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特開2024-151060ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂硬化膜及び塗料硬化膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151060
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂硬化膜及び塗料硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20241017BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20241017BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20241017BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08G18/80 070
C08G18/48
C08G18/79 020
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064181
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】小野 麻実
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034CA02
4J034CB01
4J034CB07
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DF02
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG14
4J034DG23
4J034DM01
4J034DP12
4J034DP15
4J034DP18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD03
4J034HD04
4J034HD05
4J034HD06
4J034HD07
4J034HD08
4J034HD12
4J034HD15
4J034JA02
4J034JA30
4J034JA32
4J034JA42
4J034JA44
4J034KA01
4J034KA02
4J034KB02
4J034KB03
4J034KC02
4J034KC08
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD04
4J034KD07
4J034KD12
4J034KD15
4J034KD22
4J034KE01
4J034KE02
4J034QA03
4J034QB12
4J034QB14
4J034RA07
4J038CG001
4J038DG001
4J038DG302
4J038MA14
4J038NA11
4J038NA12
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】プラスチック基材や金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜を形成できるブロックポリイソシアネート組成物の提供。
【解決手段】ブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、ブロックポリイソシアネートは、重量平均分子量Mwが8500以上であり、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、ブロック剤との反応物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロックポリイソシアネートは、重量平均分子量Mwが8500以上であり、
前記ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、オキシム系化合物またはピラゾール系化合物からなるブロック剤との反応物であり、
前記ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの誘導体であり、
前記ポリエーテル系ポリオール(b)は、数平均分子量が500以上2000以下のオキシアルキレン基を有する2官能以上3官能以下のポリオールであり、
前記ブロックポリイソシアネートは、100重量部のポリイソシアネート(a)に対する前記ポリエーテル系ポリオール(b)の含有部数が55重量部以上である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ブロックポリイソシアネート組成物がイソシアヌレート基を含む、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ブロックポリイソシアネート組成物は有効NCO含有率が13質量%以下である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記ブロックポリイソシアネート組成物は平均イソシアネート官能基数が1.8以上5.0以下である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記ブロック剤がピラゾール系化合物である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記ブロックポリイソシアネートがイソシアヌレート基及びウレタン基を含む、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテル系ポリオール(b)は2官能のポリオールを含むポリオールである、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記ポリエーテル系ポリオール(b)のオキシアルキレン基がオキシプロピレン基を含む、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物とを含む樹脂組成物であって、
前記活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物はポリオール化合物(c)またはポリアミン化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリオール化合物(c)が、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、フッ素系ポリオール、シリコーンポリオール、ポリオレフィンポリオールの少なくともいずれか1種を含む、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂組成物の硬化物である、樹脂硬化膜。
【請求項12】
23℃における引張試験の伸び率が80%以上である、請求項11に記載の樹脂硬化膜。
【請求項13】
23℃における引張試験の引張強度が9MPa以上である、請求項11に記載の樹脂硬化膜。
【請求項14】
ガラス上に40μm厚みで形成した前記樹脂硬化膜の23℃におけるケーニッヒ硬度が13回以60回以下である、請求項11に記載の樹脂硬化膜。
【請求項15】
請求項9に記載の樹脂組成物の硬化物である、塗料硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂硬化膜及び塗料硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート組成物を用いた塗料組成物は、外観、耐候性、耐久性が優れるために、建築、自動車、プラスチック、情報家電用等の塗料として広く用いられている。中でも、自動車や建築用途のように、高品質な外観と優れた耐候性及び耐久性とが要求される用途では、緻密な架橋塗膜が形成でき、且つ仕上がり外観が良好である二液型ポリウレタン塗料が高く評価されている。
【0003】
例えば特許文献1は、塗膜としたときの耐水性、耐候性、屈曲性及び密着性に優れるポリイソシアネート組成物を開示している。特許文献1が開示するポリイソシアネート組成物は、(A)脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートと、(B)数平均分子量が400以上10000以下のオキシプロピレン基を有するポリエーテル系ポリオールと、から得られるポリイソシアネートを含み、アロファネート基、イソシアヌレート基及びウレタン基を含有し、アロファネート基のモル数をA、イソシアヌレート基のモル数をB、ウレタン基のモル数をCとした場合のA/Bが0.10以上2.50以下であり、且つ、C/Bが0.06以上5.50以下であり、イソシアネート平均官能基数が2.6以上10.0以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-147737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示された技術では、ブロック化されていないために1液での使用ができず、密着性と進展性について改良の余地があった。
【0006】
また、自動車用途及び建築用途等には、上記性能に加えて、さらに、良好な耐水性、伸展性、屈曲性、及び下地との密着性を持つ塗料組成物が望まれている。従来は、このような塗料組成物を作製する場合、主剤成分として、アクリルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオールを、硬化成分として、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する場合がある)等のジイソシアネートと多価アルコールとを原料に用いてイソシアヌレート化した組成物を用いることにより、塗膜に高い硬度を持たせる方法を用いていた。しかし、イソシアヌレート化した組成物は、塗膜が硬くなるため柔軟性が低下する、温度変化による塗膜の伸縮に追随できず塗膜が割れやすい、という問題があった。また構造上、基材との密着性が十分でない場合があった。
