(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151005
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】飛行体の格納装置
(51)【国際特許分類】
B64U 80/00 20230101AFI20241017BHJP
【FI】
B64U80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064105
(22)【出願日】2023-04-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛省、新技術の短期実証(ドローン等を用いた監視・検査の自動化・効率化)(構想設計)委託事業、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛装備庁長官
(71)【出願人】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】尾坐 幸一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩
(57)【要約】
【課題】大型のドローンの離着陸及び格納が可能な格納装置を提供する。
【解決手段】格納装置1は、開口3aを有する格納部3と天井部5と離着陸部4を有する。離着陸部4は、正六角形状の基部8の各辺に6つの可動部9が開閉可能に接続され、可動部の隙間は引出し式の接合部10で埋める構造である。離着陸部は、開いた天井部の上方で平面状の離着陸面Fを展開し、下降して格納部内に収納されてドローン2を格納する。離着陸部が折り畳み構造なので、装置全体として省スペース且つコンパクトな構成が実現できる。天井部は、複数の片部6が水平面内で所定の方向に一斉に移動して中央に開閉口7を開閉させるため、開閉時に風の影響を受けにくい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有し飛行体を格納する格納部と、
前記開口を開閉する天井部と、
多角形状の基部及び前記基部の各辺に移動可能に接続された複数の可動部を有し、開状態の前記天井部の上方にて前記可動部を前記基部の外方に広げて前記飛行体が離着陸する平面状の離着陸面を形成する展開状態と、前記基部及び前記基部の内方に向けて移動した前記可動部を前記格納部の内部に収納して前記飛行体を格納する格納状態との間で昇降可能である離着陸部と、
を具備することを特徴とする飛行体の格納装置。
【請求項2】
前記離着陸部は、
隣り合う2つの前記可動部の間に設けられ、前記展開状態では前記2つの可動部の隙間を埋めて前記離着陸面の一部を形成し、前記格納状態では前記可動部に設けられた収納構造により前記可動部の内部に収納される複数の接合部を有することを特徴とする請求項1に記載の飛行体の格納装置。
【請求項3】
前記離着陸部は、
前記展開状態における形状が、正六角形状である前記基部の各辺に、その少なくとも一部が前記可動部及び前記接合部となる複数の正六角形状の板体が接続された形状に基づいて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の飛行体の格納装置。
【請求項4】
前記天井部は、
その中心において3以上の等しい中心角度で分割された3以上の片部から構成され、
前記各片部は、前記中心角度を2等分する直線と直交する方向に移動することにより、前記開口に連通する開閉口を開閉することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の飛行体の格納装置。
【請求項5】
前記天井部の前記開閉口の形状が、前記離着陸部の前記基部の形状に一致していることを特徴とする請求項4に記載の飛行体の格納装置。
【請求項6】
上部に開口を有する格納部と、
飛行体が離着陸するとともに前記格納部に飛行体を収納する離着陸部と、
その中心において3以上の等しい中心角度で分割された3以上の片部から構成され、前記各片部は、前記中心角度を2等分する直線と直交する方向に移動することにより、前記開口に連通する開閉口を開閉する天井部と、
