(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151054
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】アンギュラ玉軸受の差幅測定装置及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/02 20060101AFI20241017BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20241017BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01B5/02
F16C19/16
F16C33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064173
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】久保 喬弘
【テーマコード(参考)】
2F062
3J701
【Fターム(参考)】
2F062AA36
2F062AA41
2F062AA71
2F062BC37
2F062CC27
2F062DD23
2F062EE01
2F062EE62
2F062EE63
2F062FF02
2F062FF12
2F062HH13
2F062JJ04
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA54
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】製品の傷付きを抑制しつつ、従来技術と比較して差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できるアンギュラ玉軸受の差幅測定装置及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法を提供する。
【解決手段】アンギュラ玉軸受の差幅測定方法では、まず、アンギュラ玉軸受の内輪11及び外輪12をワーク10とした場合、ワーク10の軌道面側において、少なくとも一部分が球状に形成された測定子を配置する。次に、測定子をワーク10の軌道面に沿ってワーク10の軸方向及び径方向に沿って相対移動させ、測定子の径方向に関する位置を示す測定子間距離L1,L2及びワーク10の一方の端面と測定子との間の軸方向に沿う高さである測定子高さを測定する。内輪11及び外輪12のそれぞれについて測定子間距離L1,L2及び測定子高さを測定し、測定された測定子間距離L1,L2及び測定子高さを用いて内輪11と外輪12との差幅Xを算出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンギュラ玉軸受の内輪及び外輪をワークとした場合、前記ワークの軌道面側に配置され、前記ワークの前記軌道面上を前記ワークの軸方向及び径方向に沿って相対移動し、かつ少なくとも一部分が球状に形成された測定子と、
前記ワークに対して前記測定子を前記軸方向及び前記径方向に相対移動させる駆動機構と、
前記測定子の前記径方向に関する位置を示す第一寸法を測定する第一寸法検出部と、
前記ワークの一方の端面と前記測定子との間の前記軸方向に沿う高さである第二寸法を測定する第二寸法検出部と、
を備える、
アンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項2】
前記内輪及び前記外輪のそれぞれについて前記第一寸法の測定及び前記第二寸法の測定が同一の前記測定子により行われ、
前記内輪及び前記外輪を組むことなく単体で前記第一寸法及び前記第二寸法を測定することにより前記アンギュラ玉軸受の差幅を算出する、
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項3】
前記測定子は、球状に形成され、前記ワークの周方向において互いに等間隔に離間して複数設けられ、
複数の前記測定子の間の距離を計測することにより前記第一寸法を算出する、
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項4】
前記測定子は、前記アンギュラ玉軸受の転動体と同じ直径を有する球状に形成される、
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項5】
前記測定子の少なくとも一部は、前記アンギュラ玉軸受の転動体の直径と異なる直径を有する球状に形成される、
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、
前記ワークを前記軸方向に沿って移動させる上下駆動機構と、
前記測定子を前記径方向に沿って移動させる左右駆動機構と、を有する、
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記測定子を前記軸方向及び前記径方向に移動させる、
請求項1に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項8】
算出部を更に備え、
前記算出部は、
前記内輪の軌道面に沿って前記測定子を前記軸方向に移動させた場合に、前記第一寸法検出部により検出された前記第一寸法の変化量と、前記第二寸法検出部により検出された前記第二寸法の変化量と、により前記測定子と前記内輪の前記軌道面との接触角である内輪側接触角を算出し、
前記内輪の対となる前記外輪の軌道面に沿って前記測定子を前記軸方向に移動させた場合に、前記第一寸法検出部により検出された前記第一寸法の変化量と、前記第二寸法検出部により検出された前記第二寸法の変化量と、により前記測定子と前記外輪の前記軌道面との接触角である外輪側接触角を算出し、
