IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日綜産業株式会社の特許一覧 ▶ 有限会社 小岸興業の特許一覧

<>
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図1
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図2
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図3
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図4
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図5
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図6
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図7
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図8
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図9
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図10
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図11
  • 特開-クレーン及び枠組足場の組立方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151106
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】クレーン及び枠組足場の組立方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 19/00 20060101AFI20241017BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20241017BHJP
   B66C 11/06 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B66C19/00 E
E04G21/16
B66C11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064246
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516002989
【氏名又は名称】株式会社OGISHI
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小野 大
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 暁伸
(72)【発明者】
【氏名】小岸 昭義
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊輔
【テーマコード(参考)】
2E174
3F203
【Fターム(参考)】
2E174CA02
2E174CA06
2E174CA12
3F203CA02
3F203CB01
3F203DA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、屋上に容易に設置可能なクレーン及び、建築物の周囲の環境に左右されずにクレーンを利用して安全に枠組足場を組み立てられる枠組足場の組立方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、建築物Bの屋上Rに対して設置可能な支持部材2と、支持部材2から横方向に延びて建築物Bの壁面B1より外側に先端側が突出する突出梁3と、動力源を有して突出梁3に沿って自走可能に設けられる第一トロリー7と、第一トロリー7よりも突出梁3の基端側に配置されて突出梁3に沿って走行可能に設けられる第二トロリー8と、第一トロリー7に保持されてワイヤー4の先端を上昇及び下降可能な駆動部50と、第二トロリー8に保持されて駆動部50によって上昇されたワイヤー4を格納するとともに駆動部50がワイヤー4を下降させる際にワイヤー4を駆動部50へ供給する格納部51とを有するウィンチ5とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上に対して設置可能な支持部材と、
前記支持部材から横方向に延びて前記建築物の壁面より外側に先端側が突出する突出梁と、
動力源を有して前記突出梁に沿って自走可能に設けられる第一トロリーと、
前記第一トロリーよりも前記突出梁の基端側に配置されて前記突出梁に沿って走行可能に設けられる第二トロリーと、
前記第一トロリーに保持されてワイヤーの先端を上昇及び下降可能な駆動部と、前記第二トロリーに保持されて前記駆動部によって上昇された前記ワイヤーを格納するとともに前記駆動部が前記ワイヤーを下降させる際に前記ワイヤーを前記駆動部へ供給する格納部とを有するウィンチとを備える
ことを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記駆動部に接続されて前記駆動部と前記格納部との間を移動する前記ワイヤーをガイドするガイド管を備え、
前記第二トロリーは前記第一トロリーに対して前記突出梁の軸方向に間隔をあけて連結されており、
前記格納部は、鉛直方向を軸として回転可能であって、前記ワイヤーを下方から支持する下方支持部と、前記ワイヤーを側方から支持する側方支持部とを有し、
前記ガイド管の開口は前記格納部における前記軸から径方向にずれた位置に対して上方から対向する
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
建築物の屋上に対して設置可能な支持部材と、
前記支持部材から横方向に延びて前記建築物の壁面より外側に先端側が突出する突出梁と、
前記突出梁に設けられてワイヤーを巻取り及び繰り出し可能なウィンチとを備え、
前記壁面を基準として外側を前側とし内側を後側とすると、
前記支持部材は、前記屋上に起立するとともに前記突出梁を支持する支持台と、前記突出梁の前記支持台よりも後側に向けて延びる接続部に連結されるカウンターウェイトとを有し、
前記突出梁は、前記支持台に対して水平方向に回転可能に支持されており、
前記カウンターウェイトは、前記屋上に対して移動可能な状態と固定される状態を切り換え可能になっている
ことを特徴とするクレーン。
【請求項4】
前記突出梁の側方に沿って配置され前記ウィンチに対向する足場を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
前記クレーンは分解可能な複数の部品によって構成されており、
前記部品は、それぞれ、少なくとも、間口が1800mm、奥行きが1500mm、高さが2300mmであって出入口の幅が1000mm、高さ2100mmのエレベータに収容可能な大きさで構成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のクレーン
【請求項6】
建築物の側方に沿って複数層設置される枠組足場の組立方法であって、
地上で複数層の枠組足場を組立てして枠組足場ユニットを組み上げる工程と、
前記建築物の屋上で組み上げたクレーンで前記枠組足場ユニットを前記建築物の側方へ運搬し、予め前記建築物の側方に沿って組み立てておいた既設の枠組足場の上に前記枠組足場ユニットを積み上げる工程とを備える
ことを特徴とする枠組足場の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン及び枠組足場の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の建築物に対する修繕工事などの工事を行う場合、建築物の周囲の道路や駐車場にクレーンを設置しておき、そのクレーンで、予め組み立てておいた複数層の枠組足場を吊り上げて建築物の側方に積み上げて枠組足場を設置したり(例えば特許文献1)、上記クレーンで作業者を修繕箇所まで運んで作業者に修繕作業をさせたりする場合などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-68971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述したように、クレーンを建築物の周囲の道路や駐車場にクレーンを設置する場合、道路や駐車場をクレーンが占有することになるため、道路や駐車場の使用許可を取る必要がある。そのため、道路や駐車場などの使用許可が取れない場合には、既存の建築物の工事にクレーンを利用できなかった。また、建築物の周囲にクレーンを設置するスペースがない場合にも、既存の建築物の工事にクレーンを利用できなかった。
【0005】
特にクレーンを利用せずに枠組足場を組み立てる場合、作業者は下段の枠組足場の上に乗って、上段の枠組足場を一段ずつ組み上げていくことになるため、作業者の高所での作業時間が長くなってしまう問題があった。
【0006】
そこで、建築物の周囲の環境に左右されずに既存の建築物の工事にクレーンを利用できるようにするために、建築物の屋上にクレーンを設置することが考えられる。
【0007】
