IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社錦の特許一覧

<>
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図1
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図2
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図3
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図4
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図5
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図6
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図7
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図8
  • 特開-研磨ブラシ、及びその製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151103
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】研磨ブラシ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/14 20060101AFI20241017BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B24D13/14 A
B24D3/00 340
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064242
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】594184779
【氏名又は名称】株式会社錦
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 道浩
(72)【発明者】
【氏名】西木 正雄
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA07
3C063AB05
3C063BA10
3C063BG07
3C063BH07
(57)【要約】
【課題】線材が折れ難く、研磨効率がよい研磨ブラシ、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】研磨ブラシ100は、円筒状のブラシ10と円筒状のホルダ20を有する。ブラシ10は、複数本の線材2を束ねて一端同士を固定した束4をその固定端4aを同一面に揃えて複数個円筒状に集合させて固定端同士を固定したものである。ホルダ20は、ブラシ10の固定端10aに対向する円形の底壁部22と、ブラシ10の固定端10aと反対の線材2の自由端2bを突出させてブラシ10の外周面を部分的に覆うように底壁部22の外周縁22bに連続した円筒状の周壁部24と、を有する。ホルダ20は、ブラシ10の固定端10a側を収容して固定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の線材を束ねて一端同士を固定した束をその固定端を同一面に揃えて複数個円筒状に集合させて前記固定端同士を固定した円筒状のブラシと;
前記ブラシの前記固定端に対向する円形の底壁部と、前記ブラシの前記固定端と反対の前記線材の自由端を突出させて前記ブラシの外周面を部分的に覆うように前記底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有し、前記ブラシの前記固定端側を収容して固定するホルダと;
を有する研磨ブラシ。
【請求項2】
前記ホルダは、前記ブラシの内周面に沿って前記底壁部の中央から突設した円筒状の突出部をさらに有する、
請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項3】
前記線材は、砥粒を含む樹脂製の線材であり、
前記束は、複数本の前記線材の一端同士を溶着により固定したものであり、
前記ブラシは、複数個の前記束の前記固定端同士を溶着により固定したものであり、
前記ホルダは、樹脂製であり、
