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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151048
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】振動検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20241017BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
G01H17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064161
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 瑛子
(72)【発明者】
【氏名】小山内 宰
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 明輝
【テーマコード(参考)】
2F051
2G064
【Fターム(参考)】
2F051AA21
2F051AB04
2F051BA08
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB16
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】大型の装置を要することなく、人の触覚によるコミュニケーションに利用可能な振動データを検出できる振動検出装置を提供する。
【解決手段】空気中を伝搬する振動を検出する検出部を有するマイクと、空洞を形成しつつマイクの検出部を覆うとともに、マイクに対向する面とは反対側に、人が肌を接触させて摺動させる接触面が形成された、高分子樹脂からなり、ショアA硬度が20以上60以下である疑似触覚部とを備え、空洞は、疑似触覚部とマイクとが対向している第一方向に見たときに、検出部と同一形状に形成され、又は検出部よりも広い範囲にわたって形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中を伝搬する振動を検出する検出部を有するマイクと、
空洞を形成しつつ前記マイクの前記検出部を覆うとともに、前記マイクに対向する面とは反対側に、人が肌を接触させて摺動させる接触面が形成された、高分子樹脂からなり、ショアA硬度が20以上60以下である疑似触覚部とを備え、
前記空洞は、前記疑似触覚部と前記マイクとが対向している第一方向に見たときに、前記検出部と同一形状に形成され、又は前記検出部よりも広い範囲にわたって形成されている、振動検出装置。
【請求項2】
前記空洞は、円柱形状、楕円柱形状、又は角柱形状を呈し、前記第一方向に見たときに、前記空洞の外接円の直径が、前記マイクの外接円の直径の1倍以上3倍以下である、請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記マイクは、コンデンサー型マイクである、請求項1又は2に記載の振動検出装置。
【請求項4】
前記疑似触覚部は、ポリウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の振動検出装置。
【請求項5】
前記第一方向に関し、前記疑似触覚部の前記マイクと対向している部分の厚みが、1mm以上5mm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の振動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の触覚によるコミュニケーションに利用可能な振動データを検出できる振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Web会議システムやソーシャルネットワーキングサービスの発展により、インターネット回線を通じた様々なコミュニケーションツールが開発されている。
【0003】
そして、人の手で撫でられているという感覚が、人と人の心のつながりや絆を感じ合う心理的な効果をもたらすことが提唱されている(下記非特許文献1参照)。こういった背景から、お互いの居住地が遠く離れている場合や、感染防止等の理由により直接の面会ができない場合において、人の手で撫でるという動作、感触の伝送を可能とする簡易な触覚デバイスが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-038100号公報
【特許文献2】特開2020-112472号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山口創 日本東洋医学系物理療法学会誌 第 42 巻 2 号「皮膚感覚と脳」