これらのことから、密着性と伸度と硬度のバランスのより一層の改良が必要とされている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜を形成できるブロックポリイソシアネート組成物、これを用いた樹脂組成物、樹脂硬化膜及び塗料硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]ブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、前記ブロックポリイソシアネートは、重量平均分子量Mwが8500以上であり、前記ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、オキシム系化合物またはピラゾール系化合物からなるブロック剤との反応物であり、前記ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの誘導体であり、前記ポリエーテル系ポリオール(b)は、数平均分子量が500以上2000以下のオキシアルキレン基を有する2官能以上3官能以下のポリオールであり、前記ブロックポリイソシアネートは、100重量部のポリイソシアネート(a)に対する前記ポリエーテル系ポリオール(b)の含有部数が55重量部以上である、ブロックポリイソシアネート組成物。
[2]前記ブロックポリイソシアネート組成物がイソシアヌレート基を含む、[1]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[3]前記ブロックポリイソシアネート組成物は有効NCO含有率が13質量%以下である、[1]又は[2]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[4]前記ブロックポリイソシアネート組成物は平均イソシアネート官能基数が1.8以上5.0以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[5]前記ブロックポリイソシアネートがピラゾール系化合物である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[6]前記ブロックポリイソシアネートがイソシアヌレート基及びウレタン基を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[7]前記ポリエーテル系ポリオール(b)は2官能のポリオールを含むポリオールである、[1]~[6]のいずれか1つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[8]前記ポリエーテル系ポリオール(b)のオキシアルキレン基がオキシプロピレン基を含む、[1]又は[2]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[9][1]又は[2]に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物とを含む樹脂組成物であって、前記活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物はポリオール化合物(c)またはポリアミン化合物を含む、樹脂組成物。
[10]前記ポリオール化合物(c)が、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、フッ素系ポリオール、シリコーンポリオール、ポリオレフィンポリオールの少なくともいずれか1種を含む、[9]に記載の樹脂組成物。
[11][9]に記載の樹脂組成物の硬化物である、樹脂硬化膜。
[12]23℃における引張試験の伸び率が80%以上である、[12]に記載の樹脂硬化膜。
[13]23℃における引張試験の引張強度が9MPa以上である、[12]に記載の樹脂硬化膜。
[14]ガラス上に40μm厚みで形成した前記樹脂硬化膜の23℃におけるケーニッヒ硬度が13回以60回以下である、[12]に記載の樹脂硬化膜。
[15][9]または[10]に記載の樹脂組成物の硬化物である、塗料硬化膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜を形成できるブロックポリイソシアネート組成物、これを用いた樹脂組成物、樹脂硬化膜及び塗料硬化膜を提供することができる。
【0010】
また、本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、プラスチック等様々な基材に対しても、良好な密着性を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、一分子中に2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
また、本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、2つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
また、本明細書において、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」は、メタクリルとアクリルとを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートとを包含するものとする。
【0012】
<ブロックポリイソシアネート組成物>
本発明は、ブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物である。
ブロックポリイソシアネートは、重量平均分子量Mwが8500以上であり、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、ブロック剤との反応物である。
ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、ブロック剤とを含む。
【0013】
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートの誘導体である。
ポリエーテル系ポリオール(b)は、数平均分子量が500以上2000以下のオキシアルキレン基を有する2官能以上3官能以下のポリオールである。
ブロックポリイソシアネートは、100重量部のポリイソシアネートに対するポリエーテル系ポリオール(b)の含有部数が55重量部以上である。
【0014】
また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート基を含むことが好ましい。ブロックポリイソシアネート組成物がイソシアヌレート基を含むか否かは、以下に示す13C-NMRの測定により確認できる。
【0015】
(測定条件)
13C-NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
CryoProbe(登録商標)
CPDUL
600S3-C/H-D-05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
【0016】
上記構成を有する本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物を用いることで、プラスチック基材や金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜が得られる。
次いで、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の各構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0017】
≪ポリイソシアネート(a)≫
ポリイソシアネート(a)は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートから誘導される。
ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートである。
脂肪族ジイソシアネートとは分子中に飽和脂肪族基を有する化合物である。一方、脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると、得られるブロックポリイソシアネート組成物が低粘度となるので、好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;以下、「IPDI」と略記する場合がある)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。
以下、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートを総称して「ジイソシアネート」という場合がある。
【0018】
ジイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
中でも、ジイソシアネートとしては、工業的に入手し易いため、HDI、1,5ジイソシアナトペンタン(PDI)、IPDI、水添キシリレンジイソシアネート又は水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。また、耐候性及び樹脂硬化膜の柔軟性が非常に優れていることから、HDIもしくはPDIが好ましく、HDIが特に好ましい。
【0020】
≪ポリエーテル系ポリオール(b)≫
ポリエーテル系ポリオール(b)は、数平均分子量が500以上2000以下のオキシアルキレン基を有する2官能以上3官能以下のポリオールである。オキシアルキレン基を有するポリエーテル系ポリオールとは、分子鎖の中に、オキシアルキレン基を有するポリエーテルポリオールである。この場合、オキシアルキレン繰り返し単位に、その他のオキシアルキレン基、具体的にはオキシエチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシシクロヘキシル基又はオキシスチレン基等を含有していてもよい。中でも、伸び率、引張強度及に優れる樹脂硬化膜を形成できることから、オキシプロピレン基が好ましい。
【0021】
オキシアルキレン繰り返し単位の総モル量に対して、オキシプロピレン基の含有量は20モル%以上が好ましく、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。
【0022】
ポリエーテル系ポリオール(b)の数平均分子量は、2000以下であり、1800以下が好ましく、1500以下がより好ましい。一方、ポリエーテル系ポリオール(b)の数平均分子量は、500以上であり、600以上が好ましく、700以上がより好ましく、800以上が最も好ましい。
ポリエーテル系ポリオール(b)の数平均分子量は、500以上2000以下であり、600以上1800以下が好ましく、600以上1500以下がより好ましく、700以上1500以下がさらに好ましく、800以上1500以下が最も好ましい。
ポリエーテル系ポリオール(b)の数平均分子量が上記範囲内であることで、樹脂硬化膜としたときの伸び率と引張強度がより十分なものとなり、且つ、樹脂硬化膜の硬度もより十分となる。
