(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151108
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】シートの製造方法、シートの製造装置およびシート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241017BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20241017BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20241017BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
B29C48/08
C08J7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064248
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 公一
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F207
【Fターム(参考)】
4F006AA02
4F006AA39
4F006AB39
4F006BA11
4F006CA08
4F006DA04
4F071AA08
4F071AA09
4F071AA70
4F071AB17
4F071AC05
4F071AE19
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB06
4F071BC01
4F207AA01
4F207AG01
4F207AK07
4F207KA07
4F207KK51
(57)【要約】
【課題】低粘度の液状材料を用いる場合であっても、シートを安定して製造する。
【解決手段】(a)原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料LMを調整する工程、(b)液状材料LMを塗工機13によりシート状に塗工して塗工体を形成する工程、(c)塗工体を固化させ、シート50を得る工程、および(d)シート50を巻き取る工程、を有するシートの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、シートの製造方法:
(a)原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する工程;
(b)前記(a)工程の後、前記液状材料を塗工機によりシート状に塗工して塗工体を形成する工程;
(c)前記(b)工程の後、前記塗工体を固化させ、シートを得る工程;および
(d)前記(c)工程の後、前記シートを巻き取る工程。
【請求項2】
請求項1に記載のシートの製造方法において、
前記(b)工程において、前記液状材料を基材上にシート状に塗工する、シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシートの製造方法において、
前記(c)工程の後、前記(d)工程の前に、前記基材から前記シートを剥離する、シートの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のシートの製造方法において、
前記基材は、表面にシリコーン系または非シリコーン系の剥離剤が塗布されている、シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のシートの製造方法において、
前記(b)工程において、前記液状材料を加熱ロール上にシート状に塗工する、シートの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のシートの製造方法において、
前記加熱ロール上に塗工された前記塗工体を、他の加熱ロールを経由しながら乾燥させる、シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のシートの製造方法において、
前記原料として、グルコマンナン、セルロース系材料、ゼラチンおよび寒天から選ばれる少なくとも1種を含有する粉末状フィラーを用いる、シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のシートの製造方法において、
前記液状材料が、前記原料と溶媒とを含んでおり、
前記(c)工程において、前記溶媒を加熱により揮発させる乾燥処理工程を有する、シートの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のシートの製造方法において、
前記溶媒が、水またはアルコールである、シートの製造方法。
【請求項10】
以下を含む、シートの製造装置:
原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整し、貯留する原料容器;
基材を送り出す基材搬出部;
前記基材搬出部から送り出した前記基材上に、前記液状材料をシート状に塗工する塗工機;
前記基材上に塗工された塗工体を固化させ、シートとする固化領域;
前記固化領域の後段で、前記基材から前記シートを剥離する剥離部材;および
前記基材から剥離された前記シートを巻き取るシート巻取り部。
【請求項11】
以下を含む、シートの製造装置:
原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整し、貯留する原料容器;
加熱ロール上に、前記液状材料をシート状に塗工する塗工機;
前記加熱ロール上に塗工された塗工体を固化させ、シートとする固化領域;
前記固化領域で、前記加熱ロールから前記シートを剥離する剥離部材;および
前記加熱ロールから剥離された前記シートを巻き取るシート巻取り部。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のシートの製造装置であって、
前記固化領域において、前記シート中の溶媒を加熱により揮発させる乾燥処理部を有する、シートの製造装置。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載のシートの製造装置であって、
前記液状材料が、前記原料と溶媒とを含んでおり、