【非特許文献2】上条正義 デザントスポーツ科学Vol.26 「繊維製品の肌触り評価のための接触特性計測システム開発に関する研究」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、人の手で撫でられている感じを知覚するためには、手指の皮膚がスライドする感覚(以下、単に「スライド感」という場合がある。)を伝送先で提示することが重要である。しかしながら、スライド感を例えば物体のスライドの形で伝えようとすると、伝送元で撫でる動作をしている人の手や指の位相を検知するためのカメラやセンサの設置や、伝送先で人の手に接触させた物体を、当該手の肌面とこすり合うように連動させることが必要となる。このため、伝送元及び伝送先ともに大掛かりな装置が必要となり、一般家庭や規模が小さな施設等への導入が難しいという問題点があった。
【0007】
また、人の手で撫でる動作がもたらす触覚刺激と関連する皮膚のスライド感を伝えるためには、撫でる手と対象物との間に生じる触覚振動が重要な要素である。従来の触覚振動のセンシング及び再生方法は、例えば、上記特許文献1で示されるような、振動情報を取得する振動センサとそれぞれが音響信号を収音する二つのマイクを用いてセンシングを行い、該振動情報に従い振動する振動子とそれぞれが当該音響信号を再生する二つのスピーカーを用いるものがある。しかしながら、当該方法は、人の手で撫でるような細やかな動作のセンシングには適していなかった。
【0008】
さらに、上記特許文献2に示されるような触覚センサは、静止時の触感を測定する技術であり、スライド感に係る動作時の触感(振動)を扱うことは難しい。
【0009】
また、検出された触覚振動に関連するデータに対して何らかの特別な処理を施す場合、追加的に装置が必要になる、また、人ごとに微妙に異なる撫で方の特性が伝えられず、心理的なリアリティーが失われる、といった欠点があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、大型の装置を要することなく、人の触覚によるコミュニケーションに利用可能な振動データを検出できる振動検出装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動検出装置は、
空気中を伝搬する振動を検出する検出部を有するマイクと、
空洞を形成しつつ前記マイクの前記検出部を覆うとともに、前記マイクに対向する面とは反対側に、人が肌を接触させて摺動させる接触面が形成された、高分子樹脂からなり、ショアA硬度が20以上60以下である疑似触覚部とを備え、
前記空洞は、前記疑似触覚部と前記マイクとが対向している第一方向に見たときに、前記検出部と同一形状に形成され、又は前記検出部よりも広い範囲にわたって形成されている。
【0012】
上記振動検出装置において、
前記空洞は、円柱形状、楕円柱形状、又は角柱形状を呈し、前記第一方向に見たときに、前記空洞の外接円の直径が、前記マイクの外接円の直径の1倍以上3倍以下であってもよい。
【0013】
上記振動検出装置において、
前記マイクは、コンデンサー型マイクであってもよい。
【0014】
上記振動検出装置において、
前記疑似触覚部は、ポリウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂で形成されていてもよい。
【0015】
上記振動検出装置は、
前記第一方向に関し、前記疑似触覚部の前記マイクと対向している部分の厚みが、1mm以上5mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大型の装置を要することなく、人の触覚によるコミュニケーションに利用可能な振動データを検出できる振動検出装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】振動検出装置を用いた一実施態様の例である触覚伝達システムを模式的に示す図面である。
図2】振動検出装置の一実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
図3】振動検出装置をY方向に見たときの断面図である。
図4】疑似触覚部が取り除かれた状態の振動検出装置を+Z側から見たときの図面である。
図5図3の空洞周辺を拡大した図面である。
図6】実施例7~実施例10における空洞S1周辺を拡大した図面である。
図7A】実施例1により取得された振動のスペクトログラム波形を示すグラフである。
図7B】比較例1により取得された振動のスペクトログラム波形を示すグラフである。
図7C】比較例2により取得された振動のスペクトログラム波形を示すグラフである。
図7D】比較例3により取得された振動のスペクトログラム波形を示すグラフである。
図7E】参考例により取得された振動のスペクトログラム波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の振動検出装置について、図面を参照して説明する。なお、振動検出装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0019】
[触覚伝達システム1]
図1は、振動検出装置10を用いた一実施態様の例である触覚伝達システム1を模式的に示す図面である。図1に示すように、触覚伝達システム1は、送信者2が所定の部分を撫でることで発生する振動を検出する振動検出装置10と、入力された振動に基づいて、振動を再現するためのアクチュエータを備えた振動再現装置20とを備える。ここでのアクチュエータとは、例えば、偏心モータ、リニア・バイブレータ、ピエゾ素子等である。
