(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150970
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】樹脂の回収方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20241017BHJP
B29B 9/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064047
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 宰
(72)【発明者】
【氏名】小池 明日香
【テーマコード(参考)】
4F201
4F401
【Fターム(参考)】
4F201AA50
4F201AG14
4F201AJ08
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC13
4F201BD05
4F201BL25
4F401AA08
4F401AA09
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4F401AA22
4F401AA24
4F401AB07
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4F401CA30
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4F401CA50
4F401DA16
4F401DC04
4F401DC06
4F401EA54
4F401EA56
4F401EA59
4F401EA60
4F401EA62
4F401EA68
(57)【要約】
【課題】効率のよい樹脂の回収方法を提供する。
【解決手段】ここでの樹脂の回収方法は、回収対象の樹脂成分が溶媒に溶解した溶液を搬送路に流し込むことと、溶液を搬送路に沿って搬送しながら、搬送路内で溶液から樹脂成分の析出物を析出させることと、析出物を溶媒から分離し回収することを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象の樹脂成分が溶媒に溶解した溶液を搬送路に流し込むことと、
前記溶液を前記搬送路に沿って搬送しながら、前記搬送路内で前記溶液から前記樹脂成分の析出物を析出させることと、
前記析出物を前記溶媒から分離し回収することと
を含む、樹脂の回収方法。
【請求項2】
前記溶液は、2種類以上の樹脂成分を含有するフィルムを、前記2種類以上の樹脂成分の一部を溶解させる前記溶媒に浸漬することにより生成された溶液である、
請求項1に記載の樹脂の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法により回収された前記析出物を加工し、粒状又は粉体状の再生樹脂原料を製造すること
を含む、再生樹脂原料の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法により製造された前記再生樹脂原料を用いてフィルムを製造すること
を含む、フィルムの製造方法。
【請求項5】
回収対象の樹脂成分が溶媒に溶解した溶液を搬送する搬送路と、
前記溶液が前記搬送路に沿って搬送される間に、前記搬送路内で前記溶液から析出した前記樹脂成分の析出物を、前記溶媒から分離する分離部と、
を備える、樹脂の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂成形品から樹脂材料を再生原料として回収するリサイクル技術の開発が盛んである。樹脂成形品は、食品、飲料、医薬品、医療品、化学品、化粧品、トイレタリー、工業用品等の様々な分野で使用されており、このような樹脂成形品がリサイクルの対象となることも多い。例えば、特許文献1には、ポリアミド系樹脂を含むフィルムからポリアミド系樹脂の再生原料を回収する方法が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1では、溶解窯内でポリアミド系樹脂を含むフィルム片を溶解液に浸漬する。その後、バルブが解放され、ポリアミド系樹脂の溶解した溶解液が溶解窯から吐出され、次工程の窯に貯留される。次工程では、窯の温度が調整されることにより、窯内でポリアミド系樹脂が析出し、その後、バルブが解放され、析出したポリアミド系樹脂がまとめて回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の通り、特許文献1においては、溶解液から樹脂成分を析出させる工程が、バッチ式に実施される。しかしながら、このようなバッチ式の工程には、様々なデメリットが存在する。例えば、時間当たりの生産量が低下し得る。また、大型の設備が必要となり、設備投資が増えたり、設備の設置に必要な床面積が増えたりし得る。また、プロセス全体のエネルギー効率が悪く、ランニングコストが高くなりがちである。また、バッチごとの品質差が発生するため、ロット管理が煩雑になることもある。
