(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015099
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】炎症性サイトカインを阻害するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 5/113 20060101AFI20240125BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20240125BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240125BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C07K5/113 ZNA
A61K38/07
A61P29/00
A61P27/02
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201678
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2020552781の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】62/649,940
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520370751
【氏名又は名称】エス.アイ.エス. シュロフ イノベイティブ サイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プリモア,ナフタリ
(57)【要約】
【課題】炎症性サイトカインの放出に関連する症状を改善するための組成物および方法の提供。
【解決手段】炎症性サイトカインまたはメディエーターの放出を低減するかその活性を阻害することができる、配列番号1に示される配列を有するペプチドまたはそのナトリウム塩などの特定のテトラペプチドを含む、医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示される配列を有するペプチドの単離されたナトリウム塩。
【請求項2】
活性成分としての請求項1の単離されたナトリウム塩と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物
【請求項3】
約4~約8の範囲内のpHを有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
吸入投与、局所投与、点眼投与、経口投与、経鼻投与、および非経口投与からなる群より選択される経路を介した投与用に製剤化されている、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
液体溶液として、クリームとして、軟膏として、ペーストとして、ローションとして、ゲルとして、または点眼剤の形態で、製剤化されている、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ペプチドの単離されたナトリウム塩を0.1~5%w/w含むクリームとして製剤化されている、請求項2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性眼障害を含むがこれに限定されない炎症状態における炎症性サイトカインの放出に関連する症状を改善するための医薬組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、病原体、損傷した細胞、または刺激物等の有害な刺激に対する体組織の複雑な生物学的反応の一部であり、免疫細胞、血管、および分子メディエーターが関与する防御反応である。炎症の機能は、細胞傷害の最初の原因を排除し、元の傷害および炎症過程から損傷を受けた壊死細胞および組織を一掃し、組織修復を開始することである。
【0003】
炎症の古典的な兆候は、熱、痛み、発赤、腫れ、機能喪失である。炎症は一般的な反応であり、したがって自然免疫のメカニズムと考えられている。
【0004】
炎症性疾患には、炎症を特徴とする様々な障害および状態が含まれる。例えば、アレルギー、喘息、移植拒絶反応、自己免疫疾患、および眼の炎症等がある。
【0005】
炎症性眼障害
ブドウ膜炎は、視力をわずかに低下させ得る、または重度の失明につながり得る炎症性眼疾患の群を表す一般的な用語である。疾患はしばしばブドウ膜と呼ばれる目の一部に影響を及ぼすが、目のこの部分に限定されない。これらの疾患は、水晶体、網膜、視神経、および硝子体にも影響を及ぼし、視力低下または失明を引き起こす。ブドウ膜炎は、眼に生じる問題もしくは疾患によって引き起こされる場合もあり、または体の他の部分に影響を及ぼす炎症性疾患の一部である場合もある。ブドウ膜炎は、急性または慢性となり得、通常は感染性または非感染性に分類される。
【0006】
ドライアイ疾患(DED)またはドライアイ症候群(DES)としても知られる乾性角結膜炎は、何百万人もの人々が眼科治療を求める一般的な眼疾患である。根本的な病因に関係なく、ドライアイは角膜前涙液膜の異常およびそれに続く付属器、結膜、角膜を含む眼の表面全体の炎症性変化に関連していることが示されている。炎症性サイトカイン、例えばIL-6の活性化は、DEDの病態生理学に重要な役割を果たす。
【0007】
ドライアイにおける炎症の役割が認識されて以来、シクロスポリンA、コルチコステロイド、タクロリムス、テトラサイクリン誘導体および自己血清(Michelle Hessen M.,and Karamursel Akpek E J Ophthalmic Vis Res.2014,9(2),240-250)等、様々な炎症経路を阻害するために設計された多くの処置法が研究されてきた。
【0008】
米国特許第4,619,916号は、式pGlu-X-Trp(式中、pGluは、環化グルタミン酸(ピログルタミン酸)であり、Xは、Gly、Val、Glu、Asp、Ser、Ala、Asn、Gln、Ile、Leu、Pro、LysおよびArgであってもよい)の13個のトリペプチドを教示している。この参考文献は、炎症を処置するためのペプチドの使用を説明または示唆していない。
【0009】
米国特許第7,220,725号および国際特許公開WO200212269は、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(ZEP3)およびpGlu-Asn-Trp-Thr-OH(ZEP4)を含む新規ペプチド、ならびに疼痛を処置するためのその使用を教示している。この参考文献は、炎症を処置するためのペプチドの使用を説明または示唆していない。
【0010】
米国特許第9,012,397号およびWO2012/131676は、ペプチドZEP3またはZEP4を含む局所医薬組成物、および皮膚疾患の症状を改善するためのその使用を教示している。この参考文献は、炎症を処置するためのペプチドの使用を説明または示唆していない。
【0011】
Gaynesら(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.54,E-Abstract 5416,2013)は、実験的に誘発された化学的角膜損傷のラットモデルにおける、眼痛の低減および侵害受容の経路の変更におけるペプチドZEP4の鎮痛効果について説明している。この参考文献は、ペプチドの抗炎症活性を説明または示唆していない。
【0012】
本発明は、炎症カスケードに介入することにより炎症状態を改善する新しい安全かつ効果的な処置を改良および開発する継続的な必要性に対処する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、炎症性サイトカインの放出に関連する症状を改善するための組成物および方法を提供する。これらのサイトカインは、多くの炎症性疾患の病因および病状の一部であることが知られている。本発明の組成物での処置に適した疾患および障害には、眼、耳、肺、および腸の炎症性疾患が含まれるが、これらに限定されない。処置に適した疾患および障害にはまた、増悪を防止するために医薬の投与が慢性投与となり得る自己免疫疾患も含まれる。
【0014】
本発明は、インビトロおよびインビボモデルにおいて、ZEP3およびZEP4で示されたペプチドが、特定のサイトカインインターフェロンガンマ(IFN-ガンマ、IFNγ)、インターロイキン1ベータ(IL-1ベータ、IL-1β)、インターロイキン10(IL-10)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ、TNFα)、およびインターロイキン6(IL-6)、ならびにメディエーター反応性酸素種(ROS)およびRANTES(活性化の際に調節され、正常T細胞で発現およびおそらくは分泌される)を含む、炎症性および炎症誘引性メディエーターの発現および/または放出の減弱において予想外に強い活性を示すという発見に一部基づいている。
【0015】
驚くべきことに、炎症カスケードの阻害におけるペプチドの活性は、炎症反応が開始される前にペプチドが投与された場合でも発揮されることが見出された。したがって、ペプチドは、様々な炎症性疾患および障害で誘発される症状を改善または抑制することができ、炎症反応を完全に排除するのに有用となり得る。本発明の組成物は、慢性炎症性疾患の増悪を予防するのに有用となり得ることが想定される。
【0016】
炎症性疾患を処置するための本発明の組成物の使用は、皮膚障害または痛み自体の処置を含まないことを明確に理解されたい。
【0017】
本発明の一の態様によれば、炎症性サイトカインの放出の低減、またはその活性の阻害における使用のための、活性成分としての式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド(式中、X1は、極性アミノ酸残基であり、X2は、芳香族もしくは疎水性アミノ酸残基であり、X3は、正に荷電したアミノ酸残基および極性アミノ酸残基である)、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体;ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、X1は、Asn、Gln、His、Ser、Thr、Tyr、およびCysからなる群から選択され、X2は、Trp、Phe、Tyr、Ala、Ile、Leu、Met、Val、およびGlyから選択され、X3は、Lys、Lys誘導体、Arg、His、Asn、Gln、His、Ser、Thr、およびTyrから選択される。
【0019】
さらに他の実施形態によれば、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド誘導体は、ペプチド配列の遊離官能基に結合したアルキル基を含む。
【0021】
さらに他の実施形態によれば、アルキル基は、アミド結合または連結によって、ペプチドの側鎖またはN末端の遊離アミノ基に結合している。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、アルキルは、C4~C30アルキルである。
【0023】
いくつかの特定の実施形態によれば、C8アルキル基(本明細書ではオクタノイル)は、アミド連結によって、ペプチド配列のLys残基の側鎖またはペプチドの末端アミノ基に結合している。いくつかの実施形態によれば、ペプチドのカルボキシ末端は、修飾されて、例えば、アミド、アルコールまたはエステル末端を形成する。
【0024】
いくつかの特定の実施形態によれば、ペプチドは、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)ならびにその薬学的に許容される誘導体および塩からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、炎症性サイトカインは、TNFアルファ、IL-1ベータ、IL-6、IL-10およびIFNガンマからなる群から選択される。
【0026】
さらに別の態様によれば、本発明は、炎症性メディエーターまたはケモカイン(メディエーターまたはケモカイン)の放出の低減における使用のための、活性成分としての式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド(式中、X1は、極性アミノ酸残基であり;X2は、芳香族または疎水性アミノ酸残基であり;X3は、正に荷電したアミノ酸残基および極性アミノ酸残基から選択される)、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体;ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
いくつかの特定の実施形態によれば、ペプチドは、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)ならびにその薬学的に許容される誘導体および塩からなる群から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、炎症性メディエーターまたはサイトカインは、反応性酸素種(ROS)およびRANTES(活性化の際に調節され、正常T細胞で発現およびおそらくは分泌される)からなる群から選択される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの炎症性または炎症誘引性サイトカインの放出を低減またはその活性を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OH(式中、X1は、極性アミノ酸残基であり;X2は、芳香族または疎水性アミノ酸残基であり;X3は、正に荷電したアミノ酸残基および極性アミノ酸残基から選択される)、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の治療有効量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0030】
