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特開2024-151012構築支援システム、構築支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151012
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】構築支援システム、構築支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241017BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241017BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064117
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 陽介
(72)【発明者】
【氏名】河野 俊介
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G064AC08
5G064BA02
5G064BA07
5G064CB06
5G064DA03
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】マイクログリッド系統を構築するための作業を支援する。
【解決手段】本開示の一態様は、発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得する取得部と、取得部により取得された条件情報に基づいてマイクログリッド系統に含まれる機能を選択する選択部と、選択部により選択された機能を含む提案情報をマイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信する送信部と、を備える、構築支援システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記条件情報に基づいて前記マイクログリッド系統に含まれる機能を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記機能を含む提案情報を前記マイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信する送信部と、
を備える、構築支援システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記条件情報として前記マイクログリッド系統のコスト情報を取得し、
前記選択部は、前記規模情報および前記コスト情報に基づいて前記マイクログリッド系統の機能を選択する、
請求項1に記載の構築支援システム。
【請求項3】
前記規模情報は、前記マイクログリッド系統の総電力量、区間数、IED(Intelligent Electronic Device)数、需要家設備数の少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項4】
前記規模情報は、変圧器および前記変圧器に接続された複数の送配電線を含む第1規模システム、および前記複数の送配電線のそれぞれの送配電線に設けられた遮断器または開閉器により区分される第2規模システムの何れかを示す、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項5】
前記第2規模システムは、単一の遮断器および前記単一の遮断器に接続された単一の送配電線を含む第3規模システム、前記単一の送配電線に含まれる複数の開閉器を含む第4規模システム、および前記単一の送配電線に含まれる単一の開閉器を含む第5規模システムの何れかを示す、請求項4に記載の構築支援システム。
【請求項6】
前記選択部は、前記マイクログリッド系統が前記第2規模システムである場合に、電力融通機能、保護整定値変更機能、およびコストシミュレーション機能を選択する、請求項4に記載の構築支援システム。
【請求項7】
前記選択部は、前記マイクログリッド系統が前記第2規模システムである場合に、電圧制御機能、系統切り替え機能、保護機能、訓練シミュレーション機能、およびエネルギー管理システム機能の少なくとも一つを選択する、請求項4に記載の構築支援システム。
【請求項8】
前記選択部は、前記マイクログリッド系統が前記第1規模システムである場合に、ブラックスタート機能および分散型エネルギー資源管理システム機能の少なくとも一つを選択する、請求項4に記載の構築支援システム。
【請求項9】
前記選択部は、前記規模情報に基づいて、発電抑制機能、負荷ピークカット機能または負荷ピークシフト機能を選択する、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項10】
前記選択部は、前記マイクログリッド系統の事業継続計画情報に基づいて、発電抑制機能、負荷ピ-クカット機能または負荷ピークシフト機能を選択する、請求項9に記載の構築支援システム。
【請求項11】
前記選択部は、前記規模情報に基づいて、状態変更時の通知機能、常予備違反監視、事故復旧機能、作業計画機能、潮流制御機能、および電圧制御機能の各々について選択または非選択とする、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項12】
前記選択部は、前記マイクログリッド系統の変圧器に主電源設備が設置されていないことに基づいて主電源設備の保護リレーの整定値を変更する機能を選択する、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項13】
