(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150971
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】樹脂の回収方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20241017BHJP
B29B 9/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064048
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 宰
(72)【発明者】
【氏名】小池 明日香
【テーマコード(参考)】
4F201
4F401
【Fターム(参考)】
4F201AA50
4F201AG14
4F201AJ08
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC13
4F201BD05
4F201BL25
4F401AA08
4F401AA09
4F401AA10
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4F401AA22
4F401AA24
4F401AB01
4F401AB04
4F401AB07
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA25
4F401CA30
4F401CA46
4F401CA48
4F401CA49
4F401CA50
4F401CA57
4F401CB02
4F401CB14
4F401DC04
4F401DC06
4F401EA54
4F401EA56
4F401EA59
4F401EA60
4F401EA62
4F401EA68
(57)【要約】
【課題】効率のよい樹脂の回収方法を提供する。
【解決手段】ここでの樹脂の回収方法は、樹脂成形品の破砕片を溶解槽に連続式に供給する工程と、破砕片に含まれる少なくとも一部の樹脂成分を溶解させる溶媒を溶解槽に連続式に供給する工程と、溶解槽に供給された破砕片が溶解槽内の溶媒の中を移動する間に、少なくとも一部の樹脂成分が溶媒に溶解することにより生成される溶液を、溶解槽内から外へと連続式に排出する工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の破砕片を溶解槽に連続式に供給する工程と、
前記破砕片に含まれる少なくとも一部の樹脂成分を溶解させる溶媒を前記溶解槽に連続式に供給する工程と、
前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記少なくとも一部の樹脂成分が前記溶媒に溶解することにより生成される溶液を、前記溶解槽内から外へと連続式に排出する工程と、
を含む、樹脂の回収方法。
【請求項2】
前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記破砕片に含まれる成分のうち前記溶媒に溶解しなかった不溶成分からなる残留物を、前記溶解槽内から外へと連続式に送り出す工程
をさらに含む、
請求項1に記載の樹脂の回収方法。
【請求項3】
前記溶媒は、前記破砕片に含まれる2種類以上の樹脂成分のうちの一部の樹脂成分のみを溶解させる、
請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【請求項4】
前記樹脂成形品は、樹脂製のフィルムである、
請求項3に記載の樹脂の回収方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法により前記溶解槽内から排出された前記溶液に含まれる樹脂成分を用いてフィルムを製造する工程
を含む、フィルムの製造方法。
【請求項6】
溶解槽と、
樹脂成形品の破砕片を前記溶解槽に連続式に供給する第1供給装置と、
前記破砕片に含まれる少なくとも一部の樹脂成分を溶解させる溶媒を前記溶解槽に連続式に供給する第2供給装置と、
を備え、
前記溶解槽は、前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記少なくとも一部の樹脂成分が前記溶媒に溶解することにより生成される溶液を、前記溶解槽内から外へと連続式に排出する排出口を有する、
樹脂の回収装置。
【請求項7】