別の態様によれば、炎症性メディエーターまたはケモカインの放出を低減する方法であって、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OH(式中、X1は、極性アミノ酸残基であり;X2は、芳香族または疎水性アミノ酸残基であり、X3は、正に荷電したアミノ酸残基および極性アミノ酸残基から選択される)、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の治療有効量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、炎症性メディエーターまたはケモカインは、ROSおよびRANTESからなる群から選択される。
【0032】
さらに別の態様によれば、本発明は、炎症性疾患または障害を処置する方法を提供する。特定の実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、眼の炎症性疾患もしくは障害、耳の炎症性疾患もしくは障害、肺の炎症性疾患もしくは障害、腸の炎症性疾患もしくは障害、または炎症性自己免疫疾患もしくは障害からなる群から選択され、方法は、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(式中、X1は、極性アミノ酸残基であり;X2は、芳香族アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基から選択され;X3は、正に荷電したアミノ酸残基および極性アミノ酸残基から選択される)の治療有効量を投与するステップを含む。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、慢性炎症性疾患を処置する方法を提供する。特定の実施形態によれば、それを必要とする対象に、式Iに従うペプチドの治療有効量を投与するステップは、症状が出現または発症する前でも行われる。慢性炎症性疾患を処置するこれらの方法は、増悪を防ぐのに効果的である。
【0034】
さらに別の態様によれば、本発明は、眼の炎症性疾患または障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(式中、X1は、極性アミノ酸残基であり;X2は、芳香族または疎水性アミノ酸残基であり、X3は、正に荷電したアミノ酸残基および極性アミノ酸残基から選択される)の治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、X1は、Asn、Gln、His、Ser、Thr、TyrおよびCysからなる群から選択され;X2は、Trp、Phe、Tyr、Ala、Ile、Leu、Met、Val、およびGlyから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体、Arg、His、Asn、Gln、His、Ser、Thr、およびTyrから選択される。
【0036】
さらに他の実施形態によれば、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される。
【0037】
いくつかの特定の実施形態によれば、Lys誘導体は、Lys(オクタノイル)である。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド誘導体は、ペプチド配列の官能基に結合したアルキル基を含む。
【0039】
さらに他の実施形態によれば、アルキル基は、アミド結合によって、ペプチドの側鎖または末端のアミノ基に結合している。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、アルキルは、C4~C30アルキルである。
【0041】
いくつかの特定の実施形態によれば、C8アルキル基(本明細書ではオクタノイル)は、アミド結合によって、Lys残基の側鎖またはペプチド配列の末端アミノ基に結合している。
【0042】
いくつかの特定の実施形態によれば、ペプチドは、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)およびその薬学的に許容される塩または誘導体からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、配列番号1および配列番号2から選択される配列で示されるアミノ酸配列を有するペプチドの誘導体または塩を含む。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、方法は、配列番号1および配列番号2から選択される配列で示されるアミノ酸配列を有するペプチドの誘導体または塩を投与することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、配列番号1および配列番号2のいずれか1つに示されるペプチドのナトリウム塩を含む。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、局所投与、点眼投与、経口投与、経鼻投与、および非経口投与からなる群から選択される経路を介した投与用に製剤化される。
【0049】
様々な実施形態によれば、局所投与用の製剤は、クリーム、軟膏、ペースト、ローション、ゲル、または点眼剤の形態から選択され得る。
【0050】
いくつかの特定の実施形態によれば、局所投与で使用するための、配列番号1および2から選択されるペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含むクリーム製剤が提供される。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、クリーム組成物は、0.1~5%w/wのペプチドを含む。他の実施形態によれば、組成物は、0.5~2%のペプチドを含む。さらに他の実施形態によれば、組成物は約1%のペプチドを含む。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、本発明による組成物は、約4~約8のpHを有する。いくつかの実施形態によれば、組成物は、約4.5~約6.5のpHを有する。さらに他の実施形態によれば、組成物は、約7~約9のpHを有する。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、ポリソルベート80、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、二酸化ケイ素、メチルパラベン、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリルからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含む。
【0054】
他の実施形態によれば、眼の疾患または損傷を有する対象に投与するための組成物は、点眼剤、エマルジョン、クリーム、軟膏、スプレーおよびゲルとして使用するための液体溶液または懸濁液からなる群から選択される形態で製剤化される。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、眼の疾患または損傷は、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、感染性眼疾患に関連する炎症症状、アレルギー性眼疾患、角膜炎、結膜炎、マイボーム腺機能不全およびシェーグレン症候群からなる群から選択される炎症性疾患または障害である。
【0056】
さらなる実施形態によれば、医薬組成物は、点眼剤、眼軟膏、アイスプレー、眼科用懸濁液、眼科用エマルジョン、眼科用溶液、眼科用ゲル、または硝子体内注射として製剤化される。
【0057】
さらなる実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、自己免疫疾患または障害である。
【0058】
さらなる実施形態によれば、自己免疫疾患または障害は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、ループス、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。
【0059】
さらなる実施形態によれば、炎症性疾患または障害は炎症性腸疾患である。
【0060】
さらなる実施形態によれば、炎症性腸疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎およびセリアック病からなる群から選択される。
【0061】
さらなる実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、肺の炎症性疾患または障害である。
【0062】
さらなる実施形態によれば、肺の炎症性疾患または障害は、喘息、気管支炎、胸膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症および嚢胞性線維症からなる群から選択される。
【0063】
さらなる実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、耳の炎症性疾患または障害である。
【0064】
さらなる実施形態によれば、耳の炎症性疾患または障害は、耳の感染症、中耳炎、外耳炎、乳様突起炎および耳乳様炎に関連する炎症症状からなる群から選択される。
【0065】
さらなる特徴の実施形態によれば、投与は、点眼投与である。
【0066】
さらなる実施形態によれば、投与は、経口投与である。
【0067】
さらなる実施形態によれば、投与は、経鼻投与である。
【0068】
さらなる実施形態によれば、投与は、非経口投与である。
【0069】
本発明は、炎症性サイトカインおよびメディエーターの放出の低減または活性の阻害において、ならびに炎症性サイトカインおよびメディエーターに関連する疾患または障害の処置において使用するための医薬組成物を提供することにより、現在知られている構成の欠点にうまく対処する。
【0070】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に説明する。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、単なる例示であり、必ずしも限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、例としてのみ本明細書で説明される。ここで特に図面を詳細に参照すると、示されている詳細は、例示のためのものであり、本発明の実施形態の説明に役立つ議論を目的としていることが強調されている。この点で、図面と併せて行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実践され得るかが当業者に明らかとなる。
【0072】
【
図1】炎症誘発性マクロファージ細胞により産生されるTNFαの量に対する、濃度範囲:3.125-100μg/mlのZEP4(Z)の効果を示す棒グラフである。****でマークされた線は、p<0.0001での統計的に有意な差を表す。
【
図2】リポ多糖(LPS、100ng/ml)およびパルミチン酸(PA、100、200または400μM)で処理した炎症誘発性マクロファージ細胞により産生されるTNFαの量に対するZEP4(Z)(50μg/ml)の効果を示す棒グラフである。****でマークされた線は、p<0.0001での統計的に有意な差を表す。
【
図3】炎症誘発性マクロファージ細胞により産生されるTNFαの量に対するZEP3(Z)(濃度範囲:3.125~100μg/ml)の効果を示す棒グラフである。****、***、**、*およびn.s.でマークされた線は、それぞれp<0.0001、p<0.001、p<0.01、P<0.1での統計的に有意な差、および非有意を表す。
【
図4】炎症ニゲリシン誘発性マクロファージ細胞により産生されるIL-1ベータの量に対するZEP4(Z)(50μg/ml)の効果を示す棒グラフである。****でマークされた線は、p<0.0001での統計的に有意な差を表す。
【
図5】炎症誘発性マクロファージ細胞の生存能に対するZEP3の効果を示す棒グラフである。
【
図6】LDHアッセイにより決定された、70mM NaCl(黒い棒)またはNHE20(灰色の棒)に曝露された炎症誘発角膜上皮細胞の生存能に対する様々な濃度でのZEP3の保護効果を示す棒グラフである。****および*でマークされた線は、それぞれp<0.0001およびp<0.05での統計的に有意な差を表す。
【
図7】4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)に24時間曝露された炎症誘発角膜上皮細胞により産生されるIL-6の量に対する、様々な濃度のZEP3の効果を示す棒グラフである。*でマークされた線は、p<0.05での統計的に有意な差を表す。
【
図8】は、4-HNEに24時間曝露された炎症誘発角膜上皮細胞により産生される反応性酸素種(ROS、DCFDAキットで測定される)の量に対する様々な濃度でのZEP3の保護効果を示す棒グラフである。****、***および**でマークされた線は、それぞれp<0.0001、p<0.001およびp<0.01での統計的に有意な差を表す。
【
図9】異なる濃度でのZEP3、ならびに培地、刺激およびデキサメタゾン対照による刺激に応答した、4人のヒトドナーからの正常なPBMCにおけるIFN-γ産生を説明する図である。統計的に有意な差は、*p<0.05、**p<0.01で表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図10】異なる濃度でのZEP3、ならびに培地、刺激およびデキサメタゾン対照による刺激に応答した、4人のヒトドナーからの正常なPBMCにおけるIL-10の産生を説明する図である。統計的に有意な差は、*p<0.05、**p<0.01で表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図11】異なる濃度でのZEP3、ならびに培地、刺激およびデキサメタゾン対照による刺激に応答した、4人のヒトドナーからの正常なPBMCにおけるIL-1B産生を説明する図である。統計的に有意な差は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001として表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図12】異なる濃度でのZEP3、ならびに培地、刺激およびデキサメタゾン対照による刺激に応答した、4人のヒトドナーからの正常なPBMCにおけるRANTES産生を表す図である。統計的に有意な差は、*p<0.05として表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図13A-13B】マウスオキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎モデルにおける、賦形剤およびベタメタゾン対照と比較したZEP3、ZEP3Na(