ポリエーテル系ポリオール(b)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、「GPC」と略記する場合がある)測定により得ることができる。
【0023】
ポリエーテル系ポリオール(b)は、数平均分子量が500以上2000以下のオキシアルキレン基を有する2官能のポリオールを含むことが好ましい。
【0024】
ポリエーテル系ポリオール(b)として具体的には、例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオール若しくはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオール若しくはトリオール、ポリオキシエチレンジオールもしくはトリオール、ポリオキシプロピレンジオールもしくはトリオールが挙げられる。
【0025】
ポリエーテル系ポリオール(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ポリエーテル系ポリオール(b)の市販品としては、例えば、AGC社製のエクセノール、プレミノール、三洋化成社製のサンニックス、アデカ社製のPシリーズ、Gシリーズ、AMシリーズ等が挙げられる。
【0027】
ポリエーテル系ポリオール(b)の製造方法としては、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミン等の単独又は混合物に、触媒を使用して、プロピレンオキシド(及び必要に応じてその他アルキレンオキシドの単独又は混合物)を付加する製造方法や、多価アルコールを脱水縮合する製造方法等が挙げられる。
【0028】
多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコールであってもよく、3価のアルコールであってもよい。2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。3価のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン等のジアミン等が挙げられる。
【0029】
これら多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物;アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒;金属ポルフィリン;複合金属シアン化合物錯体;金属と3座配位以上のキレート化剤との錯体;ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属錯体等が挙げられる。
【0031】
その他アルキレンオキシドとしては、例えば、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
【0032】
ブロックポリイソシアネートは、100重量部のポリイソシアネート(a)に対するポリエーテル系ポリオール(b)の含有部数が55重量部以上であり、60重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましい。100重量部のポリイソシアネートに対するポリエーテル系ポリオール(b)の重量部数の上限値は、特に限定されないが、100重量部以下、99重量部以下、95重量部以下である。
100重量部のポリイソシアネート(a)に対するポリエーテル系ポリオール(b)の含有部数が上記の範囲であるブロックポリイソシアネートを使用すると、プラスチック及び金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜を形成できる。
【0033】
≪ブロック剤≫
ブロック剤としては、例えば、以下に示す化合物等が挙げられる。
(1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール。
(2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ又はジアルキルフェノール類、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
(3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル。
(4)活性メチレン系化合物:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン。
(5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン。
(6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム。
(7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド。
(8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール。
(9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素。
(10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム。
(11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン。
(12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン。
(13)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール。
【0034】
ブロック剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ブロック剤は、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、及び酸アミド系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、貯蔵安定性の観点からは、オキシム系化合物、又はピラゾール系化合物からなることがより好ましく、ピラゾール系化合物からなることがさらに好ましく、ピラゾール系化合物の中でも3,5-ジメチルピラゾールが特に好ましい。
【0036】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、例えば、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、ブロック剤と、を反応させることで得られる。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の製造方法において、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)との反応と、ポリイソシアネート(a)と、ブロック剤との反応を同時に行ってもよく、予めどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を実施してもよい。中でも、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)との反応を先に行った後、該反応により得られた反応物とブロック剤との反応を行うことが好ましい。
【0037】
ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、ブロック剤と、の反応物とは、ポリイソシアネート(a)の一部のイソシアネート基と、ポリエーテル系ポリオール(b)中の水酸基と、の結合によって形成されたウレタン基を有し、ポリイソシアネート(a)の他の一部のイソシアネート基が、ブロック剤によって封鎖されてブロック剤に由来する構造単位が導入されている成分である。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、このようなブロック剤に由来する構造単位が導入されている反応物(ポリイソシアネート)を含んでいることによって、特に、耐衝撃性に優れる樹脂硬化膜の形成を可能としている。
【0038】
[ポリイソシアネート(a)の製造方法]
ポリイソシアネート(a)は、ジイソシアネートを用いて公知の方法で製造することができ、例えば、ジイソシアネートとアルコールを混合して加熱することでウレタン化反応を行い、次いで、触媒を用いてアロファネート化及びイソシアヌレート化を行うことで、製造できる。
【0039】
用いられるアルコールは、分子内にエーテル基や、エステル基、カルボニル基を含んでもよいが、飽和炭化水素基と水酸基とからなるモノアルコールが好ましく、分岐を有しているモノアルコールがより好ましい。このようなモノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。中でも、モノアルコールとしては、低極性有機溶剤への溶解性が特に優れているため、イソブタノール、1-ブタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、1-へプタノール、1-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール又は1,3,5-トリメチルシクロヘキサノールが好ましい。また、粘度がより低くなるため、1-プロパノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソアミルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール又は3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノールが好ましい。また、低極性有機溶剤への溶解性が非常に優れているため、イソブタノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール又は3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノールがより好ましい。
【0040】
アルコールの使用量は、以下に限定されないが、アルコールの水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が2/1以上10000/1以下となるような添加量が好ましく、5/1以上1000/1以下となるような添加量がより好ましい。