前記固化領域において、揮発した前記溶媒を回収する回収部を有する、シートの製造装置。
【請求項14】
以下を含む、シート:
グルコマンナン、セルロース系材料、ゼラチンおよび寒天から選ばれる少なくとも1種を含有するシート状成形体。
【請求項15】
請求項14に記載のシートであって、
前記シートが2以上の層を積層した多層構造を有し、前記シート状成形体を1層以上有する、シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの製造方法、シートの製造装置およびシートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートの製造方法としては、押出機により原料を溶融し、得られた溶融樹脂を押出成形用ダイ(Tダイ)からシート形状に押出すことにより製造する方法が広く知られている(例えば、特許文献1(特開2020-146853号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この押出される溶融樹脂は、押出成形用ダイ(Tダイ)から冷却ロールまで所定の距離(エアギャップ)が設けられるため、そのエアギャップ間において、溶融樹脂の自重や張力、速度等により、ダイス幅よりも得られるフィルム幅が狭くなるネックインと呼ばれる現象が生じる。
【0005】
このとき、溶融樹脂の粘度が低い場合には、そのネックイン量が大きくなる傾向にあり、求める形状のシートを製造することが困難となる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂材料からなるシートを製造するにあたって、原料を含む液状材料の粘度が低い場合であっても、求める形状のシートを得ることができるシートの製造方法およびシートの製造装置を提供することを目的とする。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態であるシートの製造方法は、(a)原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する工程、(b)液状材料を塗工機によりシート状に塗工して塗工体を形成する工程、(c)塗工体を固化させ、シートを得る工程、(d)シートを巻き取る工程、を有する。
【0008】
一実施の形態であるシートの製造装置は、原料を含有する、所定の粘度の液状材料を調整し、貯留する原料容器、液状材料を塗工する塗工機、塗工された塗工体を固化させ、シートとする固化領域、シートを巻き取るシート巻取り部、を有する。
【0009】
上記シートの製造方法およびシートの製造装置において、液状材料の調整は、その粘度が100000mPa・s以下となるようにする。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、シートの製造において、押出成形用ダイ(Tダイ)を用いた場合にはネックイン量が大きくなる粘度の液状材料を用いる場合であっても、シートを安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1のシートの製造装置の概略構成を示した図である。
【
図2】
図1において、塗工機としてグラビアロールを適用した場合を説明する図である。
【
図3】実施の形態2のシートの製造装置の概略構成を示した図である。
【
図4】実施の形態3のシートの製造装置の概略構成を示した図である。
【
図5】
図4のシートの製造装置の変形例を示した図である。
【
図6】グルコマンナンの化学構造式を示す図である。
【
図8】不織布シートを用いた、水分回収装置の概略構成を示した図である。
【
図9】不織布シートを用いた、水分回収装置の概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
(実施の形態1)
<シートの製造装置>
図1は、本実施の形態のシートの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【0014】
この
図1に示したシートの製造装置10は、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整し、貯留する原料容器11、基材BMを送り出す基材搬出部12、基材搬出部12から送り出した基材BM上に、液状材料を塗工する塗工機13、基材BM上に塗工された液状材料を固化させ、シートとする固化領域14、固化領域14の後段で、基材BMからシート50を剥離する剥離部材15、基材BMから剥離されたシート50を巻き取るシート巻取り部16、を有する。さらに、シートが剥離された基材BMを巻き取る基材巻取り部17を有している。
【0015】
原料容器11は、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整し、貯留する容器である。この原料容器11に貯留される液状材料は、後述する塗工機13で基材BM上に塗工される塗工液と言うこともできる。
【0016】
この原料容器11では、原料を含有し、粘度が100000mPa・s以下の液状材料となるように調整する。例えば、原料を加熱して溶融することにより上記粘度を満たす場合には、その原料のみを原料容器11に貯留できる。この場合、粘度調整としては、原料を上記粘度となるように加熱する加熱部を有するようにすればよい。この加熱部としては、例えば、ヒータ等の加熱源が挙げられ、この加熱源により原料を加熱し、原料容器11内でその温度を保持するようにすればよい。
【0017】
また、原料を溶媒と混合し、粘度が100000mPa・s以下の液状材料となるように調整することもできる。例えば、原料を上記のように加熱、溶融させるためには非常に高温に加熱しなければならない場合、加熱、溶融してもその粘度が100000mPa・sにすることが難しい場合などには、溶媒を用いて原料を溶解し、その粘度を100000mPa・s以下に調整できる。また、加熱、溶融により粘度が100000mPa・s以下となる原料であっても、溶媒を用いて、その粘度を調整することもできる。
【0018】
このように、原料と溶媒とを混合し、原料溶液とする場合は、例えば、この原料容器11に溶媒を供給する溶媒供給部を設け、原料溶液(液状材料)が上記粘度範囲となるように溶媒の供給量を調整するようにする。
【0019】
