(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151050
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20241017BHJP
H05B 45/20 20200101ALI20241017BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20241017BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20241017BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B45/20
H05B47/105
H05B47/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064164
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 康平
(72)【発明者】
【氏名】大澤 隆司
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA10
3K273QA15
3K273RA05
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA28
3K273UA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザーが天井面と壁面との相関色温度に差を感じることができる照明システムを提供する。
【解決手段】照明システムは、天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第1の照明器具と、出射される光の一部が壁面を照らすように壁面あるいは壁面近くの天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第2の照明器具と、第1の照明器具の相関色温度および第2の照明器具の相関色温度を各々独立して制御する照明制御装置と、を備え、照明制御装置は、第2の照明器具の相関色温度を、第1の照明器具の相関色温度に対してあらかじめ設定された差が生じるように制御するものであり、第1の照明器具の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、第2の照明器具の相関色温度を、第1の照明器具の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第1の照明器具と、
出射される光の一部が壁面を照らすように前記壁面あるいは前記壁面近くの前記天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第2の照明器具と、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度および前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を各々独立して制御する照明制御装置と、を備え、
前記照明制御装置は、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度に対してあらかじめ設定された差が生じるように制御するものであり、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御する
照明システム。
【請求項2】
前記照明制御装置は、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が、3000K以上3500K以下の範囲において、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度よりも200K以上高くなるように制御する
請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記照明制御装置は、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が変化した場合に、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が変化する前と変化した後とで、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度との差が維持されるように制御する
請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記照明制御装置は、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、2000K以上3500K以下に制御する
請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項5】
前記第1の照明器具と前記第2の照明器具とは、
前記第1の照明器具から出射される光と前記第2の照明器具から出射される光とが前記壁面で重なり合うように配置されている
請求項1または2に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、「夕焼け」の光演出効果が得られる照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然の「夕焼け」は、特に人の心を安らかにする効果が有ると思われる。この「夕焼け」も自然現象であるため、場所による地平線の形、山並み、および街並みなどで見え方が変わるだけでなく、雲のかかり具合あるいは湿度などによる散乱の変化で、千差万別な見え方がある事は誰もが知るところである。
【0003】
なお、ここで言う「夕焼け」は一般には地平線に近いところほど相関色温度が低く、上方に行くに連れ相関色温度が高くなるが、自然がなせる偶然か、それとは逆の現象が稀に観察される。この現象は、地平線より上側が赤みを帯び、地平線に近いところほど相関色温度が高く、上方に行くに連れ相関色温度が低くなる。この特殊な現象を仮に「逆夕焼け」と呼ぶとする。通常の「夕焼け」が翌日の晴天をイメージさせたり、夜に向かっている時間帯であるにも拘らず、何か心穏やかで明るい気持ちにさせてくれるのに対し、「逆夕焼け」はむしろ荘厳で静けさを感じ、自然に対する敬虔な気持ちを彷彿とさせてくれる。