前記ブラシは、前記ホルダの底壁部の内面、前記周壁部の前記底壁部側の内周面、及び前記突出部の外周面に対して、接着剤により固定する、
請求項2に記載の研磨ブラシ。
【請求項4】
前記ホルダの前記周壁部は、複数のリブを間に挟んで周方向に並んだ複数のスリットを有し、
前記リブは、周方向の両側に隣接する2つの前記スリットの縁から前記周壁部の前記内周面に向けて収束する2つの側面を有し、
複数の前記リブを切断することにより、前記周壁部の軸方向の長さを短くすることができる、
請求項3に記載の研磨ブラシ。
【請求項5】
砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねてその一端を同一面に揃えて前記一端同士を溶着固定して前記線材の束を形成する工程と、
複数個の前記束の固定端を同一面に揃えて円筒状に集合させて前記束の固定端同士を溶着固定して円筒状のブラシを形成する工程と、
前記ブラシの前記固定端に対向する円形の底壁部と、前記ブラシの前記固定端と反対の前記線材の自由端を突出させて前記ブラシの外周面を部分的に覆うように前記底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有するホルダ内に前記ブラシの前記固定端側を配置して前記ブラシと前記ホルダを固定する工程と、
を有する研磨ブラシの製造方法。
【請求項6】
前記固定する工程は、前記ブラシの前記固定端と前記ホルダの前記底壁部の内面を接着剤により固定し、前記ブラシの前記外周面と前記ホルダの前記周壁部の内面を接着剤により固定し、前記ホルダの前記底壁部の中央から突設した円筒状の突出部の外周面と前記ブラシの内周面を接着剤により固定する、
請求項5に記載の研磨ブラシの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属を切削加工した際に発生するバリを除去するための研磨ブラシ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、金属の研磨・研削・バリ取り・サビ取り・ペンキ剥離などに使用する研削用工具として、グラインダなどの電動ハンド工具や空気圧を利用した工具などに取り付けて使用する研磨ブラシが知られている。
【0003】
特許文献1の研磨ブラシは、複数本の線材を束にしてその一端を固定した複数の線材集合体を有し、円形のブラシホルダの外周部に沿って並設した複数の穴に複数の線材集合体の固定端を取り付けた構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-55104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の研磨ブラシは、ブラシホルダの外周部に並設した複数の穴に線材集合体の固定端を取り付けているため、周方向に隣接する線材集合体の間に隙間がある。このため、線材の密度が低く、研磨効率が悪く、線材が折れ易い。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、線材が折れ難く、研磨効率がよい研磨ブラシ、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る研磨ブラシは、円筒状のブラシと円筒状のホルダを有する。ブラシは、複数本の線材を束ねて一端同士を固定した束をその固定端を同一面に揃えて複数個円筒状に集合させて固定端同士を固定したものである。ホルダは、ブラシの固定端に対向する円形の底壁部と、ブラシの固定端と反対の線材の自由端を突出させてブラシの外周面を部分的に覆うように底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有する。ホルダは、ブラシの固定端側を収容して固定する。
【0008】
ホルダは、ブラシの内周面に沿って底壁部の中央から突設した円筒状の突出部をさらに有してもよい。
【0009】
線材は、砥粒を含む樹脂製の線材であり、束は、複数本の線材の一端同士を溶着により固定したものであり、ブラシは、複数個の束の固定端同士を溶着により固定したものであってもよく、ホルダは、樹脂製であってもよい。そして、ブラシは、ホルダの底壁部の内面、周壁部の底壁部側の内周面、及び突出部の外周面に対して、接着剤により固定してもよい。
【0010】
ホルダの周壁部は、複数のリブを間に挟んで周方向に並んだ複数のスリットを有し、リブは、周方向の両側に隣接する2つのスリットの縁から周壁部の内周面に向けて収束する2つの側面を有してもよい。複数のリブを切断することにより、周壁部の軸方向の長さを短くすることができる。