なお、ここで液状材料の粘度は、塗工機13により塗工するための塗工液の粘度であり、10~80000mPa・sが好ましく、100~10000mPa・sがより好ましい。
【0020】
基材搬出部12は、基材BMを送り出す構成の部材である。ここで、基材BMは、上記液状材料を塗工するための基材である。この基材搬出部において、基材BMがロール状に巻かれており、連続して基材BMを塗工機13まで送り出し、その表面に液状材料を塗工させるようにできる。
【0021】
塗工機13は、原料容器11からポンプ等により送られてくる液状材料を基材BM上に塗工する装置である。この塗工機13は、シート成形に用いられる公知の塗工機を用いることができ、例えば、ダイコータ、グラビアコータ、バーコータ等の接触塗工処理を行う方式の塗工機が挙げられる。塗工機13により、基材BM上に、一様の幅で液状材料を塗工できる。これら塗工機は、例えば、液状材料の粘度に応じて選択することができる。
【0022】
この塗工機13として、
図1ではダイコータを適用した場合を例示している。この場合、液状材料をダイヘッドから押出しながら基材BM上に塗工するスロットダイ方式のダイコータが好ましい。このとき、塗工機13の液状材料を吐出するスリットと、基材を介して対向する位置にバックロール18が設けられる。
【0023】
また、塗工機13として、
図2ではグラビアコータを適用した場合を例示している。
図2は、シートの製造装置10において、グラビアコータを用いて、基材BM上へ液状材料LMを塗工する構成を説明する図である。ここで、グラビアコータは内部構成がわかるようにその断面構造を示している。
【0024】
この
図2に示したグラビアコータは、縦型の塗工機であり、チャンバー(槽)13aが垂直方向(重力方向に対し平行な方向)に配置されている。この塗工機は、液状材料LMを貯留するためのチャンバー(槽)13aと、チャンバー(槽)13aにその一部が浸かる塗工用のロール(グラビアロール)CRと、液状材料LMの飛び散り防止とロール表面の液量を調整するためのブレード13b、チャンバー(槽)内の液状材料と塗工用ロール(グラビアロール)CRの隙間からの塗工液の漏洩を防止するための第2のブレード13cとを有する。
【0025】
第1のブレード13bは、塗工用ロールCRの回転方向側に、塗工用ロールCRの表面に付着した液状材料LMの液量を調整するように、第1のブレード13bの角度や押付圧を調整できるように配置されている。そして、塗工用ロールCRの表面に付着した液状材料LMが基材BMの表面に転写されることによりシート状の液状材料SLMが形成される。
【0026】
なお、グラビアコータのチャンバー(槽)13aは、縦型であっても、横型であってもよく、横型の場合は、塗工液の漏洩を防止するための第2のブレード13cは不要となり、液状材料LMの飛び散り防止とロール表面の液量を調整するための第1のブレード13bのみを有する構成とできる。
【0027】
固化領域14は、基材BM上に塗工されたシート状の液状材料を固化させて、シートとする領域である。この固化領域14では、液状材料が原料のみからなる場合は、基材BM上に塗工されたシート状の原料の温度を下げて、固化させるようにする。このとき、例えば、特に冷却手段を設けずに25℃程度の常温等で自然にシート状の原料の温度を低下させて固化させることができる。また、冷却手段を設けて、シート状の原料の温度を積極的に低下させ、固化させるようにしてもよい。
【0028】
また、液状材料が、原料と溶媒とを混合した原料溶液である場合は、基材BM上に塗工されたシート状の液状材料から加熱等により溶媒を揮発させて、固化させるようにする。このとき、特に加熱手段を設けずに常温等で自然に溶媒を揮発させて固化させることができる。また、ヒータ等の加熱手段を設けて、シート状の液状材料の温度を積極的に加熱し、溶媒の揮発を促進させ、固化させるようにしてもよい。
【0029】
剥離部材15は、上記固化領域14の後段に設けられ、該固化領域14で固化して得られたシート50を、基材BMから剥離するための部材である。この剥離部材15としては、シート50と基材BMとを分離できればよく、公知の剥離部材を用いることができる。この剥離部材15としては、例えば、その鋭角に設けられた先端部分を基材BMとシート50との間に挿入し、基材BMからシート50を剥離できるスクレーパー等が挙げられる。
【0030】
シート巻取り部16は、剥離部材15で基材BMから剥離したシート50を巻取り、ロール状のシートとして収容可能な部材である。ここで巻き取られたシート50は、ロール状のシートとして製品とできる。また、必要に応じて、このシートにさらに処理を行いシート製品とすることもできる。
【0031】
基材巻取り部17は、剥離部材15でシート50が剥離された基材BMを巻取り、ロール状の基材として収容可能な部材である。ここで巻き取られた基材BMは、再度基材BMとしてシート50の製造に用いることができる。このとき、必要に応じて、特に、シート50を形成した表面は洗浄等を行って、原料残りがないようにすることが好ましい。
【0032】
また、基材搬出部12から基材巻取り部17までの間には、基材BMを安定して送り出すことができるように送りロール19を設けることが好ましい。この送りロール19は、基材BM(液状材料が塗工された後は、塗工体またはシート50が形成された基材BM)を挟んで、後段に送り出す作用を奏する。また、このとき圧力をかけて塗工体またはシート50と基材BMとを密着させるようにしてもよい。
【0033】
<シートの製造方法>
次に、実施の形態1におけるシートの製造方法について説明する。このシートの製造方法では、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する工程((a)工程)、(a)工程の後、液状材料をシート状に成形する工程((b)工程)、(b)工程の後、シート状に成形した液状材料を固化させ、シートを得る工程((c)工程)、および(c)工程の後、シートを巻き取る工程((d)工程)、を有する。
【0034】
以下、具体的な装置構成として、
図1で説明したシートの製造装置10を用いたシートの製造方法を説明する。
【0035】
まず、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する工程を行う((a)工程)。
【0036】
