(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151096
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】管更生方法及び該方法に用いる帯状部材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20241017BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064231
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 将司
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ15
4F211SJ16
4F211SJ21
4F211SJ26
4F211SP04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】螺旋管状の更生管を対象管の内壁に張り付くようにライニング可能な管更生方法を提供する。
【解決手段】管径方向へ強く拘束される一方、螺旋巻回方向へ緩く拘束されるように嵌合可能な緩拘束嵌合部13,14が、幅方向の両縁に対をなすように形成された帯状部材10を更生対象管1の内径より小径の螺旋状に巻回して一周違いの対向する緩拘束嵌合部13,14どうしを製管機20によって凹凸嵌合させることによって、更生管3を前記内径より小径に製管する。更生管3の管軸方向の第1側の端部3aを回り止めしたうえで、帯状部材10の供給及び製管によって、更生管3における凹凸嵌合された緩拘束嵌合部13,14どうしを螺旋巻回方向へ相対摺動させ、更生管3における製管機の直近から第1側へ向かって周長が拡張されたコーン部3cを形成し、内壁1aに張り付かせる。張り付きの開始後、製管機20を管軸方向の第1側とは反対の第2側へ移動させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
更生対象管の内壁に螺旋管状の更生管をライニングする管更生方法であって、
管径方向へ強く拘束される一方、螺旋巻回方向へ緩く拘束されるように互いに嵌合可能な緩拘束嵌合部が、幅方向の両縁に対をなすように形成された帯状部材を用意し、
前記更生対象管内に配置した製管機に前記帯状部材を供給する工程と、
前記帯状部材を前記更生対象管の内径より小径の螺旋状に巻回して一周違いの対向する緩拘束嵌合部どうしを前記製管機によって凹凸嵌合させることによって、前記更生管を前記内径より小径に製管する工程と、
前記更生管の管軸方向の第1側の端部を回り止めする工程と、
前記供給及び前記製管によって、前記更生管における前記凹凸嵌合された緩拘束嵌合部どうしを前記螺旋巻回方向へ相対摺動させる工程と、
前記相対摺動によって、前記更生管における前記製管機の直近から前記第1側へ向かって周長が拡張されたコーン部を形成する工程と、
前記拡張によって、前記更生管における前記コーン部の大径側端部から前記第1側の端部までの部分を前記内壁に張り付かせる工程と、
前記張り付きの開始後、前記製管機を前記管軸方向の第1側とは反対の第2側へ移動させる工程と、
を実行することを特徴とする管更生方法。
【請求項2】
前記製管機として、底部に移動手段が設けられた可動製管機を用意し、
前記可動製管機によって製管された更生管を前記可動製管機から前記第1側へ押し出し、
前記張り付き開始前は、前記移動手段の作動が阻止され、
前記張り付き開始後、前記移動手段の作動によって、前記可動製管機の前記第2側への移動がなされる、請求項1に記載の管更生方法。
【請求項3】
前記製管機として、前記製管に伴って前記螺旋巻回方向の推進力が加えられる自走式製管機を用意し、
前記移動工程では、前記自走式製管機に対する前記更生管の回転変位を許容しながら前記自走式製管機を前記推進力に抗して押えることによって、前記推進力の一部を前記コーン部の拡張力に変換させ、前記推進力の他の一部を前記自走式製管機の前記第2側への移動力に変換させる、請求項1に記載の管更生方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の管更生方法に用いられる帯状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の老朽化した下水道管等の更生対象管を更生する方法及び該方法に用いる帯状部材に関し、特に、更生対象管の内壁に螺旋管状の更生管をライニングする管更生方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
