(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151045
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】分注装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241017BHJP
B65H 3/00 20060101ALI20241017BHJP
B65H 3/32 20060101ALI20241017BHJP
B65G 60/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
B65H3/00 301
B65H3/32
B65G60/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064156
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511155187
【氏名又は名称】株式会社サイフューズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 康太
(72)【発明者】
【氏名】溶田 涼
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知明
【テーマコード(参考)】
3F343
4B029
【Fターム(参考)】
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC05
3F343GD04
3F343HA12
3F343JC10
3F343JC12
3F343JC15
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA13
3F343LB10
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB12
4B029DG08
4B029DG10
4B029HA04
(57)【要約】
【課題】細胞塊が分注されるトレイを1つずつ確実に搬送することができる分注装置を提供すること。
【解決手段】分注装置1は、細胞塊が分注される複数のトレイ3を保管する第1トレイ保管部51と、トレイ3を把持するトレイグリッパ53aを有し、トレイ3を搬送するトレイ搬送部53と、を備え、トレイ3は、トレイ本体部3aから突出するフランジ部3bと、トレイ本体部3aの底面に接着部材3dを介して取り付けられているシート部材3cと、備え、第1トレイ保管部51では、複数のトレイ3が上下方向に沿って積層され、上下方向で互いに隣接する2つのトレイ3のうち一方のトレイ3の上面と他方のトレイ3のシート部材3cが接触しており、トレイグリッパ53aは、第1トレイ保管部51で互いに隣接する2つのトレイ3のフランジ部3bの間に差し入れられる一対の第1爪部54を有し、第1爪部54は、2つのトレイ3のフランジ部3bそれぞれに当たる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞塊が分注される複数のトレイを保管するトレイ保管部と、
前記トレイを把持するグリッパを有し、前記トレイを前記トレイ保管部から搬送するトレイ搬送部と、を備え、
前記トレイは、
本体部と、
前記本体部から側方に向けて突出するフランジ部と、
前記本体部の底面に接着部材を介して取り付けられているシート部材と、備え、
前記トレイ保管部では、複数の前記トレイが上下方向に沿って積層され、上下方向で互いに隣接する2つの前記トレイのうち一方の前記トレイの前記本体部の上面と他方の前記トレイの前記シート部材が接触しており、
前記グリッパは、前記トレイ保管部で上下方向において互いに隣接する2つの前記トレイの前記フランジ部の間に差し入れられる一対の第1爪部を有し、
前記第1爪部は、2つの前記トレイの前記フランジ部の間に差し入れられたときに、2つの前記トレイの前記フランジ部それぞれに当たる、
分注装置。
【請求項2】
前記第1爪部は、前記第1爪部の先端から基端に向かうほど上下方向の幅が大きくなる、
請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記グリッパは、2つの前記トレイの前記フランジ部の間に差し入れられた状態で、2つの前記トレイのうち上側の前記トレイの前記フランジ部を挟んで前記第1爪部の反対側に位置する第2爪部をさらに有し、
前記第2爪部は、2つの前記トレイの前記フランジ部の間に前記第1爪部が差し入れられたときに、前記トレイの側面視において前記フランジ部から離れており、かつ、前記トレイの平面視において前記フランジ部と重なる、
請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記トレイ保管部は、複数の前記トレイのうち最も下方に位置する前記トレイを支持する支持部を備え、
前記支持部は、前記本体部および前記シート部材から離れた状態で前記フランジ部を支持する、
請求項1に記載の分注装置。
【請求項5】
前記トレイ保管部は、前記トレイを上下方向に沿って案内する案内部材を備える、
請求項1に記載の分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、細胞塊が分注される前の複数の積層トレイが上下方向に沿って積層された状態で保管されている積層トレイ供給器、および、積層トレイ供給器から供給された積層トレイが固定される積層トレイ固定台を備える装置が開示されている。積層トレイは、積層トレイ供給器から1つずつ積層トレイ固定台に供給(搬送)され、積層トレイ固定台で細胞塊を分注される。積層トレイは、本体部、本体部を貫通するウェル孔、および、本体部の底面に配置されてウェル孔を覆うシートを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞塊を分注するためのトレイには複数の種類がある。例えば、底部に孔がないウェルを有するトレイ、および、底部に孔があるウェルを有するトレイがある。後者のトレイでは、針状体が孔を介してウェルを貫通することができる。しかし、分注の操作内容によりその都度適切なトレイを選択する作業には手間がかかる。また、トレイの選択を誤ると装置を破損してしまう恐れがある。したがって、上述した2つのトレイのどちらかを選択する作業を回避するためには、特許文献1に開示されている上記の積層トレイを用いるが好ましい。当該積層トレイ(トレイ)は、シートがウェル孔の底部を形成するとともに、針状体がシートを貫通することができる。つまり、当該トレイを用いることで、トレイを選択する作業が不要となる。
【0005】