前記内輪を測定した際の前記内輪側接触角と前記外輪を測定した際の前記外輪側接触角とが同等の値となり、かつ前記内輪を測定した際の前記第一寸法と前記外輪を測定した際の前記第一寸法とが同等の値となる場合に、前記同等の値となる前記第一寸法に対応する前記内輪及び前記外輪の前記第二寸法の差分に基づいて前記アンギュラ玉軸受の少なくとも一方の端面における差幅を算出する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置。
【請求項9】
アンギュラ玉軸受の内輪及び外輪をワークとした場合、前記ワークの軌道面側において、少なくとも一部分が球状に形成された測定子を配置し、
前記測定子を、前記ワークの前記軌道面に沿って前記ワークの軸方向及び径方向に沿って相対移動させ、
前記測定子の前記径方向に関する位置を示す第一寸法を測定し、
前記ワークの一方の端面と前記測定子との間の前記軸方向に沿う高さである第二寸法を測定し、
前記内輪及び前記外輪のそれぞれについて前記第一寸法及び前記第二寸法を測定し、測定された前記第一寸法及び前記第二寸法を用いて前記内輪と前記外輪との差幅を算出する、
アンギュラ玉軸受の差幅測定方法。
【請求項10】
前記内輪に対して、前記内輪の軌道面に沿って前記測定子を前記軸方向に相対移動させたときの前記第一寸法の変化量と前記第二寸法の変化量とにより前記測定子と前記内輪の前記軌道面との接触角である内輪側接触角を算出し、
前記内輪の対となる前記外輪に対して、前記外輪の軌道面に沿って前記測定子を前記軸方向に相対移動させたときの前記第一寸法の変化量と前記第二寸法の変化量とにより前記測定子と前記外輪の前記軌道面との接触角である外輪側接触角を算出し、
前記内輪を測定したときの前記内輪側接触角と前記外輪を測定したときの前記外輪側接触角とが同等の値となり、かつ前記内輪を測定したときの前記第一寸法と前記外輪を測定したときの前記第一寸法とが同等の値となるときの前記第一寸法に対応する前記内輪及び前記外輪の前記第二寸法の差分に基づいて、前記アンギュラ玉軸受の少なくとも一方の端面における差幅を算出する、
請求項9に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定方法。
【請求項11】
前記測定子は、前記アンギュラ玉軸受の転動体と同じ直径を有する球状に形成され、前記軌道面の周方向に沿って互いに等間隔に離間して複数設けられる、
請求項9又は請求項10に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定方法。
【請求項12】
前記測定子の少なくとも一部は、前記アンギュラ玉軸受の転動体の直径と異なる直径を有する球状に形成され、前記軌道面の周方向に沿って互いに等間隔に離間して複数設けられる、
請求項9又は請求項10に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定方法。
【請求項13】
前記測定子は、前記軌道面において互いに対向するように一対設けられ、
一対の前記測定子の間の距離に基づいて前記第一寸法を測定する、
請求項9又は請求項10に記載のアンギュラ玉軸受の差幅測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンギュラ玉軸受の差幅測定装置及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンギュラ玉軸受は、内輪と外輪との間に所定の接触角を有して配置される転動体を有する転がり軸受であり、アキシャル荷重及びラジアル荷重の双方を負荷することができる。これらのアンギュラ玉軸受では、アンギュラ玉軸受を組み付けた際の内輪及び外輪の端面の位置の差である差幅(寸法)を所定の範囲内に収める必要がある。アンギュラ玉軸受の差幅は軸受の予圧を規定する重要な寸法であり、許容範囲内に無い場合、軸受寿命や振動特性等の軸受性能が低下するため、高精度に測定を行う必要がある。従来、アンギュラ玉軸受の差幅を高精度に測定するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、アンギュラ玉軸受を組み付けた状態で差幅を測定する構成が開示されている。
特許文献2には、専用の測定マスターを用いて内輪及び外輪をそれぞれ単体で測定して差幅を測定する構成が開示されている。例えば外輪を測定する際には、内輪及び転動体に代えて、内輪の軌道面と同じ曲率中心を有し、かつ転動体の直径と内輪の軌道面の曲率とに応じて決定される所定の形状の当接部を有する外輪用の測定マスターを用いる。特許文献2に記載の技術によれば、当接部を外輪の軌道面に接触させた状態で測定された測定マスターと外輪との差幅を用いて内輪と外輪との差幅を測定できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-171201号公報
【特許文献2】特開2017-58151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術にあっては、アンギュラ玉軸受を組み付けた状態で差幅を測定するので、測定後、例えば組み付け状態で内輪及び外輪の研削を行うことで差幅を許容範囲内に収めている。このような方法では、内輪及び外輪の軌道面や転動体等に付着した研磨屑や脱落砥粒等の異物を十分に洗浄する事が難しいため、軸受を回転させた際に軌道面及び転動体に異物による傷が生じ、音響性能や軸受寿命が低下するおそれがある。