前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記破砕片に含まれる成分のうち前記溶媒に溶解しなかった不溶成分からなる残留物を、前記溶解槽内から外へと連続式に送り出す搬送装置
をさらに備える、
請求項6に記載の樹脂の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の回収方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂成形品から樹脂材料を再生原料として回収するリサイクル技術の開発が盛んである。樹脂成形品は、食品、飲料、医薬品、医療品、化学品、化粧品、トイレタリー、工業用品等の様々な分野で使用されており、このような樹脂成形品がリサイクルの対象となることも多い。例えば、特許文献1には、ポリアミド系樹脂を含有するフィルムからポリアミド系樹脂の再生原料を回収する方法が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1では、溶解窯内に溶解液を貯留し、一定時間の間、その中にポリアミド系樹脂を含有するフィルム片を浸漬し、ポリアミド系樹脂を溶解液に溶解させる。その後、バルブが解放され、溶解窯からポリアミド系樹脂の溶解した溶解液が吐出され、溶解液がまとめて回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の通り、特許文献1においては、フィルム片に含まれる樹脂成分を溶解液に溶解させる工程が、バッチ式に実施される。しかしながら、このようなバッチ式の工程には、様々なデメリットが存在する。例えば、時間当たりの生産量が低下し得る。また、大型の設備が必要となり、設備投資が増えたり、設備の設置に必要な床面積が増えたりし得る。また、プロセス全体のエネルギー効率が悪く、ランニングコストが高くなりがちである。また、バッチごとの品質差が発生するため、ロット管理が煩雑になることもある。
【0006】
本発明の目的は、効率のよい樹脂の回収方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.樹脂成形品の破砕片を溶解槽に連続式に供給する工程と、
前記破砕片に含まれる少なくとも一部の樹脂成分を溶解させる溶媒を前記溶解槽に連続式に供給する工程と、
前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記少なくとも一部の樹脂成分が前記溶媒に溶解することにより生成される溶液を、前記溶解槽内から外へと連続式に排出する工程と、
を含む、樹脂の回収方法。
【0008】
項2.前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記破砕片に含まれる成分のうち前記溶媒に溶解しなかった不溶成分からなる残留物を、前記溶解槽内から外へと連続式に送り出す工程
をさらに含む、
項1に記載の樹脂の回収方法。
【0009】
項3.前記溶媒は、前記破砕片に含まれる2種類以上の樹脂成分のうちの一部の樹脂成分のみを溶解させる、
項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【0010】
項4.前記樹脂成形品は、樹脂製のフィルムである、
項1から項3のいずれかに記載の樹脂の回収方法。
【0011】
項5.項1から項4のいずれかに記載の樹脂の回収方法により前記溶解槽内から排出された前記溶液に含まれる樹脂成分を用いてフィルムを製造する工程
を含む、フィルムの製造方法。
【0012】
項6.溶解槽と、
樹脂成形品の破砕片を前記溶解槽に連続式に供給する第1供給装置と、
前記破砕片に含まれる少なくとも一部の樹脂成分を溶解させる溶媒を前記溶解槽に連続式に供給する第2供給装置と、
を備え、
前記溶解槽は、前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記少なくとも一部の樹脂成分が前記溶媒に溶解することにより生成される溶液を、前記溶解槽内から外へと連続式に排出する排出口を有する、
樹脂の回収装置。
【0013】
項7.前記溶解槽に供給された前記破砕片が前記溶解槽内の前記溶媒の中を移動する間に、前記破砕片に含まれる成分のうち前記溶媒に溶解しなかった不溶成分からなる残留物を、前記溶解槽内から外へと連続式に送り出す搬送装置
をさらに備える、