しかしながら、クレーンを屋上へ搬入するには、既存のクレーンは非常に大きく重いため、クレーンを複数の部品に分解して、分解した各部品を屋上へ運搬し、クレーンを屋上で組み立てる必要がある。ところが、従来のクレーンでは、分解した部品自体も重量物であるため、作業者にとってクレーンの搬入作業は大きな負担となる。クレーンを屋上から搬出する搬出作業においても同様のこと言える。
【0008】
また、建築物の屋上には、貯水槽、非常用自家発電設備、室外機などの設備が設置されており、これらの設備は、クレーンを屋上に設置する際の障害物となる。
【0009】
以上のように、クレーンの運搬しづらさ、或いは屋上に設置された障害物の多さが理由となり、クレーンを屋上に設置するのは難しかった。
【0010】
そこで、本発明は、屋上に容易に設置可能なクレーンと、屋上に設置されたクレーンを利用して建築物の周囲の環境に左右されずに安全に枠組足場を組み立てられる枠組足場の組立方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明のクレーンは、建築物の屋上に対して設置可能な支持部材と、支持部材から横方向に延びて建築物の壁面より外側に先端側が突出する突出梁と、動力源を有して前記突出梁に沿って自走可能に設けられる第一トロリーと、第一トロリーよりも突出梁の基端側に配置されて突出梁に沿って走行可能に設けられる第二トロリーと、第一トロリーに保持されてワイヤーの先端を上昇及び下降可能な駆動部と、第二トロリーに保持されて駆動部によって上昇されたワイヤーを格納するとともに駆動部がワイヤーを下降させる際にワイヤーを駆動部へ供給する格納部とを有するウィンチとを備えることを特徴とする。この構成によると、ウィンチが、ワイヤーを上昇及び下降させる駆動部と、ワイヤーを格納する格納部とに分離されているため、作業者は駆動部と格納部とに分けてウィンチを運搬できるため、作業者の運搬時の負担が減って、ウィンチの可搬性が向上する。
【0012】
また、本発明のクレーンは、駆動部に接続されて駆動部と格納部との間を移動するワイヤーをガイドするガイド管を備え、第二トロリーは第一トロリーに対して突出梁の軸方向に間隔をあけて連結されており、格納部は、鉛直方向を軸として回転可能であって、ワイヤーを下方から支持する下方支持部と、ワイヤーを側方から支持する側方支持部とを有し、ガイド管の開口は格納部における軸から径方向にずれた位置に対して上方から対向してもよい。この構成によると、第一トロリーと第二トロリーの間隔が常に変わらないため、第一トロリーに保持される駆動部と第二トロリーに保持される格納部の間隔も変わらず、駆動部に接続されるガイド管の開口の位置も変わらない。そして、ガイド管の開口は格納部における回転軸から径方向にずれた位置に対して上方から対向しているため、格納部に駆動源を設けずとも、駆動部によって送り出し及び引張られたワイヤーによって格納部が回転するため、ワイヤーを絡ませることなく格納部に格納できるとともにワイヤーをスムーズに駆動部に供給できる。よって、駆動部と格納部を離間させて配置しても、格納部を回転させるための駆動源を設けずに済むため、ウィンチの軽量化と省力化を図れる。
【0013】
また、本発明のクレーンは、建築物の屋上に対して設置可能な支持部材と、支持部材から横方向に延びて建築物の壁面より外側に先端側が突出する突出梁と、突出梁に設けられてワイヤーを巻取り及び繰り出し可能なウィンチとを備え、壁面を基準として外側を前側とし内側を後側とすると、支持部材は、屋上に起立するとともに突出梁を支持する支持台と、突出梁の支持台よりも後側に向けて延びる接続部に連結されるカウンターウェイトとを有し、突出梁は、支持台に対して水平方向に回転可能に支持されており、カウンターウェイトは、屋上に対して移動可能な状態と固定される状態を切り換え可能になっていることを特徴とする。この構成によると、突出梁を支持台に対して水平方向に回転させ得るとともに、カウンターウェイトを移動させ得るため、組み上げられたクレーンを、屋上に設置された貯水槽、非常用自家発電設備、室外機などの設備等の障害物を避けて屋上に設置できる。
【0014】
また、本発明のクレーンは、突出梁の側方に沿って配置されウィンチに対向する足場を備えてもよい。この構成によると、ウィンチが建築物の壁面よりも外側に配置された状態で、ウィンチに不具合があったとしても、作業者が足場を使ってウィンチをメンテナンスすることができる。
【0015】
また、本発明のクレーンは分解可能な複数の部品によって構成されており、前記部品は、それぞれ、少なくとも、間口が1800mm、奥行きが1500mm、高さが2300mmであって出入口の幅が1000mm、高さ2100mmのエレベータに収容可能な大きさで構成されてもよい。ここで、建築基準法では、地上31m以上の建築物では、原則として間口が1800mm以上、奥行きが1500mm以上、高さが2300mm以上であって出入口の幅が1000mm以上、高さ2100mm以上のエレベータを設置する義務がある。そのため、クレーンを構成する各部品が上述した大きさで構成されていると、特に建築物が地上31m以上の高層建物である場合、作業者は、クレーンを構成するすべての部品を建築物に備え付けのエレベータで運搬することができる。したがって、上記構成によると、特に建築物が地上31m以上の高層建物である場合には、備え付けのエレベータでクレーンの各部品を運搬できるため、クレーンを設置する建築物が高層建物であったとしても、クレーンを屋上に容易に設置できる。
【0016】
また、本発明の足場装置の組立方法は、建築物の側方に沿って複数層設置される枠組足場の組立方法であって、地上で複数層の枠組足場を組立てして枠組足場ユニットを組み上げる工程と、建築物の屋上で組み上げたクレーンで枠組足場ユニットを建築物の側方へ運搬し、予め建築物の側方に沿って組み立てておいた既設の枠組足場の上に枠組足場ユニットを積み上げる工程とを備えることを特徴とする。この構成によると、地上で組み立てた枠組足場ユニットをクレーンで既設の枠組足場の上に積み重ねていくことで、複数層の枠組足場を組み立てているため、既設の枠組足場ユニットと枠組足場ユニットの層数を少なくできる。つまり、既設の枠組足場と枠組足場ユニットの組み立て時における作業者の高所作業を減らすことができるため、上記組立方法によれば、組立作業の安全性が高くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のクレーンは、屋上に容易に設置できる。また、本発明の枠組足場の組立方法によれば、建築物の周囲の環境に左右されずに、屋上に設置されたクレーンで枠組足場を組み立てることができるため、作業者の高所作業が減り安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】建築物の屋上に設置された状態の本実施の形態のクレーンの側面図である。
図2】本実施の形態のクレーンにおける支持部材の支持台と突出梁の連結部分を拡大して示す一部拡大側面図である。
図3】本実施の形態のクレーンにおける突出梁の先端側を拡大して示す一部拡大側面図である。
図4】本実施の形態のクレーンにおけるウィンチの一部を拡大して示す一部拡大斜視図である。
図5】本実施の形態のウィンチにおけるケースの斜視図である。
図6】本実施の形態のウィンチにおける格納部の斜視図である。
図7】本実施の形態のクレーンにおける支持部材の支持台を正面側から見た正面図である。
図8】(A)は本実施の形態の支持部材における回転テーブルを構成するテーブルを軸方向の一方側から見た図である。(B)は本実施の形態の支持部材における回転テーブルを構成するテーブルを軸方向の他方側から見た図である。
図9】本実施の形態のクレーンを上から見た図である。
図10】本実施の形態のクレーンの一部を拡大して示す側面図である。
図11】枠組足場の組立方法の工程を説明する図であって、屋上に設置されたクレーンで枠組足場ユニットを吊り上げた状態を示す図である。
図12】枠組足場の組立方法の工程を説明する図であって、屋上に設置されたクレーンで枠組足場ユニットを既設の枠組足場に積み上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のクレーン及び枠組足場の組立方法について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0020】
本実施の形態におけるクレーン1は、図1に示すように、マンションやビル等の建築物Bの屋上Rに対して設置可能な支持部材2と、支持部材2から横方向に延びて建築物Bの壁面B1より外側に先端側が突出する突出梁3と、突出梁3の先端側に設けられてワイヤー4を巻取り及び繰り出し可能なウィンチ5とを備える。
【0021】
そして、クレーン1は、ワイヤー4の先端に吊下げ治具40を介して運搬物としての後述する枠組足場ユニット10Bを保持させた状態で、ウィンチ5を駆動してワイヤー4を巻取り及び繰り出しすることで、枠組足場ユニット10Bを運搬できる。なお、本実施の形態では、クレーン1により運搬される運搬物を枠組足場ユニット10Bとしているが、運搬物は枠組足場ユニット10Bには限定されず、例えば、資材であってもよい。また、図1では、クレーン1の構造を理解しやすくするために、後述する足場6を省略している。
【0022】
以下、本実施の形態のクレーン1の各部について詳細に説明する。また、以下の説明では、特別な説明がない限り、クレーン1が建築物Bの屋上Rに設置された状態での上下を、単に「上」「下」といい、クレーン1の突出梁3が飛び出す建築物Bの壁面B1を基準として反建築物側となる建築物Bの外側の方向を「前」、建築物B側となる建築物Bの内側の方向を「後」という。
【0023】
