(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150999
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20241017BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241017BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20241017BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241017BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241017BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241017BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/86
A61K8/898
A61K8/34
A61Q5/00
A61Q5/06
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064098
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】榎本 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】布施 直也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA072
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC661
4C083AC692
4C083AC791
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD282
4C083AD392
4C083AD492
4C083CC31
4C083CC32
4C083CC33
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加齢に伴い出現する後天的なうねりやくせのある毛髪の反復延伸による曲率増加を抑制し、うねり抑制の効果に優れる毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】下記(A)~(D)を含有することを特徴とする毛髪化粧料。(A)グアニジル基を有する化合物が、アルギニンまたはその誘導体、(B)プロピレンオキサイドの付加モル数が20以上かつ60以下のポリオキシプロピレンブチルエーテル、(C)特定の構造を有するアミノ変性シリコーン、(D)炭素数12~24の長鎖のアルキル基を有する高級アルコール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
(A)グアニジル基を有する化合物が、アルギニンまたはその誘導体
(B)プロピレンオキサイドの付加モル数が20以上かつ60以下のポリオキシプロピレンブチルエーテル
(C)下記一般式(1)で表されるアミノ変性シリコーン
(D)炭素数12~24の長鎖のアルキル基を有する高級アルコール
【化1】
【請求項2】
上記(A)成分のアルギニンまたはその誘導体が、アルギニンのスルホエチル型誘導体、N-アシルアルギニンのアルキルエステル型誘導体、アルギニンのサクシニル型誘導体、アルギニンのエチレンオキシドおよびアルギニンのプロピレンオキシド誘導体等、アルギニン誘導体は、PPG-2アルギニン、ジヒドロキシプロピルアルギニン、アルキル(CI12、CI14オキシ)ヒドロキシプロピルアルギニン、ココイルアルギニンエチルおよびラウロイルアルギニンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
上記(A)成分が全体質量中20.0質量%以下、
上記(B)成分が、全体質量中10.0質量%以下、
上記(C)成分が、全体質量中10.0質量%以下
上記(D)成分が、全体質量中15.0質量%以下
である請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢に伴い出現する後天的なうねりやくせのある毛髪の反復延伸による曲率増加を抑制し、うねり抑制の効果に優れる毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪のうねり(くせ)には、先天的なくせ毛と、加齢とともに出現する後天的なうねり(くせ)とが存在する。加齢に伴い出現する後天的なうねりやくせのある毛髪(以下、本明細書において「ゆがみ毛」ともいう。)は、髪のまとまりや髪全体の艶を悪化させる原因となる。毛髪のうねりやくせは、毛髪に対する染色処理や脱色処理などによる化学的なダメージ、ドライヤー等の熱によるダメージ、および摩擦やコーミングなどによる物理的なダメージなどによっても増加すると考えられている。
【0003】