【0006】
本発明の目的は、効率のよい樹脂の回収方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.回収対象の樹脂成分が溶媒に溶解した溶液を搬送路に流し込むことと、
溶液を搬送路に沿って搬送しながら、搬送路内で溶液から樹脂成分の析出物を析出させることと、
析出物を溶媒から分離し回収することと
を含む、樹脂の回収方法。
【0008】
項2.溶液は、2種類以上の樹脂成分を含有するフィルムを、2種類以上の樹脂成分の一部を溶解させる溶媒に浸漬することにより生成された溶液である、
項1に記載の樹脂の回収方法。
【0009】
項3.項1又は2に記載の樹脂の回収方法により回収された析出物を加工し、粒状又は粉体状の再生樹脂原料を製造すること
を含む、再生樹脂原料の製造方法。
【0010】
項4.項3に記載の製造方法により製造された再生樹脂原料を用いてフィルムを製造すること
を含む、フィルムの製造方法。
【0011】
項5.回収対象の樹脂成分が溶媒に溶解した溶液を搬送する搬送路と、
溶液が搬送路に沿って搬送される間に、搬送路内で溶液から析出した樹脂成分の析出物を、溶媒から分離する分離部と、
を備える、樹脂の回収装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、効率よく樹脂成分を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂の回収装置と、その周囲に配備される各種装置とを含むシステムを模式的に示す図。
【
図2】
図1の溶解装置及び回収装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る樹脂の回収方法及び装置について説明する。
【0015】
<1.概要>
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂の回収装置2と、その周囲に配備される各種装置1,3,4とを含むシステムを模式的に示す。このシステムは、樹脂製のフィルムF1から樹脂材料を回収し、回収した樹脂材料から樹脂製の再生フィルムF5を再生するリサイクルシステムである。このシステムのうち、回収装置2の上流の溶解装置1は、フィルムF1に含まれる回収対象の樹脂成分が溶解した溶液12を生成する装置である。溶液12は、フィルムF1を溶媒11に浸漬することにより生成される。回収装置2は、溶解装置1から供給される溶液12から回収対象の樹脂成分の析出物F2を生成し、これを分離し回収する装置である。回収装置2の下流の製造装置3は、回収装置2により回収された析出物F2から再生樹脂原料F4を製造する。製造装置3のさらに下流の製造装置4は、製造装置3により製造された再生樹脂原料F4を用いて再生フィルムF5を製造する。
【0016】
<2.各装置の詳細>
以下、
図1の各装置1~4の詳細を説明する。
【0017】
<2―1.溶解装置>
図2は、溶解装置1及び回収装置2の構成を示す図である。溶解装置1は、タンク10を備え、タンク10内には、溶媒11が供給される。タンク10内には、フィルムF1も供給される。フィルムF1は、リサイクル対象の物品であり、製品として使用済みのもの、未使用品、製造過程における廃棄品、廃棄過程における中間処理品等とすることができる。タンク10に供給されるフィルムF1は、好ましくは、以上のような物品の破砕片であり、公知の粉砕機、破砕機、裁断機等を適宜使用して生成することができる。各破砕片のサイズ(面積)は、500mm
2以下が好ましく、300mm
2以下がより好ましく、200mm
2以下がさらに好ましく、100mm
2以下が特に好ましい。
【0018】
フィルムF1は、1種類の樹脂成分を含有するものであってもよいし、2種類以上の樹脂成分を含有するものであってもよい。フィルムF1は、単層フィルムであってもよいし、積層フィルムであってもよい。また、フィルムF1は、樹脂成分以外の成分を含有していてもよい。フィルムF1は、アルミニウム等の金属成分、インク等の着色成分、アンチブロッキング剤、添加剤等を含有し得る。添加剤の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤が挙げられる。
【0019】
