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特開2024-150981パッド押え治具、この治具を用いたロータ持ち上げ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150981
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】パッド押え治具、この治具を用いたロータ持ち上げ方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20241017BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20241017BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20241017BHJP
   F16C 23/04 20060101ALI20241017BHJP
   F16C 27/02 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F16C17/03
F01D25/16 A
F01D25/00 X
F16C23/04 D
F16C27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064067
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 靖記
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】東 洋一
【テーマコード(参考)】
3J011
3J012
【Fターム(参考)】
3J011AA02
3J011BA17
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA06
3J011MA12
3J012AB03
3J012BB01
3J012CB10
3J012DB01
3J012EB05
3J012FB01
(57)【要約】
【課題】ロータの持ち上げ過程で、ロータのバランスが崩れて、ロータが傾くことを回避する。
【解決手段】パッド押え治具は、回転機械を分解する過程で、上半ハウジングが下半ハウジングから外されている状態で、ロータを持ち上げる際に用いられる。このパッド押え治具は、軸受装置における軸受パッドの周方向端面に接触可能な接触面を有するパッド押えと、前記パッド押えを支持する支持部材74と、前記支持部材に取り付けられ、軸受装置における下半ハウジングに形成されている下ボルト孔に挿通されて下半ハウジングに取り付け可能な取付ボルトと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータを回転可能に支持する軸受装置と、を備え、
前記軸受装置は、前記ロータの外周面に対向可能な軸受パッドと、前記軸受パッドを覆う軸受ハウジングと、を有し、
前記軸受ハウジングは、前記軸線よりも上側の部分を形成し、前記軸線に対して垂直な断面が半円弧状を成す上半ハウジングと、前記軸線よりも下側の部分を形成し、前記軸線に対して垂直な断面が半円弧状を成す下半ハウジングと、前記上半ハウジングと前記下半ハウジングとを接続するハウジング接続ボルトを含むハウジング接続具と、を有し、
前記下半ハウジングは、前記軸線に対する周方向の端に形成され前記軸線に対する径方向であって水平方向に広がり、上を向いている下継ぎ手面と、前記下継ぎ手面から下方に延び、前記ハウジング接続ボルトが挿通される下孔と、を有し、
前記軸受パッドは、前記軸線に対して垂直な断面が円弧状を成し、前記下半ハウジング内に配置され、
前記軸受パッドは、前記径方向における径方向内側と径方向外側とのうちで前記径方向内側を向いて前記ロータの外周面に対向可能なロータ対向面と、前記径方向外側を向き前記ロータ対向面と背合わせの関係にある外周面と、前記ロータ対向面における前記周方向の端と前記外周面における前記周方向の端とを接続する周方向端面と、を有する、
回転機械を分解する過程で、前記上半ハウジングが前記下半ハウジングから外されている状態で、前記ロータを持ち上げる際に用いるパッド押え治具において、
前記軸受パッドの前記周方向端面に接触可能な接触面を有するパッド押えと、
前記パッド押えを支持する支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、前記下孔に挿通されて前記下半ハウジングに取り付け可能な取付ボルトを含む取付具と、
を備える、
パッド押え治具。
【請求項2】
請求項1に記載のパッド押え治具において、
前記パッド押えの前記接触面は、前記軸受パッドの前記周方向端面に接触可能な端接触面と、前記端接触面が広がっている方向に対して交差する方向に広がって、前記軸受パッドの前記外周面に接触可能な外周接触面と、を有する、
パッド押え治具。
【請求項3】
請求項1に記載のパッド押え治具において、
前記パッド押えは、前記接触面を含む部分が銅又は銅を主成分とする金属で形成されている、
パッド押え治具。
【請求項4】
請求項1に記載のパッド押え治具において、
前記パッド押えは、前記接触面を有する接触部材と、前記接触部材を前記支持部材に連結する連結部材と、を有する、
パッド押え治具。
【請求項5】
請求項4に記載のパッド押え治具において、
前記連結部材は、雄ネジが形成されているジャッキボルトであり、
前記接触部材は、前記ジャッキボルトの長手方向における、前記ジャッキボルトの先端部に取り付けられ、
前記支持部材は、前記ジャッキボルトの前記雄ネジが捩込可能な雌ネジ孔を有する、
パッド押え治具。
【請求項6】
請求項5に記載のパッド押え治具において、
前記接触部材は、前記ジャッキボルトに対して前記長手方向に相対移動不能で且つ前記ジャッキボルトの中心軸を中心として相対回転可能に、前記ジャッキボルトに取り付けられている、
パッド押え治具。
【請求項7】
請求項1に記載のパッド押え治具において、
前記パッド押えを複数備え、
前記支持部材は、複数の前記パッド押えを支持する、