を具備することを特徴とする飛行体の格納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の格納庫や離着陸の基台として使用される格納装置に係り、特に、飛行体の離着陸時には必要な離着陸面積及び平坦性を確保できるが、飛行体の格納時には格納部内へ収納することができる省スペースでコンパクトな離着陸部を備えており、さらに格納部を開閉する天井部の構成を軽量かつコンパクトで風に強い構造とした格納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンを用いた巡回サービスが提供されている。この巡回サービスとは、例えば、予め定められた経路に沿ってドローンを自律制御で飛行させ、監視領域内の異状の有無の確認等を行なうものであり、ドローンが離着陸するための基地となる離着陸装置が用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、上述したような巡回サービスに供用可能なドローンの離着陸装置の発明が開示されている。この離着陸装置の格納装置は、上下方向に回動できるように取り付けられた一対の天蓋からなる開閉自在の屋根を有している。一対の天蓋を互いに接近させて対向する開口部を重ねれば、飛行ロボットの離着陸面を含む内部の格納空間を外界に対して閉鎖することができる。また一対の天蓋を互いに離間させて対向する開口部を真上に向けて開放すれば、離着陸面が外界に露出し、飛行ロボットが離着陸可能な開放状態となる。
【0004】
下記特許文献2には、上述したような巡回サービスに供用可能なドローンの離着陸装置の発明が開示されている。この離着陸装置は、フレーム内で昇降自在とされた基台と、基台の周縁に開閉自在に設けられた複数の花弁形状の可動体を備えている。フレームの開口から基台が出て可動体が開いた状態でドローンが着陸する。基台がフレーム内へ下降すると、可動体が閉じてドローンを押すことで位置を矯正し、フレーム内においてドローンを基台上の正規位置に位置決めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-105314号公報
【特許文献2】特開2016-175490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ドローンなどの飛行体が安全に離着陸する離着陸面としては、ドローンを平面視した場合のサイズよりも広いスペースが必要となる。このような離着陸面を常時野晒しで展開しておくと、風雨による劣化が生じやすく、また離着陸部に溜まるゴミを頻繁に除去する必要がある等の問題がある。
【0007】
そこで、特許文献1に開示された発明における格納装置のように、一対の天蓋を回動させて屋根を開閉させることにより、離着陸面を外界に露出させ、また屋根で覆う方式とすれば、離着陸面も、離着陸面に着陸しているドローンも、何れも野晒しにされることはない。しかしながら、ドローンのサイズが大きくなると、必要な離着陸面の面積も大きくなるため、広い離着陸面の全体を覆うことができる広い格納スペースが必要になり、結果として広い格納スペースを囲う屋根が大型化し、格納装置の全体としてのサイズが大きくなるという課題があった。さらに、このタイプの格納装置は、降雪時に屋根の上に雪が積もると、一対の天蓋を回動して屋根を開閉することができない場合があるという課題もあった。
【0008】
また、特許文献1に開示された発明とは異なり、離着陸面を覆う格納装置の屋根を横方向に移動させて開くタイプもあるが、このタイプでは、ドローンのサイズが大きい場合、これに対応して屋根を大きくすると、強い風が屋根の移動方向と逆方向に吹き付けると開閉できない場合があるという課題があり、これを防止するためには、強力なモータにより大きなパワーを確保する必要があった。
【0009】
一方、特許文献2のように、揺動可能な複数の花弁形状の可動体で離着陸部分の一部を構成し、フレーム内に収納可能な構造とすれば、全体の大きさを小さくすることは可能であるが、離着陸部分を広い平面で形成することが困難である。特に大型のドローンが安定して離着陸するためには平面に近い離着陸部が必要になるが、特許文献2に示すような離着陸部分の構造では、そのような広い離着陸面をコンパクトな構造で実現することは困難であった。
