフィルム3であってもよい。つまり、本発明は、バージン樹脂を主原料とする製品から再生樹脂原料2及びフィルム3を再生する場面にも適用可能であるが、再生品からさらに再生樹脂原料2及びフィルム3を再生する場面にも適用可能である。つまり、何度も繰り返し、樹脂原料を循環させることができる。上記の通り、上記実施形態によれば、再生樹脂原料2の再生時の劣化が少ないため、このように何度も繰り返し樹脂原料を循環させることも可能になる。
【実施例0045】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0046】
<3―1.造粒物、粉体、リペレット及びフラフ>
まず、バージン樹脂を主原料とするフィルム(以下、バージン樹脂フィルムという)から、実施例1~16及び比較例1,2,4~6のフィルムの原料となる造粒物、粉体及びリペレットをそれぞれ製造した。バージン樹脂フィルムとしては、ポリスチレン(PS)系樹脂(印刷層あり)、ポリスチレン(PS)系樹脂(印刷層なし)、ポリオレフィン(PO)系樹脂であるポリプロピレン(PP)系樹脂(印刷層なし)及び環状ポリオレフィン(COC)系樹脂(印刷層なし)、並びにナイロン(NY)系樹脂(印刷層なし)の5種類を用意し、それぞれの種類のバージン樹脂フィルムから、造粒物、粉体及びリペレットを製造した。PS系樹脂(印刷層あり)のバージン樹脂フィルムは、実施例1~3及び比較例1のPS系樹脂の造粒物、粉体、及びリペレットの原料とした。PS系樹脂(印刷層なし)のバージン樹脂フィルムは、実施例4~6及び比較例2のPS系樹脂の造粒物、粉体、及びリペレットの原料とした。なお、PS系樹脂(印刷層あり)のバージン樹脂フィルムに含まれる印刷層は、藍と白の2色の印刷インキを用いて、グラビア印刷機で片面に2色印刷を施すことにより得られた層であった。このときの印刷図柄は、120m/minの印刷速度で、藍で5mm四方の格子柄を印刷し、白でフィルム全面を印刷したものであった。
【0047】
造粒物及び粉体は、バージン樹脂フィルムを出発原料として、上記実施形態に従う工程S101~S106を実施することにより製造した(ただし、脱墨工程S102については、印刷層を含むPS系樹脂のバージン樹脂フィルムに対してのみ実施した)。また、リペレットは、バージン樹脂フィルムを上記実施形態の工程S101に従って粉砕した後、押出機で粉砕物を加熱して溶融混錬し、溶融混錬した材料をペレット形状に成形することにより製造した。溶融混錬時の押出温度は、PS系樹脂は160~240℃、PO系樹脂は170~240℃、NY系樹脂は160~280℃で行った。なお、今回の比較例には挙げていないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる場合であれば、典型的には160~250℃で溶融混錬が行われる。リペレットのサイズ及び形状は今回の実施例においては4mm前後の円柱状のものとした。なお、印刷層を含むPS系樹脂のバージン樹脂フィルムの粉砕物に対しては、押出機に投入する前に、工程S102に従って洗浄(脱墨)した。
【0048】
以上の通り、製造された造粒物、粉体及びリペレットに対し、安息角、嵩比重、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)をそれぞれ測定した。測定方法は、後述の通りとした。また、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除算した分子量分布を算出した。その結果を、表1に示す。
【表1】
【0049】
また、上記と同じPS系樹脂(印刷層なし)及びNY系樹脂のバージン樹脂フィルムから、比較例3,7のフィルムの原料となるフラフを製造した。フラフは、バージン樹脂フィルムを100mm2以下に粉砕することにより製造した。
【0050】
<3―2.実施例1~16、比較例1~7及び参考例1~4>
次に、バージン樹脂原料も適宜加えつつ、以上の通り製造された造粒物、粉体、リペレット及びフラフを用いて、実施例1~16及び比較例1~7のフィルムを製造した。また、バージン樹脂原料を用いて、参考例1~4のフィルムを製造した。ここで用いられたバージン樹脂原料は、PS系樹脂、PP系樹脂、COC系樹脂、NY系樹脂、及びポリエステル系樹脂(PET)の5種類で、全てペレット形状の原料を用いた。これらのフィルムは全て3層に構成し、各フィルムの各層に用いられた原料は、表2~6の通りであった。なお、表中、2つの原料が示されている層は、それら2つの原料を重量パーセント濃度(wt%)で半々の割合で混合して形成した。1つの原料しか示されていない層は、その原料を100%用いて形成した。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