パッド押え治具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のパッド押え治具を用いて、前記ロータを持ち上げるロータ持ち上げ方法において、
前記上半ハウジングが前記下半ハウジングから外されている状態で、前記支持部材に取り付けられている前記取付具を前記下半ハウジングに取り付けると共に、前記パッド押えを前記軸受パッドの前記周方向端面に接触させる治具配置工程と、
前記治具配置工程後で、前記パッド押えが前記軸受パッドに接触している状態で、前記ロータを持ち上げる持ち上げ工程と、
を実行するロータ持ち上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置における軸受パッドを押えることができるパッド押え治具、及びこの治具を用いたロータ持ち上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、ロータ、及びこのロータを回転可能に支持する軸受を備える回転機械が開示されている。
【0003】
軸受装置は、ロータの外周面に対向可能な軸受パッドと、軸受パッドを覆う軸受ハウジングと、を有する。軸受ハウジングは、半円弧状で軸線よりも上側の部分を形成する上半ハウジングと、半円弧状で軸線よりも下側の部分を形成する下半ハウジングと、を有する。軸受パッドは、円弧状を成し、下半ハウジング内に配置されている。この軸受パッドは、油膜を介して、ロータを支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-142313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転機械を分解する過程で、上半ハウジングが下半ハウジングから外されている状態で、ロータを持ち上げる工程が実行される。ロータを持ち上げる際には、例えば、ロータに吊り帯等をまわして、この吊り帯等をクレーンやチェーンブロックにおける吊りフックに掛ける。そして、この吊りフックを上昇させて、ロータを持ち上げる。
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の軸受装置では、軸受パッドとロータとの間に存在する油により、軸受パッドがロータに吸着する力が作用する。このため、ロータを持ち上げると、ロータと共に軸受パッドが持ち上がることがある。さらに、ロータを持ち上げている途中で、ロータに付いていた軸受パッドが落下することもある。このように、ロータを持ち上げている途中で、ロータに付いていた軸受パッドが落下すると、クレーン等で吊っているロータのバランスが崩れ、ロータが傾くことになる。ロータが突然傾くと、このロータが回転機械中の他部品等に接触して、ロータが損傷する虞がある。
【0007】
そこで、本開示は、ロータを持ち上げている過程で、このロータが傾くことを回避できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としてのパッド押え治具は、以下の回転機械における軸受パッドを押えることができる。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータを回転可能に支持する軸受装置と、を備える。前記軸受装置は、前記ロータの外周面に対向可能な軸受パッドと、前記軸受パッドを覆う軸受ハウジングと、を有する。前記軸受ハウジングは、前記軸線よりも上側の部分を形成し、前記軸線に対して垂直な断面が半円弧状を成す上半ハウジングと、前記軸線よりも下側の部分を形成し、前記軸線に対して垂直な断面が半円弧状を成す下半ハウジングと、前記上半ハウジングと前記下半ハウジングとを接続するハウジング接続ボルトを含むハウジング接続具と、を有する。前記下半ハウジングは、前記軸線に対する周方向の端に形成され前記前記軸線に対する径方向であって水平方向に広がり、上を向いている下継ぎ手面と、前記下継ぎ手面から下方に延び、前記上ボルト孔と上下方向で対向し、前記ハウジング接続ボルトが挿通される下孔と、を有する。前記軸受パッドは、前記軸線に対して垂直な断面が円弧状を成し、前記下半ハウジング内に配置されている。前記軸受パッドは、前記径方向における径方向内側と径方向外側とのうちで前記径方向内側を向いて前記ロータの外周面に対向可能なロータ対向面と、前記径方向外側を向き前記ロータ対向面と背合わせの関係にある外周面と、前記ロータ対向面における前記周方向の端と前記外周面における前記周方向の端とを接続する周方向端面と、を有する。
パッド押え治具は、回転機械を分解する過程で、前記上半ハウジングが前記下半ハウジングから外されている状態で、前記ロータを持ち上げる際に用いられる。
パッド押え治具は、前記軸受パッドの前記周方向端面に接触可能な接触面を有するパッド押えと、前記パッド押えを支持する支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、前記下孔に挿通されて前記下半ハウジングに取り付け可能な取付ボルトを含む取付具と、を備える。
【0009】
本態様のパッド押え治具を用いて、ロータを持ち上げる際には、まず、支持部材に取り付けられている取付具を下半ハウジングに取り付けると共に、パッド押えを軸受パッドの周方向端面に接触させる。次に、パッド押えが軸受パッドに接触している状態で、ロータを持ち上げる。
【0010】
軸受装置では、軸受パッドとロータとの間に存在する油により、軸受パッドがロータに吸着する力が作用する。このため、ロータを単に持ち上げると、ロータと共に軸受パッドが持ち上がることがある。さらに、ロータを持ち上げている途中で、ロータに付いていた軸受パッドが落下することもある。このように、ロータを持ち上げている途中で、ロータに付いていた軸受パッドが落下すると、クレーン等で吊っているロータのバランスが崩れ、ロータが傾くことになる。
【0011】
本態様では、パッド押えが軸受パッドに接触している状態で、ロータを持ち上げることで、このロータの持ち上げ過程で、このロータと共に軸受パッド持ち上がることを回避できる。このため、本態様では、ロータの持ち上げ過程で、ロータのバランスが崩れて、ロータが傾くことを回避できる。
【0012】
前記目的を達成するための一態様としてのロータ持ち上げ方法では、前記一態様における軸受パッドを用いて、前記ロータを持ち上げる。