【0010】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、離着陸面を覆う天井部をコンパクトで雪や風に強い構造で実現し、さらに大型のドローンが安定して離着陸できる平面に近い広い離着陸部を備えたコンパクトな離着陸部を備えることにより、サイズが大きいドローンの離着陸及び格納が可能であるドローンの格納装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決するため、本発明では、離着陸部を格納構造の一部として構成し、ドローンの離着陸時には、離着陸部を展開してドローンが離着陸時に必要とする面積がある平面状の離着陸面を確保するとともに、ドローンの格納時及び飛行時には、離着陸部を折りたたんで格納部内に収納するようにした。また、格納装置の天井部は、正多角形を同一形状に分割した片部で構成し、各片部が同時に横方向にスライドすることにより、ドローンが出入りする開閉口を拡大、縮小するように天井部の開閉を行なう構成とすることで風等に強い構造とした。
【0012】
本発明に係る飛行体の格納装置は、
上部に開口を有し飛行体を格納する格納部と、
前記開口を開閉する天井部と、
多角形状の基部及び前記基部の各辺に移動可能に接続された複数の可動部を有し、開状態の前記天井部の上方にて前記可動部を前記基部の外方に広げて前記飛行体が離着陸する平面状の離着陸面を形成する展開状態と、前記基部及び前記基部の内方に向けて移動した前記可動部を前記格納部の内部に収納して飛行体を格納する格納状態との間で昇降可能である離着陸部と、
このように、離着陸部は折り畳み構造であり、開いた天井部の上方に平面状の離着陸面を形成する展開状態と、格納部の内部に収納されて飛行体を格納する格納状態との間で昇降可能であるため、装置全体として省スペース且つコンパクトな構成とすることができる。
【0013】
又本発明に係る飛行体の格納装置は、
前記離着陸部が、
隣り合う2つの前記可動部の間に設けられ、前記展開状態では前記2つの可動部の隙間を埋めて前記離着陸面の一部を形成し、前記格納状態では前記可動部に設けられた収納構造により前記可動部の内部に収納される複数の接合部を有することを特徴としている。
このように、離着陸部の基部の各辺に開閉可能に設けた可動部と可動部の間に収納構造の接合部を設けたので、離着陸部を展開する際には、可動部から引き出された接合部が可動部と可動部の隙間を埋めるため、隙間のない広い平面状の離着陸面を速やか且つ円滑に展開して飛行体の着陸に備えることができる。また飛行体を格納する際には、可動部を折り畳むことによって接合部が可動部の内部に引き込まれるので、広い離着陸面をコンパクトに折り畳んで収納部内に収納することができ、飛行体の格納部内への格納を速やか且つ円滑に行なうことができる。
【0014】
さらに本発明に係る飛行体の格納装置は、
前記離着陸部が、前記展開状態における形状が、正六角形状である前記基部の各辺に、その少なくとも一部が前記可動部及び前記接合部となる複数の正六角形状の板体が接続された形状に基づいて構成されていることを特徴としている。
このように、展開状態にある離着陸部の平面形状を、正六角形状である基部の各辺に正六角形状の板体を接続した形状に基づいて構成しているため、高い強度を得ることができる。
【0015】
又本発明に係る飛行体の格納装置は、
前記天井部が、
その中心において3以上の等しい中心角度で分割された3以上の片部から構成され、
前記各片部は、前記中心角度を2等分する直線と直交する方向に移動することにより、前記開口に連通する開閉口を開閉することを特徴としている。
このように、天井部は、その中心で互いに接するように放射形状に配置した複数の片部から構成され、これら各片部を水平面内において所定の方向に一斉に移動させることで前記中心において開閉口を開閉させる構造であり、各片部が移動する向きがすべて異なるため、開閉時に風の影響を受けにくい。また、天井が3以上の片部に分割されているため、個々の片部の重量を抑えることができ、天井部の開閉は比較的小型の動力源で行なうことができる。また、降雪時には、3以上で構成される片部の各々に積もる雪の量は、相対的に大きな蓋板等に積もる雪の量に較べて少なく、また各片部は回動・旋回する動作ではなく水平方向に移動するため、雪が載っていても移動が容易であり、積雪の影響を受けにくい。
【0016】
さらに本発明に係る飛行体の格納装置は、
前記天井部の前記開閉口の形状が、前記離着陸部の前記基部の形状に一致していることを特徴としている。