フィルムF1は、タンク10に収容される溶媒11に浸漬される。溶媒11は、フィルムF1に含まれる1種類又は2種類以上の樹脂成分を溶解させる。なお、ここで溶媒11に溶解する樹脂成分が、回収装置2による回収対象の樹脂成分となる。溶媒11は、フィルムF1に含まれる樹脂成分の一部を選択的に溶解させるものであってもよいし、全部を溶解させるものであってもよい。ただし、本発明が適用される典型的な場面又は好ましい場面の例としては、フィルムF1が2種類以上の樹脂成分を含有し、溶媒11がその一部を溶解させる場面を挙げることができる。この例では、フィルムF1に含まれる複数種類の樹脂成分のうち、回収対象の一部の樹脂成分をその他の樹脂成分から分離回収することができる。
【0020】
フィルムF1に含まれる樹脂成分の種類の例としては、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン6系樹脂、ナイロン66系樹脂、ナイロン12系樹脂等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリスチレン系樹脂の例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、環状ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0021】
回収装置2による回収対象の樹脂成分が、ポリアミド系樹脂である場合、溶媒11の好ましい例として、エチレングリコール系の、脂肪族環状アルコール、脂肪族アルコール、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールを挙げることができる。回収装置2による回収対象の樹脂成分が、ポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂である場合、溶媒11の好ましい例として、リモネン、ピネン等の環状テルペン系溶媒、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状脂肪族系溶媒を挙げることができる。回収装置2による回収対象の樹脂成分が、ポリエステル系樹脂である場合、溶媒11の好ましい例として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。
【0022】
溶解装置1は、図示されない加温装置及び/又は攪拌装置を備えていてもよい。このような装置により、フィルムF1を含む溶媒11を適宜加温及び/又は攪拌することにより、回収対象の樹脂成分を効率よく溶解させることができる。
【0023】
以上により、タンク10内には、回収装置2による回収対象の樹脂成分が溶媒11に溶解した溶液12が生成される。溶液12は、溶解装置1から回収装置2に送られる。このとき、本実施形態では、溶液12の流量は制御され、溶液12は、単位時間当たりに所定量ずつ回収装置2に送られる。なお、ここでいう所定量は、一定量であっても、変動量であってもよい。つまり、流量は常に一定であってもよいし、変動させてもよい。後者の場合、流量がゼロになることがあってもよい。いずれにせよ、溶液12は、溶解装置1から回収装置2へと、バッチ式ではなく、連続式に送られる。これを実現する方法は特に限定されないが、例えば、溶液12を排出するためのタンク10の排出口を開閉するバルブの開度を制御する方法が考えられる。あるいは、溶解装置1に、又は溶解装置1と回収装置2との間に、流量制御機能付きのフィーダーを取り付けてもよい。
【0024】
なお、タンク10内には、フィルムF1に含まれる成分のうち、溶媒11に溶解しなかった不溶成分からなる残留物F3が残り得る。この場合、溶液12は、タンク10内に配置されるフィルター等の分離部13により残留物F3から分離された上で、回収装置2に送られる。一方、残留物F3は、溶解装置1から適宜排出される。例えば、定期的にタンク10内から残留物F3を取り出すようにしてもよい。このようにして回収された残留物F3は、その後、再生原料として再利用され得る。残留物F3は、樹脂成分のみから構成されてもよいし、樹脂成分に加え、樹脂成分以外の成分を含有していてもよい。あるいは、残留物F3は、樹脂成分を含有していなくてもよい。
【0025】
<2―2.回収装置>
図2に示す通り、回収装置2は、搬送装置20を備える。搬送装置20は、搬送路21を有する。本実施形態では、溶解装置1から搬送路21の上流の位置へ、溶液12が単位時間当たりに所定量(一定量であっても、変動量であってもよい)ずつ流し込まれる。搬送装置20は、このようにして溶解装置1から供給される溶液12を、搬送路21に沿って下流側へと搬送する。このとき、本実施形態では、溶液12の搬送速度が制御され、溶液12は、搬送路21内を単位時間当たりに所定量ずつ搬送される。なお、ここでいう所定量は、一定量であっても、変動量であってもよい。つまり、溶液12の搬送速度は、常に一定であってもよいし、変動させてもよい。後者の場合、搬送速度がゼロになることがあってもよい。いずれにせよ、溶液12は、バッチ式ではなく、連続式に搬送される。