図13A)またはZEP4(
図13B)で局所的に処置されたマウスの背中の皮膚の厚さの経時的変化を示すグラフである。統計的に有意な差は、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.001として表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図14A-14B】マウスオキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎モデルにおける、賦形剤およびベタメタゾン対照と比較したZEP3、ZEP3Na(
図14A)またはZEP4(
図14B)で局所的に処置されたマウスの、ベースライン補正された右耳の厚さの経時的変化を説明する図である。
【
図15A-15B】マウスオキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎モデルにおける、賦形剤およびベタメタゾン対照と比較したZEP3、ZEP3Na(
図15A)またはZEP4(
図15B)で局所的に処置されたマウスの経時的な紅斑スコアの推移を示すグラフである。統計的に有意な差は、*p<0.05、**p<0.001、****p<0.0001として表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図16A-16B】マウスオキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎モデルにおける、賦形剤およびベタメタゾン対照と比較したZEP3、ZEP3Na(
図16A)またはZEP4(
図16B)で局所的に処置されたマウスの経時的な鱗屑スコアの変化を表す図である。統計的に有意な差は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001として表され、一元配置分散分析に続くDunetteの多重比較により刺激対照と比較されている。
【
図17A-17B】マウスオキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎モデルにおける、賦形剤およびベタメタゾン対照と比較したZEP3、ZEP3Na(
図17A)またはZEP4(
図17B)で局所的に処置されたマウスにおける、8日目~28日目の動物の体重の相対的な変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明は、炎症カスケードの阻害に使用するための、特定のペプチドならびにその塩および誘導体を含む医薬組成物に関する。炎症性メディエーターの阻害は、いくつかの炎症性疾患および障害、例えば眼の炎症性疾患および障害の予防および処置において有益である。
【0074】
本明細書に例示されるように、炎症性サイトカイン放出に対する阻害効果は、マウスマクロファージ細胞株、ヒト単球細胞株、ヒトケラチノサイト細胞株、ヒト末梢血単球(ヒトPBMC)およびヒト角膜上皮細胞(HCEC)を含むいくつかのモデルにおいてインビトロで、また炎症性アトピー性皮膚炎(AD)マウスモデルにおいてインビボで実証された。
【0075】
実験的角膜炎症に対するペプチドの有益な効果は、ヒト角膜上皮細胞培養モデルにおいて実証された。
【0076】
本発明の原理および動作は、図面および付随する説明を参照してよりよく理解され得る。
【0077】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載される、または実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実践または実行することができる。また、本明細書で使用される表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0078】
本発明を実践に移している間、発明者らは、驚くべきことに、ペプチドZEP3およびZEP4、ならびにそれらのナトリウム塩形態が、炎症のために誘発されたマクロファージおよび角膜上皮細胞による炎症性サイトカインTNFアルファ、IL-1ベータおよびIL-6の発現を低減し(下記の実施例1~7)、炎症刺激されたヒトPBMCにおけるIFNγ、IL-10、IL-1βおよびRANTESの発現を低下させた(下記の実施例12)ことを発見した。さらに、マウスのアトピー性皮膚炎の炎症モデルにおいて、ZEP4、ZEP3、およびそのナトリウム塩がZEP3Naを形成し、インビボで臨床病変を大幅に低減した(下記の実施例13)。結果は、本発明のペプチドが炎症を独自に阻害または予防できることを示している。
【0079】
したがって、本発明の一態様によれば、炎症性疾患または障害の病因または病状に関与する少なくとも1つのサイトカインまたはメディエーターの放出を低減する、またはその活性を阻害するための医薬組成物が提供される。医薬組成物は、活性成分としてのペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む。ペプチドは、配列番号1および2のいずれかに示されるアミノ酸配列を有し、またはその薬学的に許容される塩である。
【0080】
したがって、本発明は、特定のサイトカインおよびメディエーターの過剰な放出または活性に関連する炎症性病状を改善および処置するための方法を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、炎症性病状は、少なくとも1つのサイトカインまたはメディエーターの過剰放出または活性に関連する疾患または障害であり、少なくとも1つのサイトカインまたはメディエーターは、IFN-ガンマ、IL-1ベータ、IL-10、TNFアルファ、IL-6、ROSおよびRANTESからなる群から選択される。
【0082】
本明細書で使用される「炎症性疾患または障害」という語句は、炎症に関連する疾患、状態または障害を指す。本明細書で使用される「炎症」という用語は、対象の免疫系が組織の損傷、感染、抗原負荷等に対する応答を調整するプロセスを指す。炎症は、組織への血液供給の増加、組織の毛細血管透過性の増、および/または白血球の組織への移動の増加加に関連し得る。
【0083】
炎症性サイトカインは主に活性化マクロファージによって産生され、炎症反応の上方調節に関与する。
【0084】
炎症は、対象から得られた生体試料中のTNFα、IL-1-アルファ、IL-1-ベータ、IFN-ガンマおよびIL-6等(ただしこれらに限定されない)の炎症性サイトカインのレベルの上昇によって診断され得る。生物学的試料は、例えば、涙、血液、血清、血漿、尿、痰、唾液、糞便、精液、髄液、骨髄、リンパ液、またはCSF、皮膚の外分泌物、呼吸器、腸管、および泌尿生殖器系、乳、人間の臓器または組織、洗浄により得られた試料、複数回の滲出液、インビトロまたはエクスビボの細胞培養の試料、ならびに細胞培養成分であってもよい。
【0085】
反応性酸素種(ROS)は、炎症性疾患の進行に重要な役割を果たす、重要なシグナル伝達分子である。炎症部位での多形核好中球(PMN)により増大したROS生成は、内皮機能障害および組織損傷を引き起こす。炎症状態では、PMNによって生成される酸化ストレスが内皮間接合部の開口をもたらし、内皮バリアを通過する炎症細胞の移動を促進する。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、目の炎症性疾患または障害である。炎症性眼疾患または障害は、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、ウイルス性、細菌性または真菌性眼感染に関連する炎症症状、アレルギー性眼疾患、角膜炎、結膜炎、マイボーム腺機能不全およびシェーグレン症候群であってもよいが、これらに限定されない。
【0087】
一実施形態において、眼の炎症性疾患または障害は、ブドウ膜炎である。本明細書で使用される「ブドウ膜炎」という用語は、強膜と、虹彩、毛様体、および脈絡膜を含む網膜との間の層であるブドウ膜の炎症を指す。ブドウ膜炎は、一般に虹彩炎、扁平部炎、脈絡膜炎、脈絡網膜炎、前部ブドウ膜炎、および後部ブドウ膜炎とも呼ばれる。ブドウ膜炎の最も一般的な形態は前部ブドウ膜炎であり、通常は虹彩に隔離されている目の前部の炎症を伴う。この状態は、しばしば虹彩炎と呼ばれる。
【0088】
一実施形態において、眼の炎症性疾患または状態は、ドライアイ症候群である。本明細書で使用される「ドライアイ症候群(DES)」という語句は、罹患したまたは機能不全の涙腺機能単位に起因する変化した涙液組成の状態を指す。証拠は、炎症が涙分泌腺の構造変化を引き起こすことを示唆している。涙腺機能不全、蒸発の増加、および/またはクリアランス不良から生じる涙液組成の変化は、眼の表面に炎症誘引作用を及ぼす。この炎症は、部分的には、刺激症状、眼表面上皮疾患、およびドライアイの角膜上皮バリア機能の変化の原因となる。DESの抗炎症療法は、ドライアイで確認されている炎症性メディエーター/経路の1つ以上を標的とする。DESはまた、ドライアイ疾患(DED)、乾性角結膜炎および乾性角膜炎として当業者に知られている。
【0089】
一実施形態において、眼の炎症性疾患または状態は、シェーグレン症候群に関連する。本明細書で使用される「シェーグレン症候群」という語句は、涙の減少、口渇、および他の粘膜乾燥を特徴とする全身性自己免疫炎症性障害を指し、しばしば関節リウマチ等の自己免疫リウマチ障害に関連する。目および口の乾燥は、この症候群の最も一般的な症状である。症状は単独で発生することもあれば、関節リウマチまたは他の結合組織疾患に関連する症状を伴うこともある。唾液腺の関連する拡大が生じる可能性もある。他の臓器が影響を受ける可能性もある。この症候群は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性筋炎、およびその他の疾患に関連する可能性もある。
【0090】
いくつかの実施形態において、眼の炎症性疾患または状態は、眼が関与する手順、例えば、角膜移植/角膜形成術、角膜プロテーゼ手術、ラメラ移植、または選択的内皮移植に起因する。
【0091】
いくつかの実施形態において、眼の炎症性疾患または状態は、これらに限定されないが、角膜眼表面炎症状態、角膜新血管形成、末梢潰瘍性角膜炎および微生物性角膜炎を含む角膜炎、結膜炎、または類天疱瘡症候群等、眼の表面に影響を及ぼしている。
【0092】
いくつかの実施形態において、眼の炎症性疾患または状態は、これらに限定されないが、交感神経性眼瞼下垂、フォクト-小柳-原田(VKH)症候群、バードショット網膜脊髄症、眼瘢痕性類天疱瘡(OCP)、シェーグレン症候またはフックスの異時性虹彩毛様体炎等の眼を冒す自己免疫障害である。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、自己免疫疾患または障害である。自己免疫疾患または障害は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、尋常性天疱瘡、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、ループスおよびシェーグレン症候群であってもよいが、これらに限定されない。
【0094】
一実施形態において、自己免疫疾患または障害は、関節リウマチである。本明細書で使用される「関節リウマチ」という語句は、複数の関節が炎症を起こす慢性の自己免疫障害を指す。滑膜の関節ライニングの炎症は、関節の痛みおよび硬直を伴い、通常は骨および関節の破壊、変形、機能障害、さらには死をもたらす。
【0095】
一実施形態において、自己免疫疾患または障害は、ループスである。本明細書で使用される「ループス」という用語は、皮膚、関節および内臓を含む多くの臓器系に影響を及ぼし得るエリテマトーデスと呼ばれる慢性の炎症性自己免疫障害を指す。ループスは、全身性ループス、ループス腎炎、およびループス脳炎を含む、いくつかの特定のタイプのループスを含む一般用語である。全身性ループス(SLE)では、体の自然な防御が体に逆らい、不正な免疫細胞が体の組織を攻撃する。体の血液細胞、器官、および組織に反応し得る抗体が産生される場合がある。この反応は影響を受けた系を攻撃する免疫細胞をもたらし、慢性疾患を引き起こす。ループス腎炎はループス糸球体疾患とも呼ばれ、通常はSLEの合併症である腎障害であり、糸球体への損傷および進行性の腎機能の喪失を特徴とする。ループス脳炎は、脳および/または中枢神経系の炎症であるSLEの別の合併症を指す。
【0096】