更生対象管として例えば老朽化した下水道管等の既設管の内壁に螺旋管状の更生管をライニングして、既設管を更生する方法は公知である。螺旋管状の更生管は、合成樹脂製の帯状部材(プロファイル)によって構成されている。帯状部材の幅方向の両縁には、雌雄の嵌合部が形成されている。製管機によって、帯状部材が螺旋状に巻回されて隣接する雌雄の嵌合部どうしが凹凸嵌合されることによって、螺旋管状の更生管が製管される(特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献1には、元押し式製管機を用いた拡張製管(エキスパンダー製管)工法が開示されている。発進人孔の底部に設置された元押し式製管機に帯状部材が供給されて更生管に製管される。このとき、更生管は、既設管の内径より小径である。製管の際、雌雄の嵌合部どうしの間に切断用ワイヤが挟み付けられる。製管された更生管は既設管内へ押し出される。更生管の押し出し方向の先端部が、到達人孔に達したら、該先端部を回り止めしたうえで、切断用ワイヤを引き取って、雄嵌合部の一部を切断する。これによって、雌雄の嵌合部どうしの拘束力が弱化される。切断用ワイヤの引き取りと併行して、元押し式製管機によって更に製管を行なう。これによって、雌雄の嵌合部どうしが螺旋巻回方向へ相対スライドされ、更生管の周長が拡張されて既設管の内壁に張り付けられる。
【0004】
特許文献2の更生方法においては、製管機として、螺旋管状の更生管を製管しながら螺旋巻回方向へ推進される自走式製管機が用いられている。自走式製管機には、更生管の管端部にスライド可能に係止される複数の管端ガイドが設けられている。1の管端ガイドにはブレーキ機構が設けられている。ブレーキ機構によって更生管との間に摩擦力を作用させる。これによって、自走式製管機の推進量が自走式製管機への帯状部材の供給量を下回り、更生管が拡径製管される。拡径によって、更生管を既設管の内壁に張り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-115749号公報
【特許文献2】特開2021-169164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲特許文献1等の拡張製管においては、切断用ワイヤを雌雄の嵌合部どうし間に挟み付ける操作、及び該切断用ワイヤを引き取って雄嵌合部の一部を切断する操作が必要であった。
一方、前掲特許文献2等のブレーキ機構を有する自走式製管機による製管においては、例えば、油分を含む下水が流れている状態で製管する場合等、ブレーキが効きにくく拡径されにくいことがある。このため、拡径していることを確認しながら製管する必要があり、拡径の状況に応じてブレーキの調整が必要である。
本発明は、かかる事情に鑑み、切断用ワイヤを用いなくても、かつブレーキの調整を行なわなくても、螺旋管状の更生管を更生対象管の内壁に張り付け可能な製管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明方法は、更生対象管の内壁に螺旋管状の更生管をライニングする管更生方法であって、
管径方向へ強く拘束される一方、螺旋巻回方向へ緩く拘束されるように互いに嵌合可能な緩拘束嵌合部が、幅方向の両縁に対をなすように形成された帯状部材を用意し、
前記更生対象管内に配置した製管機に前記帯状部材を供給する工程と、
前記帯状部材を前記更生対象管の内径より小径の螺旋状に巻回して一周違いの対向する緩拘束嵌合部どうしを前記製管機によって凹凸嵌合させることによって、前記更生管を前記内径より小径に製管する工程と、
前記更生管の管軸方向の第1側の端部を回り止めする工程と、
前記供給及び前記製管によって、前記更生管における前記凹凸嵌合された緩拘束嵌合部どうしを前記螺旋巻回方向へ相対摺動させる工程と、
前記相対摺動によって、前記更生管における前記製管機の直近から前記第1側へ向かって周長が拡張されたコーン部を形成する工程と、
前記拡張によって、前記更生管における前記コーン部の大径側端部から前記第1側の端部までの部分を前記内壁に張り付かせる工程と、
前記張り付きの開始後、前記製管機を前記管軸方向の第1側とは反対の第2側へ移動させる工程と、