本実施の形態の突出梁3は、図1に示すように、前後方向(図中左右方向)に沿って延びる梁材であって支持部材2によって下方から支持されるとともに後述する支持部材2における支持台20の上端とカウンターウェイト21の上端とを接続する接続部としての接続梁材30と、接続梁材30の前端(図中左端)に連結されて接続梁材30の前端から前方(図中左方向)に向けて延びるとともに先端側が建築物Bの壁面B1より外側に突出するとともに後述するウィンチ5を保持する保持部としての保持梁材31とを備える。
【0024】
また、クレーン1は、図1に示すように、突出梁3の軸方向中央付近から垂直に起立する支柱11と、支柱11の上端と突出梁3における接続梁材30の後側の上端との間に架け渡される後側ブレース12と、支柱11の上端と突出梁3における保持梁材31の前側上端との間に架け渡される前側ブレース13を備えている。このような支柱11とブレース12,13を設けることで、突出梁3に作用する荷重を支柱11とブレース12,13でも受けることができるので、クレーン1の耐荷重性を向上できる。ただし、クレーン1の強度上問題がなければ、支柱11とブレース12,13は省略されてもよい。
【0025】
また、図2に示すように、接続梁材30の前端(図中左端)と保持梁材31の後端(図中右端)には、それぞれ複数の孔(図示せず)を有する連結プレート32A,32Bが溶接されており、これらの連結プレート32A,32B(32)を当接させた状態で互いに対向する孔にボルトを挿通し、当該ボルトのネジ部にナットを螺合することで、接続梁材30と保持梁材31はボルト締結されている。ただし、接続梁材30と保持梁材31の連結方法は、接続梁材30と保持梁材31を分解可能であって、突出梁3に要求される接合強度を確保できる限りにおいて特に限定されない。
【0026】
なお、本実施の形態では、保持梁材31は、接続梁材30の前端に直列に連結されるとともに水平方向に沿って延びているが、保持梁材31は、接続梁材30の前端から接続梁材30の軸方向に対して上向き又は下向きに傾斜しながら延びてもよい。
【0027】
また、詳細には図示しないが、本実施の形態では、接続梁材30は軸方向で3分割された3つのH形鋼で構成されており、保持梁材31は軸方向で2分割された2つのH形鋼で構成されている。接続梁材30及び保持梁材31を構成する各H形鋼の端部にはそれぞれ複数の孔を有する連結プレート33,34が溶接されており、これらの連結プレート33,34を当接させた状態で互いに対向する孔にボルトを挿通し、当該ボルトのネジ部にナットを螺合することで、各部品同士がボルト締結されている。
【0028】
このように、本実施の形態では、突出梁3を、接続梁材30と保持梁材31とに分解できるだけでなく、接続梁材30と保持梁材31をさらに複数の部品に分解できるため、突出梁3を分解して運搬できる。
【0029】
なお、本実施の形態では、接続梁材30を3分割、保持梁材31を2分割にしているが、この分割数は一例であって、特に限定されない。また、接続梁材30と保持梁材31の軸方向長さが作業者が運搬可能な長さである場合には、接続梁材30と保持梁材31はそれぞれ分割不能な一部品で形成されてもよい。
【0030】
また、本実施の形態の保持梁材31には、図3に示すように、動力源を有して保持梁材31の軸方向に沿って保持梁材31上を自走可能に設けられる第一トロリー7と、第一トロリー7よりも突出梁3の基端側である後側に配置されて保持梁材31の軸方向に沿って保持梁材31上を走行可能に設けられる第二トロリー8が設けられている。
【0031】
具体的には、本実施の形態の保持梁材31は、図3に示すように、前後方向(図中左右方向)に沿って延びる上下一対の平板状のフランジ31a,31bと、上側フランジ31aと下側フランジ31bの中央同士を接続するウェブ31cとを有するH形鋼である。
【0032】
そして詳細には説明しないが、第一トロリー7と第二トロリー8は、それぞれ、保持梁材31の上側フランジ31aと下側フランジ31bの間に形成される隙間に挿入されて、下側フランジ31b上を走行可能なローラ7a,8aを有している。
【0033】
また、第一トロリー7と第二トロリー8は、図3に示すように、第一トロリー7と第二トロリー8の下端から下向きに突出する取付片70,80間に架け渡される接続ロッド9によって、突出梁3の軸方向である前後方向に間隔をあけて連結されている。
【0034】
そのため、第一トロリー7の動力源を駆動して第一トロリー7を保持梁材31の下側フランジ31b上を自走させると、接続ロッド9によって第一トロリー7と連結された第二トロリー8も第一トロリー7と同じ方向に同じ距離だけ移動する。よって、第一トロリー7と第二トロリー8の前後方向の間隔は常に一定となる。
【0035】
なお、本実施の形態では、電動モータを第一トロリー7の動力源としているが、第一トロリー7の動力源は電動モータには限定されず、例えば、油圧モータを第一トロリー7の動力源としてもよい。また、保持梁材31は第一トロリー7と第二トロリー8のローラ7a,8aが走行可能なレール部を備える梁材であれば、H形鋼には限定されない。
【0036】
また、突出梁3の保持梁材31には、第一トロリー7と第二トロリー8を介してワイヤー4を巻取り及び繰り出し可能なウィンチ5が設けられている。ウィンチ5は、図3に示すように、第一トロリー7に保持されてワイヤー4の先端を上昇及び下降可能な駆動部50と、第二トロリー8に保持されて駆動部50によって上昇されたワイヤー4を格納するとともに駆動部50がワイヤー4を下降させる際にワイヤー4を繰り出す格納部51とを有する。
【0037】
このように構成されたクレーン1では、動力源を駆動して第一トロリー7を突出梁3の保持梁材31の軸方向に沿って移動させると、第一トロリー7に保持された駆動部50も共に移動するため、ワイヤー4の先端の前後方向の位置を動かすことができる。さらに、ウィンチ5の駆動部50を駆動すると、ワイヤー4の先端が上昇又は下降する。よって、本実施の形態のクレーン1によれば、ワイヤー4の先端を前後方向と上下方向で任意の位置に動かすことができる。
【0038】
具体的には、本実施の形態の格納部51は、図3図4に示すように、第二トロリー8から下向きに突出する取付片80の下端に連結されるケース52内に鉛直方向を軸にして回転可能に収容されている。つまり、格納部51は、取付片80及びケース52を介して第二トロリー8に保持されている。
【0039】
具体的には、本実施の形態のケース52は、図5に示すように、直方体状の骨組構造であって、4つの角にそれぞれ配置される4本のアングル材でなる柱材52aと、各柱材52aの上端同士を接続する4本のアングル材でなる上側梁材52bと、各柱材52aの下端同士を接続する4本のアングル材でなる下側梁材52cとを有する。さらに、ケース52は、図5に示すように、各上側梁材52bの軸方向中央位置に連結される平面視で十字状の上側十字梁52dと、各下側梁材52cの軸方向中央位置に連結される平面視で十字状の下側十字梁52eとを有する。また、上側十字梁52dの中央部と下側十字梁52eの中央部には互いに対向する保持筒52f,52gが設けられている。そして、上側十字梁52dの上端が、図4に示すように、第二トロリー8から下向きに突出する取付片80の下端に連結されることで、ケース52は第二トロリー8に連結されている。
【0040】
また、本実施の形態の格納部51は、図4図6に示すように、鉛直方向に沿って延びる円柱状の支持軸53と、支持軸53の上側外周に溶接された円盤状の上側プレート54と、支持軸53の下側外周に溶接された円盤状の下側プレート55と、上側プレート54と下側プレート55の外周に溶接により連結される格納部本体56とを備える。
【0041】
そして、格納部51の支持軸53の上端と下端が、それぞれケース52に設けられた保持筒52f,52g内に回転自在に挿入されていることで、格納部51は、支持軸53を回転軸として回転可能に支持された状態でケース52内に収容されている。
【0042】
格納部本体56は、図6に示すように、上下方向に沿って延びて上側プレート54と下側プレート55の外周に溶接される線状の直線部56a1と、直線部56a1の上端から外側に向けて傾斜する線状の外向き傾斜部56a2と、直線部56a1の下端から外側に向けて直線状に延びる線状の底部56a3と、底部56a3の先端から上方向に起立する線状の起立部56a4と、起立部56a4の上端から内側に向けて傾斜するとともに上端の位置が外向き傾斜部56a2の上端の位置と水平方向で揃う線状の内向き傾斜部56a5とを有するとともに、支持軸53を囲うように同一円周上に等間隔で並べて配置される12本の線状部材56aを備える。
【0043】
また、格納部本体56は、図6に示すように、各外向き傾斜部56a2の上端同士を接続する円環状の内側接続リング56bと、各内向き傾斜部56a5の上端同士を接続する円環状の外側接続リング56cと、各底部56a3の下側に連結されて各底部56a3同士を接続する円環状の下側接続リング56dとを備える。
【0044】
そして、外側接続リング56cは、内側接続リング56bよりも径が大きいため、内側接続リング56bと外側接続リング56cとの間には格納部本体56の内外を連通する環状の開口部57が形成されている。
【0045】
このように構成された格納部51に格納されたワイヤー4は、図4に示すように、複数の底部56a3によって構成された下方支持部によって下方から支持されるとともに、複数の起立部56a4によって構成された側方支持部材によって側方から支持されるので、起立部56a4に沿ってワイヤー4が積み重ねられる。
【0046】
なお、格納部本体56における線状部材56aの数は、格納部51に要求される強度を確保できるとともに、格納部51に格納されるワイヤー4を下方と側方から支持できる限りにおいて任意に決定されればよい。
