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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151093
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】栓蓋
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20241017BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20241017BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20241017BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20241017BHJP
   F16J 15/3224 20160101ALI20241017BHJP
【FI】
E03C1/22 B
A47K1/14 F
F16J15/18 B
F16J15/18 A
F16J15/3204 101
F16J15/3224
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064226
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松村 秀幸
【テーマコード(参考)】
2D061
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
2D061DB01
2D061DB10
3J006AB05
3J006AE06
3J006AE22
3J006AE38
3J006CA01
3J043AA11
3J043BA01
3J043BA05
3J043CA01
3J043CA02
3J043CB13
3J043DA05
(57)【要約】
【課題】 蓋体の溝部に環状パッキンを取り付ける構成の栓蓋において、溝部に、環状パッキンの厚みに比べて上下方向の幅に余裕(遊び)を設けた場合でも、環状パッキンの取り付け位置を安定させることで、栓蓋の機能に不具合が生じることを防止できる栓蓋を提供する。
【解決手段】排水口を覆うことで閉口する栓蓋1を、全周に溝部22を備えた蓋体2と、前記溝部22に取り付けられ、前記排水口の周縁に当接することで前記排水口を閉口する、弾性を有する環状パッキン3とを備えて構成すると共に、前記溝部22は、前記溝部22に前記環状パッキン3を取り付けられた状態で、前記環状パッキン3が上下方向に位置ずれを生じうる上下幅を有すると共に、前記環状パッキン3の取り付け時に前記環状パッキン3を前記溝部22の所定の位置に案内するためのテーパーを、前記溝部22の奥側側面22aに備えて構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を覆うことで閉口する栓蓋であって、
前記栓蓋は、
全周に溝部を備えた蓋体と、
前記溝部に取り付けられ、前記排水口の周縁に当接することで前記排水口を閉口する、弾性を有する環状パッキンとを備え、
前記溝部は、前記溝部に前記環状パッキンを取り付けられた状態で、前記環状パッキンが上下方向に位置ずれを生じうる上下幅を有すると共に、
前記環状パッキンの取り付け時に前記環状パッキンを前記溝部の所定の位置に案内するためのテーパーを、前記溝部の奥側側面に備えたことを特徴とする栓蓋。
【請求項2】
前記環状パッキンの内側面の形状は、前記溝部の前記所定の位置の奥側側面での形状に合致することを特徴とする、請求項1に記載の栓蓋。
【請求項3】
前記環状パッキンの内側面の内径は、前記溝部の前記所定の位置の奥側側面の外径に対し、弾性変形していない状態では小径であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の栓蓋。
【請求項4】
前記溝部の奥側側面に備えたテーパーは、上方ほど小径となるテーパーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の栓蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体等に備えられた排水口を閉口する栓蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や浴槽、流し台などの排水機器には、使用した湯水を排水として下水側に処理するため、洗面ボウルや浴槽など、排水機器の水受けである槽体の底面に排水口を設け、この排水口に配管を接続して排水を下水側に排出するように構成している。