また、毛髪のうねりを改善するための毛髪化粧料として、特許文献1には、(A)所定のアミドアミンを0.5~6質量%、(B)炭素数14~24の直鎖のアルコールを6~20質量%、(C)所定の分岐のアルコールを0.5~4質量%、(D)炭素数12~22の直鎖または分岐の脂肪酸と硬化ヒマシ油とから得られるエステル化合物を0.3~3質量%、(E)炭素数2~6のα-ヒドロキシ酸を0.3~3質量%含有する毛髪化粧料が開示されている。
【0004】
また、縮れ毛を改善するための毛髪用組成物として、特許文献2には、少なくとも1種のレシチン、少なくとも1種の両性界面活性剤、少なくとも1種の非イオン界面活性剤、少なくとも1種の皮膜形成ポリマー、及び少なくとも1種のカチオンポリマーを含む組成物が開示されている。
【0005】
しかし、これらの従来の技術では、加齢に伴い出現する後天的なうねりやくせを十分に改善することはできず、さらなる技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-174831号公報
【特許文献2】特開2002-125695号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】E. Oshimura, et al., “Hair and amino acids: the interaction s and the effects” 、2007年、J. Cosmet. Sci. 、58巻、p.347-357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ゆがみ毛の保有者を対象として実態調査を行った。その結果、ゆがみ毛の保有者の多くは、くせやうねりへの対策として、髪を引っ張って伸ばす行為を行うことがわかった。また、くせやうねりが気になる人ほど髪を引っ張る行為を行う割合が多いことがわかった。
【0009】
本発明者らは、同一人から採取した直毛およびゆがみ毛を毛束化し、ロールブラシを用いて両面からはさみこんでコーミング試験を行った。コーミングを3000回行った結果、直毛はほとんど変化しなかったが、ゆがみ毛はゆがみが大きくなることがわかった。また、ゆがみ毛を反復延伸したところ、曲率が有意に増加することが示された(試験例1を参照
)。この曲率増加は、直毛では見られなかった。そのため、本発明者らは、ゆがみ毛の保有者がくせやうねりへの対策として行う、髪を引っ張って伸ばす行為が、ゆがみ毛には逆効果であることを見出した。
【0010】
そこで、本発明は、ゆがみ毛の反復延伸により生じる毛髪の形状の変化を抑制しうねり抑制の効果に優れる毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究した結果、特定のアルギニンまたはその誘導体、特定のポリオキシプロピレンブチルエーテル、特定のアミノ変性シリコーン、及び炭素数12~24の長鎖のアルキル基を有する高級アルコールを含有する毛髪化粧料が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は。
[1]
下記(A)~(D)を含有することを特徴とする毛髪化粧料である。
(A)グアニジル基を有する化合物が、アルギニンまたはその誘導体
(B)プロピレンオキサイドの付加モル数が20以上かつ60以下のポリオキシプロピレンブチルエーテル
(C)下記一般式(1)で表されるアミノ変性シリコーン
(D)炭素数12~24の長鎖のアルキル基を有する高級アルコール
【化1】
[2]
上記(A)成分のアルギニンまたはその誘導体が、アルギニンのスルホエチル型誘導体、N-アシルアルギニンのアルキルエステル型誘導体、アルギニンのサクシニル型誘導体、アルギニンのエチレンオキシドおよびアルギニンのプロピレンオキシド誘導体等、アルギニン誘導体は、PPG-2アルギニン、ジヒドロキシプロピルアルギニン、アルキル(CI12、CI14オキシ)ヒドロキシプロピルアルギニン、ココイルアルギニンエチルおよびラウロイルアルギニンからなる群より選択される少なくとも1つである、[1]に記載の毛髪化粧料である。
[3]
上記(A)成分が全体質量中20.0質量%以下、上記(B)成分が全体質量中10.0
質量%以下、上記(C)成分が全体質量中10.0質量%以下、上記(D)成分が全体質量中15.0質量%以下である[1]又は[2]に記載の毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いれば、毛髪、特にゆがみ毛の反復延伸による曲率増加を抑制することができ毛髪うねり抑制の効果に優れる毛髪化粧料を提供することができる。さらに、本発明に用いる成分の配合量を調整することで、ゆがみ毛の反復延伸による毛髪のまとまり感、つや感の低下も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ゆがみ毛および直毛に対して500回反復延伸したときの曲率の変化を示す図。
【