このロータ持ち上げ方法では、前記上半ハウジングが前記下半ハウジングから外されている状態で、前記支持部材に取り付けられている前記取付具を前記下半ハウジングに取り付けると共に、前記パッド押えを前記軸受パッドの前記周方向端面に接触させる治具配置工程と、前記治具配置工程後で、前記パッド押えが前記軸受パッドに接触している状態で、前記ロータを持ち上げる持ち上げ工程と、を実行する。
【0013】
本態様のロータ持ち上げ方法を実行することで、ロータの持ち上げ過程で、ロータのバランスが崩れて、ロータが傾くことを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様では、ロータの持ち上げ過程で、ロータのバランスが崩れて、ロータが傾くことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービン設備の模式的構成図である。
図2】本開示に係る一実施形態における軸受装置の断面図である。
図3】本開示に係る一実施形態における治具配置工程中のパッド押え治具と軸受装置との位置関係を示す説明図である。
図4図3におけるIV矢視図である。
図5図3におけるV部の拡大図である。
図6】本開示に係る一実施形態におけるロータ持ち上げ方法の実行手順を示すフローチャートである。
図7】本開示に係る一実施形態における持ち上げ工程中のパッド押え治具と軸受装置とロータとの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る、軸受装置における軸受パッドを押えることができるパッド押え治具、及びこの治具を用いたロータ持ち上げ方法について、図面を用いて説明する。
【0017】
「回転機械の実施形態」
まず、ロータ、及びこのロータを回転可能に支持する軸受装置を備える回転機械の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態における回転機械は、図1に示すように、ガスタービンである。このガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成可能な圧縮機10と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器20と、燃焼ガスで駆動可能なタービン30と、吸気ケーシング15と、中間ケーシング25と、排気ケーシング35と、二つの軸受装置40と、を備える。
【0019】
圧縮機10は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング12と、複数の圧縮機静翼列13と、吸気量調節機14と、を有する。タービン30は、軸線Arを中心として回転可能なタービンロータ31と、タービンロータ31を覆うタービンケーシング32と、複数のタービン静翼列33と、を有する。軸線Arは、水平方向に延びている。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、軸線方向Daにおける一方側を軸線上流側Dau、軸線方向Daにおける他方側を軸線下流側Dadとする。また、軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとする。また、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとし、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0020】
圧縮機10は、タービン30に対して軸線上流側Dauに配置されている。圧縮機ロータ11は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びる圧縮機ロータ軸11sと、この圧縮機ロータ軸11sに取り付けられている複数の圧縮機動翼列11bと、を有する。複数の圧縮機動翼列11bは、軸線方向Daに並んでいる。各圧縮機動翼列11bは、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の圧縮機動翼列11bの各軸線下流側Dadには、複数の圧縮機静翼列13のうちのいずれか一つの圧縮機静翼列13が配置されている。各圧縮機静翼列13は、圧縮機ケーシング12の内側に取り付けられている。各圧縮機静翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。吸気量調節機14は、複数の入口案内翼(IGV(inlet guide vane))14vと、各入口案内翼14vの向きを変更できる駆動器14dと、を有する。複数の入口案内翼14vは、複数の圧縮機動翼列11bよりも軸線上流側Dauに配置されている。複数の入口案内翼14vは、周方向に並んで配置されている。
【0021】
タービンロータ31は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるタービンロータ軸31sと、このタービンロータ軸31sに取り付けられている複数のタービン動翼列31bと、を有する。複数のタービン動翼列31bは、軸線方向Daに並んでいる。各タービン動翼列31bは、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数のタービン動翼列31bの各軸線上流側Dauには、複数のタービン静翼列33のうちのいずれか一つのタービン静翼列33が配置されている。各タービン静翼列33は、タービンケーシング32の内側に取り付けられている。各タービン静翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0022】
中間ケーシング25は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング32との間に配置されている。中間ケーシング25の軸線上流側Dauの端は、圧縮機ケーシング12の軸線下流側Dadの端に接続されている。中間ケーシング25の軸線下流側Dadの端は、タービンケーシング32の軸線上流側Dauの端に接続されている。燃焼器20は、中間ケーシング25に取り付けられている。