【0004】
従来、「逆夕焼け」の光演出効果を得ることができる照明器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の照明器具は、白色光を発光する主光源に加え、赤色、緑色、および青色の発光素子を備えてカラー照明可能な補助光源を有し、その補助光源から例えば時刻毎の空の色の変化に対応したカラー光を照射して、例えば日中は青空、夕方は夕焼け空を発光面に再現するようにしている。また、従来、照明器具を室内の天井面および壁面にそれぞれ設置し、それら照明器具の光を有効に制御することで、「逆夕焼け」を想起させる制御手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の制御手法では、室内の天井面に設置された照明器具と室内の壁面に設置された照明器具とを制御するが、それら照明器具は同一の相関色温度制御により制御されていたため、ほぼ同一の相関色温度になっており、ユーザーが室内の天井面と壁面との相関色温度に差を感じず、均質な照明であると感じてしまうという課題があった。
【0007】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、従来よりもユーザーが天井面と壁面との相関色温度に差を感じることができる照明システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る照明システムは、天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第1の照明器具と、出射される光の一部が壁面を照らすように前記壁面あるいは前記壁面近くの前記天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第2の照明器具と、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度および前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を各々独立して制御する照明制御装置と、を備え、前記照明制御装置は、前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度に対してあらかじめ設定された差が生じるように制御するものであり、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る照明システムによれば、第1の照明器具から出射される光の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、第1の照明器具から出射される光の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御する。こうすることで、各々の照明器具の相関色温度を適切に制御することができ、従来よりもユーザーが天井面と壁面との相関色温度に差を感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る照明システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る照明システムの第1の照明器具の詳細を示した図である。
【
図3】実施の形態に係る照明システムの第2の照明器具の設置方法を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る照明システムの第2の照明器具の設置方法の変形例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る照明システムの制御方法を示す制御に特化したブロック図である。
【
図7】実施の形態に係る照明システムの構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る照明システムの構成の一例を示す図である。
図2は、実施の形態に係る照明システムの第1の照明器具10の詳細を示した図である。
図3は、実施の形態に係る照明システムの第2の照明器具20の設置方法を示す図である。
【0013】
図1に示すように、実施の形態に係る照明システムは、出射される光の相関色温度(1800K~12000K)および出射される光の出力が独立して制御可能な平面視して円形状の第1の照明器具10と、出射される光の相関色温度(1800K~12000K)および出射される光の出力が独立して制御可能であり、さらに第1の照明器具10とも独立して制御可能な平面視して長方形状の第2の照明器具20と、を備えている。第1の照明器具10は、室内の天井面Cに設けられるシーリング形の天井照明である。第2の照明器具20は、
図3に示すように、室内の壁面Wに近い天井面Cにコーニスと呼ばれる構造(以下、コーニス型構造とも称する)で、この照明器具が室内から直接見えない位置に設けられる間接照明形の壁面照明である。なお、ここで言う室内とは、家のリビング、ホテルのロビーあるいは客室、事務所、または教室の様に、人がその照明下でくつろいだり、作業をしたりする空間であり、舞台の様に演出を目的とした空間ではない。
【0014】
図2に示すように、第1の照明器具10は、出射される光の相関色温度の異なる2種類以上のLEDを光源とした本体部11と、拡散性を有し本体部11に取り付けられる透光カバー12と、透光カバー12の外周部に取り付けられる枠13と、を備えている。また、本体部11は、図示省略するが、天井面C側に近い部材から、略円形状の本体ベース、センサ、絶縁板、本体ベースと放熱板とに囲まれる電源基板、本体ベースに取り付けられる放熱板、放熱板に取り付けられる光源基板、反射シート、光源基板を覆うLEDカバー、および、反射カバーを備えている。
【0015】
また、第1の照明器具10の複数のLEDは、対応する複数のドーム形状部を介して光を出射する様に構成されている。実施の形態では、一対のLEDの組を、ひとつのドーム形状部内に収容しているが、ドーム形状部内に収容されるLEDの数は特に限定されない。一対のLEDの組のうち、例えば、一方は昼白色(相関色温度5000K)系統の光束を放射する白色系統LEDであり、他方は電球色(相関色温度2500K)系統の光束を放射する電球色系統LEDである。これらのLEDとしては、例えば、青色の光束を放射する青色LEDと黄色の蛍光体とを組み合わせることによって、青色発光と黄色発光とが合成されて昼白色光および電球色光を放射するものなどを適宜使用することもできる。