【0047】
なお、本実施の形態では、格納部本体56を、複数の線状部材56aと内側接続リング56bと外側接続リング56cと下側接続リング56dとで構成される骨組構造としているが、格納部本体56は円盤状の底壁と底壁の外周端から起立する円筒状の側壁を有する有底筒状に構成されてもよい。ただし、本実施の形態のように、格納部本体56を骨組構造とすると、格納部51を軽量化できるとともに、格納部51の面積を小さくできるので風に煽られて格納部51が大きく揺れるのを防止できる。
【0048】
つづいて、駆動部50は、図3に示すように、箱状のカバー体50aを備えており、カバー体50aの上端が第一トロリー7から下向きに突出する取付片70の下端に連結されることで、第一トロリー7に保持されている。
【0049】
また、図示しないが、カバー体50aの内部には、モータによって回転駆動するリールと、リールの回転を規制するブレーキとが収容されている。カバー体50aの底部には、格納部51側(図3中右側)に配置されてワイヤー4の基端側が挿通される一方側開口50a1と反格納部側(図3中左側)に配置されてワイヤー4の先端側が挿通される他方側開口50a2が設けられている。
【0050】
そして、駆動部50のリールには、一方側開口50a1と他方側開口50a2を通じてカバー体50a内を通るワイヤー4が巻き回されている。したがって、駆動部50のリールを一方向に回転させると、ウィンチ5は、ワイヤー4を他方側開口50a2を通じてカバー体50a内に引き込みつつ、一方側開口50a1を通じてカバー体50a外へ送り出すため、ワイヤー4の先端の位置を上昇させられる。反対に、駆動部50のリールを他方向に回転させると、ウィンチ5は、ワイヤー4を一方側開口50a1を通じてカバー体50a内に引き込みつつ、他方側開口50a2を通じてカバー体50a外へ送り出すため、ワイヤー4の先端の位置を下降させられる。
【0051】
つまり、ウィンチ5は、駆動部50の駆動によりリールの回転方向を切り換えることで、ワイヤー4の先端を上昇及び下降させることができる。さらに、ウィンチ5は、、駆動部50を停止させてリールの回転駆動を止めると自動的にリールの回転を規制するブレーキが作動するようになっているため、ワイヤー4の先端を任意の高さ位置で維持できる。
【0052】
また、駆動部50には、図3に示すように、一端が一方側開口50a1に連通して、他端が格納部51における開口部57に対して上側から対向するとともに、駆動部50と格納部51との間を移動するワイヤー4をガイドするパイプ状のガイド管58が接続されている。
【0053】
具体的には、ガイド管58は、図3に示すように、基端が駆動部50の下端に設けられた一方側開口50a1に接続されるとともに駆動部50の下端から格納部側に向けて湾曲して先端が格納部51側を向く第一湾曲管部58aと、第一湾曲管部58aの先端から格納部51側に向けて水平方向に沿って直線状に延びる第一直線管部58bと、第一直線管部58bの先端から上方へ向けて湾曲して先端が上方を向く第二湾曲管部58cと、第二湾曲管部58cの先端から上方向に直線状に延びる第二直線管部58dと、第二直線管部58dの先端から格納部51側に向けて湾曲して先端が格納部51側を向くとともに先端位置が格納部51の上端よりも上方に位置する第三湾曲管部58eと、第三湾曲管部58eの先端から格納部51側に向けて水平方向に沿って直線状に延びるとともに先端が格納部51付近に位置する第三直線管部58fと、第三直線管部58fの先端から格納部51の開口部57に向けて下向きに傾斜する吐出管部58gとを有する。そして、吐出管部58gの先端側開口は、格納部51の開口部57に対向しているため、ガイド管58を通じて格納部51に送り込まれたワイヤー4は、開口部57を通じて格納部51に格納される。
【0054】
このように構成されたガイド管58では、各直線管部58b,58d,58fがそれぞれ滑らかに湾曲する各湾曲管部58a,58c,58eによって接続されているため、ワイヤー4がガイド管58内をスムーズに移動できるようになっている。ただし、上述したガイド管58の形状は一例であって、上記形状には限定されない。また、ガイド管58は省略されてもよい。
【0055】
このように構成されたウィンチ5は、ワイヤー4を上昇及び下降させる駆動部50と、ワイヤー4を格納する格納部51とに分離されている。したがって、ウィンチ5を駆動部50と格納部51とに分けて運搬できるため、作業者の運搬時の負担が減って、ウィンチ5の可搬性が向上する。
【0056】
ここで、クレーン1を屋上Rに設置する場合、分解したクレーン1の各部品を屋上Rへ運搬し、各部品を屋上Rで組み立てることとなる。そのため、上述したように、ウィンチ5の可搬性が向上すると、クレーン1を屋上Rへ容易に設置できるようになる。
【0057】
また、突出梁3の保持梁材31に対してウィンチ5における駆動部50と格納部51が突出梁3の軸方向で離間した状態で配置されるので、ウィンチ5の重量が分散される。よって、突出梁3の先端側に作用するモーメントを小さくできるので、クレーン1の転倒を防止できる。
【0058】
つづいて、このように構成されたウィンチ5の作動について詳細に説明する。ウィンチ5によってワイヤー4を巻き取る場合、駆動部50のリールをワイヤー4を上昇させる方向に回転駆動させる。すると、ワイヤー4の先端側が他方側開口50a2を通じてリールによって引き上げられ、その引き上げられた分のワイヤー4が一方側開口50a1とガイド管58を通じて格納部51に送り込まれるため、ワイヤー4の先端が上昇する。
【0059】
ここで、ガイド管58の開口は、開口部57を通じて格納部51における起立部56a4に上方から対向している。そのため、駆動部50からガイド管58を通じて格納部51に送り込まれたワイヤー4は、駆動部50による送り出しの勢いのまま、開口部57を通じて格納部51の側方支持部となる複数の起立部56a4に押し付けられる。ここで、格納部51における起立部56a4は格納部51の回転軸となる支持軸53から径方向にずれているため、ワイヤー4が起立部56a4に押し付けられると、そのワイヤー4が押し付けられる力によって格納部51は支持軸53を回転中心にして回転する。
【0060】
よって、駆動部50によってガイド管58を介して格納部51へ送り込まれたワイヤー4は、格納部51を回転させながら起立部56a4に沿って積み重ねられて格納部51に格納される。
【0061】
このように、本実施の形態のウィンチ5では、駆動部50によって送り出されたワイヤー4が格納部51を回転させながら起立部56a4に沿って積み重ねられて格納部51に格納されるので、ワイヤー4が格納部51内で絡まるのを防止できる。
【0062】
ただし、ガイド管58の開口は、開口部57を通じて格納部51における底部56a3に上方から対向していてもよい。その場合であっても、底部56a3は格納部51の回転軸となる支持軸53から径方向にずれているため、ワイヤー4が底部56a3に押し付けられても、格納部51は支持軸53を回転中心にして回転する。
【0063】
また、本実施の形態では、第一トロリー7と第二トロリー8が接続ロッド9によって接続されて、第一トロリー7と第二トロリー8の間隔が常に一定となるようにされている。そのため、第一トロリー7を突出梁3の保持梁材31の軸方向に沿って移動させたときも、第一トロリー7に保持される駆動部50と第二トロリー8に保持される格納部51の間隔も変わらない。よって、駆動部50に接続されるガイド管58の開口の位置も変わらないため、ウィンチ5の巻取り作動時には常に格納部51を回転させながらワイヤー4を格納部51に格納できる。
【0064】
なお、本実施の形態では、ワイヤー4は起立部56a4に沿って積み重ねられた状態で格納部51に格納されているが、ワイヤー4はどのような状態で格納部51に格納されてもよく、例えば、渦巻状で格納部51に格納されてもよい。
【0065】
反対に、ウィンチ5によってワイヤー4を繰り出す場合、駆動部50のリールを他方向に回転駆動させる。すると、ワイヤー4の先端側が他方側開口50a2を通じてリールによって送り出されるとともに、その送り出された分のワイヤー4がガイド管58と一方側開口50a1を通じて格納部51から供給されるため、ワイヤー4の先端が下降する。
【0066】
この際、格納部51に格納されたワイヤー4は、駆動部50によって引っ張られて、ガイド管58を通じて駆動部50へ供給されるが、ガイド管58の開口の位置は、格納部51の回転軸としての支持軸53から径方向にずれている。そのため、格納部51に格納されたワイヤー4がガイド管58の開口に向けて引っ張られると、そのワイヤー4を引っ張る力で格納部51が回転する。
【0067】
よって、本実施の形態のウィンチ5では、格納部51を回転させながらガイド管58を通じてワイヤー4を駆動部50側へ移動できるため、積み重ねられた状態のワイヤー4の繰り出しをスムーズに行える。
【0068】
このように本実施の形態のウィンチ5では、格納部51に駆動源を設けずとも、駆動部50によって送り出し及び引張られたワイヤー4によって格納部51が回転するため、ワイヤー4を絡ませることなく格納部51に格納できるとともにワイヤー4をスムーズに駆動部50に供給できる。
【0069】
よって、本実施の形態では、駆動部50と格納部51を離間させて配置しても、格納部51を回転させるための駆動源を設けずに済むため、ウィンチ5の軽量化と省力化を図れる。
【0070】
ただし、格納部51に駆動部50の駆動に同期して格納部51を回転させる駆動源を設けてもよい。その場合、接続ロッド9とガイド管58を省略しても、ワイヤー4を絡ませることなく格納部51に格納できるとともにワイヤー4をスムーズに駆動部50に供給できる。