【0023】
吸気ケーシング15は、圧縮機ケーシング12の軸線上流側Dauの端に接続されている。吸気ケーシング15は、吸気内側ケーシング15iと、吸気外側ケーシング15oと、複数の吸気ストラット16とを有する。吸気内側ケーシング15iは、軸線Arを中心として筒状を成し、圧縮機ロータ軸11s中で、入口案内翼14vより軸線上流側Dauの部分を覆う。吸気外側ケーシング15oは、軸線Arを中心として筒状を成し、吸気内側ケーシング15iに対して径方向外側Droに間隔をあけて配置されている。吸気外側ケーシング15oの軸線下流側Dadの端は、圧縮機ケーシング12の軸線上流側Dauの端に接続されている。複数の吸気ストラット16は、吸気内側ケーシング15iと吸気外側ケーシング15oとの間で周方向Dcに並んでいる。吸気ストラット16の径方向内側Driの端は、吸気内側ケーシング15iに接続されている。吸気ストラット16の径方向外側Droの端は、吸気外側ケーシング15oに接続されている。
【0024】
排気ケーシング35は、タービンケーシング32の軸線上流側Dauの端に接続されている。排気ケーシング35は、排気外側ケーシング35oと、排気内側ケーシング35iと、複数の排気ストラット36と、を有する。排気内側ケーシング35iは、軸線Arを中心として筒状を成し、タービンロータ軸31s中で、複数のタービン動翼列31bより軸線下流側Dadの部分を覆う。排気外側ケーシング35oは、軸線Arを中心として筒状を成し、排気内側ケーシング35iに対して径方向外側Droに間隔をあけて配置されている。排気外側ケーシング35oの軸線上流側Dauの端は、タービンケーシング32の軸線下流側Dadの端に接続されている。複数の排気ストラット36は、排気内側ケーシング35iと排気外側ケーシング35oとの間で周方向Dcに並んでいる。排気ストラット36の径方向内側Driの端は、排気内側ケーシング35iに接続されている。排気ストラット36の径方向外側Droの端は、排気外側ケーシング35oに接続されている。
【0025】
圧縮機ロータ11とタービンロータ31とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ1を成す。このガスタービンロータ1には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービンロータ1の軸線上流側Dauの部分と軸線下流側Dadの部分とは、それぞれ、軸受装置40で支持されている。ガスタービンロータ1の軸線上流側Dauの部分を支持する軸受装置40は、軸線方向Daで、複数の吸気ストラット16が配置されている位置に配置されている。この軸受装置40は、吸気内側ケーシング15iを介して、複数の吸気ストラット16により支持されている。ガスタービンロータ1の軸線下流側Dadの部分を支持する軸受装置40は、軸線方向Daで、複数の排気ストラット36が配置されている位置に配置されている。この軸受装置40は、排気内側ケーシング35iを介して、複数の排気ストラット36により支持されている。
【0026】
軸受装置40は、図2に示すように、支持環51と、三つのピボット54と、三つの軸受パッド55と、これらを覆う軸受ハウジング41と、を有する。
【0027】
軸受ハウジング41は、上半ハウジング41uと、下半ハウジング41lと、複数のハウジング接続具45と、を有する。上半ハウジング41uは、軸受ハウジング41中で、軸線Arよりも上側の部分を形成する。下半ハウジング41lは、軸受ハウジング41中で、軸線Arよりも下側の部分を形成する。上半ハウジング41u及び下半ハウジング41lは、いずれも、軸線Arに対して垂直な断面が半円弧状を成す。
【0028】
上半ハウジング41uは、径方向外側Droを向く外周面42oと、径方向内側Driを向き外周面42oと背合わせの関係にある内周面42iと、周方向Dcの両側の端のそれぞれに形成されている上継ぎ手面43uと、上継ぎ手面43uから上方に延びている複数の上ボルト孔44uと、を有する。各上継ぎ手面43uは、いずれも、軸線Arに対する径方向Drであって水平方向に広がり、且つ下側を向いている。複数の上ボルト孔44uのうち、一部の上ボルト孔44uは、周方向Dc一方側の端に形成されている上継ぎ手面43uから上方に延び、外周面42oまで貫通している。また、複数の上ボルト孔44uのうち、残りの上ボルト孔44uは、周方向Dc他方側の端に形成されている上継ぎ手面43uから上方に延び、外周面42oまで貫通している。
【0029】
下半ハウジング41lは、径方向外側Droを向く外周面42oと、径方向内側Driを向き外周面42oと背合わせの関係にある内周面42iと、周方向Dcの両側の端のそれぞれに形成されている下継ぎ手面43lと、下継ぎ手面43lから下方に延びている複数の下ボルト孔(又は下孔)44lと、を有する。各下継ぎ手面43lは、いずれも、軸線Arに対する径方向Drであって水平方向に広がり、且つ上側を向いている。周方向Dc一方側の端に形成されている下継ぎ手面43lは、上半ハウジング41uの周方向Dc他方側の端に形成されている上継ぎ手面43uと上下方向で対向する。また、周方向Dc他方側の端に形成されている下継ぎ手面43lは、上半ハウジング41uの周方向Dc一方側の端に形成されている上継ぎ手面43uと上下方向で対向する。複数の下ボルト孔44lのうち、一部の下ボルト孔44lは、周方向Dc一方側の端に形成されている下継ぎ手面43lから下方に延びている。また、複数の下ボルト孔44lのうち、残りの下ボルト孔44lは、周方向Dc他方側の端に形成されている下継ぎ手面43lから下方に延びている。各下継ぎ手面43lから下方に延びている複数の下ボルト孔44lのうち、一部の下ボルト孔44lは、ネジ付き下ボルト孔44lbを成す。このネジ付き下ボルト孔44lbは、孔底を有し、内周面に雌ネジ44lsが形成されている。各下継ぎ手面43lから下方に延びている複数の下ボルト孔44lのうち、残りの下ボルト孔44lは、下継ぎ手面43lから下方に延び、外周面42oまで貫通している。この残りの下ボルト孔44lは、ネジ無し下ボルト孔44laを成す。このネジ無し下ボルト孔44laは、ネジ付き下ボルト孔44lbと異なり、内周面に雌ネジは形成されていない。なお、前述の全ての上ボルト孔44uの内周面にも、雌ネジは形成されていない。全ての下ボルト孔44lは、上半ハウジング41uの複数の上ボルト孔44uのうちのいずれか一の上ボルト孔44uと上下方向で対向する。
