(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150989
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】支持線分離ツール及び支持線分離方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20241017BHJP
G02B 6/48 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H02G1/02
G02B6/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064080
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220572
【氏名又は名称】株式会社トーツー創研
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】小熊 亨
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 育也
(72)【発明者】
【氏名】馬場 功
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲矢
【テーマコード(参考)】
2H038
5G352
【Fターム(参考)】
2H038CA12
2H038CA65
5G352AB06
5G352AC02
5G352AC04
5G352AL05
5G352AM05
(57)【要約】
【課題】支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成される架空ケーブルが既に架空布設されている状態において前記支持線と前記コアケーブルとを分離するための支持線分離ツール及び支持線分離方法を提供する。
【解決手段】
支持線分離ツール100は、本体10と、カッター20と、けん引リング30とからなる。本体10は架空ケーブルAの断面形状に沿うように覆い摺動する形状となっていて内壁には首部A3を切断するためのカッター20が設けられている。本体10の外壁には架空ケーブルAの長さ方向を中心軸として回動可能なけん引リング30が設けられている。支持線分離ツール100を架空布設されている架空ケーブルAの首部A3にカッター20が当たるように装着し、支持線分離ツール100を架空ケーブルの長さ方向へ摺動させることによってカッター20が首部A3を切断し支持線A1とコアケーブルA2とを分離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成される架空ケーブルが既に架空布設されている状態において前記支持線と前記コアケーブルとを分離するための支持線分離ツールであって、
前記架空ケーブルを覆うように装着されて前記架空ケーブルの長さ方向へ摺動可能な本体と、
前記本体の内壁部分に前記首部を切断するためのカッターと、
が設けられていることを特徴とする支持線分離ツール。
【請求項2】
前記本体の外壁に溝部が設けられ、リング形状のけん引リングが前記架空ケーブルの長さ方向を中心軸として前記溝部に回動可能に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の支持線分離ツール。
【請求項3】
前記支持線分離ツールはヒンジによって開閉可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持線分離ツール。
【請求項4】
支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成される架空ケーブルが既に架空布設されている状態において前記支持線と前記コアケーブルとを分離するための支持線分離ツールの分離方法であって、
前記架空ケーブルに装着されて前記架空ケーブルの長さ方向へ摺動可能な本体と、 前記本体の内壁部分に前記首部を切断するためのカッターと、が設けられた支持線分離ツールの前記支持線と前記コアケーブルとの分離方法は、
前記支持線分離ツールを架空布設されている前記架空ケーブルの前記首部に前記支持線分離ツールの前記カッターが当たるように装着し、
前記支持線分離ツールを前記架空ケーブルの長さ方向へ摺動させることによって前記カッターが前記首部を切断し前記支持線と前記コアケーブルとを分離すること、
を特徴とする支持線分離ツールの分離方法。
【請求項5】
前記本体の外壁に溝部が設けられ、リング形状のけん引リングが前記架空ケーブルの長さ方向を中心軸として前記溝部に回動可能に嵌合され、
前記けん引リングを前記架空ケーブルの長さ方向へけん引することにより前記首部のねじれに対して前記本体が回転することにより前記カッターが前記首部を追従可能に切断することを特徴とする請求項4に記載の支持線分離ツールの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成される架空ケーブルが既に架空布設されている状態において前記支持線と前記コアケーブルとを分離するための支持線分離ツール及び支持線分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電柱にメタルケーブルや光ケーブルを架空布設する際には支持線を利用することが一般的であり、ケーブルの種類によっては支持線とメタルケーブルや光ケーブルであるコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成されている支持線一体型の架空ケーブルを使用することも非常に多い。
【0003】