アルコールの水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が上記下限値以上であることで、得られるポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基平均数をより適切な数確保することができる。
【0041】
ウレタン化反応温度の下限値は、80℃が好ましく、85℃がより好ましい。一方、反応温度の上限値は、125℃が好ましく、120℃がより好ましい。
すなわち、ウレタン化反応温度は80℃以上125℃以下が好ましく、85℃以上120℃以下がより好ましい。
【0042】
前記イソシアヌレート化反応触媒としては、塩基性を有するものが好ましい。このようなイソシアヌレート化反応触媒としては、例えば、以下の1)~7)に示すもの等が挙げられる。
1)テトラアルキルアンモニウムのヒドロオキシド又は有機弱酸塩;
2)ヒドロキシアルキルアンモニウムのヒドロオキシド又は有機弱酸塩;
3)アルキルカルボン酸の金属塩;
4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート;
5)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物;
6)マンニッヒ塩基類;
7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用
【0043】
テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
有機弱酸としては、例えば、酢酸、カプリン酸等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等が挙げられる。
アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0044】
中でも、イソシアヌレート化反応触媒としては、触媒効率の観点から、上記1)、2)、3)、4)又は5)が好ましく、1)の有機弱酸塩がより好ましい。
【0045】
イソシアヌレート化反応触媒の添加量は、原料であるジイソシアネートの質量に対して、10ppm以上1000ppm以下が好ましく、10ppm以上500ppm以下がより好ましく、10ppm以上100ppm以下がさらに好ましい。
【0046】
イソシアヌレート化反応温度の下限値は、50℃が好ましく、54℃がより好ましく、57℃がさらに好ましく、60℃が特に好ましい。一方、イソシアヌレート化反応温度の上限値は、120℃が好ましく、100℃がより好ましく、90℃がさらに好ましく、80℃が特に好ましい。
すなわち、イソシアヌレート化反応温度は、50℃以上120℃以下が好ましく、54℃以上100℃以下がより好ましく、57℃以上90℃以下がさらに好ましく、60℃以上80℃以下が特に好ましい。
イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることにより、着色等の特性変化がより効果的に防止できる。
【0047】
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。
【0048】
所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のアロファネート化反応触媒の失活剤を添加して、アロファネート化反応を停止することができる。
【0049】
上記アロファネート化反応触媒の使用量は、原料であるジイソシアネートに対して、質量比で、10ppm以上10000ppm以下が好ましく、10ppm以上1000ppm以下がより好ましく、10ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。
【0050】
アロファネート化の反応温度は、60℃以上160℃以下が好ましく、70℃以上155℃以下がより好ましく、80℃以上150℃以下がさらに好ましく、90℃以上145℃以下が特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることにより、得られるポリイソシアネートの着色等の特性変化をより効果的に防止できる。
【0051】
アロファネート化の反応時間は0.2時間以上8時間以下が好ましく、0.4時間以上6時間以下がより好ましく、0.6時間以上4時間以下がさらに好ましく、0.8時間以上3時間以下が特に好ましく、1.0時間以上2時間以下が最も好ましい。
アロファネート化の反応時間を上記下限値以上とすることで、より低粘度とすることができ、上記上限値以下とすることで、ポリイソシアネート自体の着色をより抑制することができる。
【0052】
また、上記イソシアヌレート化反応触媒をアロファネート化反応触媒として用いることができる。上記イソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行う場合、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートも同時に生成させる。中でも、経済面から生産性を向上できる観点から、アロファネート化反応触媒として、上記イソシアヌレート化反応触媒を用い、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが好ましい。
【0053】
上記ウレタン化反応、イソシアヌレート化反応及びアロファネート化反応の重合反応が所望の重合度に達した時点で、重合反応を停止させる。重合反応の停止は、以下に限定されないが、例えば、酸性化合物を反応液に添加することで、重合反応触媒を中和させる、又は、熱分解、化学分解等により不活性化させることで達成できる。酸性化合物としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル、硫酸、塩酸、スルホン酸化合物等が挙げられる。反応停止後、必要があれば、濾過を行う。
【0054】
反応停止直後の反応液は、通常、未反応のジイソシアネートを含むため、これを薄膜蒸発缶、抽出等で除去することが好ましい。このような後処理を行うことで、ポリイソシアネートを含む反応液中のジイソシアネートの濃度を1質量%以下に制御することが好ましい。
【0055】
ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0056】
ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましく、50℃以上130℃以下がさらに好ましく、55℃以上130℃以下が最も好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0057】
ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)との反応時には、ポリエーテル系ポリオール(a)が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。
【0058】
ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、を反応させるときの、100重量部のポリイソシアネート(a)に対する、ポリエーテル系ポリオールb)の配合重量部数は、55重量部以上とし、60重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましい。
【0059】
次いで、ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)との反応により得られた反応物と、ブロック剤と、の反応(以下、「ブロック化反応」と称する場合がある)は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。
【0060】
ブロック剤の使用量は、通常は、ポリイソシアネート(a)中のイソシアネート基のモル総量に対して、80モル%以上200モル%以下であってよく、90モル%以上150モル%以下であることが好ましく、93モル%以上130モル%以下であることがより好ましく、95モル%以上110モル%以下であることが最も好ましい。
【0061】
溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対する、ポリイソシアネート(a)中及びブロック剤に由来する不揮発分の含有部数は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、15質量部以上90質量部以下であることが好ましく、20質量部以上85質量部以下であることがより好ましい。
【0062】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して、0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0063】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上90℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
【0064】
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0065】
<その他成分>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、前記ブロックポリイソシアネートに加えて、更に溶剤を含むことができる。溶剤としては、水、有機溶剤等が挙げられる。
【0066】
前記有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ピロリドン系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、ラクトン系溶剤、アミン系溶剤等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。脂環式炭化水素系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、メシチレン、アニソール、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、クロロベンゼン等が挙げられる。グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等が挙げられる。ピロリドン系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。アミド系溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシド系溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。ラクトン系溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。アミン系溶剤としては、例えば、モルフォリン等が挙げられる。
