(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151079
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】穿刺ガイド装置及び超音波診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064208
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
(72)【発明者】
【氏名】牧田 裕久
(72)【発明者】
【氏名】園田 華
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE09
4C601EE11
4C601FF04
4C601GA20
4C601GA21
4C601KK16
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】超音波プローブと穿刺針を用いた穿刺手技において、穿刺針を正確に穿刺すること。
【解決手段】 実施形態に係る穿刺ガイド装置は、検知部と、識別情報出力部と、を備える。検知部は、超音波プローブにおいて生体に接触する生体接触面の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する。識別情報出力部は、前記検知部により検知された結果に基づいて、前記穿刺針と前記超音波プローブの走査面との位置関係を識別する識別情報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブにおいて生体に接触する生体接触面の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する検知部と、
前記検知部により検知された結果に基づいて、前記穿刺針と前記超音波プローブの走査面との位置関係を識別する識別情報を出力する識別情報出力部と、
を備える、穿刺ガイド装置。
【請求項2】
前記識別情報出力部は、前記穿刺針が前記走査面を含む平面内に位置することを識別する識別情報を出力する、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記走査面を含む平面上に配置され、前記走査面を含む平面内における前記穿刺針の通過を検知する、
請求項2に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項4】
前記識別情報出力部は、前記穿刺針の少なくとも一部が前記走査面を含む平面外に位置することを識別する識別情報を出力する、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記走査面を含む平面外に配置され、前記走査面を含む平面外における前記穿刺針の通過を検知する、
請求項4に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記穿刺針の通過の検知範囲を撮影するカメラを備える、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記穿刺針の通過を検知するための光学センサを備える、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項8】
前記光学センサは、前記通過の検知を行う範囲に光を送信する送信部と、前記送信された光を受信する受信部とを備える、
請求項7に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項9】
前記検知部及び前記識別情報出力部は、前記超音波プローブと一体に形成されている、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項10】
前記検知部及び前記識別情報出力部は、前記超音波プローブに着脱可能に取り付けられる、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項11】
角度算出部を更に備え、
前記検知部は、前記カメラの焦点を前記穿刺針に合わせるフォーカス機能を有し、
前記角度算出部は、前記焦点の位置に基づいて、前記超音波プローブの音響放射方向に対する前記穿刺針の角度を算出する、
請求項6に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項12】
前記角度に基づいて、前記穿刺針が前記走査面内まで移動した場合に穿刺針が通る経路を予測し、前記予測された経路と前記角度とを出力する予測出力部を更に備える、
請求項11に記載の穿刺ガイド装置。
【請求項13】
前記超音波プローブと、
請求項1に記載の穿刺ガイド装置と、
を備える、超音波診断システム。
【請求項14】
超音波プローブにおいて生体に接触する生体接触面の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する検知部と、
前記検知部により検知された結果に基づいて、前記超音波プローブの走査面に対して交差する平面と前記穿刺針との位置関係を識別する識別情報を出力する識別情報出力部と、
を備える、穿刺ガイド装置。
【請求項15】
超音波プローブにおいて生体に接触する生体接触面の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する検知部と、
前記検知部により検知された結果に基づいて、前記穿刺針を穿刺する目的位置を含む穿刺面と前記穿刺針との位置関係を識別する識別情報を出力する識別情報出力部と、
を備える、穿刺ガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、穿刺ガイド装置及び超音波診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断システムは、複数の超音波振動子が配列された超音波プローブにより被検体に対して超音波を放射し、放射した超音波の反射波を超音波プローブにより受信することで、超音波画像を生成する。
【0003】
神経ブロックや静脈ライン確保時に、超音波プローブと穿刺針を用いて、超音波ガイド下での穿刺手技を行うことがある。このような穿刺手技では、術者は、目的の部位が超音波プローブの走査面内に位置するように超音波プローブを操作し、超音波画像上の目的の部位を確認しながら穿刺針を穿刺する。この際、目的の部位を正確に穿刺するためには、超音波プローブの走査面を含む平面内に穿刺針が位置する状態で、穿刺針を穿刺する必要がある。また、超音波プローブの走査面に直交する平面内に目的の部位が位置する場合には、目的の部位を正確に穿刺するため、走査面に直交する平面内に穿刺針が位置する状態で、穿刺針を穿刺する必要がある。