本発明の一実施形態において、炎症性疾患または障害は、変形性関節症(OA)である。OAはまた、肥大性変形性関節症、変形性関節症、および変性関節疾患とも呼ばれる。OAは骨格関節の慢性変性疾患であり、すべての年齢の成人における特定の関節、通常は膝、腰、手関節および脊椎に影響を及ぼす。OAは、「潰瘍」またはクレーターの関連する発達を伴う関節軟骨の変性および薄化、骨棘形成、縁における骨の肥大、ならびに滑膜の変化および罹患した関節の拡大を含むいくつかの症状を特徴とする。さらに、変形性関節症は、特に長時間の活動の後、痛みおよび硬直を伴う。本発明のペプチド、その塩および誘導体、ならびにそれらを含む医薬組成物は、変形性関節症を処置するために使用することができる。変形性関節症の特徴的なX線撮影の特徴には、関節腔狭窄、軟骨下硬化、骨増殖症、軟骨下嚢胞形成、緩い骨体(または「関節ネズミ」)が含まれる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、炎症性腸疾患である。炎症性腸疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎およびセリアック病であってもよいが、これらに限定されない。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、肺の炎症性疾患または障害である。肺の炎症性疾患または障害は、喘息、気管支炎、胸膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症および嚢胞性線維症であってもよいが、これらに限定されない。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、耳の炎症性疾患または障害である。耳の炎症性疾患または障害は、耳の感染症、中耳炎、外耳炎、乳様突起炎および耳乳様炎に関連する炎症症状であってもよいが、これらに限定されない。
【0100】
本発明はまた、ROS、RANTESおよび単球走化性タンパク質-1(MCP-1)を含むがこれらに限定されない炎症性メディエーターおよびケモカインの過剰放出に関連する疾患または障害の処置に使用するための医薬組成物を提供する。本発明の組成物で処置可能なROSの放出に関連する炎症性疾患には、肺疾患、心血管疾患、腎臓病関連血管石灰化および炎症性代謝疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
ケモカインRANTESおよびMCP-1は、肺アレルギー性炎症、肺白血球浸潤、気管支過敏症、および喘息の発病における好酸球の動員に関与する。
【0102】
「処置」または「処置する」という用語は、本明細書において互換的に使用され得、疾患もしくは障害の発症を阻害、予防もしくは停止すること、および/または疾患もしくは障害の軽減、寛解または退行を引き起こすことを指す。
【0103】
本発明の組成物および方法に使用されるペプチド、誘導体および塩は、固相および液相ペプチド合成を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法を使用して合成され得る。本発明の組成物に使用されるペプチドのいくつかは、組換え法または組換え法と合成法との組み合わせを使用して生成され得る。
【0104】
本発明の1つの実施形態において、ペプチドは、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1;以下「ZEP3」と呼ばれる)のペプチドでありpGluは、ピログルタミン酸である。ペプチドZEP3は、例えば、米国特許第7,220,725号に記載の手順により生成され得る。
【0105】
本発明の一実施形態において、ペプチドは、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2;以下「ZEP4」と呼ばれる)である。ペプチドZEP4は、例えば、以下の手順により生成され得る。
【0106】
ペプチドZEP4の合成は、クロロトリチルクロリドレジン(CTC)の固体担体上での9-フルオロメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸の逐次合成によって行われる。CTC樹脂(125gr)にFmoc-トレオニン(t-ブチル;79gr)をロードし、ジイソプロピルアミン(DIPEA;160gr)を固体担体へのアミノ酸のカップリング剤として使用する。Fmoc保護基を25%ピペリジンの混合物で除去し、樹脂-ペプチドを濾過してジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄する。第2のアミノ酸Fmoc-Trp(85gr)を、3-[ビス(ジメチルアミノ)メチルイミニル]-3H-ベンゾトリアゾール-1-オキシド、ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)/ヒドロキシベンゾチアゾール(OHBT)]の混合物により活性化し、DIEAの添加により第1のアミノ酸にカップリングする。上記のようにFmoc基を除去し、樹脂-ペプチドを濾過し、ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄する。第3のアミノ酸Fmoc-Asn(trt)(119gr)を、HBTU/HOBTにより活性化し、DIEAの添加によりカップリングする。上記のようにFmoc基を除去し、樹脂-ペプチドを濾過し、ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄する。第4のアミノ酸pGlu(26gr)を、HBTU/HOBTにより活性化し、DIEAによりカップリングする。
【0107】
ペプチド-樹脂をDMFで完全に洗浄した後、IPAで洗浄し、減圧下で乾燥させる。ペプチドを、TFA(95%)およびトリイソプロピルシラン(TIS)(5%)により、室温で2時間、樹脂ならびにThrおよびAsnの保護基から切断する。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を添加することによりペプチドを沈殿させ、濾過し、乾燥させる(収量46gr)。
【0108】
粗生成物(46gr)をアセトニトリル(ACN)/水の混合物に溶解し、分取HPLCシステム(4“、RP C-18 100-120Aポアサイズ)にロードし、相A-水中0.1%TFAおよび相B-ACNからなる勾配系を使用して精製する。溶出は、45分間で相Bを徐々に増加させる(3%から33%)ことにより行う。97%を超える純度の画分を収集する。組み合わせた画分を、相A:0.2%酢酸および相B:ACNからなる勾配を使用して、同じHPLCシステムで溶出する。溶出は、30分間で相Bを徐々に増加させる(10%から40%)ことにより行う。97%を超える純度の画分を収集し、組み合わせ、凍結乾燥する(収量29gr)。最終生成物は、530.5のM.W(MS)および97.3%の純度(HPLC)を有する。
【0109】
開示された組成物および方法に使用されるペプチドの塩および誘導体もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、ペプチド分子のカルボキシル基の塩、およびアミノ基またはグアニジノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、当技術分野で知られている手段によって形成することができ、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄または亜鉛塩等の無機塩、および例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、ピペリジン、プロカイン等で形成される塩等の有機塩基との塩が含まれる。酸付加塩には、例えば、鉱酸、例えば酢酸またはシュウ酸等との塩が含まれる。ここで、塩とは、ハイドロゲル形成および/またはカルシウムミネラルのミネラル化を増強するためにペプチド溶液に添加されるイオン成分も説明している。
【0111】
本明細書で使用される本発明のペプチドの「誘導体」は、当技術分野において知られている手段により、残基またはN末端もしくはC末端基の側鎖として生じる官能基から調製され得る誘導体を包含し、それらが薬学的に許容されるままである限り、すなわち、それらがペプチドの活性を破壊せず、それを含む組成物に毒性特性を付与せず、その免疫原性特性に悪影響を及ぼさない限り、本発明に含まれる。
【0112】
これらの誘導体には、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは一級もしくは二級アミンとの反応により生成されるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えば、アルカノイルまたはアロイル基)との反応により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN-アシル誘導体、あるいはアシル部分との反応により形成される遊離ヒドロキシル基(例えば、セリルまたはスレオニル残基のもの)のO-アシル誘導体が含まれ得る。
【0113】
本発明の1つの実施形態において、ペプチドは、配列番号1に示されるペプチドのナトリウム塩(pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH nNa(式中、nは、1または2である)、以下「ZEP3ナトリウム塩」またはZEP3Naと呼ばれる)である。
【0114】
ZEP3ナトリウム塩は、例えば、以下の手順で生成され得る。
ZEP3(3.1g)を、水中のNaHCO3(100mM)(50g/l)に溶解する。溶液をHPLCイオン交換カラム(2.5×22cm Luna C18、100A、15ミクロン)に注入し、移動相A:H2O中のNaHCO3 2mM;移動相B:CH3CN/H2O(8/2)中のNaHCO3 2mM;および移動相C:水中のNaHCO3 100mMからなる勾配により溶出する。実行当たりのロード:最大5%(W/W%ペプチド/固定相)。流量:4.8cm/分(24ml/分)。勾配の手順は次の通りである:相Cを20分;相Aを5分;相Bを18分;および相Cを7分。生成物を含む画分を収集し、減圧下で濃縮してアセトニトリル(110g/l)を除去し、次いでフリーズドライする[収量2.2g(71%)]。最終生成物は、99.7%の純度(HPLC)、3.1%のナトリウム含有量、および50mg/mlの水に対する溶解度を有する。
【0115】
本発明の一実施形態において、ペプチドは、配列番号2に記載されるペプチドのナトリウム塩(pGlu-Asn-Trp-Thr-OH.nNa(式中、nは、1または2である);以下「ZEP4ナトリウム塩」またはZEP4Naと呼ばれる)である。ZEP4ナトリウム塩は、例えば、以下の手順で生成され得る。
ZEP4(5g)を、水中のNaHCO3(100mM)(50g/l)に溶解する。溶液をHPLCイオン交換カラム(2.5×22cm Luna C18、100A、15ミクロン)に注入し、移動相A:H2O中のNaHCO3 2mM;移動相B:CH3CN/H2O(8/2)中のNaHCO3 2mM;および移動相C:水中のNaHCO3 100mMからなる勾配により溶出する。実行当たりのロード:最大5%(W/W%ペプチド/固定相)。流量:4.8cm/分(24ml/分)。勾配の手順は次の通りである:相Cを20分、次いで相Aを5分、次いで相Bを20分、および相Cを10分。生成物を含む画分を収集し、減圧下で濃縮してアセトニトリル(110g/l)を除去し、次いでフリーズドライする[収量4g(80%)]。最終生成物は、97.5%の純度(HPLC)、2.5%のナトリウム含有量、50mg/mlの水に対する溶解度を有する。
【0116】
本発明のペプチドは、それ自体で、または医薬組成物の一部(活性成分)として治療に使用され得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、生理学的に好適な担体および賦形剤等の他の化学成分を含む、本明細書に記載の1つまたは複数の活性成分の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0118】
以下「生理学的に許容される担体」および「薬学的に許容される担体」という語句は、互換的に使用され得、生物に著しい刺激を引き起こさず、投与される化合物の生物学的活性および特性を抑制しない担体または希釈剤を指す。アジュバントはこれらの語句に含まれる。
【0119】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプンの種類、多糖、シクロデキストリン、懸濁剤、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、イオン性または非イオン性界面活性剤、可溶化剤、乳化剤、例えばレシチン、浸透促進剤、ポリカルボン酸、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ワックス、鉱油、プロピレングリコール、ならびにポリエチレングリコールが含まれる。
【0120】
薬物の製剤化および投与の技術は、参照により本明細書に組み込まれる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.,Easton,PAの最新版に見出すことができる。
【0121】
好適な投与経路には、例えば、眼内、局所、経口、直腸、経粘膜、経鼻、腸、または非経口送達(筋肉内、皮下および髄内注射、ならびに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む)が含まれる。
【0122】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、懸濁、可溶化、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、封入、噴霧乾燥、または凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
【0123】
したがって、本発明による使用するための医薬組成物は、医薬として使用され得る調製物への活性成分の処理を容易にする、賦形剤および助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して従来の方法で製剤化され得る。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0124】
本明細書に記載の医薬組成物は、点眼投与用に製剤化され得る。本明細書で使用される「点眼投与」という語句は、外眼部(例えば、結膜嚢)または硝子体内への本発明のペプチドまたは医薬組成物の投与を指す。点眼投与に好適な剤形は、点眼剤、眼軟膏、アイスプレー、眼科用懸濁液、眼科用エマルジョン、眼科用溶液、眼科用ゲル、または硝子体内注射であってもよいが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書に記載の医薬組成物は、局所投与用に製剤化され得る。局所投与に好適な剤形は、液滴、液体洗浄剤、ゲル、軟膏、エマルジョン、懸濁液、ローション、スプレー、噴霧液体、坐剤、クリーム、粉末、フォーム、結晶およびリポソームであってもよいが、これらに限定されない。