以上の通り製造された実施例1~16、比較例1~7及び参考例1~4の各フィルムに対し、熱収縮率、自然収縮率、引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率、ヘイズ値及び黄色度を測定した。表2~6に、測定条件ごとの測定結果を示す。また、測定方法は、後述の通りとした。
【0057】
<3-3.評価>
表2~6の結果から、以下のことが分かる。まず、各温度条件下での収縮率に関し、同種の樹脂製のフィルムどうしを比較したとき、実施例は、比較例よりも、参考例に近い値を示している。つまり、造粒物や粉体由来の再生フィルムは、リペレットやフラフ由来の再生フィルムよりも、バージン樹脂原料のみから製造したフィルムに対し、収縮率に関する性能の劣化が少ないことが分かる。よって、造粒物や粉体の形状の再生樹脂原料を用いれば、高性能の熱収縮フィルムを再生し得る。
【0058】
また、リペレット由来の再生フィルムの方が、粉体や造粒物由来の再生フィルムよりも、収縮率が高くなる傾向が見られる。表1を見ると、リペレットの方が、粉体や造粒物よりも分子量が低下しているが、これは、粉体や造粒物に比べて熱履歴が多くかかり、材質に熱劣化が生じたためと考えられる。そして、それにより、低い温度帯で分子が動きやすくなったため、リペレット由来の再生フィルムの収縮率が高くなったと考えられる。品質の観点からすると、熱収縮率が高くなると、例えばフィルムの容器への装着時に、シワやスマイリングの発生が懸念される。また、自然収縮率が高くなると、例えば巻き原反の巻締まりや筒状フィルムの装着不良に繋がる等、品質を悪化させる傾向がある。従って、少なくともこのような観点からは、粉体や造粒物由来の再生フィルムの方が、リペレット由来の再生フィルムよりも優れている。
【0059】
次に、引張破断強度、引張破断伸度及び引張弾性率に関し、同種の樹脂製のフィルムどうしを比較したとき、実施例は、概して比較例よりも大きな値を示している。すなわち、実施例のフィルムの方が、比較例のフィルムよりも強度が高いことが分かる。この傾向は、特にリペレット由来のフィルムと比べて顕著である。これは、既に述べた通り、リペレットの方が、粉体や造粒物よりも分子量が低下しているためと考えられる。その結果、リペレットでは、分子同士の絡み合いの数が少なくなり、材質の強度が顕著に低下したと考えられる。
【0060】
次に、ヘイズ値に関し、同種の樹脂製のフィルムどうしを比較したとき、実施例は、参考例に対し遜色がないか、時には透明度が向上していることさえある。その一方で、比較例は、参考例に対し遜色がないこともあるが、大きく劣化することがある。よって、造粒物や粉体の形状の再生樹脂原料を用いれば、バージン樹脂原料のみから製造したフィルムと遜色のない、透明性の高い再生フィルムを製造し得る。
【0061】
次に、黄色度(YIの参考例からの変化度)に関し、同種の樹脂製のフィルムどうしを比較したとき、実施例は、比較例よりも、参考例からの変化(劣化)が顕著に少ないことが分かる。すなわち、造粒物や粉体由来の再生フィルムは、リペレットやフラフ由来の再生フィルムよりも、黄みが少ないことが分かる。よって、造粒物や粉体の形状の再生樹脂原料を用いれば、バージン樹脂原料のみから製造したフィルムと遜色のない、黄みの少ない再生フィルムを製造し得る。
【0062】
以上より、造粒物や粉体由来の再生フィルムは、リペレットやフラフ由来の再生フィルムと比べて、概して高品質である。なお、表2~6のデータによれば、フラフ由来の比較例が、部分的に実施例よりも優れた数値を示していることがあるが、その差は大きくはない。また、一般に、粉体及び造粒物は、輸送性の観点からフラフよりも優れる。さらに、出発原料を単に裁断しただけで製造されるフラフは、出発原料が複数種類の成分(樹脂に限らず、樹脂以外の成分も意味し得る)を含有する場合、そのような複数種類の成分をそのまま含有することになる。従って、造粒物や粉体の形状の再生樹脂原料には、フラフと比べて、再生品の品質が低下したり、再生品の種類が限定されることがないという利点がある。
【0063】
<3-4.測定方法>
以下に、各種パラメータの測定方法を説明する。
【0064】
<熱収縮率>