このように、天井部の開閉口の形状と、離着陸部の基部の形状が一致しているため、飛行体の形状に合わせて離着陸部の基部の形状を定めれば、飛行体が離着陸するため天井部を開放する際に格納装置の内部の外界に対する露出を最小限にすることができる。
【0017】
又本発明に係る飛行体の格納装置は、
上部に開口を有する格納部と、
飛行体が離着陸するとともに前記格納部に飛行体を収納する離着陸部と、
その中心において3以上の等しい中心角度で分割された3以上の片部から構成され、前記各片部は、前記中心角度を2等分する直線と直交する方向に移動することにより、前記開口に連通する開閉口を開閉する天井部と、
を具備することを特徴としている。
このように、天井部は、その中心で互いに接するように放射形状に配置した複数の片部から構成され、これら各片部を水平面内において所定の方向に一斉に移動させることで前記中心において開閉口を開閉させる構造であり、各片部が移動する向きがすべて異なるため、開閉時に風の影響を受けにくい。また、天井が3以上の片部に分割されているため、個々の片部の重量を抑えることができ、天井部の開閉は比較的小型の動力源で行なうことができる。また、降雪時には、3以上で構成される片部の各々に積もる雪の量は、相対的に大きな蓋板等に積もる雪の量に較べて少なく、また各片部は回動・旋回する動作ではなく水平方向の移動で天井部を開閉するため、雪が載っていても移動が容易であり、積雪の影響を受けにくい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、離着陸部を格納構造の一部として構成し、ドローンの離着陸時には、離着陸部を展開してドローンが離着陸時に必要とする面積がある平面状の離着陸面を確保するとともに、ドローンの格納時及び飛行時には、離着陸部を折りたたんで格納部内に収納するようにした。これにより開いた天井部の上方に平面状の離着陸面を形成する展開状態と、格納部の内部に収納されて飛行体を格納する格納状態との間で昇降可能であるため、装置全体として省スペース且つコンパクトな構成とすることができる。また、格納装置の天井部は、正多角形を同一形状に分割した片部で構成し、各片部が同時に横方向にスライドすることにより、ドローンが出入りする開閉口を拡大、縮小するように天井部の開閉を行なう構成とすることで風等に強い構造とした。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の格納装置にドローンが着陸する際の動作を示す連続図である。
【
図2】実施形態の格納装置が有する離着陸部の展開状態を示す平面図である。
【
図3】分図(a)は、実施形態の格納装置が有する離着陸部の格納状態を示す平面図であり、分図(b)は、その変形例を示す平面図である。
【
図4】実施形態の格納装置の離着陸部において、基部を正六角形とすることが好ましい理由を説明するための図である。
【
図5】実施形態の格納装置の離着陸部において基部を正六角形とした場合、天井部の開閉口を基部の形状に一致させることが好ましい理由を説明するための図である。
【
図6】実施形態の格納装置の天井部(正六角形)の動作を示す連続図である。
【
図7】実施形態の変形例の格納装置における天井部(正三角形)の動作を示す連続図である。
【
図8】実施形態の変形例の格納装置における天井部(正八角形)の動作を示す連続図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る格納装置1について
図1~
図8を参照して説明する。
この格納装置1は、自律飛行また人による操作により飛行可能な飛行体(以下、ドローンと称する。)の発着拠点であり、内部にドローン2を格納することができる。この格納装置1は、例えば先述した巡回サービスを行なうドローン2の基地として監視区域内の所定位置に設置され、巡回していたドローン2が帰還して着陸すると、これを装置内に格納し、当該ドローン2に装着された使用済みのバッテリを準備しておいた充電済みのバッテリに自動的に交換することができ、再び巡回サービスに戻ることができる。
【0021】
まず、
図1を参照して、格納装置1の構造及び機能と、格納装置1におけるドローン2の着陸動作及び離陸動作について説明する。
図1を参照して格納装置1の構造を説明する。
