(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151117
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】玄関の構造及び住宅の防蟻方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/72 20060101AFI20241017BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20241017BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20241017BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
E04B1/72
E04B1/76 500Z
E04H1/02
E04B1/80 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064259
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】林本 秀夫
【テーマコード(参考)】
2E001
2E025
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DH14
2E001FA21
2E001GA24
2E001GA28
2E001HC07
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD09
2E025AA01
2E025AA12
2E025AA26
(57)【要約】
【課題】 断熱性能を損ねることなく、玄関での防蟻メンテナンスを容易に行うことができる玄関の構造等を提供する。
【解決手段】 住宅の玄関4の構造であって、玄関4に沿って配され、かつ、上下に延びる立上り部2bを有する基礎2と、立上り部2bの屋内側に沿って配された発泡フォームを含む基礎断熱材7と、基礎断熱材7の上方に配された框8と、基礎断熱材7の屋内側に配された土間部12と、を含む。土間部12は、玄関4の地盤を覆うように配された水平部14aと、基礎断熱材7を覆うように配された垂直部14bとを含む。垂直部14bの上端14cは、基礎断熱材7の上端7aよりも低所に位置しており、框8の下面と垂直部14bの上端14cとの間に、基礎断熱材7の一部が玄関4側に露出する露出部16を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の玄関の構造であって、
玄関に沿って配され、かつ、上下に延びる立上り部を有する基礎と、
前記立上り部の屋内側に沿って配された発泡フォームを含む基礎断熱材と、
前記基礎断熱材の上方に配された框と、
前記基礎断熱材の屋内側に形成された土間部と、を含み、
前記土間部は、玄関の地盤を覆うように配された水平部と、前記基礎断熱材を覆うように配された垂直部とを含み、
前記垂直部の上端は、前記基礎断熱材の上端よりも低所に位置しており、
前記框の下面と前記垂直部の前記上端との間に、前記基礎断熱材の一部が玄関側に露出する露出部を備える、
玄関の構造。
【請求項2】
前記基礎の前記立上り部と、前記基礎断熱材のとの間に、防蟻薬液を含浸させた、及び/又は防蟻薬液を含浸させることが可能なシート材を備える、請求項1に記載の玄関の構造。
【請求項3】
前記基礎断熱材の前記上端と前記框との間には、前記防蟻薬液を含浸しない第1のバリア材が設けられている、請求項2に記載の玄関の構造。
【請求項4】
前記シート材の屋外側には、前記シート材に含浸した前記防蟻薬液を含浸しない第2のバリア材が設けられている、請求項2に記載の玄関の構造。
【請求項5】
前記框の少なくとも見付面を覆うように上下に延びる見付カバーをさらに備え、
前記見付カバーは、少なくとも一部が、前記基礎断熱材の前記露出部と上下方向で重複するように、前記框の下面よりも下方に延びている、請求項1に記載の玄関の構造。
【請求項6】
前記土間部の前記垂直部は、上端面を含み、
前記上端面は、前記基礎断熱材から屋内側に向かって高さが漸減するように傾斜している、請求項5に記載の玄関の構造。
【請求項7】
前記上端面の前記傾斜の最も高い位置は、前記見付カバーの下端よりも上方に位置する、請求項6に記載の玄関の構造。
【請求項8】
前記上端面の前記傾斜の最も低い位置は、前記見付カバーの下端よりも下方に位置する、請求項7に記載の玄関の構造。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載された玄関の構造を備えた住宅の防蟻方法であって、