【0011】
本発明の他の実施形態によると、研磨ブラシの製造方法は、砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねてその一端を同一面に揃えて一端同士を溶着固定して線材の束を形成する工程と、複数個の束の固定端を同一面に揃えて円筒状に集合させて束の固定端同士を溶着固定して円筒状のブラシを形成する工程と、ブラシの固定端に対向する円形の底壁部と、ブラシの固定端と反対の線材の自由端を突出させてブラシの外周面を部分的に覆うように底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有するホルダ内にブラシの固定端側を配置してブラシとホルダを固定する工程と、を有する。
【0012】
固定する工程は、ブラシの固定端とホルダの底壁部の内面を接着剤により固定し、ブラシの外周面とホルダの周壁部の内面を接着剤により固定し、ホルダの底壁部の中央から突設した円筒状の突出部の外周面とブラシの内周面を接着剤により固定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によると、線材が折れ難く、研磨効率がよい研磨ブラシ、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る研磨ブラシを示す外観斜視図である。
図2図2は、図1の研磨ブラシを分解した分解斜視図である。
図3図3は、図2のブラシの製造方法を説明するための概略図である。
図4図4は、図2のブラシの製造方法を説明するための概略図である。
図5図5は、図2のブラシの製造方法を説明するための概略図である。
図6図6は、図2のブラシの製造方法を説明するための概略図である。
図7図7は、図2のブラシを線材の自由端側から見た底面図である。
図8図8は、図2のホルダをブラシ側から見た斜視図である。
図9図9は、図8のホルダのリブをF9-F9に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、一実施形態に係る研磨ブラシ100は、ブラシ10とホルダ20を備える。
【0016】
ブラシ10は、複数本の線材2を円筒状に束ねたものである。ブラシ10を製造する際には、例えば、図3に示すように複数本(本実施形態では約500本)の同じ長さの線材2の一端2aを平らな面Sに揃えて円柱状に束ねて、図4に示すように複数本の線材2の一端2a同士を溶着により仮固定して束4を形成する。そして、図5に示すように複数個(本実施形態では8個)の束4の固定端4aを平らな面Sに揃えて複数個の束4を円筒状に並べて集合させ、図6に示すようにこれら複数個の束4の固定端4a同士を溶着により本固定する。これにより、軸方向の一端に円環状の固定端10aを有する円筒状のブラシ10が形成される。
【0017】
ブラシ10の線材2は、例えば、直径が0.1mm程度の砥粒入りのナイロン(ポリアミド)フィラメントである。砥粒は、アルミナ(Al)、シリコンカーバイド(SO)、ダイヤモンドパウダーなどである。線材2の長さは、溶着後の長さで約60mmである。複数本の線材2を束ねた束4の直径は、約20mmであり、複数個の束4を円筒状に集合させたブラシ10の外径は、約70mmであり、ブラシ10の内径は、約30mmである。ブラシ10の線材2に沿う軸方向の長さは、約60mmである。
【0018】
線材2を製造する際には、例えば、ナイロンとシリコンカーバイトグリット、またはナイロンとアルミニウムオクサイドをミキシングし、ブラシ用フィラメントとして押し出し加工したものである。線材2は、母材のナイロンに混入されている砥粒(グリット)の鋭いエッジが、無作為にあらゆる面に固定されているため、どんな形状の作業面も確実にとらえ、研磨性能を発揮することが確認されている。さらに、本実施形態のブラシ10に用いた線材2は、耐熱性(融点217°c)に優れた砥粒入り樹脂線であり、狭部作業など摩擦熱の放出が難しい場所の作業にも耐えることができ、接触面への溶着を防止することができる。なお、樹脂材とミキシングする砥粒の種類は、粗さが異なる多数の中から選ぶことが出来る。例えば、#1000(細目)から#46(粗目)の間で12種類から選別することが可能である。
【0019】
複数本の線材2の一端2aを固定する手段は、溶着の他に、例えば接着剤などを用いることができる。同様に、複数個の束4の固定端4a同士を固定する手段も、溶着の他に、例えば接着剤などを用いることができる。