しかしながら、シートを本体部に貼り付けるための接着部材が粘着性を有する状態で積層トレイ供給器(トレイ保管部)に複数のトレイが積層された状態で保管されている場合、接着部材によって上下方向で互いに接触している2つのトレイが互いに貼り付いており、トレイを1つずつ搬送することが困難となる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、細胞塊が分注されるトレイを1つずつ確実に搬送することができる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る分注装置は、細胞塊が分注される複数のトレイを保管するトレイ保管部と、前記トレイを把持するグリッパを有し、前記トレイを前記トレイ保管部から搬送するトレイ搬送部と、を備え、前記トレイは、本体部と、前記本体部から側方に向けて突出するフランジ部と、前記本体部の底面に接着部材を介して取り付けられているシート部材と、備え、前記トレイ保管部では、複数の前記トレイが上下方向に沿って積層され、上下方向で互いに隣接する2つの前記トレイのうち一方の前記トレイの前記本体部の上面と他方の前記トレイの前記シート部材が接触しており、前記グリッパは、前記トレイ保管部で上下方向において互いに隣接する2つの前記トレイの前記フランジ部の間に差し入れられる一対の第1爪部を有し、前記第1爪部は、2つの前記トレイの前記フランジ部の間に差し入れられたときに、2つの前記トレイの前記フランジ部それぞれに当たる。
【0008】
これによれば、上下方向で互いに隣接する2つのトレイのうち上方に位置するトレイの接着部材によって2つのトレイが互いに貼りついている場合においても、グリッパの第1爪部は、2つのトレイを引き離すことができる。2つのトレイが互いに貼り付くことは、例えば、シート部材の周縁から接着部材がはみ出しており、接着部材が粘着性を有している場合に生じる可能性がある。一対の第1爪部によって、グリッパは、1つのトレイを把持することができる。したがって、分注装置は、細胞塊が分注されるトレイをトレイ搬送部によって1つずつ確実に搬送することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る分注装置において、前記第1爪部は、前記第1爪部の先端から基端に向かうほど上下方向の幅が大きくなる。
【0010】
これによれば、2つのトレイのフランジ部の間に第1爪部が差し入れられたときに、第1爪部は、2つのトレイを確実に引き離すことができる。
【0011】
本発明の一態様に係る分注装置において、前記グリッパは、2つの前記トレイの前記フランジ部の間に差し入れられた状態で、2つの前記トレイのうち上側の前記トレイの前記フランジ部を挟んで前記第1爪部の反対側に位置する第2爪部をさらに有し、前記第2爪部は、2つの前記トレイの前記フランジ部の間に前記第1爪部が差し入れられたときに、前記トレイの側面視において前記フランジ部から離れており、かつ、前記トレイの平面視において前記フランジ部と重なる。
【0012】
これによれば、第2爪部は、第1爪部が2つのトレイを引き離すことを妨げない。また、トレイ搬送部がトレイを搬送しているとき、第2爪部は、グリッパからトレイが外れることを防止することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る分注装置において、前記トレイ保管部は、複数の前記トレイのうち最も下方に位置する前記トレイを支持する支持部を備え、前記支持部は、前記本体部および前記シート部材から離れた状態で前記フランジ部を支持する。
【0014】
これによれば、トレイの接着部材がトレイ保管部に貼りつくことを抑制することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る分注装置において、前記トレイ保管部は、前記トレイを上下方向に沿って案内する案内部材を備える。
【0016】
これによれば、複数のトレイが上下方向に沿って整列した状態で複数のトレイをトレイ保管部に保管することができる。つまり、複数のトレイのフランジ部は、上下方向に沿って整列した状態で並ぶ。よって、第1爪部は、2つのトレイのフランジ部の間に差し入れられたときに、2つのトレイのフランジ部それぞれに確実に当たることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分注装置は、細胞塊が分注されるトレイを1つずつ確実に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る分注装置の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すVI-VI線に沿ったトレイの断面図である。
【
図7】
図7は、複数のトレイが保管されている状態のトレイ処理部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、+Z側から見た第1トレイ保管部の平面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すIX-IX線に沿った第1トレイ保管部の断面図である。
【
図10】
図10は、トレイが保管されていない状態のトレイ処理部を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、複数のトレイが保管されている状態の第1トレイ保管部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態のおよび各変形例の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0020】
また、以下の説明においては、Z方向を分注装置1の上下方向とし、X方向を分注装置1の幅方向とし、Y方向を分注装置1の奥行方向とする。Z方向において矢印が指し示す側を上側とし、その反対側を下側とする。X方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する。なお、X、Y、Zの方向は一例であって、本開示はこれらの方向に限定されない。また、本明細書において、「分注装置1の上面視」は分注装置1の上側からZ方向(上下方向)に沿って分注装置1を見ることであり、「分注装置1の側面視」はX方向またはY方向に沿って分注装置1を見ることである。
【0021】
図1は、本開示の実施形態に係る分注装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示す分注装置1の一部の上面図である。
図3は、分注装置1の一部の斜視図である。
図3は、後述するプレート搬送部42の構成を示す。なお、
図1および
図2において後述する第1案内部材70aおよび第2案内部材70bの図示は省略されている。
【0022】