また、別の手法として、例えば少ない玉数で仮組みを行って差幅を測定した後、差幅調整及び洗浄のために一旦分解して再び本組み付けする場合がある。しかしながら、この手法においては、作業工程の増加による生産性の低下や、仮組み時に使用する玉の誤差による測定誤差の発生、分解及び組み付け時の傷付きの発生等のおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術にあっては、アンギュラ玉軸受の種類やサイズ等に応じて複数の測定マスターを予め準備する必要があるので、測定作業のコストが増加するおそれがあった。さらに、測定マスターの準備や交換作業などを考慮すると、差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付け作業性を向上する点においてさらなる改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、製品の傷付きを抑制しつつ、従来技術と比較して差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できるアンギュラ玉軸受の差幅測定装置及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置は、アンギュラ玉軸受の内輪及び外輪をワークとした場合、前記ワークの軌道面側に配置され、前記ワークの前記軌道面上を前記ワークの軸方向及び径方向に沿って相対移動し、かつ少なくとも一部分が球状に形成された測定子と、前記ワークに対して前記測定子を前記軸方向及び前記径方向に相対移動させる駆動機構と、前記測定子の前記径方向に関する位置を示す第一寸法を測定する第一寸法検出部と、前記ワークの一方の端面と前記測定子との間の前記軸方向に沿う高さである第二寸法を測定する第二寸法検出部と、を備える。
【0009】
本発明の第一の態様に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定方法は、アンギュラ玉軸受の内輪及び外輪をワークとした場合、前記ワークの軌道面側において、少なくとも一部分が球状に形成された測定子を配置し、前記測定子を、前記ワークの前記軌道面に沿って前記ワークの軸方向及び径方向に沿って相対移動させ、前記測定子の前記径方向に関する位置を示す第一寸法を測定し、前記ワークの一方の端面と前記測定子との間の前記軸方向に沿う高さである第二寸法を測定し、前記内輪及び前記外輪のそれぞれについて前記第一寸法及び前記第二寸法を測定し、測定された前記第一寸法及び前記第二寸法を用いて前記内輪と前記外輪との差幅を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法によれば、製品の傷付きを抑制しつつ、従来技術と比較して差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できるアンギュラ玉軸受の差幅測定装置及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置の概略図であり、内輪測定時の状態の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置の概略図であり、外輪測定時の状態の一例を示す図。
【
図3】内輪測定時における各測定値についての説明図。
【
図5】外輪測定時における各測定値についての説明図。
【
図6】測定子間距離及び測定子高さを用いてアンギュラ玉軸受の差幅を測定する方法を示す説明図。
【
図7】第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置の概略図であり、内輪測定時の状態の一例を示す図。
【
図8】第3実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置の概略図であり、内輪測定時の状態の一例を示す図。
【
図9】第4実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置の概略図であり、内輪測定時の状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、アンギュラ玉軸受の差幅測定装置1に設置されるワーク10であるアンギュラ玉軸受の内輪11(又は外輪12)の軸方向に沿う方向を軸方向と言い、ワーク10の径方向に沿う方向を径方向と言い、ワーク10の周方向に沿う方向を径方向と言う場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
(アンギュラ玉軸受の差幅測定装置)
図1は、第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1の概略図であり、内輪11測定時の状態の一例を示す図である。
図2は、第1実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1の概略図であり、外輪12測定時の状態の一例を示す図である。以下の説明において、例えば
図1に示す内輪11の測定時においては、内輪11がワーク10(被測定対象物)である。
図2に示す外輪12の測定時においては、外輪12がワーク10(被測定対象物)である。
【0014】
本実施形態のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1(以下、単に差幅測定装置1という場合がある。)は、アンギュラ玉軸受の内輪11及び外輪12をそれぞれ個別に測定することにより、アンギュラ玉軸受の差幅X(