【0020】
ブラシ10は、複数本の線材2を束ねた束4を複数個集合させてその固定端4a同士を固定しているため、図7に示すように、線材2の間の隙間、及び束4の間の隙間は殆どない。つまり、ブラシ10は、同じ長さの複数本(本実施形態では約4000本)の線材2の一端2aを平らな面に揃えて密集させて、複数本の線材2の一端2a同士を固定した構造を有する。なお、複数個の束4の固定端4a側は線材2同士が移動することはできないが、各線材2の一端2aと反対のワークに接触する側の自由端2bは移動が可能である。
【0021】
図2及び図8に示すように、ホルダ20は、ブラシ10の固定端10aに対向する内面22aを有する円環状の底壁部22と、底壁部22の外周縁22bに連続した円筒状の周壁部24と、底壁部22の内面22aの中央部から周壁部24と同軸に突設した略円筒状の突出部26を一体に有する。ホルダ20は、樹脂による一体成型により形成することができ、3Dプリンタにより形成することもできる。ホルダ20は、例えば、ABS樹脂などにより形成することができる。
【0022】
周壁部24の内周面24aの内径は、ブラシ10の固定端10aの外径よりわずかに大きい。突出部26の外周面26aの外径は、ブラシ10の固定端10aの内径よりわずかに小さい。本実施形態では、周壁部24の内径を約70mmに設定し、突出部26の外径を約25mmに設定した。また、周壁部24の底壁部22からの突出高さは約45mmに設定し、突出部26が底壁部22の内面22aから突出した突出高さは約15mmに設定した。
【0023】
ホルダ20は、底壁部22の内面22aと周壁部24の内周面24aと突出部26の外周面26aによって囲まれた円環状の凹所21を有する。ブラシ10は、その固定端10a側をホルダ20の凹所21内に収容配置して、接着剤を介してホルダ20に固定される。つまり、ブラシ10は、接着剤により、ホルダ20の底壁部22の内面22a、周壁部24の内周面24a、及び突出部26の外周面26aに接着される。
【0024】
ホルダ20の周壁部24は、周方向に延設した複数(本実施形態では10個)のスリット28a、28bを有する。スリット28a、28bは、周壁部24の軸方向に離間した2列に設けられている。各列の複数(本実施形態では5個)のスリット28a(28b)は、間にリブ29a(29b)を挟んで周方向に並んでいる。各リブ29a、29bは、周壁部24の一部である。各スリット28a、28bは、周壁部24の内周面24aと外周面24bを連絡して周壁部24を貫通して設けられている。
【0025】
各列のリブ29a、29bは、互い違いに配置されている。すなわち、底壁部22から遠い列のリブ29aは、底壁部22に近い列のスリット28bの周方向の中心に対向する位置にある。また、底壁部22に近い列のリブ29bは、底壁部22から遠い列のスリット28aの周方向の中心に対向する位置にある。このように、各列のリブ29a、29bを周方向にずらして配置することで、ホルダ20の周壁部24の剛性を高めている。
【0026】
本実施形態では、各スリット28a、28bの周方向の長さを約40mmに設定し、軸方向の幅を約8mmに設定した。また、本実施形態では、各リブ29a、29bの周方向の幅を約5mmに設定し、軸方向の長さを約8mmに設定した。
【0027】
各リブ29a、29bの形状は、長方形ではなく、底壁部22から遠い側の端部が周方向に拡開するように湾曲している。言い換えると、各スリット28a、28bの形状は、周方向の両端の底壁部22から遠い側の角が円弧状に丸くなった略長方形である。
【0028】
また、図9に示すように、各リブ29b(29a)の軸方向と直交する断面は、周壁部24の内周面24aにある点を頂点とする二等辺三角形である。言い換えると、各リブ29a、29bは、周方向に隣接する2つのスリット28a(28b)の端部に、周壁部24の外周面24b側のスリット28a(28b)の縁から内周面24aに向けて収束する2つの側面27を有する。
【0029】
周壁部24の底壁部22から遠い列の5つのリブ29aを切断することにより、ホルダ20の周壁部24の軸方向の長さを約15mm短くすることができる。つまり、5つのリブ29aを切断した後のホルダ20の周壁部24の底壁部22からの突出高さは、約30mmとなる。
【0030】
リブ29aは、底壁部22から遠い側の軸方向の端部が周方向に拡開して幅広になっているため、各リブ29aを切断する位置は、底壁部22から遠い側のリブ29aの軸方向の一端ではなく、底壁部22に近い側の端部となる。このように、各リブ29aの底壁部22に近い側の端部を切断することにより、切断後の周壁部24の底壁部22と反対の軸方向の端部を略平らにすることができる。