【0126】
注射の場合、医薬組成物の活性成分は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液、または生理食塩緩衝液等の生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化され得る。本発明の医薬組成物に適した1つの投与経路は、Erikksonに対する米国特許第6,525,030号に記載されている骨膜下注射である。経粘膜投与の場合、透過する障壁に適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、一般に当技術分野において知られている。
【0127】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化され得る。そのような担体によって、患者による経口摂取のために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、エマルジョン等として製剤化することが可能になる。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用して作製することができ、得られた混合物を任意選択で粉砕し、所望により好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールもしくはソルビトールを含む糖;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボメチルセルロースナトリウム等のセルロース調製物;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)等の生理学的に許容されるポリマー等の充填剤である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム等の崩壊剤が添加されてもよい。本明細書で使用される場合、「経口投与」という用語は、舌、歯肉、口蓋、舌下、または他の頬側表面を含む、任意の口腔表面への医薬化合物の投与を含む。
【0128】
糖衣錠のコアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を任意に含み得る濃縮糖溶液が使用され得る。識別のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または色素が錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0129】
経口で使用され得る医薬組成物には、ゼラチンでできた押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤でできた軟質密封カプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑剤、および任意選択で安定剤と混合した活性成分を含んでもよい。軟カプセルでは、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール等の好適な液体に溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定剤が添加されてもよい。経口投与用のすべての製剤は、選択された投与経路に好適な投薬量である必要がある。
【0130】
口腔内投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとることができる。
【0131】
経鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための活性成分は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素の使用により、過圧パックまたは噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより、投薬量単位を決定することができる。ディスペンサーで使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプン等の好適な粉末基剤の粉末混合物を含むように製剤化され得る。
【0132】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製剤化されてもよい。注射用の製剤は、単位剤形で、例えば、任意選択で保存剤を添加して、アンプルまたは複数回投与用容器で提供されてもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンであってもよく、また可溶化剤、懸濁剤、安定剤および/または分散剤等の製剤化剤を含んでもよい。
【0133】
非経口投与用の医薬組成物には、水溶性形態の活性製剤の水溶液が含まれる。さらに、活性成分の懸濁液は、適切な油性または水ベース注射用懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油等の脂肪油、もしくはオレイン酸エチル等の合成脂肪酸エステル、トリグリセリドエマルジョンまたはリポソームが含まれる。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。任意選択で、懸濁液はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤、または活性成分の溶解度を増加させる薬剤を含んでもよい。
【0134】
代替として、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない無菌の水ベース溶液を構成するための粉末形態であってもよい。
【0135】
本発明の医薬組成物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリド等の従来の坐剤基剤を使用して、坐剤または停留浣腸剤等の直腸組成物に製剤化されてもよい。
【0136】
本発明に関連する使用に好適な医薬組成物には、活性成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量は、処置されている対象の疾患または障害の症状を予防、緩和、または改善するのに有効な活性成分の量を意味する。
【0137】
治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0138】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療的有効量または用量は、最初にインビトロおよび細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は、所望の濃度または力価を達成するように動物モデルにおいて処方され得る。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0139】
本明細書に記載される活性成分の毒性および治療有効性は、細胞培養または実験動物におけるインビトロでの標準的な製薬手順によって決定することができる。これらのインビトロおよび細胞培養アッセイならびに動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための様々な投与量を処方する際に使用することができる。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて異なり得る。正確な処方、投与経路、および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。(例えば、Fingl,E.et al.(1975),「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1,p.1を参照されたい。)
【0140】
投薬量および間隔は、最小有効濃度(MEC)を達成するのに十分な活性成分のレベルに個別に調整され得る。MECは調製ごとに異なるが、インビトロデータから推定され得る。MECを達成するために必要な投薬量は、個々の特性および投与経路に依存する。検出アッセイは、血漿または組織濃度を決定するために使用され得る。
【0141】
処置される状態の重症度および応答性に依存して、投薬は単回または複数回の投与であってもよく、処置のコースは数日から数週間続いてもよく、または病状の減少が達成されてもよい。
【0142】
投与される組成物の量は、当然ながら、処置されている対象、苦痛の重症度、投与様式、処方する医師の判断等に依存するであろう。
【0143】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の組成物および/または物品は、所望により、活性成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含み得る、FDA承認キット等のパックまたはディスペンサーデバイスで提示され得る。パックは、例えば、ブリスターパック等の金属またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付されてもよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知に対応してもよく、この通知は、組成物または人間もしくは獣医学における投与の形態の、機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方箋医薬品に関する米国食品医薬品局によって承認されたラベル、または承認された製品の添付文書であってもよい。適合性のある医薬担体に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、上記でさらに詳述されるように、適応状態の処置のために調製され、適切な容器(例えば、凍結乾燥バイアル)に入れられ、ラベル付けされ得る。
【0144】
本発明のペプチドまたは医薬組成物は、炎症性サイトカインおよびメディエーターの放出または活性を阻害するために、またそれを必要とする対象に治療有効量のペプチドまたは医薬組成物を提供することにより炎症性疾患または障害を処置するために使用され得る。
【0145】
本明細書で使用される「それを必要とする対象」という語句は、炎症性疾患または障害と診断された哺乳動物の男性または女性対象(例えばヒト)を指す。特定の実施形態において、この用語は、炎症性疾患または障害を発症するリスクがある個体を包含する。対象は、いかなる性別または年齢であってもよく、新生児、乳児、少年、青年、成人および高齢者を含む。
【0146】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0147】
「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する」という用語およびそれらの変化形は、「含むが、それに限定されない」ことを意味する。
【0148】
「~からなる」という用語は、「~を含み、それに限定される」を意味する。
【0149】
「~から本質的になる」という用語は、組成物、方法、または構造が追加の成分、ステップ、および/または部分を含み得るが、ただし追加の成分、ステップ、および/または部分が請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0150】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0151】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の具体的に開示された部分範囲、ならびに1、2、3、4、5および6等のその範囲内の個々の数字を有すると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0152】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、示された範囲内の任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の表示数と第2の表示数との間の「範囲(ranging)/範囲(ranges)」および第1の表示数「から」第2の表示数「までの範囲(ranging)/範囲(ranges)」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の表示数、ならびにそれらの間のすべての分数および整数の数字を含むことを意味する。
【0153】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与の作業を達成するための様式、手段、技術および手順を指し、化学、薬学、生物学、生化学および医学分野の従事者に既知の、または彼らによって既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発される様式、手段、技術および手順を含むが、それらに限定されない。
【0154】
明確にするために別個の実施形態に関連して説明される本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して説明される本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、または本発明の任意の他の説明された実施形態で適切に提供されてもよい。様々な実施形態に関連して説明されるある特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の不可欠な特徴と見なされるべきではない。
【0155】
上記で描写され、以下の特許請求の範囲で請求されるような本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【実施例0156】