図6参照)を高精度に測定する装置である。差幅Xは、アンギュラ玉軸受の内輪11、外輪12、及び転動体13を組み付けた状態における内輪11及び外輪12の端面同士の軸方向位置の差である。差幅には、内輪11及び外輪12における軸方向の一方側の端面同士の差幅である正面差幅と、軸方向の他方側の端面同士の差幅である背面差幅と、がある。本実施形態のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1によれば、正面差幅と背面差幅とを同等の方法により測定可能である。よって以下の説明においては、主に一方の端面11b,12bにおける差幅、すなわち正面差幅を測定する場合を例に説明し、背面差幅の測定についての重複する説明を省略する場合がある。また、以下の説明においては、正面差幅及び背面差幅をまとめて単に差幅と言う場合がある。請求項における「差幅」は、正面差幅及び背面差幅を含む。
【0015】
図1及び
図2に示すように、差幅測定装置1は、ベース部2と、ワーク支持部3と、測定子4と、駆動機構5と、測定子間距離検出部6(請求項の第一寸法検出部)と、測定子高さ検出部7(請求項の第二寸法検出部)と、算出部8と、を備える。
差幅測定装置1には、被測定対象物としてワーク10が取り付けられる。ワーク10はアンギュラ玉軸受の内輪11又は外輪12である。本実施形態において、差幅測定装置1は、内輪11及び外輪12の双方に対して適用可能である。つまり1台の差幅測定装置1で内輪11及び外輪12を測定可能である。
【0016】
(ベース部)
(ワーク支持部)
ベース部2は、床面に設置されている。ベース部2は、平面視において、例えば環状又は左右に離間して一対設けられている。
ワーク支持部3は、床面に設置されている。ワーク支持部3は、平面視において、ベース部2の中央部に設けられている。ワーク支持部3の上部には、ワーク10が着脱可能に固定されている。ワーク10は、ワーク10の軸方向と差幅測定装置1の上下方向とが一致するように固定される。
【0017】
(測定子)
測定子4は、ベース部2の上面に設けられている。測定子4は、平面視においてワーク10を挟み込むように互いに離間して一対設けられている。一対の測定子4,4は、ワーク10の周方向において互いに対向する位置に設けられている。換言すれば、測定子4は複数設けられ、複数の測定子4はワーク10の周方向において互いに等間隔に離間して設けられる。
【0018】
各測定子4は、ワーク10の軌道面11a,12a側に位置するように配置される。例えば
図1に示すように、外周面に軌道面11aが形成された内輪11を測定する場合には、測定子4は、内輪11の軌道面11aに面するように内輪11に対して径方向の外側に位置する。例えば
図2に示すように、内周面に軌道面12aが形成された外輪12を測定する場合には、測定子4は、外輪12の軌道面12aに面するように外輪12に対して径方向の内側に位置する。測定子4は、ワーク10に対して、ワーク10の軌道面11a,12a上をワーク10の軸方向及び径方向に沿って相対移動可能に設けられている。測定子4は、
図1及び
図2に示す側面視において、ワーク10の軌道面11a,12aに沿って移動する。測定子4は、内輪11の測定時と外輪12の測定時とで共用される。
【0019】
なお、内輪11の測定時と外輪12の測定時とではワーク10と測定子4との径方向の位置関係が逆になるが、その他の構成、配置及び測定方法は基本的に同様である。このため、以下の説明では、主に内輪11を測定する場合を例に説明し、外輪12を測定する場合についての説明を省略する場合がある。
【0020】
測定子4は、測定子本体41と、少なくとも一部が球状に形成された当接部42と、を有する。測定子本体41は、ベース部2の上面に載置されている。本実施形態において測定子4は、詳しくは後述する駆動機構5により、ベース部2に対して径方向に移動可能に設けられている。なお、図示は省略するが、測定子4は、平面視においてワーク10の周方向に沿って移動可能に設けられてもよい。
【0021】
当接部42は、測定子本体41と連結されて測定子本体41に支持されている。当接部42は、例えば測定子本体41よりも上方に設けられている。当接部42のうち、少なくともワーク10と当接する部分は球状に形成されている。本実施形態において、当接部42は、ほぼ全体が球状に形成されている。より具体的に、当接部42は、ワーク10である内輪11及び外輪12と組み合わせられる転動体13(
図6参照)の直径と同じ直径を有する球状に形成されている。当接部42は、ワーク10の軌道面11a,12aに当接しつつ、ワーク10の軌道面11a,12aに沿って軌道面11a,12a上を軸方向及び径方向に沿って相対移動する。
【0022】
(駆動機構)
駆動機構5は、上下駆動機構51と、左右駆動機構52と、を有する。各駆動機構51,52は、例えば電動アクチュエータや油圧アクチュエータ等である。
本実施形態において、上下駆動機構51は、ワーク支持部3に設けられている。上下駆動機構51は、ベース部2に対して、ワーク10を上下方向(ワーク10の軸方向に沿う方向)に移動させる。左右駆動機構52は、ベース部2に設けられている。左右駆動機構52は、ベース部2に対して、測定子4を左右方向(ワーク10の径方向に沿う方向)に移動させる。よって、例えば上下駆動機構51及び左右駆動機構52を同時に駆動させることにより、断面円弧状の軌道面11a,12aに沿って測定子4を移動させる(軌道面11a,12aに沿わせる)ことが可能となっている。
【0023】
(測定子間距離検出部)
測定子間距離検出部6(請求項の第一寸法検出部)は、測定子4の径方向に沿う位置及び移動量を検出する。測定子間距離検出部6は、径方向における一対の測定子4の間の距離である測定子間距離L1,L2(請求項の第一寸法)(
図3及び
図5を参照)を検出する。測定子間距離L1,L2は、例えば一対の測定子4,4における球体の中心同士を結ぶ距離(長さ)である。本実施形態の測定子間距離検出部6は、例えば電気マイクロメータである。測定子間距離検出部6は、一対の測定子4に応じて一対設けられている。各測定子間距離検出部6の基端部は、例えばワーク支持部3に取り付けられている。測定子間距離検出部6の先端部は、測定子本体41と接触している。よって測定子4が径方向に移動すると、測定子間距離検出部6により、ワーク10に対する測定子4の径方向に沿う移動量や位置が検出される。