【0031】
上記のように周壁部24の底壁部22から遠い列の5つのリブ29aを切断すると、周壁部24の底壁部22から遠い側の端部から突出するブラシ10の突出量を約15mm多くすることができる。つまり、研磨ブラシ100の使用によりブラシ10の線材2の自由端2bが摩耗して短くなった場合、ホルダ20の5つのリブ29aを切断して周壁部24の軸方向の長さを短くすることで、ブラシ10の線材2の自由端2bの突出量を使用開始時と同程度に戻すことができる。
【0032】
さらに、研磨ブラシ100の使用によりブラシ10の線材2の自由端2bが摩耗してさらに短くなった際には、周壁部24の底壁部22に近い列の5つのリブ29bを切断することにより、ホルダ20の周壁部24の軸方向の長さを約15mmさらに短くすることができ、研磨ブラシ100の使用寿命をさらに延長することができる。5つのリブ29bを切断した後のホルダ20の周壁部24の底壁部22からの突出高さは、約15mmとなる。ホルダ20が樹脂製であるため、リブ29a、29bの切断には、片手で容易に取り扱うことができるニッパなどを用いることができ、作業を容易にできる。
【0033】
ホルダ20の周壁部24に複数個のスリット28a、28bを設けると、スリット28a、28bを設けない場合と比較して周壁部24の機械強度が低くなる。このため、本実施形態では、各リブ29a、29bの底壁部22から遠い側の端部の幅を広くして、周壁部24の機械強度を高めるようにしている。反面、各リブ29a、29bの幅を広くし過ぎると、ニッパにより容易に切断することが難しくなるため、各リブ29a、29bの底壁部22に近い側の端部の幅を狭くしている。
【0034】
同様に、各リブ29a、29bの断面を二等辺三角形にすることで、周壁部24の機械強度をある程度保つとともに、ニッパによる各リブ29a、29bの切断を容易にしている。各リブ29a、29bの断面形状を、周方向に隣接する2つのスリット28a、28bの内周面24a側の端部から周壁部24の外周面24bに向けて収束する形状にすることも可能であるが、周壁部24を外側から見た際の美観を良くするため、各リブ29a、29bの断面形状を内周面24aに向けて収束する形状とした。
【0035】
ホルダ20の突出部26は、研磨ブラシ100をNCフライス盤、マシニングセンタ、研削ロボットなどに取り付けるための取付軸30を挿通する取付孔32を有する。取付孔32は、ホルダ20の底壁部22と突出部26を貫通して、周壁部24と同軸に設けられている。
【0036】
取付軸30は、円柱状の軸部30aの一端に正六角柱形状の頭部30bを一体に設けた構造を有する。頭部30bは、その内接円が軸部30aの径よりわずかに大きいサイズを有する。ホルダ20の取付孔32は、取付軸30の軸部30aを挿通可能で且つ頭部30bを挿通不能な大きさの断面円形の挿通孔部32aを有する。取付孔32は、突出部26の底壁部22から遠い突出側の端部に、挿通孔部32aに連続する正多角形の係合凹部32bを有する。係合凹部32bは、取付軸30の頭部30bをちょうど収容可能な頭部30bよりわずかに大きいサイズを有し、受け入れた頭部30bの回転を禁止するように頭部30bに係合する。
【0037】
取付軸30は、軸部30aを径方向に貫通したピン孔34を有する。ピン孔34は、図1に示すように研磨ブラシ100を組み立てた状態で、スペーサ40の上面40aよりわずか上に配置される位置に設けられている。図1のように、ピン孔34にRピン(スナップピン、松葉ピン)50を装着すると、取付軸30が研磨ブラシ100に固定され、取付軸30の研磨ブラシ100に対する軸方向の移動、及び回転が不能となる。つまり、取付軸30の研磨ブラシ100に対する固定は、Rピン50のみによってなされるため、研磨ブラシ100に対する取付軸30の着脱が容易である。
【0038】
なお、スペーサ40のDカット42は、図1の組立状態で取付軸30のピン孔34からRピン50を引き抜く際に、Rピン50をクランプするペンチなどの工具の先端をRピン50とホルダ20の底壁部22の間に挿し入れるためのスペースを設けるための構造である。したがって、Rピン50の形状を工夫すれば、スペーサ40を省略することもできる。また、スペーサ40を一体化したホルダを用いれば、Rピン50の形状を工夫する必要もない。なお、工具の先端を挿し入れるためのDカットは、スペーサ40の径方向に離間した2箇所に設けてもよく、ホルダ自体にDカットを設ける場合も、径方向に離間した2箇所に設けてもよい。