前記基礎断熱材の前記露出部から、前記基礎断熱材と前記立上り部との間に防蟻薬液を注入する工程を含む、住宅の防蟻方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載された玄関の構造を備えた住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関の構造及び住宅の防蟻方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅の断熱性能を確保するために、外壁に沿って配された基礎部分に沿って発泡フォームからなる基礎断熱材が配されている(基礎断熱構造)。しかしながら、シロアリは、この基礎断熱材の中に蟻道を形成しながら基礎断熱材の上部へと進行し、基礎上に配された土台や壁等の木質材に被害をもたらす傾向がある。
【0003】
上述のようなシロアリ被害を防ぐために、床下空間から、基礎断熱材又は基礎断熱材と基礎の立上り部との間に配されたシート等に、定期的に防蟻薬液を注入する防蟻メンテナンスが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、玄関部からのシロアリの侵入が多数報告されている。一般に、住宅の玄関では、基礎断熱材の表面がモルタル等のセメント硬化物で覆われ、さらにはその上にタイル等が施工されて土間部が形成されている。したがって、玄関において、上述のような防蟻メンテナンスを行う場合、まず、ドリル等で前記セメント硬化物に孔を開け、そこから基礎断熱材側へ防蟻薬液を注入し、その後、セメント硬化物に形成した孔を補修するという大掛かりな作業が必要であった。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、断熱性能を損ねることなく、玄関での防蟻メンテナンスを容易に行うことができる玄関の構造等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、住宅の玄関の構造であって、玄関に沿って配され、かつ、上下に延びる立上り部を有する基礎と、前記立上り部の屋内側に沿って配された発泡フォームを含む基礎断熱材と、前記基礎断熱材の上方に配された框と、前記基礎断熱材の屋内側に配された土間部と、を含み、前記土間部は、玄関の地盤を覆うように配された水平部と、前記基礎断熱材を覆うように配された垂直部とを含み、前記垂直部の上端は、前記基礎断熱材の上端よりも低所に位置しており、前記框の下面と前記垂直部の前記上端との間に、前記基礎断熱材の一部が玄関側に露出する露出部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の玄関の構造は、上記の構成を採用することにより、断熱性能を損ねることなく、玄関での防蟻メンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図1のIII-III線の位置に相当する住宅の部分断面図である。
【
図5】防蟻メンテナンスを説明する
図3の部分拡大図である。
【
図6】他の形態の防蟻メンテナンスを説明する
図3の部分拡大図である。
【
図8】基礎断熱材の変形例を示す
図1のIII-III線の位置に相当する住宅の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態が図面に基づき説明される。
図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている。また、複数の実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0011】
図1は、住宅1の部分正面図であり、
図2は、その基礎伏図であり、
図3は、
図2のIII-III線の位置に相当する住宅1の部分断面図である。
図1ないし3に示されるように、住宅1は、建物の外周に沿って配された基礎2と、この基礎2に固着された外壁3とを含む。
【0012】
基礎2は、例えば、布基礎であって、地中Gに埋設されたフーチング部2aと、フーチング部2aから地盤を上に超えて延びる立上り部2bとを含む(
図2では、フーチング部2aは省略されている。)。基礎2の立上り部2bは、屋内側を向く面を内面2iと、屋外側を向く面を外面2oとを備える。
【0013】
図2に示されるように、住宅1は、内部に玄関4を有する。玄関4は、住宅1の外周に面して形成され、玄関ドア5で開閉される住宅1の出入口を含む土間空間である。
図1及び
図2に示されるように、基礎2の一部は、玄関4の外縁の一部を画定するように配置されている。本実施形態では、基礎2の立上り部2bに、その高さを部分的に減じた凹部2cが設けられており、この凹部2cに玄関ドア5が配置されている。ただし、基礎2の立上り部2bに、凹部2c設けることなく、玄関ドア5が配置されても良いのはいうまでもない。
【0014】
図3に示されるように、基礎2の立上り部2bの内面2iには、発泡フォームを含む基礎断熱材7が配されている。基礎断熱材7は、例えば、板状に形成された発泡フォームであって、例えば、立上り部2bの内面2iに直接的又は後述のシート材を介して間接的に接するように配置される。発泡フォームとしては、例えば、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、又は、フェノールフォーム等が挙げられる。