項6に記載の樹脂の回収装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、効率よく樹脂成分を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂の回収装置と、その後段に配備される製造装置とを含むシステムを模式的に示す図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る樹脂の回収装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る樹脂の回収方法及び装置について説明する。
【0017】
<1.概要>
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂の回収装置100と、その後段に配備される製造装置5,6とを含むシステムを模式的に示す。このシステムは、樹脂製のフィルム片F1から樹脂材料を回収し、回収した樹脂材料から樹脂製の再生フィルムF4,F5を再生するリサイクルシステムである。
【0018】
回収装置100は、溶解装置3を備える。溶解装置3は、フィルム片F1を溶媒C1に浸漬することにより、フィルム片F1に含まれる少なくとも一部の樹脂成分F2が溶解した溶液C2を生成する。回収装置100は、溶解装置3の上流側に、第1供給装置1及び第2供給装置2をさらに備える。第1供給装置1は、溶解装置3へフィルム片F1を連続式に供給する。第2供給装置2は、溶解装置3へ溶媒C1を連続式に供給する。溶解装置3の下流側には、製造装置6が配置される。製造装置6は、溶解装置3により生成された溶液C2に含まれる樹脂成分F2を用いて、再生フィルムF5を製造する。
【0019】
回収装置100は、搬送装置4をさらに備える。搬送装置4は、溶解装置3の下流側に、製造装置6と並列に配置される。搬送装置4は、溶解装置3からフィルム片F1の残留物F3を連続式に回収する装置である。残留物F3は、フィルム片F1に含まれる成分のうち、溶媒C1に溶解しなかった不溶成分からなる。搬送装置4のさらに下流側には、製造装置5が配置される。製造装置5は、搬送装置4により回収された残留物F3を用いて、再生フィルムF4を製造する。
【0020】
<2.各装置の詳細>
以下、
図1の各装置1~6の詳細を説明する。
【0021】
<2―1.第1供給装置1、第2供給装置2、及び溶解装置3>
図2は、回収装置100の構成を示す図である。
図2に示す通り、溶解装置3は、溶解槽30を備える。溶解槽30内には、第1供給装置1から連続式にフィルム片F1が供給される。溶解槽30内には、第2供給装置2から連続式に溶媒C1も供給される。フィルム片F1は、フラフとも呼ばれ、リサイクル対象の樹脂成形品の破砕片の一例である。リサイクル対象の樹脂成形品としては、製品として使用済みのもの、未使用品、製造過程における廃棄品、廃棄過程における中間処理品等が想定される。溶解槽30に供給されるフィルム片F1は、公知の粉砕機、破砕機、裁断機等を適宜使用して、以上のようなリサイクル対象の樹脂成形品を細片化することにより生成することができる。各破砕片のサイズ(面積)は、500mm
2以下が好ましく、300mm
2以下がより好ましく、200mm
2以下がさらに好ましく、100mm
2以下が特に好ましい。
【0022】
本実施形態のフィルム片F1は、2種類以上の樹脂成分を含有する。フィルム片F1は、単層フィルムであってもよいし、積層フィルムであってもよい。また、フィルム片F1は、樹脂成分以外の成分を含有していてもよい。フィルム片F1は、アルミニウム等の金属成分、インク等の着色成分、アンチブロッキング剤、添加剤等を含有し得る。添加剤の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤等が挙げられる。
【0023】
フィルム片F1は、溶解槽30に収容される溶媒C1に浸漬される。溶媒C1は、フィルム片F1に含まれる1種類又は2種類以上の樹脂成分F2を溶解させる。なお、ここで溶媒C1に溶解する1種類又は2種類以上の樹脂成分F2が、製造装置6でリサイクルされる樹脂成分となる。本実施形態の溶媒C1は、フィルム片F1に含まれる樹脂成分のうちの一部のみを選択的に溶解させる。これにより、フィルム片F1に含まれる2種類以上の樹脂成分のうち、一部の樹脂成分F2をその他の樹脂成分から分離回収し、製造装置6に送ることができる。一方、その他の樹脂成分は、後述する残留物F3に含まれる成分として、製造装置5に送られる。なお、溶媒C1は、フィルム片F1に含まれる樹脂成分以外の成分を溶解させてもよい。また、この場合、溶解した樹脂成分以外の成分を、樹脂成分F2とともに製造装置6に送ることができる。