ここで、上記の説明と共に本発明を非限定的に説明する以下の実施例を参照する。
【0157】
実施例1-炎症誘発性マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現に対するZEP4の効果
材料および方法
ペプチドpGlu-Asn-Trp-Thr-OH(以下「ZEP4」と呼ばれる、配列番号2)を、上記のように合成した。
【0158】
B6マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現
C57BL/6マウスに由来するマクロファージを、24ウェルプレート(500μlウェル)で200,000細胞/mLの密度で培養し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ある特定の実験群の培養液を100ng/mLのLPSを含む新鮮な培地と交換し、続いて3時間インキュベートした。次いで、ある特定の実験群の培地(LPSを含むまたはLPSを含まない)を、3.125から100μg/mlの範囲の濃度でZEP4を含む新鮮な培地と交換し、続いて1時間インキュベートした。次いで、パルミチン酸(PA、200μM)を適切なウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートし、次いで各ウェルのTNFアルファの量を測定した。表1に、様々な処理群および対照群を示す。処理群におけるTNFアルファ産生の低減は、LPSおよびPA(CLP200)で処理された細胞と比較して計算した。
【0159】
結果
下の
図1および表1は、ZEP4が、LPSおよびパルミチン酸で24時間処理された炎症誘発性マクロファージ細胞によって産生されるTNFアルファの量を大幅に低減したことを示している。3.125μg/mlのZEP4濃度は、TNFアルファ発現の70.6%の低減をもたらした。ZEP4の最も効果的な濃度は50μg/mlで、これによりTNFアルファ発現が77.0%低減した(p<0.0001)。
【表1】
【0160】
実施例2-炎症誘発性マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現に対するZEP4の効果
材料および方法
ペプチドZEP4(配列番号2)を、上記のように合成した。
B6マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現
C57BL/6マウスに由来するマクロファージを、24ウェルプレート(500μlウェル)で200,000細胞/mLの密度で培養し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。インキュベーション後、培地を100ng/mLのLPSを含む新鮮な培地と交換し、3時間インキュベートした。次いで、処理群のLPS含有培地を、50μg/mlのZEP4を含む新鮮な培地と交換し、続いて1時間インキュベートした。次いで、パルミチン酸のアリコート(100、200または400μM)を適切なウェルに加えた。プレートをさらに24時間インキュベートし、各ウェルのTNFアルファの量を測定した。表2に、様々な処理群および対照群を示す。処理群におけるTNFアルファ産生の低減は、PA濃度に応じて、LPSおよびPAで処理された細胞と比較して計算した。
【0161】
結果
下の
図2および表2は、100、200および400μMのパルミチン酸濃度が、それぞれ416、462および593pg/mLのマクロファージTNFアルファ発現を誘導したことを示している。50μg/mlの濃度のZEP4は、すべてのパルミチン酸濃度でマクロファージによるTNFアルファ発現を実質的に低減した(****p<0/0001)。
【表2】
【0162】
実施例3-炎症誘発性マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現に対するZEP3の効果
材料および方法
ペプチドpGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(以下「ZEP3」と呼ばれる、配列番号1)を、米国特許第7,220,725号に記載のように合成した。
【0163】
B6マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現
C57BL/6マウスに由来するマクロファージ細胞を、24ウェルプレート(500μlウェル)で200,000細胞/mLの密度で培養し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ある特定の実験群の培地を100ng/mLのLPSを含む新鮮な培地と交換し、続いて3時間インキュベートした。次いで、ある特定の実験群の培地(LPSを含むまたはLPSを含まない)を、3.125から100μg/mlの範囲の濃度でZEP3を含む新鮮な培地と交換し、1時間インキュベートした。次いで、パルミチン酸(200μM)アリコートを適切なウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートし、次いで各ウェルのTNFアルファの量を測定した。表3に、様々な処理群および対照群を示す。処理群におけるTNFアルファ産生の低減は、LPSおよびPAで処理された細胞と比較して計算した。
【0164】
結果
下の
図3および表3は、ZEP3が、LPSおよびパルミチン酸で処理されたマクロファージ細胞によるTNFアルファ発現を大幅に低減したことを示している。実験条件下でのZEP3の最も効果的な濃度は3.125μg/mlであった(TNFアルファ発現の82.9%の低減;p<0.0001)。ZEP3 ED
50は、51.94μg/mLと推定された。
【表3】
【0165】
実施例4-ニゲリシン活性化マクロファージ細胞によるIL-1ベータの発現に対するZEP4の効果
材料および方法
ペプチドZEP4(配列番号2)を、上記のように合成した。
ニゲリシン活性化マクロファージによるIL-1ベータの発現。
C57BL/6マウスに由来するマクロファージ細胞を、24ウェルプレート(500μlウェル)で200,000細胞/mLの密度で培養し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、培地を100ng/mLのLPSを含む新鮮な培地と交換した。3時間後、LPS含有培地を50μg/mlのZEP4を含む新鮮な培地と交換して処理ウェルに移した。1時間のインキュベーション後、ニゲリシン(20mM)のアリコートをZEP4処理およびLPS対照ウェルに加えた。プレートをさらに24時間インキュベートし、各ウェルのIL-1ベータの量を測定した。表4に、様々な対照群および処理群を示す。処理群におけるTNFアルファ産生の低減は、LPSおよびニゲリシン(LPS+N)で処理された細胞と比較して計算した。
【0166】
結果
以下の
図4および表4は、50μg/mlの濃度のZEP4が、ニゲリシン活性化マクロファージによるIL-1ベータの放出を53.8%低減したことを示している(****p<0.0001)。
【表4】
【0167】
実施例5-炎症誘発性マクロファージ細胞の生存能に対するZEP3の効果
材料および方法
ペプチドZEP3(配列番号1)を、米国特許第7,220,725号に記載のように合成した。
LPSおよびパルミチン酸によって活性化されたマクロファージの生存能に対するZEP3の効果
C57BL/6マウスに由来するマクロファージを、24ウェルプレート(500μlウェル)で200,000細胞/mLの密度で培養し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、培地を100ng/mLのLPSを含む新鮮な培地と交換し、続いて3時間インキュベートした。次いで、処理群のLPS含有培地を、50μg/mlの濃度でZEP3を含む新鮮な培地と交換し、続いて1時間インキュベートした。次いで、パルミチン酸(100、200または400μM)を適切なウェルに加えた。プレートをさらに24時間インキュベートし、LDH細胞毒性アッセイキットを使用して細胞の生存能を推定した。表5に、様々な処理群および対照群を示す。
【0168】
結果
下の
図5および表5は、ZEP3が実験条件下で炎症誘発性マクロファージ細胞の生存能への有意な効果を有さなかったことを示している。
【表5】
【0169】
実施例6-炎症誘発性マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現に対するZEP3前処理の効果
材料および方法
ペプチドZEP3(配列番号1)を、米国特許第7,220,725号に記載のように合成した。
B6マクロファージ細胞によるTNFアルファの発現
C57BL/6マウスに由来するマクロファージを、24ウェルプレート(500μlウェル)で200,000細胞/mLの密度で培養し、37℃および5%CO2のインキュベータに一晩置いた。一晩のインキュベーション後、培地を50μg/mlのZEP3を含む新鮮な培地と交換した。1時間のインキュベーション後、100ng/mLのLPSを適切なウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートし、次いで各ウェルのTNFアルファの量を測定した。
【0170】
結果
下の表6は、LPS誘導の前にZEP3でマクロファージ細胞を前処理すると、細胞によって産生されるTNFアルファが46.7%低減したことを示している(**p<0.05)。
【表6】
【0171】
実施例7-角膜上皮細胞培養ドライアイ疾患モデルにおけるZEP3の抗炎症効果
実験的角膜炎症におけるペプチドの抗炎症効果を、LPS、4-HNE、ニゲリシン等の様々なインフラマソーム誘導物質を使用してドライアイ疾患(DED)をモデル化する細胞培養モデルで試験した。用量-反応モデルを使用して、ヒト初代角膜上皮細胞をペプチドで前処理し、続いてDED誘導物質に曝露した。IL-6の発現、および細胞生存能、ROS産生を測定した。
【0172】
材料および方法
ヒト初代角膜上皮細胞(PCS-700-010;HCEC)を、3から12μg/mlの範囲の濃度のZEP3で2時間処理し、次いでLPS、4-HNEまたはニゲリシンに24時間曝露した。インキュベーション後、細胞培養における炎症誘引性サイトカインIL-6、細胞生存能、および反応性酸素種(ROS)産生のレベルを測定した。
【0173】
結果
図7に示されるように、細胞培養におけるIL-6のレベルは、未処理の細胞培養における52.45±0.9121pg/mLから、ZEP3で処理された細胞における38.08±1.368pg/mLまで減少した(27.4%の低減;P<0.05)。
【0174】
図8に示されるように、細胞培養におけるROSのレベル(相対蛍光単位;RFUとして報告される)は、未処理の細胞培養における27043±952RFUから、ZEP3で処理された細胞培養における13000±800RFUまで減少した(51.9%の低減;P<0.0001)。
【0175】
図6に示されるように、細胞死密度は、未処理の細胞培養における21.125±.942%から、ZEP3で処理された培養細胞における3.625±1.092%まで減少した(82.8%の低減;P<0.0001)。
ZEP3ペプチドは、角膜炎症の低減、HCECの生存能の回復およびROS産生の減少に効果的であり、DEA重症度に重要な因子であると結論付けられる。結果は、様々な病状によって引き起こされるDEDの予防および処置における、このペプチドおよび類似のペプチドの使用の基礎を提供する。
【0176】
上記の実施例1~7は、ペプチドZEP3(配列番号1)およびZEP4(配列番号2)が、炎症誘発性マクロファージおよび角膜上皮細胞における炎症性サイトカインTNFアルファ、IL-1ベータおよびIL-6の発現を低減したことを示す。さらに、ペプチドは、炎症ストレスに曝露された細胞の生存能を回復することができた。結果は、本発明のペプチドがマクロファージおよび角膜上皮細胞における炎症を効果的に阻害または予防することができることを示している。
【0177】
実施例8-ラットのエンドトキシン誘発性ブドウ膜炎(EIU)に対するZEP3、ZEP3ナトリウム塩およびZEP4の効果
De Vos et al.,Exp Eye Res 61:667-675,1995に従ってモデルを実行する。体重180~200gの雄のルイスラットにおいて、0.1mLの滅菌水で希釈された200μgのLPSを足蹠注射することによりEIUを誘発する。次いで、動物を(4ペプチド)×(3つの濃度)=12群に無作為化する。未処置の誘発群を誘発の対照として使用する。
【0178】
EIUのピークの重症度に対応する24時間後に、動物を細隙灯生体顕微鏡で検査する。臨床的な眼の炎症は、次のように0~7のスケールを使用して各眼でスコアリングされる:虹彩充血および前眼房内の細胞は0~2(0=兆候なし;1=軽度;2=重度)、フレア、縮瞳および前房蓄膿は、兆候がない場合は0、存在する場合は1と評価される。可能な最大スコアは7(5つのパラメータスコアの合計)である。
【0179】
実施例9-ドライアイの制御環境チャンバ(CEC)マウスモデルにおけるZEP3、ZEP3ナトリウム塩およびZEP4の効果
モデル手順は、Barabino et al.(IOVS 46:2766-2771,2005)に記載されている。簡潔には、8~12週齢のBALB/cマウスを、相対湿度(RH)、温度(T)、および気流(AF)が制御および監視される制御環境チャンバ(CEC)内で使用する。マウスを無作為化し、ZEP3、ZEPナトリウム塩およびZEP4(試験ペプチド)で処置する。無処置の誘発群を対照として使用する。次いで、マウスをCECに入れ、特定の環境制御条件(RH=18.5%±5.1%、AF=15L/分、T=21-23℃)に3、7、14、および28日間曝露する。対照マウスは、通常の環境(RH=50%~80%、AFなし、T=21~23℃)で同じ期間維持する。綿糸試験、角膜フルオレセイン染色(スコア、0~15)、ならびに上および下の結膜の杯細胞密度による水性涙液産生が、マスクされた観察者によって測定される。
【0180】
実施例10-ドライアイのスコポラミン誘発性ラットモデルにおけるZEP3、ZEP3ナトリウム塩およびZEP4の効果