前記選択部は、前記需要家施設にIEDが設置されていないことに基づいて前記需要家施設の保護リレーの整定値を変更する機能を選択する、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項14】
前記選択部は、前記マイクログリッド系統に接地変圧器が設置されていないことに基づいて接地用コンデンサを制御する機能を選択する、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項15】
前記選択部は、前記規模情報または前記需要家施設の変圧器の容量に基づいて励磁突入電流に対応する開閉器を制御する機能を選択する、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項16】
前記選択部は、前記規模情報、前記送配電施設の変圧器の容量、前記需要家施設の変圧器の容量に基づいてブラックスタート機能を選択する、請求項1または2に記載の構築支援システム。
【請求項17】
発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得するステップと、
前記条件情報に基づいて前記マイクログリッド系統に含まれる機能を選択するステップと、
選択された前記機能を含む提案情報を前記マイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信するステップと、
を含む、構築支援方法。
【請求項18】
情報処理装置のコンピュータに、
発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得するステップと、
前記条件情報に基づいて前記マイクログリッド系統に含まれる機能を選択するステップと、
選択された前記機能を含む提案情報を前記マイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築支援システム、構築支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクログリッド系統と称されるエネルギーシステムが知られている。マイクログリッド系統は、例えば、平常時においては電力会社系統に接続し、災害等による非常時においては自立して電力を供給するエネルギーシステムである。マイクログリッド系統といった系統計画の策定を支援する技術としては、例えば、特許文献1に記載された系統計画策定支援システムが知られている。系統計画策定支援システムは、系統計画で実施可能な対策の内容を含む対策情報に基づき系統計画候補を生成し、現在の電力系統の構成によって系統計画候補に含まれる対策を実行する場合の電力系統の構成を示す更新設備基本情報を生成し、更新設備基本情報に対して評価値を算出している。また、系統計画策定支援システムは、予め設定される計画期間内の各時間断面において更新設備基本情報を生成して評価値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-67941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された系統計画策定支援システムは計画期間内の各時間断面において更新設備基本情報を生成して評価値を算出しているが、マイクログリッド系統は、系統連系時と独立したグリッドで自律的に電力供給を行う時とで必要な設備または機能が異なる。したがって、特許文献1のように計画期間内の時間断面ごとに更新設備基本情報を生成しても、マイクログリッド系統に必要な設備または機能を選択する作業を支援することはできない。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マイクログリッド系統を構築するための作業を支援することができる構築支援システム、構築支援方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は上述した課題を解決するためになされたもので、本開示の一態様は、発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記条件情報に基づいて前記マイクログリッド系統に含まれる機能を選択する選択部と、前記選択部により選択された前記機能を含む提案情報を前記マイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信する送信部と、を備える、構築支援システムである。
【0007】
本開示の他の態様は、発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得するステップと、前記条件情報に基づいて前記マイクログリッド系統に含まれる機能を選択するステップと、選択された前記機能を含む提案情報を前記マイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信するステップと、を含む、構築支援方法である。
【0008】
本開示の他の態様は、情報処理装置のコンピュータに、発電施設、送配電施設および需要家施設を含むマイクログリッド系統の規模情報を含む条件情報を取得するステップと、前記条件情報に基づいて前記マイクログリッド系統に含まれる機能を選択するステップと、選択された前記機能を含む提案情報を前記マイクログリッド系統の構築作業に関連する端末装置に送信するステップと、を実行させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、マイクログリッド系統を構築するための作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態における構築支援システムの一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態におけるマイクログリッド系統に含まれる設備の一例を示す図である。