【0024】
フィルム片F1に含まれる樹脂成分の種類の例としては、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン6系樹脂、ナイロン66系樹脂、ナイロン12系樹脂等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリスチレン系樹脂の例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、環状ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0025】
製造装置6でリサイクルされる樹脂成分が、ポリアミド系樹脂である場合、溶媒C1の好ましい例として、エチレングリコール系の、脂肪族環状アルコール、脂肪族アルコール、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールを挙げることができる。製造装置6でリサイクルされる樹脂成分が、ポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂である場合、溶媒C1の好ましい例として、リモネン、ピネン等の環状テルペン系溶媒、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状脂肪族系溶媒を挙げることができる。製造装置6でリサイクルされる樹脂成分が、ポリエステル系樹脂である場合、溶媒C1の好ましい例として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。
【0026】
本実施形態の第1供給装置1は、フィルム片F1を収容するタンク10と、タンク10からフィルム片F1を送り出すフィーダー11とを備える。フィーダー11から送り出されたフィルム片F1は、好ましくは溶解槽30に上方から投入される。フィーダー11によるフィルム片F1の送り量は制御され、フィルム片F1は、単位時間当たりに所定量ずつ溶解槽30に送られる。なお、ここでいう所定量は、一定量であっても、変動量であってもよい。つまり、フィルム片F1の送り量は常に一定であってもよいし、変動させてもよい。後者の場合、送り量がゼロになることがあってもよい。いずれにせよ、フィルム片F1は、第1供給装置1から溶解槽30へと、バッチ式ではなく、連続式に送られる。これを実現する方法は特に限定されないが、例えば、搬送速度を制御可能なスクリューコンベアやバケットコンベア、ベルトコンベア等を用いて、フィルム片F1を溶解槽30へ搬送することができる。また、例えば、送風量を制御可能な送風機を用いて、送風によりフィルム片F1を溶解槽30へ搬送することもできる。
【0027】
本実施形態の第2供給装置2は、溶媒C1を収容するタンク20と、溶媒C1を排出するためのタンク20の排出口を開閉するバルブ21とを備える。タンク20からバルブ21を介して送り出された溶媒C1は、好ましくは溶解槽30に上方から投入される。第2供給装置2から送り出される溶媒C1の流量は制御され、溶媒C1は、単位時間当たりに所定量ずつ溶解槽30に送られる。なお、ここでいう所定量は、一定量であっても、変動量であってもよい。つまり、流量は常に一定であってもよいし、変動させてもよい。後者の場合、流量がゼロになることがあってもよい。いずれにせよ、溶媒C1は、第2供給装置2から溶解槽30へと、バッチ式ではなく、連続式に送られる。これを実現する方法は特に限定されないが、例えば、バルブ21の開度を制御する方法が考えられる。また、バルブ21に代えて、流量制御機能付きのフィーダーを取り付けてもよい。
【0028】
第2供給装置2は、溶解槽30に供給する溶媒C1を加温するための加温装置22を備えていてもよい。この場合、樹脂成分F2及び溶媒C1の種類にもよるが、後段の溶解槽30内において、樹脂成分F2を溶媒C1に効率よく溶解させることができる。加温装置22は、例えば、タンク20を覆うジャケット式のヒーターとすることができる。
【0029】