【0015】
基礎断熱材7の上端7aは、例えば、立上り部2bの上端2dを超えてさらに上方に延びている。また、基礎断熱材7の下端7bは、地中Gに差し込まれている。このような基礎断熱材7は、基礎2の立上り部2bを介した屋外との熱の出入りを確実に抑制し、住宅1の断熱性能を高めるのに役立つ。
【0016】
玄関4において、基礎断熱材7の上方には、框8が配されている。本実施形態において、框8は、例えば、玄関ドア5の部分を除き、立上り部2bに沿って配置されている。本実施形態において、框8は、例えば、基礎断熱材7の上端7aに沿って水平に延びる木質材である框本体10と、框本体10の少なくとも見付面10aを覆うように上下に延びる見付カバー11とを含む。框8と内装材20との見切り部分には、例えば、幅木9が配されている。
【0017】
本実施形態において、框本体10は、2本の木質材を横方向に並べて構成されているが、1本の木質材で構成されても良い。本実施形態の見付カバー11は、框本体10の見付面10aと框本体10の上面とがなすコーナ部を覆うように断面逆L字状に構成されている。他の態様では、框8は、見付カバー11を備えることなく框本体10のみで構成されても良い。なお、本明細書において、単に「框」と表現するときには、框本体10が意図されているものとする。
【0018】
本実施形態の玄関4において、基礎断熱材7の屋内側の床面には、土間部12が形成されている。土間部12は、例えば、モルタル及び/又はコンクリートといったセメント硬化物を含む層であって、下地層13と、その上を覆う仕上げ層14とを含む。これらの層は、例えば、それぞれ異なる施工段階で形成される。他の態様では、下地層13が省略されても良い。
【0019】
下地層13は、例えば、コンクリート層であって、玄関4の地盤を覆うように、基礎断熱材7の屋内側を向く内面7cから水平に延びている。下地層13は、地盤からの湿気を防ぐことができる。下地層13の下面には、防湿シート(図示省略)が配されても良い。
【0020】
仕上げ層14は、例えば、モルタル層であって、下地層13が施工された後に形成されている。本実施形態の仕上げ層14は、水平部14aと、垂直部14bとを含み、それらの表面には、例えば、装飾用のタイル15が適宜配置されている。なお、水平部14aはコンクリート層であっても良い。
【0021】
仕上げ層14の水平部14aは、玄関4の地盤を覆うように配されている。この実施形態では、水平部14aは、下地層13を介して、地盤を覆うように配されている。
【0022】
垂直部14bは、基礎断熱材7を覆うように配されている。より具体的には、垂直部14bは、基礎断熱材7の内面7cを覆うように、上下に延びている。
【0023】
図4は、
図3の仕上げ層14の垂直部14b付近の部分拡大図である。
図3及び
図4に示されるように、本実施形態では、垂直部14bの上端14cは、基礎断熱材7の上端7aよりも低所に位置する。これにより、本実施形態の玄関4では、框8の下面8aと垂直部14bの上端14cとの間に、基礎断熱材7の内面2iの一部が玄関4側に露出する露出部16を備える。露出部16は、玄関4の外周に沿って配された基礎2に沿って連続的に形成されても良いし、部分的に形成されていても良い。
【0024】
[作用]
以上のように構成された本実施形態の玄関4の構造では、基礎断熱材7は、玄関4側に露出する露出部16を備える。このため、玄関4の防蟻メンテナンスは、
図5に示されるように、防蟻薬液31を充填した注射器30を使用し、露出部16から、基礎断熱材7と、基礎2の立上り部2bとの間に防蟻薬液31を注入する工程により、行うことが可能である。そして、基礎断熱材7は、発泡フォームからなることから、そこに注射器30のニードル32を差し込む工程は、ドリルで土間部12に孔を開ける工程のような多大な労力を要しない。したがって、本実施形態の玄関4の構造によれば、玄関4の防蟻メンテナンスを容易に行うことができる。
【0025】
防蟻メンテナンスのより具体的な例では、まず、玄関4に位置する作業者が、基礎断熱材7の露出部16に、注射器30のニードル32を差し込む。これは、上で述べたように軽微な力で行い得る。
【0026】
ニードル32を差し込む位置や方向等は、露出部16と立上り部2bとの位置関係等により、様々である。
図5の例では、ニードル32の先端が、基礎断熱材7と、基礎2の立上り部2bとの間に到達している態様を示す。この状態で、注射器30のピストン33が押し込まれることにより、基礎断熱材7と、基礎2の立上り部2bとの間に、防蟻薬液31が注入され得る。注入された防蟻薬液31は、立上り部2bに沿って広がり、一定期間防蟻効果が発揮される。
【0027】