分注装置1は、細胞塊が収納されているウェルプレート2から細胞塊をトレイ3へ分注する分注処理を行う装置である。
図2および
図3に示すように、ウェルプレート2は、平面視矩形状であり、細胞塊が収納される穴部2a1を複数有するプレート本体部2a、および、複数の穴部2a1を覆うプレート蓋部2bを有する。トレイ3の詳細は後述する。
【0023】
図1および
図2に示すように、分注装置1は、板状の基台10、高床台20、低床台30、プレート処理部40、トレイ処理部50、および、分注処理部80を備えている。なお、
図2には、分注処理部80の一部が省略されている。
【0024】
基台10には、高床台20および低床台30がX方向に沿って並べて配置されている。高床台20の天板21は、低床台30の天板31よりも高い位置にある。
【0025】
プレート処理部40は、高床台20に配置されている。プレート処理部40は、第1プレート保管部41、プレート搬送部42、および、第2プレート保管部43を備えている。第1プレート保管部41および第2プレート保管部43は、X方向に沿って並んでいる。
【0026】
第1プレート保管部41は、複数のウェルプレート2が上下方向に沿って積層された状態で分注処理前のウェルプレート2を保管する。第1プレート保管部41で保管されているウェルプレート2は、ウェルプレート2の側方をカバーCで囲まれている。分注処理前のウェルプレート2には、細胞塊が収納されている。第1プレート保管部41で保管されているウェルプレート2において、プレート蓋部2bはプレート本体部2aに載せられている(
図3参照)。
【0027】
プレート搬送部42は、第1プレート保管部41から、1つのウェルプレート2を分注処理が行われる第1分注位置Pf1に搬送する。第1分注位置Pf1は高床台20より+X側にある。第1分注位置Pf1に位置するウェルプレート2の高さは低床台30の天板31の高さとほぼ同じである。
【0028】
図4は、
図3とは異なる方向から見た
図3に示す分注装置1の斜視図である。なお、
図3および
図4では高床台20およびプレート搬送部42が示され、他の分注装置1の構成要素は省略されている。
【0029】
図3および
図4に示すように、プレート搬送部42は、プレートグリッパ42a、第1搬送台42b、第1プレート搬送アクチュエータ42c(
図3参照)、第2搬送台42d、第2プレート搬送アクチュエータ42e、第3搬送台42f(
図4参照)、および、第3プレート搬送アクチュエータ42gを備えている。
【0030】
プレートグリッパ42aは、第1プレート保管部41で保管されている複数のウェルプレート2のうち、最も下方に位置する1つのウェルプレート2を把持する。プレートグリッパ42aは、互いに近づく方向および離れる方向に移動可能な一対の第1グリッパ腕部42a1(
図4参照)、および、一対の第1グリッパ腕部42a1を互いに近づく方向および離れる方向に移動させる第1グリッパ駆動部42a2を備える。
【0031】
プレートグリッパ42aは、一対の第1グリッパ腕部42a1がウェルプレート2の側方からプレート本体部2aを挟むことで1つのウェルプレート2を把持する。すなわち、プレートグリッパ42aによって把持されている1つのウェルプレート2の上にウェルプレート2が載せられている状態で、複数のウェルプレート2が第1プレート保管部41に保管されている。
【0032】
高床台20の天板21はウェルプレート2が上下方向に沿って通ることができる第1開口部21a(
図4参照)を有し、プレートグリッパ42aによって把持されているウェルプレート2は、分注装置1の上面視で第1開口部21aの内側に位置し、分注装置1の側面視で天板21とほぼ重なっている。
【0033】
第1搬送台42bは板状であり、第1搬送台42bには、プレートグリッパ42aによって把持されているウェルプレート2が乗せられる。プレートグリッパ42aによって把持されているウェルプレート2の底面に第1搬送台42bが接触している状態で、一対の第1グリッパ腕部42a1がプレート本体部2aから離れることで、ウェルプレート2が第1搬送台42bに乗せられる。
【0034】
第1プレート搬送アクチュエータ42c(
図3参照)は、第1搬送台42bを上下方向に沿って移動させる。第1プレート搬送アクチュエータ42cは、基台10に固定されている固定部42c1、固定部42c1に対して上下方向に沿って移動可能な可動部42c2、可動部42c2を移動させる駆動部(不図示)、および、可動部42c2と第1搬送台42bとを連結する連結部42c3を備えている。
【0035】
第1プレート搬送アクチュエータ42cによって第1搬送台42bが上下方向に沿って下方に移動することで、第1搬送台42bに乗せられたウェルプレート2が下方に移動する。このとき、プレートグリッパ42aの一対の第1グリッパ腕部42a1にプレート蓋部2bが引っかかることで、プレート蓋部2bがプレート本体部2aから外れ、プレート本体部2aが第1搬送台42bに乗って下方に移動し、プレート蓋部2bは一対の第1グリッパ腕部42a1に保持された状態で第1プレート保管部41に残る。
【0036】
第2搬送台42d(
図3参照)は、枠状である。第1搬送台42bは、上下方向に沿って第2搬送台42dの内側を通り抜けることができる。第1搬送台42bが上方から下方に向けて第2搬送台42dを通り抜けることで、プレート本体部2aが第2搬送台42dに引っかかり、第2搬送台42dに乗る。
【0037】
第2プレート搬送アクチュエータ42eは、第2搬送台42dをX方向に沿って移動させる。第2プレート搬送アクチュエータ42e(
図3参照)は、基台10に固定されている固定部42e1、固定部42e1に対してX方向に沿って移動可能な可動部42e2、可動部42e2を移動させる駆動部(不図示)を備えている。可動部42e2には、第2搬送台42dが固定されている。
【0038】
第2プレート搬送アクチュエータ42eによって第2搬送台42dがX方向に沿って+Xに移動することで、第2搬送台42dに乗せられたプレート本体部2aは第1プレート保管部41の下方の位置から第1分注位置Pf1(
図1および
図2参照)に移動する。
【0039】
さらに、プレート搬送部42は、分注処理が終了したウェルプレート2を第2プレート保管部43に搬送する。分注処理が終了したプレート本体部2aは、第2プレート搬送アクチュエータ42eによって第1分注位置Pf1から第1プレート保管部41の下方の位置に移動する。
【0040】
プレート本体部2aが第1プレート保管部41の下方の位置する状態で第1搬送台42bが上方に移動することで、第1搬送台42bがプレート本体部2aを持ち上げ、プレート本体部2aが第2搬送台42dから外れて、プレートグリッパ42aに保持されているプレート蓋部2bと接触する。
【0041】
