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特開2024-151148省エネ行動変容支援装置及び省エネ行動変容支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151148
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】省エネ行動変容支援装置及び省エネ行動変容支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241017BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20241017BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20241017BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20241017BHJP
【FI】
G06Q50/10
G16Y20/30
G16Y20/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064295
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】測定対象である主体に対して省エネに有効な行動の変容を的確に提案する。
【解決手段】本発明の省エネ行動変容支援装置は、主体の行動に関するセンサ情報を取得する情報入力部と、前記センサ情報から前記主体及び前記主体の行動に関するイベントテキストを生成するテキスト化処理部と、前記生成したイベントテキストに基づき、前記主体及び前記主体の行動の組み合わせをノードとし、前記ノードを時系列の遷移を示すエッジで連結することによって全体ネットワークを生成する全体ネットワーク生成部と、を備えること、を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主体の行動に関するセンサ情報を取得する情報入力部と、
前記センサ情報から前記主体及び前記主体の行動に関するイベントテキストを生成するテキスト化処理部と、
前記生成したイベントテキストに基づき、前記主体及び前記主体の行動の組み合わせをノードとし、前記ノードを時系列の遷移を示すエッジで連結することによって全体ネットワークを生成する全体ネットワーク生成部と、
を備えること、
を特徴とする省エネ行動変容支援装置。
【請求項2】
前記生成した全体ネットワークから複数の部分ネットワークを生成するノード・エッジ剪定部と、
前記抽出した複数の部分ネットワークのうちから、省エネのための行動変容に影響するものを特定する変容対象ネットワーク特定部と、
前記特定した部分ネットワークにおいて重要度の高いノードを抽出する重要ノード特定部と、
前記抽出した重要度の高いノードに紐付くメッセージを表示する情報出力部と、
を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の省エネ行動変容支援装置。
【請求項3】
前記ノードを構成する各単語の特徴量に基づき、前記ノードの特徴量を生成するノード特徴量抽出部と、
前記生成した特徴量の間の類似度に基づき前記ノードをクラスタに分類するノード分類部と、
を備え、
前記ノード・エッジ剪定部は、
特定のクラスタに含まれるノードに対して出入りのないエッジ、及び、特定のクラスタに含まれるノードと隣接しないノードを前記全体ネットワークから削除することによって、前記複数の部分ネットワークを生成すること、
を特徴とする請求項2に記載の省エネ行動変容支援装置。
【請求項4】
2つ以上の異なる前記主体のエネルギー使用量レポートを比較することによって、エネルギー使用量の差分が発生した時間帯を特定するエネルギー使用量レポート比較部と、
前記差分の要因と推定される部分ネットワークを特定し、
前記特定した部分ネットワーク間の差分に基づき、よりエネルギー使用量が少なかった前記主体において行われていたイベントテキストを特定し、
前記特定したイベントテキストを、よりエネルギー使用量が多かった前記主体に表示するネットワーク差分特定部と、
を備えること、
を特徴とする請求項3に記載の省エネ行動変容支援装置。
【請求項5】
センサ情報から前記主体及び前記主体の行動に関して生成したイベントテキストと、前記重要度の高いノードとの類似度を算出し、
前記類似度が閾値以上と判定した場合において、前記重要度の高いノードに紐づくアプローチ対象イベントに関するメッセージを表示する重要ノード類似度算出部を備えること、
を特徴とする請求項2に記載の省エネ行動変容支援装置。
【請求項6】
省エネ行動変容支援装置の情報入力部は、
主体の行動に関するセンサ情報を取得し、
前記省エネ行動変容支援装置のテキスト化処理部は、
前記センサ情報から前記主体及び前記主体の行動に関するイベントテキストを生成し、
前記省エネ行動変容支援装置の全体ネットワーク生成部は、
前記生成したイベントテキストに基づき、前記主体及び前記主体の行動の組み合わせをノードとし、前記ノードを時系列の遷移を示すエッジで連結することによって全体ネットワークを生成すること、