【0020】
なお、図1に示す触覚伝達システム1の構成は、あくまで振動検出装置10の使用態様を説明するための単なる一例である。例えば、触覚伝達システム1は、振動検出装置10と振動再現装置20とが組み合わせた装置を用いて、双方向に通信が可能なシステムとしてもよい。また、触覚伝達システム1は、アクチュエータを手の甲に接触させる構成としてもよい。
【0021】
以下の説明においては、後述される図3に示すように、疑似触覚部12と、マイク30とが対向している方向をZ方向(第一方向)とし、接触面12aに平行な平面をXY平面とする。なお、振動検出装置10に関しては、XY平面と平行な各方向について特段の区別はないが、説明の便宜のため、本実施形態においては、Z方向に見たときの形状が楕円形状を呈する振動検出装置10の長軸方向をX方向、短軸方向をY方向とする。
【0022】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。
【0023】
[振動検出装置10]
図2は、振動検出装置10の一実施形態を模式的に示す全体斜視図である。また、図3は、振動検出装置10をY方向に見たときの断面図であり、図4は、疑似触覚部12が取り除かれた状態の振動検出装置10を+Z側から見たときの図面である。振動検出装置10は、図3に示すように、筐体11と、疑似触覚部12と、ケーブル13と、マイク30とを備える。
【0024】
筐体11は、図3に示すように、+Z側の面に凹部が設けられており、当該凹部の内側に疑似触覚部12が構成されている。
【0025】
本実施形態における疑似触覚部12は、+Z側に送信者2が手を接触させて摺動させるための接触面12aが形成されている。疑似触覚部12は、図3に示すように、空洞S1を形成しつつマイク30の検出部30aを覆うように形成されている。なお、空洞S1は、完全な閉空間である必要はなく、筐体11の外側から空気が出入り可能な程度の隙間が存在していてもよい。また、接触面12aは、全体的に湾曲した曲面であってもよく、凸面であっても凹面であってもよい。
【0026】
本実施形態では、図3及び図4に示すように、空洞S1が円柱形状を呈するように形成されており、+Z側から見たときにマイク30の検出部30aよりも広い範囲にわたって形成されている。なお、空洞S1の形状は、+Z側から見たときに、マイク30の検出部30aと同一形状に形成されてもよく、又は、任意の形状でマイク30の検出部30aよりも広い範囲にわたって形成されてもよい。
【0027】
なお、空洞S1の形状は、本実施形態のように、太鼓やドラムといった、膜鳴楽器の構造を模した円柱形状、楕円柱形状、又は角柱形状を呈していることが好ましい。当該構造は、空洞S1内の空気の粗密変動による振動をZ方向に沿って効率よく伝搬させることに適した構造であり、接触面12aで発生する、人が接触面12a撫でることで生じる微弱な振動を、より正確にマイク30の検出部30aへと伝搬させることができる。
【0028】
ただし、本明細書における角柱形状については、四角柱形状や六角柱形状といった特定の形状に限られず、あらゆる多角柱形状が想定されており、また、いずれの形状においても、Z方向に見たときの形状が、正多角形である必要はない。
【0029】
本実施形態における疑似触覚部12は、ショアA硬度が40であるポリウレタン樹脂からなる部材である。疑似触覚部12の材料としては、ポリウレタン樹脂の他に、例えば、シリコーン樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、エチレン・酢酸ビニル樹脂(EVA)、天然ゴム、合成ゴム(スチレンブタジエン、ブタジエン、クロロブレン、ニトリル、ブチル、イソプロプレン)等の高分子樹脂を採用し得るが、可撓性、成形性、低臭気の観点から、ポリウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂が好ましい。
【0030】
ショアA硬度は、ISO(国際標準化機構)や新JIS規格に基づいた「デュロメーター(ゴム硬度計)」で、汎用型のタイプA、比較的柔らかいものに対して好適なタイプE、プラスチックに近い比較的硬いゴムに対して好適なタイプDによって測定することができるが、本実施形態で示す値は汎用型のタイプAのデジタル硬度計A型(OBEST社製)を用いて測定した。測定条件は、JIS K6253-1997加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に従って、サンプルを室温15℃で順化後、密着させてから1秒以内、又は一定時間後に、当該サンプルのショアA硬度を測定した。
【0031】
疑似触覚部12のショアA硬度が20より小さい場合、人が接触面12aを撫でていると、疑似触覚部12の形状が徐々に変化してしまうおそれがある。疑似触覚部12の形状的な安定性を十分に確保する観点から、疑似触覚部12のショアA硬度は、20以上60以下であることが好ましい。
【0032】
ケーブル13は、マイク30に接続されており、マイク30が取得した振動に基づく信号やデータを送受信する配線である。なお、本実施形態の振動検出装置10は、ケーブル13による有線通信の態様で説明されているが、振動検出装置10は、無線信号の送受信可能な通信部を備え、無線通信によって信号やデータを送受信するように構成されていてもよい。