図2】本発明の実施例の薬剤を処理したゆがみ毛について、反復延伸の前後における曲率の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の毛髪化粧料について詳細に説明する。
【0016】
本発明の毛髪化粧料が適用される毛髪は、好ましくはゆがみ毛であることが良い。本明細書において「ゆがみ毛」とは、加齢に伴い出現する後天的なうねりやくせのある毛髪をさす。
【0017】
毛髪の曲率は、毛髪のうねりの程度の指標となる。毛髪の曲率が大きいほど、毛髪のうねりが大きいことを意味する。本発明の毛髪化粧料が適用される毛髪の曲率は、特に限定されないが、0.3 cm-1以上、好ましくは0.4 cm-1以上、より好ましくは0.49 cm-1以上であることができる。また、本発明の毛髪化粧料が適用される毛髪の曲率は、特に限定されないが、たとえば2.0 cm-1以下、好ましくは1.8 cm-1以下であることができる。毛髪の曲率は、たとえばイメージスキャナー(GTX830,セイコーエプソン株式会社製)にて毛髪の2 次元データを取得してカール半径を計測し、そのカール半径の逆数を取ることにより算出することができる。
【0018】
本発明の毛髪化粧料が適用される毛髪の扁平率は、特に限定されないが、たとえば0.06以上、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.08以上であることができる。また、本発明の毛髪化粧料が適用される毛髪の扁平率は、特に限定されないが、たとえば0.5以下、好ましくは0.4以下であることができる。毛髪の扁平率は、たとえばマイクロメーターによって毛髪のカール部分の長径ならびに短径を測定し、計算式:扁平率=(長径-短径)/長径により算出することができる。
【0019】
本明細書において「反復延伸」は、髪を引っ張る行為を繰り返し行うことをさす。毛髪を反復延伸する行為には、ヘアブラシを用いて髪を繰り返しブラッシングする行為、櫛を用いて髪を繰り返しとかす行為(コーミング)、および指で髪を繰り返し引っ張って伸ばす行為などが含まれる。
【0020】
毛髪、特にゆがみ毛は、反復延伸を行うことにより、曲率が増加する。本明細書において、「曲率の増加を抑制する」ことには、毛髪の反復延伸による曲率の増加を予防することが含まれる。
【0021】
本願発明における「毛髪のうねり抑制」とは、くせによるウェーブの状態が抑えられ、見た目の広がりやぱさつきがなく面が整った状態を意味する。
【0022】
<(A)グアニジル基を有する化合物>
本発明に用いられる(A)成分は、グアニジル基を有する化合物であり、たとえば、アルギニンおよびこれらの誘導体等であることができる。本発明においては、好ましくはアルギニンまたはその誘導体であり、たとえばアルギニンのスルホエチル型誘導体、N-アシルアルギニンのアルキルエステル型誘導体、アルギニンのサクシニル型誘導体、アルギニンのエチレンオキシドおよびアルギニンのプロピレンオキシド誘導体等であることができる。アルギニン誘導体は、たとえばPPG-2アルギニン、ジヒドロキシプロピルアルギニン、アルキル(C12,C14オキシ)ヒドロキシプロピルアルギニン、ココイルアルギニンエチルおよびラウロイルアルギニン等であることが良い。
【0023】
(A)成分は市販品を用いてもよく、これに限定されるものではないが、PEG-2アルギニン(製品名:ウィルブライドR-PL 日油株式会社製)、アルギニン(製品名:L-アルギニンCグレード 味の素株式会社製)が挙げられる。
【0024】
本発明において、(A)成分に、毛髪の反復延伸による曲率の増加を抑制する作用を有することを見出し、曲率増加抑制目的で用いられる。これは、グアニジル基が、ゆがみ毛の反復延伸により生じたシステイン酸と相互作用した結果、引張強度が上昇し、毛髪の構造変化を抑制することによって、反復延伸による曲率の増加を抑制したと推測される。
【0025】
(A)成分は、その配合量は特に限定されないが、好ましくは0.01~20.0質量%(以下、特に記載のあるもの以外は、質量%を単に「%」で示す。)の範囲である。0.01%以上20.0%以下であれば反復延伸により生じる毛髪の形状の変化の抑制及びコーミング後のうねり発生が抑制され、まとまり、つやが良好となる。
0.01%以上であれば反復延伸により生じる毛髪の形状の変化の抑制が良好となり、20.0%以下であれば毛髪にごわつきやべたつきを生じることなく反復延伸により生じる毛髪の形状の変化の抑制が良好となる。
【0026】
<(B)ポリオキシプロピレンブチルエーテル>
本発明に用いられる(B)成分は、ポリオキシプロピレンブチルエーテルである。ポリオキシプロピレンブチルエーテルのプロピレンオキサイド付加モル数は20以上かつ60以下である。付加モル数が20以上であれば、十分なオイル感を得ることができ、髪の広がりやぱさつきが生じない。一方、60以下であれば、毛髪にごわつきやべたつきが残ることがない。本発明において(B)成分は、毛髪の反復延伸による曲率の増加による髪の広がりやぱさつきを抑える、うねり抑制に寄与する成分である。
【0027】