図3】実施の形態におけるマイクログリッド系統の機能的な構成の一例を示す図である。
図4】実施の形態における構築支援システムの動作手順の一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態における規模情報に応じたマイクログリッド系統の機能に関するテーブルデータの一例を示す図である。
図6】(A)は実施の形態において規模情報に基づいて選択された機能を示す図であり、(B)は実施の形態においてコスト情報に基づいて選択された機能を示す図である。
図7】実施の形態におけるマイクログリッド系統の規模、運用形態、主電源と、マイクログリッド系統の機能との関係の一例を示す図である。
図8】実施の形態におけるマイクログリッド系統の規模、運用形態、主電源と、マイクログリッド系統の機能との関係の他の一例を示す図である。
図9】実施の形態におけるマイクログリッド系統の規模、運用形態と、マイクログリッド系統の機能との関係の他の一例を示す図である。
図10】実施の形態におけるマイクログリッド系統の規模、運用形態、主電源と、マイクログリッド系統の機能との関係の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した構築支援システム、構築支援方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、実施の形態における構築支援システム1の一例を示すブロック図である。構築支援システム1は、例えば、構築支援装置100と、クライアント端末装置200と、マイクログリッド系統300とを備える。構築支援装置100、クライアント端末装置200、およびマイクログリッド系統300は、インターネット等の通信ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)または無線通信モジュールなどの通信インターフェース(不図示)を有する。ネットワークは、例えばインターネット等の汎用ネットワーク、およびローカル5GまたはWiFi(登録商標)などのプライベートなネットワークを含んでよい。
【0013】
マイクログリッド系統300は、例えば、平常時には電力会社系統と系統連系を行い、災害時などの非常時には電力会社系統から独立したグリッドで自律的に電力供給を行うことが可能な電力網である。マイクログリッド系統300は、例えば、発電施設300a、送配電施設300bおよび需要家施設300cを含む。クライアント端末装置200は、例えばマイクログリッド系統300の構築作業に関連する管理者により操作されるパーソナルコンピュータである。
【0014】
構築支援装置100は、通信ネットワークを介して情報を取得し、各種の処理を行う情報処理装置である。構築支援装置100は、例えば、取得部102と、選択部104と、送信部106と、監視制御部108とを備える。取得部102、選択部104、送信部106、および監視制御部108は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0015】
取得部102は、マイクログリッド系統300の規模情報を含む条件情報を取得する。選択部104は、取得部102により取得された条件情報に基づいてマイクログリッド系統300に含まれる機能を選択する。送信部106は、選択部104により選択された機能を含む提案情報をクライアント端末装置200に送信する。監視制御部108は、マイクログリッド系統300に監視信号および制御信号を出力する。構築支援装置100は、監視制御部108を備えることによりマイクログリッド系統300を監視および制御する監視制御装置としても機能する。なお、図1に示した構築支援装置100は、取得部102、選択部104、送信部106、および監視制御部108を一つの装置に備えるが、これに限定されず、構築支援システム1に含まれる異なる装置に各部が分散されて配置されてよい。
【0016】
図2は、実施の形態におけるマイクログリッド系統300に含まれる設備の一例を示す図である。
マイクログリッド系統300は、例えば、系統電源に接続された配電用の変圧器400と、遮断器302a、302b、および302cと、開閉器304a、304b、304c、304d、304e、304f、304g、304h、304iと、終端器305a、305bとを備える。マイクログリッド系統300は、第1規模システム、および、第1規模システムよりも規模が小さい第2規模システムを含む。第1規模システムは、変圧器400および変圧器400に接続された複数の送配電線306a、306b、306cを含むマイクログリッド系統である。第1規模システムは、例えば、配電用変電所に相当する規模であってよい。第1規模システムは、隣接する配電線と連携して系統切り替えが可能な規模であってよい。第1規模システムは、例えば20MWの容量を有する規模であってよい。
【0017】