【0033】
マイク30は、疑似触覚部12の接触面12aを人が撫でることで発生し、空洞S1内の空気を介して伝搬する振動、すなわち、音を検出する検出部30aを備えた振動センサである。
【0034】
マイク30は、空洞S1を伝搬する振動を検出可能であれば、その種類は任意であるが、微弱な振動を比較的精度よく検出できるという観点から、コンデンサー型マイクであることが好ましい。
【0035】
さらに、図3に示すように、マイク30は、空洞S1が設けられることによって、+Z側に面する部分、すなわち、検出部30a側が疑似触覚部12とは接触していない。
【0036】
マイク30の検出部30a側が、疑似触覚部12と接触している場合、検出部30aは、人が接触面12aを撫でた際に、人の皮膚と接触面12aとが引っ掛ること等で生じる、雑音のような振動をも一緒に検知してしまう。検出部30aが、こういった雑音が重畳している振動を検出し、振動再現装置20が当該振動を再現すると、当該再現された振動を感じとった人は、不快と感じてしまう。また、疑似触覚部12の材料が吸音性の高いものである場合、人が接触面12aを撫でた際の振動が吸収されてしまい、十分に振動を検知することができなくなる等、検知する振動が微弱になってしまう事態が生じ得る。その場合、当該振動を再現しても、当該再現された振動を感じ取った人は、撫でられている、又は人に接触されているとは感じることができず、コミュニケーションの向上につながりにくい。
【0037】
[空洞S1及びその周辺]
ここで、空洞S1及びその周辺の各寸法について、本実施形態の構成を一例として説明する。
【0038】
図5は、図3の空洞S1周辺を拡大した図面である。図5に示すように、本実施形態では、空洞S1のZ方向に関する長さがz1、疑似触覚部12のうちの、空洞S1の+Z側に位置する部分のZ方向に関する厚みがz2と定義される。また、本実施形態では、図4及び図5に示すように、空洞S1をZ方向に見たときの直径がx1、Z方向に見たときのマイク30の直径がa1と定義される。
【0039】
なお、Z方向に見たときの空洞S1及びマイク30の形状が多角形状、又はその他の任意な形状となっている場合、x1及びa1は、空洞S1及びマイク30の形状における外接円の直径として定義される。
【0040】
本実施形態における、上述した各パラメータは、下記表1のとおりである。
【0041】
【表1】
【0042】
それぞれのパラメータは、任意であるが、マイク30が接触面12aにおいて発生した振動をより精度よく検出できるように、z1が1mm以上10mm以下、z2が1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0043】
また、x1とa1との関係性については任意に設定してよいが、接触面12aで発生した振動が、効率的にマイク30の検出部30aに到達するように、x1は、a1に対して1倍以上3倍未満の範囲内に設定されていることが好ましい。
【0044】
x1が、a1よりも小さい場合は、マイク30の検出部30aの一部に疑似触覚部12が接触してしまうため、上述したように、検出部30aが検出する振動に不快感を生じさせる雑音が重畳してしまう。また、このような構成の場合は、疑似触覚部12による振動の吸収等が検出の妨げとなり、十分に振動を検知することができなくなってしまう可能性がある。このため、x1は、a1に対して1倍以上に設定される。
【0045】
そして、x1が、a1の3倍より大きい場合は、振動を検出することはできるが、一部の振動が空洞S1内で残響しやすくなる。このため、x1は、a1に対して3倍以下に設定されることが好ましい。
【0046】
[検証実験1]
ここから、振動検出装置に関し、疑似触覚部の構成条件を変化させた時に、マイク30が取得する振動データがどのように変化するのかを確認する検証実験を行ったので、その詳細について説明する。
(実施例1)
実施例1は、上述した実施形態の振動検出装置10である。マイク30はプリモ社製EM246のコンデンサーマイクを用いた。
【0047】
(実施例2)
実施例2は、x1の大きさが12mmである点を除いて、実施例1と同一である。
【0048】
(実施例3)
実施例3は、x1の大きさが18mmである点を除いて、実施例1と同一である。
【0049】
(実施例4)
実施例4は、疑似触覚部12の材料をショアA硬度が25であるポリウレタン樹脂とした点を除いて、実施例1と同一である。
【0050】
(実施例5)
実施例5は、x1の大きさを12mmとした点を除いて、実施例4と同一である。
【0051】
(実施例6)
実施例6は、x1の大きさを18mmとした点を除いて、実施例4と同一である。
【0052】
(実施例7)
図6は、実施例7~実施例10における空洞S1周辺を拡大した図面である。実施例7は、図6に示すように、疑似触覚部12が第一部分12bと第二部分12cとに分かれている。そして、第一部分12bは、ショアA硬度が50のシリコーン樹脂、第二部分12cは、ショアA硬度が40のポリプロピレン樹脂によって構成されている。つまり、実施例7は、疑似触覚部12のうちの第一部分12bに相当する部分を、ショアA硬度が50であるシリコーン樹脂とした点を除いて、実施例2と同一である。