また、排水機器の槽体は、使用時に槽体内に湯水を溜める場合もあり、その際には排水口を蓋体で覆い、閉口することで槽体内に湯水を溜めることを可能としている。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、浴槽の排水口に用いられる栓蓋の、特に環状パッキンに関する発明であって、以下に記載する栓蓋と排水口とが記載されている。
【0004】
栓蓋は、以下に記載する蓋体と環状パッキンとから構成される。
蓋体は、略円盤形状にしてその中央下方に、後述する支持軸に挿入される軸部を備えると共に、略円盤形状の部分の下面に円筒部分を設け、この円筒部分の側面の全周に、外側面方向に開口した溝部を設けてなる。
環状パッキンは、ゴム等の弾性素材からなるリング状の部材で、溝部に取り付けられる断面長方形形状を成す基部と、基部の外側面の全周に亘って設けられた鍔状のリップ部とから構成される。
栓蓋が用いられる排水口は、槽体である浴槽の底面に設けられた開口であって、中央部分に遠隔操作により上下動する支持軸を備えてなる。支持軸の上端には、蓋体の軸部が取り付けられる凹部を備えてなる。
【0005】
特許文献1に記載の発明では、蓋体の溝部に環状パッキンの基部を取り付けることで、蓋体の下方側にリップ部が設けられた栓蓋として構成される。
また、特許文献1に記載の栓蓋では、蓋体の下面と環状パッキンのリップ部の上面との間には若干の隙間があり、リップ部が上向きに弾性変形可能な構成となっている。
上記のように構成した栓蓋の軸部を、支持軸の凹部に挿入することで、特許文献1に記載された、栓蓋と排水口との組み立てと施工が完了する。
【0006】
特許文献1に記載の栓蓋と排水口では、排水口の支持軸が上昇した状態では、栓蓋が排水口から離間して開口した状態となる。この状態では、槽体内の湯水が排水として排水口を通過し、排水口に接続された排水配管を介して下水側に排出される。
支持軸が降下すると、支持軸の降下に伴って栓蓋も降下し、蓋体が排水口を覆うと共に、排水口の周縁に環状パッキンのリップ部が当接する。
排水口の周縁にリップ部が当接する際には、当接箇所に多少の凹凸等が有っても、リップ部が弾性変形することで凹凸を吸収し、排水口の周縁の全周に亘って水密的な当接を行うことができる。このようにして栓蓋が排水口を完全に覆うことで、槽体の内部から排水口内に湯水が流入することが不可能となり、栓蓋により排水口が閉口される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-188699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
蓋体の溝部に環状パッキンを取り付ける作業を行う場合に、特許文献1に記載の栓蓋のように、溝部の縦方向の幅と、環状パッキンの基部の厚みがほぼ同一で、取り付けた時に上下方向に隙間が無いように各部材を設計すると、溝部に基部を挿入する際に、全く誤差の無い作業を行う必要があり、取り付け作業は極めて困難なものとなる。
そこで、環状パッキンの基部の厚みに比べて溝部の縦方向を若干幅広とし、上下方向に幅の余裕、いわゆる「遊び」を持たせることで、溝部に基部を挿入する際に、作業に多少の誤差が有っても溝部に基部を挿入可能とし、取り付け作業を容易に行うことができる方法が検討されている。
しかしながら、このように環状パッキンの取り付けのために、環状パッキンの基部の厚みより溝部の縦方向の幅を幅広とすると、新たに次のような問題が生じる。
【0009】
栓蓋に用いられる環状パッキンの基部の厚みは約3ミリメートル程度である。これに対して、取り付け作業を容易にするための遊びは約0.5ミリメートル程度必要なため、溝部の縦方向の幅は約3.5ミリメートル程度となる。
すると、環状パッキンはこの0.5ミリメートルの遊びの範囲で、縦方向に取り付け位置が変化する。そして、環状パッキンのような、水密のための部材の取り付け位置が、0.5ミリメートルの範囲で変化すると、水密的な部材の当接が困難となり、漏水などの不具合が生じる可能性がある。
【0010】
例えば、環状パッキンが溝部の下面に接する位置に取り付けられることで、当接が適正に行われるように設計されていた場合、環状パッキンが溝部の上面に接する位置に取り付けられると、排水口を閉口する際に、環状パッキンのリップ部と排水口の周縁との間に0.5ミリメートル程度の隙間が生じるなどして水密的な当接ができず、漏水を生じる恐れがある。