【0016】
図4は、実施の形態に係る照明システムの第2の照明器具20の設置方法の変形例を示す図である。実施の形態では、
図3に示すように、壁面Wに近い天井面Cにコーニスと呼ばれる構造で、第1の照明器具10とは別の細長い第2の照明器具20が設置されているとしたが、それに限定されない。例えば、
図4に示すように、床面Fに近い壁面Wに発光部分が見えにくい下向き発光コーブと呼ばれる構造(以下、コーブ型構造とも称する)で第2の照明器具20が設置されていてもよく、第2の照明器具20は、壁面Wに沿って設置されていればよい。また、第2の照明器具20は細長い形状としたが、その形状に限定されず、光源のみで構成されていてもよい。
【0017】
図5は、実施の形態に係る照明システムの制御方法を示す制御に特化したブロック図である。なお、
図5中では、複数の第1の照明器具10および複数の第2の照明器具20を区別するため、それぞれ最後に「-数字」を付している。天井面Cに設置される少なくとも1台以上の第1の照明器具10(10-1、10-2・・・)は、出射される光の出力を制御する第1の光出力制御手段52と出射される光の相関色温度を制御する第1の相関色温度制御手段53とにより制御される。つまり、第1の光出力制御手段52および第1の相関色温度制御手段53は、第1の照明器具10(10-1、10-2・・・)と通信可能に構成されている。そして、これら第1の光出力制御手段52と第1の相関色温度制御手段53とはそれらの上位の第1の照明制御手段51により制御される。つまり、第1の照明制御手段51は、第1の光出力制御手段52および第1の相関色温度制御手段53と通信可能に構成されている。
【0018】
また、概ね壁面Wに設置された少なくとも1台以上の第2の照明器具20(20-1、20-2・・・)は、出射される光の出力を制御する第2の光出力制御手段55と出射される光の相関色温度を制御する第2の相関色温度制御手段56とにより制御される。つまり、第2の光出力制御手段55および第2の相関色温度制御手段56は、第2の照明器具20(20-1、20-2・・・)と通信可能に構成されている。そして、これら第2の光出力制御手段55と第2の相関色温度制御手段56とはそれらの上位の第2の照明制御手段54により制御される。つまり、第2の照明制御手段54は、第2の光出力制御手段55および第2の相関色温度制御手段56と通信可能に構成されている。また、第1の照明制御手段51と第2の照明制御手段54とはそれらの上位の照明制御装置50により制御される。つまり、照明制御装置50は、第1の照明制御手段51および第2の照明制御手段54と通信可能に構成されている。したがって、照明制御装置50は、1台または複数台の第1の照明器具10からなる第1の照明器具群、および、1台または複数台の第2の照明器具20からなる第2の照明器具群から出射される光の出力と相関色温度とを、各々独立して制御する。
【0019】
照明制御装置50、第1の照明制御手段51、第1の光出力制御手段52、第1の相関色温度制御手段53、第2の照明制御手段54、第2の光出力制御手段55、および、第2の相関色温度制御手段56は、例えば、専用のハードウェア、または記憶部(図示せず)に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、プロセッサともいう)で構成される。以下、照明制御装置50について説明するが、第1の照明制御手段51、第1の光出力制御手段52、第1の相関色温度制御手段53、第2の照明制御手段54、第2の光出力制御手段55、および、第2の相関色温度制御手段56についても同様である。
【0020】
照明制御装置50が専用のハードウェアである場合、照明制御装置50は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。照明制御装置50が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部を一つのハードウェアで実現してもよい。
【0021】
照明制御装置50がCPUの場合、照明制御装置50が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、記憶部に格納される。CPUは、記憶部に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、照明制御装置50の各機能を実現する。ここで、記憶部は、各種情報を記憶するものであり、例えば、フラッシュメモリ、EPROM、および、EEPROMなどの、データの書き換え可能な不揮発性の半導体メモリを備えている。
【0022】
なお、照明制御装置50の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0023】
従来、天井照明と壁面照明とは同一の相関色温度制御により制御されていたため、ほぼ同一の相関色温度になっており、その相関色温度にはユーザーにより差が認識されていないという課題があることが判明した。
【0024】
発明者らは天井高2.6m、広さ約8畳相当で、天井面Cおよび壁面Wがともに白色の模擬部屋において、
図1に示したような天井面Cに設置された天井照明である第1の照明器具10から出射される光の相関色温度を3000Kに調整し、さらに壁面Wにコーニス構造とした壁面照明である第2の照明器具20から出射される光の相関色温度も同様に3000Kに調整した。第1の照明器具10および第2の照明器具20から出射される光の相関色温度の調整は、それらの前面の拡散カバー上で色彩輝度計を用いて行った。この状態で20代から60代の男女10名を被検者として模擬部屋の中で、空間の演出効果を確認した。先ず前記状態ではほぼ全員が天井面Cと壁面Wとの色の違いを感じず、均質な照明であると感じた。
【0025】
さて「逆夕焼け」は人に荘厳で静けさを感じさせ、自然に対する敬虔な気持ちを彷彿とさせてくれるが、空間演出において前記均質な相関色温度3000Kの照明では、単純に電球色で照明されている部屋と認識され、相関色温度が低いにもかかわらず、特に「逆夕焼け」の様な印象を持った被検者はいなかった。
【0026】
なお、ここで再現した「逆夕焼け」とは、地平線に近い方は赤色に近い色で、上方へ行くにつれ、上記記載の赤色に比べ色温度が徐々に低くなるシーンを表す。