第2規模システムは、複数の送配電線306a、306b、306cのそれぞれの送配電線306a、306b、306cに設けられた遮断器302a、302b、302cまたは開閉器304a、304b、304c、304d、304e、304f、304g、304h、304iにより区分されるマイクログリッド系統である。第2規模システムは、例えば、1つの配電線に相当する規模であってよい。第2規模システムは、隣接する配電線と連携して系統切り替えが可能な規模であってよい。第2規模システムは、例えば、2~5MW以下の規模であってよい。なお、以下の説明において遮断器を総称する場合には単に「遮断器302」と記載し、開閉器を総称する場合には単に「開閉器304」と記載し、終端器を総称する場合には単に「終端器305」と記載し、送配電線を総称する場合には単に「送配電線306」と記載する。
【0018】
第2規模システムは、これに限定されず、単一の遮断器302a、302b、302c、および単一の遮断器302a、302b、302cに接続された単一の送配電線306a、306b、306cを含む第3規模システム、単一の送配電線306a、306b、306cに含まれる複数の開閉器304a、304b、304c、304d、304e、304f、304g、304hを含む第4規模システム、単一の送配電線に含まれる単一の開閉器304iを含む第5規模システムの何れかであってよい。第3規模システムは図2に示す「中規模システム」であり、第4規模システムは図2に示す「小規模システム」であり、第5規模システムは図2に示す「特小規模システム」である。第4規模システムは、数区間に相当し、他フィーダ連系がなく、500kW~1MWの規模であってよい。第5規模システムは、単一区間に相当し、他フィーダ連系がなく、500kW以下の規模であってよい。一つの区間は、例えば、一つの開閉器304によって送配電線306から切り離される区間である。
【0019】
図3は、実施の形態におけるマイクログリッド系統300の機能的な構成の一例を示す図である。図3において、小規模システムを「小規模マイクログリッド系統300S」、中規模システムを「中規模マイクログリッド系統300M」、大規模システムを「大規模マイクログリッド系統300L」と記載している。
【0020】
小規模マイクログリッド系統300Sは、例えば、電力融通機能310、保護整定値変更機能312、およびコストシミュレーション機能314を備える。電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314は、例えば、小規模マイクログリッド系統300Sを管理する情報処理装置により実現される機能部、監視制御部108により実現される機能部、小規模マイクログリッド系統300Sを管理する情報処理装置と監視制御部108とが協働して実現される機能部である。電力融通機能310は、例えば、電力が不足地域と電力余剰地域とで相互に電力を融通しあう機能である。保護整定値変更機能312は、例えば、過負荷から設備を保護する機能である。コストシミュレーション機能314は、発電、送配電などのマイクログリッド系統300の運用に必要なコストをシミュレーションする機能である。
【0021】
中規模マイクログリッド系統300Mは、例えば、電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314、電圧制御機能316、系統切り替え機能318、保護設備または保護機能320、訓練シミュレーション機能322、EMS(Energy Management System、エネルギー管理システム)機能324を備える。電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314、電圧制御機能316、系統切り替え機能318、保護設備または保護機能320、訓練シミュレーション機能322、およびEMS機能324は、例えば、中規模マイクログリッド系統300Mを管理する情報処理装置により実現される機能部、監視制御部108により実現される機能部、中規模マイクログリッド系統300Mを管理する情報処理装置と監視制御部108とが協働して実現される機能部である。電圧制御機能316は、例えば、マイクログリッド系統300における各部の電圧を制御する機能である。系統切り替え機能318は、例えば平常時または非常時などの状況に応じて、マイクログリッド系統300に接続される系統を切り替える機能である。保護設備または保護機能320は、例えば異常または異常の予兆を検知してマイクログリッド系統300における設備を保護する機能である。訓練シミュレーション機能322は、例えば、非常時において独立して電力供給する動作をシミュレーションする機能である。EMS機能324は、例えばオペレータの操作に応じてマイクログリッド系統300に含まれる発電施設300aまたは送配電施設300bの動作を監視、制御、および最適化する機能である。
【0022】
大規模マイクログリッド系統300Lは、例えば、電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314、電圧制御機能316、系統切り替え機能318、保護設備または保護機能320、訓練シミュレーション機能322、EMS機能324、ブラックスタート機能326、DERMS(Distributed Energy Resource Management System、分散型エネルギー資源管理システム)機能328を備える。電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314、電圧制御機能316、系統切り替え機能318、保護設備または保護機能320、訓練シミュレーション機能322、EMS機能324、ブラックスタート機能326、DERMS機能328は、例えば、大規模マイクログリッド系統300Lを管理する情報処理装置により実現される機能部、監視制御部108により実現される機能部、大規模マイクログリッド系統300Lを管理する情報処理装置と監視制御部108とが協働して実現される機能部である。ブラックスタート機能326は、マイクログリッド系統300をブラックスタートさせる制御を行う機能である。DERMS機能328は、マイクログリッド系統300に分散された発電施設300aを統合的に管理または制御する機能である。