【0004】
目的の部位を正確に穿刺するため、一般的には、穿刺針が挿入される穿刺ガイドを備えた穿刺アダプタを超音波プローブに装着する手法や、超音波プローブに穿刺用の目安マークを用いる手法が用いられる。しかし、穿刺アダプタを用いた手法では、穿刺針の径に応じて穿刺ガイドを交換する必要がある。また、穿刺針の径と穿刺ガイドの径が対応していない場合、穿刺針を穿刺ガイドに挿入した際に、穿刺ガイドに対する穿刺針のガタツキが生じ、穿刺針を正確に穿刺できないことがある。一方、目安マークを用いた手法では、超音波プローブにおいて生体との接触部の付近に目安マークを設けた場合、目安マークが生体に隠れて見えづらくなり、穿刺針を正確に穿刺できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、超音波プローブと穿刺針を用いた穿刺手技において、穿刺針を正確に穿刺することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る穿刺ガイド装置は、検知部と、識別情報出力部と、を備える。検知部は、超音波プローブにおいて生体に接触する生体接触面の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する。識別情報出力部は、前記検知部により検知された結果に基づいて、前記穿刺針と前記超音波プローブの走査面との位置関係を識別する識別情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る穿刺ガイド装置を短軸方向について一方側から視た図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る穿刺ガイド装置を走査方向について一方側から視た図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る穿刺ガイド装置による処理手順を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の穿刺ガイド装置を用いて穿刺を行う様子を短軸方向について一方側から示す図である。
【
図6】
図6は、
図5において穿刺針がインプレーンである場合の様子を走査方向について一方側から示す図である。
【
図7】
図7は、
図5において穿刺針がアウトプレーンである場合の様子を走査方向について一方側から示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第1の変形例に係る穿刺ガイド装置の走査面を通る断面を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第2の変形例に係る穿刺ガイド装置の走査面を通る断面を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の第3の変形例に係る超音波診断システムの構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の第3の変形例に係る穿刺ガイド装置を短軸方向について一方側から視た図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態の第3の変形例に係る穿刺ガイド装置による処理手順を例示するフローチャートである。
【
図13】
図13は、第1の実施形態の第3の変形例において表示機器に表示される超音波画像の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係る穿刺ガイド装置を短軸方向について一方側から視た図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る穿刺ガイド装置を走査方向について一方側から視た図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態に係る穿刺ガイド装置による処理手順を例示するフローチャートである。
【
図17】
図17は、第2の実施形態の穿刺ガイド装置を用いて穿刺を行う様子を走査方向について一方側から示す図である。
【
図18】
図18は、
図17において穿刺針がインプレーンである場合の様子を短軸方向について一方側から示す図である。
【
図19】
図19は、
図17において穿刺針がアウトプレーンである場合の様子を短軸方向について一方側から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、穿刺ガイド装置及び超音波診断システムの実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る穿刺ガイド装置20を備える超音波診断システム1の構成例を示す図である。本実施形態の超音波診断システム1は、主に、超音波プローブ11の走査方向(長軸方向)に沿って穿刺針を穿刺する手技に用いられる。
図1に示すように、超音波診断システム1は、超音波プローブ11、送受信回路12、Bモード処理回路13、ドプラ処理回路14、画像処理回路15、表示機器16、記憶装置17、制御回路18、入力機器19、穿刺ガイド装置20及び通信インターフェース30を有する。超音波診断システム1は、超音波診断装置と呼ばれてもよい。送受信回路12、Bモード処理回路13、ドプラ処理回路14、画像処理回路15、表示機器16、記憶装置17、制御回路18、入力機器19及び通信インターフェース30は、単一の装置本体10とも呼ばれる筐体に実装されている。超音波プローブ11は、装置本体10にケーブルを介して着脱可能に接続される。また、穿刺ガイド装置20は、超音波プローブ11に着脱可能に接続され、有線又は無線で装置本体10の通信インターフェース30に通信可能となっている。
【0011】
超音波プローブ11は、被検体との間で照射・反射される超音波の送受波を担うデバイス(探触子)であり、電気/機械可逆的変換素子で形成されている。超音波プローブ11は、例えばアレイ状に配列される複数の素子を先端部に装備したフェーズドアレイタイプのもので構成される。これにより、超音波プローブ11は、供給される駆動信号のパルス駆動電圧を超音波パルス信号に変換して被検体のスキャン領域内の所望方向(以下、音響放射方向と呼ぶ)に送信し、且つ被検体から反射してきた超音波信号をこれに対応する電圧のエコー信号に変換する。