【0071】
なお、上述した駆動部50の構成は、一例であって、ワイヤー4を上昇又は下降できる限りにおいて、上述の構成には限定されない。また、格納部51の構成も、一例であって、ワイヤー4を格納及び供給できる限りにおいて本実施の形態には限定されず、格納部51は回転可能でなくともよい。また、上述したウィンチ5の構成は一例であって、ウィンチ5は駆動部50と格納部51とが一体となっているものであってもよい。
【0072】
つづいて、建築物Bの屋上Rに設置可能であって、突出梁3を支持する支持部材2について詳細に説明する。本実施の形態の支持部材2は、図1に示すように、屋上Rに起立する支持台20と、支持台20の後方(図中右側)に所定の間隔を空けて配置されて屋上Rに設置されるカウンターウェイト21とを備え、支持台20とカウンターウェイト21とで、突出梁3を下方から支持している。
【0073】
支持台20は、図7に示すように、V字の頂部が上を向くように配置された逆さV字状の台部20aと、台部20aの下端に設けられて屋上Rを移動可能な移動部20bと、移動部20bを上下に貫通して設けられる複数のジャッキ20cとを備える。また、支持台20の上端には後述する回転テーブル22が連結されており、回転テーブル22の上端には突出梁3の接続梁材30を連結可能なブラケット23が連結されている。
【0074】
より詳細には、移動部20bは、図7中で紙面を貫く方向に沿って延びる図2中左右一対の角パイプ20b1,20b1と、一対の角パイプ20b1,20b1の軸方向中央の間に架け渡される接続パイプ20b2と、一対の角パイプ20b1の各端部側の下部にそれぞれ設けられる4つのキャスター20b3とを有する。
【0075】
さらに、接続パイプ20b2には軸方向で図2中左右両側の上端からそれぞれ上向きに突出するとともに上端に四角板状の皿部20b5を有する突起部20b4,20b4が設けられている。これらの突起部20b4,20b4の皿部20b5と、逆さV字状の台部20aの各下端にそれぞれ設けられた四角板状の皿部20a1とが、互いに当接した状態で連結されることで、移動部20bは台部20aの下端に連結されている。
【0076】
このように、支持台20は、屋上Rを走行可能なキャスター20b3を有する移動部20bを備えているため、屋上Rを自由に移動できる。なお、移動部20bに設けられるキャスター20b3の数や位置は任意に決定されればよい。また、上述した移動部20bの構成は一例であって、支持台20を移動できるようになっていれば、移動部20bの構成は上記構成には限定されない。
【0077】
また、ジャッキ20cは、接続パイプ20b2を上下に貫通する貫通孔(図示せず)に挿通されて接続パイプ20b2を貫通するとともに、接続パイプ20b2の上端と下端にそれぞれ溶接されつつ上記貫通孔と連通するナット20b6,20b6に螺合されている。そのため、ジャッキ20cを周方向に回転させると、ジャッキ20cが移動部20bに対して上下動するようになっている。
【0078】
そして、図7に示すように、ジャッキ20cを下方向に移動させると、移動部20bがジャッキ20cによって持ち上げられ、移動部20bのキャスター20b3が屋上Rから離間した状態となるので、支持台20は移動不能な状態となる。反対にジャッキ20cを上方に移動させて、ジャッキ20cが屋上Rから離間すると、キャスター20b3が屋上Rに接した状態となるので、支持台20は屋上Rを移動可能な状態となる。
【0079】
したがって、本実施の形態の支持台20は、ジャッキ20cを上下動することによって、屋上Rに対して移動可能な状態と固定される状態を切り換え可能になっている。なお、ジャッキ20cの数や位置は、支持台20の形状や重量等に応じて適宜決定されればよい。
【0080】
また、建築物Bの屋上Rでは、外周部に排水溝が設けられることが多く、雨水を排水溝に導くために、屋上Rは中央から外周側に向けて下り勾配になっている場合がある。このような屋上Rにクレーン1が設置される場合、支持台20は、カウンターウェイト21よりも屋上Rの外周側寄りに位置するため、支持部材2を平地に設置した状態における支持台20の上端位置とカウンターウェイト21の上端位置の高さが同じ場合、支持台20の上端位置が下がって、支持台20とカウンターウェイト21によって下方から支えられる突出梁3が傾いてしまう。これに対し、本実施の形態では、ジャッキ20cにより支持台20の上端位置を調整できるため、支持台20の上端位置をカウンターウェイト21の上端位置に合わせることで、突出梁3が傾くのを防止できる。
【0081】
ただし、屋上Rが平坦な場合や屋上Rの勾配が小さく突出梁3の傾きが問題となるほど大きくならない場合には、支持台20はジャッキ20cを備えなくともよい。その場合、例えば、キャスター20b3に自身の回転を規制可能なストッパを設け、そのストッパを掛ける又は外すことで、支持台20を屋上Rに対して移動可能な状態と固定される状態に切り換えればよい。
【0082】
また、本実施の形態のカウンターウェイト21は、図1に示すように、内部に複数のウェイト21dが収容されたウェイトケース21aと、ウェイトケース21aの下端に設けられて屋上Rを走行可能な複数のキャスター21b1を有する移動部21bと、ウェイトケース21aの上端から突出して突出梁3の接続梁材30の後端(図1中右端)に連結される連結支柱21cとを備える。
【0083】
前述したように、突出梁3の保持梁材31には、第一トロリー7、第二トロリー8、ウィンチ5、ワイヤー4等の部材が取付けられており、ワイヤー4は、吊下げ治具40を介して運搬物としての枠組足場ユニット10Bを保持するようになっている。そのため、突出梁3には、保持梁材31に取付けられる第一トロリー7、第二トロリー8、ウィンチ5、ワイヤー4等の部材の重量とワイヤー4に保持される枠組足場ユニット10Bの重量に基づいて支持台20を支点とする図1中左回転のモーメントが作用する。
【0084】
これに対し、本実施の形態では、カウンターウェイト21が、前後方向で支持台20を挟んで突出梁3の保持梁材31の反対側に配置されるとともに、突出梁3の接続梁材30によって支持台20の上端と接続されている。そのため、突出梁3には、カウンターウェイト21の重量に基づいて支持台20を支点とする図1中右回転のモーメントが作用する。
【0085】
そして、カウンターウェイト21の重量は、突出梁3に作用する図1中右回転のモーメントが、突出梁3に作用する図1中左回転のモーメント以上になるように設定されているので、突出梁3に作用する図1中右回転のモーメントが打ち消される。よって、カウンターウェイト21はクレーン1が転倒するのを防止できる。
【0086】
また、前述したように、カウンターウェイト21は、屋上Rを走行可能な複数のキャスター21b1を有する移動部21bを備えているため、屋上Rを自由に移動できる。また、図示しないが、キャスター21b1には、自身の回転を規制可能なストッパが設けられており、そのストッパを掛ける又は外すことで、カウンターウェイト21を屋上Rに対して移動可能な状態と固定される状態に切り換えできる。
【0087】
以上より、支持台20とカウンターウェイト21はそれぞれ屋上Rを移動可能な移動部20b,21bを有しているので、本実施の形態のクレーン1は屋上Rを自由に移動できる。そして、クレーン1を屋上Rの任意の位置まで移動させてから、支持台20のジャッキ20cを下げてキャスター20b3を屋上Rから離間させるとともに、カウンターウェイト21のキャスター21b1に設けられたストッパを掛けると、クレーン1を屋上Rの任意の位置に固定できる。ただし、上述した移動部21bの構成は一例であって、カウンターウェイト21を移動できるようになっていれば、移動部21bの構成は上記構成には限定されない。なお、クレーン1を移動させる必要が無い場合は、各移動部20b,21bは省略されてもよい。
【0088】
また、詳細には説明しないが、図1に示すように、突出梁3の接続梁材30における前端側と、カウンターウェイト21の連結支柱21cには、それぞれ、クランプ14A,14Bが取付けられており、これらのクランプ14A,14Bを介して、接続梁材30とカウンターウェイト21の連結支柱21cとの間には斜材15が架け渡されている。また、図示しないが、支持台20の台部20aにもクランプが取付けられており、当該クランプと接続梁材30に取付けられたクランプ14Aを介して、接続梁材30と支持台20の台部20aとの間にも斜材16が架け渡されている。これにより、接続梁材30に作用する荷重を分散できるため、クレーン1の耐荷重性を向上できる。ただし、クレーン1の強度上問題がなければ、斜材15,16は省略されてもよい。
【0089】
戻って、支持台20の上端には、突出梁3を水平方向に回転可能に支持する回転テーブル22が設けられている。具体的には、本実施の形態の回転テーブル22は、図2に示すように、支持台20の上端に連結される下側のテーブル24Aと、下側のテーブル24Aの上端に対して任意の水平方向の取付角度で連結可能な上側のテーブル24Bとで構成されている。そして、上側のテーブル24Bの上端には、突出梁3の接続梁材30を連結可能なブラケット23が連結されている。
【0090】
より詳細には、回転テーブル22の各テーブル24A,24Bは、図2図8に示すように、円盤状であって同一円周上に等間隔で配置される4つの円弧状の孔24a1を有する第一プレート24aと、角が面取りされた略四角状の板であって4隅にそれぞれ配置される4つの丸孔24b1を有する第二プレート24bと、第一プレート24aと第二プレート24bを接続する円筒状の接続筒24cとを有する。また、第一プレート24aに設けられた円弧状の孔24a1は、第一プレート24aの接続筒24cの接続部位よりも外周側に設けられている。また、第二プレート24bに設けられた丸孔24b1は、第二プレート24bの接続筒24cの接続部位よりも外周側に設けられている。