を実行することを特徴とする。
【0008】
当該管更生方法によれば、前記帯状部材から製管された更生管の対をなす緩拘束嵌合部どうしは螺旋巻回方向へ相対摺動である。したがって、製管時、対向する緩拘束嵌合部どうしの間に切断用ワイヤを挟む必要が無い。回り止め工程後に切断用ワイヤを引き取って緩拘束嵌合部の一部を切断する必要もない。回り止め工程後の帯状部材の供給及び製管によって、更生管の周長を拡張(拡径)させてコーン部を形成でき、さらには更生管を更生対象管の内壁に張り付けることができる。
更生管の拡径のために製管機と更生管との摩擦によるブレーキを掛ける必要が無い。したがって、例えば油成分を含む下水が流れている状況下でも、更生管の拡径及び張り付けを支障なく行なうことができる。
張り付き開始後の移動工程によって、コーン部を第2側へ移行させ、張り付き部分(大径部)を第2側へ伸長させることができる。これによって、更生対象管ないしは更生対象領域の全域にわたって、更生管を張り付けるようにライニングできる。
【0009】
好ましくは、前記製管機として、底部に移動手段が設けられた可動製管機を用意し、
前記可動製管機によって製管された更生管を前記可動製管機から前記第1側へ押し出し、
前記張り付き開始前は、前記移動手段の作動が阻止され、
前記張り付き開始後、前記移動手段の作動によって、前記可動製管機の前記第2側への移動がなされる。
前記可動製管機による押し出しによって、前記製管工程を行なうことができる。前記張り付き開始前は、移動手段が作動されないようにすることで可動製管機を位置固定しておく。これによって、コーン部の形成開始及び張り付き開始を確実に行なうことができる。その後、移動手段で可動製管機を第2側へ移動させることで、コーン部を第2側へ移行させ、張り付き部分(大径部)を第2側へ伸長させることができる。
移動手段は、更生対象管の底面上を転動されるコロ等の転動体を含んでいてもよく、更生対象管の底面上をスライドされる摺動体を含んでいてもよい。
【0010】
好ましくは、前記製管機として、前記製管に伴って前記螺旋巻回方向の推進力が加えられる自走式製管機を用意し、
前記移動工程では、前記自走式製管機に対する前記更生管の回転変位を許容しながら前記自走式製管機を前記推進力に抗して押えることによって、前記推進力の一部を前記コーン部の拡張力に変換させ、前記推進力の他の一部を前記自走式製管機の前記第2側への移動力に変換させる。
例えば、人力又は推進阻止治具を使って自走式製管機の装置フレームに押さえ力を付与することで、自走式製管機の推進力に抗する。押さえ力は、更生管の回転変位(捩じれ)を許容するように付与される。すなわち、ブレーキ機構によって自走式製管機と更生管との間に摩擦抵抗(ブレーキ力)を加えるものではない。したがって、ブレーキを調節する必要は無い。切断用ワイヤも必要としない。
押さえ力の管周方向分力及び管軸方向分力等を調整することで、コーン部を拡張させるとともに、自走式製管機を第2側へ移動させることができる。これによって、更生管の張り付き部分(大径部)を第2側へ伸長させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記管更生方法に用いられる帯状部材を特徴とする。当該帯状部材は、管径方向へ強く拘束される一方、螺旋巻回方向へ緩く拘束されるように互いに嵌合可能な緩拘束嵌合部が、幅方向の両縁に対をなすように形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切断用ワイヤを用いなくても、かつブレーキの調整を行なわなくても、螺旋管状の更生管を更生対象管の内壁に張り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る更生対象管の更生施工を、更生管の製管工程の開始時で示す断面図である。
【
図2】
図2は、前記更生施工を、回り止め工程で示す断面図である。
【
図3】
図3は、前記更生管を構成する帯状部材の断面図である。
【
図6】
図6は、前記更生施工を、コーン部の形成開始及び張り付け開始段階で示す断面図である。
【
図7】
図7は、前記更生施工を、張り付け部分の伸長及び可動製管機の移動工程で示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る更生対象管の更生施工を、更生管の製管工程の開始時で示す断面図である。
【
図9】