なお、防蟻薬液31は、防蟻機能を有するものであれば特にその種類を問わないが、例えば、ピレスロイド様薬剤(シラフルオフェン、エトフェンプロックス等)、ピレスロイド系薬剤(ビフェントリン、サイパーメストン、デルタメスリン、パーメスリン、ペルメスリン、アレスリン、トラロメスリン等)、カーバメント系薬剤(プロボクスル、フェノブカルブ、セビン等)、クロルニコチル系薬剤(イミダクロプリド、アセタプリド、クロチアニシン等)、ニトロガニリン系薬剤(ジノテフラン等)、有機リン系殺虫剤(ホキシム、テトラクロクピンホス、フェニトロチオン、プロベタンホス等)、ピラゾール系薬剤(フィブロニル等)、クロルフェノール系薬剤(4-プロモ-2,5-ジクロルフェノール(BDCP)等)、フェニルピロール系(クロルフェナビル等)、ヒバ油、ウコン、カプリン酸、ヤシ油、パーム油等を、上記薬剤として使用することができる。
【0028】
以下、本発明のさらに好ましい態様が説明される。
[シート材]
図3ないし5に示されるように、立上り部2bと基礎断熱材7のとの間には、防蟻薬液31を予め含浸させた、及び/又は、防蟻薬液31を含浸させることが可能なシート材40が予め配置されるのが好ましい。このような態様では、注入された防蟻薬液31は、シート材40に吸収され、長期に渡って、基礎断熱材7と基礎2の立上り部2bとの間に留まることができる。これにより、長期に渡って防蟻効果が発揮される。
【0029】
シート材40は、
図3に示されるように、基礎断熱材7の屋外側を向く外面7dに接する第1部分41と、基礎断熱材7の下端7bに接する第2部分42とを含むものが望ましい。このようなシート材40は、注入された防蟻薬液31を、基礎断熱材7の表面のより広い範囲に渡って提供することができる。
【0030】
好ましい態様では、基礎断熱材7及びシート材40は、それぞれ、基礎2の立上り部2bの上端2dを超えてさらに上方に延びている。これにより、本実施形態では、露出部16を水平に屋外方向に投影した領域に、シート材40が位置している。このような態様では、
図6に示されるように、注射器30のニードル32は、シート材40に防蟻薬液31を含浸させることができれば、防蟻薬液31は、シート材40を介して基礎断熱材7の外面7dの広い範囲に提供することができる。このような態様では、ニードル32差し込み位置の範囲が広がり、工程の自由度が向上する点で望ましい。
【0031】
シート材40には、例えば、不織布、多孔質シート、紙材料等、各種の材料が使用され得る。また、シート材40として、予め、基礎断熱材7の外面7dに固着されているボード紙が利用されても良い。
【0032】
図6に示されるように、上記の態様に代えて、又は、上記の態様とともに、基礎断熱材7には、防蟻薬液31を、シート材40、及び/又は、基礎断熱材7と基礎2の立上り部2bとの間に案内するためのガイド孔45が形成されていても良い。ガイド孔45は、一端が露出部16で開口し、かつ、他端が、基礎断熱材7の外面7dで開口する細孔である。防蟻薬液31は、例えば、このガイド孔45からシート材40等に供給されても良い。
【0033】
[バリア層]
図6に示されるように、玄関4には、防蟻薬液31を適所に提供するためのバリア材50が設けられるのが望ましい。
【0034】
バリア材50は、例えば、基礎断熱材7の上端7aと框8との間に配された第1のバリア材51を含むことができる。第1のバリア材51は、シート材40に含浸した防蟻薬液31を含浸しない材料からなる。このような第1のバリア材51は、シート材40に含浸している防蟻薬液31が、框8又はその付近の材料に吸収されることを防ぎ、基礎断熱材7に対する防蟻効果の低下を抑制することができる。
【0035】
また、バリア材50は、第2のバリア材52を含むことができる。第2のバリア材52は、立上り部2bよりも上方で、かつ、シート材40の屋外側の面に接するように配置されている。したがって、第2のバリア材52は、基礎2の立上り部2bとシート材40との間には位置していない。第2のバリア材52は、シート材40に含浸している防蟻薬液31が、立上り部2bの上に配された木質材からなる土台や壁材に吸収されることを防ぎ、基礎断熱材7に対する防蟻効果の低下を抑制することができる。
【0036】
上述のバリア材50については、防蟻薬液31を含浸しない材料であれば、特に制限なく様々な材料を使用することができ、例えば、樹脂シート、樹脂プレート、金属板等が好適である。
【0037】
[見付カバー]
図7は、他の実施形態として、
図3の部分拡大図を示す。
図7に示されるように、この実施形態では、見付カバー11は、少なくとも一部が、基礎断熱材7の露出部16と上下方向で重複するように、框8の下面8aよりも下方に延びている。このような実施形態では、露出部16の少なくとも一部が見付カバー11で目隠しされ、外部から視認され難い。したがって、この実施形態では、さらに、玄関4の見栄えの悪化を防止できる。
【0038】