プレート本体部2aとプレート蓋部2bとが接触した状態で、一対の第1グリッパ腕部42a1が互いに離れ、第1搬送台42bが下方に移動することで、プレート蓋部2bが一対の第1グリッパ腕部42a1に引っかからずにプレート蓋部2bがプレート本体部2aに乗せられた状態でウェルプレート2が下方に移動する。このとき、第1プレート保管部41に保管されている複数のウェルプレート2すべてが下方に移動し、複数のウェルプレート2のうち下側から2番目のウェルプレート2をプレートグリッパ42aが把持する。これにより、分注処理後のウェルプレート2のみが第1搬送台42bに乗ってさらに下方に移動する。
【0042】
さらに、第1搬送台42bが第2搬送台42dを通過することで、ウェルプレート2が第2搬送台42dに乗せられる。第2搬送台42dに乗せられたウェルプレート2は、第2プレート搬送アクチュエータ42eによって第2プレート保管部43の下方の位置まで搬送される。
【0043】
第3搬送台42f(
図4参照)は、第1搬送台42bと同様の板状であり、第2プレート保管部43の下方に位置する第2搬送台42dの内側を上下方向に沿って通り抜けることができる。
【0044】
第3プレート搬送アクチュエータ42g(
図4参照)は、第3搬送台42fを上下方向に沿って移動させる。第3プレート搬送アクチュエータ42gは、基台10に固定されている固定部42g1、固定部42g1に対して上下方向に沿って移動可能な可動部42g2、可動部42g2を移動させる駆動部(不図示)、および、可動部42g2と第3搬送台42fとを連結する連結部42g3を備えている。
【0045】
第3プレート搬送アクチュエータ42gによって第3搬送台42fが上下方向に沿って上方に移動することで、第3搬送台42fは、第2搬送台42dに乗せられたウェルプレート2と接触し、ウェルプレート2を持ち上げ、第2搬送台42dを通り抜ける。
【0046】
高床台20の天板21はウェルプレート2が上下方向に沿って通ることができる第2開口部21b(
図4参照)、および、分注装置1の上面視で第2開口部21bの内側に突出する向きに付勢されている一対の突起部21c(
図4参照)を備えている。第3搬送台42fが上方に移動すると、ウェルプレート2は突起部21cに当たることで一対の突起部21cを後退させて、第2開口部21bを通り抜ける。さらに第3搬送台42fが上方に移動することで、ウェルプレート2が第2プレート保管部43に収納される。このとき、突起部21cが第2開口部21bの内側に突出し、ウェルプレート2を支持する。
【0047】
このように、プレート処理部40は、分注処理前の複数のウェルプレート2を保管するとともに、プレート本体部2aを第1分注位置Pf1に移動させ、分注処理後のウェルプレート2を保管する。
【0048】
次に、
図1および
図2に示すトレイ処理部50にて取り扱われるトレイ3の形状について説明する。分注処理によって、トレイ3には細胞塊が分注される。トレイ3は板状である。
【0049】
図5は、トレイ3の平面図である。
図6は、
図5に示すVI-VI線に沿ったトレイ3の断面図である。
図5および
図6において、トレイ3の厚さ方向を第1方向D1とし、第1方向D1と直交する方向を第2方向D2とし、第1方向D1および第2方向D2と直交する方向を第3方向D3とする。また、第1方向D1において矢印が指し示す側をトレイ3の上側とし、その反対側を下側とし、第2方向D2および第3方向D3をトレイ3の側方とする。なお、「トレイ3の平面視」は第1方向D1に沿ってトレイ3を見ることであり、「トレイ3の側面視」は第2方向D2または第3方向D3に沿ってトレイ3を見ることである。
【0050】
トレイ3は、トレイ本体部3a、フランジ部3b、および、シート部材3cを備えている。
【0051】
トレイ本体部3aは第2方向D2を長手方向とする平面視長方形状である。なお、トレイ本体部3aが平面視長方形状に限定されないことは言うまでもない。トレイ本体部3aには、第1方向D1に沿ってトレイ本体部3aを貫通する複数の貫通孔3a1がトレイ3の平面視で行列状に配置されている。
【0052】
フランジ部3bは、トレイ本体部3aと一体である。フランジ部3bは、トレイ本体部3aの側面の上端部から側方に向けて突出している。フランジ部3bは、トレイ本体部3aの側面の全周に亘って配置されている。フランジ部3bは、平面視長方形状である。本実施形態において、フランジ部3bの角は面取りされている。フランジ部3bの上面は、トレイ本体部3aの上面と同一平面上にある。フランジ部3bの厚さは一定である。
【0053】
シート部材3cは、トレイ本体部3aの底面に接着部材3dを介して取り付けられている。具体的には、シート部材3cは、トレイ本体部3aの底面に接着部材3dによって貼り付けられている。接着部材3dは、粘着性を有する両面テープである。接着部材3dは、平面視で複数の貫通孔3a1と重なる複数の開口部3d1を有する。なお、接着部材3dは、接着剤が硬化することで形成されてもよい。
【0054】
シート部材3cは、第1シート部材3c1および第2シート部材3c2を備えている。第1シート部材3c1は、第2シート部材3c2よりトレイ本体部3a側で第2シート部材3c2に重ねられている。第1シート部材3c1は、第2シート部材3c2より高い通気性を有する。第1シート部材3c1は、例えば不織布である。第2シート部材3c2は、例えば熱可塑性樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート)製のフィルムである。
【0055】
図7は、複数のトレイ3が保管されている状態のトレイ処理部50を示す斜視図である。
【0056】
トレイ処理部50は、低床台30に配置されている。トレイ処理部50は、第1トレイ保管部51、第2トレイ保管部52、および、トレイ搬送部53を備えている。
【0057】
第1トレイ保管部51は、複数のトレイ3が上下方向に沿って積層された状態で分注処理前のトレイ3を保管する。第1トレイ保管部51は、第1保管台60a、および、第1案内部材70aを備える。
【0058】
図8は、+Z側から見た第1トレイ保管部51の平面図である。
図9は、
図8に示すIX-IX線に沿った第1トレイ保管部51の断面図である。なお、
図8および
図9には、第2トレイ保管部52の一部が示されている。
図10は、トレイ3が保管されていない状態のトレイ処理部50を示す斜視図である。なお、
図10には、後述する第1柱部材71a,71b、第2柱部材72a,72bは図示されていない。
【0059】
図8、
図9および
図10に示すように、第1保管台60aは、分注装置1の上面視で矩形状の板状の基部61a、および、一対の支持部62aを一体に備えている。一対の支持部62aは、基部61aの上面にX方向に離れた状態で配置されている(