第1供給装置1から溶解槽30へフィルム片F1が連続式に供給されるのと並行して、第2供給装置2から溶解槽30へ溶媒C1が連続式に供給される。溶解槽30内の液面(溶媒C1又は溶液C2の水位)は、一定の高さ以上に維持される。溶解槽30内へ上方から投入されたフィルム片F1は、落下して溶媒C1(又は溶液C2)の中に沈み、さらに溶媒C1(又は溶液C2)の中を落下する。フィルム片F1が溶媒C1の中をこのように移動する間に、フィルム片F1に含まれる樹脂成分F2が溶媒C1に溶解することにより、溶液C2が生成される。なお、フィルム片F1は、その形状に由来して、溶媒C1の中をゆっくりと落下しながら移動する。その結果、フィルム片F1が溶解槽30の下部に達する頃には、フィルム片F1に含まれる樹脂成分F2の溶媒C1への溶解は、実質的に全て完了し得る。なお、特許文献1では、槽内に、樹脂成分の溶解を促すために液及びフィルム片を撹拌させる撹拌装置が設けられているが、本実施形態では、溶解槽30内においてこのような攪拌装置を省略することができる。
【0030】
溶解装置3は、溶解槽30内の溶媒C1(又は溶液C2)を加温するための加温装置31を備えていてもよい。この場合、樹脂成分F2及び溶媒C1の種類にもよるが、フィルム片F1に含まれる樹脂成分F2を溶媒C1に効率よく溶解させることができる。加温装置31は、例えば、溶解槽30を覆うジャケット式のヒーターとすることができる。
【0031】
溶解槽30の下部には、排出口33が設けられている。溶液C2は、この排出口33を介して、溶解槽30内から溶解槽30外へと連続式に排出される。排出口33を介して排出される溶液C2の流量は制御され、溶液C2は、単位時間当たりに所定量ずつ溶解槽30外へ送られる。なお、ここでいう所定量は、一定量であっても、変動量であってもよい。つまり、流量は常に一定であってもよいし、変動させてもよい。後者の場合、流量がゼロになることがあってもよい。いずれにせよ、溶液C2は、溶解槽30内から溶解槽30外へと、バッチ式ではなく、連続式に排出される。これを実現する方法は特に限定されないが、例えば、排出口33を開閉するバルブ34の開度を制御する方法が考えられる。また、バルブ34に代えて、流量制御機能付きのフィーダーを取り付けてもよい。
【0032】
溶解槽30内では、フィルム片F1から樹脂成分F2が溶け出して溶液C2が生成される一方、フィルム片F1の溶け残りである残留物F3も生成される。溶解槽30の下部には、溶液C2を残留物F3から分離するフィルター32が設けられている。フィルム片F1は、溶媒C1の中を落下した後、最終的に残留物F3となり、フィルター32に捕集される。フィルター32は、固液分離を行うことが可能であり、溶液C2を通すが、残留物F3を通さない目のサイズを有する。これにより、溶液C2がフィルター32を通り抜け、残留物F3がフィルター32に捕集され、その結果、両者は分離される。フィルター32は、排出口33よりも上流に配置される。よって、フィルター32を通り抜けた溶液C2は、その後、排出口33を介して排出される。一方、フィルター32で捕集された残留物F3も、後述する通り、別途排出される。
【0033】
以上の通り、溶解槽30内では、樹脂成分F2を含む溶液C2が連続式に生成される。また、溶解槽30内の溶液C2は、溶解槽30から連続式に排出される。その後、溶液C2は、製造装置6に送られる。
【0034】
<2―2.搬送装置4>
以上の通り、溶解槽30内では、フィルム片F1が溶媒C1の中を落下する間に、フィルム片F1に含まれる成分のうち溶媒C1に溶解しなかった不溶成分からなる残留物F3が生成される。搬送装置4は、こうして生成された残留物F3を溶解槽30内から外へと連続式に送り出す。
【0035】
図2に示す通り、本実施形態の搬送装置4は、搬送路40を有する。搬送路40の上流部は、溶解槽30の下部に位置し、溶解槽30の下部から溶解槽30の外へと延びている。これにより、搬送装置4は、溶解槽30の下部のフィルター32に捕集された残留物F3を、搬送路40に沿って溶解槽30外へと送り出すことができる。また、搬送装置4は、溶解槽30内から送り出した残留物F3を、そのまま搬送路40に沿って所定の位置まで搬送することができる。
【0036】
搬送装置4による残留物F3の送り量は制御され、残留物F3は、単位時間当たりに所定量ずつ溶解槽30内から送り出され、搬送路40内を搬送される。なお、ここでいう所定量は、一定量であっても、変動量であってもよい。つまり、残留物F3の送り量は、常に一定であってもよいし、変動させてもよい。後者の場合、送り量がゼロになることがあってもよい。いずれにせよ、残留物F3は、バッチ式ではなく、連続式に送られる。