【0067】
有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
溶剤として、水又は有機溶剤をそれぞれ単独で用いてもよく、或いは、水と有機溶剤とは組み合わせて用いてもよい。水と有機溶剤を組み合わせて用いる場合に、有機溶剤としては、水に対し混和性の傾向を示す溶剤を用いることができる。
水に対し混和性の傾向を示す溶剤としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、イソブタノール、ブチルグリコール、N-メチルピロリドン、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアセテートが挙げられる。中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、イソブタノール、ブチルグリコール、N-メチルピロリドン、又はブチルジグリコールが好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、又はブジプロピレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、前記ブロックポリイソシアネートに加えて、イオン性界面活性剤を更に含むことができる。本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物で用いられるイオン性界面活性剤は、実質的に水を含まないものであることが好ましい。イオン性界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0070】
アニオン性界面活性剤としては、カルボキシレート型、サルフェート型、スルホネート型、又はホスフェート型が適しており、例えば、(炭素数8以上20以下のアルキル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、(炭素数8以上20以下のアルキル)ジサルフェートナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホネートナトリウム、ジ(炭素数8以上20以下のアルキル)スルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。
【0071】
カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又はイミダゾリニウム塩が適しており、例えば、(炭素数8以上20以下のアルキル)トリメチルアンモニウムブロマイド、(炭素数8以上20以下のアルキル)ピリジニウムブロマイド、イミダゾイリニウムラウレート等が挙げられる。
【0072】
イオン性界面活性剤の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上5質量%未満が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。イオン性界面活性剤の含有量が上記下限値以上であることにより、分散性により優れる傾向にあり、一方、上記上限値以下であることにより、ブロックポリイソシアネート組成物の濁りを防止でき、外観がより良好となる傾向にある。
【0073】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、前記ブロックポリイソシアネートに加えて、硬化促進触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、レベリング剤、可塑剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0074】
硬化促進触媒としては、例えば、スズ系化合物、亜鉛化合物、チタン化合物、コバルト化合物、ビスマス化合物、ジルコニウム化合物、アミン化合物が挙げられる。スズ系化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ等が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等が挙げられる。チタン化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等が挙げられる。コバルト化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。ビスマス化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等が挙げられる。
【0075】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物等が挙げられる。リン系化合物としては、例えば、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インディゴ、パールマイカ、アルミニウム等が挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、ポリエステル系化合物等が挙げられる。
【0076】
[ポリイソシアネート成分の好ましい態様]
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、ポリイソシアネート成分は、遊離イソシアネート基を実質的に含まないことが好ましい。ここでいう「遊離イソシアネート基」とは、任意の化合物、例えば、ポリイソシアネートやその原料であるジイソシアネート、ポリイソシアネート製造時の副原料、ポリエーテル系ポリオール(a)、ブロック剤等と結合を形成しておらず、反応性を保持している状態のイソシアネート基を示す。一方、「遊離でないイソシアネート基」とは、任意の化合物、例えば、ポリイソシアネートやその原料であるジイソシアネート、ポリイソシアネート製造時の副原料、ポリエーテル系ポリオール(a)、ブロック剤等と結合を形成しており、反応性を保持していない状態のイソシアネート基を示す。
【0077】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、遊離イソシアネート基を全く含まないことが好ましく、或いは、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物が奏する効果を妨げない程度の極わずかな遊離イソシアネート基しか含まないことが好ましい。本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物における遊離イソシアネート基の含有量は、ポリイソシアネートに由来するイソシアネート基の総モル量に対して、1モル%以下好ましく、0.5モル%以下がより好ましく、0.1モル%がさらに好ましく、0モル%が特に好ましい。
【0078】
ポリイソシアネート(a)と、ポリエーテル系ポリオール(b)と、ブロック剤と、の反応物は、遊離イソシアネート基を含まない、すなわち、ポリイソシアネート(a)の一部のイソシアネート基とポリエーテル系ポリオール(b)の水酸基とが結合を形成し、ポリエーテル系ポリオール(b)に由来する水酸基が導入されており、且つ、ポリイソシアネートの残りの全てのイソシアネート基がブロック剤により封鎖されて、ブロック剤に由来する構造単位が導入されていることが好ましい。
【0079】
<ブロックポリイソシアネート組成物の物性>
本発明の一態様において、ブロックポリイソシアネート組成物はイソシアヌレート基を含むことが好ましい。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、有効イソシアネート基含有率(有効NCO含有率)は13質量%以下であり、9.3質量%以下が好ましく、8.7質量%以下がより好ましく、8.5質量%以下がさらに好ましい。有効イソシアネート基含有率の下限値は特に限定されないが、例えば1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上である。
本発明の一態様において、ブロックポリイソシアネート組成物の有効イソシアネート基含有率は、1質量%以上13質量%以下、1.5質量%以上9.3質量%以下、2質量%以上8.7質量%以下である。
【0080】
有効NCO含有率[質量%]
=[(ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分[質量%])×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×(ポリイソシアネートのNCO含有率[質量%])}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
【0081】
本発明の一態様において、ブロックポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数は1.8以上4.9以下が好ましく、1.9以上4.8以下がさらに好ましい。ブロックポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数は後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0082】
<使用用途>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、塗料、インキ、接着剤、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。
【0083】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、前記本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物と、活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物とを含む。
活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物は、ポリオール化合物(c)またはポリアミン化合物を含む。
本実施形態の樹脂組成物において、ブロックポリイソシアネート組成物は硬化剤として作用する。