図10参照)。これにより、第1保管台60aは、Y方向に沿って見た分注装置1の側面視においてX方向中央部が下方に向けて窪む凹形状である。
【0060】
一対の支持部62aは、第1トレイ保管部51に保管された複数のトレイ3のうち最も下方に位置するトレイ3と接触し、複数のトレイ3を支持する(
図9参照)。一対の支持部62aは、トレイ3の長手方向両端部を支持する。一対の支持部62aは、平面視矩形状である。一対の支持部62aは、一対の突出部63aを有する。
【0061】
一対の突出部63aは、支持部62aの上面から上方に向けて突出し、X方向に沿って延びている。これにより、第1保管台60aは、X方向に沿って見た分注装置1の側面視においてY方向中央部が下方に向けて窪む凹形状である(
図9および
図10参照)。また、一対の突出部63aの上面は、同一平面上に位置する。
【0062】
一対の支持部62aは、一対の突出部63aの上面にトレイ3のフランジ部3bの下面が接触する状態でトレイ3を支持する。一対の支持部62aがトレイ3を支持する状態において、一対の突出部63aの上面以外の一対の支持部62aの部位は、トレイ3から離れており、トレイ3と接触しない。つまり、一対の支持部62aは、一対の突出部63aの上面のみによってトレイ3のフランジ部3bの下面のみを支持する。換言すれば、一対の支持部62aは、トレイ本体部3aおよびシート部材3cから離れた状態でフランジ部3bを支持する。一対の支持部62aに支持されたトレイ3に複数のトレイ3が積み上げられることで、複数のトレイ3が保管される。
【0063】
図7、
図8、
図9および
図10に示すように、第1案内部材70aは、たとえば第1トレイ保管部51にトレイ3が置かれるときなどに、トレイ3を上下方向に沿って案内する。第1案内部材70aは、第1柱部材71a、第2柱部材72a、および、第3柱部材73aを備えている。
【0064】
第1柱部材71aは、Z方向に延びており、上面視でL字形状である。第1柱部材71aは、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の-X側かつ-Y側にある角部をトレイ3の側方から覆う。第1柱部材71aは、第1側壁71a1および第2側壁71a2を一体に備えている。
【0065】
第1側壁71a1の板面は、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の-Y側の辺と対向する。第2側壁71a2の板面は、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の-X側の辺と対向する。
【0066】
第2柱部材72aは、Z方向に延びており、上面視でL字形状である。また、第2柱部材72aと第1柱部材71aとは、X方向に沿う直線を対称軸とする対称形状である。第2柱部材72aは、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の-X側かつ+Y側にある角部をトレイ3の側方から覆う。第2柱部材72aは、第3側壁72a1および第4側壁72a2を一体に備えている。
【0067】
第3側壁72a1の板面は、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の+Y側の辺と対向する。第4側壁72a2の板面は、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の-X側の辺と対向する。
【0068】
第1側壁71a1と第3側壁72a1とは、Y方向において、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3を挟んで反対側に配置されている。これにより、第1トレイ保管部51に保管されている複数のトレイ3の位置がY方向に互いにずれることが抑制される。
【0069】
第3柱部材73aは、Z方向に延びる円柱形状である。なお、第3柱部材73aは、角柱形状でもよい。第3柱部材73aは、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3の+X側に配置されている。第2側壁71a2および第4側壁72a2と第3柱部材73aとは、X方向において、第1トレイ保管部51に保管されているトレイ3を挟んで互いに反対側に配置されている。これにより、第1トレイ保管部51に保管されている複数のトレイ3の位置がX方向に互いにずれることが抑制される。
【0070】
上記のように、第1柱部材71aおよび第2柱部材72a、ならびに、第3柱部材73aによって、第1トレイ保管部51に保管されている複数のトレイ3がX方向およびY方向に互いにずれることが抑制される。つまり、第1トレイ保管部51は、第1案内部材70aによって、複数のトレイ3が上下方向に沿って整列した状態で複数のトレイ3を保管することができる。また、第1案内部材70aがトレイ3を上下方向に沿って案内することで、フランジ部3bの下面以外のトレイ3の部位が第1トレイ保管部51に接触することを抑制することができる。なお、第1側壁71a1と第2側壁71a2とは別体でもよく、第3側壁72a1と第4側壁72a2とは別体でもよい。またこの場合、第1側壁71a1、第2側壁71a2、第3側壁72a1および第4側壁72a2は柱形状(例えば円柱形状)でもよい。
【0071】
第2トレイ保管部52は、複数のトレイ3が上下方向に沿って積層された状態で分注処理後のトレイ3を保管する。
図7に示すように、第2トレイ保管部52は、第2保管台60bおよび第2案内部材70bを備える。
【0072】
第2保管台60bは第1保管台60aと同じ構成であり、第2案内部材70bは第1案内部材70aと同じ構成であり、第2保管台60bおよび第2案内部材70bの構成の説明を省略する。第1保管台60aと第2保管台60bとはY方向に沿って並べて配置され、一体である。第2案内部材70bは、第1柱部材71aの第1柱部材71a、第2柱部材72aおよび第3柱部材73aと同様に構成されている第1柱部材71b、第2柱部材72bおよび第3柱部材73bを備える。また、第1案内部材70aと第2案内部材70bとはY方向に沿って並べて配置されている。第1案内部材70aの第2柱部材72aと第2案内部材70bの第1柱部材71bとは一体である(
図8参照)。
【0073】
トレイ搬送部53は、第1トレイ保管部51から、1つのトレイ3を分注処理が行われる第2分注位置Pf2に搬送する。第2分注位置Pf2は、
図2に示すように、低床台30の上面において第2トレイ保管部52より-Y側にある。
【0074】
図1および
図2に示すように、トレイ搬送部53は、トレイグリッパ53a、第1トレイ搬送アクチュエータ53b、および、第2トレイ搬送アクチュエータ53cを備えている。