(B)成分のポリオキシプロピレンブチルエーテルは市販品を用いてもよく、これに限定されるものではないが、ユニルーブMB-370(日本油脂社製)が挙げられる。
【0028】
(B)成分は、その配合量は特に限定されないが、好ましくは0.01~10%の範囲である。0.01%以上であれば、コーミング後のうねり発生を抑制し、髪の広がりやぱさつきを抑えることが良好となる。一方、10%以下であればコーミング後のまとまり、つやが残らず感触が良好となる。
【0029】
<(C)アミノ変性シリコーン>
発明に用いられる(C)成分は、下記一般式(1)で表されるアミノ変性シリコーンである。(C)成分は、毛髪の反復延伸による曲率の増加による髪の広がりや髪のうねりくせによる面の乱れをおさえ、うねり抑制に寄与する成分である。
【化1】
【0030】
一般式(1)で表される(C)成分は市販品を用いてもよく、これに限定されるものではないが、ビスセテリアルアモジメコチン(製品名:シリコンSILSOFT-AX-E-PE モメンティブ社製)が挙げられる。
【0031】
(C)成分は、その配合量は特に限定されないが、好ましくは0.01~10%の範囲である。0.01%以上10%以下であれば、コ-ミング後のうねり発生を抑制し、まとまり、つやが良好となる。
【0032】
<(D)高級アルコール>
発明に用いられる(D)成分は、高級アルコールである。高級アルコールは、炭素数12~24の長鎖のアルキル基を有する高級アルコールであり、好ましくは、炭素数16~22の長鎖高級アルコールである。本発明において(D)成分は、コンディショナーやトリートメントなどの成分として用いられる。
【0033】
例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコールなどである。これらの高級アルコールは、1種単独又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0034】
(D)成分は、その配合量は特に限定されないが、好ましくは1~15%であり、更に好ましくは3~10%である。配合量が1%以上15%以下であれば、反復延伸により生じる毛髪の形状の変化の抑制及びコーミング後のうねり発生が抑制され、まとまり、つやが良好となる。
【0035】
<その他成分>
また、本発明の毛髪化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で公知の成分を適宜配合することができる。公知の成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル等のカチオン性界面活性剤;ミリス
チン酸イソプロピル等のエステル油;流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチコン、アモジメチコン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン類;乳酸、クエン酸等のpH調整剤;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ成分;エタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、L-アルギニン、グリシン、L-グルタミン酸、L-システイン、Lスレオニン等のアミノ酸;フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、メチルクロロイソチアゾリノン等の防腐剤;その他紫外線吸収剤、香料、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、各種薬剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の毛髪化粧料はヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアマスク等の洗い流すヘアケア製剤が挙げられる。
【0037】
次に本発明の毛髪化粧料について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0038】
〔試験例1〕
同一人より直毛とゆがみ毛をサンプリングし、400点以上のカール半径、長径および短径を計測し、曲率および扁平率を算出した。その結果、直毛は曲率が0.49 cm-1未満、扁平率が0.082未満であった。ゆがみ毛は、曲率が0.49~1.79 cm-1、扁平率が0.082~0.390であった。
【0039】
対象者1名より採取した直毛およびゆがみ毛をそれぞれ毛束化し、ロールブラシにより両面からはさみこんでコーミング試験を行った。コーミングを1000回、2000回および3000回行ったところ、直毛はほとんど変化しなかったが、ゆがみ毛はコーミング回数が増えるほど、広がりやぱさつきが大きくなり、ゆがみが大きくなることがわかった。
【0040】
次に、直毛およびゆがみ毛を反復延伸したときの曲率を計測した。反復延伸は、テクスチャーアナライザ(Stable Micro Systems社製)を用いて0.3Nの応力で延伸速度180mm/minの条件で行った。この条件は、生活者が日々ブラッシングにより髪に与える延伸強度を参考にして設定した。