この実施形態では、土間部12の垂直部14bは、傾斜した上端面14eを含んでいる。より具体的には、垂直部14bの上端面14eは、基礎断熱材7から屋内側に向かって高さが漸減するように傾斜している。また、上端面14eの傾斜の最も高い位置14cは、見付カバー11の下端11aよりも上方に位置し、上端面14eの傾斜の最も低い位置14dは、見付カバー11の下端11aよりも下方に位置する。このような構成では、露出部16が玄関4からより一層視認され難くなり、玄関4の見栄えがさらに向上する。また、太めの仮想線で示されるように、防蟻メンテナンス時の注射器30のニードル32は、垂直部14bの上端面14eに沿うような傾斜で露出部16に差し込むことができ、防蟻メンテナンスの工程作業性を悪化させることもない。
【0039】
図8は、基礎断熱材7の変形例として、
図2のIII-III線の位置に相当する住宅の部分断面図である。
図8に示されるように、基礎断熱材7は、基礎2の立上り部2bに沿って上下に延びる縦部分71と、土間部12(この例では下地層13)の下面を水平に延びる横部分72とを備えるものでも良い。縦部分71と横部分72とは、互いに当接するように接続され、基礎断熱材7は、断面L字状とされている。このような基礎断熱材7によれば、住宅1の玄関付近での断熱性能をさらに高めることができる。
【0040】
また、基礎断熱材7が断面L字状に形成されることで、例えば、縦部分71及び横部分72の厚さを薄く形成することができる。これは、断熱コストを削減し、また、玄関スペースを拡大するのに役立つ。
【0041】
また、一般に、土間部12には、一年を通じて温度変化の少ない地中Gの熱が伝えられる。このため、土間部12は、基礎2の立ち上がり部6に比べると、屋外からの熱の影響は小さい。このような観点より、基礎断熱材7の横部分72の厚さt2は、縦部分71の厚さt1よりも小さく設定されてもよい。これにより、横部分72の断熱材の使用量が少なくなり、さらに断熱コストが低減される。
【0042】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。また、本発明は、それぞれの実施形態単独での実施のみならず、それぞれの実施形態に、他の一つ又は複数の実施形態の特徴を組み合わせて実施されることが当然に意図されている。さらに、本発明は、その均等物を含むものである。
【0043】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0044】
[本発明1]
住宅の玄関の構造であって、
玄関に沿って配され、かつ、上下に延びる立上り部を有する基礎と、
前記立上り部の屋内側に沿って配された発泡フォームを含む基礎断熱材と、
前記基礎断熱材の上方に配された框と、
前記基礎断熱材の屋内側に配された土間部と、を含み、
前記土間部は、玄関の地盤を覆うように配された水平部と、前記基礎断熱材を覆うように配された垂直部とを含み、
前記垂直部の上端は、前記基礎断熱材の上端よりも低所に位置しており、
前記框の下面と前記垂直部の前記上端との間に、前記基礎断熱材の一部が玄関側に露出する露出部を備える、
玄関の構造。
[本発明2]
前記基礎の前記立上り部と、前記基礎断熱材のとの間に、防蟻薬液を含浸させた、及び/又は防蟻薬液を含浸させることが可能なシート材を備える、本発明1に記載の玄関の構造。
[本発明3]
前記基礎断熱材の前記上端と前記框との間には、前記防蟻薬液を含浸しない第1のバリア材が設けられている、本発明2に記載の玄関の構造。
[本発明4]
前記シート材の屋外側には、前記シート材に含浸した前記防蟻薬液を含浸しない第2のバリア材が設けられている、本発明2に記載の玄関の構造。
[本発明5]
前記框の少なくとも見付面を覆うように上下に延びる見付カバーをさらに備え、
前記見付カバーは、少なくとも一部が、前記基礎断熱材の前記露出部と上下方向で重複するように、前記框の下面よりも下方に延びている、本発明1ないし4のいずれかに記載の玄関の構造。
[本発明6]
前記土間部の前記垂直部は、上端面を含み、
前記上端面は、前記基礎断熱材から屋内側に向かって高さが漸減するように傾斜している、本発明1ないし5のいずれかに記載の玄関の構造。
[本発明7]
前記上端面の前記傾斜の最も高い位置は、前記見付カバーの下端よりも上方に位置する、本発明5に記載の玄関の構造。
[本発明8]
前記上端面の前記傾斜の最も低い位置は、前記見付カバーの下端よりも下方に位置する、本発明5又は7に記載の玄関の構造。
[本発明9]
本発明1ないし8のいずれかに記載された玄関の構造を備えた住宅の防蟻方法であって、
前記基礎断熱材の前記露出部から、前記基礎断熱材と前記立上り部との間に防蟻薬液を注入する工程を含む、住宅の防蟻方法。
[本発明10]
本発明1ないし8のいずれかに記載された玄関の構造を備えた住宅。
【符号の説明】
【0045】
1 住宅
2 基礎
2b 立上り部
2d 立上り部の上端
4 玄関
7 基礎断熱材
7a 基礎断熱材の上端
7b 基礎断熱材の下端
8 框
10a 見付面
11 見付カバー
11a 下端
12 土間部
13 土間部の下地層
14 土間部の仕上げ層
14a 水平部
14b 垂直部
14c 上端
14e 上端面
16 露出部
31 防蟻薬液
40 シート材
50 バリア材
51 第1のバリア材
52 第2のバリア材