図9は、前記第2実施形態で用いられる自走式製管機の概略構成を示す模式図である。
【
図10】
図10は、前記第2実施形態の更生施工を、コーン部の形成開始及び張り付け開始段階で示す断面図である。
【
図11】
図11は、前記第2実施形態の更生施工を、張り付け部分の伸長及び自走式製管機の移動工程で示す断面図である。
【
図12】
図12は、前記第2実施形態の前記移動工程における、自走式製管機に働く推進力及び押さえ力、並びにそれらの分力を示す解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図7)>
図1に示すように、更生対象管1は、例えば地中に埋設された既設の下水道管である。なお、本発明の更生対象管は、下水道管に限らず、上水道管、農業用水管、ガス管、水力発電導水管、トンネルなどでもよい。老朽化した更生対象管1の内壁1cに更生管3がライニングされることによって、更生対象管1が更生される。
【0015】
図2に示すように、更生管3は、帯状部材10からなる螺旋管である。帯状部材10の材質は、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂である。
図3に示すように、帯状部材10は、一定の断面形状を有する長尺の帯状に形成されている。帯状部材10の幅方向の両縁には、雌雄の緩拘束嵌合部13,14が対をなすように形成されている。
【0016】
詳しくは、帯状部材10の一方(
図3において右)の縁には、内周側(
図3において上側)へ開口する凹溝状(雌)の緩拘束嵌合部13が形成されている。他方(
図3において左)の縁には、外周側(
図3において下側)へ突出する凸条状(雄)の緩拘束嵌合部14が形成されている。帯状部材10の幅方向の中間部には、中空の四角形断面の複数条のリブ15が外周側へ突出するように形成されている。帯状部材10の内周側面11は、平滑面になっている。
【0017】
図4に示すように、更生管3における帯状部材10は、螺旋状に巻回されて、一周違いの隣接する緩拘束嵌合部13,14どうしが凹凸嵌合されている。凹凸嵌合された緩拘束嵌合部13,14どうしは、更生管3の管径方向(
図4において上下)へは互いに外れないよう強く拘束される一方、更生管3の螺旋巻回方向(
図4において紙面直交方向)へは緩く拘束されており、螺旋巻回方向へ互いに相対摺動可能である。
なお、帯状部材10は、螺旋巻回方向へ緩く拘束されるように嵌合される緩拘束嵌合部の対が幅方向の両縁に形成されていればよく、帯状部材10の断面形状は、
図3に図示するものに限らず適宜改変できる。
【0018】
好ましくは、
図4に示すように、更生管3における緩拘束嵌合部13,14どうしの間には、遅乾性の水密材19が設けられている。遅乾性水密材19は、塗布から数時間~数日かけて硬化され、緩拘束嵌合部13,14どうしを摺動不能に接着する。したがって、少なくとも更生施工期間中の緩拘束嵌合部13,14どうしは、螺旋巻回方向へ相対摺動可能である。
遅乾性水密材19としては、例えば、積水フーラー株式会社製「セキスイスーパーシーラー21」が挙げられる。
【0019】
図1に示すように、更生管3は、可動製管機20によって製管される。可動製管機20は、更生対象管1内に管軸方向(
図1において左右)へ移動可能に配置されている。
【0020】
図5に示すように、可動製管機20は、環状の外周規制体21と、ピンチ部23と、移動手段27を備えている。外周規制体21は、螺旋に捩じれた環状フレーム24と、複数のガイドローラ25を含む。環状フレーム24の外径は、更生対象管1の内径より小さい。複数のガイドローラ25が、環状フレーム24の周方向に間隔を置いて回転自在に設けられている。
【0021】
図5に示すように、環状フレーム24のサイドボックス26には、ピンチ部23が設けられている。ピンチ部23は、対をなす内外のピンチローラ23a,23bと、これらピンチローラ23a,23bを回転駆動させる油圧モータ(図示せず)を含む。インナーピンチローラ23aが、外周規制体21より径方向内側に配置されている。アウターピンチローラ23bは、外周規制体21とほぼ同じ径方向位置に配置されている。図示は省略するが、さらに、サイドボックス26には、帯状部材10を受け入れてピンチローラ23a,23bどうしの間へ導入する導入ガイドが設けられていてもよい。
【0022】
図1及び
図5に示すように、可動製管機20の底部には、移動手段27が設けられている。