図2の例では、搬送装置4は、スクリューコンベアであり、搬送路40内に配置され、搬送路40と同軸に伸びるスクリュー41を有する。そして、スクリュー41の回転速度が制御されることにより、残留物F3の送り量が制御される。しかしながら、残留物F3の搬送方法はこれに限られず、搬送装置4にバケットコンベアやベルトコンベア、圧送ポンプを用いる等、その他の方法を適宜採用し得る。
【0037】
搬送路40の下流部には、排出口45が設けられている。搬送路40の下流部まで搬送された残留物F3は、この排出口45を介して、搬送路40外へと連続式に排出される。その後、残留物F3は、製造装置5に送られる。
【0038】
上記の通り、残留物F3は、搬送装置4により溶解槽30から送り出される前に、フィルター32により溶液C2と分離されている。しかしながら、フィルター32による分離が完全ではなく、搬送路40内を搬送される残留物F3は、依然として溶液C2を含み得る。そのため、搬送路40に、残留物F3から溶液C2を分離するフィルター42を設けてもよい。フィルター42は、固液分離を行うことが可能であり、溶液C2を通すが、残留物F3を通さない目のサイズを有する。これにより、溶液C2がフィルター42を通り抜け、残留物F3がフィルター42に捕集され、その結果、両者は分離される。フィルター42は、好ましくは、搬送路40の底面において、残留物F3を排出するための排出口45よりも上流の位置に配置される。残留物F3に混入する溶液C2は、残留物F3が搬送路40を搬送される間に、重力や搬送による振動により残留物F3から脱落して、搬送路40の底面へ集まる。そして、溶液C2は、残留物F3とともに搬送路40の底面上を搬送され、フィルター42に達する。フィルター42の下方には、排出口43が設けられている。溶液C2は、フィルター42を通り抜けた後、排出口43を介して搬送路40から排出される。溶液C2は、搬送路40から連続式に排出される。
【0039】
排出口43から排出された溶液C2は、廃棄されることなく回収されることが好ましい。この場合、
図2に示すように、排出口43から排出された溶液C2を、溶解槽30から排出口33を介して排出された溶液C2と合流させてもよい。また、排出口43から排出される溶液C2の流量を制御してもよい。これを実現する方法は特に限定されないが、例えば、排出口43を開閉するバルブ44の開度を制御する方法が考えられる。また、バルブ44に代えて、流量制御機能付きのフィーダーを取り付けてもよい。
【0040】
<2―3.製造装置6>
上記の通り、製造装置6へは、溶解槽30から連続式に排出される溶液C2(搬送路40から連続式に排出される溶液C2を含み得る)が送られる。製造装置6は、このような溶液C2に含まれる樹脂成分F2を用いて再生フィルムF5を製造する。
【0041】
まず、溶液C2から樹脂成分F2を分離回収する。この分離回収の方法は、特に限定されないが、例えば、溶液C2から樹脂成分F2を析出させる方法がある。例えば、溶液C2を冷却することにより、樹脂成分F2を析出させることができる。冷却には、チラーや送風機等を用いることができる。なお、ここでいう冷却とは、溶解槽30から排出されたときの温度を基準として、溶液C2の温度を下げることを言う。すなわち、ここでいう冷却には、溶解槽30に供給される前に溶媒C1が高温に加熱されている場合、及び/又は、溶解槽30内で溶液C2が高温に加熱されている場合、溶液C2を室温に晒すことや、溶液C2を加熱することが含まれる。また、例えば、溶液C2の冷却に代えて又は加えて、溶液C2に貧溶媒を投入することにより、または貧溶媒に溶液C2を投入することにより、樹脂成分F2を析出させることもできる。溶液C2から析出した樹脂成分F2は、その後、フィルター等を用いて、溶媒C1から分離回収される。あるいは、溶液C2を加熱し、溶媒C1を蒸発させることにより、樹脂成分F2を析出させつつ、溶媒C1から分離回収することもできる。
【0042】
溶液C2から分離回収された樹脂成分F2は、再生フィルムF5へと加工される。再生フィルムF5の加工方法としては、公知の成膜方法を利用することができる。例えば、樹脂成分F2を押出機に供給し、これを押出機内で加熱溶融した後、ダイから押し出す押出成形を行ってもよい。このとき、共押出しすることにより、積層フィルムを製造することができる。再生フィルムF5は、成形後、適宜延伸される。なお、樹脂成分F2は、取り扱い性を向上させる観点から、ペレット、粉体、造粒物等の形態の再生樹脂原料に加工されてもよく、その後、そのような形態の再生樹脂原料を再生フィルムF5へ加工してもよい。造粒物とは、ペレットのように原料を加熱溶融した後、固めたものではなく、粉末状の原料を加熱溶融することなく、圧縮して固めた塊である。造粒物は、典型的には不透明な塊である。