【0012】
超音波信号送信に関し、送受信回路12は、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。具体的には、送受信回路12は、トリガ発生回路、遅延回路及びパルサ回路等を有する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0013】
なお、送受信回路12は、制御回路18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能な発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0014】
超音波信号受信に関し、送受信回路12は、超音波プローブ11が受信した反射波信号に応じたエコー信号に対して各種処理を行なって、当該エコー信号を受信指向性に応じた反射波データに変換する。具体的には、送受信回路12は、アンプ回路、A/D変換器及び加算器等を有する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0015】
Bモード処理回路13は、送受信回路12からの反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理、対数圧縮等を行い、複数のサンプル点それぞれの信号強度が輝度の明るさで表現されるBモード情報を生成する。
【0016】
ドプラ処理回路14は、送受信回路12からの反射波データに対して、カラードプラ法を実行し、血流情報すなわちドプラ情報を算出する。カラードプラ法では、超音波の送受信が同一の走査線上で複数回行なわれ、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号) を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そしてカラードプラ法では、この血流信号から血流の速度、血流の分散、血流のパワー等のドプラ情報を推定する。
【0017】
画像処理回路15は、画像処理を行うプロセッサである。画像処理回路15は、Bモード情報の走査方式を、表示に適した走査方式に変換(スキャン変換)し、被検体に関するBモード画像を生成する。同様に、画像処理回路15は、ドプラ情報の走査方式を、表示に適した走査方式にスキャン変換し、被検体に関するドプラ画像を生成する。Bモード画像やドプラ画像等の表示画像をまとめて超音波画像と呼ぶ。画像処理回路15は、各画像情報の合成や並立、表示位置を示す情報、さらに超音波診断システム1の操作を補助するための各種情報や、患者情報などの超音波診断に必要な付帯情報も、超音波画像と共に生成する。
【0018】
表示機器16は、画像処理回路15との連携により、画像処理回路15からの表示情報を視覚的映像情報に変換して表示する表示機器である。例えば、表示機器16は、画像処理回路15により生成された合成画像を表示する。表示機器16としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適用可能である。なお、表示機器16としてプロジェクタが設けられてもよい。
【0019】
記憶装置17は、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶装置17は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶装置17は、Bモード情報やドプラ情報、Bモード画像、ドプラ画像、合成画像等の各種情報を記憶する。
【0020】
記憶装置17は、各処理回路によって実行されるプログラム、各処理回路の処理に用いられる各種データ等を記憶する。プログラムとしては、例えば、予めネットワーク又は非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からコンピュータにインストールされ、処理回路の各機能を当該コンピュータに実現させるプログラムが用いられる。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。
【0021】
制御回路18は、超音波診断システム1の処理全体を制御するプロセッサである。制御回路18は、記憶装置17に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路18は、入力機器19を介した操作者から入力された各種設定要求や、各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路12、Bモード処理回路13、ドプラ処理回路14及び画像処理回路15の処理を制御する。また、制御回路18は、表示制御機能を備え、種々の情報を、表示機器16を介して出力する。例えば、制御回路18は、画像処理回路15で生成された画像を表示機器16に表示する。また、制御回路18は、入力機器19とのインターフェース機能を備える。
【0022】
入力機器19は、タッチパネル、操作パネル上の各種ユーザインターフェースである。操作者は、超音波診断システム1に対する各種操作や指令を入力機器19により入力することが可能である。なお、表示機器16と入力機器19とが分離されている必要はなく、両者が機構的に一体になっていてもよい。
【0023】
穿刺ガイド装置20は、超音波プローブ11に着脱可能に取り付けられた外付けアダプタである。
【0024】
通信インターフェース30は、例えば、有線又は無線を介して穿刺ガイド装置20と接続され、穿刺ガイド装置20との間でデータ通信を行う。なお、以下の説明では、装置本体10と穿刺ガイド装置20との間の通信において、通信インターフェース30が介在する旨の記載を省略する。
【0025】
穿刺ガイド装置20は、検知部21と、識別情報出力部22とを備える。本実施形態では、穿刺ガイド装置20が超音波プローブ11と別体である例について説明するが、穿刺ガイド装置20は超音波プローブ11と一体に形成されてもよい。この場合、超音波プローブ11に検知部21と識別情報出力部22が実装される。
【0026】