図5に示すように、移動手段27は、転動体27aと、移動台27bと、ロック機構27cを含む。移動台27b上に外周規制体21が載せられて支持されている。移動体27bの底部コーナーにコロ等の転動体27aが設けられている。転動体27aが、更生対象管1の内壁1cの底部に接している。転動体27aの転動によって、可動製管機20が移動可能である。転動体27aにロック機構27cが付設されている。詳細な図示は省略するが、ロック機構27cは、転動体27aの回転(転動)を許容するロック解除位置と、転動体27aの回転(転動)を禁止するロック位置との間で操作される。
【0023】
更生管3は次のようにして製管され、ひいては更生対象管1が更生される。
図1に示すように、更生施工開始時の可動製管機20は、更生対象管1の内部における、第1側管口1aの近く、ないしは第1側管口1aから一定距離離れた所定位置に配置される。更生施工開始段階では、ロック機構27cのロックによって、移動手段27の作動が阻止され、可動製管機20が前記所定位置に固定される。
更生対象管1の第2側管口1bに連なる第2側人孔4Bの底部には、巻き癖付与機5が設置される。
【0024】
<製管工程>
地上のドラム(図示せず)から帯状部材10が繰り出されて第2側人孔4Bに垂らされて巻き癖付与機5に導入される。巻き癖付与機5によって帯状部材10に巻き癖(曲率)が付与される。これによって、帯状部材10が弦巻螺旋状にされる。
【0025】
該帯状部材10が更生対象管1の内部を通って、可動製管機20に供給される。
図5に示すように、可動製管機20において、帯状部材10が、外周規制体21の内周に沿って、更生対象管1の内径より小径の螺旋状に巻回されるとともに、ピンチ部23によって、帯状部材10の一周違いの対向する緩拘束嵌合部13,14どうしが挟み付けられて凹凸嵌合される(
図4参照)。これによって、帯状部材10が更生管3に製管される。製管時の更生管3は、更生対象管1の内径より小径である。
【0026】
なお、雌嵌合部13の凹溝には、凹凸嵌合前に遅乾性の水密材19が充填される。凹凸嵌合によって、遅乾性水密材19が緩拘束嵌合部13,14間に挟まれる。遅乾性水密材19によって、緩拘束嵌合部13,14どうしの間の隙間が液密にシールされる。
一方、緩拘束嵌合部13,14どうしの間に切断用ワイヤ(特許文献1参照)を挟み付けておく必要は無い。したがって、帯状部材10の供給及び製管と併行して、切断用ワイヤを可動製管機20へ供給する必要が無い。
【0027】
図1の矢印a1にて示すように、製管された更生管3は、ピンチ部23(
図5)の回転駆動によって回転力を与えられ、ガイドローラ25によって螺旋巻回方向へ案内されながら、外周規制体21から第1側管口1aへ向けて押し出される。このとき、回転阻止された転動体27aと更生対象管1の底部との摩擦によって、押し出しの反力が得られる。
【0028】
<回り止め工程>
図2に示すように、更生管3の管軸方向の第1側(同図において左側)の端部3aが、第1側人孔4A内へ突き出たとき、製管を一旦停止する。そのうえで、第1側の端部3aを回り止めする。回り止め手段として、例えば棒材6を用いる。
第1側の端部3aには、ホルソー等の削孔工具を用いて、回り止め用孔3hが削孔される。好ましくは、回り止め用孔3hは、緩拘束嵌合部13,14を避けた位置に配置される。回り止め用孔3hに棒材6が挿し込まれる。該棒材6を保持することで、第1側の端部3aが回り止めされる。
【0029】
<相対摺動工程>
その後、帯状部材10の供給工程及び製管工程を再開する。これによって、帯状部材10における新たに製管された部分が更生管3に送り込まれることで、
図6の矢印a2にて示すように、更生管3が捩じられ、更生管3における凹凸嵌合された緩拘束嵌合部13,14どうしが螺旋巻回方向へ相対摺動される。つまり、緩拘束嵌合部13,14どうしは元々螺旋巻回方向へ緩く拘束されるように嵌合されているから、切断用ワイヤの引き取り操作によって(特許文献1参照)、嵌合部13,14どうしの螺旋巻回方向の拘束力を弱める必要が無い。このとき、遅硬性水密材19は、未だ硬化しておらず、緩拘束嵌合部13,14どうしをスムーズに相対摺動させるための滑材として機能する。
【0030】
<コーン部形成工程>
図6において二点鎖線にて示すように、相対摺動によって、更生管3の周長が拡張され、可動製管機20の直近から第1側(
図6において左側)へ向かって拡径するコーン部3cが形成される。