図1に示すように、格納装置1は、本体である格納部3と、格納部3の内部に昇降自在に設けられた離着陸部4と、格納部3の上面の開口3aを開閉する天井部5から構成されている。また、格納装置1は、図示はしないが、ドローン2との通信や機構部の動作を制御する制御部を有している。
【0022】
図1に示すように、格納部3は、上面に正六角形の開口3aを有する略正六角柱形状の骨組みを備えている。
図1では内部の機構を示すために示していないが、実際には骨組みの外周側及び底面に外装パネルが取り付けられており、内部の機構と、内部に収納したドローン2が保護されるようになっている。なお、骨組みの外周側の外装パネルには図示しない点検口が開閉可能に設けられており、これを開ければメンテナンスや修理のために内部の機構にアクセスすることができる。
【0023】
図1に示すように、格納部3の上面の開口3aには、開閉自在の天井部5が設けられている。天井部5は、閉止された状態では全体として正六角形であり、その中心において6つの等しい中心角度(60°)で6分割された正三角形状の6個の片部6から構成されている。別の表現で言えば、この天井部5は、正六角形の中心と6つの頂点を結ぶ6つの線分で前記正六角形を分割した6個の正三角形状の片部6の集合である。
【0024】
そして、
図1(1)から同図(2)に矢印で示すように、各片部6の中心角度(60°)を2等分する直線と直交する方向、すなわち各片部6の最も外側の辺(外縁辺)と平行な互いに異なる向きであって、同一の周方向に沿って各片部6を同期して移動させれば、各片部6に囲まれた中央部分に開閉口7を開くことができる。また
図1(7)から同図(8)に矢印で示すように、各片部6の外縁辺に平行な方向に沿って
図2に示す矢印とは逆の向きで各片部6を移動させれば、各片部6を
図1(8)に示すように正六角形状に集合させて開閉口7を閉止することができる。
【0025】
図1に示すように、格納部3の内部には離着陸部4が設けられている。離着陸部4は、格納部3内を昇降する正六角形状の基部8と、基部8の周縁部の各辺に開閉自在に軸支されて必要に応じ揺動・開閉する6枚の板状の可動部9を有している。この離着陸部4は格納部3内を昇降することができ、格納部3内に引き込まれた状態では可動部9は立ち上げられており(
図1(2)及び(7)参照)、格納部3の開口から出た状態では可動部9は外方に展開されてドローン2が着陸するための広い円形の平坦な着陸スペースとなる(
図1(4)及び(5)参照)。すなわち、離着陸部4は折り畳み構造であり、開いた天井部5の上方に平面状の離着陸面Fを形成する展開状態(
図1(4)及び(5))と、格納部3の内部に収納されてドローン2を格納する格納状態(
図1(1)及び(8)参照)との間で昇降可能とされている。
【0026】
なお、離着陸部4が展開状態にあるとき、可動部9と可動部9の間は接合部10が埋めており、離着陸面Fは全体として平坦な円形状となっているが、この接合部10を含めた離着陸部4の構成の詳細については後に
図2等を参照して詳述する。
【0027】
以上説明した天井部5と離着陸部4を作動させる機構及び駆動源等の具体的な構成は特に限定しない。これら各部の構成部材の移動を案内するガイド機構、ガイド機構に案内された構成部材を移動させる駆動手段(例えば、モータ、空気圧又は油圧式のアクチュエータ等)、移動する構成部材を所定位置で停止させるための信号を出力するリミットスイッチ、必要な駆動手段を必要なタイミングで駆動させる制御手段(本実施形態では図示しない前記制御部)等、公知の手段を利用して天井部5と離着陸部4等を作動させることができる。
【0028】
図1(1)~(8)を参照して格納装置1の動作を分図番号(1)~(8)ごとに説明する。
(1)ドローン2の飛行中、離着陸部4は格納部3内にあり、天井部5は閉止されている。従って、ゴミ等が格納部3内に入り込むことはない。
(2)ドローン2が着陸のために接近すると、天井部5が開き、基部8と略同形状の開閉口7を開放する。すなわち、天井部5は、ドローン2が着陸する離着陸部4が天井部5の上方で展開するために必要な最小限のサイズ及び形状で開放される。
(3)離着陸部4が上昇する。
(4)離着陸部4の可動部9が展開して天井部5の上方に平面状の離着陸面Fを形成し、着陸準備が完了する。
(5)ドローン2が離着陸部4の離着陸面F上に着陸する。
(6)離着陸部4の可動部9が閉じてドローン2を基部8の中央に誘導する。