図2の例では、搬送装置20は、スクリューコンベアであり、搬送路21内に配置され、搬送路21と同軸に伸びるスクリュー22を有する。そして、スクリュー22の回転速度が制御されることにより、溶液12の搬送速度が制御される。しかしながら、溶液12の搬送方法はこれに限られず、搬送装置20に圧送ポンプを用いる等、その他の方法を適宜採用し得る。
【0026】
溶液12が搬送路21に沿って搬送される間に、搬送路21内では、溶液12から、溶液12に含まれる回収対象の樹脂成分の析出物(結晶)F2が析出する。例えば、溶液12が搬送路21に沿って搬送される間に冷却されることにより、溶液12から析出物F2が析出する。なお、ここでいう冷却とは、溶解装置1から供給されたときの温度を基準として、溶液12の温度を下げることを言う。すなわち、ここでいう冷却には、溶解装置1で溶液12が高温に加熱されている場合、溶液12を加熱することが含まれる。
【0027】
溶液12を冷却するために、チラーやヒーター等の温調装置23を取り付けることができる。
図2の例では、搬送路21を規定する側壁に、温調装置23が取り付けられている。ところで、溶液12を急冷すると、樹脂成分が搬送路21の上流付近に偏って析出し、搬送路21が詰まることが起こり得る。この点、温調装置23は、溶液12を徐冷するのに寄与し、搬送路21に沿って徐々に樹脂成分を析出させることができる。なお、
図2の例では、温調装置23は、搬送方向に沿って複数のセグメント23a~23dに分割されており、これらのセグメント23a~23dの温度を上流から下流に向かうにつれて低くなるように設定可能である。これにより、より効果的に徐冷を行うことができる。
【0028】
溶液12を冷却させる方法は、上記した方法に限られず、例えば、温調装置23をセグメント化せずに、搬送路21に沿って一定の温度を維持してもよいし、温調装置23を取り付けずに、室温にて樹脂成分を析出させてもよい。あるいは、送風により、溶液12を冷却してもよい。また、溶液12から樹脂成分を析出させる方法は、溶液12を冷却させる方法に限られない。例えば、溶液12の冷却に代えて又は加えて、搬送路21内を搬送中の溶液12に貧溶媒を投入してもよいし、搬送路21内を搬送中の溶液12を加熱し、溶媒11を蒸発させてもよい。
【0029】
搬送路21に沿って樹脂成分の析出が進むにつれて、溶液12の懸濁が進む。例えば、搬送路21の上流側を流れる溶液12は、比較的粘度が低くサラサラした液体状である。一方で、搬送路21のより下流側では、結晶化の過程の樹脂成分の固体粒子により溶液12がスラリー化し、比較的粘度の高い懸濁液が流れている状態になり得る。なお、溶液12は、搬送路21に投入された時点ですでにある程度懸濁が進行していてもよい。よって、搬送装置20は、樹脂成分が溶解した溶液12を搬送する装置であると同時に、樹脂成分の固体粒子が分散した懸濁液を搬送する装置でもある。また、搬送装置20は、搬送路21内で析出し、溶液12又は懸濁液中に浮遊している、又は沈殿している析出物F2も搬送する。
【0030】
搬送路21の下流部分には、分離部25が配置されている。分離部25は、搬送路21内で析出した析出物F2を、溶媒11から分離する。ここでは、溶液12又は懸濁液中に沈殿している析出物F2が回収されるとともに、溶液12又は懸濁液中に浮遊している析出物F2も抽出され、回収される。
図2の例では、分離部25は、搬送路21に配置されるフィルターである(以下、フィルターにも、符号25を付すことがある)。フィルター25は、固液分離を行うことが可能であり、溶媒11(又は溶液12)を通すが、析出物F2を通さない目のサイズを有する。これにより、溶媒11(又は、あれば、残存する溶液12)がフィルター25を通り抜け、析出物F2がフィルター25に捕集され、その結果、両者は分離される。フィルター25で捕集された析出物F2は、その後、回収される。フィルター25を通り抜けた溶媒11も、その後、別途回収される。
【0031】
フィルター25で捕集された析出物F2は、例えば、スクリュー22により搬送路21から押し出され、再生樹脂原料F4の製造装置3に送られる。このとき、析出物F2は、搬送路21から単位時間当たりに所定量ずつ(一定量であっても、変動量であってもよい)押し出されることが好ましい。つまり、析出物F2は、バッチ式ではなく、連続式に押し出されることが好ましい。析出物F2は、その後も、製造装置3へ単位時間当たりに所定量ずつ(一定量であっても、変動量であってもよい)、連続式に搬送されることが好ましい。また、析出物F2から分離された溶媒11も、搬送路21から単位時間当たりに所定量ずつ(一定量であっても、変動量であってもよい)、連続式に送り出されることが好ましい。