【0027】
そこで、発明者らは何故「逆夕焼け」の様な印象を持たないのかを考察したところ、「逆夕焼け」には、地平線付近の色温度は高く、地平線から上方に行くに従い段階的なグラディエーションが有るが、模擬部屋にはそれが無いことに気付いた。そこで、次に壁面Wを照らす第2の照明器具20から出射される光の相関色温度を300K上げ、天井照明である第1の照明器具10から出射される光の相関色温度である3000Kよりも高い3300Kとして再度被験者10名に意見を聞いたところ、およそ半数の被験者が「逆夕焼け」を想起したと答えた。
【0028】
さらに、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度と第2の照明器具20から出射される光の相関色温度とで、どの程度の差が有れば色の違いを認識できるかを実験したところ、天井照明である第1の照明器具10から出射される光の相関色温度が2000~3000Kの範囲においては、概ね100Kで色の違いを認識できることが判明した。さらに、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度が3000~3500Kの範囲においては、概ね200Kで色の違いを認識できることが判明した。
【0029】
図6は、xy色度図の要部拡大図である。なお、
図6に示すxy色度図の黒体軌跡から、黒体軌跡における相関色温度が小さくなるほど相関色温度の値に対する幅が大きくなることから、相関色温度の差が同じ場合は、相関色温度が小さいほうが色の違いを認識しやすい。
【0030】
また、天井照明と壁面照明とが1500mm以上離れると、双方の発光部が遠くなり、その相関色温度の差による色の違いが感じづらくなり、逆夕焼けを感じさせる効果を十分得るためには1500mm以下が好ましかった。
【0031】
天井照明が、壁面照明が設置された壁面Wに対して近く、壁面Wに照射された天井照明の光の照度が壁面Wに照射された壁面照明の光の照度よりも高く、その差があらかじめ設定された閾値よりも高い場合に、壁面Wで天井照明から出射された光が強くなり、壁面照明から出射された光とのグラデーションが形成されやすい。
【0032】
天井照明が、壁面照明が設置された壁面Wに対して遠く、壁面Wに照射された天井照明の光の照度が壁面Wに照射された壁面照明の光の照度よりも低く、その差があらかじめ設定された閾値よりも低い場合に、壁面Wで天井照明から出射された光が弱くなり、壁面照明から出射されたとのグラデーションが形成されにくい、あるいは天井照明から出射された光が壁面Wに照射されていないことがある。
【0033】
このことから、天井照明と壁面照明との距離は、壁面Wにて、天井照明から出射された光と壁面照明から出射された光とがグラデーションを形成する距離とする。
【0034】
以上説明した通り、「逆夕焼け」を想起させるためには、壁面照明の色温度を天井照明の色温度より適切な値に低下させるように相関色温度を制御することが肝要である。これにより、単なる電球色の照明空間だったところから心安らぐ「逆夕焼け」を想起し得る可能性が増すという効果が得られる。
【0035】
図7は、実施の形態に係る照明システムの構成の変形例を示す図である。
図1に示すように、実施の形態に係る照明システムは、1台の第1の照明器具10と1台の第2の照明器具20とを備え、第1の照明器具10はシーリング形の天井照明であり、第2の照明器具20はコーニス構造の壁面照明であるとしたが、これに限定されない。
図7に示すように、照明システムは、複数台の第1の照明器具10からなる第1の照明器具群と複数台の第2の照明器具20からなる第2の照明器具群とを備えてもよい。また、第1の照明器具群および第2の照明器具群の種類もそれぞれ1つに限定されない。つまり、第1の照明器具群として、例えばシーリング形の天井照明10aとダウンライト形の天井照明10bとを用い、第2の照明器具群として、例えばコーニス型構造の壁面照明20aとコーブ型構造の壁面照明20bとブラケット型の壁面照明20cとを用いてもよい。
【0036】
実施の形態に係る照明システムに関しては、天井照明である第1の照明器具10と壁面照明である第2の照明器具20とを各々独立して調光する際に、第1の照明器具10の調光率と第2の照明器具20の調光率との相対関係如何に拘わらず、相関色温度の差を維持できるものである。
【0037】
第1の照明器具10から出射される光の相関色温度に対する、第2の照明器具20から出射される光の相関色温度の制御方法は以下の方法が挙げられる。
【0038】
(1)ユーザー(作業者)が手動で設定する。
ユーザーが第1の照明器具10から出射された光を色彩輝度計にて計測して、その値に対して100K以上高い所定の値の相関色温度になるように第2の照明器具20から出射される光の相関色温度を変化させる。
【0039】
(2)照明制御装置50で設定する。
照明制御装置50は、第1の照明器具10から出射された光の相関色温度に対して壁面照明の相関色温度が100K以上高い所定の値の相関色温度になるように第2の照明器具20から出射される光を制御する。また、「逆夕焼け」を模したシーンを照明空間に提供するモードの場合、照明制御装置50は、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度のみを変化させるように操作されたときに、第2の照明器具20から出射される光を、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度が変化する前と変化した後とで、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度との差が維持されるように制御する。
【0040】
(3)壁面Wの相関色温度を測定して設定する。
第2の照明器具20に色彩輝度計を実装し、第1の照明器具10から壁面Wに出射された光の相関色温度を測定し、その相関色温度に対して100K以上高い値の相関色温度になるように第2の照明器具20を制御する。照明制御装置50によって第1の照明器具10から出射される光の相関色温度のみが制御された場合に、第2の照明器具20は第1の照明器具10から壁面Wに出射された光の相関色温度を測定し、第1の照明器具10から出射された光の相関色温度に対する第2の照明器具20から出射された光の相関色温度の差が維持されるように第2の照明器具20を制御する。