【0024】
(測定子高さ検出部)
測定子高さ検出部7(請求項の第二寸法検出部)は、測定子4の軸方向に沿う位置及び移動量を検出する。測定子高さ検出部7は、ワーク10の一方の端面11b,12bと測定子4との間の軸方向に沿う高さである測定子高さH1,H2(請求項の第二寸法)(
図3及び
図5を参照)を測定する。「ワーク10の一方の端面11b,12b」とは、ワーク10の2個の端面のうち、ワーク支持部3が位置する下側の端面であり、例えば正面側の端面である。測定子高さH1,H2は、例えば内輪11の一方の端面11bと測定子4における球体の中心とを結ぶ長さである。測定子高さ検出部7は、例えば測定子間距離検出部6と同様に電気マイクロメータである。測定子高さ検出部7は、一対の測定子4に応じて一対設けられている。各測定子高さ検出部7の基端部は、測定子本体41の上面に取り付けられている。測定子高さ検出部7の先端部は、ワーク10の一方の端面と接触している。よってワーク10と測定子4とが軸方向に相対移動すると、測定子高さ検出部7により、ワーク10に対する測定子4の軸方向に沿う移動量や位置が検出される。なお、本実施形態ではワーク10を軸方向に動かすことによりワーク10と測定子4とを軸方向に相対移動させるが、これに限られない。測定子4を軸方向に動かすことによりワーク10と測定子4とを軸方向に相対移動させてもよい。或いはワーク10及び測定子4の両方を軸方向に動かす構成としてもよい。
【0025】
(算出部)
算出部8は、ベース部2及びワーク支持部3と接続されている。算出部8は、少なくとも測定子間距離検出部6及び測定子高さ検出部7からの検出結果を取得可能に設けられている。算出部8は、例えば駆動機構5の動作を含む差幅測定装置1全体の制御を行う制御部と一体化されてもよい。算出部8は、内輪11及び外輪12のそれぞれについて、測定子間距離検出部6及び測定子高さ検出部7からの測定結果に応じて測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を算出(検出)する。算出部8は、以下に説明するアンギュラ玉軸受の差幅測定方法に基づいて、測定された内輪11及び外輪12を組み付けた場合における、内輪11の一方の端面11bと外輪12の一方の端面11bとの軸方向位置の差である差幅Xを算出する。
【0026】
(アンギュラ玉軸受の差幅測定方法)
図3は、内輪11測定時における各測定値についての説明図である。
図4は、内輪側接触角θ1の算出方法を説明する図である。
図5は、外輪12測定時における各測定値についての説明図である。
図6は、測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を用いてアンギュラ玉軸受の差幅Xを測定する方法を示す説明図である。
次に、差幅測定装置1を用いたアンギュラ玉軸受の差幅測定方法について説明する。差幅測定方法における各種の演算は、例えば差幅測定装置1の算出部8において実行される。
【0027】
まず、算出部8は、内輪11における測定子間距離L1、測定子高さH1、及び内輪側接触角θ1を算出する。具体的に、
図1に示すように、ワーク支持部3に内輪11が固定された状態で、測定子4を内輪11の軌道面11aに沿って移動させる。このとき、算出部8は、測定子4の移動軌跡として、ワーク10に対する測定子4の軸方向位置及び径方向位置を互いに対応付けて記録する。さらに算出部8は、
図3に示すように、内輪11の軌道面11aに沿って測定子4を移動させた場合における所定寸法の微小変化量に基づいて内輪側接触角θ1を算出する。以下、内輪側接触角θ1の算出原理について具体的に説明する。
図3に示すように、左右一対の測定子4の中心座標をそれぞれ(x1,y)及び(x2,y)とした場合、測定子高さH1、測定子間距離L1、及び内輪側接触角θ1は、次の(1)から(3)式によりそれぞれ算出される。
H1=y・・・(1)
L1=x2-x1・・・(2)
θ1=arcTan(y/Δx2)=arcTan(y/-Δx1)・・・(3)
【0028】
上記各式により内輪側接触角θ1を算出可能な原理について、
図4を用いてより詳細に説明する。
図4は、内輪側接触角θ1の算出方法を説明する図である。
図4は、
図3における左側部分の拡大図である。
図4に示すように、測定子4を内輪11の軌道面11aに沿って移動させると、測定値から測定子中心P1の軌跡である測定子中心軌跡TRが得られる。さらに、得られた測定子中心軌跡TRに基づいて、最小二乗法により内輪溝中心P2(x0,y0)が得られる。ここで、測定子4と内輪11の軌道面11aとの当接点を当接点P3(x3,y3)とすると、測定子中心P1(x1,y)、内輪溝中心P2(x0,y0)、及び当接点P3(x3,y3)は必ず一直線上にある。よって、内輪側接触角θ1、すなわち当接点P3において軌道面11aに垂直な直線と水平線とのなす角度は、
図4に示すθ1と同じ角度となる。この角度θ1(=内輪側接触角θ1)は、測定子中心P1(x1,y)及び内輪溝中心P2(x0,y0)から、次の(4)式により算出される。
θ1=arcTan((y0-y)/(x1-x0))・・・(4)
なお、(4)式においてy0を高さ方向の基準位置とする、すなわちy0=0とすることにより、上述の(3)式が得られる。右側の測定子4(
図3参照)についても同様の原理にて算出可能であるため、右側の測定子4についての説明は省略する。
【0029】
よって、算出部8は、ワーク10に対する任意の測定子高さH1の位置に関して、そのときの測定子間距離L1及び内輪側接触角θ1を対応付けて記録する。