【0030】
ハウジング接続具45は、複数の下ボルト孔44l毎に存在する。複数のハウジング接続具45のうち、一部のハウジング接続具45は、ナット47と、このナット47に捩じ込み可能なハウジング接続ボルト46と、を有する。一部のハウジング接続具45のハウジング接続ボルト46は、下方から、下半ハウジング41lのネジ無し下ボルト孔44la、及び、このネジ無し下ボルト孔44laに上下方向で対向している上半ハウジング41uの上ボルト孔44uに挿通される。そして、このハウジング接続ボルト46の上端部に、ナット47が捩じ込まれる。複数のハウジング接続具45のうち、残りのハウジング接続具45は、ネジ付き下ボルト孔44lbに捩じ込み可能なハウジング接続ボルト46と、を有し、ナット47を有していない。残りのハウジング接続具45のハウジング接続ボルト46は、上方から、下半ハウジング41lのネジ付き下ボルト孔44lbに上下方向で対向している上半ハウジング41uの上ボルト孔44uに挿通され、そして、下半ハウジング41lのネジ付き下ボルト孔44lbに捩じ込まれる。
【0031】
二つの支持環51は、いずれも、軸線Arに対して垂直な断面が半円弧状を成す。二つの支持環51のうち、一方の支持環51は、上支持環51uを成し、上半ハウジング41uの内周面42iに取り付けられ、他方の支持環51は、下支持環51lを成し、下半ハウジング41lの内周面42iに取り付けられている。
【0032】
三つのピボット54のうち、一つのピボット54は、上支持環51uに取り付けられている。三つのピボット54のうち、残りの二つのピボット54は、周方向Dcに互いの間隔をあけて、下支持環51lに取り付けられている。三つのピボット54は、いずれも、三つの軸受パッド55のうちのいずれか一つの軸受パッド55を揺動可能に支持する。
【0033】
三つの軸受パッド55は、いずれも、軸線Arに対して垂直な断面が円弧状を成す。各軸受パッド55は、径方向内側Driを向いてガスタービンロータ1の外周面に対向可能なロータ対向面56iと、径方向外側Droを向きロータ対向面56iと背合わせの関係にある外周面56oと、ロータ対向面56iにおける周方向Dcの端と外周面56oにおける周方向Dcの端とを接続する周方向端面57と、を有する。三つの軸受パッド55のうち、一つの軸受パッド55は、上支持環51uに取り付けられている一つのピボット54により、揺動可能に支持されている。残りの二つの軸受パッド55のうち、一つの軸受パッド55は、下支持環51lに取り付けられている一つのピボット54により、揺動可能に支持されている。残りの二つの軸受パッド55のうち、他の一つの軸受パッド55は、下支持環51lに取り付けられている他の一つのピボット54により、揺動可能に支持されている。すなわち、一つの軸受パッド55は、上半ハウジング41u内に配置され、残りの二つの軸受パッド55は、下半ハウジング41l内に配置されている。
【0034】
各軸受パッド55のロータ対向面56iとガスタービンロータ1の外周面との間には、油が供給され、この間に油膜が形成される。
【0035】
「パッド押え治具の実施形態」
パッド押え治具の実施形態について、図3図5を参照して説明する。
【0036】
図3及び図4に示すように、パッド押え治具60は、軸受パッド55の周方向端面57に接触可能な接触面64を有する二つのパッド押え61(図4参照)と、各パッド押え61を支持する支持部材74と、支持部材74を下半ハウジング41lに取り付け可能な取付具77と、を有する。
【0037】
パッド押え61は、前述の接触面64を有する接触部材62と、接触部材62を支持部材74に連結する連結部材70と、を有する。連結部材70は、雄ネジ71が形成されているジャッキボルトである。よって、以下では、連結部材70をジャッキボルトと表現する。接触部材62は、ジャッキボルト70の長手方向Dlにおける、ジャッキボルト70の先端部72に取り付けられている。
【0038】
取付具77は、下ボルト孔44lに挿通されて下半ハウジング41lに取り付け可能な取付ボルト78を含む。取付具77は、場合によっては、取付ボルト78が捩じ込み可能な取付ナット79を含む。
【0039】
支持部材74は、板状の部材である。この支持部材74には、この支持部材74を貫通している二つの雌ネジ孔75(図4参照)と、この支持部材74を貫通している複数の取付ボルト孔76と、を有する。二つの雌ネジ孔75は、いずれも、ジャッキボルト70の雄ネジ71が捩込可能である。また、複数の取付ボルト孔76は、いずれも、取付ボルト78が挿通可能である。
【0040】
パッド押え61の接触部材62は、図5に示すように、接続部材本体63と、抜け止めピン69と、を有する。この接続部材本体63は、軸受パッド55より柔らかい金属、例えば、銅、若しくは銅を主成分とする金属で形成されている。なお、「銅を主成分とする」とは、銅の含有率が50%以上であることを意味する。このように、本実施形態では、接触面64を含む部分が銅又は銅を主成分とする柔らかい金属で形成されているため、このパッド押え61を軸受パッド55に接触させても、軸受パッド55の傷付きを抑制することができる。
【0041】
接続部材本体63は、接触面64と、内周対向面65と、支持部材対向面67と、ボルト穴68と、を有する。接続部材本体63は、接触面64として、軸受パッド55の周方向端面57に接触可能な端接触面64eと、軸受パッド55の外周面56oに接触可能な外周接触面64oと、を有する。外周接触面64oは、端接触面64eの縁から、この端接触面64eが広がっている方向に対して交差する方向、具体的には、端接触面64eに対してほぼ垂直な方向に広がっている。支持部材対向面67は、端接触面64eと背合わせの関係にある面で、支持部材74と対向している。内周対向面65は、下支持環51lの内周面52に対向可能で、支持部材対向面67の端から、この支持部材対向面67が広がっている方向に対して交差する方向に広がっている。この内周対向面65は、下支持環51lの内周面52の形状に対応した円弧面である。なお、円弧面とは、面の断面形状が円弧になる面である。ボルト穴68は、支持部材対向面67から凹んで、ジャッキボルト70の先端部72が挿入可能な穴である。