【0043】
樹脂成分F2のペレットへの加工は、例えば、公知の樹脂ペレット製造機を用いて行うことができる。例えば、樹脂成分F2の析出物を押出機に供給し、これを押出機内で加熱溶融した後、ダイスから押し出し、押し出された材料を適当な形状にカットすることにより製造することができる。
【0044】
樹脂成分F2の粉体への加工は、例えば、樹脂成分F2の析出物を乾燥させることにより行うことができる。乾燥には、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機のような熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥機等を好ましく用いることができる。
【0045】
樹脂成分F2の造粒物への加工は、例えば、公知の造粒機を用いて行うことができる。このとき、造粒前に樹脂成分F2の析出物を乾燥させるか、造粒後に造粒物を乾燥させることが好ましい。ここでの乾燥にも、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機のような熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥等機を好ましく用いることができる。また、造粒物を造粒しながら乾燥させることもできる。また、樹脂成分F2の析出物を真空状態で撹拌しながら乾燥させることにより、造粒物を生成することもできる。なお、造粒前、造粒中及び造粒後の3つのタイミングのうち、複数回のタイミングで乾燥工程を実施することもできる。
【0046】
ペレット、粉体、造粒物等の形態の再生樹脂原料は、樹脂成分F2と同じ材料を含み、1種類又は2種類以上の樹脂成分を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。なお、粉体又は造粒物の形状の再生樹脂原料は、ペレットの形状の再生樹脂原料よりも、加工時に加熱溶融等の過剰な熱履歴を経ていない分、熱劣化が抑制され得る。
【0047】
製造装置6は、樹脂成分F2(上述した形態の再生樹脂原料であってもよい)のみを用いて、又は樹脂成分F2(上述した形態の再生樹脂原料であってもよい)に加えてその他の原料も用いて、再生フィルムF5を製造する。なお、その他の原料は、樹脂であっても、樹脂以外の原料であってもよく、又はその両方を含むものであってもよい。その他の原料としては、バージン樹脂原料を用いることができる。再生フィルムF5は、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。いずれの場合も、樹脂成分F2とその他の原料とを混合した層を形成してもよいし、後者の場合、樹脂成分F2を含有する層と、その他の原料からなる層とを積層させてもよい。再生フィルムF5は、1種類又は2種類以上の樹脂成分を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。
【0048】
<2―4.製造装置5>
上記の通り、製造装置5へは、搬送路40から連続式に排出される残留物F3が送られる。製造装置5は、このような残留物F3を用いて再生フィルムF4を製造する。本実施形態の残留物F3は、1種類又は2種類以上の樹脂成分を含有する。残留物F3は、樹脂成分のみから構成されてもよいし、樹脂成分に加え、樹脂成分以外の成分を含有していてもよい。
【0049】
残留物F3は、再生フィルムF4へと加工される。再生フィルムF4の加工方法としては、公知の成膜方法を利用することができる。例えば、残留物F3を押出機に供給し、これを押出機内で加熱溶融した後、ダイから押し出す押出成形を行ってもよい。このとき、共押出しすることにより、積層フィルムを製造することができる。再生フィルムF4は、成形後、適宜延伸される。なお、残留物F3は、樹脂成分F2と同様に、取り扱い性を向上させる観点から、ペレット、粉体、又は造粒物等の形態の再生樹脂原料に加工されてもよく、その後、そのような形態の再生樹脂原料を再生フィルムF4へ加工してもよい。
【0050】