【0091】
また、第一プレート24aと第二プレート24bには、図8に示すように、それぞれ、接続筒24cの内部に連通する4つの扇形の中央孔24a2,24b2が形成されている。4つの扇形の中央孔24a2,24b2は、各中央孔24a2,24b2の弧が各プレート24a,24bの中心を中心点とする円の同一円周上に周方向で等間隔に位置するように配置されている。
【0092】
このように、各プレート24a,24bに接続筒24cの内部に連通する中央孔24a2,24b2を設けると、テーブル24を溶融亜鉛メッキなどの薬品に漬け込んで表面処理する際に、薬品が各中央孔24a2,24b2を通じて接続筒24cの内側に入り込んで、接続筒24cの内周や各プレート24a,24bの内面も表面処理できる。さらに、接続筒24c内に入り込んだ薬品が各中央孔24a2,24b2を通じて接続筒24cの外に排出されるので、接続筒24cの内部に薬品が溜まらないようになっている。
【0093】
なお、中央孔24a2,24b2の形状や数は特に限定されず、例えば、4つの円弧状の中央孔24a2,24b2に代えて各プレート24a,24bの中心に1つの丸孔を設けてもよい。ただし、接続筒24cの内面の表面処理を行わない場合には、中央孔24a2,24b2は省略されてもよい。
【0094】
そして、図2に示すように、これらのテーブル24A,24Bの第一プレート24a,24a同士を当接させた状態で対向する各円弧状の孔24a1,24a1にボルトを挿通し、当該ボルトのネジ部にナットを螺合して、2つのテーブル24A,24Bをボルト締結することで、回転テーブル22は形成されている。
【0095】
ここで、第一プレート24aに設けられた円弧状の孔24a1の長さは、隣り合う円弧状の孔24a1,24a1間の間隔の周方向長さよりも長くなっており、上側のテーブル24Bを下側のテーブル24Aに対して回転させて、上側のテーブル24Bの下側のテーブル24Aに対する水平方向の取付角度を変更しても、上側のテーブル24Bの第一プレート24aの全ての円弧状の孔24a1は、下側のテーブル24Aの第一プレート24aの円弧状の孔24a1のいずれかと必ず対向するようになっている。
【0096】
よって、上側のテーブル24Bの下側のテーブル24Aに対する水平方向の取付角度が変わっても、2つのテーブル24A,24Bをボルト締結できるため、上側のテーブル24Bを下側のテーブル24Aに対して任意の水平方向の取付角度で連結できる。
【0097】
なお、本実施の形態では、第一プレート24aに4つの円弧状の孔24a1を設けているが、円弧状の孔24a1の数は特に限定されない。例えば、円弧状の孔24a1の数を1つにする場合は、円弧状の孔24a1の円弧の長さを半円以上にすればよい。
【0098】
また、上述した回転テーブル22の構成は、一例であって、上側のテーブル24Bの下側のテーブル24Aに対する水平方向の取付角度を変更できる限りにおいて特に限定されない。例えば、各テーブル24A,24Bの第一プレート24aに対して、円弧状の孔24a1に代えて、同一円周上に配置される複数の丸孔を設けてもよい。この場合であっても、上側のテーブル24Bの第一プレート24aの丸孔と下側のテーブル24Bの第一プレートの丸孔とが対向する位置であれば、上側のテーブル24Bを下側のテーブル24Aに対してボルト締結できるため、上側のテーブル24Bの下側のテーブル24Aに対する水平方向の取付角度を丸孔の数に応じて段階的に変更できる。
【0099】
また、図2図7に示すように、支持台20の台部20aの上端には、下側のテーブル24Aの第二プレート24bの各丸孔24b1とそれぞれ対向可能な位置に配置された4つの孔(図示せず)を有する支持プレート20a2が設けられている。そして、下側のテーブル24Aの第二プレート24bを支持プレート20a2に当接させた状態で、互いに対向する第二プレート24bの各丸孔24b1と支持プレート20a2に設けられた各孔にそれぞれボルトを挿通して、当該ボルトのネジ部にナットを螺合することで、回転テーブル22は支持台20の上端にボルト締結により連結されている。
【0100】
つづいて、ブラケット23は、図7に示すように、図中左右一対の取付片23a,23aを有している。各取付片23aは、図2図7に示すように、底部23a1と起立部23a2とを備えてL字状となっており、互いに間隔をあけて起立部23a2,23a2同士を平行に向かい合わせて上側のテーブル24B上に設置されている。
【0101】
各取付片23aの底部23a1には、上側のテーブル24Bの第二プレート24bの4つの丸孔24b1のうち2つと対向可能な孔(図示せず)が2つずつ設けられており、互いに対向する底部23a1の孔と上側のテーブル24Bの第二プレート24bの丸孔24b1にボルトを挿通して、当該ボルトのネジ部にナットを螺合することで、ブラケット23の底部23a1は、上側のテーブル24Bの上端に対してボルト締結により連結されている。
【0102】
また、起立部23a2は、図2に示すように、中央に凹溝23a3を有するU字状の板材であって、凹溝23a3を挟んだ図2中左右に肉厚を貫通する一対の連結孔(図示せず)を有している。
【0103】
ここで、突出梁3の接続梁材30の前端側(図2中左端側)には、接続梁材30を径方向に貫通する取付孔30aが軸方向に沿って等間隔で複数設けられている。そして、ブラケット23の起立部23a2に設けられた一対の連結孔の間隔は、隣り合う取付孔30a同士の間隔に対して2倍の間隔となるように設定されている。そのため、起立部23a2に設けられた一対の連結孔は、接続梁材30の取付孔30aとその取付孔30aから1つとばして隣りの取付孔30aにそれぞれ対向できるようになっている。
【0104】
そして、本実施の形態では、図2に示すように、起立部23a2に設けられた一対の連結孔を、接続梁材30における図中左側から1つ目と3つ目の取付孔30aに対向させた状態で、当該連結孔と取付孔30aにボルトを挿通し、当該ボルトのネジ部にナットを螺合することで、接続梁材30はブラケット23に対してボルト締結により連結されている。
【0105】
また、このように接続梁材30がブラケット23に対して連結された状態では、図2に示すように、接続梁材30における起立部23a2に設けられた一対の連結孔と対向する2つの取付孔30a(図中左側から1つ目と3つ目の取付孔30a)の間に配置される取付孔30a(図中左側から2つ目の取付孔30a)は、起立部23a2の凹溝23a3と対向するようになっている。
【0106】
ここで、ブレース12,13を保持する支柱11は、図2に示すように、下端に二又状に形成されて接続梁材30の側部に対向する一対の孔を有する連結金具11aを有している。そして、図2に示すように、連結金具11aの孔を接続梁材30におけるブラケット23の凹溝23a3と対向する取付孔30aに対向させた状態で、連結金具11aの孔と取付孔30aにボルトを挿通し、当該ボルトのネジ部にナットを螺合することで、支柱11は突出梁3の接続梁材30に対して垂直に連結されている。
【0107】
以上の通り、本実施の形態では、支持台20の上端には回転テーブル22が連結されており、回転テーブル22の上側のテーブル22Bにはブラケット23を介して突出梁3の接続梁材30が連結されている。
【0108】
そして、前述したように、回転テーブル22の上側のテーブル22Bは下側のテーブル22Aに対する水平方向の取付角度を変更できるようになっている。そのため、上側のテーブル22Bに突出梁3の接続梁材30が連結された状態で、上側のテーブル22Bを下側のテーブル22Aに対して水平方向へ回転すれば、図9に示すように、支持台20を軸にして突出梁3を水平方向に回転でき、突出梁3の接続梁材30の後端に連結されたカウンターウェイト21を屋上Rで移動させ得る。
【0109】
このように、本実施の形態のクレーン1では、突出梁3を支持台20に対して水平方向に回転させられるとともに、カウンターウェイト21を移動させられるため、屋上Rに貯水槽、非常用自家発電設備、室外機などの設備等の障害物があっても、これらの障害物を避けてクレーン1を屋上Rに設置できる。
【0110】
なお、本実施の形態では、支持台20の上端に設けられた回転テーブル22によって突出梁3を支持台20に対して水平方向に回転可能に連結しているが、一例であって、他の手段で突出梁3を支持台20に対して水平方向に回転可能に連結してもよい。ただし、屋上Rに設置された設備等がクレーン1の設置の妨げとならない場合には、突出梁3は、支持台20に対して回転不能に連結されてもよい。
【0111】
また、本実施の形態のクレーン1は、図9図10に示すように、突出梁3の側方に沿って配置されウィンチ5に対向する足場6を備えている。これにより、ウィンチ5が建築物Bの壁面B1よりも外側に配置された状態で、ウィンチ5に不具合があったとしても、作業者が足場6を使ってウィンチ5をメンテナンスすることができる。
【0112】
詳細には、本実施の形態の足場6は、図9図10に示すように、突出梁3の保持梁材31の上端に連結される吊下げ部材60と、突出梁3の保持梁材31の下側側方に配置されるとともに吊下げ部材60に吊下げ支持される枠体61と、枠体61上に設置される足場パネル62と、足場パネル62の側部に突出梁3の軸方向に沿って設置される複数の手摺枠63とを備える。
【0113】