体重300g~350gの雄のSprague-Dawleyラットを使用する。スコポラミンを充填した浸透圧ポンプ(2ML4 Alzet(登録商標);CedarLane、Burlington、Ontario)を介して動物に継続的および全身的に送達され、肩甲骨の間の中背部に皮下移植されるスコポラミン(Sigma-Aldrich、St.Louis、Mo.)を使用して、ドライアイを誘発する。創傷は、2~3個の創傷クリップで閉じる。手術後、および翌日に再び、動物にカルプロフェン(0.5mg/100g)非ステロイド性抗炎症薬および齧歯類の強力な長時間作用型鎮痛薬を皮下注射する。外科用ポンプの埋め込み前およびイソフルオラン99.9%USP(Abraxis Bioscience、Richmond Hill、Ontario)チャンバでのすべてのエンドポイント試験の前に、動物を麻酔する。スコポラミンは12.5mg/日で送達し、データは14日目に評価する。
【0181】
0.175g/mLの臭化水素酸スコポラミン(Sigma-Aldrich、St.Louis Mo.)の滅菌溶液を生理食塩水(0.9%)中で調製し、0.22umシリンジエンドフィルタ(Millex-GC、Millipore Corp.、Bedford、Mass.)で濾過する。製造者の指示に従って、2ML4 Alzet(登録商標)ポンプに0.175g/mLスのコポラミン溶液2mLを充填する。
【0182】
試験したラットの眼の群は以下の通りである:群1:対照ラット(6匹のラットからのn=12の眼)。群2:ラット(6匹のラットからのn=12の目)にスコポラミンの全身投与によりドライアイを誘導し、フルオレセイン染色の測定を14日目に行った。群3:ラット(7匹のラットからのn=14の目)にスコポラミンの全身投与によりドライアイを誘導し、8日目に生理食塩水で局所的に1回処置する。群4:ラット(7匹のラットからのn=14の目)にスコポラミンの全身投与によりドライアイを誘導し、8日目に試験ペプチドで局所的に1回処置する。
【0183】
エンドポイントは次の通りである:(i)生理食塩水処置対照と比較した、13日目に測定される角膜フルオレセイン染色の低減;(ii)未処置またはスコポラミン処置対照と比較した、13日目に測定される水性涙液産生および水性涙液回転率。
【0184】
実施例11-乾性角結膜炎のウサギモデルにおけるZEP3、ZEP3ナトリウム塩およびZEP4の効果
涙腺排泄管を外科的に閉じ、瞬膜、瞬膜腺、およびハーダー腺を除去することによって、8匹のニュージーランド白ウサギの右眼に乾性角結膜炎(KCS)を形成する。すべてのウサギを8週間未処置のままにし、J.Gilbardら(Ophthalmol.96:677,1978)により説明されるように、0.1~0.4μLの涙液試料を採取して涙液層浸透圧の上昇を測定することによりKCSを確認する。保存された等張緩衝液でUTPまたは類似体の3.0mmol溶液を調製する。ウサギを無作為化し、ZEP3、ZEPナトリウム塩およびZEP4(試験ペプチド)で処置する。未処置群を対照として使用する。処置開始後、最初の投与前の浸透圧測定のために、0.1~0.4μLの涙液試料をすべてのウサギから採取する。20週目に動物を屠殺し、アルシアンブルーおよび過ヨウ素酸シッフ試薬で染色することにより杯細胞密度を測定する(D.Dartt,et al.,Exp.Eye Res.67:27,1996)。
【0185】
実施例12-ヒトPBMCでの炎症のインビトロモデルにおけるサイトカイン産生に対するZEP3およびそのナトリウム塩(ZEP3Na)の効果
サイトカイン産生に対するペプチドZEP3(配列番号1)の効果を、炎症のインビトロヒトモデルで評価した。リポ多糖(LPS)を使用してヒト末梢血単核細胞(PBMC)を刺激し、サイトカインを産生させた。
【0186】
方法:簡潔には、いかなるコルチコステロイドまたは他の炎症性薬物も投与されていない4人の健康な非喫煙者の凍結保存されたヒトPBMCを、RPMI1640で10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(完全成長培地、CGM)で成長させた。
【0187】
ヒトPBMCを解凍し、すべての群(1~6、表7)に播種し、処理前に1時間静置した。細胞群を、40、100および150μg/mlの濃度の試験項目であるZEP3(配列番号1)、またはデキサメタゾンで1時間処理し、続いてLPSで24時間刺激する。上清収集の4時間前にAlmar Blueを添加する。LPS添加の24時間後、585nmで蛍光を発するアルマーブルー(細胞生存能に相関する)を測定し、上清をサイトカイン測定用に収集する。各群を3回する。
【表7】
【0188】
詳細な方法:製造者の指示に従って細胞を解凍し、CGMで洗浄し、トリパンブルー染色を使用して生存率を評価した。CGM中で2×10^6細胞/mLの原液を調製した。100μLの原液を96ウェル黒壁プレート(ドナー当たり1プレート)の適切なウェルに加え、ウェル当たり2×105細胞を播種した。細胞を37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。100μLの2Xの試験項目、デキサメタゾン、または1XのCGMを適切なウェルに加え、最終体積を200μL/ウェルにした。プレートを37℃、5%CO2でさらに1時間インキュベートした。1時間後、20μLのLPSを群2~9に添加し、最終体積を220μLにした。20μLのIMを群1に添加した。細胞を37℃、5%CO2で20時間インキュベートした。20時間の時点で、20μLのAlamar Blueをすべてのウェルに添加した。プレートを37℃、5%CO2でさらに4時間インキュベートした。LPS刺激後24時間で、細胞生存能の評価のためにプレートを読み取り、細胞培養上清を回収し、サイトカイン分析のために-80℃で保存した。残りの細胞を滅菌PBSで1回洗浄した。細胞をトリプシン溶液中でインキュベートしてプレートから分離し、遠心してペレットにし、トリプシン溶液を除去した。次いで、細胞を任意選択のさらなる分析のために-80℃で保存した。Luminexアッセイを使用して、Alamar Blueアッセイ後に収集された上清試料に存在するGM-CSF、IFN-g、IL-10、IL-12p40、IL-17a、IL-1β、IL-4、IL-6、RANTES、およびTNFアルファの濃度を決定した。サイトカインアッセイの使用において、製造者のプロトコルに従った。サイトカイン産生および試料刺激のパーセンテージ対刺激対照の平均を計算した。
【0189】
結果:
図9~12に示されるように、ZEP3は、インターフェロンガンマ(IFNγ、
図9)、IL-10(
図10)、IL-1β(
図11)およびRANTES(
図12)を含む炎症の主要なメディエーターの有意な低減を惹起することが示され、その抗炎症効果の概念を裏付けている。測定されたサイトカインのいくつかでは、用量依存的な反応が観察された。試験したすべての濃度のペプチドで処理した後、細胞の生存能に有意な変化やいかなるドナーの傾向も観察されなかったが、これはペプチドがPBMCに対して細胞毒性を有さないことを示している。IL-4およびIL-17aのレベルは、すべての試験群で検出限界を下回っていた。
【0190】
サイトカイン産生の低減はZEP3に直接関連しており、ヒト血液細胞におけるZEP3の抗炎症効果が確認された。
【0191】
実施例13-インビボアトピー性皮膚炎モデル
ZEP3(配列番号1)、およびそのナトリウム塩形態(ZEP3Na)、およびZEP4(配列番号2)の局所投与の効果を、オキサゾロン誘発性アトピー性皮膚炎(AD)マウスモデルで評価した。このモデルは広く使用されており、人間のAD療法のための薬を評価するための受け入れられた動物モデルとして文献にも詳しく記載されている(Avci et al.2013 Expert Opin Drug Discov.8,331-355;Petersen T.K.2006,Basic Clin.Pharmacol.Toxicol.99,104-115)。
【0192】
方法:動物の剃毛および脱毛後の0日目の背部に、エタノール中の2%オキサゾロンを局所投与して動物を感作した(感作期)。次いで、1週間後、エタノール中の1%オキサゾロンを背中および右耳に2日ごとに10回、すなわち合計3週間局所投与することにより、チャレンジを行った。試験化合物は、すぐに使用できるクリーム製剤として、局所経路を介して2日ごとにチャレンジ段階中に塗布した。塗布面はチャレンジと同じであった(背中+耳)。背中に100μLを置き、背中をスムーズにマッサージした。次いで、指手袋に残った製剤を耳の内面に付着させた。1日おきに、背中の皮膚および耳の厚さをノギスで測定し、次の臨床スコアを背中の皮膚から記録した:紅斑および鱗屑。動物の体重も1日おきに測定した(開始時のマウスのおおよその体重は約20gである)。背中の皮膚領域の補正デジタル写真を、8、18、および28日目に撮影した。28日目に実験を終了し、動物から血液を採取し、血漿検体を分離した。安楽死させた動物に対し、右耳および背中の皮膚の試料を収集して-80°Cで凍結する(背中の皮膚および血漿からの試料)か、またはさらなる分析のためにホルマリン中に保存した(背中の皮膚および右耳の試料)。表8は、投与群について説明している。
【表8】
【0193】
試験化合物の局所投与に使用された製剤は、以下の通りである:
ZEP3 pH7.1の1%クリームで、プロピレングリコール、ポリソルベート80、エデト酸二ナトリウム、二酸化ケイ素(syloid)、メチルパラベン、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリルを含む。
ZEP3Na pH8.0の1%クリームで、プロピレングリコール、ポリソルベート80、エデト酸二ナトリウム、二酸化ケイ素(syloid)、メチルパラベン、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリルを含む。
ZEP4 pH4.5の1%クリームで、プロピレングリコール、グリセリン、ポリソルベート80、EDTA二ナトリウム、キサンタンガム、二酸化ケイ素(syloid)、メチルパラベン、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびグリセリルモノステアレート(kolliwax)を含む。
【0194】
結果:アトピー性皮膚炎誘発マウスに50mg/kgで投与された試験化合物ZEP3、ZEP3NaおよびZEP4は、忍容性が良好であった。すべてのペプチドは、アトピー性皮膚炎、背中の皮膚の厚さ(
図13Aおよび13B)、耳の厚さ(
図14Aおよび14B)、および紅斑(
図15Aおよび15B)の臨床病変を有意に低減した。鱗屑は、ZEP3で処置されたマウスでは18日目から24日目に減少し(
図16A)、ZEP3Na(
図16A)またはZEP4(
図16B)で処置されたマウスでは14日目から24日目に減少し、遅延効果を示している。ZEP3、ZEP3Na、またはZEP4で処置されたマウスの体重は、賦形剤と比較して正常な挙動を示した(
図17Aおよび17B)。
【0195】
詳細には、ZEP3、ZEP3Na、およびZEP4の体重は、試験の最初の数日間は非常に安定しており、28日目に約3~4%の増加を示した(
図17Aおよび17B)。ベタメタゾンで処置された群では、予測通り、約8~10%の体重減少が観察された。
【0196】
ベタメタゾン処置マウスを除いて、試験の最初の数日間は背中の皮膚の厚さが増加し、次いで試験の終わりまで非常に安定したままであった(
図13Aおよび13B)。28日目に、賦形剤を投与した陰性対照群では約110%、ZEP3 1%を投与した群3では90%、ZEP3Na 1%を投与した群4では105%、およびZEP4 1%を投与した群5では約90%の増加が認められ、一方ベタメタゾンを投与した陽性対照群2では40%の減少が認められた。グラフにおいて、処置群の全て(群3、4、および5)が、背中の皮膚の厚さが陰性対照群1よりも低い傾向を示した。20日目(-25.5%)および24日目(-16.6%)のZEP3について、対照群1に対する背中の厚さの有意差が概略的に示された。ZEP4については、14日目に対照群1に対する背中の厚さの有意差が概略的に示された(-13.5%)。
【0197】
右耳の厚さ:このモデルで通常観察されるように、すべての群が最初の数日から試験の終わりまで重要な肥厚を示したが、但し陽性対照群2は、試験の全体にわたり、約15~20%の僅かな増加を示すのみであった(
図14Aおよび14B)。有意差は、ZEP3では20、22および28日目(対照と比較して-10.1~-18.0%)、ZEP3 Naでは18、20および22日目(対照と比較して-18.4~-22.7%)、またZEP4では20、22、28日目(対照と比較して-12.3~-16.0%)に概略的に示された。
【0198】
紅斑スコアリングは、陰性対照群(群1)の16日目に最大となり、26~28日目にはわずかに0まで減少した。試験群3、4および5で記録された紅斑スコアリングは、陰性対照群1と同様であった(
図15Aおよび15B)。有意差は、ZEP3では22日目および24日目、ZEP3Naでは24日目、ZEP4では12日目、16日目、22日目および24日目に示された。
【0199】
鱗屑スコアリングは、最初の数日間は徐々に増加し、次いでわずかに減少し、試験の後半では非常に安定したままであった(
図16Aおよび16B)。すべての処置群3、4、および5は、14日目から28日目まで、陰性対照群1よりも低い鱗屑スコアを示した。
【0200】
合計スコア(紅斑および鱗屑スコアの合計)も、処置群3、4および5の方が、陰性対照群1よりも14日目から28日目まで低かった。合計スコアの有意差は、ZEP3では20、24および28日目、ZEP3Naでは14、18、20および22日目、ZEP4では12~20、24、28日目で示された。
【0201】
結論:50mg/kgでアトピー性皮膚炎誘発マウスに投与された化合物ZEP3およびZEP4およびそのナトリウム塩は、忍容性が良好であり、背中の皮膚の厚さ、耳の厚さ、紅斑、および鱗屑の低減によって示されるように、アトピー性皮膚炎の臨床病変を有意に低減した。
【0202】