支持線一体型の架空ケーブルは特許文献1や特許文献2のように、支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成されている。これらの支持線一体型の架空ケーブルの支持線部分を利用して支持線の無いケーブルを布設することもままある。つまり支持線一体型の架空ケーブルに他のケーブルがぶら下がる状態で布設されている状態となる。なお、この場合スパイラルハンガーも併用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3571500号公報
【特許文献2】特許第6748546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の状態において、支持線一体型の架空ケーブルのコアケーブル部分が不要となり除去する場合、支持線一体型の架空ケーブルの支持線部分を再利用することは考慮されておらず、従来では既にこの支持線一体型の架空ケーブルに他のケーブルがぶら下がっているため新たに支持線のみを布設してから支持線一体型の架空ケーブルを切断除去する必要があり作業が非常に煩雑となるとともに、コストもアップしてしまう。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みなされたものであり、支持線一体型の架空ケーブルのコアケーブル部分が不要となり除去する必要がある場合、支持線一体型の架空ケーブルのコアケーブル部分のみを除去することで支持線を残してそのまま活用することにより新たな支持線の布設を不要とすることのできる支持線分離ツール及びその支持線分離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決したものであって、請求項1の発明は、支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成される架空ケーブルが既に架空布設されている状態において前記支持線と前記コアケーブルとを分離するための支持線分離ツールであって、前記架空ケーブルを覆うように装着されて前記架空ケーブルの長さ方向へ摺動可能な本体と、前記本体の内壁部分に前記首部を切断するためのカッターと、が設けられていることを特徴とする支持線分離ツールである。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記本体の外壁に溝部が設けられ、リング形状のけん引リングが前記架空ケーブルの長さ方向を中心軸として前記溝部に回動可能に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の支持線分離ツールである。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記支持線分離ツールはヒンジによって開閉可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持線分離ツールである。
【0010】
また、請求項4の発明は、支持線とコアケーブルとそれらを連結する首部とで一体構成される架空ケーブルが既に架空布設されている状態において前記支持線と前記コアケーブルとを分離するための支持線分離ツールの分離方法であって、前記架空ケーブルに装着されて前記架空ケーブルの長さ方向へ摺動可能な本体と、前記本体の内壁部分に前記首部を切断するためのカッターと、が設けられた支持線分離ツールの前記支持線と前記コアケーブルとの分離方法は、前記支持線分離ツールを架空布設されている前記架空ケーブルの前記首部に前記支持線分離ツールの前記カッターが当たるように装着し、前記支持線分離ツールを前記架空ケーブルの長さ方向へ摺動させることによって前記カッターが前記首部を切断し前記支持線と前記コアケーブルとを分離すること、を特徴とする支持線分離ツールの分離方法である。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記本体の外壁に溝部が設けられ、リング形状のけん引リングが前記架空ケーブルの長さ方向を中心軸として前記溝部に回動可能に嵌合され、前記けん引リングを前記架空ケーブルの長さ方向へけん引することにより前記首部のねじれに対して前記本体が回転することにより前記カッターが前記首部を追従可能に切断することを特徴とする請求項4に記載の支持線分離ツールの分離方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の支持線分離ツールは、支持線一体型の架空ケーブルのコアケーブル部分が不要となり除去する必要がある場合、支持線一体型の架空ケーブルのコアケーブル部分のみを除去することで支持線を残してそのまま活用することにより新たな支持線の布設を不要とすることができるので、作業が簡便に合理化することができ、また、コストダウンにも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の支持線分離ツールの一実施形態の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は背面図である。
【
図2】本発明の支持線分離ツールの一実施形態の斜視図であり、(a)~(c)は閉状態の斜視図、(d)~(f)は開状態の斜視図である。
【
図3】本発明の支持線分離ツールの一実施形態の断面図であり、(a)は(c)のA-A断面図、(b)は(d)のB-B断面図である。
【
図4】本発明の支持線分離ツールの本体の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は背面図である。
【