より詳細には、吊下げ部材60は、図9図10に示すように、突出梁3の保持梁材31の上端に水平かつ直交するように連結されるとともに前後方向に所定の間隔をあけて並べて配置される2つの支持梁60a,60aと、各支持梁60aの突出梁3を挟んで両側に所定の間隔をあけて2つずつ設けられて下向きに延びる合わせて4つの下方梁60bと、前側の支持梁60aの下方梁60bが設けられる部位と同じ軸方向位置から前方に向けて斜めに延びるとともに下端が突出梁3の保持梁材31の前端よりも前方であって下方梁60bの下端と同じ高さに位置する4つの傾斜梁60cと、前後方向に沿って並べて配置される各下方梁60b,60b間に斜めに架け渡される4つの斜材60dとを有する。
【0114】
また、枠体61は、クレーン1の幅方向で隣り合う4つの後側の下方梁60bの下端同士を接続する第一の横桟61aと、クレーン1の幅方向で隣り合う4つの前側の下方梁60bの下端同士を接続する第二の横桟61bと、クレーン1の幅方向で隣り合う4つの傾斜梁60c,60cの下端同士を接続する第三の横桟61cと、第一の横桟61aと第二の横桟61bの下方梁60bが接続される位置で第一の横桟61aと第二の横桟61b間に架け渡される4つの第一フレーム61dと、各第一フレーム61dと直列に配置されるように第二の横桟61bと第三の横桟61c間に架け渡される4つの第二フレーム61eとを有する。
【0115】
そして、クレーン1の幅方向で突出梁3を挟んで2つずつ配置される第一フレーム61d及び第二フレーム61eと、クレーン1の前後方向に沿って配置される第一の横桟61a、第二の横桟61b及び第三の横桟61cには、それぞれ足場パネル62が架け渡されて設置されている。よって、本実施の形態のクレーン1では、図9に示すように、足場パネル62が突出梁3のクレーン1の幅方向で両側に設置されるので、突出梁3に設けられたウィンチ5に不具合があった場合、作業者は両側からウィンチ5をメンテナンスできる。
【0116】
また、図示はしていないが、足場パネル62の前端にも手摺又は親綱が設置されており、作業者の安全が確保されている。
【0117】
ただし、上述した足場6の構成は一例であって、足場6は上述の構成には限定されない。また、足場6は省略されてもよく、足場6が省略されたクレーン1においてウィンチ5に不具合があった場合は、ウィンチ5が建築物Bの壁面B1の内側に位置するまでクレーン1を移動させてからウィンチ5のメンテナンスをすればよい。
【0118】
また、上述してきたように、本実施の形態のクレーン1は、分解可能な複数の部品で構成されている。そして、これらのクレーン1を構成する各部品は、それぞれ、少なくとも、間口が1800mm、奥行きが1500mm、高さが2300mmであって出入口の幅が1000mm、高さ2100mmのエレベータに収容可能な大きさで構成されている。
【0119】
ここで、建築基準法では、地上31m以上の建築物では、原則として間口が1800mm以上、奥行きが1500mm以上、高さが2300mm以上であって出入口の幅が1000mm以上、高さ2100mm以上のエレベータを設置する義務がある。
【0120】
そのため、クレーン1を構成する各部品が上述した大きさで構成されていると、特に建築物Bが地上31m以上の高層建物である場合、作業者は、クレーン1を構成するすべての部品を建築物Bに備え付けのエレベータで運搬することができる。
【0121】
したがって、クレーン1を構成する各部品を、階段を利用して建築物Bの屋上Rに搬入又は屋上Rから搬出する場合、建築物Bの高さが高いほどクレーン1の各部品の運搬距離が長くなるため、クレーン1の運搬が難しくなるが、上記構成によると、特に建築物Bが地上31m以上の高層建物である場合には、備え付けのエレベータでクレーン1の各部品を運搬できる。よって、クレーン1を設置する建築物Bが高層建物であったとしても、クレーン1を屋上Rに容易に設置できる。ただし、建築物Bが地上31m未満の低層建物であったとしても、建築物Bにクレーン1を構成する各部品を運搬可能な大きさのエレベータが設置されていれば、クレーン1の屋上Rへの設置が容易になる。
【0122】
つづいて、屋上Rに設置されたクレーン1を利用して、建築物Bの側方である壁面B1に沿って複数層設置される枠組足場10の組立方法について詳細に説明する。なお、枠組足場10は、幅方向に並べて配置される複数の建枠と、建枠間にそれぞれ架け渡される足場板及び手摺等からなる公知の構造の足場であるため、詳細な説明を省略する。
【0123】
まず、建築物Bの側方に沿って最下層を含む枠組足場10(以下、「既設の枠組足場10A」と称する。)を予め組み立てておく。本実施の形態では、既設の枠組足場10Aの層数を3層としているが、既設の枠組足場10Aの層数は特に限定されない。ただし、既設の枠組足場10Aの層数を3層以下とすると、特に作業者の高所作業を減らせるため、組立作業の安全性が高くなる。
【0124】
次に、地上における既設の枠組足場10Aに隣接する場所で複数層の枠組足場10を組み立てしてできる枠組足場ユニット10Bを組み上げる。枠組足場ユニット10Bの層数は、2層以上であれば特に限定されないが、特に2層又は3層とすると、作業者の高所作業を減らせるため、組立作業の安全性が高くなる。
【0125】
次に、建築物Bの屋上Rに組み上げられて設置されたクレーン1におけるウィンチ5から繰り出されたワイヤー4の先端に吊下げ治具40を介して枠組足場ユニット10Bを保持させる。なお、吊下げ治具40の構成は、枠組足場ユニット10Bを保持できるようになっていれば、特に限定されず、適宜変更できる。
【0126】
そして、図11に示すように、ウィンチ5でワイヤー4を巻き取って、枠組足場ユニット10Bを既設の枠組足場10Aの上端よりも高い位置まで持ち上げる。その後、図12に示すように、ウィンチ5の駆動部50を保持する第一トロリー7を後方(屋上R側)へ移動させ、枠組足場ユニット10Bを既設の枠組足場10Aの上方まで移動させてから、ウィンチ5でワイヤー4を繰り出して、枠組足場ユニット10Bを既設の枠組足場10Aの上に積み上げる。
【0127】
そして、これらの工程を予定の層数になるまで繰り返して枠組足場ユニット10Bを積み重ねていくことで、複数層の枠組足場10が建築物Bの側方に沿って設置される。なお、枠組足場ユニット10Bを組み上げる場所は、クレーン1のワイヤー4が届く範囲であれば、既設の枠組足場10Aに隣接する場所である必要はないが、既設の枠組足場10Aに隣接している方が運搬距離を短くできるため、組み立て時間を短縮できる。
【0128】
なお、クレーン1は、枠組足場ユニット10Bの長さや重量に応じて2基以上設置されてもよい。その場合、複数のクレーン1を同期させて枠組足場ユニット10Bを運搬する。
【0129】
上記組立方法によれば、地上で組み立てた枠組足場ユニット10Bをクレーン1で既設の枠組足場10Aの上に積み重ねていくことで、複数層の枠組足場10を組み立てているため、既設の枠組足場10Aと枠組足場ユニット10Bの層数を少なくできる。つまり、既設の枠組足場10Aと枠組足場ユニット10Bの組み立て時における作業者の高所作業を減らすことができるため、上記組立方法によれば、組立作業の安全性が高くなる。
【0130】
そして、本実施の形態では、建築物Bの屋上Rにクレーン1を設置しているので、建築物Bの周囲にクレーン1を設置可能な場所がない場合であっても、上述したように安全性の高い組立方法で複数層の枠組足場10を組み立てできる。
【0131】
なお、建築物Bが高層マンションやビルなどの高層建物である場合、枠組足場10の層数が非常に多くなるため、作業者の高所作業を減らすことができる上記組立方法が特に有効であるが、建築物Bが低層建物であっても、高所作業を減らすことができるため、上記組立方法は有効である。
【0132】
なお、上記組立方法に利用されるクレーンは、屋上Rに設置可能であれば、本実施の形態のクレーン1には限定されないが、本実施の形態のクレーン1は、屋上Rへの設置が容易であるため、上記組立方法への利用に特に適している。
【0133】
前述したように、本実施の形態のクレーン1は、建築物Bの屋上Rに対して設置可能な支持部材2と、支持部材2から横方向に延びて建築物Bの壁面B1より外側に先端側が突出する突出梁3と、動力源を有して突出梁3に沿って自走可能に設けられる第一トロリー7と、第一トロリー7よりも突出梁3の基端側に配置されて突出梁3に沿って走行可能に設けられる第二トロリー8と、第一トロリー7に保持されてワイヤー4の先端を上昇及び下降可能な駆動部50と、第二トロリー8に保持されて駆動部50によって上昇されたワイヤー4を格納するとともに駆動部50がワイヤー4を下降させる際にワイヤー4を駆動部50へ供給する格納部51とを有するウィンチ5とを備える。
【0134】
上記構成によると、ウィンチ5が、ワイヤー4を上昇及び下降させる駆動部50と、ワイヤー4を格納する格納部51とに分離されている。そのため、ウィンチ5を駆動部50と格納部51とに分けて運搬できるため、作業者の運搬時の負担が減って、ウィンチ5の可搬性が向上する。
【0135】
ここで、クレーン1を屋上Rに設置する場合、分解したクレーン1の各部品を屋上Rへ運搬し、各部品を屋上Rで組み立てることとなる。そのため、上述したように、ウィンチ5の可搬性が向上すると、クレーン1を屋上Rへ容易に設置できるようになる。
【0136】
また、上記構成によると、突出梁3の先端側に対してウィンチ5における駆動部50と格納部51が突出梁3の軸方向で離間した状態で配置されるので、ウィンチ5の重量が分散される。よって、突出梁3の先端側に作用するモーメントを小さくできるので、クレーン1の転倒を防止できる。
【0137】