検知部21は、超音波プローブ11の生体接触面の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する。生体接触面は、超音波プローブ11において生体に接触する接触面であり、例えば超音波プローブ11の先端に配置される。このため、検知部21は、超音波プローブ11の先端部の近傍に設けられる。検知部21は、超音波プローブ11の走査面(スキャン断面)に対する穿刺針の位置関係を判定可能な位置に設けられる。例えば、検知部21は、走査面を含む平面上に配置され、走査面を含む平面内における穿刺針の通過を検知する。
【0027】
検知部21は、特定の検知範囲における穿刺針の有無を検知する非接触のセンサと、穿刺ガイド装置20に搭載された図示しない記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによりセンサの信号を解析するプロセッサにより実現される。非接触のセンサとしては、例えば、カメラ、光学センサ、超音波センサ等を用いることができる。光学センサは、例えば、赤外線センサである。処理回路は、センサから取得した信号を解析して検知範囲における穿刺針の通過を検知し、検知結果を識別情報出力部22へ送る。以下、本実施形態では、検知部21がカメラを備える場合を例に説明する。
【0028】
識別情報出力部22は、検知部21により検知された結果に基づいて、穿刺針を穿刺する目的位置を含む穿刺面と穿刺針との位置関係を識別する識別情報を出力する。本実施形態では、穿刺面は、超音波プローブ11の走査面に対して平行で、かつ、走査面を含む平面である。このため、識別情報出力部22は、穿刺針と超音波プローブ11の走査面との位置関係を識別する識別情報を出力する。識別情報出力部22は、例えば、穿刺ガイド装置20に搭載された図示しない記憶装置に記憶されているプログラムを実行することにより処理を実行するプロセッサにより実現される。識別情報出力部22は単一の装置にて複数の機能を実行するものとして説明するが、複数の機能を別々の装置が実行することにしても構わない。例えば、識別情報出力部22の機能は、異なる装置に分散して搭載されても構わない。
【0029】
より具体的には、識別情報出力部22は、穿刺針が走査面を含む平面内に位置することを識別する識別情報を出力する。検知部21から取得した検知結果に基づいて、穿刺針が走査面に対してインプレーンとアウトプレーンのいずれであるかを判定する。穿刺針が走査面に対してインプレーンである状態は、穿刺針の全体が穿刺面と平行で、かつ、穿刺面内に位置する状態である。また、穿刺針が走査面に対してアウトプレーンである状態は、穿刺針が穿刺面に対して傾いており、穿刺針の少なくとも1部が穿刺面外に位置する状態である。
【0030】
その後、識別情報出力部22は、穿刺針が走査面に対してインプレーンとアウトプレーンのいずれであるかについての情報を識別情報として出力し、ユーザに識別情報を通知する。ユーザは、例えば、穿刺手技を行う術者である。識別情報をユーザに通知する際には、例えば、穿刺針がインプレーンまたはアウトプレーンであることを述べた音声を用いてもよく、穿刺針がインプレーンまたはアウトプレーンであることを示す予め設定された音を用いてもよい。また、穿刺針がインプレーンまたはアウトプレーンであることを表示機器16に表示させてもよく、穿刺針がインプレーンまたはアウトプレーンであることを示す予め設定された記号を表示機器16に表示させてもよい。
【0031】
次に、
図2及び
図3を用いて穿刺ガイド装置20の構成の一例について説明する。穿刺ガイド装置20は、超音波プローブ11の先端部の近傍に装着されている。ここで、走査面Aに対して平行で、かつ、音響放射方向Bに対して直交する方向を走査方向と呼び、走査面Aに対して直交する方向を短軸方向と呼ぶ。走査方向は、長軸方向と呼ばれてもよい。
図2は、短軸方向について一方側から視た図であり、
図3は、走査方向について一方側から視た図である。
【0032】
検知部21は、穿刺針Nの通過の検知範囲を撮影するカメラ211を備える。カメラ211は、生体接触面111の近傍において、超音波プローブ11の走査方向について外側を向いた状態で配置され、カメラ211に対して走査方向について外側に位置する所定の撮影範囲を撮影することができる。また、
図3に示すように、カメラ211は、走査面Aを含む穿刺面C上に、音響放射方向Bに沿って配置されている。カメラ211は、走査方向について1つ以上の撮影素子を備え、音響放射方向Bについて2つ以上の撮影素子を備える。カメラ211の撮影範囲は、穿刺針Nの径や、穿刺面Cに対する穿刺針Nの許容できる傾斜角度等に応じて、適宜設定される。
【0033】
(動作)
次に、超音波診断システム1の穿刺ガイド装置20により実行される穿刺ガイド処理の動作について説明する。穿刺ガイド処理とは、穿刺手技においてユーザが穿刺針を正確に穿刺することを支援する処理である。
図4は、穿刺ガイド処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0034】
(穿刺ガイド処理)
穿刺ガイド処理は、超音波プローブ11を用いて撮影を行いながら穿刺針を被検体Pに穿刺する際に実行される。穿刺ガイド処理は、穿刺針Nを被検体Pに穿刺する前に実行されてもよく、穿刺針Nの穿刺中に実行されてもよい。また、穿刺ガイド処理は、ユーザの操作により開始されてもよく、超音波プローブ11による撮影が開始されたことに応じて開始されてもよい。
図5から
図7は、穿刺針Nを穿刺する際の様子を示す図である。
図5は、超音波プローブ11の短軸方向について一方側から視た様子を示し、
図6及び
図7は、超音波プローブ11の走査方向について一方側から視た様子を示す。
【0035】
(ステップS101)
穿刺ガイド処理が開始すると、検知部21は、カメラ211による撮影を開始させ、カメラ211で撮影した撮影画像に基づいて、カメラ211の撮影範囲における穿刺針Nの通過を検知する。この際、検知部21は、撮影画像から特定の物体を検出する公知の画像処理技術を実行することにより、撮影画像から穿刺針Nを検出する。検知部21は、撮影画像から穿刺針Nが検出された場合、穿刺針Nが撮影範囲を通過したと判定し、撮影画像から穿刺針Nが検出されなかった場合、穿刺針Nが撮影範囲を通過していないと判定する。穿刺針Nの通過を検知する処理は、予め設定された所定の時間間隔で実行されてもよく、常に実行されていてもよく、ユーザにより操作が入力されたタイミングで実行されてもよい。検知部21は、穿刺針Nの通過の有無に関する判定を実行する度に、判定結果を識別情報出力部22へ順次送信する。
【0036】