【0041】
なお、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度に対する、第2の照明器具20から出射される光の相関色温度の制御方法は、上記に限定されず、他の制御方法でもよい。
【0042】
また、
図5のブロック図には図示されていないが、第1の照明器具10および第2の照明器具20には、照明駆動用の電源線が接続されている。
【0043】
また、時間変化に伴う逆夕焼けシーンの変化の演出として、時間の経過に伴って第2の照明器具20から出射される光の出力を段階的に小さくするように制御してもよい。これによって、壁面Wで形成される光のグラデーションが時間と共に変化し、日の入りを演出することができる。
【0044】
また、第1の照明器具10と第2の照明器具20とで壁面Wに「逆夕焼け」を模したグラデーションを形成するシーンは、照明制御装置50に設けられたタイマー(図示せず)によってスケジューリングして、リアルタイムの夕方に「逆夕焼け」を模した照明空間を演出してもよい。
【0045】
以上、「逆夕焼け」を想起させる照明光演出に特化して説明してきたが、照明以外の一般的音響効果あるいは映像効果を加える事でその効果が加算でき、さらに効果を増す事は言うまでもない。
【0046】
以上、実施の形態に係る照明システムは、天井面Cに設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第1の照明器具10と、出射される光の一部が壁面Wを照らすように壁面Wあるいは壁面W近くの天井面Cに設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第2の照明器具20と、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度および第2の照明器具20から出射される光の相関色温度を各々独立して制御する照明制御装置50と、を備え、照明制御装置50は、第2の照明器具20から出射される光の相関色温度を、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度に対してあらかじめ設定された差が生じるように制御するものであり、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、第2の照明器具20から出射される光の相関色温度を、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御するものである。
【0047】
実施の形態に係る照明システムによれば、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、第2の照明器具20から出射される光の相関色温度を、第1の照明器具10から出射される光の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御する。こうすることで、各々の照明器具の相関色温度を適切に制御することができ、従来よりもユーザーが天井面Cと壁面Wとの相関色温度に差を感じることができる。
【0048】
以下、本開示の諸態様を付記する。
【0049】
(付記1)
天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第1の照明器具と、
出射される光の一部が壁面を照らすように前記壁面あるいは前記壁面近くの前記天井面に設置され、出射される光の相関色温度が可変の少なくとも1台以上の第2の照明器具と、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度および前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を各々独立して制御する照明制御装置と、を備え、
前記照明制御装置は、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度に対してあらかじめ設定された差が生じるように制御するものであり、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が、2000K以上3000K以下の範囲において、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度よりも100K以上高くなるように制御する
照明システム。
(付記2)
前記照明制御装置は、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が、3000K以上3500K以下の範囲において、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度よりも200K以上高くなるように制御する
付記1に記載の照明システム。
(付記3)
前記照明制御装置は、
前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が変化した場合に、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度が変化する前と変化した後とで、前記第1の照明器具から出射される光の相関色温度との差が維持されるように制御する
付記1または2に記載の照明システム。
(付記4)
前記照明制御装置は、
前記第2の照明器具から出射される光の相関色温度を、2000K以上3500K以下に制御する
付記1~3のいずれか一つに記載の照明システム。
(付記5)
前記第1の照明器具と前記第2の照明器具とは、
前記第1の照明器具から出射される光と前記第2の照明器具から出射される光とが前記壁面で重なり合うように配置されている
付記1~4のいずれか一つに記載の照明システム。
【符号の説明】
【0050】
10 第1の照明器具、10-1 第1の照明器具-1、10-2 第1の照明器具-2、10a 天井照明、10b 天井照明、11 本体部、12 透光カバー、13 枠、20 第2の照明器具、20-1 第2の照明器具-1、20-2 第2の照明器具-2、20a 壁面照明、20b 壁面照明、20c 壁面照明、50 照明制御装置、51 第1の照明制御手段、52 第1の光出力制御手段、53 第1の相関色温度制御手段、54 第2の照明制御手段、55 第2の光出力制御手段、56 第2の相関色温度制御手段、C 天井面、F 床面、W 壁面。