本実施形態の樹脂組成物は、後述する樹脂硬化膜を形成するのに好適である。そして、本実施形態の樹脂組成物は、前記ブロックポリイソシアネート組成物を含んでいることにより、ブラスチック基材や金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜を製造できる。
【0084】
本実施形態の樹脂組成物は、主剤成分として、前記ポリオールに加えて、その他の主剤成分を含んでもよいが、本実施形態の樹脂組成物は、主剤成分として、ポリオール化合物(c)またはポリアミン化合物のみを含むことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、硬化剤成分として、前記ブロックポリイソシアネート組成物に加えて、その他の硬化剤成分を含んでもよいが、本実施形態の樹脂組成物は、硬化剤成分として、前記ブロックポリイソシアネート組成物のみを含むことが好ましい。
【0085】
前記活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物であるポリオールの水酸基価の下限値は、5mgKOH/gであり、10mgKOH/gが好ましく、15mgKOH/gがより好ましく、20mgKOH/gがさらに好ましい。前記ポリオールの水酸基価の上限値は、200mgKOH/gであり、180mgKOH/gが好ましく、170mgKOH/gがより好ましく、160mgKOH/gがさらに好ましい。
すなわち、前記ポリオールの水酸基価は、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、10mgKOH/g以上180mgKOH/g以下が好ましく、15mgKOH/g以上170mgKOH/g以下であってもよく、20mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であってもよい。
水酸基価が上記範囲内であることで、より柔軟で、かつより強靱な樹脂硬化膜を得ることができる。
【0086】
(ポリオール化合物(c))
ポリオール化合物(c)としては、例えば、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、フッ素系ポリオール、シリコーンポリオール、ポリオレフィンポリオールの少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
また、ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール等を、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート又はこれらから得られるポリイソシアネートで変成した、ウレタン変成アクリルポリオール、ウレタン変成ポリエステルポリオール又はウレタン変成ポリエーテルポリオール等の変成ポリオールを用いることもできる。
【0087】
上記のポリオール及び変成ポリオールは、いずれも、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。そして、ポリオール及び変成ポリオールを併用してもよい。
【0088】
ポリオールは公知の技術で製造することができるが、以下、代表的なアクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類の製造方法について述べる。
【0089】
[アクリルポリオール類]
アクリルポリオール類は、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーのみを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。
【0090】
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を有するアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル等の活性水素を有するメタクリル酸エステル類。
(iii)トリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。前記トリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
(iv)ポリエーテルポリオール類と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル。前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
(v)グリシジル(メタ)アクリレートと一塩基酸との付加物。前記一塩基酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、p-tert-ブチル安息香酸等が挙げられる。
(vi)上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類を開環重合させることにより得られる付加物。前記ラクトン類としては、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。
【0091】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類。
(iii)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類。
(iv)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマー。
【0092】
アクリルポリオール類は、具体的には、例えば、上記のモノマーを、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、製造できる。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物が水分量の多い溶剤を含む場合には、上記のモノマーを溶液重合し、水層に転換する方法や、乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分を、アミンやアンモニアで中和することによって、アクリルポリオール類に水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0094】
[ポリエステルポリオール類]
ポリエステルポリオール類は、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0095】
ポリエステルポリオール類は、具体的には、例えば、上記の成分を混合し、約160℃以上220℃以下程度で加熱し、縮合反応を行うことで製造できる。また、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等も、ポリエステルポリオール類として用いることができる。
【0096】
[ポリエーテルポリオール類]
ポリエーテルポリオール類は、例えば、以下の(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得ることができる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、強塩基性触媒、複合金属シアン化合物錯体等が挙げられる。強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。複合金属シアン化合物錯体としては、例えば、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
【0097】
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、前記(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0098】
(3)前記(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して、いわゆるポリマーポリオール類を得る方法。
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等;
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;
(vi)スタキオース等の四糖類
【0099】
(NCO/OH)
本実施形態の樹脂組成物において、活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物に対する硬化剤の混合比は、水酸基に対するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)で表すことができる。NCO/OHの下限値は、0.05が好ましく、0.1が好ましく、0.3がより好ましく、0.4がさらに好ましく、0.5が特に好ましい。一方、NCO/OHの上限値は、5.0が好ましく、4.0がより好ましく、3.0がさらに好ましく、2.0が特に好ましく、1.5が最も好ましい。
すなわち、NCO/OHは0.05以上5.0以下が好ましく、0.3以上4.0以下がより好ましく、0.4以上3.0以下がさらに好ましく、0.5以上2.0以下が特に好ましく、0.5以上1.5以下が特に好ましい。
NCO/OHが上記範囲内であることで、より強靭な樹脂硬化膜を形成することができる。
【0100】
(各種添加剤)
本実施形態の樹脂組成物は、上記ポリオール及び上記ポリイソシアネート組成物に加えて、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、着色顔料、染料、樹脂硬化膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤、樹脂硬化膜表面親水化剤、硬化促進用の触媒、乾燥性改良剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を含んでもよい。
【0101】
着色顔料は、無機顔料であってもよく、有機顔料であってもよい。無機顔料としては、例えば、耐候性のよいカーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等が挙げられる。
【0102】
シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0103】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0104】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、具体的な市販品として、例えば、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(商品名、全てアデカアーガス化学社製)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(商品名、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、サノールLS765(商品名、三共ライフテック株式会社製)等が挙げられる。
【0105】
つや消し剤としては、例えば、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの樹脂硬化膜を形成できる。
【0106】
樹脂硬化膜表面親水化剤としては、シリケート化合物が好ましい。シリケート化合物を含有することによって、本実施形態の樹脂組成物を用いて樹脂硬化膜を作製した場合に、樹脂硬化膜表面を親水性にし、耐雨筋汚染性が発現する。シリケート化合物は、水酸基と反応するため、予め混合する場合には、硬化剤成分であるブロックポリイソシアネート組成物に添加するのが好ましい。あるいは、主剤成分であるポリオール及び硬化剤成分であるブロックポリイソシアネート組成物を混合する際に、同時に混合してもよい。
シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラフェノキシシラン、及びこれらの縮合物等が挙げられる。中でも、シリケート化合物としては、樹脂硬化膜を作製した場合、樹脂硬化膜表面が親水性になり易いことから、テトラメトキシシランの縮合物又はテトラエトキシシランの縮合物が好ましい。
【0107】
硬化促進用の触媒としては、以下に限定されないが、例えば、金属塩、3級アミン類等が挙げられる。
金属塩としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、2-エチルヘキサン酸スズ、2-エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等が挙げられる。
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’-エンドエチレンピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン等が挙げられる。
【0108】
乾燥性改良剤としては、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等が挙げられる。
【0109】
レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン、エアロジル、ワックス、ステアリン酸塩、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0110】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル類、燐酸エステル類、脂肪酸エステル類、ピロメリット酸エステル、エポキシ系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤、液状ゴム、非芳香族系パラフィンオイル等が挙げられる。
フタル酸エステル類としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソノニルフタレート等が挙げられる。
燐酸エステル類としては、例えば、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリメチルヘキシルホスフェート、トリス-クロロエチルホスフェート、トリス-ジクロロプロピルホスフェート等が挙げられる。
脂肪酸エステル類としては、例えば、トリメリット酸エステル類、ジペンタエリスリトールエステル類、ジオクチルアジペート、ジメチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノケート等が挙げられる。トリメリット酸エステル類としては、例えば、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸イソデシルエステル等が挙げられる。
ピロメリット酸エステルとしては、例えば、ピロメリット酸オクチルエステル等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等が挙げられる。
ポリエーテル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸エーテルエステル、ポリエーテル等が挙げられる。
液状ゴムとしては、例えば、液状NBR、液状アクリルゴム、液状ポリブタジエン等が挙げられる。
【0111】
界面活性剤としては、例えば、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0112】
≪樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤樹脂組成物で有用であり、以下に示す製造方法により得られる。
【0113】
本実施形態の樹脂組成物が溶剤ベースの樹脂組成物である場合には、例えば、まず、主剤としてポリオール又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、各種添加剤を加えたものに、上記ポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加する。次いで、必要に応じて、更に溶剤を添加して、粘度を調整する。次いで、手撹拌又はマゼラー等の撹拌機器を用いて撹拌することによって、溶剤ベースの樹脂組成物を得ることができる。
また、上記ポリオールを主成分とする活性水素基を有する架橋性官能基含有化合物成分と、上記ポリイソシアネート組成物を主成分とする硬化剤成分と、上記各種添加剤の混合順序は特に限定されず、例えば、以下の順番で混合することができる。
1)各種添加剤を予め混合した主剤成分に、塗装現場において硬化剤成分を混合する。
2)塗装現場において主剤成分及び硬化剤成分を混合した後に、各種添加剤を混合する。
3)各種添加剤を予め混合した主剤成分に、塗装現場において各種添加剤を予め混合した硬化剤成分を混合する。
【0114】
≪使用用途≫
本実施形態の樹脂組成物は、以下に限定されないが、例えば、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法による塗装、ロール塗装、カーテンフロー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として用いることができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材から構成される成形品に対する塗料としても有用であり、金属又はプラスチックに対する塗料として特に好適である。
また、本実施形態の樹脂組成物は、例えば、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、情報家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料、シーリング、接着剤に好適であり、建築構造物、自動車車体、自動車用金属部品、自動車用プラスチック部品、情報家電製品用金属部品又は情報家電製品用プラスチック部品の塗料(例えば、トップクリアー塗料)として特に好適である。さらに、その柔軟性から曲面部や屈曲、伸縮が必要な部分に好適である。
【0115】
<樹脂硬化膜>
本実施形態の樹脂硬化膜は、上記樹脂組成物を硬化物であり、プラスチック基材や金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる。
【0116】
本発明の一態様において、樹脂硬化膜は23℃における引張試験の伸び率が80%以上であること好ましく、81%以上がより好ましく、85%以上である事が最も好ましい。
本発明の一態様において、樹脂硬化膜は23℃における引張試験の引張強度が9MPa以上であることが好ましく、16MPa以上がより好ましく、20MPa以上であることが最も好ましい。
本発明の一態様において、ガラス上に40μm厚みで形成した樹脂硬化膜の23℃におけるケーニッヒ硬度が13回以60回以下であることが好ましく、14回以59回以下であることがより好ましい。
【0117】
≪樹脂硬化膜の製造方法≫
本実施形態の樹脂硬化膜の製造方法は、上記樹脂組成物を硬化させる工程を含む方法である。
【0118】
本実施形態の樹脂硬化膜は、上記樹脂組成物を、例えば、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法による塗装、ロール塗装、カーテンフロー塗装、ベル塗装、静電塗装、コンマコーティング、グラビアコーテインング等の公知の塗装及び塗工方法を用いて、被塗物、基材、被着材上に塗装、塗工した後に硬化させることで製造することができる。
被塗物、基材、被着材としては、上記樹脂組成物の「使用用途」において例示された素材から構成される成形品と同様のものが挙げられる。
【0119】
<塗料硬化膜>
本発明の一態様において、樹脂組成物の硬化物は塗料硬化膜であることが好ましい。塗料硬化膜は、上記≪使用用途≫に例示した塗料として本実施形態の樹脂組成物を使用し、硬化させた塗料硬化膜である。
【実施例0120】
<ポリイソシアネートA1の合成>
温度側、冷却器、攪拌器付のフラスコに、1000gのHDIを仕込み、イソシアヌレート化触媒としてカプリン酸テトラメチルアンモニウムをイソブタノールで10質量%に希釈した溶液:0.025gを加え、イソシアヌレート化反応を行った。70℃で3時間反応後、リン酸を添加し反応を停止した。反応液を濾過後、未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートA1を得た。得られたポリイソシアネートA1は、粘度1300mPa・s(25℃)、NCO含有率23.1質量%、HDIモノマー濃度0.11質量%であった。
【0121】
≪実施例1:ブロックポリイソシアネート組成物の製造≫
温度側、冷却器、攪拌器付のフラスコに、上記の方法で得たポリイソシアネートA1:100g、ポリエーテル系ポリオールB1:90g、及び、リン酸2-エチルヘキシルエステル(城北化学工業株式会社製、商品名「JP-508」):0.01gを加えた。次いで、混合液について撹拌下105℃で6時間ウレタン化反応を行った。その後、60℃まで降温した後、ブロックポリイソシアネートとして3,5-ジメチルピラゾール:29.0g(NCOに対して1.03等量)を徐々に添加した。さらに2時間攪拌を行い、ブロックポリイソシアネートD1を得た。得られたブロックポリイソシアネートD1にヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin765」:0.1g、希釈溶剤として酢酸n-ブチルを添加し、固形分を65%とすることで、ブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物を得た。