【0039】
以下、上述した研磨ブラシ100を取付軸30に装着する方法について説明する。
まず、上述したようにブラシ10をホルダ20の凹所21に接着固定した研磨ブラシ100を用意する。そして、取付軸30の軸部30aをホルダ20の内側から突出部26の取付孔32に挿通する。このとき、ブラシ10の中央にある(線材2が存在しない)孔を通して取付軸30を通す。ブラシ10の中央の孔の大きさは、取付軸30の頭部30bを挿通可能な大きさである。取付軸30の軸部30aをホルダ20の取付孔32に挿通した最後に、取付軸30の頭部30bを取付孔32の係合凹部32bに嵌合する。
【0040】
この後、ホルダ20の底壁部22の外面22cから突出した取付軸30の軸部30aにスペーサ40を嵌装し、スペーサ40の上面40aの上にあるピン孔34にRピン50を取り付ける。この状態(図1に示す状態)で、取付軸30がホルダ20に固定され、取付軸30のホルダ20に対する抜け、及び回転が禁止された状態となる。
【0041】
上述した本実施形態の研磨ブラシ100は、主に、NCフライス盤、マシニングセンタ、研削ロボットなどの機械装置に取り付けて使用することを想定したものである。つまり、機械装置の取付軸30に、ホルダ20にブラシ10を固定した研磨ブラシ100を装着して固定し、研磨ブラシ100を装着した状態の取付軸30を機械装置に取り付ける。本実施形態の研磨ブラシ100は、機械装置の回転軸である取付軸30と平行な複数の線材2を備えており、複数本の線材2の自由端2bをワークの被研磨面に垂直に当接させて使用する。このため、ブラシ10の複数本の線材2の自由端2bは、徐々に摩滅して短くなる。本実施形態の研磨ブラシ100は、例えば3000rpm以下の比較的遅い回転数での使用に適しており、金属の加工面にある0.1mm~0.5mm程度の微小バリをきれいに除去する用途に適している。
【0042】
本実施形態の研磨ブラシ100は、複数本の線材2を円筒状に密集させているため、線材2同士の隙間がほとんど無く、ブラシ10の固定端10a側は移動することができない。これに対し、ブラシ10の複数本の線材2の自由端2b側はわずかに移動することが可能ではあるが、ホルダ20の周壁部24の内周面24aによってブラシ10の外周面が軸方向の略全長にわたって押さえられており、且つホルダ20の突出部26の外周面26aによってブラシ10の内周面の固定端10a側が押さえられているため、ブラシ10の複数本の線材2の自由端2bは、ホルダ20の周壁部24の外側に広がることはできない。
【0043】
このため、ワークの被研磨面に自由端2bが接触する線材2の密度を高くすることができ、被研磨面の単位面積に対する線材2の接触本数を多くすることができる。これにより、被研磨面に対する研磨効率を高くすることができ、短時間で効果的な研磨が可能となる。また、ワークの被研磨面に線材2の自由端2bが垂直に当たるため、線材2が折れ難く、研磨ブラシ100の使用寿命の全期間にわたって研磨性能を良好に維持することができる。
【0044】
また、本実施形態の研磨ブラシ100は、樹脂製の複数本の線材2を束ねたブラシ10を樹脂製のホルダ20に固定したものであるため、使用後の廃棄時にプラスティックゴミとして処分することができる。線材を樹脂線により形成し、ホルダを金属により形成した従来の研磨ブラシは、使用後の廃棄時にブラシとホルダを分離して処分する必要があり、そのためのコスト負担があったが、本実施形態の研磨ブラシ100は、廃棄コストを安価にすることができる。
【0045】
また、本実施形態の研磨ブラシ100は、所定数のリブ29a(29b)をニッパ等により切断するだけで、ホルダ20の軸方向の長さを短くすることができ、ブラシ10の使用寿命を長くすることができる。つまり、本実施形態の研磨ブラシ100は、ホルダ20の周壁部24の軸方向の長さを2段階短くすることができるため、周壁部24を短くする度にブラシ10の線材2の自由端2bの突出量を初期値に戻すことができ、周壁部24を短くしない場合と比較して、研磨ブラシ100の使用寿命を約3倍に延ばすことができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、同じ材質の線材2を束ねた束4を複数個密集させてブラシ10を形成した場合について説明したが、これに限らず、材質の異なる線材2の束4を密集させてブラシ10を形成してもよい。例えば、金属の粗バリを効果的に研磨可能な材質の線材2’を束ねた束4’と微小バリを効果的に研磨可能な材質の線材2を束ねた束4を交互に円環状に並べてブラシ10’を形成してもよい。このブラシ10’を用いると、金属の加工面の粗バリと微小バリを同時に研磨することができ、作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