【0030】
次に、算出部8は、内輪11と同様の方法で外輪12における測定子間距離L2、測定子高さH2、及び外輪側接触角θ2を算出する。具体的に、
図2に示すように、ワーク支持部3に外輪12が固定された状態で、測定子4を外輪12の軌道面12aに沿って移動させる。このとき、算出部8は、測定子4の移動軌跡として、ワーク10に対する測定子4の軸方向位置及び径方向位置を互いに対応付けて記録する。さらに算出部8は、
図5に示すように、外輪12の軌道面12aに沿って測定子4を移動させた場合に、測定子間距離検出部6により検出された測定子間距離L2の微小変化量ΔL2と、対応する位置において測定子高さ検出部7により検出された測定子高さH2の微小変化量ΔH2と、により測定子4と外輪12の軌道面12aとの接触角である外輪側接触角θ2を算出する。外輪側接触角θ2は、測定子間距離L2の微小変化量をΔL2、測定子高さH2の微小変化量をΔH2とした場合、次の(2)式により算出される。
θ2=arcTan(ΔH2/ΔL2)・・・(2)
【0031】
よって、算出部8は、ワーク10に対する任意の測定子高さH2の位置に関して、そのときの測定子間距離L2及び外輪側接触角θ2を対応付けて記録する。
【0032】
図6に示すように、次に、算出部8は、記録した複数のデータから、内輪11を測定した際の内輪側接触角θ1と外輪12を測定した際の外輪側接触角θ2とが同等の値(θ1=θ2)となり、かつ内輪11を測定した際の測定子間距離L1と外輪12を測定した際の測定子間距離L2とが同等の値(L1=L2)となるポイントを検出する。算出部8は、このポイントにおける内輪11及び外輪12の測定子高さH1,H2の差分をアンギュラ玉軸受の一方の端面11b,12bにおける差幅(正面差幅)Xとして算出する。換言すれば、θ1=θ2かつL1=L2となるときの測定子間距離L1,L2にそれぞれ対応する内輪11及び外輪12の測定子高さH1,H2の差分をアンギュラ玉軸受の一方の端面11b,12bにおける差幅Xとする(X=|H1-H2|)。
【0033】
以上の方法により、内輪11及び外輪12を組み付けることなく単体で測定することにより、アンギュラ玉軸受の一方の端面11b,12bにおける差幅X、すなわち正面差幅Xが算出される。ワーク10を上下逆にして同様の測定及び計算を実施することにより、背面差幅も測定することが可能である。なお、予め内輪11及び外輪12の軸方向に沿う厚みを計測しておき、この厚みから算出された正面差幅Xを減じることにより背面差幅を計算により算出してもよい。
【0034】
(作用、効果)
本実施形態のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法によれば、ワーク10に対して軸方向及び径方向に相対移動する測定子4を用いて測定子間距離L1,L2(第一寸法)及び測定子高さH1,H2(第二寸法)を測定するので、アンギュラ玉軸受を組むことなく内輪11及び外輪12をそれぞれ単体で測定して差幅Xを測定できる。これにより、従来技術と比較して簡素な構成によりアンギュラ玉軸受の差幅Xを測定できる。また、例えば組み付け後に差幅測定及び切削による調整を行う従来技術と比較して、異物の発生による軌道面等への傷の発生が抑制できる。これにより、従来技術と比較して音響性能や軸受寿命の低下を抑制できる。内輪11及び外輪12を単体で測定するので、例えば仮組みを行った後に差幅測定を行う従来技術と比較して、差幅測定にかかる作業工程を簡素化できる。さらに、仮組み時に使用する玉の誤差による測定誤差の発生や、仮組みの分解や本組み付け時等における傷付きの発生等を抑制できる。
測定子4の少なくとも一部分(例えば当接部42)は球状に形成され、測定子4は軌道面11a,12a上に沿って移動する。このため、例えば内輪11と外輪12とを同じ測定子4を用いて測定できる。よって、ワーク10の種類(内輪11又は外輪12)に応じてそれぞれ専用の測定マスターを使用する従来技術と比較して、アンギュラ玉軸受の差幅測定装置1及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法の汎用性を高めることができる。内輪11の測定時と外輪12の測定時とで測定子4を交換する必要が無いので、従来技術と比較して差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できる。また、内輪11と外輪12とで同じ測定子4を使用できるので、内輪11と外輪12とで異なる測定子を使用する場合と比較して、測定作業にかかるコストの増加を抑制できる。
したがって、製品の傷付きを抑制しつつ、従来技術と比較して差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できるアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法を提供できる。
【0035】
本実施形態のアンギュラ玉軸受の差幅測定装置1によれば、内輪11及び外輪12のそれぞれについて測定子間距離L1,L2の測定及び測定子高さH1,H2の測定が同一の測定子4により行われる。このため、例えばワーク10の種類(内輪11又は外輪12)に応じて専用の測定マスターを使用する従来技術と比較して、差幅測定装置1の汎用性を高めることができる。よって、従来技術と比較して、差幅測定に係る作業性を向上できる。
差幅測定装置1は、内輪11及び外輪12を組むことなく単体で測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を測定することにより差幅Xを算出する。これにより、組み付け後に差幅測定を行う従来技術や、差幅測定のための仮組みを行う従来技術等と比較して、差幅測定をより容易に行うことができ、差幅測定にかかる作業性を向上できる。また、仮組みなどを行う場合と比較して、異物の発生による軌道面11a,12a及び転動体13の傷付きを抑制できる。