図5】本発明の支持線分離ツールのけん引リングの図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は斜視図である。
【
図6】本発明の支持線分離ツールの使用方法の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る支持線分離ツールについて、図面を参照して説明する。本実施例では架空ケーブルAは断面円形状の支持線A1と断面円形状のコアケーブルA2とをそれらを連結する首部A3で構成されていて、本実施例では支持線A1が正面視下でコアケーブルA2が上の位置関係となっているが逆となっていてもよいし、断面の形状も円形状で無くともよい。
図1は本発明の支持線分離ツールの一実施形態の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は背面図である。
図2は本発明の支持線分離ツールの一実施形態の斜視図であり、(a)~(c)は閉状態の斜視図、(d)~(f)は開状態の斜視図である。
図3は本発明の支持線分離ツールの一実施形態の断面図であり、(a)は(c)のA-A断面図、(b)は(d)のB-B断面図である。
図4は本発明の支持線分離ツールの本体の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は背面図である。
図5は本発明の支持線分離ツールのけん引リングの図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は斜視図である。
図6は本発明の支持線分離ツールの使用方法の一例である。
【0015】
図1及び
図2は本発明の支持線分離ツール100の一実施形態の図であり、本体10と、カッター20と、けん引リング30とで成り立っている。本体10は架空ケーブルAの断面形状に沿うように覆う形状となっていて、本実施例では正面視逆ひょうたんのような形状となっている。本体10の内壁には首部A3を切断するためのカッター20が設けられている。また、本体10の外壁の進行方向端部近傍には架空ケーブルAの長さ方向を中心軸として回動可能なけん引リング30が設けられている。
【0016】
本体10は
図4のように、架空ケーブルAの断面形状に沿うように覆い摺動する形状となっていて、本実施例では正面視逆ひょうたんのような形状となっている。また、架空ケーブルAに装着するために図によると本体10下部にヒンジ部11が設けられて架空ケーブルAの長さ方向を中心軸として回転開閉可能となっており、本体10上部には開閉のロックを行うためのロック部12が設けられている。また、本体10の外壁の進行方向端部近傍には正面視円形状となるような溝部13が設けられていて、けん引リング30が回動可能に取り付けられるような構造となっている。
【0017】
カッター20は
図3のように本体10の内壁の首部A3が通過する部分を切断する位置に設けられている。カッター20は交換可能な構成となっていて、図には示さないが正面視上下方向を含めた位置調整を可能とする構造としてもよい。架空ケーブルAは本実施例では
図3(c)のように正面視上部分がコアケーブルA2、下部分が支持線A1となる構成であるが逆でもよい。
【0018】
けん引リング30は、リング31とヒンジ部32とロック部33とけん引具34とで構成されている。けん引リング30は本体10の外壁の溝部13に回動可能に取り付けられる。また、本体10と同様に架空ケーブルAに装着するためにヒンジ部32とロック部33が設けられている。支持線分離ツール100で首部A3を切断する際にはけん引具34にロープを取り付けて進行方向へ引くことになる。
【0019】
次に、支持線分離ツール100の使用方法を説明する。使用は通常のケーブル切断と同様に電柱と電柱の間の一束化区間ごとに使用する。まず第1に、
図6(a)のように、支持線分離ツール100を架空された架空ケーブルAに装着する。なお、装着する際には首部A2が予め切断分離されている部分に装着する方が簡便である。また、
図6では作業者が地上にて作業を行っているが、バケット車を利用して作業してもよい。
【0020】
第2に、
図6(b)のように、支持線分離ツール100のけん引リング30に予め結んでおいたロープCをスパイラルハンガーB内へ配線する。第3に、
図6(c)のように、ロープCをけん引することによって支持線分離ツール100が架空ケーブルAを摺動しながら首部A2を切断する。これによって支持線A1を残したままコアケーブルA2を分離除去することができる。なお、架空ケーブルAは構造上や経年劣化等で支持線A1とコアケーブルA2とがねじれている場合もあるが、本発明ではけん引リング30がケーブル長さ方向(けん引方向)を中心軸として回動可能な構成となっているつまり本体10が架空ケーブルAのねじれに追従可能であるため、ロープCを一定方向にけん引していてもカッター20が確実に首部A3部分を切断することができるという優れた構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の支持線分離ツール100は支持線A1とコアケーブルA2とをそれらを連結する首部A3で構成された架空ケーブルAを架空で分離するためのツールであるが、それに限らず架空されていないケーブルの分離にも利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
A 架空ケーブル
A1 支持線
A2 コアケーブル
A3 首部
B スパイラルハンガー
C ロープ
100 支持線分離ツール
10 本体
11 ヒンジ部
12 ロック部
13 溝部
20 カッター
30 けん引リング
31 リング
32 ヒンジ部
33 ロック部
34 けん引具