2…線材、2a…一端、2b…自由端、4…束、4a…固定端、10…ブラシ、10a…固定端、20…ホルダ、21…凹所、22…底壁部、22a…内面、24…周壁部、24a…内周面、24b…外周面、26…突出部、26a…外周面、27…側面、28a、28b…スリット、29a、29b…リブ、30…取付軸、30a…軸部、30b…頭部、32…取付孔、32a…挿通孔部、32b…係合凹部、34…ピン孔、40…スペーサ、40a…上面、42…Dカット、50…Rピン、100…研磨ブラシ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねて一端同士を溶着により仮固定した束をその固定端を同一面に揃えて複数個円筒状に集合させて前記固定端同士を溶着により固定した円筒状のブラシと;
前記ブラシの前記固定端に対向する円形の底壁部と、前記ブラシの前記固定端と反対の前記線材の自由端を突出させて前記ブラシの外周面を部分的に覆うように前記底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有し、前記ブラシの前記固定端側を収容して固定する樹脂製のホルダと;を有し、
前記ホルダの前記周壁部は、複数のリブを間に挟んで周方向に並んだ複数のスリットを有し、
前記リブは、周方向の両側に隣接する2つの前記スリットの縁から前記周壁部の内周面に向けて収束する2つの側面を有し、
複数の前記リブを切断することにより、前記周壁部の軸方向の長さを短くすることができる、
研磨ブラシ。
【請求項2】
前記ホルダは、前記ブラシの内周面に沿って前記底壁部の中央から突設した円筒状の突出部をさらに有し、
前記ブラシは、前記ホルダの底壁部の内面、前記周壁部の前記底壁部側の内周面、及び前記突出部の外周面に対して、接着剤により固定する、
請求項1に記載の研磨ブラシ。
【請求項3】
砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねてその一端を同一面に揃えて前記一端同士を溶着により仮固定して前記線材の束を形成する工程と
複数個の前記束の固定端を同一面に揃えて円筒状に集合させて前記束の固定端同士を溶着固定して円筒状のブラシを形成する工程と
前記ブラシの前記固定端に対向する円形の底壁部と、前記ブラシの前記固定端と反対の前記線材の自由端を突出させて前記ブラシの外周面を部分的に覆うように前記底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有するホルダ内に前記ブラシの前記固定端側を配置して前記ブラシと前記ホルダの前記固定端側を固定する工程と
を有する研磨ブラシの製造方法。
【請求項4】
前記固定する工程は、前記ブラシの前記固定端と前記ホルダの前記底壁部の内面を接着剤により固定し、前記ブラシの前記外周面と前記ホルダの前記周壁部の内面を接着剤により固定し、前記ホルダの前記底壁部の中央から突設した円筒状の突出部の外周面と前記ブラシの内周面を接着剤により固定する、
請求項3に記載の研磨ブラシの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一実施形態に係る研磨ブラシは、円筒状のブラシと円筒状のホルダを有する。ブラシは、砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねて一端同士を溶着により仮固定した束をその固定端を同一面に揃えて複数個円筒状に集合させて固定端同士を溶着により固定したものである。ホルダは、樹脂製であり、ブラシの固定端に対向する円形の底壁部と、ブラシの固定端と反対の線材の自由端を突出させてブラシの外周面を部分的に覆うように底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有する。ホルダは、ブラシの固定端側を収容して固定する。ホルダの周壁部は、複数のリブを間に挟んで周方向に並んだ複数のスリットを有する。リブは、周方向の両側に隣接する2つのスリットの縁から周壁部の内周面に向けて収束する2つの側面を有する。複数のリブを切断することにより、周壁部の軸方向の長さを短くすることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