【0032】
搬送路21は、実質的に密閉経路とすることが好ましい。この場合、溶液12及び析出物F2が大気に触れ、紫外線等の光に晒されることを抑制することができる。従って、例えば、回収対象の樹脂成分の酸化及び窒素酸化等が抑制される。その結果、回収対象の樹脂成分の劣化を効果的に防止し、例えば、光学特性が良好な樹脂を回収することができる。
【0033】
<2―3.再生樹脂原料の製造装置>
製造装置3は、回収装置2で回収された樹脂成分の析出物F2から再生樹脂原料F4を製造する。より具体的には、製造装置3は、搬送装置20から送られてくる析出物F2を受け取り、これを粒状又は粉体状の再生樹脂原料F4へと加工する。粒状の再生樹脂原料F4とは、例えば、造粒物やペレット等である。造粒物とは、ペレットのように原料を加熱溶融した後、固めたものではなく、粉末状の原料を加熱溶融することなく、圧縮して固めた塊である。造粒物は、典型的には不透明な塊である。
【0034】
析出物F2の粉体への加工は、例えば、析出物F2を乾燥させることにより行うことができる。乾燥には、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機のような熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥機等を好ましく用いることができる。
【0035】
析出物F2の造粒物への加工は、例えば、公知の造粒機を用いて行うことができる。このとき、造粒前に析出物F2を乾燥させるか、造粒後に造粒物を乾燥させることが好ましい。ここでの乾燥にも、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機のような熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥機等を好ましく用いることができる。また、造粒物を造粒しながら乾燥させることもできる。また、析出物F2を真空状態で撹拌しながら乾燥させることにより、造粒物を生成することもできる。なお、造粒前、造粒中及び造粒後の3つのタイミングのうち、複数回のタイミングで乾燥工程を実施することもできる。
【0036】
析出物F2のペレットへの加工は、例えば、公知の樹脂ペレット製造機を用いて行うことができる。例えば、析出物F2を押出機に供給し、これを押出機内で加熱溶融した後、ダイスから押し出し、押し出された材料を適当な形状にカットすることにより製造することができる。
【0037】
再生樹脂原料F4は、析出物F2と同じ材料からなり、1又は複数種類の樹脂成分を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。なお、粉体又は造粒物の形状の再生樹脂原料F4は、ペレットの形状の再生樹脂原料F4よりも、加工時に加熱溶融等の過剰な熱履歴を経ていない分、熱劣化が抑制され得る。
【0038】
<2―4.再生フィルムの製造装置>
製造装置4は、製造装置3で製造された再生樹脂原料F4を用いて再生フィルムF5を製造する。より具体的には、製造装置4は、再生樹脂原料F4のみを用いて、又は再生樹脂原料F4に加えてその他の原料も用いて、再生フィルムF5を製造する。すなわち、再生樹脂原料F4は、再生フィルムF5の原料の一部又は全部として用いることができる。なお、その他の原料は、樹脂であっても、樹脂以外の原料であってもよく、又はその両方を含むものであってもよい。その他の原料としては、バージン樹脂原料を用いることができる。再生フィルムF5は、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。いずれの場合も、再生樹脂原料F4とその他の原料とを混合した層を形成してもよいし、後者の場合、再生樹脂原料F4を含有する層と、その他の原料からなる層とを積層させてもよい。再生フィルムF5は、1又は複数種類の樹脂成分を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。
【0039】
再生フィルムF5の製造方法としては、公知の成膜方法を利用することができる。例えば、再生樹脂原料F4を押出機に供給し、これを押出機内で加熱溶融した後、ダイから押し出す押出成形を行ってもよい。このとき、共押出しすることにより、積層フィルムを製造することができる。再生フィルムF5は、成形後、適宜延伸される。
【0040】
<3.適用例>
上記の溶解装置1及び回収装置2を用いた樹脂の回収方法の適用例を、以下に2つ例示する。
【0041】
<3―1.適用例1>