【0023】
図4は、実施の形態における構築支援システム1の動作手順の一例を示すフローチャートである。
構築支援装置100は、マイクログリッド系統300から各種のデータS10を取得する。構築支援装置100は、例えば、マイクログリッド系統300に含まれる発電施設300a、送配電施設300b、需要家施設300c、遮断器302、開閉器304の動作状態などを表す情報を取得する。監視制御部108は、取得したデータS10に基づいてマイクログリッド系統300に含まれる各部を監視および制御する(ステップST100)。
【0024】
クライアント端末装置200は、マイクログリッド系統300の管理者の操作を受け付けたことに基づいて条件情報を生成し、生成した条件情報S30を構築支援装置100に送信する。取得部102は、クライアント端末装置200から条件情報S30を取得する。クライアント端末装置200は、例えばマイクログリッド系統300に含まれる範囲を指定する操作を受け付けたことに応じてマイクログリッド系統300の規模情報を生成してよい。例えば、クライアント端末装置200は、電力系統の構成を表す電力系統図のうち、図2における大規模マイクログリッド系統300Lの範囲を指定する操作を受け付けた場合には大規模システムを示す規模情報を生成し、図2における中規模マイクログリッド系統300Mの範囲を指定する操作を受け付けた場合には中規模システムを示す規模情報を生成し、図3における小規模マイクログリッド系統300Sの範囲を指定する操作を受け付けた場合には小規模システムを示す規模情報を生成する。
【0025】
条件情報S30は、規模情報を含む。規模情報は、マイクログリッド系統300の総電力量、区間数、IED(Intelligent Electronic Device)数、需要家施設数の少なくとも一つを含んでよい。総電力量は、例えば、発電施設300aの発電量または需要家施設300cの消費量に関する電力量の合計値である。区間数は、例えば、遮断器302または開閉器304により区分される区間の数である。IEDは、例えば、保護リレー、電圧および電流の計測機能、外部装置との通信機能を持つ機器である。規模情報は、マイクログリッド系統300が第1規模システム、第2規模システムの何れかを示す情報であってよい。規模情報は、第2規模システムが第3規模システム、第4規模システム、第5規模システムの何れかを示す情報であってよい。
【0026】
選択部104は、条件情報S30に基づいてマイクログリッド系統300に含まれる機能を選択する(ステップST102)。選択部104は、例えば、条件情報S30に基づいてマイクログリッド系統300が小規模マイクログリッド系統300Sであると判定した場合、電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314を選択する。選択部104は、マイクログリッド系統300が中規模マイクログリッド系統300Mであると判定した場合、必須の機能と電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314を選択し、オプション機能として電圧制御機能316、系統切り替え機能318、保護設備または保護機能320、訓練シミュレーション機能322、EMS機能324を選択する。選択部104は、マイクログリッド系統300が大規模マイクログリッド系統300Lであると判定した場合、必須の機能として電力融通機能310、保護整定値変更機能312、コストシミュレーション機能314、電圧制御機能316、系統切り替え機能318、保護設備または保護機能320、訓練シミュレーション機能322、EMS機能324を選択し、オプションの機能として、ブラックスタート機能326、DERMS機能328を選択してよい。
【0027】
送信部106は、選択した機能を示す提案情報S20をクライアント端末装置200に送信する(ステップST104)。クライアント端末装置200は、提案情報S20を受信し、提案情報S20により示された機能を表示する。クライアント端末装置200は、管理者の操作を受け付けることによりマイクログリッド系統300の機能を選択し(ステップST110)、選択された機能を示す機能要求S32を構築支援装置100に送信する(ステップST112)。
【0028】
監視制御部108は、機能要求S32に基づいて、選択された機能に関する処理を行い(ステップST106)、マイクログリッド系統300との間で制御信号および監視信号を送受信する。これにより監視制御部108は、管理者に選択された機能を提供することができる。
【0029】
図5は、実施の形態における規模情報に応じたマイクログリッド系統300の機能に関するテーブルデータの一例を示す図である。選択部104は、図3に示した規模に応じた機能を選択するため、図5に示したように、マイクログリッド系統300の規模と機能との関係を示すテーブルデータを記憶してよい。これにより選択部104は、規模情報に基づいてマイクログリッド系統300の機能を選択することができる。
【0030】
なお、取得部102は、マイクログリッド系統300から取得したデータS10に基づいて規模情報を取得してよい。取得部102は、例えば、マイクログリッド系統300に含まれる設備や機器に含まれるコンピュータに機器情報を返信する問い合わせ情報を送信し、マイクログリッド系統300から返信された機器情報に基づいてマイクログリッド系統300にどのような設備や機器が存在するかを判定する。取得部102は、マイクログリッド系統300に存在する設備や機器の判定結果に基づいてマイクログリッド系統300の規模情報を取得することができる。