を特徴とする省エネ行動変容支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネ行動変容支援装置及び省エネ行動変容支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エコフレンドリー及びWell-being(身体的、精神的かつ社会的に良好な状態にあること)を重視した生活基盤づくりのため、サービス利用者又はサービス提供者に、省エネに向けてライフスタイルを向上させるための情報を提供する技術が知られている。例えば、特許文献1の推論装置は、ノード及びエッジによって構成されるグラフ構造によって行動間の関係を記述することで、適切な支援を推論する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7031079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の推論装置は、推論ルールと、外部から取得した情報とに基づいて、グラフを動的に結合して統合グラフを生成し、統合グラフの構成要素であるノード間のエッジを辿ることで確率的推論を実行し、確率的推論の結果にノードの間の関係の程度を表す関係性データベースを用いてノードの重要度を算出する。
【0005】
特許文献1の推論装置が生成する統合グラフは、動作/稼働/状態の主体(主語)を1つのノードとし、その目的語を別の1つのノードとし、それら2つのノードの関係性をエッジで表現する(特許文献1の図5及び図6)。つまり、ある1つのノードに注目した場合、そのノードには、主体及び目的語が組み合わせとなって含まれていない。すると、特許文献1の推論装置は、“ある主体(Who, What)とその動作/稼働/状態(Do,Be)との組み合わせ”が、“他の主体(Who, What)とその動作/稼働/状態(Do,Be)との組み合わせ”に与える影響又は相互作用を評価しないことになる。
【0006】
つまり、特許文献1の推論装置は、一般的に省エネによい影響又は悪い影響を与えることが既知である個人又は集団の動作/設備又は機器の稼働/環境の状態と、測定対象である個人又は集団の動作/設備又は機器の稼働/環境の状態との関係のうち、どの部分に相関があるかを推定することはできない。
【0007】
例えば、電力を節約するために同じオフィスに勤務する複数の人が相互に協力する場合、“だれがどうした結果、なにがどうなったので、だれに対してどのように働きかける”のような推論は必須である。このように主体(Who, What)とその動作/稼働/状態(Do,Be)との組み合わせを1つのノードとすることには大きな意味がある。
そこで、本発明の目的は、測定対象である主体に対して省エネに有効な行動の変容を的確に提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の省エネ行動変容支援装置は、主体の行動に関するセンサ情報を取得する情報入力部と、前記センサ情報から前記主体及び前記主体の行動に関するイベントテキストを生成するテキスト化処理部と、前記生成したイベントテキストに基づき、前記主体及び前記主体の行動の組み合わせをノードとし、前記ノードを時系列の遷移を示すエッジで連結することによって全体ネットワークを生成する全体ネットワーク生成部と、を備えること、を特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定対象である主体に対して省エネに有効な行動の変容を的確に提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】省エネ行動変容支援装置を含むシステム構成図である。
図2】省エネ行動変容支援装置の構成図である。
図3】実施例1における省エネ行動変容支援装置の処理のフローチャートである。
図4】実施例1における動作/稼働/状態コーパスの例である。
図5】実施例1における全体ネットワークの例である。
図6】実施例1におけるノード分類の例である。
図7】実施例1における省エネ情報データベースの例である。
図8】実施例1における部分ネットワークの例である。
図9】実施例1における端末装置の表示部に通知されるメッセージの例である。
図10】実施例2における省エネ行動変容支援装置の処理のフローチャートである。
図11】実施例2におけるエネルギー使用量レポートの例である。
図12】実施例2におけるネットワーク差分特定部の処理例である。
図13】実施例2における端末装置の表示部に通知されるメッセージの例である。
図14】実施例2における省エネ情報データベースの更新例である。
図15】実施例3における省エネ行動変容支援装置の処理のフローチャートである。
図16】実施例3における重要ノード類似度算出部の処理例である。
図17】実施例3における端末装置の表示部に通知されるメッセージの例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(“本実施形態”とも呼ぶ)を説明する。本実施形態のうち、後記する実施例1は、オフィス内の人に対して節電を提案する例であり、後記する実施例2及び3は、2つのオフィスでの節電を比較する例である。
【0012】
(用語)
“主体”とは、動作、稼働又は状態の主であり、人(個人、集団)、人が使用する物(機器、設備)、及び、人の周辺の環境を含む概念である。つまり、主体とは、端的にいえば、“なにが、どうである”のうちの“なにが”に相当する部分である。そして、主体が物又は環境である場合、人が物又は環境をある程度制御し得ることが必要である。
“行動”とは、主体である人の動作、人が使用する物の稼働、及び、人の周辺の環境の状態を含む概念である。さらに、人の動作は、人の状態も含む概念であり、物の稼働は、物の状態も含む概念である。つまり、行動とは、端的にいえば、“なにが、どうである”のうちの“どうである”に相当する部分である。
【0013】