【0122】
≪実施例2~11、比較例1~6≫
下記表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2~11、比較例1~6の固形分65%のブロックポリイソシアネート組成物をそれぞれ製造した。
【0123】
上記実施例1及び表1中、B1~B6はそれぞれ以下のポリエーテル系ポリオールB1~B6の材料を意味する。
ポリエーテルポリオールB1:ポリプロピレンオキサイド骨格含有、数平均分子量700、官能基数2
ポリエーテルポリオールB2:ポリプロピレンオキサイド骨格含有、数平均分子量1000、官能基数2
ポリエーテルポリオールB3:ポリプロピレンオキサイド骨格含有、数平均分子量2000、官能基数2
ポリエーテルポリオールB4:ポリプロピレンオキサイド骨格含有、数平均分子量100、官能基数3
ポリエーテルポリオールB5:ポリプロピレンオキサイド骨格含有、数平均分子量400、官能基数2
ポリエーテルポリオールB6:ポリプロピレンオキサイド骨格含有、数平均分子量3200、官能基数2
【0124】
<比較例6>
温度側、冷却器、攪拌器付のフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIモノマー):792.4gとポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量850、官能基数3):115.3gとを仕込み、攪拌下100℃で1時間反応させた。得られた反応液を160℃で蒸留し、未反応のHDIモノマーを除去し、ポリイソシアネートA2:209.9gを得た。
上記とは別の温度側、冷却器、攪拌器付のフラスコに、ポリイソシアネートA2:100gを仕込み、60℃に加温し、ブロック剤として3,5-ジメチルピラゾール:12.8g(NCOに対して1.03等量)を徐々に添加した。さらに2時間攪拌を行い、ブロックポリイソシアネートE6を得た。得られたブロックポリイソシアネートE6に、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin765」:0.1g、希釈溶剤として酢酸n-ブチルを添加し固形分を65%とすることで、ブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物を得た。
【0125】
上記実施例1及び表1中、ブロック剤はそれぞれ以下の材料を意味する。
Pz:3,5-ジメチルピラゾール
MEKO:メチルエチルケトオキシム
ε-カプロラクタムはそのままε-カプロラクタムと記載する。
【0126】
<樹脂組成物の製造>
表1に記載の各ブロックポリイソシアネート組成物と、表1に記載のアクリルポリオール化合物(C1)またはフッ素ポリオール化合物(C2)とを、それぞれ水酸基に対するブロックされたイソシアネート基のモル当量比率([ブロックされたイソシアネート基]/[水酸基])が1.0となる割合で配合して、樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0127】
・アクリルポリオール化合物(C1)の製造
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに酢酸ブチル:29質量部を仕込み、窒素ガス通気下で112℃に昇温した。112℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:22.3質量部、メチルメタクリレート:8.0質量部、ブチルアクリレート:26.1質量部、スチレン:42.3質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):2質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。次いで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、酢酸ブチル溶液を投入し、固形分量60質量%のアクリルポリオール化合物(C1)の溶液を得た。アクリルポリオール化合物(C1)は、ガラス転移温度Tgが29.5℃、樹脂固形分に対する水酸基価が139mgKOH/g、重量平均分子量Mwが2.75×10であった。
【0128】
・フッ素ポリオール化合物(C2)の物性
重量平均分子量Mwが2.86×10、固形分量:65.0質量%、溶剤:酢酸ブチル、溶剤を含まない樹脂の水酸基価63.0mgKOH/g。
【0129】
(引張特性)
各樹脂組成物をポリプロピレン板上に膜厚が約40μmとなるよう塗装し、140℃で30分間加熱乾燥させ焼き付けした後、23℃、相対湿度50%の環境下で、1週間乾燥させて樹脂硬化膜を作製した。次いで、作製した樹脂硬化膜を幅10mm、長さ100mmに切り出して試験片を作製し、チャック間距離20mm、幅10mmとなるよう引張試験機(テンシロン万能試験機)に装着し、試験温度23℃において引張速度20mm/minで試験を実施し、伸び率と引張強度を測定した。
【0130】
(硬度)
各樹脂組成物をガラス板上に膜厚が約40μmとなるよう塗装し、140℃で30分間加熱乾燥させた後(焼き付けした後)、23℃、相対湿度50%の環境下で、1週間乾燥させて樹脂硬化膜を作製した。樹脂硬化膜のケーニッヒ硬度を測定した。その結果(回数)を表1に記載した。ケーニッヒ硬度の評価基準を以下に記載する。
【0131】
(評価基準)
◎:30回以上
○:10回以上30回未満
×:10回未満
【0132】
(金属基材への密着性評価)
得られた各樹脂組成物を密着性試験に使用する軟鋼版に、アプリケーターで乾燥後の膜厚が約40μmとなるよう塗工して樹脂硬化膜を形成した。オーブンを使用して、140℃で30分間焼き付けた後、常温で1週間乾燥した。得られた樹脂硬化膜を用いて、基盤目試験(クロスカット法)を行った。具体的には、樹脂硬化膜に1mm間隔で100マスの基盤目状の切込みを入れた後、セロファンテープを貼り、引き剥がした際に残存する基盤目の数を計測し、100マス中残存した基盤目の割合を算出した。下記評価基準に従い、基材への密着性を評価した。表1に100マス中残存した基盤目の割合(数値)を記載する。以下に密着性評価の評価基準を記載する。
【0133】
(評価基準)
◎:100/100
〇:80/100超100/100未満
△:60/100以上80/100以下
×:60/100未満
【0134】
[ゲル分率の測定]
各樹脂組成物をポリプロピレン板上に膜厚が約40μmとなるよう塗装し、140℃で30分間加熱乾燥させ焼き付けした後、23℃、相対湿度50%の環境下で、1週間乾燥させて樹脂硬化膜を作製した。次いで、作製した樹脂硬化膜を0.1~0.2g程度採取し、メッシュ状のシートにつつみ、アセトンに24時間浸漬、105℃で1時間乾燥し、ゲル分率=100×(乾燥後のサンプル重量)/(アセトン投入前のサンプル重量)で算出した。
【0135】
[イソシアネート基含有率の測定方法]
まず、フラスコに測定試料1g以上2g以下を精秤した(Wg)。
次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。
【0136】
次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。
次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有率(NCO%)(質量%)を算出した。なお、NCO%は溶剤を含まない状態で算出される値と、溶剤を含む状態で算出される値をそれぞれ採用した。
【0137】
表1中、溶剤を含まない状態で算出したイソシアネート基含有率を「NCO%(溶剤を除いたもの)」とし、溶剤を含む状態で算出したイソシアネート基含有率を「NCO%(有姿)」と記載する。
イソシアネート基含有率(質量%)=(V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0138】
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定方法]
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0139】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0140】
[平均イソシアネート官能基数の測定方法]
ポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数(平均NCO数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、数平均分子量を意味し、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO%」は、上記「物性1」において算出された値を用いた。
平均イソシアネート官能基数=(Mn×NCO%×0.01)/42
【0141】
[有効NCO含有率の測定方法]
有効NCO含有率は、下記式を用いて算出した。
有効NCO含有率[質量%]
=[(ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分[質量%])×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×(ポリイソシアネートのNCO含有率[質量%])}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
【0142】
[粘度の測定方法]
ポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は、ポリイソシアネート組成物が有機溶剤を含まない場合には、E型粘度計(株式会社トキメック社製)により25℃下で測定した。
ポリイソシアネート組成物が有機溶剤を含む場合には、エバポレーター及び真空乾燥機により、ポリイソシアネート組成物に含まれる有機溶剤を除去した後、E型粘度計(株式会社トキメック社製)により25℃下で測定した。
【0143】
【表1】
【0144】
表1に示す結果の通り、実施例1~11のブロックポリイソシアネート組成物を使用した場合、金属基材への密着性、伸び率、引張強度及び硬度に優れる樹脂硬化膜を形成できた。