<張り付け工程>
図6において実線にて示すように、拡径(拡張)が進むことによって、更生管3におけるコーン部3cの大径側端部から第1側の端部3aまでの部分が、更生対象管1の内壁1cに張り付くことによって一定径の大径部3bとなる。これに伴って、コーン部3cの軸長が縮んで傾斜角度が大きくなる。
【0031】
<ロック解除工程>
前述したように、更生管3の張り付き開始前は、ロック機構27c(
図5)をロック位置にして、移動手段27の作動を阻止しておく。そして、更生管3の張り付き開始後、好ましくはコーン部3cの軸長(コーン長)が所定の大きさまで縮んだとき、ロック機構27cをロック解除位置にする。これによって、移動手段27の作動が許容され、転動体27aが転動可能になり、可動製管機20が移動可能になる。
【0032】
<移動工程>
図7に示すように、可動製管機20が移動可能な状態で、更に、帯状部材10の供給工程及び製管工程を実行する。これによって、帯状部材10における新たに製管された部分3dが、可動製管機20から第1側(
図7において左側)へ押し出され、更生管3のコーン部3cの新たな小径側端部となる(更なるコーン部形成工程)。押し出しに伴って、転動体27aが転動(作動)され、矢印a3にて示すように、可動製管機20が管軸方向の第1側とは反対の第2側(
図7において右側)へ移動される。したがって、コーン部3cが第2側へ移行される。好ましくは、コーン部3cの軸長(コーン長)は一定に保たれる。逆に言うと、コーン長が一定に保たれるよう、可動製管機20を第2側(
図7において右側)へ移動させる。
【0033】
新たに製管された部分3dを可動製管機20から押し出すときの反力の一部又は全部を使って、可動製管機20を第2側へ移動させてもよい。
可動製管機20を人力で押して第2側へ移動させてもよい。
移動手段27がモータ等の自走動力源を含んでいてもよい。自走動力源の動力によって、可動製管機20を第2側へ自走(移動)させてもよい。
【0034】
また、新たに製管された部分3dがコーン部3cに押し出されることによって、
図7の矢印a4にて示すように、コーン部3cが拡張方向へ捩じられ、コーン部3cにおける緩拘束嵌合部13,14どうしが螺旋巻回方向へ相対摺動される(更なる相対摺動工程)。前述した通り、緩拘束嵌合部13,14どうしは元々螺旋巻回方向へ相対摺動可能に嵌合されているから、切断用ワイヤの引き取り操作(特許文献1参照)は不要である。
【0035】
コーン部3cが拡張方向へ捩じられることによって、コーン部3cの大径側の部分が、拡径されて更生対象管1の内壁1cに張り付き、大径部3bに組み込まれる(更なる張り付け工程)。これによって、大径部3bが第2側へ伸長される。このようにして、更生管3の張付製管が進む。
【0036】
更生管3の拡径及び張り付きのために、ブレーキ機構(特許文献2参照)によって製管機と更生管との間に摩擦抵抗(ブレーキ)をかける必要は無い。したがって、例えば、下水道管からなる更生対象管1内を油分を含む下水が流れている状況下であっても、ブレーキが効きにくいために拡径させにくくなる等の不具合が生じることが無い。よって、ブレーキの効き目を確認する必要が無く、状況に応じてブレーキを調整する必要がない。
【0037】
<フィニッシング工程>
詳細な図示は省略するが、可動製管機20ひいては更生管3が第2側人孔4Bに達するまで、帯状部材10の供給工程及び製管工程、並びに可動製管機20の移動工程を行なう。その後、更生管3から可動製管機20を切り離し、コーン部3cを人力又は工具を使って拡張させるか自然拡張させる。これによって、更生管3を、更生対象管1の全長にわたって張り付くようにライニングできる。このようにして、更生対象管1が更生される。
当該更生方法によれば、切断用ワイヤを用いなくても、かつブレーキの調整を行なわなくても、更生管3を更生対象管1の内壁1cに張り付けるように製管することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図8~
図11)>
図8に示すように、本発明の第2実施形態においては、製管機として、自走式製管機40が用いられている。自走式製管機40は、製管に伴って螺旋巻回方向の推進力F
40が加えられることで自走可能である。
【0039】
詳しくは、