製造装置5は、残留物F3(上述した形態の再生樹脂原料であってもよい)に含まれる樹脂成分のみを用いて、又は残留物F3(上述した形態の再生樹脂原料であってもよい)に含まれる樹脂成分に加えてその他の原料も用いて、再生フィルムF4を製造する。なお、その他の原料は、樹脂であっても、樹脂以外の原料であってもよく、又はその両方を含むものであってもよい。その他の原料としては、バージン樹脂原料を用いることができる。再生フィルムF4は、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。いずれの場合も、残留物F3に含まれる樹脂成分とその他の原料とを混合した層を形成してもよいし、後者の場合、残留物F3に含まれる樹脂成分を含有する層と、その他の原料からなる層とを積層させてもよい。再生フィルムF4は、1種類又は2種類以上の樹脂成分を含有し、さらに樹脂以外の成分を含有することもある。
【0051】
<3.特徴>
上記実施形態では、フィルム片F1に含まれる樹脂成分F2を溶媒C1に溶解させる工程が、バッチ式ではなく連続式に実施される。これにより、効率よく樹脂成分を回収することができる。ひいては、このように回収された樹脂成分F2から、効率よく再生フィルムF5を製造することができる。また、樹脂成分F2を失ったフィルム片F1の残留物F3も、バッチ式ではなく連続式に溶解槽30から送り出され、回収される。よって、残留物F3に含まれる樹脂成分からも、効率よく再生フィルムF4を製造することができる。
【0052】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0053】
<4―1>
上記実施形態では、樹脂製のフィルム片F1から樹脂製の再生フィルムF4,F5が再生される例を示した。しかしながら、本発明を適用可能な樹脂成形品は、フィルムに限られず、任意の樹脂成形品の破砕片から任意の樹脂成形品を再生することができる。このとき、元の樹脂成形品と再生された樹脂成形品との種類が異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0054】
<4―2>
上記実施形態では、本発明が適用される典型的な場面又は好ましい場面の例として、フィルム片F1が2種類以上の樹脂成分を含有し、溶媒C1がそのうちの一部の樹脂成分F2のみを溶解させる例を示した。しかしながら、溶媒C1は、フィルム片F1に含まれる2種類以上の樹脂成分の全部を溶解させるものであってもよい。あるいは、フィルム片F1に含まれる樹脂成分が1種類のみであり、溶媒C1がその1種類の樹脂成分を溶解させてもよい。なお、この例では、残留物F3を加工する製造装置5は省略され得る。
【0055】
<4―3>
上記実施形態では、第1供給装置1からのフィルム片F1と、第2供給装置2からの溶媒C1とが、別個に溶解槽30に供給された。しかしながら、第1供給装置1からのフィルム片F1と、第2供給装置2からの溶媒C1とが、溶解槽30に供給される前に合流し、合流後、溶解槽30に供給されてもよい。
【0056】
<4―4>
上記実施形態では、樹脂成分F2を用いた再生フィルムF5の製造と、残留物F3を用いた再生フィルムF4の製造とが、それぞれ製造装置6,5により、独立して行われた。しかしながら、樹脂成分F2及び残留物F3に含まれる樹脂成分の両方を用いて1枚の再生フィルムを製造してもよい。
【0057】
<4―5>
上記実施形態では、溶解槽30に連続的に供給されるフィルム片F1が、溶解槽30内の溶媒C1の中を自然落下により移動するように構成された。しかしながら、フィルム片F1が溶媒C1の中を移動する態様はこれに限定されない。例えば、送液ポンプ等により、溶解槽30(通路状であってもよい)内の溶媒C1の中を水平、斜め又は上下方向にフィルム片F1を移動させながら、樹脂成分F2を溶媒C1に溶解させ、その後、溶液C2を溶解槽30内から連続式に排出してもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 回収装置
1 第1供給装置
10 タンク
11 フィーダー
2 第2供給装置
20 タンク
21 バルブ
22 加温装置
3 溶解装置
30 溶解槽
31 加温装置
32 フィルター
33 排出口
34 バルブ
4 搬送装置
40 搬送路
41 スクリュー
42 フィルター
43 排出口
44 バルブ
45 排出口
5 製造装置
6 製造装置
C1 溶媒
C2 溶液
F1 フィルム片
F2 樹脂成分
F3 残留物
F4 再生フィルム
F5 再生フィルム