(7)離着陸部4がドローン2とともに下降して格納部3内に入る。
(8)天井部5が閉じるとともに、離着陸部4が格納部3内で下降してドローン2をバッテリの交換等の作業が可能な交換位置に設定する。ドローン2は格納部3内で可動部9に囲まれ、安全に格納された状態となる。
なお、バッテリの交換が終了したドローン2は上述した(1)~(8)の順序と逆の順序を辿って離陸する。
【0029】
次に、
図2及び
図3を参照して、前記接合部10を含めた離着陸部4の構成の詳細について説明する。
図2は、離着陸部4の展開状態を示しており、平面状の離着陸面Fが形成されている。また
図3は、離着陸部4の格納状態を示している。
【0030】
図2に示すように、離着陸部4は、正六角形状の基部8を、着陸したドローン2を支持するための主要な構成部材としている。ドローン2は、平面視における外形が6角形であるものが多いため、本実施形態では、基部8の形状や、天井部5の開閉口7の形状を6角形としている。このため、格納装置1の内部を不必要に外部に無用に露出させることがない。
【0031】
図2に示すように、基部8の周縁を構成する6つの辺には、板状の可動部9が開又は閉方向へ移動できるように、図示しないヒンジ等の連結部材でそれぞれ軸支されている。
図2に示す可動部9は開状態であり、
図2の紙面に平行である。
図3(a)に示す可動部9は閉状態であり、
図3(a)の紙面に垂直であり、手前側に向いている。可動部9は、外縁が円弧状である他は略矩形の板体であり、所定の厚さを備え、その内部は空洞となっている。
【0032】
図2に示すように、可動部9と可動部9の間には、接合部10が設けられている。
図2では、便宜上、接合部10をグレー着色で示す(後に参照する
図4及び
図5においても同じ。)。接合部10は、可動部9と可動部9の間に生じる扇状の隙間と略同形状であり、基部8の中心と基部8の頂点を通る線で2分割され、その分割部分は図示しないヒンジ等の連結部材で折り曲げ可能に連結された折れ部11とされている。また、2つの可動部9に挟まれた接合部10の両側縁は、2つの可動部9の前記空洞に移動自在に挿入されて係止している。後述するが、この接合部10は、
図2中に破線で示すように、離着陸部が
図3(a)に示す格納状態になると可動部9の空洞内に収納される。
【0033】
図2に示す展開状態では、可動部9と可動部9の隙間は接合部10で埋められており、平面状で円形の広い離着陸面Fが形成されている。ここで、接合部10の両側縁は可動部9の空洞に係止しており、基部8と可動部9と接合部10は全体として一体となっているため強度が高く、この離着陸面Fのどの位置にドローン2が着陸しても離着陸部4は変形せず、ドローン2の重量を確実に支えることができる。
【0034】
図3(a)に示す格納状態では、可動部9は閉状態であり、基部8に対して略垂直となっている。そして、接合部10は、基部8の形状に沿って折れ部11が略120°の角度で折れ、その両側部が両側の2つの可動部9の隙間に入り込んでいる(
図2にて破線で示した接合部10も参照されたい。)。
【0035】
このように本実施形態では、離着陸部4が折り畳み構造であるため、展開状態で生じる可動部9と可動部9の間の隙間に、可動部9以外の他の部材を設けることとしたが、可動部9が格納状態になれば、当該他の部材には互いに重なる部分が発生することになる。そのため、前記隙間を埋める他の部材として、両隣の可動部9に収納される構造の接続部10を採用した。これにより、離着陸部4は、重なって外側に張り出すような突出部分がない平面視で六角形のコンパクトな外形となって格納部3に収納されるため、格納部3も必要最小限のサイズで済み、コンパクトな省スペース化された格納装置1を実現することができた。
【0036】
図3(b)は変形例の離着陸部4aの格納状態を示している。この変形例では、接合部10の両側縁は、両隣の可動部9に回動自在に連結されている。従って変形例の格納状態では、立ち上がって閉状態となった可動部9に対し、接合部10は折れ部11で180°折れて重なり合い、可動部9の外側に突出した状態となる。このような構成の場合、接合部10が外側に突出している離着陸部4を収納できるサイズの開口3aを備えた格納部3が必要になる。しかし、可動部9は、その厚さの中に接合部10を収納する空洞を有する必要がなくなるため、可動部9の構造は簡素になる。
【0037】