この粘度を調整する工程では、上記したように、原料容器11において、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する。例えば、原料を加熱して溶融することにより上記粘度を満たす場合には、その原料のみを原料容器11に貯留して、その原料を上記粘度となるように加熱して粘度調整を行う。
【0037】
また、原料を溶媒と混合し、その粘度を100000mPa・s以下に調整する場合、原料に溶媒を混合して得られる原料溶液(液状材料)が、上記粘度範囲となるように溶媒の供給量を調整する。この場合、必要に応じて加熱等の温度調整を組み合わせてもよい。
【0038】
この(a)工程における液状材料の粘度は、上記の通り、塗工機13により塗工するための塗工液の粘度であり、10~80000mPa・sが好ましく、100~10000mPa・sがより好ましい。
【0039】
次いで、(a)工程の後、液状材料を塗工機によりシート状に塗工する工程を行う((b)工程)。
【0040】
本実施の形態では、基材搬出部12を有しており、この基材搬出部12から送り出された基材BM上に、塗工機13により液状材料をシート状に塗工することにより、シート形状の液状材料SLM(塗工体)が得られる。
【0041】
ここで用いる基材BMは、剥離基材であることが好ましい。この基材BMは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料からなる基材であることが好ましい。
【0042】
また、基材BMからシート50を剥離することを容易にするために、基材BMの表面に剥離剤層を設けてもよい。このとき用いる剥離剤としては、公知の剥離剤を用いることができ、例えば、シリコーン系剥離剤、非シリコーン系剥離剤等が挙げられる。
【0043】
また、基材BMは、次の液状材料の塗工前に、コロナ放電等により表面張力を高める処理を行うことも好ましい。このような処理を行う場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、表面張力が50~70dyn/cmの範囲、ポリフェニレンサルファイド(PPS)の場合、表面張力が60~80dyn/cmの範囲となるように、コロナ放電処理を行うことが好ましい。
【0044】
このとき、液状材料LMは、最終的に形成するシート50の厚さに応じて、その塗工量を調整し、シート状の液状材料SLMの厚さを決定すればよい。すなわち、液状材料LMが原料のみからなる場合、塗工直後のシート状の液状材料SLMは、その厚さが大きく変化することなくシート50となるため、目的の厚さと同等の厚さとなるように塗工する。また、原料と溶媒とを混合した原料溶液を液状材料LMとする場合、塗工直後のシート状の液状材料SLMと、得られるシート50との厚さが変化する。これは、シート50を形成するにあたって、溶媒が揮発するためであり、その揮発分を考慮して、シート50が目的の厚さとなるように原料溶液(液状材料)を塗工する。
【0045】
液状材料LMの塗工においては、その基材の搬送速度、用いる液状材料LMの粘度、塗工機13における液状材料LMの吐出量などの様々な要因により、塗工するシート状の液状材料SLMの厚さが変わるため、上記目的の厚さとなるように、これら塗工条件を調整するようにすればよい。
【0046】
液状材料LMの粘度は、上記したように100000mPa・s以下とする。基材BMの搬送速度は、例えば、1~500m/分が好ましく、5~300m/分がより好ましい。
【0047】
なお、液状材料LMの粘度に応じて、塗工機13を選択することが好ましい。例えば、液状材料LMの粘度が1000mPa・s以上である場合、塗工機13としてダイコータを用いることが好ましく、液状材料LMの粘度が1000mPa・s未満である場合、塗工機13としてグラビアコータを用いることが好ましい。また、液状材料LMの粘度が10000mPa・s以上の場合、スクリュ形状を有する装置、たとえば単軸押出機や二軸押出機などをポンプの代わりに用いることが好ましい。
【0048】
さらに、(b)工程の後、シート状に成形した液状材料を固化させ、シート50を得る工程を行う((c)工程)。
【0049】
本実施の形態では、基材BM上に塗工された液状材料を固化させて、基材BMとシート50が積層したシート状物が得られる。ここで、液状材料の固化は、固化領域14において行われる。
【0050】
液状材料が原料のみからなる場合、基材BM上に塗工されたシート状の原料の温度を下げて、固化させるようにする。このとき、例えば、特に冷却手段を設けずに常温等で自然にシート状の原料の温度を低下させて固化させることができる。また、冷却手段を設けて、シート状の原料の温度を積極的に低下させ、固化させるようにしてもよい。
【0051】
このとき固化する温度は、用いる原料に固有のものであり、その原料の融点またはガラス転移点未満の温度となるようにすればよい。このような温度とすることにより、液状の原料が固化し、シートが得られる。
【0052】
また、液状材料が、原料と溶媒とを混合した原料溶液である場合、基材BM上に塗工されたシート状の液状材料から加熱等により溶媒を揮発させて、固化させるようにする。このとき、溶媒の揮発は常温等で自然に行ってもよいが、製造効率を向上させるために、ヒータ等の加熱手段を設けて、シート状の液状材料を加熱し、溶媒の揮発を促進させ、固化させることが好ましい。このようにしてシート50を形成することができる。
【0053】
このとき、
図1のシートの製造装置10では、シート50が基材BM上に積層して得られ、スクレーパー等の剥離部材15を用い、基材BMからシート50を剥離することができる。この剥離操作により、基材BMから物理的に独立したシート50が得られる。
【0054】
そして、この剥離の後、シート50を巻き取る工程を行う((d)工程)。ここでは、シート巻取り部16により、上記基材BMから剥離して得られたシート50をロール状に巻き取る。このようにして、製品としてのシートを連続して得ることができる。
【0055】
また、シートの巻取りと同時に、基材巻取り部17により、シートが剥離された基材BMをロール状に巻き取る。ここで巻き取られた基材BMは、再度基材BMとしてシート50の製造に用いることができる。このとき、必要に応じて、特に、シート50を形成した表面は洗浄等を行って、原料残りがないようにすることが好ましい。