また、環状パッキンが溝部の上端に接する位置に取り付けられることで、当接が適正に行われるように設計されていた場合、環状パッキンが溝部の下面に接する位置に取り付けられると、栓蓋を支持する支持軸は、閉口時に設計より0.5ミリメートル高い位置で停止することになる。栓蓋の昇降機構は、支持軸が完全に降下しないと支持軸の動作が完了せず、次の動作に移行できなくなり、栓蓋の昇降が正しく動作しなくなる、等の不具合が生じる恐れがある。
【0011】
このように、従来の栓蓋では、蓋体の溝部に環状パッキンを取り付ける場合に、溝部に遊びを設けると環状パッキンの取り付け位置が変化してしまい、栓蓋の機能に不具合が生じる、という問題があった。
本発明は上記問題に鑑み発明されたものであって、蓋体の溝部に環状パッキンを取り付ける構成の栓蓋において、環状パッキンの上下方向の幅(厚み)に比べて溝部の上下方向の幅に余裕、即ち遊びを設けた場合に、環状パッキンの取り付け位置を安定させることで、栓蓋の機能に不具合が生じることを防止できる栓蓋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の発明は、排水口を覆うことで閉口する栓蓋であって、
前記栓蓋は、
全周に溝部を備えた蓋体と、
前記溝部に取り付けられ、前記排水口の周縁に当接することで前記排水口を閉口する、弾性を有する環状パッキンとを備え、
前記溝部は、前記溝部に前記環状パッキンを取り付けられた状態で、前記環状パッキンが上下方向に位置ずれを生じうる上下幅を有すると共に、
前記環状パッキンの取り付け時に前記環状パッキンを前記溝部の所定の位置に案内するためのテーパーを、前記溝部の奥側側面に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓋体の溝部に環状パッキンを取り付ける構成の栓蓋において、溝部に環状パッキンの取り付けのための遊びを設けた場合に、環状パッキンの溝部に対する上下方向の取り付け位置を安定させ、栓蓋の機能に不具合が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一の実施の形態の栓蓋の、(a)断面図、(b)部材構成を示す参考図、(c)図1の(a)のA部拡大図である。
図2】第一の実施の形態の栓蓋の、環状パッキンを溝部に取り付ける手順を示す参考図である。
図3】第一の実施の形態の栓蓋の、使用状態を示す断面図である。
図4】第一の実施の形態の栓蓋を採用した排水口の開口状態を示す要部の断面図である。
図5】第一の実施の形態の栓蓋を採用した排水口の閉口状態を示す要部の断面図である。
図6】第二の実施の形態の栓蓋の、(a)断面図、(b)部材構成を示す参考図である。
図7】第三の実施の形態の栓蓋の、(a)断面図、(b)図7の(a)のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の形態に係る栓蓋は、排水口を覆うことで閉口する栓蓋であって、
前記栓蓋は、
全周に溝部を備えた蓋体と、
前記溝部に取り付けられ、前記排水口の周縁に当接することで前記排水口を閉口する、弾性を有する環状パッキンとを備え、
前記溝部は、前記溝部に前記環状パッキンを取り付けられた状態で、前記環状パッキンが上下方向に位置ずれを生じうる上下幅を有すると共に、
前記環状パッキンの取り付け時に前記環状パッキンを前記溝部の所定の位置に案内するためのテーパーを、前記溝部の奥側側面に備えたことを特徴とする栓蓋である。
【0016】
本形態によれば、蓋体の溝部に環状パッキンを取り付ける構成の栓蓋において、溝部に上下幅の余裕を設けることで、環状パッキンの取り付けを容易とすることができる。また、溝部の奥側側面にテーパーを備えたことで、環状パッキンの取り付け時に、環状パッキンを所定の位置に案内する構成としたことで、溝部に対する環状パッキンの取り付け位置を安定させ、栓蓋の機能に不具合が生じることを防止することができる。
【0017】
本発明の第2の形態に係る栓蓋は、前記第1の形態の栓蓋において、前記環状パッキンの内側面の形状は、前記溝部の前記所定の位置の奥側側面での形状に合致することを特徴とする栓蓋である。
【0018】
本形態によれば、環状パッキンの内側面の形状と溝部の所定の位置の奥側側面での形状が合致することで、環状パッキンが衝撃を受けるなどしても、環状パッキンの位置ズレ等が起きにくい構成とすることができる。
【0019】
本発明の第3の形態に係る栓蓋は、前記第1の形態又は第2の形態の栓蓋において、前記環状パッキンの内側面の内径は、前記溝部の前記所定の位置の奥側側面の外径に対し、弾性変形していない状態では小径であることを特徴とする栓蓋である。