次に、本実施形態のように、正六角形を基本形状として離着陸部4を構成することが好ましい理由について、
図4を参照して説明する。
以上説明した本実施形態では、離着陸部4の離着陸面Fを平面で実現するとともに、離着陸部4をコンパクトな折り畳み構造とするため、基部8を多角形状とし、その各辺に可動部9を開閉自在に接続する構造を採用しており、特に基部8を正六角形状とした。そして、基部8、可動部9及び接続部10で構成される離着陸部4と、離着陸部4が提供する離着陸面Fの形状は、以下に説明するように正六角形を充填した形状・構成を基本として決定しているが、これが発明の実施上、最適である理由は次の通りである。
【0038】
ドローンを安定して離着陸させるためには、広い離着陸面が必要となる。この場合、強度設計、加工方法、コスト等の観点から考えると、同形同サイズの多角形を連結して構成した形状に基づいて離着陸面をデザインすることが望ましい。1種類で平面を隙間なく充填できる正多角形は、正三角形、正方形、正六角形の3種類のみである。このように、平面内を有限種類の平面図形で隙間なく敷き詰めた場合、敷き詰めた平面図形からなる平面全体を平面充填形と称する。
【0039】
図4(a)に示すように、平面充填形を構成する平面図形のうち、六角形は三角形や四角形と比較して円に近く等方性が高い為、平面を充填するのに最も優れていると考えられる。
図4(b)に示すように、
図4(a)に示した正六角形による平面充填形の外方部分を適宜の直径の円形でカットすると、
図4(c)に示すように本実施形態における展開状態の離着陸部4及び離着陸面Fが得られる。
【0040】
また、
図4(a)に示した正六角形による平面充填形を基本とする、
図4(d)に示すような形状・構造の離着陸部4b及び離着陸面Fbも変形例として可能である。この変形例では、基部8の各辺を短辺とする6つの長方形を可動部9bとし、隣接する二つの可動部9bの対向する二つの長辺を底辺とする隣接した2つの二等辺三角形から構成される部分を接続部10bとしている。この変形例の場合も、実施形態と同様、格納状態では、接続部10bは折れ部11bで折れて両隣の可動部9内に収納される。変形例は、
図4(c)に示す実施形態よりも離着陸面Fbの面積が広い。
【0041】
このように、正六角形による平面充填形を形状のベースとして採用することで、同じ等方性を有する三角形や四角形による平面充填形を形状のベースとした場合や、異なる多角形を組み合わせた場合、例えば六角形に長方形などを組み合わせた場合と比較して、離着陸面F,Fbを構成する平面数を最小化できるため、最も高い強度が実現できる。
【0042】
また、本実施形態の離着陸部4は折り畳み構造であり、展開状態で生じる可動部9と可動部9の間の隙間を埋めるため、格納状態において可動部9の内部に収納される接続部10を採用したが、離着陸部4は正六角形をベースとした構造を採用しているので、接続部10のサイズは他の多角形を採用した場合よりも小さくでき、この点においても展開状態における強度は十分である。
【0043】
例えば、9個の同一正方形を正方形状に配列した平面充填形において、中央の正方形を基部とし、
図4(b)の要領で平面充填形の外方部分を適宜の直径の円形でカットすれば、全体として円形である離着陸部及び離着陸面が得られる。この離着陸部及び離着陸面も本発明の範囲であり、実施形態と共通の効果が得られるが、正六角形をベースとした実施形態に較べれば接続部はやや大きくなるため、比較的軽量なドローンを適用対象とすることが好ましい。
【0044】
また、図示はしないが、基部を正五角形又は正八角形とし、その外周が円弧状である略矩形の可動部を基部の各辺に開閉可能に連結し、可動部と可動部の隙間に適合する扇形の接続部を可動部に収納可能となるように設ければ、全体形状が円形である離着陸部及び離着陸面が得られる。これらも本発明の範囲であり、実施形態と共通の効果が得られる。
【0045】
次に、本実施形態では、離着陸部4の基部8は正六角形であり、天井部5の開閉口7の形状も略同サイズの正六角形であるが、このように天井部5の開閉口7の形状を基部8の形状に一致させることが好ましい理由について、
図5を参照して説明する。
【0046】
図5(a)は、前述した理由により正六角形による平面充填形を基本形として採用し、その外方部分を適宜の直径の円形ラインでカットすることにより、本実施形態の円形・平面状の離着陸部4及び離着陸面Fが得られることを示している。