【0056】
上記実施の形態の構成とすることにより、粘度の低い液状材料を原料として用いる場合であっても、ネックイン等のように所望の形状とは大きく異なるようなシートとなることを抑制でき、使用できる原料の制限が大幅に緩和され、適用範囲の広いシートの製造技術を提供することができる。
【0057】
(実施の形態2)
<シートの製造装置>
図3は、他の実施の形態のシートの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【0058】
この
図3に示したシートの製造装置20は、上記のシートの製造装置10と同様に、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整し、貯留する原料容器11、基材BMを送り出す基材搬出部12、基材搬出部12から送り出した基材BM上に、液状材料を塗工する塗工機13、基材BM上に塗工された液状材料を固化させ、シートとする固化領域14、固化領域14の後段で、基材BMからシート50を剥離する剥離部材15、基材BMから剥離されたシート50を巻き取るシート巻取り部16、を有する。さらに、シートが剥離された基材BMを巻き取る基材巻取り部17を有している。
【0059】
そして、このシートの製造装置20では、さらに、乾燥処理部21を有する点で、シートの製造装置10とは異なる。以下、同一の構成についての説明は省略し、異なる構成について詳細に説明する。
【0060】
このシートの製造装置20は、上記の通り、シートの製造装置10の構成に加え、乾燥処理部21が設けられている。乾燥処理部21は、固化領域14に配置され、基材BM上にシート状に形成された液状材料に含まれる溶媒を乾燥させる部材である。すなわち、この実施の形態2は、液状材料として、原料と溶媒とを混合した原料溶液(液状材料)が用いられる態様の実施形態である。
【0061】
この乾燥処理部21は、(c)工程において、基材BM上に吐出された液状材料に含まれる溶媒を効率的に揮発させるために設けられる。通常、乾燥処理部21内は、溶媒の揮発を促進するために加熱雰囲気とする。加熱雰囲気とするには、例えば、ヒータ等の熱源により設定した温度に加熱した気体(空気等)を乾燥処理部21内に導入するようにすればよい。このとき、加熱した気体の導入操作を継続して行い、乾燥処理部21内の温度が設定温度付近に保持できるようにすることが好ましい。
【0062】
この加熱温度は、使用する溶媒に応じて最適な温度を設定できる。加熱温度としては、例えば、溶媒として水や低級アルコールを用いた場合には、50~90℃が好ましい。ただし、上限値は溶媒の沸点未満の温度とする。このような温度範囲とすることで、溶媒の揮発効率を有意に向上でき、溶媒の沸騰によりシート内に気泡が発生するような事態を回避できる。また、揮発、乾燥を促進するために、シート状の液状材料に対して送風できる送風機を設けた構成としてもよい。
【0063】
また、乾燥処理部21を設けた場合、その乾燥処理部21内で発生した揮発した溶媒を、冷却して液化し、回収する溶媒回収機構を設けてもよい。この溶媒回収機構を設けることで、溶媒を再利用することができる。さらに、ここで回収した溶媒を、再度原料を溶解するための溶媒として循環させて再利用することもできる。このように再利用することで、本実施の形態のシートの製造操作に関し、コストを低減させ、効率的にシートを製造できる。
【0064】
<シートの製造方法>
本実施の形態においては、使用するシートの製造装置20は、上記したようにシートの製造装置10とは、乾燥処理部21を有するか否かの点で異なる。そのため、シートの製造方法における基本的な操作は、実施の形態1と同一である。
【0065】
この実施の形態2では、実施の形態1での操作に加え、基材BM上に塗布された液状材料に対して、乾燥処理部21により液状材料が含む溶媒を加熱により揮発、乾燥させ、効率的に、シート状の液状材料SLMをシート50とするものである。この乾燥処理は、固化領域14において行われる。
【0066】
この乾燥処理は、上記のように使用する溶媒の揮発が促進される温度にまで加熱することが好ましく、使用する溶媒に応じて最適な温度を設定する。この加熱温度としては、例えば、溶媒として水や低級アルコールを用いた場合には、50~90℃が好ましい。ただし、上限値は溶媒の沸点未満の温度とする。このような温度範囲とすることで、溶媒の揮発効率を有意に向上でき、溶媒の沸騰によりシート内に気泡が発生するような事態を回避できる。また、揮発、乾燥を促進するために、シート状の液状材料SLMに対して送風できる送風機を設けた構成としてもよい。
【0067】
また、上記のように溶媒回収機構を設け、乾燥処理部21で揮発した溶媒を、冷却して液化させ、溶媒を回収することができる。このように回収した溶媒は、再度原料の溶媒として循環させて再利用することができる。
【0068】
(実施の形態3)
<シートの製造装置>
図4は、本実施の形態のシートの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【0069】
この
図4に示したシートの製造装置30は、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整し、貯留する原料容器11、加熱ロール31(31a、31b、31c)、加熱ロール31(31a)上に、液状材料を塗工する塗工機13、加熱ロール31(31a)上に塗工された液状材料を固化させ、シートとする固化領域32、加熱ロール31(31c)からシート50を剥離する剥離部材33、加熱ロール31(31c)から剥離されたシート50を巻き取るシート巻取り部16、を有する。
【0070】
このシートの製造装置30は、原料容器11、塗工機13、シート巻取り部16および送りロール19は、実施の形態1と同一の構成のものとでき、その説明は省略する。また、このシートの製造装置30は、基材を用いないため、基材搬出部12、基材からシート50を剥離する剥離部材15、基材巻取り部17を有していない。
【0071】
本実施の形態では、実施の形態1とは異なり、加熱ロール31を有している。そして、塗工機13を用い、この加熱ロール31(31a)上に直接液状材料を塗工する構成となっている。加熱ロール31は、塗工機13から塗工された原料溶液(液状材料)に含まれる溶媒の揮発を促進する温度に加熱し、固化させる部材である。