【0042】
ジャッキボルト70の雄ネジ71は、長手方向Dlで、ボルト穴68に挿入可能な先端部72より基端側に形成されている。この先端部72は、ジャッキボルト70の中心軸Acを中心として円柱状を成している。よって、ジャッキボルト70の先端部72を接触部材62のボルト穴68に挿入しても、ジャッキボルト70は、ジャッキボルト70の中心軸Acを中心として、接触部材62に対して自在に回転可能である。この先端部72は、その外周面から中心軸Ac側に凹み、中心軸Ac回りに形成されている環状溝73を有する。この環状溝73に、接続部材本体63に取り付けられている抜け止めピン69の一部が入り込んでいる。この抜け止めピン69により、ジャッキボルト70は、接触部材62のボルト穴68から抜けなくなる。言い換えると、接触部材62は、ジャッキボルト70に対して長手方向Dlに相対移動不能で且つジャッキボルト70の中心軸Acを中心として相対回転可能に、ジャッキボルト70に取り付けられている。
【0043】
「ロータ持ち上げ方法の実施形態」
ロータ持ち上げ方法の実施形態について、図3図7を参照して説明する。
【0044】
以上で説明したパッド押え治具60を用いて、ガスタービンロータ1を持ち上げる際には、上半ハウジング41uが下半ハウジング41lから外されている状態である。
【0045】
ガスタービンロータ1を持ち上げる際には、図6のフローチャートに示すように、先ず、治具配置工程S1を実行する。この治具配置工程S1では、支持部材74に取り付けられている取付具77を下半ハウジング41lに取り付けると共に、パッド押え61を軸受パッド55に接触させる。
【0046】
この治具配置工程S1では、まず、図3図5に示すように、取付具77の取付ボルト78を、支持部材74の取付ボルト孔76に挿通させると共に、下半ハウジング41lの下ボルト孔44lに挿通させる。仮に、下ボルト孔44lがネジ付き下ボルト孔44lbである場合、取付ボルト78を支持部材74の取付ボルト孔76に挿通させた後、この取付ボルト78をネジ付き下ボルト孔44lbに捩じ込む。また、下ボルト孔44lがネジ無し下ボルト孔44laである場合、取付ボルト78を下方からネジ無し下ボルト孔44laに挿通させた後、支持部材74の取付ボルト孔76に挿通させて、この取付ボルト78の先端部に取付ナット79を捩じ込む。なお、この場合、取付ボルト78を支持部材74の取付ボルト孔76に挿通させた後、この取付ボルト78をネジ無し下ボルト孔44laに挿通させて、この取付ボルト78の先端部に取付ナット79を捩じ込んでもよい。以上の作業で、支持部材74は、下半ハウジング41lの下継ぎ手面43lと接触し、パッド押え治具60が下半ハウジング41lに取り付けられる。
【0047】
治具配置工程S1では、さらに、支持部材74の雌ネジ孔75に対するジャッキボルト70の捩込量を調整して、軸受パッド55の周方向端面57に接触部材62の端接触面64eを接触させると共に、軸受パッド55の外周面56oに接触部材62の外周接触面64oを接触させる。ジャッキボルト70の捩込量を調整している際、このジャッキボルト70は、ジャッキボルト70の中心軸Acを中心として回転する。本実施形態で、この際、接触部材62は、ジャッキボルト70の中心軸Acを中心として回転せずに、ジャッキボルト70の長手方向Dlへの移動と一体的に移動する。なお、接触部材62の端接触面64eが接触する軸受パッド55の周方向端面57は、上側を向く周方向端面57である。以上で、治具配置工程S1が終了する。
【0048】
次に、持ち上げ準備工程S2を実行する。この持ち上げ準備工程S2では、図7に示すように、ガスタービンロータ1に吊り帯等81をまわして、この吊り帯等81をクレーンやチェーンブロックにおける吊りフック82に掛ける。
【0049】
次に、持ち上げ工程S3を実行する。この持ち上げ工程S3では、下半ハウジング41lにパッド押え治具60が取り付けられ、パッド押え61の接触部材62が軸受パッド55に接触している状態で、クレーン又はチェーンブロックを操作して、ガスタービンロータ1を持ち上げる。
【0050】
以上で、ガスタービンロータ1の持ち上げが完了する。なお、持ち上げ工程S3の前であれば、持ち上げ準備工程S2を治具配置工程S1の前に実行してもよい。
【0051】
軸受装置40では、軸受パッド55とガスタービンロータ1との間に存在する油により、軸受パッド55がガスタービンロータ1に吸着する力が作用する。このため、ガスタービンロータ1を単に持ち上げると、ガスタービンロータ1と共に軸受パッド55が持ち上がることがある。さらに、ガスタービンロータ1を持ち上げている途中で、ガスタービンロータ1に付いていた軸受パッド55が落下することもある。このように、ガスタービンロータ1を持ち上げている途中で、ガスタービンロータ1に付いていた軸受パッド55が落下すると、クレーン等で吊っているガスタービンロータ1のバランスが崩れ、ガスタービンロータ1が傾くことになる。
【0052】
本実施形態では、パッド押え61が軸受パッド55に接触している状態で、ガスタービンロータ1を持ち上げることで、このガスタービンロータ1の持ち上げ過程で、このガスタービンロータ1と共に軸受パッド55が持ち上がることを回避できる。このため、本実施形態では、ガスタービンロータ1の持ち上げ過程で、ガスタービンロータ1のバランスが崩れて、ガスタービンロータ1が傾くことを回避できる。
【0053】
本実施形態では、治具配置工程S1で、パッド押え61の端接触面64eを軸受パッド55の周方向端面57に接触させておくと共に、パッド押え61の外周接触面64oを軸受パッド55の外周面56oに接触させておく。このため、本実施形態で、軸受パッド55がピボット54で揺動可能に支持されている場合でも、持ち上げ工程S3で、ピボット54により揺動可能に支持されている軸受パッド55を揺動させずに、この軸受パッド55を安定した状態で押えておくことができる。
【0054】
「変形例」