【0053】
(実施例8)
実施例8は、疑似触覚部12のうちの第一部分12bに相当する部分を、ショアA硬度が30であるシリコーン樹脂とした点を除いて、実施例2と同一である。
【0054】
(実施例9)
実施例9は、疑似触覚部12のうちの第一部分12bに相当する部分を、ショアA硬度が50であるシリコーン樹脂とした点を除いて、実施例5と同一である。
【0055】
(実施例10)
実施例10は、疑似触覚部12のうちの第一部分12bに相当する部分を、ショアA硬度が30であるシリコーン樹脂とし、z2を1mmとした点を除いて、実施例5と同一である。
【0056】
(比較例1)
比較例1は、疑似触覚部12の材料をポリプロピレン樹脂とし、z1を0mm、z2を1mmとした点を除いて、実施例1と同一である。なお、z1が0mmとは、マイク30と疑似触覚部12とが接触しており、空洞S1に相当する空間が設けられていないことを意味している。このことは、以下で説明される各態様においても同様である。
【0057】
(比較例2)
比較例2は、疑似触覚部12の材料をシリコーン樹脂とし、z1を0mm、z2を5mmとした点を除いて、実施例1と同一である。
【0058】
(比較例3)
比較例3は、z1を0mm、z2を10mmとした点を除いて、実施例1と同一である。
【0059】
(比較例4)
比較例4は、ショアA硬度を10とした点を除いて、実施例1と同一である。
【0060】
(比較例5)
比較例5は、ショアA硬度を10とした点を除いて、実施例2と同一である。
【0061】
(比較例6)
比較例6は、ショアA硬度を10とした点を除いて、実施例3と同一である。
【0062】
(参考例)
参考例は、マイク30の検出部30aを疑似触覚部12の表面から露出させ、人が検出部30aを直接撫でるように構成されている点を除いて、実施例1と同一である。
【0063】
上記の各態様をまとめると、下記表2のとおりである。
【0064】
【表2】
【0065】
(検証方法)
本検証は、摩擦摩耗試験機(新東化学社製)により、接触面12aが人に撫でられている状態を模して、人工皮革を加重100gで接触させた状態で、マイク30とZ方向において対向する領域を、水平方向約5cm/秒の速度で撫でる動作を5往復行う。そして、マイク30が検出して出力する振動に関する信号を、USB接続サウンドカード(Startech.com社製)を用いて解析用PCに取り込み、振動データを収集する。そして、音声解析ソフトウェア(Audacity)によって出力される、当該振動データに関するスペクトログラム波形が確認される。
【0066】
<1.スペクトログラム波形解析>
スペクトログラム波形解析については、人が撫でられていると感じる感触と関連性が高いと考えられる、ピーク平均値と、平均持続時間と、波形の占有率とを評価項目とした。
【0067】
ピーク平均値は、取得されたスペクトログラム波形において、人工皮革の往復動作に応じて周期的に現れる所定の強度(-75dB以上)を示す振動波形の周波数ピーク値の平均値を求めることで得られる。平均持続時間は、取得されたスペクトログラム波形において、人工皮革の往復動作に応じて周期的に現れる波形において、少なくとも3kHz以上帯域幅にわたって所定の強度を示す振動が連続的に発生している区間の長さの平均値を求めることで得られる。波形の占有率とは、取得されたスペクトログラム波形において、測定開始から測定終了までの区間内、かつ、8kHz以下の周波数帯域で、全体の面積に対する所定の強度を示す振動波形を後述される二値化処理後において黒色で表示される領域の面積の割合を求めることで得られる。
【0068】
ピーク平均値は、8kHz以下であれば「○」、8kHzをより高ければ「×」とした。平均持続時間は、0.4秒以上であれば「○」、0.4秒未満であれば「×」とした。波形の占有率は、13%以上であれば「○」、13%未満であれば「×」とした。そして、これら全てが○であった場合は判定「○」、一つでも×があった場合は判定「×」とした。
【0069】
ピーク平均値が8kHz以下であるかどうかは、不快音が発生するか否かに関連する。平均持続時間が0.4秒以上であるかどうかは、人が撫でられていると感じるために十分な時間にわたって振動が持続するか否かに関連する。波形の占有率が13%以上であるかどうかは、撫でられていると感じるために十分な強度を有しているか否かに関連する。
【0070】
スペクトログラム波形解析は、マイク30により取得されて、解析用PCに収集された振動データを、Audacityに適用することで得られるスペクトログラム波形(縦軸が周波数、横軸が時間、色が強度を示す)に基づいて行われる。
【0071】
スペクトログラム波形の出力は、下記の設定で行った。
[規格設定]
・スケール(Scale) :リニア
・最低周波数 :0Hz
・最高周波数 :8000Hz
[波形表示設定]
・ゲイン :20dB
・レンジ :55dB
・高域ブースト :0dB/dec
・グレースケール :チェック有
【0072】