【0047】
図5(b)は、
図5(a)により得られた本実施形態の離着陸部4の展開状態を、前記円形ラインでカットされて除去される部分とともに示している。この離着陸部4にドローン2が着陸し、格納部3に収納される際には、
図5(b)の紙面に略垂直、手前方向に可動部9が立ち上がり、接続部10は可動部9の内部に収納される。
【0048】
図5(c)は、ドローン2を載せた離着陸部4が格納部3内に下降するために可動部9を閉じた格納状態を示しており、平面視では基部8と略同形状の正六角形となっている。ここで、
図5(b)に示した展開状態の離着陸部4は、格納部3の開口3aを開閉する天井部5よりも上方に展開しているため、格納部3内に下降するためには天井部5の開閉口7を通過する必要がある。
【0049】
従って、
図5(d)に示すように、天井部5の開閉口7の形状を、離着陸部4の基部8の形状に合わせて若干大きいサイズの正六角形とすれば、格納状態にある離着陸部4は、この開閉部7を最小限の隙間をもって通過し、格納部3内に下降することができる。格納状態の離着陸部4が、天井部5の開閉口7を通過して展開状態に移行する場合も同様である。
【0050】
先に説明したようにドローン2の外形は平面視で正六角形の場合が多いため、本実施形態では基部8の形状を正六角形とし、さらに、これに合わせて天井部5の開閉口7の形状も略同一の正六角形として形状を一致させたため、開閉口7を最小限度の大きさとすることが可能となった。これにより、ドローン2の出入りの際に格納装置1の内部が外界に露出される開口面積が最小限に抑えられ、また格納装置1の省スペース化を実現することができた。
【0051】
さらに、天井部5の動作図である
図6に示すように、開閉口7を取り囲むように配置された複数の片部6は、同一の周方向(図中時計回り方向)に沿って矢印で示す異なる向きに移動して開閉口7を開く構造であるため、耐強風性能が従来の天井部に較べて高い。
【0052】
なお、本発明の離着陸部4の格納状態の形状及びこれに対応する天井部5の形状は正六角形としたが、他の正多角形を基本としてもよい。例えば、正三角形を基本形状とする離着陸部であれば、
図7に示すように、その中心において3つの等しい中心角度(120°)で分割された3以上の片部6aから構成された正三角形の天井部5aとすればよい。その場合、各片部6aは、前記中心角度を2等分する直線と直交する方向(矢印参照)に移動することにより、格納部3の開口3aに連通する正三角形の開閉口7aを開閉することができる。
【0053】
また、例えば、正八角形を基本形状とする離着陸部であれば、
図8に示すように、その中心において8つの等しい中心角度(45°)で分割された8の片部6bから構成された正八角形の天井部5bとすればよい。その場合、各片部6bは、前記中心角度を2等分する直線と直交する方向(矢印参照)に移動することにより、格納部3の開口3aに連通する正八角形の開閉口7bを開閉することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の格納装置1によれば、格納状態にある離着陸部4を、天井部5の開閉口7から上方に移動して展開させることで、ドローン2のサイズに応じた広い平面状の離着陸面Fを形成し、ドローン2を安定して安全に離着陸させることができる。また、着陸後の格納状態にある離着陸部4は、畳まれた可動部9がドローン2を囲む格納庫内壁としてドローン2の機体を保護、収納することができる。また、離着陸部4が折り畳み構造であるため、格納装置1の設置面積を小さくでき、省スペース化を実現できる。さらに、離着陸部4を折り畳んで格納部3内に収納する際、離着陸部4を縦方向に昇降して収納する構造としたため、格納装置1の格納部3が縦長となり、結果として離着陸面F4を人間の身長よりも高い位置に設定することができるため、安全性を確保できる。また、高さがあるため、格納部3内へ側面側からアクセスすることが容易となり、整備性が高い。
【符号の説明】
【0055】
1…格納装置
2…飛行体としてのドローン
3…格納部
3a…格納部の開口
4,4a,4b…離着陸部
5,5a,5b…天井部
6,6a,6b…片部
7,7a,7b…開閉口
8…基部
9,9b…可動部
10,10b…接合部
11,11b…折れ部
F,Fb…離着陸部