(ステップS102)
識別情報出力部22は、穿刺針Nの通過が検知された場合、穿刺針Nと走査面Aとの位置関係を識別する。この際、識別情報出力部22は、カメラ211の各撮影素子から取得した穿刺針Nの検出結果に基づいて、穿刺針Nが穿刺面C上に位置するか否かを判定する。
【0037】
例えば、
図6に示すように、音響放射方向Bにおける全ての位置で穿刺針Nが検出された場合、識別情報出力部22は、穿刺針Nが穿刺面C上に位置し、穿刺針Nがインプレーンであると判断する。一方、
図7に示すように、音響放射方向Bにおいて穿刺針Nが検出されない位置が存在する場合、識別情報出力部22は、穿刺針Nが穿刺面Cに対して傾いており、穿刺針Nがアウトプレーンであると判断する。
【0038】
(ステップS103)
識別情報出力部22は、ステップS102の処理で識別された穿刺針Nと穿刺面Cとの位置関係に基づいて、識別情報を出力する。この際、識別情報出力部22は、識別情報として、穿刺針Nがインプレーンであるかアウトプレーンであるかについての情報を術者に通知する。例えば、識別情報出力部22は、文字や音声を用いて、穿刺針Nがインプレーンであることやアウトプレーンであることを術者に通知する。識別情報出力部22は、穿刺針Nがインプレーンである場合にのみ通知を行ってもよく、穿刺針Nがアウトプレーンである場合にのみ通知を行ってもよい。術者は、通知を確認することで、穿刺針Nがインプレーンであるかアウトプレーンであるかを確認することにより、穿刺針Nがインプレーンである状態で穿刺手技を進めることができる。
【0039】
以下、本実施形態に係る穿刺ガイド装置20を有する超音波診断システム1の効果について説明する。
【0040】
本実施形態の穿刺ガイド装置20を有する超音波診断システム1は、超音波プローブ11と、穿刺ガイド装置20を備える。穿刺ガイド装置20は、検知部21と、識別情報出力部22と、を備える。検知部21は、超音波プローブ11において生体に接触する生体接触面111の近傍に設けられ、穿刺針の通過を検知する。識別情報出力部22は、検知部21により検知された結果に基づいて、穿刺針と超音波プローブ11の走査面との位置関係を識別する識別情報を出力する。
【0041】
本実施形態では、検知部21はカメラ211を備え、カメラ211は、走査面を含む穿刺面に配置され、穿刺面内における穿刺針の通過を検知し、識別情報出力部22は、穿刺針が穿刺面内に位置することを識別する識別情報を出力する。具体的には、識別情報出力部22は、穿刺針が穿刺面に対してインプレーンであるかアウトプレーンであるかを識別し、識別結果を音や画面表示を用いて術者に通知する。
【0042】
上記構成によれば、穿刺手技を行う術者は、穿刺針と超音波プローブ11の走査面との位置関係を識別する識別情報を確認することで、走査面に対する穿刺針の位置を容易に把握し、走査面内に位置する目的の部位を正確に穿刺することができる。また、穿刺アダプタ等を用いることなく目的の部位を正確に穿刺することができるため、穿刺針の径に応じて穿刺ガイドを交換することなく、穿刺針を走査面に対してインプレーンの状態で穿刺することができる。また、穿刺針の位置を特定するための特別な機器を穿刺針に取り付けることなく、目的の部位を正確に穿刺することができる。
【0043】
(第1の変形例)
第1の実施形態の第1の変形例について説明する。本変形例は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0044】
図8は、本変形例の穿刺ガイド装置20の構成を示す図である。
図8は、走査面Aを通る断面を示している。
図8に示すように、穿刺ガイド装置20は、走査方向に沿って外側に向かって突出する突出部201と、穿刺針Nが挿入される挿入孔202を備える。挿入孔202は、突出部201を音響放射方向に沿って貫通している。突出部201及び挿入孔202は、走査面Aを含む穿刺面が通る位置に設けられている。カメラ211は、挿入孔202の内壁において、走査方向について外側を向く面に取り付けられている。
【0045】
検知部21は、カメラ211に加えて、識別マーク212を備える。識別マーク212は、挿入孔202の内壁において、走査方向について内側を向く面に取り付けられ、カメラ211と対向する位置に配置されている。識別マーク212は、例えば、穿刺針Nと異なる色のシールである。
【0046】
検知部21は、カメラ画像において識別マーク212が写っていない位置には穿刺針Nが存在すると判断する。この際、カメラ211の画像に周囲の様子が写り込まず、穿刺針Nと予め色が記録された識別マーク212のみがカメラ211画像に写るため、穿刺針Nを識別知しやすくなり、穿刺針Nの通過の検知精度が向上する。
【0047】
なお、カメラ211と識別マーク212の配置は逆であってもよい。例えば、識別マーク212が外側を向く面に配置され、カメラ211が内側を向く面に配置されてもよい。
【0048】
(第2の変形例)
第1の実施形態の第2の変形例について説明する。本変形例は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0049】
図9は、本実施形態の穿刺ガイド装置20の構成を示す図である。
図9は、走査面Aを通る断面を示している。本実施形態では、検知部21は、穿刺針の通過を検知するための光学センサを備える。光学センサは、例えば、赤外線センサである。本実施形態では、光学センサは、2つの送信部213A、213Bと、2つの受信部214A、214Bを備える。穿刺ガイド装置20は、
図8と同様に、走査方向に沿って外側に向かって突出する突出部201と、穿刺針Nが挿入される挿入孔202を備える。
【0050】
送信部213A、213Bは、挿入孔202の内壁において、走査方向について外側を向く面に配置されている。受信部214A、214Bは、挿入孔202の内壁において、走査方向について内側を向く面に配置され、送信部213A、213Bと対向する位置に配置されている。また、送信部213A、213B及び受信部214A、214Bは、走査面Aを含む穿刺面が通る位置に配置される。送信部213Aと受信部214Aは、音響放射方向Bについて略同じ位置に配置され、送信部213Bと受信部214Bは、音響放射方向Bについて略同じ位置に配置されている。送信部213Aと送信部213Bは、音響放射方向Bについて異なる位置に配置され、送信部213Aと送信部213Bは、音響放射方向Bについて異なる位置に配置されている。
【0051】