【0072】
この加熱ロール31は、複数個設けてもよい。複数個の加熱ロール31を設けることで、塗工された液状材料から溶媒を揮発させ、乾燥させる時間を確保でき、より固化の度合いを進行させることができる。
図4では、加熱ロール31として、加熱ロール31a、31b、31cと3つの加熱ロールを有する例を示している。
【0073】
固化領域32は、このシートの製造装置30では、塗工機13から原料溶液(液状材料)が加熱ロール31上に塗工された部分から、シートを巻き取るまでの間に設けられる。この固化領域32において、主として溶媒を揮発させ、乾燥、固化させる部分は加熱ロール31が設けられている領域である。
【0074】
剥離部材33は、加熱ロール31(31c)から溶媒を揮発させたシート(乾燥途中のものも含む)を剥離する部材である。これにより、シートのみが独立し、その後、このシートを送りロール19により搬送しつつ、最終的に製品となるシート50とし、シート巻取り部16によりロール状に巻き取るようにする。
【0075】
<シートの製造方法>
次に、実施の形態3におけるシートの製造方法について説明する。このシートの製造方法では、実施の形態1と同様に、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する工程((a)工程)、(a)工程の後、液状材料をシート状に成形する工程((b)工程)、(b)工程の後、シート状に成形した液状材料を固化させ、シートを得る工程((c)工程)、および(c)工程の後、シートを巻き取る工程((d)工程)、を有する。
【0076】
以下、具体的な装置構成として、
図4で説明したシートの製造装置30を用いたシートの製造方法を説明する。
【0077】
まず、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する工程を行う((a)工程)。
【0078】
この粘度を調整する工程は、上記したように、原料容器11において、原料を含有する、粘度が100000mPa・s以下の液状材料を調整する。例えば、原料を溶媒と混合し、その粘度を100000mPa・s以下に調整する場合、原料に溶媒を混合して得られる原料溶液(液状材料)が、上記粘度範囲となるように溶媒の供給量を調整する。
【0079】
ここで原料溶液の粘度は、上記の通り、塗工機13により塗工するための塗工液の粘度であり、10~80000mPa・sが好ましく、100~10000mPa・sがより好ましい。
次いで、(a)工程の後、液状材料をシート状に成形する工程を行う((b)工程)。
【0080】
本実施の形態では、加熱ロール31を有しており、この加熱ロール31上に、塗工機13により液状材料を塗工することにより、液状材料をシート状に成形する。
【0081】
このとき、液状材料は、最終的に形成するシート50の厚さに応じて、その塗工量を調整し、シート状の液状材料SLMの厚さを決定すればよい。すなわち、原料と溶媒とを混合した原料溶液の場合、塗工直後のシート状の液状材料SLMと、得られるシート50との厚さが異なる。これは、シート50を形成するにあたって、溶媒が揮発するためであり、その揮発分を考慮して、シート50が目的の厚さとなるように原料溶液(液状材料)を塗工する。
【0082】
液状材料の塗工においては、その加熱ロール31の搬送速度(回転速度)、用いる液状材料の粘度、塗工機13から液状材料の吐出量などの様々な要因により、塗工するシート状の液状材料SLMの厚さが変わるため、上記目的の厚さとなるように、これら塗工条件を調整するようにすればよい。
【0083】
液状材料の粘度は、上記したように100000mPa・s以下とする。加熱ロール31の搬送速度は、例えば、1~500m/分が好ましく、5~300m/分がより好ましい。
【0084】
さらに、(b)工程の後、シート状に成形した液状材料を固化させ、シート50を得る工程を行う((c)工程)。
【0085】
本実施の形態では、加熱ロール31上に塗工された液状材料を固化させて、シート50が得られる。ここで、液状材料の固化は、固化領域32において行われる。
【0086】
液状材料が、原料と溶媒とを混合した原料溶液である場合、加熱ロール31上に塗工されたシート状の液状材料SLMから加熱等により溶媒を揮発させて、固化させるようにする。このとき、溶媒の揮発を促進するために、ロール内部にヒータ等の加熱手段を設けて、シート状の液状材料SLMを加熱し、溶媒の揮発を促進させ、固化させる。
【0087】
図4では、加熱ロール31として、加熱ロール31a、31bおよび31cの3つの加熱ロールを設けており、まず、塗工機13から加熱ロール31a上にシート状の液状材料SLMが吐出され、この液状材料は、加熱ロール31aと直接接触することにより加熱される。したがって、液状材料は吐出直後から、含有する溶媒が積極的に揮発するような構成となっている。
【0088】
このシート状の液状材料SLMは、加熱ロール31aから、加熱ロール31bおよび加熱ロール31cへと順番に経由して、それぞれの加熱ロールで溶媒を揮発、乾燥させながら、シートとなる。このように複数の加熱ロール31を経由させることで、乾燥時間を確保できる。
【0089】
加熱ロール31における加熱温度としては、使用する溶媒に応じて最適な温度を設定すればよく、例えば、溶媒として水や低級アルコールを用いた場合には、50~90℃が好ましい。ただし、上限値は溶媒の沸点未満の温度とする。このような温度範囲とすることで、溶媒の揮発効率を有意に向上でき、溶媒の沸騰によりシート内に気泡が発生するような事態を回避できる。また、揮発、乾燥を促進するために、シート状の液状材料SLMに対して送風できる送風機を設けた構成としてもよい。
【0090】
このとき、
図4のシートの製造装置30では、固化したシート50は、加熱ロール31(31c)上に設けられ、スクレーパー等の剥離部材33を用い、加熱ロール31(31c)からシート50を剥離する。この剥離操作により、加熱ロール31(31c)から物理的に独立したシート50とできる。
【0091】
そして、この剥離の後、シート50は、送りロール19により搬送され、その後、シート50を巻き取る工程を行う((d)工程)。ここでは、シート巻取り部16により、シート50をロール状に巻き取る。このようにして、製品としてのシートを連続して得ることができる。
【0092】