得らえた振動のスペクトログラム波形は、画像解析ソフトであるImageJ(国立衛生研究所製)を用いて、グレースケールで表示された波形を白黒に二値化処理を行った。
【0073】
ImageJによる二値化処理に関しては、下記の設定で行った。
・Type :8bit
・Threshold :165-255
・Threshold color:B&W(黒白)
【0074】
<2.官能評価>
評価者が振動子によって再現される振動から感じる感触を評価する官能評価を行った。
官能評価手順については、音声解析ソフトウェア(Audacity)によって記録された振動波形をアルプスアルパイン社製ハプティック(R)リアクタ AF14シリーズ,ヘビータイプを使用して再生した。再生時にはオーディオテクニカ社製ヘッドフォンアンプAT-HA2を使用した。再生された振動は専門評価者3名によって手の平で評価し、以下のI.~III.の三項目について評価結果を合議によって決定した。
【0075】
I.不快な音について
1:気にならない
2:ほとんど気にならない
3:どちらともいえない
4:やや気になる
5:気になる
【0076】
II.撫でられている振動として振動持続が十分である
1:そう思う
2:ややそう思う
3:どちらともいえない
4:ややそう思わない
5:そう思わない
【0077】
III.撫でられている振動として適度な強さがある
1:そう思う
2:ややそう思う
3:どちらともいえない
4:ややそう思わない
5:そう思わない
【0078】
これらの全てが「1」又は「2」であり、評価者が撫でられる時に生じる振動を十分に再現していると感じた場合は判定を「○」とし、「1」、「2」に加え、一つでも「3」があり、感触に違和感があった場合は判定を「△」とし、一つでも「4」又は「5」があり、撫でられる時に生じる振動を十分に再現できていないと感じた場合は判定を「×」とした。
【0079】
さらに、参考例以外のサンプルについては、評価時において疑似触覚部が変形し、凹んだ状態から戻らなくなるか否か、すなわち、疑似触覚部の安定性についても評価した。具体的には、人工皮革を疑似触覚部に接触させて5往復させた後から2秒以内に、接触面全体がZ方向に関して、元の位置からz2の10%以内の範囲にまで戻った場合は「○」、戻らなかった場合は「×」とした。
【0080】
なお、参考例に関しては、マイク30が露出しているため、そもそも本評価項目の対象とはならない。
【0081】
そして、スペクトログラム波形解析の判定、官能評価の判定、及び疑似触覚部の安定性の項目のいずれにおいても「×」が無い場合は総合判定「○」、一つでも「×」があった場合は総合判定「×」とした。
【0082】
(結果)
図7A図7Eは、各サンプルにより取得された二値化処理される前のスペクトログラム波形を示すグラフの代表例であり、図7Aが実施例1、図7Bが比較例1、図7Cが比較例2、図7Dが比較例3、図7Eが参考例の結果にそれぞれ対応している。図7A図7Eに示すグラフは、縦軸が周波数[kHz]、横軸が時間[s]を示している。そして、図7A図7Eを含め、各サンプルのスペクトログラム波形に基づく各評価項目についての判定、官能評価に関する各評価項目についての判定、そして、総合判定は下記表3のとおりとなった。
【0083】
【表3】
【0084】
上記表3のとおり、実施例1~10については、総合判定がいずれも「○」となった。そして、比較例は、いずれかの項目において「×」と判定された項目があり、総合判定はいずれのサンプルにおいても「×」となった。
【0085】
上記結果からわかるように、実施例1~10、すなわち、上述した振動検出装置10が採用し得る構成では、図1に示すような触覚伝達システム1において、送信者2から受信者3に対して、人が撫でられていると感じる振動を検出することができる。そして、上述した振動検出装置10を用いることで、受信者3が、振動再現装置20によって、人に撫でられていると感じることができる。
【0086】
以上より、上記構成の振動検出装置10によれば、大型の装置を要することなく、人の触覚によるコミュニケーションに利用可能な振動データを検出することができる。
【0087】
上述した触覚伝達システム1、及び振動検出装置10が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成や各手法に限定されない。
【0088】
上述した各実施例においては、筐体11に対して一つのマイク30を組み込んだ態様が示されているが、独立したマイク30及び空洞S1、疑似触覚部12を一セットとして、筐体11に対して複数セットを(例えば、2~3個)組み込んだ態様とすることもできる。当該態様では、複数の検出部30aが筐体11に組み込まれるため、例えば、振動の検出範囲をより広げることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 : 触覚伝達システム
2 : 送信者
3 : 受信者
10 : 振動検出装置
11 : 筐体
12 : 疑似触覚部
12a : 接触面
12b : 第一部分
12c : 第二部分
13 : ケーブル
20 : 振動再現装置
30 : マイク
30a : 検出部
S1 : 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E