【0036】
測定子4は球状に形成され、ワーク10の周方向において互いに等間隔に離間して複数設けられ、複数の測定子4の間の距離を計測することにより測定子間距離L1,L2を算出することができる。これにより、特に径方向に沿う測定子間距離L1,L2の測定をより容易かつ高精度に実施することができる。よって、差幅測定に係る作業性を向上できる。
【0037】
測定子4は、アンギュラ玉軸受の転動体13と同じ直径を有する球状に形成される。測定子4をこのように形成することで、測定子4と転動体13の直径が互いに異なる場合と比較して、より高精度に差幅を測定することができる。
【0038】
駆動機構5は、ワーク10を軸方向に沿って移動させる上下駆動機構51と、測定子4を径方向に沿って移動させる左右駆動機構52と、を有する。ワーク10を軸方向に沿って移動させ、測定子4を径方向に沿って移動させることにより、測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を測定する。これにより、軸方向へ移動させる駆動系と、径方向へ移動させる駆動系と、を分けて設けることができる。よって、差幅測定装置1の構成を簡素化できるとともに、測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2の測定精度を高めることができる。また、装置のメンテナンスや位置の調整等が行い易いので、作業者にとって差幅測定に係る作業性を向上できる。
【0039】
算出部8は、内輪11及び外輪12のそれぞれについて測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を測定し、測定結果から内輪側接触角θ1及び外輪側接触角θ2を算出する。さらに算出部8は、内輪側接触角θ1及び外輪側接触角θ2、及び測定子間距離L1,L2がそれぞれ同様の値を示すときの内輪11及び外輪12の測定子高さH1,H2の差分を差幅Xとして算出する。つまり、内輪11及び外輪12において測定子間距離L1,L2と測定子高さH1,H2を計測するだけで差幅Xを算出することができる。よって、従来技術と比較して簡素な構成により、高い精度で差幅Xを測定できる。また、測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を用いて計算により差幅Xを測定するので、例えば軌道面11a,12aの加工誤差等による接触角の変化が生じた場合であっても、正確に差幅Xを算出することができる。よって、従来技術よりも加工誤差の影響を受けにくい、高精度な差幅測定を行うことができる。
【0040】
測定子4は、軌道面11a,12aにおいて互いに対向するように一対設けられる。このように、ワーク10を径方向に挟むようにして一対の測定子4を設けることにより、測定子間距離L1,L2をより容易かつ高精度に測定できる。よって、従来技術と比較して差幅測定をより容易に行うことができるとともに、差幅Xの測定精度を向上できる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2~第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。第2~第4実施形態では、内輪11の測定時を例として第1実施形態との相違点を説明し、外輪12についての同様の説明を省略するが、外輪12の測定については内輪11の測定時と同様である。内輪11及び外輪12の測定結果から差幅を算出する方法については第1実施形態と同様であるため以下の実施形態では説明を省略する。
まず、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置201の概略図であり、内輪11測定時の状態の一例を示す図である。本実施形態では、上下駆動機構251がベース部2に設けられる点で上述した第1実施形態と相違している。
【0042】
第2実施形態において、上下駆動機構251は、左右駆動機構52と同様にベース部2に設けられる。測定子4は、ベース部2に対してワーク10の径方向及び軸方向に移動可能となっている。ワーク10は、ワーク支持部3に固定されている。換言すれば、駆動機構5は、ワーク10を固定し、かつ測定子4を軸方向及び径方向に移動させることにより、ワーク10に対して測定子4を軸方向及び径方向に相対移動させる。
【0043】
第2実施形態の差幅測定装置201によれば、ワーク10を固定した状態で、測定子4を軸方向及び径方向に移動させることにより、測定子間距離L1,L2及び測定子高さH1,H2を測定する。これにより、例えば駆動系を測定子4側のみに設けることができる。よって、差幅測定装置1の汎用性を高めることができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図8は、第3実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置301の概略図であり、内輪11測定時の状態の一例を示す図である。本実施形態では、測定子4の形状が転動体13の形状(直径)とは異なる点で上述した第1実施形態と相違している。
【0045】
第3実施形態において、測定子4の当接部342は、ワーク10の軌道面11a,12a側へ向かって先細りする円錐状に形成されている。ワーク10と接触する当接部342の先端部は、球状(半球状)に形成されている。球状に形成された当接部342の先端部における曲率は、ワーク10である内輪11及び外輪12と組み合わせられる転動体13(