【0075】
トレイグリッパ53aは、第1トレイ保管部51で保管されている複数のトレイ3のうち、最も上方に位置する1つのトレイ3を把持する。
図7および
図10に示すように、トレイグリッパ53aは、Y方向において互いに対向する一対の第2グリッパ腕部53a1、および、一対の第2グリッパ腕部53a1を互いに近づく方向および離れる方向に移動させる第2グリッパ駆動部53a2を備える。一対の第2グリッパ腕部53a1は、それぞれ、X方向に沿って延びている。一対の第2グリッパ腕部53a1の詳細は後述する。
【0076】
トレイグリッパ53aは、一対の第2グリッパ腕部53a1がトレイ3の側方からトレイ本体部3aを挟むように1つのトレイ3を把持する(詳細は後述する)。
【0077】
第1トレイ搬送アクチュエータ53bは、トレイグリッパ53aを上下方向に沿って移動させる。第1トレイ搬送アクチュエータ53bは、第2トレイ搬送アクチュエータ53cに固定されている固定部53b1(
図1,2参照)、固定部53b1に対して上下方向に沿って移動可能な可動部53b2(
図7,10参照)、可動部53b2を移動させる駆動部(不図示)を備えている。可動部53b2には、トレイグリッパ53aが固定されている。
【0078】
第1トレイ搬送アクチュエータ53bによってトレイグリッパ53aが上下方向に沿って上方に移動することで、トレイグリッパ53aに把持されたトレイ3が上方に移動する。
【0079】
第2トレイ搬送アクチュエータ53c(
図1,2参照)は、トレイグリッパ53aをY方向に沿って移動させる。第2トレイ搬送アクチュエータ53cは、基台10に固定されている固定部53c1、固定部53c1に対してY方向に沿って移動可能な可動部53c2、可動部53c2を移動させる駆動部(不図示)を備えている。可動部53c2には、第1トレイ搬送アクチュエータ53bの固定部53b1が固定されている。
【0080】
第2トレイ搬送アクチュエータ53cによって第1トレイ搬送アクチュエータ53bがY方向に沿って+Y側に移動することで、トレイグリッパ53aに把持されたトレイ3が+Y側に移動する。
【0081】
トレイグリッパ53aに把持されたトレイ3が第2分注位置Pf2の上方に位置すると、第1トレイ搬送アクチュエータ53bによってトレイグリッパ53aが上下方向に沿って下方に移動することで、トレイグリッパ53aに把持されたトレイ3が下方に移動し、トレイ3が第2分注位置Pf2に位置する。さらに、一対の第2グリッパ腕部53a1が互いに離れることで、一対の第2グリッパ腕部53a1がトレイ3から離れ、トレイ3が第2分注位置Pf2に置かれる。
【0082】
分注後のトレイ3は、一対の第2グリッパ腕部53a1によって把持され、第1トレイ搬送アクチュエータ53bおよび第2トレイ搬送アクチュエータ53cによって第2トレイ保管部52の上方の位置まで移動する。続けて、第1トレイ搬送アクチュエータ53bによってトレイグリッパ53aが上下方向に沿って下方に移動することで、トレイグリッパ53aに把持されたトレイ3が下方に移動し、トレイ3が第2トレイ保管部52に保管されているトレイ3または第2トレイ保管部52と接触する。さらに、一対の第2グリッパ腕部53a1が互いに離れることで一対の第2グリッパ腕部53a1がトレイ3から離れ、トレイ3が第2トレイ保管部52に置かれて保管される。
【0083】
このように、トレイ処理部50は、分注処理前の複数のトレイ3を保管するとともに、1つのトレイ3を第2分注位置Pf2に移動させ、分注処理後の複数のトレイ3を保管する。
【0084】
図1に示す分注処理部80は、第1分注位置Pf1に位置するウェルプレート2から第2分注位置Pf2(
図2参照)に位置するトレイ3へ細胞塊を分注する。分注処理部80は、複数のノズル81、第1ノズル移動アクチュエータ82a、第2ノズル移動アクチュエータ82b、第3ノズル移動アクチュエータ82c、および、ポンプ装置83を備える。
【0085】
ノズル81の先端部には、ピペットチップ4が着脱可能に取り付けられる。ピペットチップ4は、第1トレイ保管部51より-Y側に配置されているピペットチップ保管部90に複数保管されている。
【0086】
第1ノズル移動アクチュエータ82aは、複数のノズル81を上下方向に沿って移動させる。第1ノズル移動アクチュエータ82aは、第2ノズル移動アクチュエータ82bに固定されている固定部82a1、固定部82a1に対して上下方向に沿って移動可能な可動部82a2、可動部82a2を移動させる駆動部(不図示)、および、可動部82a2と複数のノズル81とを連結する箱状の連結部82a3を備えている。
【0087】
第2ノズル移動アクチュエータ82bは、第1ノズル移動アクチュエータ82aをY方向に沿って移動させる。第2ノズル移動アクチュエータ82bは、第3ノズル移動アクチュエータ82cに固定されている固定部82b1、固定部82b1に対してY方向に沿って移動可能な可動部82b2、可動部82b2を移動させる駆動部(不図示)を備えている。可動部82b2には、第1ノズル移動アクチュエータ82aの固定部82a1が固定されている。
【0088】
第3ノズル移動アクチュエータ82cは、第2ノズル移動アクチュエータ82bをX方向に沿って移動させる。第3ノズル移動アクチュエータ82cは、基台10に固定されている固定部82c1、固定部82c1に対してX方向に沿って移動可能な可動部82c2、可動部82c2を移動させる駆動部(不図示)を備えている。可動部82c2には、第2ノズル移動アクチュエータ82bの固定部82b1が固定されている。
【0089】
つまり、複数のノズル81は、第1ノズル移動アクチュエータ82a、第2ノズル移動アクチュエータ82bおよび第3ノズル移動アクチュエータ82cによって、上下方向(Z方向)、Y方向およびX方向に沿って移動する。以下、第1ノズル移動アクチュエータ82a、第2ノズル移動アクチュエータ82bおよび第3ノズル移動アクチュエータ82cを区別せずに説明する場合、単にノズル移動アクチュエータ82と称する場合がある。
【0090】
ポンプ装置83は、連結部82a3に収納され、複数のノズル81と連結し、ノズル81に装着されたピペットチップ4の先端から細胞塊を吸引および吐出する。
【0091】
分注処理において、複数のノズル81は、ノズル移動アクチュエータ82によってピペットチップ保管部90の上方の位置まで移動する。さらに、複数のノズル81は、ノズル移動アクチュエータ82によって下方に移動することで、複数のピペットチップ4に当たる。これにより、ノズル81にピペットチップ4が装着される。
【0092】
続けて、複数のノズル81は、ノズル移動アクチュエータ82によって第1分注位置Pf1にあるウェルプレート2の上方の位置まで移動する。このとき、複数のノズル81の先端および複数のピペットチップ4の先端は、ウェルプレート2の複数の穴部2a1に対向する。