【0031】
図6(A)は実施の形態において規模情報に基づいて選択された機能を示し、図6(B)は実施の形態においてコスト情報に基づいて選択された機能を示す。選択部104は、図6(A)に示すように規模情報に基づいてマイクログリッド系統300の規模毎に機能を選択し、図6(B)に示すように、コスト情報に基づいて、選択された機能を更新してよい。コスト情報は、マイクログリッド系統300を構築するための初期費用、マイクログリッド系統300を運用するためのランニングコストの少なくとも一方であってよい。選択部104は、例えば、大規模マイクログリッド系統300Lの機能として機能A、機能B、および機能Cを選択した場合において、コスト情報に基づいて機能A、機能B、および機能Cのうち機能Cを削除しないようにする。選択部104は、マイクログリッド系統300の機能の優先度情報に基づいて複数の機能のうちコスト情報に基づいて削除する機能を選択してよく、管理者の要求に基づいて削除する機能を選択してよい。
【0032】
図7は、実施の形態におけるマイクログリッド系統300の規模、運用形態、主電源と、マイクログリッド系統300の機能との関係の一例を示す図である。選択部104は、マイクログリッド系統300の規模、運用形態、および主電源に基づいて、マイクログリッド系統300の機能を選択してよい。マイクログリッド系統300の運用形態は、例えば常時または非常時の何れかである。マイクログリッド系統300の主電源は、例えば回転機(発電機)またはインバータ電源(INV)の何れかである。選択部104は、規模に拘わらず、発電予測機能および需要予測機能、需要計画機能、需給制御機能を選択してよい。選択部104は、マイクログリッド系統300の主電源がインバータ電源である場合、需給制御機能を選択しなくてよい。選択部104は、大規模システムおよび中規模システムである場合には発電抑制機能および負荷ピークカット機能または負荷ピークシフト機能を選択し、小規模システムおよび特小規模システムである場合には発電抑制機能および負荷ピークカット機能または負荷ピークシフト機能を選択しない。
【0033】
なお、選択部104は、図7に示すように、マイクログリッド系統300が主電源の種類に応じて機能を選択または非選択としてよい。選択部104は、例えば、主電源が回転機である場合には需給制御機能を選択し、主電源がインバータ電源である場合には需給制御機能を選択しない。
【0034】
図8は、実施の形態におけるマイクログリッド系統300の規模、運用形態、主電源と、マイクログリッド系統300の機能との関係の他の一例を示す図である。選択部104は、例えばクライアント端末装置200から受信した事業継続計画(business continuity planning、BCP)情報に基づいて、マイクログリッド系統300の規模に基づいて選択した機能に加えて、他の機能を選択してよい。事業継続計画情報は、例えば、非常時にマイクログリッド系統300を継続して運用するための計画を示す情報である。事業継続計画は、例えば、電力会社系統から切り離された場合に、発電事業者に発電抑制を求めるか否か、需要家に負荷ピークカットまたはピークシフトを求めるか否かを表す。選択部104は、例えば、中規模システムについて発電抑制機能および負荷ピークカット機能または負荷ピークシフト機能を選択してよい。
【0035】
図9は、実施の形態におけるマイクログリッド系統300の規模、運用形態と、マイクログリッド系統300の機能との関係の他の一例を示す図である。図9において「○/×」は、規模、コスト情報を含む条件情報S30に基づいて選択部104により選択(○)または非選択(×)されることを示す。選択部104は、図9に示す関係を表すテーブルデータを参照し、大規模システムおよび中規模システムについて、例えば状態変更時の通知機能を選択(○)してよい。状態変更時の通知機能は、例えば、クライアント端末装置200から警報を鳴動させる警報鳴動機能、クライアント端末装置200に各種機器の状態を表示させる機器表示機能、各種機器の動作ログをクライアント端末装置200に出力するログ出力機能である。選択部104は、例えば、小規模システムおよび特小規模システムについて常予備違反監視機能、作業計画機能、潮流制御および電圧制御機能を非選択(×)とすることができる。選択部104は、例えば、特小規模システムについて事故復旧機能を非選択(×)とすることができる。常予備違反監視機能は、例えば、マイクログリッド系統300の予備的な設備を監視する機能である。作業計画機能は、例えば、マイクログリッド系統300の平常時または非常時の作業やメンテナンス作業を計画する機能である。潮流制御機能は、送配電線306における電力の潮流を制御する機能である。電圧制御機能は、マイクログリッド系統300における各部の電圧を制御する機能である。事故復旧機能は、例えば、マイクログリッド系統300の事故から復旧するためのデータを監視制御部108に送信する機能、監視制御部108の制御に従って再起動する機能である。
【0036】
なお、選択部104は、図9に示すように、マイクログリッド系統300の規模に加えて、マイクログリッド系統300の運用形態が常時か非常時かに応じて機能を選択または非選択としてよい。選択部104は、例えば、運用形態が常時である場合、大規模システムについての設備メンテナンス機能を選択し、運用形態が非常時である場合、大規模システムについての設備メンテナンス機能を非選択とする。