また、本実施の形態のクレーン1は、駆動部50に接続されて駆動部50と格納部51との間を移動するワイヤー4をガイドするガイド管58を備え、第二トロリー8は第一トロリー7に対して突出梁3の軸方向に間隔をあけて連結されており、格納部51は、鉛直方向を軸として回転可能であって、ワイヤー4を下方から支持する下方支持部としての複数の底部56a3と、ワイヤー4を側方から支持する側方支持部としての複数の起立部56a4とを有し、ガイド管58の開口は格納部51における回転軸から径方向にずれた位置に対して上方から対向している。
【0138】
上記構成によると、第一トロリー7と第二トロリー8の間隔が常に変わらないため、第一トロリー7に保持される駆動部50と第二トロリー8に保持される格納部51の間隔も変わらず、駆動部50に接続されるガイド管58の開口の位置も変わらない。そして、ガイド管58の開口は格納部51における回転軸から径方向にずれた位置に対して上方から対向しているため、ウィンチ5がワイヤー4を巻き取る際には、駆動部50からガイド管58を通じて格納部51に送り出されるワイヤー4は、その送り出しの勢いで格納部51の回転軸から径方向にずれた位置に押し付けられる。すると、そのワイヤー4が押し付けられる力によって格納部51は回転するため、ワイヤー4は格納部51を回転させながら側方支持部に沿って積み重ねられて絡まることなく格納部51に格納される。
【0139】
反対にウィンチ5がワイヤー4を繰り出す際には、格納部51に格納されたワイヤー4が駆動部50によって引っ張られてガイド管58を通じて駆動部50へ供給されるが、ガイド管58の開口の位置は、格納部51の回転軸から径方向にずれている。そのため、格納部51に格納されたワイヤー4がガイド管58の開口に向けて引っ張られると、そのワイヤー4を引っ張る力で格納部51が回転する。したがって、本実施の形態のウィンチ5では、格納部51を回転させながらワイヤー4を駆動部50側へ移動できるため、積み重ねられた状態のワイヤー4の繰り出しをスムーズに行える。
【0140】
つまり、上記構成によると、格納部51に駆動源を設けずとも、駆動部50によって送り出し及び引張られたワイヤー4によって格納部51が回転するため、ワイヤー4を絡ませることなく格納部51に格納できるとともにワイヤー4をスムーズに駆動部50に供給できる。
【0141】
よって、駆動部50と格納部51を離間させて配置しても、格納部51を回転させるための駆動源を設けずに済むため、ウィンチ5の軽量化と省力化を図れる。ただし、格納部51に駆動部50の駆動に同期して格納部51を回転させる駆動源を設けてもよい。その場合、接続ロッド9とガイド管58を省略しても、ワイヤー4を絡ませることなく格納部51に格納できるとともにワイヤー4をスムーズに駆動部50に供給できる。
【0142】
なお、本実施の形態では、第一トロリー7と第二トロリー8は接続ロッド9によって突出梁3の軸方向に間隔をあけて接続されているが、他の手段で第一トロリー7と第二トロリー8を接続してもよい。また、ウィンチ5は駆動部50と格納部51とが一体となっていてもよい。
【0143】
また、本実施の形態のクレーンは、建築物Bの屋上Rに対して設置可能な支持部材2と、支持部材2から横方向に延びて建築物Bの壁面B1より外側に先端側が突出する突出梁3と、突出梁3に設けられてワイヤー4を巻取り及び繰り出し可能なウィンチ5とを備え、壁面B1を基準として外側を前側とし内側を後側とすると、支持部材2は、屋上Rに起立するとともに突出梁3を支持する支持台20と、突出梁3の支持台20よりも後側に向けて延びる接続部としての接続梁材30に連結されるカウンターウェイト21とを有し、突出梁3は支持台20に対して水平方向に回転可能に支持されており、カウンターウェイト21は屋上Rに対して移動可能な状態と固定される状態を切り換え可能になっている。
【0144】
上記構成によると、突出梁3を支持台20に対して水平方向に回転させ得るとともに、カウンターウェイト21を移動させ得るため、組み上げられたクレーン1を、屋上Rに設置された貯水槽、非常用自家発電設備、室外機などの設備等の障害物を避けて屋上Rに対して容易に設置できる。
【0145】
なお、本実施の形態では、支持台20の上端に設けられた回転テーブル22によって突出梁3を支持台20に対して水平方向に回転可能に連結しているが、一例であって、他の手段で突出梁3を支持台20に対して水平方向に回転可能に連結してもよい。また、本実施の形態の突出梁3は、接続梁材30と保持梁材31とを接続して構成されているが、1つの梁材で構成されてもよい。なお、屋上Rに設置された設備等がクレーン1の設置の妨げとならない場合には、突出梁3は、支持台20に対して回転不能に連結されてもよい。
【0146】
また、本実施の形態のクレーン1は、突出梁3の側方に沿って配置されウィンチ5に対向する足場6を備えている。この構成によると、ウィンチ5が建築物Bの壁面B1よりも外側に配置された状態で、ウィンチ5に不具合があったとしても、作業者が足場6を使ってウィンチ5をメンテナンスすることができる。ただし、足場6は省略されてもよく、足場6を省略する場合は、ウィンチ5に不具合があったときに、ウィンチ5が建築物Bの壁面B1の内側に位置するまでクレーン1を移動させてからウィンチ5のメンテナンスをすればよい。
【0147】
また、本実施の形態のクレーンは分解可能な複数の部品によって構成されており、これらの部品は、それぞれ、少なくとも、間口が1800mm、奥行きが1500mm、高さが2300mmであって出入口の幅が1000mm、高さ2100mmのエレベータに収容可能な大きさで構成されている。
【0148】
ここで、建築基準法では、地上31m以上の建築物では、原則として間口が1800mm以上、奥行きが1500mm以上、高さが2300mm以上であって出入口の幅が1000mm以上、高さ2100mm以上のエレベータを設置する義務がある。
【0149】
そのため、クレーン1を構成する各部品が上述した大きさで構成されていると、特に建築物Bが地上31m以上の高層建物である場合、作業者は、クレーン1を構成するすべての部品を建築物Bに備え付けのエレベータで運搬することができる。
【0150】
したがって、クレーン1を構成する各部品を、階段を利用して建築物Bの屋上Rに搬入又は屋上Rから搬出する場合、建築物Bの高さが高いほどクレーン1の各部品の運搬距離が長くなるため、クレーン1の運搬が難しくなるが、上記構成によると、特に建築物Bが地上31m以上の高層建物である場合には、備え付けのエレベータでクレーン1の各部品を運搬できる。よって、上記構成によると、クレーン1を設置する建築物Bが高層建物であったとしても、クレーン1を屋上Rに容易に設置できる。ただし、建築物Bが地上31m未満の低層建物であったとしても、建築物Bにクレーン1を構成する各部品を運搬可能な大きさのエレベータが設置されていれば、クレーン1の屋上Rへの設置が容易になる。
【0151】
また、クレーン1を構成する各部品の一部が建築物Bに備え付きのエレベータに収容できない大きさであってもよい。その場合であっても、一部を除くクレーン1を構成する各部品をエレベータで運搬できるため、クレーン1の可搬性が向上する。なお、クレーン1を構成する各部品は、エレベータに乗せる以外の方法例えば、階段を利用して屋上Rへ運搬されてもよい。
【0152】
また、本実施の形態の建築物Bの側方に沿って複数層設置される枠組足場10の組立方法は、地上で複数層の枠組足場10を組立てして枠組足場ユニット10Bを組み上げる工程と、建築物Bの屋上Rで組み上げたクレーン1で枠組足場ユニット10Bを建築物Bの側方へ運搬し、予め建築物Bの側方に沿って組み立てておいた既設の枠組足場10Aの上に枠組足場ユニット10Bを積み上げる工程とを備える。
【0153】
上記組立方法によると、地上で組み立てた枠組足場ユニット10Bをクレーン1で既設の枠組足場10Aの上に積み重ねていくことで、複数層の枠組足場10を組み立てているため、既設の枠組足場10Aと枠組足場ユニット10Bの層数を少なくできる。つまり、既設の枠組足場10Aと枠組足場ユニット10Bの組み立て時における作業者の高所作業を減らすことができるため、上記組立方法によれば、組立作業の安全性が高くなる。
【0154】
そして、上記組立方法によれば、建築物Bの屋上Rにクレーン1を設置しているので、建築物Bの周囲にクレーン1を設置可能な場所がない場合であっても、建築物Bの周囲の環境に左右されずに、上述したように安全性の高い組立方法で複数層の枠組足場10を組み立てできる。
【0155】
なお、上記組立方法に利用されるクレーンは、屋上Rに設置可能であれば、本実施の形態のクレーン1には限定されないが、本実施の形態のクレーン1は、屋上Rへの設置が容易であるため、上記組立方法への利用に特に適している。よって、上記組立方法と本発明のクレーン1は、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。
【0156】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0157】
1・・・クレーン、2・・・支持部材、3・・・突出梁、4・・・ワイヤー、5・・・ウィンチ、6・・・足場、7・・・第一トロリー、8・・・第二トロリー、10・・・枠組足場、10A・・・既設の枠組足場、10B・・・枠組足場ユニット、20・・・支持台、21・・・カウンターウェイト、50・・・駆動部、51・・・格納部、56a3・・・底部(下方支持部)、56a4・・・起立部(側方支持部)、58・・・ガイド管、B・・・建築物、B1・・・壁面、R・・・屋上
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12