【0041】
ゆがみ毛および直毛に対して500回反復延伸したときの曲率の変化を
図1に示す。直毛は500回反復延伸しても、曲率が有意に変化しなかったが、ゆがみ毛は、500回反復延伸したところ、曲率が0.936 cm
-1から1.307 cm
-1に有意に増加した。
【0042】
〔試験例2〕
本発明の毛髪化粧料で用いられる(A)成分として、PPG-2アルギニン(製品名:ウィルブライドR-PL 日油株式会社製)、アルギニン(製品名:L-アルギニンCグレード 味の素株式会社製)をゆがみ毛に40℃、12時間の条件で浸漬処理し、純水にてすすいだ後に22℃、50%湿度の条件で乾燥させた。
【0043】
本発明の(A)成分で処理したゆがみ毛について、反復延伸する前と500回反復延伸を行った後の曲率を計測した。反復延伸は、テクスチャーアナライザを用いて0.3Nの応力で延伸速度180mm/minの条件で行った。本発明の(A)成分を処理したゆがみ毛について、反復延伸の前後における曲率の変化を
図2に示す。(A)成分を処理していないゆがみ毛は、曲率が有意に増加した。一方、PPG-2アルギニン、アルギニンをそれぞれ浸透させたゆがみ毛では、反復延伸による曲率の増加が抑制されることが示された。
【0044】
(1)ゆがみ毛に対する反復延伸による曲率の増加抑制試験
同一人から採取した、曲率が0.49~1.79 cm-1、扁平率が0.082~0.390の範囲である毛髪をゆがみ毛とし、評価用反復延伸前の毛髪とする。
【0045】
評価用ゆがみ毛の根元を、1本1本プレートに固定し、10%のラウレス硫酸ナトリウム水溶液を入れたバット内で洗浄した後、本発明の実施例及び比較例の組成物0.1gを各ゆがみ毛に塗布し、40℃のお湯で洗い流す。
その後、タオルドライを行い、吊るした状態で22℃、湿度50%の恒温恒湿室にて自然乾燥させてから処理後の状態とし、テクスチャーアナライザを用いて0.3Nの応力で延伸速度180mm/minの条件で500回反復延伸を行った後、純水を入れたプラスチックシャーレ内に1分間浸漬した後取り出し、22℃、湿度50%の恒温恒湿室にて自然乾燥させてから曲率を計測した。
【0046】
<判定基準>
○:反復延伸前と後の曲率の変化度が5%未満
△:反復延伸前と後の曲率の変化度が5%~10%未満
×:反復延伸前と後の曲率の変化度が10%以上
【0047】
<コーミング後の官能試験>
評価用うねり毛束の調製
ビューラックス社製アジア人同一人毛(長さ30cm、重さ10g)の毛束を10%濃度のラウレス硫酸ナトリウム溶液にて洗浄してタオルドライを行い、コーミングをして吊るした状態で自然乾燥を行う。自然乾燥後の毛束を、うねりの度合いの強さを4段階に選別し、一番うねりの強いグループを評価用毛束として選択し、長さ25cm、毛量を同一に調整し、ヘアブリーチ処理することにより、うねりを増強させたものを評価用うねり毛束として用いる。
【0048】
評価用うねり毛束を、10%のラウレス硫酸ナトリウム溶液3gを用いて洗浄した後、本発明の実施例及び比較例の組成物3gを各毛束に塗布し、40℃のお湯で洗い流す。
その後、タオルドライを行い、吊るした状態で22℃、湿度50%の恒温恒湿室にて自然乾燥させてから処理後の状態として画像で記録した後、各毛束に対し指定のリングコームにて500回コーミングを行い、変化後の状態として画像で記録した。
【0049】
(2)コーニング後のうねり抑制試験
5名の訓練された評価者が、各毛束の処理後の状態を記録した画像と、各毛束を500回コーミングした後の状態を記録した画像を見比べ、うねり抑制効果、下記評価基準に従って観察評価し、5人のスコアの合計の平均値を算出する。当該平均値を下記スコア基準に基づき判定した。
【0050】
<500回コーミング後のうねり発生程度>
5点:コーミング後の毛束にうねりは発生していない
4点:コーミング後の毛束の一部に僅かにうねりが発生している
3点:コーミング後の毛束の一部にうねりが発生している
2点:コーミング後の毛束全体にうねりがある
1点:コーミング後の毛束全体に大きなうねりがある
【0051】
<判定基準>
◎:大変優れている・・・4.5点以上
○:優れている・・・・・3.5点以上、4.5点未満
△:劣っている・・・・・2.5点以上、3.4点未満
×:大変劣っている・・・2.4点未満
【0052】
(3)コーミング後のまとまり試験
5名の訓練された評価者が、コーミング500回後の毛束のまとまり状態について、下記評価基準に従って観察評価し、5人のスコアの合計の平均値を算出する。当該平均値を下記スコア基準に基づき判定した。
【0053】
<500回コーミング後のまとまり 評価基準>
5点:毛束が全体的にまとまる
4点:毛束が全体的にまとまっているものの、僅かに広がりがみられる
3点:毛束が全体的にまとまっているものの、広がりがみられる
2点:毛束のまとまりが悪く、広がっている
1点:毛束が全くまとまらない
【0054】
<判定基準>
◎:大変優れている・・・4.5点以上