図9に示すように、自走式製管機40は、装置フレーム41と、駆動部42と、管端ガイド43,44と、外周規制ワイヤ45を含む。装置フレーム41は、長手方向(推進前後方向)を更生管3の螺旋巻回方向へ向けて、更生管3の第2側の端部3eの内周上に配置されている。装置フレーム41の中央部に駆動部42が設けられている。駆動部42は、少なくとも一対の駆動ローラ42a,42bを含む。これら駆動ローラ42a,42bの間に帯状部材10が挟み付けられる。
【0040】
装置フレーム41の底部には、複数(図では2つ)の管端ガイド43,44が設けられている。これら管端ガイド43,44は、互いに装置フレーム41の長手方向に離れ、かつ装置フレーム41の幅方向(
図9において紙面直交方向)に更生管3の螺旋ピッチ分だけ互いにずれて配置されている。推進前方(
図9において左側)の管端ガイド43は、更生管3を内周側から押さえる押さえガイド部43aと、更生管3の外周部に螺旋巻回方向へスライド可能に係止される係止ガイド部43bを含む。同様に、推進後方(
図9において右側)の管端ガイド44は、内周側の押さえガイド部44aと、更生管3の外周部に螺旋巻回方向へスライド可能に係止される係止ガイド部44bを含む。管端ガイド43にはブレーキ機構が組み込まれていてもよい。ただし、後述するように、更生施工中、ブレーキを効かせる必要はほとんど無い。
【0041】
外周規制ワイヤ45は、更生管3の第2側の端部3eの外周に約1周掛け回されている。外周規制ワイヤ45の両端部は、装置フレーム41又は管端ガイド43,44に繋着されている。外周規制ワイヤ45の長さによって、更生管3の周長を規制できる。
【0042】
第2実施形態においては、次のようにして、更生管3が製管されて、更生対象管1が更生される。
<巻き出し工程>
更生施工開始時の自走式製管機40は、更生対象管1の第1側管口1aに連なる第1側人孔4Aに配置される。
図8の実線にて示すように、帯状部材10が一周~数周巻かれて、更生管3の第1側の端部3aを構成する巻き出しリングが形成されるとともに自走式製管機40と組み付けられる。
【0043】
<製管工程>
続いて、自走式製管機40の駆動ローラ42a,42bを回転駆動させる。これによって、
図9に示すように、帯状部材10が、順次、駆動ローラ42a,42bから推進後方(
図9において右側)へ押し出されて、螺旋管状の更生管3に組み込まれる。詳しくは、
図8に示すように、帯状部材10の新たに組み込まれる後続部分10bと先に製管された一周先行部分10cとの対向する緩拘束嵌合部13,14(
図4参照)どうしが凹凸嵌合される。後続部分10bの押し込み及び凹凸嵌合による反力によって、
図8の白抜き矢印にて示すように、自走式製管機40に推進力F
40が作用する。これによって、
図8の二点鎖線にて示すように、自走式製管機40が螺旋巻回方向に沿う推進前方へ推進されるとともに、更生管3が第1側管口1aから第2側(
図8において右側)へ向けて延伸されるように製管される。この段階では更生管3が更生対象管1の内径より小径になるよう、外周規制ワイヤ45の長さを調整しておく。
【0044】
図8においては、帯状部材10が第2側人孔4Bの巻き癖付与機5から更生対象管1の内部を通って自走式製管機40に供給されているが、帯状部材10が、第1側人孔4Aから製管中の更生管3の内部を通って自走式製管機40に供給されてもよい。巻き癖付与機5は、第1側人孔4Aの底部に配置されていてもよく、第1側人孔4Aの近くの地上に配置されていてもよい。巻き癖付与機5を省略してもよい。
【0045】
<回り止め工程>
第1側管口1aからの更生管3の軸長が所定になったとき、製管を一旦停止する。そのうえで、第1側の端部3aを棒材6(
図10)等の回り止め手段にて回り止めする。
【0046】
<相対摺動工程>
続いて、
図10に示すように、帯状部材10の供給工程及び製管工程を再開する。製管を再開した自走式製管機40には推進力F
40が作用する。該推進力F
40に抗して、押さえ力F
0によって自走式製管機40を押え、自走式製管機40が移動しないようにする。自走式製管機40の装置フレーム41を人力で押さえてもよく、推進阻止治具(図示省略)を使って押さえてもよい。これによって、位置固定された自走式製管機40から帯状部材10の後続部分10bが更生管3に送り込まれる。このため、矢印b1にて示すように、更生管3が捩じられ、更生管3における凹凸嵌合された緩拘束嵌合部13,14どうしが螺旋巻回方向へ相対摺動される。このとき、自走式製管機40と更生管3との間には摩擦抵抗がなるべく働かないようにして、自走式製管機40に対する更生管3の回転変位を十分に許容する。したがって、ブレーキ機構によって自走式製管機40と更生管3との間に摩擦抵抗(ブレーキ力)を発生させる必要は無く、ブレーキ力の調整は不要である。