【0037】
図10は、実施の形態におけるマイクログリッド系統300の規模、運用形態、主電源と、マイクログリッド系統300の機能との関係の他の一例を示す図である。
選択部104は、大規模システムの変圧器400に主電源設備が設置されていないことに基づいてマイクログリッド系統300に主電源設備の保護リレーの整定値を変更する機能を選択してよい。選択部104は、例えば、大規模システムおよび中規模システムにおいて変圧器400に主電源設備が設置されている場合には、主電源設備における保護リレーの整定値変更機能を非選択としてよい。選択部104は、大規模システムおよび中規模システムにおいて主電源設備が変圧器400と離れて設置されている場合、主電源設備における保護リレーの整定値変更機能を選択してよい。
【0038】
選択部104は、需要家施設300cにIEDが設置されていないことに基づいてマイクログリッド系統300に需要家施設300cの保護リレーの整定値を変更する機能を選択する。選択部104は、例えば、需要家の受電設備に保護リレーを備えたIEDが設置することができない場合、主電源において需要家施設300cにおける保護リレーの整定値変更機能を選択する。選択部104は、需要家の受電設備にIEDが設置されている場合、主電源における保護リレーの整定値変更機能を非選択にする。
【0039】
選択部104は、マイクログリッド系統300に接地変圧器が設置されていないことに基づいて接地用コンデンサを制御する機能を選択する。選択部104は、例えば、変圧器400が接地変圧器(Earthed Voltage Transformer、EVT)である場合には、大規模システムおよび中規模システムにおけるEVTまたは接地用コンデンサの制御機能を非選択とする。選択部104は、主電源が変圧器400と離れて設置されている場合、大規模システムおよび中規模システムにおいてEVTまたは接地用コンデンサの制御機能を選択する。
【0040】
選択部104は、規模情報または需要家施設300cの変圧器の容量に基づいて励磁突入電流に対応する開閉器304を制御する機能を選択する。また、選択部104は、例えば、マイクログリッド系統300の規模に加え、マイクログリッド系統300の運用形態、および高圧需要家の変圧器容量に応じて励磁突入電流を抑制するための開閉器304の制御機能を選択してよい。
【0041】
選択部104は、規模情報、送配電施設300bの変圧器の容量、需要家施設300cの変圧器の容量に基づいてブラックスタート機能を選択する。選択部104は、例えば、大規模システムおよび中規模システムにおいてブラックスタート機能を選択し、特小規模システムにおいてブラックスタート機能を非選択としてよい。また、選択部104は、マイクログリッド系統300の区間数、柱上変圧器、高圧需要家の変圧器容量に応じて小規模システムのブラックスタート機能の選択または非選択を判定してよい。
【0042】
以上のように、実施の形態の構築支援システム1によれば、マイクログリッド系統300の規模情報を含む条件情報を取得し、条件情報に基づいてマイクログリッド系統300に含まれる機能を選択し、選択された機能を含む提案情報をマイクログリッド系統300の構築作業に関連するクライアント端末装置200に送信することができる。これにより構築支援システム1によれば、マイクログリッド系統300を構築するときに、マイクログリッド系統300の規模を取得するだけでマイクログリッド系統300に含まれる機能を含む提案情報をクライアント端末装置200に送信することができる。これにより構築支援システム1によれば、選択されたマイクログリッド系統300の機能を参照させることによってマイクログリッド系統300を構築するための作業を支援することができる。
【0043】
また、構築支援システム1によれば、マイクログリッド系統300の規模に加えてコスト情報を考慮したマイクログリッド系統300の機能を含む提案情報をクライアント端末装置200に送信することができる。これにより構築支援システム1によれば、コストを考慮してマイクログリッド系統300を構築するための作業を支援することができる。
【0044】
なお、各実施形態および変形例について説明したが、一例であってこれらに限られず、例えば、各実施形態や各変形例のうちのいずれかや、各実施形態の一部や各変形例の一部を、他の1または複数の実施形態や他の1または複数の変形例と組み合わせて本発明の一態様を実現させてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…構築支援システム、100…構築支援装置、102…取得部、104…選択部、106…送信部、108…監視制御部、200…クライアント端末装置、300…マイクログリッド系統、300L…大規模マイクログリッド系統、300M…中規模マイクログリッド系統、300S…小規模マイクログリッド系統、302、302a、302b、302c…遮断器、304、304a、304b、304c、304d、304e、304f、304g、304h、304i…開閉器、305、305a、305b…終端器、306、306a、306b、306c…送配電線、310…電力融通機能、312…保護整定値変更機能、314…コストシミュレーション機能、316…電圧制御機能、318…系統切り替え機能、320…保護機能、322…訓練シミュレーション機能、324…EMS機能、326…ブラックスタート機能、328…DERMS機能、400…変圧器
図1
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図10