○:優れている・・・・・3.5点以上、4.5点未満
△:劣っている・・・・・2.5点以上、3.4点未満
×:大変劣っている・・・2.4点未満
【0055】
(4)コーミング後のつや試験
5名の訓練された評価者が、コーミング500回後の見た目のつやを、下記評価基準に従って観察評価し、5人のスコアの合計の平均値を算出する。当該平均値を下記スコア基準に基づき判定した。
【0056】
<500回コーミング後のつや 評価基準>
4点:毛束の面が整い、つやがある
3点:毛束の面がやや乱れているが、つやがある
2点:毛束の面がやや乱れていて、つやがない
1点:毛束の面が大きく乱れていて、つやがない
【0057】
<判定基準>
◎:大変優れている・・・4.5点以上
○:優れている・・・・・3.5点以上、4.5点未満
△:劣っている・・・・・2.5点以上、3.4点未満
×:大変劣っている・・・2.4点未満
【0058】
実施例1~18及び比較例1~6
表1、2に示す組成の毛髪化粧料を常法に準じて調製し、コーミング前のうねり抑制効果、500回コーミング後のうねり発生程度、500回コーミング後のまとまり・つやについて評価を行い、その結果を表1及び2に示した。
【0059】
【0060】
【0061】
表1、2から明らかなように、本発明の成分を用いた実施例1~18の毛髪化粧料は、比較例1~6の組成物に比べていずれも優れた性能を見出した。
【0062】
以下、本発明の毛髪化粧料のその他の処方例を実施例19、20として挙げる。なお、これらの実施例の毛髪化粧料についても、上記の500回コーミング後うねり発生程度、500回コーミング後のまとまり・つやの各項目について評価したところ、いずれの実施例においても優れた特性を有しており良好であった。
【0063】
実施例19 ヘアコンディショナー
配合量(質量%)
(1)PPG-2アルギニン 1.0
(2)PPG-40ブチル 1.5
(3)PPG-1/PEG-1ステアラミン 2.0
(4)ステアリルPGトリモニウムクロリド 0.5
(5)ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド 1.0
(6)ミツロウ 1.0
(7)セトステアリルアルコール 6.5
(8)ベヘニルアルコール 0.5
(9)コメヌカ油脂肪酸フィトステリル 2.0
(10)ジメチコン(300mm2/s) 0.5
(11)ビスセテアリルアモジメチコン 1.0
(12)パラフィン 1.0
(13)プロピレングリコール 0.5
(14)ソルビトール 3.0
(15)グリセリン 0.5
(16)ひまわり油 1.0
(17)ヒドロキシエチルセルロース 0.4
(18)ひまわり芽エキス 1.0
(19)ポリクオタニウム-107 1.5
(20)フェノキシエタノール 0.2
(21)香料 0.5
(22)精製水 残余
【0064】
(製法)(2)~(9)、(12)(13)(16)を80℃にて均一に混合溶解し、80℃に加温した(22)に(14)(15)(17)を分散したものをプロペラで攪拌しながら加え、乳化を行う。徐々に冷却を行い、60℃にて(1)、(10)、(11)、(18)~(21)を添加し、室温まで冷却して、ヘアコンディショナーを調製した。
【0065】
実施例20 ヘアトリートメント
配合量(質量%)
(1)PPG-2アルギニン 10.0
(2)アルギニン 1.0
(3)ハチミツ 2.0
(4)PPG-1/PEG-1ステアラミン 3.0
(5)ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド 1.0
(6)ミツロウ 2.0
(7)PPG-40ブチル 0.5
(8)ステアリルアルコール 6.0
(9)ネオペンタン酸イソデシル 3.0
(10)オレイン酸フィトステリル 0.5
(11)ヒドロキシステアリン酸コレステリル 0.5
(12)パラフィン 2.0
(13)セレブロシド 0.01
(14)ビスセテアリルアモジメチコン 5.0
(15)ジメチコン(10万mm2/s) 1.0
(16)アモジメチコン 1.0
(17)ヒドロキシエチルセルロース 0.4
(18)ひまわり油 1.0
(19)1,3-ブチレングリコール 3.0
(20)プロピレングリコール 0.5
(21)ヒオウギエキス 0.5
(22)ひまわり花エキス 1.0
(23)Plandool-SUN 1.0
(24)LIPIDURE-C(日本油脂社製) 1.0
(25)ポリクオタニウム-107 3.0
(26)フェノキシエタノール 0.2
(27)防腐剤(ケーソンCG) 0.1
(28)香料 0.5
(29)精製水 残余
【0066】
(製法)(3)~(13)、(18)、(23)、(24)を80℃にて均一に混合溶解し油相とする。(2)、(17)、(19)、(20)及び(29)を60℃にて均一に混合攪拌し水相とする。水相に油相を加えて乳化したのち、(1)、(14)~(16)、(21)、(22)、(25)~(28)を加えて、ホモミキサーを用いて均一に混合する。混合しながら徐々に冷却を行い、室温まで冷却してヘアトリートメントを調製した。