送信部213Aは、受信部214Aへ向けて光を送信し、受信部214Aは、送信部213Aから送信された光を受信する。送信部213Bは、受信部214Bへ向けて光を送信し、受信部214Bは、送信部213Bから送信された光を受信する。
【0052】
検知部21は、挿入孔202内の穿刺針Nの通過を検知する。この際、検知部21は、受信部214Aまたは受信部214Bで光が受信された場合、穿刺針Nが挿入孔202を通過したと判定し、受信部214Aまたは受信部214Bで光が受信されなかった場合、穿刺針Nが挿入孔202を通過していないと判定する。
【0053】
識別情報出力部22は、穿刺針Nの通過が検知された場合、穿刺針Nと走査面Aとの位置関係を識別する。この際、識別情報出力部22は、受信部214A、214Bでの光の検出結果に基づいて、穿刺針Nが走査面Aを含む穿刺面上に位置するか否かを判定する。
【0054】
例えば、受信部214A及び受信部214Bの両方で光が受信された場合、識別情報出力部22は、穿刺針Nが穿刺面上に位置し、穿刺針Nがインプレーンであると判断する。一方、受信部214A及び受信部214Bのいずれかで光が受信されなかった場合、識別情報出力部22は、穿刺針Nが穿刺面Cに対して傾いており、穿刺針Nがアウトプレーンであると判断する。
【0055】
以下、本実施形態に係る超音波診断システム1の効果について説明する。
【0056】
本実施形態では、光学センサとして送信部213A、213Bと受信部214A、214Bとを備え、送信部213A、213Bと受信部214A、214Bは、走査面を含む穿刺面上に配置されている。検知部21は、受信部214A、214Bでの受信結果に基づいて穿刺面内における穿刺針の通過を検知し、識別情報出力部22は、受信部214A、214Bでの受信結果に基づいて、穿刺針が穿刺面に対してインプレーンであるかアウトプレーンであるかを識別し、術者に通知する。
【0057】
上記構成によれば、第1の実施形態と同様に、穿刺手技を行う術者は、穿刺針と超音波プローブ11の走査面との位置関係を識別する識別情報を確認することで、走査面に対する穿刺針の位置を容易に把握し、走査面内に位置する目的の部位を正確に穿刺することができる。
【0058】
なお、送信部213A、213Bと受信部214A、214Bの配置は逆であってもよい。例えば、受信部214A、214Bが外側を向く面に配置され、送信部213A、213Bが内側を向く面に配置されてもよい。
【0059】
また、本変形例では、2組の光学センサ(送信部213Aと受信部214Aの組み合わせと送信部213Bと受信部214Bの組み合わせ)を用いる例について説明したが、3組以上の光学センサを用いることで、穿刺針の検出精度を向上させることができる。
【0060】
(第3の変形例)
第1の実施形態の第3の変形例について説明する。本変形例は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。
【0061】
図10は、本変形例に係る穿刺ガイド装置20を備える超音波診断システム1の構成例を示す図である。
図11は、本変形例の穿刺ガイド装置20の構成を示す図である。
図11は、短軸方向について一方側から視た図である。
【0062】
図11に示すように、穿刺ガイド装置20は、検知部21は2つのカメラ215A、215Bを備える。カメラ215A、215Bは、走査面Aを含む穿刺面が通る位置に配置されている。カメラ215Aとカメラ215Bは、音響放射方向Bについて異なる位置に配置されている。また、検知部21は、カメラ215A、215Bの焦点を穿刺針Nに自動で合わせる自動フォーカス機能を有する。
【0063】
図10に示すように、穿刺ガイド装置20は、角度算出部23と予測出力部24をさらに備える。角度算出部23及び予測出力部24は、穿刺ガイド装置20に搭載された図示しない記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによりセンサの信号を解析するプロセッサにより実現される。
【0064】
角度算出部23は、検知部21からカメラ215A、215Bの焦点位置を取得し、取得した焦点位置に基づいて、音響放射方向Bに対する穿刺針Nの角度(以下、挿入角度と呼ぶ)を算出する。挿入角度は、穿刺角度と呼ばれてもよい。
【0065】
予測出力部24は、角度算出部23で算出した穿刺針Nの挿入角度に基づいて、カメラ215A、215Bの焦点位置を結ぶ直線に沿って穿刺針Nが走査面A内まで移動した場合に穿刺針Nが通る位置(以下、予測ラインと呼ぶ)を予測し、予測ラインを出力する。例えば、予測出力部24は、画像処理回路15から超音波画像を取得し、超音波画像上に予測ラインを重畳させた合成画像を生成し、生成した合成画像を表示機器16に表示させる。また、予測出力部24は、穿刺針Nの挿入角度を超音波画像とともに表示機器16に表示させてもよい。
【0066】
(動作)
次に、本実施形態の超音波診断システム1の穿刺ガイド装置20により実行される穿刺ガイド処理の動作について説明する。
図12は、本実施形態の穿刺ガイド処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0067】
(穿刺ガイド処理)
(ステップS201)
穿刺ガイド処理が開始すると、検知部21は、
図4のステップS101の処理と同様に、カメラ215A、215Bによる撮影を開始させ、カメラ215A、215Bで撮影した撮影画像に基づいて撮影画像から穿刺針Nを検出し、カメラ215A、215Bの撮影範囲における穿刺針Nの通過を検知する。この際、検知部21は、自動フォーカス機能を実行し、カメラ215A、215Bの焦点を検出された穿刺針Nに合わせる。検知部21は、穿刺針Nが検出されたカメラ215A、215Bの焦点距離L1、L2を角度算出部23へ送信する。
【0068】
(ステップS202)
識別情報出力部22は、
図4のステップS102の処理と同様に、カメラ215A、215Bから取得した穿刺針Nの検出結果に基づいて、穿刺針Nが穿刺面C上に位置するか否かを判定し、穿刺針Nと走査面Aとの位置関係を識別する。
【0069】
(ステップS203)
識別情報出力部22は、
図4のステップS103の処理と同様に、識別情報として、穿刺針Nがインプレーンであるかアウトプレーンであるかについての情報を術者に通知する。
【0070】
(ステップS204)