【0047】
<コーン部形成工程>
図10の二点鎖線にて示すように、緩拘束嵌合部13,14どうしの相対摺動によって、更生管3の周長が拡張され、自走式製管機40の直近から第1側(
図10において左側)へ向かって拡径するコーン部3cが形成される。言い換えると、推進力F
40がコーン部3cの拡張力に変換される。
【0048】
<張り付け工程>
さらに、拡径(拡張)が進むことによって、
図10の実線にて示すように、更生管3におけるコーン部3cの大径側端部から第1側の端部3aまでの部分が、更生対象管1の内壁1cに張り付き、一定径の大径部3bとなる。これに伴って、コーン部3cの軸長が縮んで傾斜角度が大きくなる。
【0049】
<押さえ力調整工程>
更生管3の張り付き開始後、好ましくはコーン部3cの軸長が所定の大きさになったとき、押さえ力F
0を弱めて、自走式製管機40が管軸方向及び管周方向のうち少なくとも管軸方向へ移動できるようにする。具体的には、
図12に示すように、たとえば、螺旋巻回方向に沿う推進力F
40の管軸方向分力F
40aと管周方向分力F
40bのうち、少なくとも管軸方向分力F
40aに抗する押さえ分力F
0aを、管軸方向分力F
40aよりも小さくする(F
0a<F
40a)。管周方向分力F
40bに抗する押さえ分力F
0bは、管周方向分力F
40bと同等の大きさにする(F
0b=F
40b)。その状態で、帯状部材10の供給工程及び製管工程を継続する。
【0050】
これによって、
図11に示すように、帯状部材10における新たに製管された部分3dが、自走式製管機40から第1側(
図11において左側)へ押し出され、更生管3のコーン部3cの新たな小径側端部となる(更なるコーン部形成工程)。さらに、
図11の矢印b2にて示すように、コーン部3cが拡張方向へ捩じられ、コーン部3cにおける緩拘束嵌合部13,14どうしが螺旋巻回方向へ相対摺動される(更なる相対摺動工程)。これにより、コーン部3cの大径側の部分が、拡径されて更生対象管1の内壁1cに張り付き、大径部3bに組み込まれる(更なる張り付け工程)。
【0051】
<移動工程>
同時に、管軸方向分力F
40aと押さえ分力F
0aとの差分の力(F
40a-F
0a)によって、
図11の矢印b3に示すように、自走式製管機40が管軸方向の第2側(
図11において右側)へ移動される。要するに、製管時の自走式製管機40を推進力F
40に抗して適度に押えることによって、推進力F
40の一部がコーン部3cの拡張力に変換され、推進力F
40の他の一部が自走式製管機40の第2側(
図11において右側)への移動力に変換される。
【0052】
この結果、コーン部3cが第2側(
図11において右側)へ移行されるとともに、大径部3bが第2側へ伸長される。好ましくは、コーン部3cの軸長(コーン長)が一定に保たれる。このようにして、更生管3の張付製管が進む。第1実施形態と同様に、切断用ワイヤを用いなくても、かつブレーキの調整を行なわなくても、更生管3の張付製管を行なうことができる。フィニッシング工程は、第1実施形態と同様である。
【0053】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第2実施形態(
図9)の自走式製管機40の底部に第1実施形態(
図5)と同様の移動手段27を設けてもよい。第1実施形態における可動製管機として自走式製管機40を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 下水道管(更生対象管)
1a 第1側管口
1b 第2側管口
1c 内壁
3 更生管
3a 第1側端部
3b 大径部
3c コーン部
3e 第2側端部
4A 第1側人孔
4B 第2側人孔
5 巻き癖付与機
6 棒材(回り止め手段)
10 帯状部材
13 緩拘束嵌合部
14 緩拘束嵌合部
19 遅乾性水密材
20 可動製管機
21 外周規制体
23 ピンチ部
24 環状フレーム
25 ガイドローラ
27 移動手段
27a 転動体
27c ロック機構
40 自走式製管機
41 装置フレーム
42 駆動部
43 推進前方の管端ガイド
44 推進後方の管端ガイド
45 外周規制ワイヤ