【0020】
本形態によれば、環状パッキンは常に縮径する方向に応力を作用させることとなる。このため、環状パッキンにはテーパーに沿って所定の位置を維持しようとする応力が働くこととなり、環状パッキンが所定の位置から外れる方向に衝撃を受けても、環状パッキンに位置ズレが生じ難い構成とすることができる。
【0021】
本発明の第4の形態に係る栓蓋は、前記第1の形態又は第2の形態の栓蓋において、前記溝部の奥側側面に備えたテーパーは、上方ほど小径となるテーパーであることを特徴とする栓蓋である。
【0022】
本形態によれば、環状パッキンがテーパーによって案内される方向と、栓蓋の使用時、つまり排水口の閉口時に環状パッキンが応力を受ける方向が上方で一致するため、環状パッキンの位置が栓蓋の使用時の応力によってズレを生じることが無い構成とすることができる。
【0023】
以下に、本発明の第一の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
尚、以下で説明する実施の形態は、包括的な、又は具体的な例を示すものであって、数値や形状、素材、構成要素とその配置・位置、接続形態、手順等は一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施の形態における各構成の内、独立項に記載されていない構成は、必要に応じて適宜変更可能な構成である。
【0024】
まず、第一の実施の形態の栓蓋1について、以下に記載する。
図1及び図2に図示した本実施の形態の栓蓋1は、洗面台の排水装置に使用される栓蓋1であって、使用時には、栓蓋1の他、後述する支持軸4、ガイド部材5と組み合わせて使用される。
【0025】
栓蓋1は、排水口61を覆うことで排水口61を閉口する部材であって、以下に記載する蓋体2と、蓋体2の溝部22に取り付けられる環状パッキン3から構成される。
【0026】
蓋体2は、略円盤形状を成す円盤部21と、円盤部21の下方であって、全周に亘って外側面方向に開口した環状の溝部22と、円盤部21の中央の下面に、後述する支持軸4を着脱自在に嵌合接続する接続穴23とを設けてなる。
また、本実施の形態の溝部22は上下方向に3.5ミリメートルの幅を備えてなる。
また、本実施の形態の溝部22は、上側の内側面、下側の内側面、奥側の内側面の、3面ある内側面の内、奥側の内側面(以下「溝部22の奥側側面22a」と記載)に、上方ほど小径となるテーパーを備えてなる。具体的には、溝部22の奥側側面22aの、上端部分での外径は27ミリメートル、上端から3ミリメートル下方での外径は28ミリメートルとなるようなテーパーを備え、このテーパーがそのままの角度で溝部22の下端まで延長されている。
【0027】
環状パッキン3は、ゴム等の弾性を有する素材によって構成されるリング状の部材であって、断面視において、中心軸側が傾斜した辺となる直角台形を成す基部31と、この基部31の外側面の全周に亘って設けられたリップ部32とから構成される。
基部31の上面及び下面は水平面を成し、その上下方向の厚み(幅)は3ミリメートルである。
また、環状パッキン3の内側面3aは、前述したように傾斜面を備えている。具体的には、環状パッキン3の内側面3aの、上端部分での外径は25ミリメートル、上端から3ミリメートル下方での外径は26ミリメートルとなるような、上方ほど小径となるテーパーを備えてなる。
【0028】
本実施の形態における栓蓋1では、環状パッキン3を溝部22に取り付ける作業の際、取り付け作業を容易にするため、上記のように溝部22の上下方向の幅(上下幅)を、環状パッキン3の上下方向の幅(厚み)より幅広とし、溝部22に上下方向の幅の余裕、即ち遊びを備え、この遊びにより、溝部22に基部31を挿入することが容易になるように構成されてなる。
一方、この遊びにより、溝部22に対する環状パッキン3の縦方向の取り付け位置が変化すると、閉口時に漏水を生じるなど、栓蓋1に不具合の生じる恐れがあることから、本実施の形態の栓蓋1では、環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置を、環状パッキン3の「所定の位置」とし、この所定の位置に環状パッキン3が位置する状態で栓蓋1が正しく機能するように、栓蓋1や排水口本体6等の各部材が設計されている。
そして、環状パッキン3を取り付けた時に、環状パッキンが溝部22の「所定の位置」に位置することを目的として、以下に説明するように、取り付け時にテーパーを利用して環状パッキン3を案内する構造としている。