角度算出部23は、穿刺針Nがインプレーンである場合、カメラ215A、215Bの焦点距離L1、L2に基づいて音響放射方向Bに対する穿刺針Nの挿入角度を算出する。この際、角度算出部23は、カメラ215A、215Bの焦点距離L1、L2を用いて、カメラ215A、215Bの焦点位置を結ぶ直線を算出し、その直線の音響放射方向Bに対する角度を穿刺針Nの挿入角度として算出する。
【0071】
(ステップS205)
予測出力部24は、穿刺針Nの挿入角度に基づいて、穿刺針Nが走査面A内まで穿刺された場合に穿刺針Nが通過する位置を示す予測ラインを推定する。この際、予測出力部24は、カメラ215A、215Bの焦点位置を結ぶ直線の延長線に沿って穿刺針Nが走査面A内まで穿刺された場合の穿刺針Nの位置を示す予測ラインを算出する。
【0072】
(ステップS206)
予測出力部24は、画像処理回路15から超音波画像を取得し、予測ラインを超音波画像に重畳させた合成画像を生成し、生成した合成画像と挿入角度を表示機器16に表示させる。
【0073】
図13は、表示機器16に表示された合成画像の一例を示す図である。
図13では、表示機器16の表示画面には、合成画像が表示される画像表示部161と、挿入角度表示部162が設けられている。画像表示部161には、超音波画像に予測ライン163が重畳される。挿入角度表示部162には、音響放射方向Bに対する穿刺針Nの挿入角度が表示される。
【0074】
以下、本実施形態に係る穿刺ガイド装置20を有する超音波診断システム1の効果について説明する。
【0075】
本変形例の穿刺ガイド装置20は、角度算出部23と予測出力部24を更に備える。検知部21はカメラ215A、215Bを備えるとともに、カメラ215A、215Bの焦点を穿刺針に合わせるフォーカス機能を有する。角度算出部23は、カメラ215A、215Bの焦点の位置に基づいて、走査面を含む穿刺面に対する穿刺針の挿入角度を算出する。予測出力部24は、挿入角度に基づいて、穿刺針が走査面内まで移動した際に穿刺針が通る予測ラインを予測し、予測ラインを出力する。例えば、表示機器16に表示された超音波画像に穿刺針の予測ラインを重畳し、挿入角度とともに表示することができる。
【0076】
上記構成によれば、穿刺手技を行う術者は、穿刺針の現在の挿入角度と、現在の挿入角度で穿刺針を走査面内まで穿刺した際の予測ラインを確認することで、現在の挿入角度で目的の部位を穿刺することができるか否かを容易に確認することができる。例えば、予測ラインが目的の部位に重なっていない場合、予測ラインを確認しながら穿刺針の挿入角度を調整することにより、目的の部位を精確に穿刺することができる。
【0077】
本変形例では、2つのカメラ215A、215Bを用いる例について説明したが、3つ以上のカメラを用いることで、穿刺針の挿入角度の算出精度を向上させることができる。
【0078】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。第1の実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。第1の実施形態の超音波診断システム1は、主に、超音波プローブ11の走査方向(長軸方向)に沿って穿刺針を穿刺する手技に用いられる。一方、本実施形態の超音波診断システム1は、主に、中心静脈穿刺のように、超音波プローブ11の短軸方向に沿って穿刺針を穿刺する手技に用いられる。
【0079】
図14及び
図15を用いて穿刺ガイド装置20の構成の一例について説明する。
図14は、短軸方向について一方側から視た図であり、
図15は、走査方向について一方側から視た図である。
【0080】
検知部21は、穿刺面Dに対する穿刺針Nの位置関係を判定可能な位置に設けられる。本実施形態における穿刺面Dは、走査面Aに対して交差する平面である。具体的には、穿刺面Dは、走査面Aに対して略直交する平面である。穿刺面Dは、一般的には、走査方向について超音波プローブ11の中心位置に設定される。ただし、走査方向について超音波プローブ11の中心位置から離れた位置に穿刺面Dが設定されてもよい。
【0081】
本実施形態では、検知部21がカメラ216を備える場合を例に説明するが、第1の実施形態と同様に、カメラ216の代わりに光学センサや超音波センサが用いられてもよい。
【0082】
カメラ216は、生体接触面111の近傍において、超音波プローブ11の短軸方向について外側を向いた状態で配置され、カメラ216に対して短軸方向について外側に位置する所定の撮影範囲を撮影することができる。また、
図14に示すように、カメラ216は、穿刺面D上に、音響放射方向Bに沿って配置されている。カメラ216は、短軸方向について1つ以上の撮影素子を備え、音響放射方向Bについて2つ以上の撮影素子を備える。カメラ216の撮影範囲は、穿刺針Nの径や、穿刺面Dに対する穿刺針Nの許容できる傾斜角度等に応じて、適宜設定される。
【0083】
識別情報出力部22は、検知部21により検知された結果に基づいて、穿刺面Dと穿刺針Nとの位置関係を識別する識別情報を出力する。本実施形態では、穿刺面Dは、超音波プローブ11の走査面Aに対して交差する平面である。このため、識別情報出力部22は、超音波プローブ11の走査面Aに対して交差する平面と穿刺針Nとの位置関係を識別する。この際、識別情報出力部22は、検知部21から取得した検知結果に基づいて、穿刺針Nが穿刺面Dに対してインプレーンとアウトプレーンのいずれであるかを判定する。
【0084】
(動作)
次に、超音波診断システム1の穿刺ガイド装置20により実行される穿刺ガイド処理の動作について説明する。
図16は、穿刺ガイド処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0085】
(穿刺ガイド処理)
図17から
図19は、穿刺針Nを穿刺する際の様子を示す図である。
図17は、超音波プローブ11の走査方向について一方側から視た様子を示し、
図18及び
図19は、超音波プローブ11の短軸方向について一方側から視た様子を示す。
【0086】
(ステップS301)
穿刺ガイド処理が開始すると、検知部21は、カメラ216による撮影を開始させ、第1の実施形態のステップS101の処理と同様にして、カメラ216で撮影した撮影画像に基づいてカメラ216の撮影範囲における穿刺針Nの通過を検知する。本実施形態では、カメラ216の撮影範囲は、走査面Aに略直交する平面内となる。
【0087】
(ステップS302)