ホルダは、ブラシの内周面に沿って底壁部の中央から突設した円筒状の突出部をさらに有してもよい。ブラシは、ホルダの底壁部の内面、周壁部の底壁部側の内周面、及び突出部の外周面に対して、接着剤により固定する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の他の実施形態によると、研磨ブラシの製造方法は、砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねてその一端を同一面に揃えて一端同士を溶着により仮固定して線材の束を形成する工程と複数個の束の固定端を同一面に揃えて円筒状に集合させて束の固定端同士を溶着固定して円筒状のブラシを形成する工程とブラシの固定端に対向する円形の底壁部と、ブラシの固定端と反対の線材の自由端を突出させてブラシの外周面を部分的に覆うように底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有するホルダ内にブラシの固定端側を配置してブラシとホルダの固定端側を固定する工程とを有する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
例えば、上述した実施形態では、同じ材質の線材2を束ねた束4を複数個密集させてブラシ10を形成した場合について説明したが、これに限らず、材質の異なる線材2の束4を密集させてブラシ10を形成してもよい。例えば、金属の粗バリを効果的に研磨可能な材質の線材2’を束ねた束4’と微小バリを効果的に研磨可能な材質の線材2を束ねた束4を交互に円環状に並べてブラシ10’を形成してもよい。このブラシ10’を用いると、金属の加工面の粗バリと微小バリを同時に研磨することができ、作業効率を向上させることができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
複数本の線材を束ねて一端同士を固定した束をその固定端を同一面に揃えて複数個円筒状に集合させて前記固定端同士を固定した円筒状のブラシと;
前記ブラシの前記固定端に対向する円形の底壁部と、前記ブラシの前記固定端と反対の前記線材の自由端を突出させて前記ブラシの外周面を部分的に覆うように前記底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有し、前記ブラシの前記固定端側を収容して固定するホルダと;
を有する研磨ブラシ。
[2]
前記ホルダは、前記ブラシの内周面に沿って前記底壁部の中央から突設した円筒状の突出部をさらに有する、
[1]に記載の研磨ブラシ。
[3]
前記線材は、砥粒を含む樹脂製の線材であり、
前記束は、複数本の前記線材の一端同士を溶着により固定したものであり、
前記ブラシは、複数個の前記束の前記固定端同士を溶着により固定したものであり、
前記ホルダは、樹脂製であり、
前記ブラシは、前記ホルダの底壁部の内面、前記周壁部の前記底壁部側の内周面、及び前記突出部の外周面に対して、接着剤により固定する、
[2]に記載の研磨ブラシ。
[4]
前記ホルダの前記周壁部は、複数のリブを間に挟んで周方向に並んだ複数のスリットを有し、
前記リブは、周方向の両側に隣接する2つの前記スリットの縁から前記周壁部の前記内周面に向けて収束する2つの側面を有し、
複数の前記リブを切断することにより、前記周壁部の軸方向の長さを短くすることができる、
[3]に記載の研磨ブラシ。
[5]
砥粒を含む樹脂製の複数本の線材を束ねてその一端を同一面に揃えて前記一端同士を溶着固定して前記線材の束を形成する工程と、
複数個の前記束の固定端を同一面に揃えて円筒状に集合させて前記束の固定端同士を溶着固定して円筒状のブラシを形成する工程と、
前記ブラシの前記固定端に対向する円形の底壁部と、前記ブラシの前記固定端と反対の前記線材の自由端を突出させて前記ブラシの外周面を部分的に覆うように前記底壁部の外周縁に連続した円筒状の周壁部と、を有するホルダ内に前記ブラシの前記固定端側を配置して前記ブラシと前記ホルダを固定する工程と、
を有する研磨ブラシの製造方法。
[6]
前記固定する工程は、前記ブラシの前記固定端と前記ホルダの前記底壁部の内面を接着剤により固定し、前記ブラシの前記外周面と前記ホルダの前記周壁部の内面を接着剤により固定し、前記ホルダの前記底壁部の中央から突設した円筒状の突出部の外周面と前記ブラシの内周面を接着剤により固定する、
[5]に記載の研磨ブラシの製造方法。