図6参照)の曲率よりも大きい。換言すれば、測定子4の少なくとも一部は、アンギュラ玉軸受の転動体13の直径と異なる直径を有する球状に形成される。より具体的には、測定子4の当接部342の先端部は、アンギュラ玉軸受の転動体13の直径よりも小さい直径を有する球の一部を有する球状に形成される。
なお、アンギュラ玉軸受の転動体13の直径に対して当接部342の球状部分の直径が小さければよく、その比率は例えば1/10や1/100等であってよい。上記の数値は一例であり、上記以外の比率となるように測定子4が形成されてもよい。
【0046】
この場合、差幅Xを算出する際には、測定子間距離検出部6により検出された測定子間距離L1,L2及び測定子高さ検出部7により検出された測定子高さH1,H2に加え、実際に組み付けられる転動体13の直径と測定子4の直径との比率を用いて内輪側接触角θ1、外輪側接触角θ2及び差幅Xを算出する。具体的には、まず測定子4の中心座標の変化から、上述した計算方法と同様の方法により、内輪側接触角θ1及び外輪側接触角θ2をそれぞれ求める。次に、実際に組み付けられる転動体13の直径と、測定子4の直径と、の比率を用いて実際に組付けられる転動体13の中心間距離L1、L2を算出し、それと測定子高さH1、H2を用いて差幅Xを算出する。これにより、測定子4の直径が転動体13の直径と異なる場合であっても、上述した差幅測定方法と同様の方法により差幅Xを算出することが可能である。
【0047】
第3実施形態の差幅測定装置1によれば、測定子4の一部は、アンギュラ玉軸受の転動体13の直径と異なる直径を有する球状に形成される。差幅測定時には、実際に組み付けられる転動体13の直径と、測定子4における球状部分(当接部342の先端部)の直径と、の比率を用いて差幅Xを算出する。測定子4をこのように形成することで、例えば転動体13の大きさが異なる種々のアンギュラ玉軸受の内輪11及び外輪12の測定において、共通の測定子4を使用することができる。これによりサイズや種類の異なるアンギュラ玉軸受に対して適用できる。よって、アンギュラ玉軸受の種類やサイズ、ワーク10の種類(内輪11又は外輪12)に応じて専用の測定マスターを使用する従来技術と比較して、アンギュラ玉軸受の差幅測定装置301及びアンギュラ玉軸受の差幅測定方法の汎用性を高めることができる。種類やサイズ毎に測定子4を交換する必要が無く、複数種類のアンギュラ玉軸受の差幅測定を行う場合であっても、差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できる。
また、転動体13の大きさやアンギュラ玉軸受の種類、サイズ毎に測定子4を交換する必要が無いので、従来技術と比較して差幅測定を含むアンギュラ玉軸受の組み付けに係る作業性を向上できる。また、複数種類の測定マスターを予め準備する必要が無いので、測定作業にかかるコストの増加を抑制できる。
【0048】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図9は、第4実施形態に係るアンギュラ玉軸受の差幅測定装置401の概略図であり、内輪11測定時の状態の一例を示す図である。本実施形態では、上下駆動機構451がベース部2に設けられる点及び測定子4の形状が転動体13の形状(直径)とは異なる点で上述した第1実施形態と相違している。
【0049】
第4実施形態において、上下駆動機構451は、第2実施形態と同様にベース部2に設けられる。よって、測定子4は、ベース部2に対してワーク10の径方向及び軸方向に移動可能となっている。
また、測定子4の当接部442は、第3実施形態と同様、ワーク10の軌道面11a,12a側へ向かって先細りする円錐状に形成されている。測定子4の形状及びこの測定子4を用いた差幅測定方法については、第3実施形態と同様である。
【0050】
つまり、第4実施形態の構成は、第1実施形態に対して第2実施形態及び第3実施形態の両方の構成を組み合わせたものとなっている。第3実施形態の差幅測定装置1によれば、第2実施形態及び第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、差幅測定装置1の汎用性を高めることができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の第1実施形態では、一対の測定子4,4が設けられる構成としたが、これに限られない。例えば測定子4が1個のみ設けられてもよい。この場合、始めにワーク10の径方向の中心位置を検出し、検出されたワーク10の中心位置と測定子4の位置とに基づいて測定子間距離L1,L2を算出してもよい。また、3個以上の測定子4が設けられてもよい。この場合、複数の測定子4は、ワーク10の周方向において互いに等間隔に離間して設けられてもよい。
【0052】
測定子間距離検出部6は、電気マイクロメータの他にレーザースケールやレーザー干渉計等であってもよい。
内輪11の測定用と外輪12の測定用とで差幅測定装置1を分けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1,201,301,401 アンギュラ玉軸受の差幅測定装置
4 測定子
5 駆動機構
6 測定子間距離検出部(第一寸法検出部)
7 測定子高さ検出部(第二寸法検出部)
8 算出部
10 ワーク
11 内輪
11a (内輪の)軌道面
11b (内輪の)一方の端面
12 外輪
12a (外輪の)軌道面
12b (外輪の)一方の端面
13 転動体
51,251,451 上下駆動機構
52 左右駆動機構
L1,L2 測定子間距離(第一寸法)
ΔL1,ΔL2 測定子間距離の微小変化量(第一寸法の変化量)
H1,H2 測定子高さ(第二寸法)
ΔH1,ΔH2 測定子高さの微小変化量(第二寸法の変化量)
θ1 内輪側接触角
θ2 外輪側接触角
X 差幅