溶解装置1のタンク10内に、溶媒11である170℃のエチレングリコールを投入し、さらに回収対象の樹脂成分としてポリアミド系樹脂を含有するフィルム(破砕片)F1を10wt%投入する。そして、タンク10から搬送路21へ溶液12を投入する。このとき、温調装置23のセグメント23a~23dの温度を、それぞれ180℃、150℃、120℃、100℃に維持する。これにより、溶液12が搬送路21に沿って搬送されるにつれ、溶液12に含まれるポリアミド系樹脂が徐々に析出し、懸濁が進む。溶液12に溶解していたポリアミド系樹脂は、搬送路21の最下流付近で100℃程度まで冷却され、この時点でほぼ完全に析出する。ポリアミド系樹脂の析出物F2は、搬送路21の最終地点に取り付けられた目開き5μmのフィルター25により捕集され、搬送路21からダイスを介して押し出され、さらに前方へと送り出される。一方、析出物F2からフィルター25により分離された溶媒11であるエチレングリコールは、フィルター25を通り抜けて落下し、別途回収される。
【0042】
<3―2.適用例2>
溶解装置1のタンク10内に、溶媒11である室温のシクロヘキサンを投入し、さらに回収対象の樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含有するフィルム(破砕片)F1を10wt%投入する。そして、タンク10から搬送路21へ溶液12を投入する。この例では、温調装置23は動作させない。代わりに、搬送路21に溶液12と等量の貧溶媒であるイソプロパノール(IPA)を投入する。これにより、溶液12が搬送路21に沿って搬送されるにつれ、溶液12に含まれるポリスチレン系樹脂が徐々に析出し、懸濁が進む。ポリスチレン系樹脂の析出物F2は、搬送路21の最終地点に取り付けられた目開き25μmのフィルター25により捕集され、搬送路21からダイスを介して押し出され、さらに前方へと送り出される。一方、析出物F2からフィルター25により分離された溶媒11であるシクロヘキサンは、フィルター25を通り抜けて落下し、別途回収される。
【0043】
<4.特徴>
上記実施形態では、回収対象の樹脂成分を含む溶液12が搬送路21に沿って搬送される間に、搬送路21内で樹脂成分が溶液12から析出させられる。すなわち、溶液12から樹脂成分を析出させる工程が、バッチ式ではなく連続式に実施される。これにより、効率よく樹脂成分を回収することができる。ひいては、このように回収された樹脂成分から、効率よく再生樹脂原料F4、さらには再生フィルムF5を製造することができる。
【0044】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0045】
<5―1>
上記実施形態では、樹脂製のフィルムF1から樹脂製の再生フィルムF5が再生される例を示した。しかしながら、本発明が適用可能なリサイクル対象は、フィルムに限られず、任意の樹脂成形品から任意の樹脂成形品を再生することができる。このとき、元の樹脂成形品と再生された樹脂成形品との種類が異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0046】
<5―2>
図1に点線で示すように、回収装置2で析出物F2と分離され回収された溶媒11を、タンク10へと戻すための循環路50を設けてもよい。回収装置2を出た溶媒11は、循環路50の上流部で受け取られ、循環路50に沿ってタンク10へと搬送される、あるいはタンク10へ溶媒11を供給する図示されない供給源又は供給路へと搬送される。循環路50は、回収装置2と、タンク10、あるいはタンク10へ溶媒11を供給する図示されない供給源又は供給路とを接続する。溶媒11は、循環路50に沿って回収装置2から単位時間当たりに所定量ずつ(一定量であっても、変動量であってもよい)、連続式に搬送されることが好ましい。なお、循環路50は、溶媒11の劣化を効果的に防止すべく、実質的に密閉経路とすることが好ましい。
【0047】
<5―3>
上記実施形態では、分離部25による固液分離の処理は、フィルターにより実現されたが、この態様に限定されない。例えば、搬送路21内の溶液12を溶媒11の沸点以上に加熱し、溶媒11を揮発させることにより、析出物F2を溶媒11から分離してもよい。この場合、上述した温調装置23を分離部25として機能させることができ、溶液12を溶媒11の沸点以上に加熱するように動作させればよい。このようにして回収された析出物F2は、その後、スクリュー22により搬送路21から押し出され、回収される。
【符号の説明】
【0048】
1 溶解装置
10 タンク
11 溶媒
13 分離部(フィルター)
12 溶液
2 樹脂の回収装置
20 搬送装置
21 搬送路
22 スクリュー
23 温調装置
23a~23d セグメント
25 分離部(フィルター)
3 再生樹脂原料の製造装置
4 フィルムの製造装置
F1 フィルム
F2 析出物
F3 残留物
F4 再生樹脂原料
F5 再生フィルム