フィルムから、MD(Machine Direction)100mm×TD(Traverse Direction)100mmのサンプルを切り出した。得られたサンプルを100℃の沸騰水及び80℃の温水に10秒間浸漬させた後、サンプルを取り出し、15℃の水に5秒間浸漬した。そして、次式(1)に従ってMDの熱収縮率を算出し、次式(2)に従ってTDの熱収縮率を算出した。LMDは、熱収縮後のサンプルのMDの長さ(mm)であり、LTDは、熱収縮後のサンプルのTDの長さ(mm)である。なお、熱収縮率については、100℃、80℃の温度条件ごとに、2つのサンプルを用いて測定し、その平均値を算出した。
熱収縮率(%)={(100-LMD)/100}×100・・・(1)
熱収縮率(%)={(100-LTD)/100}×100・・・(2)
【0065】
<自然収縮率>
フィルムから、MD100mm×TD100mmのサンプルを切り出した。得られたサンプルを30℃、40℃に調整した低温恒温器(IL-82 ヤマト科学社製)に7日間静置した後、サンプルのMD及びTDの長さ(mm)をそれぞれ計測した。そして、熱収縮率と同様の式(1)及び(2)に従って、MD及びTDの自然収縮率(%)をそれぞれ算出した。自然収縮率については、30℃、40℃の温度条件ごとに、3つのサンプルを用いて測定し、その平均値を算出した。
【0066】
<引張破断強度及び引張破断伸度>
フィルムを幅10mm×長さ100mm(長さ方向は、フィルムの測定方向と同じ)の短冊状にカットし、長さ方向の中央付近に標線間40mmとなるように線を引いて測定サンプルとした。この測定サンプルについて、引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフVE1D)を用いて、JIS-K7127に準拠した方法で引張破断強度及び伸度を測定した。なお、測定雰囲気温度は23℃、チャック間距離は標線と同じ40mmとし、標線の部分をチャックで挟み、速度200mm/minでサンプルが破断するところまで引っ張った。試験前のチャック間距離と破断したときのチャック間距離とから、引張破断伸度を求めた。そして、破断した時の引張破断強度を記録した。なお、試験回数は4回とし、その平均値を求めた。
【0067】
<引張弾性率>
フィルムから、MD250mm×TD5mmのサンプルを切り出した。得られたサンプルの引張弾性率を、ASTM D882に準拠した方法により、23℃の温度条件下で、東洋精機製作所社製ストログラフVE-1Dを用いて測定した。なお、ヤング率については、4つのサンプルを用いて測定し、その平均値を算出した。また、参考として、MDの引張弾性率からTDの引張弾性率を減じた値、及び、MDの引張弾性率からTDの引張弾性率を除した値も算出した。
【0068】
<ヘイズ値>
JIS Z7136に準拠した方法により、23℃の温度条件下で、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いてヘイズ値を測定した。なお、ヘイズ値については、4つのサンプルを用いて測定し、その平均値を算出した。
【0069】
<黄色度>
JIS K7373に準拠した方法により、23℃の温度条件下で、サンプルのYI値を測定した。なお、表2~6の黄色度は、サンプルのYI値から同種の樹脂材料からなる参考例のYI値を引いた値(黄色度の変化値)である。
【0070】
<安息角>
サンプルの堆積層を保持するための保持縁を持つ固定された円板上に、高さ4cmに先端が位置するよう漏斗を固定した。そして、漏斗を介してサンプルを落とし入れ、山型に堆積層が形成された時の斜面と水平面とのなす角度を測定した。
【0071】
<嵩比重>
まず、250mLメスシリンダーの約100mLの目盛まで、圧密ストレスを加えないように漏斗を使ってサンプルを静かに入れた。その後、必要ならばサンプルの層の上面を圧密しないように注意深くならし、疎充填体積(V0)を最小目盛単位まで読み取った。次に、メスシリンダーの重さを差し引いたサンプルの重量(M)を測定した。そして、嵩比重(g/cm3)として、M/V0を算出した。
【0072】
<重量平均分子量(Mw)・数平均分子量(Mn)>
いずれの分子量も、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
1 出発原料、2 再生樹脂原料、3 フィルム、10,11 粉砕物、12 不溶成分、13 析出物、21 粉体、22 造粒物、40 溶媒、42 溶液