実施例14手根中手骨変形性関節症(CMC関節炎)のZEP3による処置
75歳の男性被験者が、親指のCMC型関節炎であることが整形外科医により診断された。彼のつま先は腫れ、赤く、痛みを伴うので歩くことができなかった。
【0203】
0.5%クリームのZEP3ナトリウム塩を、1日に5回、腫れた領域に塗布した。対象は、処置後1日以内に軽減し、3~4日以内に状態が解消したと報告した。
【0204】
実施例15ヒトケラチノサイトのTNFアルファ分泌に対するZEP3およびZEP3Naペプチドの効果
TNFアルファは、ケラチノサイトの主要な炎症誘引性メディエーターである。TNFアルファレベルに対する影響を測定することにより、化合物を抗炎症効果について試験した。
【0205】
方法:SCCE020細胞(EpiGRO(商標)ヒト表皮ケラチノサイト)を4継代に対しての完全成長培地(EpiGRO(商標)ヒトケラチノサイト完全培地;Milliporeカタログ番号SCMK001)中で成長させた。継代5では、細胞を、ウェル当たり1mlの完全増殖培地の体積で3つ播種した(3×105細胞/ウェル)。追加の3つの対照ウェルには、細胞を含まない培地のみが含まれていた。付着したら、細胞培地をサプリメントなしのL-グルタミンを含む基本培地(飢餓培地)に置き換え、細胞を一晩飢餓状態にした。播種の24時間後の翌日、細胞をZEP3またはZEP3Naまたは適切な希釈剤(PBSもしくはDMSO)で処理した。4時間のインキュベーション後、LPS(E.Coli 055:B5から;Sigmaカタログ番号L6529-1MG)を20または30μg/mlの最終濃度でウェルに加えた。実験群(各処理につき3つのウェル)を表9にまとめる。
【0206】
細胞を組織培養インキュベータで24時間インキュベートした。すべてのウェルから細胞上清を収集した後、処理群(1、2、3、8、9、10、13、14(DMSO群なし))からの細胞をペレット化し、さらに分析するために-80°Cで保存した。細胞を次のように収集した:上清の収集後、ウェルをトリプシンで濯ぎ、次いでプレート表面から分離するまでトリプシンでインキュベートし、遠心分離し、PBSで洗浄し、細胞ペレットとして保存した。上清中のTNF-α濃度は、ELISA(Quantikine HS ELISA;R&D Systemsカタログ番号HSTA00D)により、5回測定した。
【0207】
結果:ZEP3およびZEP4は、ヒトケラチノサイト細胞培養におけるTNFアルファレベルを効果的に減少させた。試料中のTNFアルファ濃度は、標準曲線の傾向線の方程式:OD=0.063x+0.1718に従って計算した。TNFアルファ産生の阻害パーセントは、対応する対照群(同じ条件、ペプチドなし)と比較して、各処理群で計算した。結果を表9にまとめる。
【表9】
【0208】
結論:ELISAによる定量試験は、LPSのみでシミュレートした細胞によって分泌された量と比較して、ZEP3またはZEP3Naのいずれかと共にLPS処理されたヒトケラチノサイトにおいてTNF-α産生の用量依存的阻害を示した。
【0209】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されてきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内にあるそのようなすべての代替、修正、および変形が包含されることが意図される。
【0210】
本明細書で言及されているすべての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0211】
以下は、本願発明の例示である。
項目1
少なくとも1つの炎症性サイトカインの放出の低減、またはその活性の阻害における使用のための、活性成分としての式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(式中、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される)、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
項目2
前記少なくとも1つの炎症性サイトカインが、インターフェロンガンマ(IFNガンマ)、インターロイキン1ベータ(IL-1ベータ)、インターロイキン10(IL-10)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)、およびインターロイキン6(IL-6)からなる群から選択される、項目1に記載の使用のための医薬組成物。
項目3
前記少なくとも1つの炎症性サイトカインが、TNFアルファ、IL-1-ベータおよびIL-6からなる群から選択される、項目1に記載の使用のための医薬組成物。
項目4
少なくとも1つの炎症性メディエーターまたはケモカインの放出の低減における使用のための、活性成分としての式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(式中、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される)、ならびに薬学的に医許容される担体を含む医薬組成物。
項目5
前記少なくとも1つの炎症性メディエーターまたはケモカインが、反応性酸素種(ROS)およびRANTES(活性化の際に調節され、正常T細胞で発現およびおそらくは分泌される)からなる群から選択される、項目4に記載の使用のための医薬組成物。
項目6
前記ペプチド誘導体が、ペプチドの側鎖のアミノ基または末端アミノ基に結合したアルキル基を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目7
前記アルキル基が、アミド結合により結合されている、項目6に記載の医薬組成物。
項目8
前記アルキルが、C4~C30アルキルである、項目6または7に記載の医薬組成物。
項目9
前記アルキルが、アミド結合を介してLys残基の側鎖に結合したC8アルキル(オクタノイル)である、項目8に記載の医薬組成物。
項目10
前記ペプチドが、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)およびpGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および誘導体からなる群から選択される、項目1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目11
前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、項目1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目12
前記ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、項目1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目13
約4~約8の範囲内のpHを有する、項目1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目14
局所投与、点眼投与、経口投与、経鼻投与、および非経口投与からなる群から選択される投与経路用に製剤化されている、項目1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
項目15
局所投与用であり、クリーム、軟膏、ペースト、ローション、ゲルとして、または点眼剤の形態で製剤化される、項目14に記載の医薬組成物。
項目16
0.1~5%w/wの前記ペプチド、誘導体または薬学的に許容される塩を含むクリームとして製剤化された、項目15に記載の医薬組成物。
項目17
眼の疾患または損傷を有する対象に投与するための、項目15に記載の医薬組成物。
項目18
点眼剤、エマルジョン、クリーム、軟膏、スプレー、ゲルおよび硝子体内注射剤として使用するための液体溶液または懸濁液からなる群から選択される形態で製剤化される、項目17に記載の医薬組成物。
項目19
眼の疾患または傷害が、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、感染性眼疾患に関連する炎症症状、アレルギー性眼疾患、角膜炎、結膜炎、マイボーム腺機能障害、およびシェーグレン症候群に関連する眼症状からなる群から選択される炎症性疾患または障害である、項目17または18に記載の医薬組成物。
項目20
炎症性自己免疫疾患または障害を有する対象に投与するための、項目14に記載の医薬組成物。
項目21
前記自己免疫疾患または障害が、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎およびループスからなる群から選択される、項目20に記載の医薬組成物。
項目22
炎症性腸疾患を有する対象に投与するための、項目14に記載の医薬組成物。
項目23
前記炎症性腸疾患が、クローン病および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、項目22に記載の医薬組成物。
項目24
肺の炎症性疾患または障害を有する対象に投与するための、項目14に記載の医薬組成物。
項目25
前記肺の炎症性疾患または障害が、喘息、気管支炎、胸膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症および嚢胞性線維症からなる群から選択される、項目24に記載の医薬組成物。
項目26
耳の炎症性疾患または障害を有する対象に投与するための、項目14に記載の医薬組成物。
項目27
前記耳の炎症性疾患または障害が、耳の感染症、中耳炎、外耳炎、乳様突起炎および耳乳様炎に関連する炎症症状からなる群から選択される、項目26に記載の医薬組成物。
項目28
少なくとも1つの炎症性または炎症誘引性サイトカインの放出を低減またはその活性を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(式中、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される)の治療有効量を投与することを含む方法。
項目29
前記少なくとも1つの炎症性サイトカインが、インターフェロンガンマ(IFNガンマ)、インターロイキン1ベータ(IL-1ベータ)、インターロイキン10(IL-10)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、およびインターロイキン6(IL-6)からなる群から選択される、項目28に記載の方法。
項目30
炎症性メディエーターまたはケモカインの放出を低減する方法であって、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、または薬学的に許容されるその塩もしくは誘導体(式中、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される)の治療有効量を投与することを含む方法。
項目31
前記炎症性メディエーターまたはケモカインが、ROSおよびRANTESから選択される、項目30に記載の方法。
項目32
眼の炎症性疾患もしくは障害、耳の炎症性疾患もしくは障害、肺の炎症性疾患もしくは障害、腸の炎症性疾患もしくは障害、または炎症性自己免疫疾患もしくは障害からなる群から選択される炎症性疾患または障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式I:pGlu-X1-X2-X3-OHに従うペプチド、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体(式中、X1は、AsnおよびThrから選択され;X2は、Trp、PheおよびTyrから選択され;X3は、Lys、Lys誘導体およびThrから選択される)の治療有効量を投与し、それにより炎症性疾患または障害を処置することを含む方法。
項目33
投与が、局所、眼、経口、経鼻、および非経口投与からなる群から選択される経路を介する、項目28~32のいずれか一項に記載の方法。
項目34
前記眼の炎症性疾患または障害が、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、感染性眼疾患に関連する炎症症状、アレルギー性眼疾患、角膜炎、結膜炎、マイボーム腺機能不全およびシェーグレン症候群からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
項目35
前記炎症性自己免疫疾患または障害が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、シェーグレン症候群およびループスからなる群より選択される、項目32に記載の方法。
項目36
前記腸の炎症性疾患または障害が、クローン病および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
項目37
前記肺の炎症性疾患または障害が、喘息、気管支炎、胸膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症および嚢胞性線維症からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
項目38
前記耳の炎症性疾患または障害が、耳の感染症、中耳炎、外耳炎、乳様突起炎および耳乳様炎に関連する炎症症状からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
項目39
前記ペプチド誘導体が、アミド結合を介してペプチドの側鎖のアミノ基または末端アミンに結合したアルキル基を含む、項目28~38のいずれか一項に記載の方法。
項目40
前記アルキルが、C4~C30アルキルである、項目39に記載の方法。
項目41
前記アルキルが、Lys残基の側鎖に結合したC8アルキル(オクタノイル)である、項目40に記載の方法。
項目42
前記ペプチドが、配列番号1のペプチド、配列番号2のペプチド、ならびにそれらの塩および誘導体から選択される、項目28~38のいずれか一項に記載の方法。