【0029】
尚、環状パッキン3を「案内する方向」はテーパーに沿う方向であるが、本実施の形態では環状パッキン3の弾性を利用することで、テーパーに沿う方向ではあっても、重力に従う下方ではなく、環状パッキン3が縮径することで、テーパーに沿って環状パッキン3が移動する上方向を「案内する方向」としている。このように、案内する方向は部材の形状や性質、構成の組み合わせによって重力などに関係なく、自在に変更することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、テーパーと環状パッキン3の弾性によって、環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置に案内される構成であることから、特に目印などなくとも、「環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置」が「所定の位置」であると判断することができる。このように、テーパーによって案内される箇所が「所定の位置」である。
【0031】
段落0026及び段落0027に記載したように、本実施の形態では、溝部22の奥側側面22aと、環状パッキン3の内側面3aは、共に上方ほど小径となるテーパーを備えてなる。
溝部22の奥側側面22aのテーパーが水平面と成す角度(図1の(b)中にαで示した角度)と、環状パッキン3の内側面3aのテーパーが水平面と成す角度(図1の(b)中にβで示した角度)は、共に断面視高さ方向に上端から下方に3ミリメートル移動すると、径方向に直径で1ミリメートル拡径するような角度である。即ち、溝部22の奥側側面22aと、環状パッキン3の内側面3aのテーパーは、同じ角度のテーパーである。
【0032】
本実施の形態の栓蓋1を組み立てる場合、まず図2の(a)に示したように、溝部22の一部に環状パッキン3を嵌め、更に図2の(b)に示したように、溝部22に収納されていない残りの環状パッキン3を強く引く。すると、弾性によって環状パッキン3を一時的に拡径させることができるので、蓋体2の溝部22に、環状パッキン3の基部31の全周を挿入して取り付けることで、栓蓋1を組み立てることができる。
【0033】
この取り付け手順の際に、図2の(a)に示したように、溝部22の一部に環状パッキン3を嵌めた状態では、環状パッキン3が溝部22の下方など、所定の位置に無い状態であったとしても、環状パッキン3の全体を溝部22に挿入するため環状パッキン3の溝部22に挿入されてない部分を強く引くと、溝部22内に配置されていた環状パッキン3がテーパーに沿って上昇し、所定の位置に移動する。
その後、環状パッキン3の残りの部分を挿入すると、環状パッキン3の挿入済みの部分が所定の位置にあることから、環状パッキン3の残りの部分も自然に溝部22の所定の位置に案内され、配置される。
【0034】
また、本実施の形態において、弾性変形していない状態(以下「非変形時」)での環状パッキン3の基部31の上端の内径が25ミリメートルであるのに対し、溝部22の上端での奥側側面22aの外径は27ミリメートルであり、上端位置では、非変形時の環状パッキン3の基部31の内径のほうが溝部22の奥側側面22aの外径より小径となるように構成されている。
また、前述のように、溝部22の奥側側面22aと、環状パッキン3の内側面3aは、同じ角度のテーパーを備えるため、上端において非変形時の環状パッキン3の基部31の内径のほうが小径であれば、溝部22のどの位置に環状パッキン3が配置されたとしても、非変形時の環状パッキン3の基部31の内径のほうが、溝部22の奥側側面22aの外径よりも小径となる。
このため、溝部22に環状パッキン3を取り付ける際、環状パッキン3は弾性変形し環状パッキン3の内側面3aが拡径されるため、弾性により常に縮径する方向に応力を作用させる。
この縮径する応力によって、環状パッキン3は、溝部22の奥側側面22aのテーパー上を、テーパーの縮径する方向、即ち所定の位置の方向に案内される。
【0035】
このように、本実施の形態では、溝部22に環状パッキン3を取り付ける際に、当初溝部22のどの位置に環状パッキン3が挿入されても、環状パッキン3の弾性により環状パッキン3に縮径する方向に応力が作用する構成とすると共に、溝部22の奥側側面22aに、上方ほど小径となるテーパーを備えることで、組み立て完了時には、環状パッキン3を、溝部22の所定の位置である環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置に案内する構造としている。