【0093】
さらに、複数のノズル81がノズル移動アクチュエータ82によって上下方向に沿って下方に移動することで、複数のピペットチップ4の先端は、複数の穴部2a1の内側に位置する。続けてポンプ装置83が駆動することで、穴部2a1内にある細胞塊がピペットチップ4内に吸引される。
【0094】
そして、複数のノズル81は、ノズル移動アクチュエータ82によって第2分注位置Pf2にあるトレイ3の上方の位置まで移動する。このとき、複数のノズル81の先端および複数のピペットチップ4の先端は、トレイ3の複数の貫通孔3a1に対向する。
【0095】
さらに、複数のノズル81がノズル移動アクチュエータ82によって上下方向に沿って下方に移動することで、複数のピペットチップ4の先端は、複数の貫通孔3a1の内側に位置する。続けてポンプ装置83が駆動することで、ピペットチップ4内にある細胞塊が貫通孔3a1へ吐出される。これにより、複数の貫通孔3a1に細胞塊が収納され、分注処理が終了する。
【0096】
次に、トレイグリッパ53aの一対の第2グリッパ腕部53a1について詳細に説明する。
【0097】
図11は、複数のトレイ3が保管されている状態の第1トレイ保管部51の拡大側面図である。なお、
図11において、第1案内部材70aは省略されている。上記のように、第1トレイ保管部51では、複数のトレイ3が上下方向に沿って積層されている。また、第1トレイ保管部51では、上下方向で互いに隣接する2つのトレイ3のうち一方のトレイ3のトレイ本体部3aの上面と他方のトレイ3のシート部材3cが接触している。
【0098】
一対の第2グリッパ腕部53a1は、それぞれ、第1爪部54、および、第2爪部55を一体に有する。換言すれば、トレイグリッパ53aは、一対の第1爪部54、および、一対の第2爪部55を有する。
【0099】
第1爪部54は、第2グリッパ腕部53a1の先端から、一対の第2グリッパ腕部53a1の内側に向けて突出している。すなわち、一対の第1爪部54は、互いに向かい合う方向に沿って突出している。また、第1爪部54は、X方向に沿って延びている。第1爪部54は、X方向において一対の支持部62aの間に位置する(
図8および
図10参照)。
【0100】
第1爪部54は、先端から基端に向かうほどZ方向(上下方向)の幅が大きくなる形状である。具体的には、第1爪部54は、断面台形状であり、第1爪部54の先端から基端に向かうほど上方から下方に向けて傾斜する第1テーパ面54a、および、第1爪部54の先端から基端に向かうほど下方から上方に向けて傾斜する第2テーパ面54bを有する。第1テーパ面54aおよび第2テーパ面54bは、平面状である。
【0101】
なお、第1爪部54が断面台形状に限定されないことは言うまでもなく、例えば断面三角形状でもよい。また、第1テーパ面54aおよび第2テーパ面54bは曲面状でもよい。
【0102】
なお、第1爪部54の先端の上下方向長さは、第1トレイ保管部51において上下方向で互いに隣接する2つのトレイ3のフランジ部3bの間の上下方向長さより短い。また、第1爪部54の基端の上下方向長さは、第1トレイ保管部51において上下方向で互いに隣接する2つのトレイ3のフランジ部3bの間の上下方向長さより長い。
【0103】
第2爪部55は、第2グリッパ腕部53a1における第1爪部54より上方の部位から、一対の第2グリッパ腕部53a1の内側に向けて突出しており、かつ、X方向に沿って延びている。第2爪部55は、上下方向において第1爪部54から離れている。第1爪部54と第2爪部55との間の上下方向長さは、フランジ部3bの厚さより長い。第2爪部55は、断面台形状である。なお、第1爪部54が断面台形状に限定されないことは言うまでもなく、例えば断面三角形状および断面矩形状でもよい。
【0104】
次に、トレイグリッパ53aが1つのトレイ3を把持する動作について詳細に説明する。トレイグリッパ53aは、第1トレイ保管部51に保管されている複数のトレイ3のうち最も上方に位置するトレイ3を把持する。以下、トレイグリッパ53aが把持するトレイ3を第1のトレイT1と称し、第1トレイ保管部51において上下方向で第1のトレイT1と隣接し、第1のトレイT1の底面と接触しているトレイ3を第2のトレイT2と称する。
【0105】
一対の第2グリッパ腕部53a1は、第2グリッパ駆動部53a2によって、
図11に破線で示す非把持位置Pg1と実線で示す把持位置Pg2との間を移動する。一対の第2グリッパ腕部53a1は、非把持位置Pg1に位置する場合、複数のトレイ3から離れており、トレイ3を把持していない。
【0106】
一方、一対の第2グリッパ腕部53a1は、把持位置Pg2に位置する場合、第1爪部54の先端とトレイ本体部3aとが接触していない状態で第1のトレイT1を把持する。なお、一対の第2グリッパ腕部53a1は、第1爪部54の先端が第1のトレイT1のトレイ本体部3aと接触した状態で第1のトレイT1を把持してもよい。
【0107】
一対の第2グリッパ腕部53a1が非把持位置Pg1から把持位置Pg2に向けて移動すると、第1爪部54は、第1のトレイT1のフランジ部3bと第2のトレイT2のフランジ部3bとの間に差し入れられる。このときにおいて、一対の第2グリッパ腕部53a1が把持位置Pg2に到達する前に、第1爪部54の第1テーパ面54aは第2のトレイT2のフランジ部3bに当たり、第1爪部54の第2テーパ面54bは第1のトレイT1のフランジ部3bに当たる。
【0108】
上記のように、第1爪部54は先端から基端に向かうほど上下方向の幅が大きくなる形状である。よって、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bには、上下方向において第1のトレイT1と第2のトレイT2とが互いに離れる方向の力が作用する。
【0109】
さらに、一対の第2グリッパ腕部53a1が把持位置Pg2に向けて移動することで、第1のトレイT1および第2のトレイT2は、第1爪部54から作用する力によって、上下方向において互いに離れる。具体的には、第1のトレイT1が持ち上げられることで第2のトレイT2から離れる場合と、複数のトレイ3のシート部材3cが圧縮されることで第2のトレイT2が押し下げられることで第1のトレイT1が第2のトレイT2から離れる場合とがある。
【0110】
これにより、第1のトレイT1と第2のトレイT2とが第1のトレイT1の接着部材3dによって互いに貼りついている場合においても、一対の第2グリッパ腕部53a1は、第1のトレイT1を第2のトレイT2から引き離すことができる。第1のトレイT1と第2のトレイT2とが互いに貼り付くことは、例えば、シート部材3cの周縁から接着部材3dがはみ出しており、接着部材3dが粘着性を有している場合に生じる可能性がある。一対の腕部が把持位置Pg2に位置すると、一対の第2グリッパ腕部53a1は第1のトレイT1を把持する。