以上の実施形態におけるパッド押え61は、接触面64として端接触面64eと外周接触面64oとを有する。しかしながら、パッド押え61は、接触面64として端接触面64eのみを有し、外周接触面64oは無くてもよい。但し、本実施形態にように、軸受パッド55がピボット54で揺動可能に支持されている場合には、パッド押え61は、接触面64として端接触面64eと外周接触面64oとを有することが好ましい。
【0055】
本実施形態のパッド押え61は、接触部材62と連結部材であるジャッキボルト70とを有する。しかしながら、パッド押え61は、接触部材62のみを有し、連結部材は無くてもよい。この場合、接触部材は、支持部材74に直接取り付けられることになる。このように、接触部材を支持部材74に直接取り付ける場合には、支持部材74を下半ハウジング41lに取り付けた際、接触部材の接触面64が確実に軸受パッド55の周方向端面57に接触するよう、接触部材を精密に加工する必要がある。
【0056】
以上の実施形態における持ち上げ準備工程S2では、ガスタービンロータ1に吊り帯等81をまわして、この吊り帯等81をクレーンやチェーンブロックにおける吊りフック82に掛ける。さらに、以上の実施形態における持ち上げ工程S3では、クレーン又はチェーンブロックを操作して、ガスタービンロータ1を持ち上げる。しかしながら、持ち上げ準備工程S2では、ガスタービンロータ1を持ち上げ可能な複数のジャッキを、ガスタービンロータ1の下に配置し、持ち上げ工程S3では、これら複数のジャッキを操作して、ガスタービンロータ1を持ち上げてもよい。
【0057】
以上の実施形態における軸受装置40は、下半ハウジング41l内に配置されている軸受パッド55の他に、上半ハウジング41u内に配置されている軸受パッド55を有する。しかしながら、軸受装置は、上半ハウジング41u内に配置されている軸受パッド55を有していなくてもよい。
【0058】
また、本開示は、以上で説明した各実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0059】
「付記」
以上の実施形態及び変形例におけるパッド押え治具60は、例えば、以下のように把握される。
【0060】
(1)第一態様におけるパッド押え治具は、以下の回転機械における軸受パッドを押えることができる。
この回転機械は、水平方向に延びる軸線Arを中心として回転可能なロータ1と、前記ロータ1を回転可能に支持する軸受装置40と、を備える。前記軸受装置40は、前記ロータ1の外周面に対向可能な軸受パッド55と、前記軸受パッド55を覆う軸受ハウジング41と、を有する。前記軸受ハウジング41は、前記軸線Arよりも上側の部分を形成し、前記軸線Arに対して垂直な断面が半円弧状を成す上半ハウジング41uと、前記軸線Arよりも下側の部分を形成し、前記軸線Arに対して垂直な断面が半円弧状を成す下半ハウジング41lと、前記上半ハウジング41uと前記下半ハウジング41lとを接続するハウジング接続ボルト46を含むハウジング接続具45と、を有する。前記下半ハウジング41lは、前記軸線Arに対する周方向Dcの端に形成され前記軸線Arに対する径方向Drであって水平方向に広がり、上を向いている下継ぎ手面43lと、前記下継ぎ手面43lから下方に延び、前記上ボルト孔44uと上下方向で対向し、前記ハウジング接続ボルト46が挿通される下孔44lと、を有する。前記軸受パッド55は、前記軸線Arに対して垂直な断面が円弧状を成し、前記下半ハウジング41l内に配置されている。前記軸受パッド55は、前記径方向Drにおける径方向内側Driと径方向外側Droとのうちで前記径方向内側Driを向いて前記ロータ1の外周面に対向可能なロータ対向面56iと、前記径方向外側Droを向き前記ロータ対向面56iと背合わせの関係にある外周面56oと、前記ロータ対向面56iにおける前記周方向Dcの端と前記外周面56oにおける前記周方向Dcの端とを接続する周方向端面57と、を有する。
パッド押え治具60は、回転機械を分解する過程で、前記上半ハウジング41uが前記下半ハウジング41lから外されている状態で、前記ロータ1を持ち上げる際に用いられる。
このパッド押え治具60は、前記軸受パッド55の前記周方向端面57に接触可能な接触面64を有するパッド押え61と、前記パッド押え61を支持する支持部材74と、前記支持部材74に取り付けられ、前記下孔44lに挿通されて前記下半ハウジング41lに取り付け可能な取付ボルト78を含む取付具77と、を備える。
【0061】
本態様のパッド押え治具60を用いて、ロータ1を持ち上げる際には、まず、支持部材74に取り付けられている取付具77を下半ハウジング41lに取り付けると共に、パッド押え61を軸受パッド55の周方向端面57に接触させる。次に、パッド押え61が軸受パッド55に接触している状態で、ロータ1を持ち上げる。
【0062】
軸受装置40では、軸受パッド55とロータ1との間に存在する油により、軸受パッド55がロータ1に吸着する力が作用する。このため、ロータ1を単に持ち上げると、ロータ1と共に軸受パッド55が持ち上がることがある。さらに、ロータ1を持ち上げている途中で、ロータ1に付いていた軸受パッド55が落下することもある。このように、ロータ1を持ち上げている途中で、ロータ1に付いていた軸受パッド55が落下すると、クレーン等で吊っているロータ1のバランスが崩れ、ロータ1が傾くことになる。
【0063】
本態様では、パッド押え61が軸受パッド55に接触している状態で、ロータ1を持ち上げることで、このロータ1の持ち上げ過程で、このロータ1と共に軸受パッド55が持ち上がることを回避できる。このため、本態様では、ロータ1の持ち上げ過程で、ロータ1のバランスが崩れて、ロータ1が傾くことを回避できる。
【0064】
(2)第二態様におけるパッド押え治具は、
前記第一態様におけるパッド押え治具60において、前記パッド押え61の前記接触面64は、前記軸受パッド55の前記周方向端面57に接触可能な端接触面64eと、前記端接触面64eが広がっている方向に対して交差する方向に広がって、前記軸受パッド55の前記外周面56oに接触可能な外周接触面64oと、を有する。
【0065】