【0036】
上記したような手順により組み立てられた栓蓋1は、以下に記載した支持軸4と、ヘアキャッチャーと兼用したガイド部材5とを組み合わせて、図3に示した状態とした後、後述する排水装置の排水口61に配置される。
【0037】
支持軸4は、図3に示したように棒状の部材であって、その先端は、蓋体2の接続穴23に着脱自在に嵌合接続できるように構成されている。
【0038】
ガイド部材5は、図3に示したように支持軸4の周囲に配置されるリング状の部材であって、排水口61内に栓蓋1の支持軸4が配置されたとき、外側面が排水口本体6の内側面に当接し、支持軸4が排水口本体6に対して傾斜することが無いようにガイドする部材である。
【0039】
次に、上記した栓蓋1が用いられる洗面台と、洗面台に施工される排水配管について説明する。
【0040】
まず、洗面台について説明する。
洗面台は、以下に記載する洗面ボウルWと、洗面ボウルWを載置する図示しないキャビネット部より構成される。また、洗面ボウルWには、後述する排水装置が取り付けられる。第一の実施の形態の栓蓋1は、排水装置の部材の一つである。
【0041】
洗面ボウルWは、上方が開口した箱体であって、その底面に、排水装置の部材である排水口本体6を接続することで、排水口61を形成する。
【0042】
上記洗面ボウルWに取り付けられる、第一の実施の形態の排水装置は、上記した栓蓋1と、以下に記載する排水口本体6を有する排水配管より構成されてなる。
【0043】
排水口本体6は、円筒形状を成す部材であって、その内部に排水が流入する排水口61を形成してなり、上記した洗面ボウルWの底面に取り付けられる。
排水口本体6の下方には、排水口61からの排水を処理する排水配管が接続されてなる。また、排水口61の下方には、操作部(図示せず)への操作によって、栓蓋1に接続した支持軸4の下端を押し上げ、栓蓋1を昇降させる昇降機構(図示せず)を備えてなる。
【0044】
本実施の形態の栓蓋1を使用する場合、図1に示したように、栓蓋1に支持軸4とガイド部材5を接続した上で、洗面ボウルWの排水装置の、排水口本体6内部に支持軸4を挿通し、排水口61の上方に栓蓋1を配置した状態とする。この時、ガイド部材5の外側面が排水口本体6の内側面に当接することで、支持軸4は昇降機構の直上であってその軸が鉛直になるように配置される。
【0045】
以下に、本実施の形態の栓蓋1を採用した排水装置の使用方法を説明する。
まず、操作部に操作を行い、昇降機構により栓蓋1の支持軸4が押し上げられ、図4に示したような、栓蓋1が排水口61から離間して排水口61が開口した状態とする。
この状態において、洗面台の使用により洗面ボウルW内に湯水が生じると、湯水は排水として排水口61内に流入し、排水配管を介して下水などに排出される。
【0046】
次に、操作部に操作を行い、昇降機構により栓蓋1の支持軸4が降下し、図5に示したような、栓蓋1が降下した状態とする。
この状態では、栓蓋1の蓋体2部分が排水口61の上方を覆うと共に、環状パッキン3のリップ部32が排水口61の周縁に水密的に当接する。尚、図1の(c)にあるように、リップ部32と、リップ部32の上方にある円盤部21との間には隙間があり、排水口61の周縁に凹凸があったとしても、リップ部32が凹凸の部分で上向きに弾性変形することで、排水口61の周縁に水密的に当接することができる。
これにより、洗面ボウルW内から排水口61内に向かう流路が栓蓋1によって閉ざされ、排水口61が栓蓋1によって閉口される。
洗面ボウルW内に湯水が生じた場合、湯水はそのまま洗面ボウルW内に貯留される。
この状態から、再び操作部に操作を行い、排水口61を図4に示した開口状態とすれば、洗面ボウルW内の湯水は排水口61から排出される。
以降、排水口61から離間した位置にある操作部への操作で、遠隔操作により排水口61を開閉することができる。
【0047】
上記の動作の内、排水口61が開口した図4の状態から閉口した図5の状態に移行する際に、栓蓋1の環状パッキン3のリップ部32が排水口61の周縁に当接することで、環状パッキン3全体が、下方から上方に向かう衝撃を受ける場合があるが、本実施の形態における、環状パッキン3の所定の位置は、環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置であるため、衝撃を受けてもこれ以上環状パッキン3が溝部22の上方に移動することはなく、環状パッキン3が衝撃により位置ズレすることが無い。
【0048】