【0111】
また、第1のトレイT1のフランジ部3bと第2のトレイT2のフランジ部3bとの間に第1爪部54が差し入れられたとき、第2爪部55は、フランジ部3bから離れている。このとき、第2爪部55は、第1のトレイT1のフランジ部3bを挟んで第1爪部54の反対側に位置する。これにより、第2爪部55は、第1爪部54が第1のトレイT1を第2のトレイT2から引き離すことを妨げない。
【0112】
また、第1のトレイT1のフランジ部3bと第2のトレイT2のフランジ部3bとの間に第1爪部54が差し入れられたとき、第2爪部55は、トレイ3の平面視において第1のトレイT1のフランジ部3bと重なる。これにより、トレイ搬送部53が第1のトレイT1を搬送しているとき、第2爪部55は、一対の第2グリッパ腕部53a1から第1のトレイT1が外れることを防止することができる。
【0113】
以上、説明したように、本実施形態によれば、分注装置1は、細胞塊が分注される複数のトレイ3を保管する第1トレイ保管部51と、トレイ3を把持するトレイグリッパ53aを有し、トレイ3を第1トレイ保管部51から搬送するトレイ搬送部53と、を備える。トレイ3は、トレイ本体部3aと、トレイ本体部3aから側方に向けて突出するフランジ部3bと、トレイ本体部3aの底面に接着部材3dを介して取り付けられているシート部材3cと、備える。第1トレイ保管部51では、複数のトレイ3が上下方向に沿って積層され、上下方向で互いに隣接する2つのトレイ3(第1のトレイT1および第2のトレイT2)のうち一方のトレイ3(第2のトレイT2)のトレイ本体部3aの上面と他方のトレイ3(第1のトレイT1)のシート部材3cが接触している。トレイグリッパ53aは、第1トレイ保管部51で上下方向において互いに隣接する第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bの間に差し入れられる第1爪部54を有する。第1爪部54は、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bの間に差し入れられたときに、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bそれぞれに当たる。
【0114】
これによれば、第1のトレイT1の接着部材3dによって第1のトレイT1と第2のトレイT2とが互いに貼りついている場合においても、一対の第2グリッパ腕部53a1は、第1のトレイT1を第2のトレイT2から引き離すことができる。
【0115】
また、第1爪部54は、第1爪部54の先端から基端に向かうほど上下方向の幅が大きくなる。
【0116】
これによれば、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bの間に第1爪部54が差し入れられたときに、一対の第2グリッパ腕部53a1は、第1のトレイT1を第2のトレイT2から確実に引き離すことができる。これにより、トレイグリッパ53aは、1つのトレイ3(第1のトレイT1)を把持することができる。よって、分注装置1は、細胞塊が分注されるトレイ3をトレイ搬送部53によって1つずつ確実に搬送することができる。
【0117】
また、トレイグリッパ53aは、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bの間に第1爪部54が差し入れられた状態で、第1のトレイT1のフランジ部3bを挟んで第1爪部54の反対側に位置する第2爪部55をさらにする。第2爪部55は、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bの間に第1爪部54が差し入れられたときに、第1のトレイT1の平面視において第1のトレイT1のフランジ部3bと重なり、かつ、第1のトレイT1のフランジ部3bから離れている。
【0118】
これによれば、第2爪部55は、第1爪部54が第1のトレイT1を第2のトレイT2から引き離すことを妨げない。また、トレイ搬送部53が第1のトレイT1を搬送しているとき、第2爪部55は、一対の第2グリッパ腕部53a1から第1のトレイT1が外れることを防止することができる。
【0119】
また、第1トレイ保管部51は、複数のトレイ3のうち最も下方に位置するトレイ3を支持する支持部62aを備える。支持部62aは、トレイ3のトレイ本体部3aおよびシート部材3cから離れた状態でフランジ部3bを支持する。
【0120】
これによれば、トレイ3の接着部材3dが第1トレイ保管部51に貼りつくことを抑制することができる。
【0121】
また、第1トレイ保管部51は、トレイ3を上下方向に沿って案内する第1案内部材70aを備える。
【0122】
これによれば、複数のトレイ3が上下方向に沿って整列した状態で複数のトレイ3を第1トレイ保管部51に保管することができる。つまり、複数のトレイ3のフランジ部3bは、上下方向に沿って整列した状態で並ぶ。よって、第1爪部54は、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bの間に差し入れられたときに、第1のトレイT1のフランジ部3bおよび第2のトレイT2のフランジ部3bそれぞれに確実に当たることができる。
【0123】
次に、本開示の実施形態の変形例に係る分注装置1について説明する。
【0124】
例えば、一対の第2グリッパ腕部53a1は、第2爪部55を有さなくてもよい。この場合、第2グリッパ腕部53a1は、第1爪部54がトレイ3のトレイ本体部3aと接触した状態でトレイ3を把持してもよい。
【0125】
また、第1保管台60aは、トレイ3のトレイ本体部3aおよびシート部材3cと接触してもよい。この場合、第1トレイ保管部51に保管されている複数のトレイ3のうち最も下方に位置するトレイ3を第2グリッパ腕部53a1が把持する場合、第1爪部54は、当該トレイ3のフランジ部3bおよび第1保管台60aそれぞれに当たり、当該トレイ3を第1保管台60aから引き離す。
【0126】
また、第1爪部54は、第1テーパ面54aおよび第2テーパ面54bの一方のみを有する形状でもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 分注装置
3 トレイ
3a トレイ本体部(本体部)
3a1 貫通孔
3b フランジ部
3c シート部材
3d 接着部材
50 トレイ処理部
51 第1トレイ保管部(トレイ保管部)
53 トレイ搬送部
53a トレイグリッパ(グリッパ)
54 第1爪部
55 第2爪部
60a 第1保管台
61a 基部
62a 支持部
70a 第1案内部材(案内部材)