本態様では、パッド押え61の端接触面64eを軸受パッド55の周方向端面57に接触させておくと共に、パッド押え61の外周接触面64oを軸受パッド55の外周面56oに接触させておく。このため、本態様で、軸受パッド55がピボット54等で揺動可能に支持されている場合でも、ロータ1の持ち上げ過程で、この軸受パッド55が揺動せずに、この軸受パッド55を安定した状態で押えておくことができる。
【0066】
(3)第三態様におけるパッド押え治具は、
前記第一態様又は前記第二態様におけるパッド押え治具60において、前記パッド押え61は、前記接触面64を含む部分が銅又は銅を主成分とする金属で形成されている。
【0067】
本態様で、接触面64を含む部分が銅又は銅を主成分とする柔らかい金属で形成されているため、このパッド押え61を軸受パッド55に接触させても、軸受パッド55の傷付きを抑制することができる。
【0068】
(4)第四態様におけるパッド押え治具は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様におけるパッド押え治具60において、前記パッド押え61は、前記接触面64を有する接触部材62と、前記接触部材62を前記支持部材74に連結する連結部材70と、を有する。
【0069】
(5)第五態様におけるパッド押え治具は、
前記第四態様におけるパッド押え治具60において、前記連結部材70は、雄ネジ71が形成されているジャッキボルト70である。前記接触部材62は、前記ジャッキボルト70の長手方向Dlにおける、前記ジャッキボルト70の先端部72に取り付けられている。前記支持部材74は、前記ジャッキボルト70の前記雄ネジ71が捩込可能な雌ネジ孔75を有する。
【0070】
本態様では、支持部材74の雌ネジ孔75に対するジャッキボルト70の捩込量を調整することで、接触部材62の接触面64を軸受パッド55の周方向端面57に確実且つしっかりと接触させることができる。
【0071】
(6)第六態様におけるパッド押え治具は、
前記第五態様におけるパッド押え治具60において、前記接触部材62は、前記ジャッキボルト70に対して前記長手方向Dlに相対移動不能で且つ前記ジャッキボルト70の中心軸Acを中心として相対回転可能に、前記ジャッキボルト70に取り付けられている。
【0072】
支持部材74の雌ネジ孔75に対するジャッキボルト70の捩込量を調整している際、このジャッキボルト70はジャッキボルト70の中心軸Acを中心として回転する。本態様では、この際、接触部材62は、ジャッキボルト70の中心軸Acを中心として回転せずに、ジャッキボルト70の長手方向Dlへの移動と一体的に移動する。
【0073】
(7)第七態様におけるパッド押え治具は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様におけるパッド押え治具60において、前記パッド押え61を複数備え、前記支持部材74は、複数の前記パッド押え61を支持する。
【0074】
本態様では、複数のパッド押え61で軸受パッド55を押えておくことができるため、この軸受パッド55を安定した状態で押えておくことができる。
【0075】
以上の実施形態及び変形例におけるロータ持ち上げ方法は、例えば、以下のように把握される。
(8)第八態様におけるロータ持ち上げ方法では、前記第一態様から前記第七態様のうちのいずれか一態様におけるパッド押え治具60を用いて、前記ロータ1を持ち上げる。
このロータ持ち上げ方法では、前記上半ハウジング41uが前記下半ハウジング41lから外されている状態で、前記支持部材74に取り付けられている前記取付具77を前記下半ハウジング41lに取り付けると共に、前記パッド押え61を前記軸受パッド55の前記周方向端面57に接触させる治具配置工程S1と、前記治具配置工程S1後で、前記パッド押え61が前記軸受パッド55に接触している状態で、前記ロータ1を持ち上げる持ち上げ工程S3と、を実行する。
【0076】
本態様のロータ持ち上げ方法を実行することで、ロータ1の持ち上げ過程で、ロータ1のバランスが崩れて、ロータ1が傾くことを回避できる。
【符号の説明】
【0077】
1:ガスタービンロータ(又は、単にロータ)
10:圧縮機
11:圧縮機ロータ
11s:圧縮機ロータ軸
11b:圧縮機動翼列
12:圧縮機ケーシング
13:圧縮機静翼列
14:吸気量調節機
14v:入口案内翼
14d:駆動器
15:吸気ケーシング
15i:吸気内側ケーシング
15o:吸気外側ケーシング
16:吸気ストラット
20:燃焼器
25:中間ケーシング
30:タービン
31:タービンロータ
31s:タービンロータ軸
31b:タービン動翼列
32:タービンケーシング
33:タービン静翼列
35:排気ケーシング
35i:排気内側ケーシング
35o:排気外側ケーシング
36:排気ストラット
40:軸受装置
41:軸受ハウジング
41u:上半ハウジング
41l:下半ハウジング
42o:外周面
42i:内周面
43u:上継ぎ手面
43l:下継ぎ手面
44u:上ボルト孔
44l:下ボルト孔(又は下孔)
44la:ネジ無し下ボルト孔
44lb:ネジ付き下ボルト孔
44ls:雌ネジ
45:ハウジング接続具
46:ハウジング接続ボルト
47:ナット
51:支持環
51u:上支持環
51l:下支持環
52:内周面
54:ピボット
55:軸受パッド
56i:ロータ対向面
56o:外周面
57:周方向端面
60:パッド押え治具
61:パッド押え
62:接触部材
63:接続部材本体
64:接触面
64e:端接触面
64o:外周接触面
65:内周対向面
67:支持部材対向面
68:ボルト穴
69:抜け止めピン
70:連結部材(ジャッキボルト)
71:雄ネジ
72:先端部
73:環状溝
74:支持部材
75:雌ネジ孔
76:取付ボルト孔
77:取付具
78:取付ボルト
79:取付ナット
81:吊り帯等
82:吊りフック
A:空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
Ac:中心軸
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dl:長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7