上記実施の形態の構成とすることにより、粘度の低い液状材料を原料として用いる場合であっても、ネックイン等のように所望の形状とは大きく異なるようなシートとなることを抑制でき、使用できる原料の制限が大幅に緩和され、適用範囲の広いシートの製造技術を提供することができる。
【0093】
[変形例]
<シートの製造装置>
実施の形態3において、
図5に示したシートの製造装置40のような構成とすることができる。このシートの製造装置40は、シートの製造装置30と同一の構成を有し、さらに、加熱ロール31を内部に配置するようにした乾燥処理部41および、送りロール19でシートを搬送する箇所に乾燥処理部42を設けたものである。すなわち、シートの製造装置40は、シートの製造装置30とは、乾燥処理部41,42が追加で設けられている点で異なる。
【0094】
乾燥処理部41は、固化領域32に配置され、加熱ロール31を内部に配置するようにした部材である。この乾燥処理部41は、加熱ロール31に塗工された液状材料に含まれる溶媒を効率的に揮発、乾燥させる作用を有する。
【0095】
乾燥処理部41は、その内部の温度を溶媒の揮発を促進する温度に加熱することが好ましい。この温度は、上記加熱ロール31で説明した温度と同様にすればよく、使用する溶媒に応じて適宜調整すればよい。例えば、溶媒として水や低級アルコールを用いた場合には、50~90℃が好ましい。ただし、上限値は溶媒の沸点未満の温度とする。このような温度範囲とすることで、溶媒の揮発効率を有意に向上でき、溶媒の沸騰によりシート内に気泡が発生するような事態を回避できる。また、揮発、乾燥を促進するために、シート状の液状材料SLMに対して送風できる送風機を設けた構成としてもよい。
【0096】
また、乾燥処理部41を設けた場合、その乾燥処理部41内で発生した揮発した溶媒を、冷却して液化し、回収する溶媒回収機構を設けてもよい。この溶媒回収機構を設け、さらにここで回収した溶媒を、再度原料の溶媒として循環させて再利用することができる。このように再利用することで、本実施の形態のシートの製造操作に関し、コストを低減させ、効率的にシートを製造できる。
【0097】
乾燥処理部42は、固化領域32に配置され、加熱ロール31から剥離されたシートにおいて残留する溶媒をさらに乾燥させる部材である。この乾燥処理部42は、実施の形態2で説明した乾燥処理部21と同一の構成とすることができる。なお、本実施の形態では、乾燥処理部41が主として溶媒を揮発させるため、乾燥処理部42は、残留する溶媒があった場合に、さらに乾燥させる操作を行う部分であり、補助的な役割を果たす。そのため、乾燥処理部として、乾燥処理部42を省略し、乾燥処理部41のみを設ける構成としてもよい。
【0098】
<シートの製造方法>
本変形例においては、使用するシートの製造装置40は、上記したようにシートの製造装置30とは、乾燥処理部41、42を有するか否かの点でのみ異なる。そのため、シートの製造方法における基本的な操作は、実施の形態3と同一である。
【0099】
この変形例では、実施の形態3での操作に加え、加熱ロール31上に塗布された液状材料に対して、乾燥処理部41により液状材料が含む溶媒を揮発、乾燥させ、シート状の液状材料SLMを効率的にシート50とするものである。この乾燥操作は、固化領域32において行われる。
【0100】
また、上記のように溶媒回収機構を設け、乾燥処理部41で揮発した溶媒を、冷却して液化させ、溶媒を回収することができる。このように回収した溶媒は、再度原料の溶媒として循環させて再利用することができる。
【0101】
<原料>
次に、実施の形態1~3で用いられる原料について説明する。ここで、原料は特に限定されず、上記の通り、塗工機13により塗工するための液状材料として、粘度が100000mPa・s以下となる液状材料であればよい。この液状材料は、原料を溶融させて調整しても、溶媒と混合、溶解して調整してもよい。
【0102】
この原料としては、例えば、樹脂等の成型において、いわゆる射出グレードや紡糸グレード等の低粘度の液状樹脂をダイから射出するような樹脂が例示できる。
【0103】
また、原料として、生分解性材料などを用いることもできる。本発明における生分解性材料としては、水溶性材料が適しており、溶媒として水を用いて溶解させ、低粘度の液状材料を得ることが容易であることから、成形性に優れるだけではなく、環境負荷が低い点にも優れる。
【0104】
本実施の形態で用いることができる原料として、例えば、多糖類やゼラチン等が挙げられ、多糖類としては、例えば、グルコマンナン、セルロース系材料、ペクチン、でんぷん、イソマルトデキストリン、寒天等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。特に、グルコマンナン、セルロース系材料、ゼラチンおよび寒天から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0105】
グルコマンナンは、コンニャクイモの塊茎に約10%含まれる水溶性多糖類で、こんにゃく粉をアルコール精製することによって抽出できる。グルコマンナンは、
図6に示す化学構造を有しており、D-グルコースとD-マンノースが1:1.6の割合でβ-1,4結合している多糖類である(nは単位構造の繰り返し数を示す)。50~60個の糖に対し1個の割合で分岐を有しており、分子量は大きく、100万を超えるものもある。
【0106】
ここで用いるグルコマンナンは、分子量が20~200万の範囲が好ましい。このような分子量を有するグルコマンナンは、水に1質量%添加して溶融させたときの粘度が1000~20000mPa・sとなる。
【0107】
また、グルコマンナンは、多数の水酸基を有し、アルコール類を溶媒として用いることで溶解させ、容易に低粘度化できる。
【0108】
セルロース系材料は、セルロース、セルロースを一部に含む材料である。セルロースは、多数のβ-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した天然に存在する高分子で、
図7に示した化学構造を有し、分子式(C
6H
10O
5)
nで表される炭水化物(多糖類)である。このセルロース系材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバーなども挙げられる。
【0109】