識別情報出力部22は、穿刺針Nの通過が検知された場合、短軸方向の穿刺面Dとの位置関係を識別する。この際、識別情報出力部22は、カメラ216の各撮影素子から取得した穿刺針Nの検出結果に基づいて、穿刺針Nが穿刺面D上に位置するか否かを判定する。
【0088】
例えば、
図18に示すように、音響放射方向Bにおける全ての位置で穿刺針Nが検出された場合、識別情報出力部22は、穿刺針Nが穿刺面D上に位置し、穿刺針Nがインプレーンであると判断する。一方、
図19に示すように、音響放射方向Bにおいて穿刺針Nが検出されない位置が存在する場合、識別情報出力部22は、穿刺針Nが穿刺面Dに対して傾いており、穿刺針Nがアウトプレーンであると判断する。
【0089】
(ステップS303)
識別情報出力部22は、穿刺針Nと穿刺面Dとの位置関係に基づいて、識別情報を出力する。この際、識別情報出力部22は、第1の実施形態のステップS103の処理と同様にして、識別情報として、穿刺針Nがインプレーンであるかアウトプレーンであるかについての情報を術者に通知する。
【0090】
以下、本実施形態に係る穿刺ガイド装置20を有する超音波診断システム1の効果について説明する。
【0091】
本実施形態では、識別情報出力部22は、検知部21により検知された結果に基づいて、穿刺針と超音波プローブ11の走査面に対して交差する平面との位置関係を識別する識別情報を出力する。また、検知部21はカメラ216を備え、カメラ216は、走査面に対して交差する平面内に配置され、穿刺面内における穿刺針の通過を検知する。
【0092】
上記構成によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。具体的には、穿刺手技を行う術者は、穿刺針と穿刺面との位置関係を識別する識別情報を確認することで、穿刺面に対する穿刺針の位置を容易に把握し、穿刺面内に位置する目的の部位を正確に穿刺することができる。また、穿刺アダプタ等を用いることなく目的の部位を正確に穿刺することができるため、穿刺針の径に応じて穿刺ガイドを交換することなく、穿刺針を穿刺面に対してインプレーンの状態で穿刺することができる。
【0093】
(実施形態等の変形例)
上記実施形態では、穿刺面に検知部21のセンサを配置し、穿刺面内の穿刺針の通過を検知することにより、穿刺針がインプレーンとアウトプレーンのいずれの状態であるかを識別する例について説明したが、この限りではない。
【0094】
例えば、穿刺面の外側に検知部21のセンサを配置し、穿刺面外の穿刺針の通過を検知することにより、穿刺針がインプレーンとアウトプレーンのいずれの状態であるかを識別してもよい。例えば、穿刺面が走査面を含む平面である場合、検知部21は、走査面を含む平面外に配置され、走査面を含む平面外における穿刺針の通過を検知する。検知部21は、走査面の近傍の一定の範囲に配置される。識別情報出力部22は、穿刺針の少なくとも一部が走査面を含む平面内に位置しないことを識別する識別情報を出力する。この際、識別情報出力部22は、検知部21により穿刺針が検知された場合、穿刺針がアウトプレーンであると判断し、検知部21により穿刺針が検知されなかった場合、穿刺針がアウトプレーンでないと判断する。
【0095】
また、上記実施形態では、穿刺ガイド装置20が超音波プローブ11に着脱可能に取り付けられる外付けアダプタであるため、検知部21、識別情報出力部22、角度算出部23、予測出力部24等が超音波プローブ11に着脱可能に取り付けられる例について説明したが、穿刺ガイド装置20が有する各構成は、超音波プローブ11と一体に形成されてもよい。例えば、超音波プローブ11の外表面のうち生体接触面111付近に検知部21のセンサが設けられ、超音波プローブ11の内部に識別情報出力部22、角度算出部23、予測出力部24等が実装されてもよい。
【0096】
超音波診断システム1のハードウェア構成は、上記実施形態で説明した構成に限定されない。例えば、送受信回路12、Bモード処理回路13、ドプラ処理回路14、画像処理回路15、表示機器16、記憶装置17、制御回路18、入力機器19、識別情報出力部22、角度算出部23及び予測出力部24の少なくとも一部が超音波プローブ11に実装されていてもよい。また、画像処理回路15、表示機器16、記憶装置17、識別情報出力部22、角度算出部23及び予測出力部24の少なくとも一部が、装置本体10にネットワークを介して接続されたコンピュータに実装されていてもよい。また、識別情報出力部22、角度算出部23及び予測出力部24の少なくとも一部が装置本体10に実装されていてもよい。また、制御回路18、識別情報出力部22、角度算出部23及び予測出力部24は、別々のハードウェアに実装されている必要はなく、単一のハードウェアに実装されてもよい。
【0097】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit :ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD))、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1または
図10における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記「プロセッサ」の説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0098】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、超音波プローブと穿刺針を用いた穿刺手技において、穿刺針を正確に穿刺することができる。
【0099】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1…超音波診断システム
10…装置本体
11…超音波プローブ
111…生体接触面
12…送受信回路
13…Bモード処理回路
14…ドプラ処理回路
15…画像処理回路
16…表示機器
161…画像表示部
162…挿入角度表示部
163…予測ライン
17…記憶装置
18…制御回路
19…入力機器
20…穿刺ガイド装置
201…突出部
202…挿入孔
21…検知部
211、215A、215B、216…カメラ
212…識別マーク
213A、213B…送信部
214A、214B…受信部
22…識別情報出力部
23…角度算出部
24…予測出力部
30…通信インターフェース
A…走査面
B…音響放射方向
C、D…穿刺面
P…被検体
N…穿刺針
L1、L2…焦点距離