また、排水口61が閉口した図5の状態から開口した図4の状態に移行する際に、栓蓋1の環状パッキン3のリップ部32が、水圧や水流により上方から下方に向かう応力を受けることで、環状パッキン3全体が、上方から下方に向かう衝撃を受ける場合がある。しかし、環状パッキン3の基部31は弾性変形によって縮径する方向への応力を生じており、この縮径の応力はテーパーに沿って溝部22の上方向に向かう応力に変換されている。このため、リップ部32が上方から下方に向かう応力を受けても、環状パッキン3に作用している、溝部22の上方に向かう応力によって、環状パッキン3が下方に移動することを防止することができる。
【0049】
本発明の実施の形態は以上であるが、本発明の栓蓋は発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。
例えば、第一の実施の形態では、栓蓋1は洗面台の排水口61を閉口する栓蓋1であるが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、流し台や浴槽の排水口61を閉口する栓蓋1としても良い。
【0050】
また、第一の実施の形態では、栓蓋1は遠隔操作により排水口61を開閉することができる排水装置の栓蓋1であるが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、使用者が直接栓蓋1を把持して排水口61に取り付け、閉口するような構成の栓蓋1としても良い。
【0051】
また、第一の実施の形態では、所定の位置を、環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置とし、この所定の位置に環状パッキン3を案内するようにテーパーを設けているが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、所定の位置を、環状パッキン3が溝部22の下面に接する位とし、この所定の位置に環状パッキン3を案内するように上方から下方に向かう程縮径するテーパーを設けて構成しても良い。但し、このような場合は、段落0047に記載した効果が失われるため、所定の位置を、環状パッキン3が溝部22の上面に接する位置としたほうが好適である。
【0052】
また、第一の実施の形態では、溝部22の所定の位置を含む溝部22の奥側側面22aと、環状パッキン3の内側面3aは同じ角度のテーパーであり同一形状であったが、同じ方向を向いたテーパーであれば、多少の角度の違い、例えば角度にして5度前後の違い等があっても、環状パッキン3を案内する機能を有していれば支障なく本発明を実施することができる。
【0053】
また、第一の実施の形態では、溝部22の所定の位置を含む溝部22の奥側側面22aと、環状パッキン3の内側面3aは共にテーパーを設けているが、図6に示した第二の実施の形態のように、溝部22の奥側側面22aにのみテーパーを設け、環状パッキン3の内側面3aは、断面視円形等、テーパーを有さないが、テーパーに沿って環状パッキン3を案内可能な形状とする構成としても良い。
【0054】
また、第一の実施の形態では、所定の位置を含む溝部22の奥側側面22aと、環状パッキン3の内側面3aは同じ角度のテーパーであり、同一形状であったが、図7に示した第三の実施の形態のように、溝部22上の、所定の位置となる部分の奥側側面22aのテーパーの角度を、それ以外の奥側側面22aのテーパーの角度に対して変化させるような構成としても良い。
第三の実施の形態では、所定の位置に配置された状態での環状パッキン3の内側面3aが触れる溝部22の奥側側面を、環状パッキン3の内側面3aと同じ角度を成す第一の奥側側面22bとし、第一の奥側側面22bよりも下方の溝部22の奥側側面を、第一の奥側側面22bよりも拡径の割合が大きくなる第二の奥側側面22cとして構成してなり、環状パッキン3の取り付け時の案内の機能は備えたまま、取付完了後に環状パッキン3が衝撃などを受けても、環状パッキン3の下端が、第一の奥側側面22bと第二の奥側側面22の継ぎ目となる角に衝突するため、環状パッキン3の位置ずれが起きにくい形状としている。
【符号の説明】
【0055】
1 栓蓋
2 蓋体
21 円盤部
22 溝部
22a 溝部の奥側側面
22b 第一の奥側側面
22c 第二の奥側側面
23 接続穴
3 環状パッキン
3a 環状パッキンの内側面
31 基部
32 リップ部
4 支持軸
5 ガイド部材
6 排水口本体
61 排水口
W 洗面ボウル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7