ここで用いるセルロース系材料は、分子量が2000~20万の範囲が好ましい。このような分子量を有するセルロース系材料は、水に1質量%添加して溶融させたときの粘度が10~5000mPa・sとなる。
【0110】
また、セルロース系材料は、多数の水酸基を有し、アルコール類を溶媒として用いることで溶解させ、容易に低粘度化できる。
【0111】
ゼラチンは、繊維状のタンパク質コラーゲンであり、寒天は、紅藻類の粘液質を固めたものを凍結・乾燥させて得られ、そのままでは水に不溶であるが、加熱することで溶融して低粘度化できる。
【0112】
さらに、上記液状材料には、フィラーを含有させることもできる。フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイトなどの無機物やセルロース(セルロースナノファイバー含む)、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、フラーレン、アラミド繊維などを用いることができる。セルロースとして、セルロースの親水基が、疎水基に置換されたものを用いてもよい。
【0113】
(実施の形態4)
<シート>
本実施の形態のシートは、上記した低粘度の液状材料を用いて構成されたシート状成形体からなる。この低粘度の液状材料としては、上記したように、原料を溶融したものまたは原料を溶媒に溶解させて得られたものであって、原料としては、例えば、グルコマンナン、セルロース系材料、ゼラチンおよび寒天から選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0114】
このシートは、シート状成形体そのものであってもよく、シート状成形体の表面に、各種処理を行ったものでもよい。シートの厚さは、任意の厚さとでき、例えば、10μm~5mmが好ましく、20μm~3mmがより好ましい。
【0115】
また、このシート状成形体は、2以上の層を積層した多層構造のシートとでき、その際に全ての層を本実施の形態のシートとしたものでもよいし、一部の層を本実施の形態のシートとし、その他の層を本実施の形態以外のシートとして積層したものであってもよい。すなわち、本実施の形態で用いるシート状成形体を1層以上有するものであればよい。
【0116】
このシートとして、グルコマンナンを原料として用いた場合について、具体的に説明する。まず、ナウフーズ社製のグルコマンナンを用意し、このグルコマンナンを水に0.5wt%添加して溶融させることで、粘度が10000mPa・sの液状材料とする。ここで、溶媒を使用せずに上記粘度の液状材料となるため、グルコマンナン単独で、液状材料とできる。
【0117】
このように加熱して得られた液状材料を、例えば、
図1に示したシートの製造装置10を用いて、シート50を製造する。このとき、基材BMとしては、表面にシリコーン系剥離剤層を設け、幅40cm、厚さ0.5mmのポリエチレン(PE)製のシート状の基材を用い、基材BMの搬送速度を0.1m/秒として送り出す。そして、液状材料LMを吐出するスリット幅が1mmの塗工機13(ダイコータ)から、液状材料LMの吐出量を3000mL/分で基材上に塗工する。
【0118】
シート状の液状材料SLMを、常温で自然冷却により固化させつつ送りロール19により搬送してシート50と基材BMとの積層体を得て、剥離部材15により基材BMからシート50を剥離する。剥離した厚さ0.5μmのシート50をシート巻取り部16により巻き取ってロール状のシート50を得ることができる。
【0119】
このようにして得られるグルコマンナン製のシートは、その原料の吸湿性を応用した吸水性シートとして使用することができる。この吸水性シートとしての使用例について、
図8および9を用いて説明する。これらの図において、矢印は熱エネルギーの移動を示している。
【0120】
図8および9は、太陽光を利用した、グルコマンナン製のシート50を吸水性シートとして応用する場合の例である。ここで示した、水分回収装置100は、集熱器101、蓄熱槽102、傾斜板103、および水分回収容器104から構成されている。
【0121】
集熱器101は、例えば、太陽光から熱エネルギーを取り出し、蓄熱槽102に移動させることができる機器である。蓄熱槽102は、集熱器101で集められた熱を蓄える部分であり、蓄えた熱は所望のタイミングでシート50を加熱するために使用できるようになっている。傾斜板103は、シート50の上方に傾斜して配置された板状体である。この傾斜板103は、シート50から放出された水蒸気を冷やして液化し、水分回収容器104へと導くものである。水分回収容器104は、傾斜板103に導かれた液化した水を貯留する容器である。
【0122】
この水分回収装置100は、例えば、以下のように使用する。まず、
図8に示したように、日中は、太陽光の熱エネルギーを集熱器101により集熱し、ここで集められた熱エネルギーを蓄熱槽102に蓄熱する。ここで、シート50は外部雰囲気に晒されているが、空気中に含まれる水分(水蒸気)を吸湿する。上記したようにグルコマンナン製のシート50は吸湿性に優れ、多くの水分を保持できる。
【0123】
次いで、陽が落ちた夜間においては、
図9に示したように、蓄熱槽102で蓄えた熱エネルギーを利用し、シート50を加熱する。この加熱は、シート50が吸湿した水分を放出(放湿)させる温度とするもので、例えば、80~100℃が好ましい。ここで、シート50から放出された水分は、その上方に拡散していき、傾斜板103と接触して、その表面で液化する。液化した水分は、その傾斜板103の傾斜に沿って、傾斜板103の低い方向に流れ、水分回収容器104へと導かれ、最終的に水分回収容器104に収容される。
【0124】
以上、本発明について、実施の形態および実施例により具体的に説明したが、本発明はこれら実施の形態および実施例に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0125】
10,20,30,40 シートの製造装置
11 原料容器
12 基材搬出部
13 塗工機
14,32 固化領域
15,33 剥離部材
16 シート巻取り部
17 基材巻取り部
18 バックロール
19 送りロール
21,41,42 乾燥処理部
31,31a,31b,31c 加熱ロール
50 シート
BM 基材
LM 液状材料
SLM シート状の液状材料