“測定対象”とは、行動を変えること(行動の変容)を提案される主体である。本実施形態における典型的な測定対象は、省エネに対する関心の低い人である。
“サービス利用者”とは、省エネ行動変容支援装置が提供するサービスを受ける者であり、多くの場合、測定対象となる主体である。
“サービス提供者”とは、省エネ行動変容支援装置を運用する者であり、サービス利用者と同じである場合もある。
【0014】
図1は、省エネ行動変容支援装置10を含むシステム構成図である。省エネ行動変容支援装置10は、通信ネットワーク20を介し、情報入出力用の端末装置30及びセンサ群40と接続される。省エネ行動変容支援装置10は、端末装置30及びセンサ群40と入出力データを遣り取りする入出力部11、省エネ行動変容支援装置10の機能を実行するための演算部13、及び、演算のために予め保持しておくデータベース及び演算部13が抽出したデータを記憶する記憶部12を備える。
【0015】
ここでの通信ネットワーク20は、通信用のインフラである。これに対し、以下に“ネットワーク”、“全体ネットワーク”又は“部分ネットワーク”と記す場合、それらは、ノード及びノード同士を連結するエッジの集合である言語処理用の図形(有向グラフ)を意味する。
【0016】
省エネ行動変容支援装置10の構成要素となる入出力部11、記憶部12及び演算部13は、1つの物理的な計算リソースに集約されていてもよく、クラウドサーバ、エッジサーバ等の複数の計算リソースに分散され、各計算リソースが通信ネットワーク20を介して接続されていてもよい。
【0017】
端末装置30は、表示部31及び入力部32を備える。端末装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートスピーカ等である。端末装置30の種類は、これらに限定されない。
【0018】
センサ群40は、サービス利用者の動作、サービス利用者の利用設備若しくは周辺機器の稼働、又は、サービス利用者の周囲の環境の状態(すなわち、主体の行動)に関する情報を収集する。センサ群40は、カメラ画像、マイクロホン、バイタルセンサ、人感センサ、ドアセンサ、窓開閉センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、照度センサ、二酸化炭素濃度センサ、温湿度センサ、入退室管理端末、電流センサ、スマートプラグ、スマートメータ、エレベータ稼働状況センサ等を含む。
【0019】
センサ群40が実際に備える構成は、これらのうちの一部でもよく、これらに限定されることもない。センサ群40は、その一部又は全てが端末装置30に含まれていてもよい。例えば、端末装置30がスマートフォンである場合、端末装置30は、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS(Global Positioning System)等の情報を省エネ行動変容支援装置10に出力してもよい。
【0020】
図2は、省エネ行動変容支援装置10の構成図である。入出力部11は、情報入力部110及び情報出力部111を備える。
情報入力部110は、センサ群40が取得したセンサ情報、端末装置30が搭載しているセンサが取得したセンサ情報、及び、サービス提供者又はサービス利用者が端末装置30を介して入力したテキスト情報を受け付ける。
情報出力部111は、演算部13が生成した全体ネットワーク122、部分ネットワーク123、メッセージ等の情報を出力する。情報出力部111は、通信ネットワーク20を介して端末装置30の表示部31にこれらの情報を出力してもよい。
【0021】
記憶部12は、テキスト化ルール120、動作/稼働/状態コーパス121、全体ネットワーク122、部分ネットワーク123、省エネ情報データベース124及びエネルギー使用量レポート125を格納している。
【0022】
テキスト化ルール120は、センサ情報から、省エネに関する特定のイベント(事象)が発生したことを示すセンサ値を抽出し、抽出したセンサ値に対して、クラス分類、時系列分析、算術演算、比較演算、論理演算、音声認識、画像認識等の処理を行うためのルールである。
動作/稼働/状態コーパス121は、主体と主体の行動との組み合わせであるイベントテキストをレコード(行)として有するデータベースである(図4参照)。
【0023】
イベントテキストは、以下の〈1〉及び〈2〉を必須の要素として含む。イベントテキストは、以下の〈3〉及び/又は〈4〉を含んでもよい。イベントテキストのそれぞれは、ノードに対応する。図4におけるイベントテキストは、〈1〉、〈2〉及び〈3〉を要素として有する。
〈1〉前記した主体(Who,What)
〈2〉前記した行動(Do,Be)
〈3〉いつ(When)
〈4〉どこで(Where)
【0024】
全体ネットワーク122は、動作/稼働/状態コーパス121内の各イベントテキストをノードとし、それらの時系列的な遷移関係をエッジとするネットワークである(図5参照)。測定対象の全体ネットワーク122だけでなく、測定対象に対する比較対象の全体ネットワーク122が記憶部12に格納されてもよい。図5の全体ネットワークのノードのそれぞれは、前記したイベントテキストの〈1〉、〈2〉及び〈3〉を要素として有する。
【0025】
部分ネットワーク123は、全体ネットワーク122から抽出された、全体ネットワーク122の部分である(図8参照)。測定対象の部分ネットワーク123だけでなく、測定対象に対する比較対象の部分ネットワーク123が記憶部12に格納されてもよい。
【0026】
省エネ情報データベース124は、省エネに関するアプローチの対象となるイベント(以降“アプローチ対象イベント”とも呼ぶ)、メッセージ、想定対応者、及び、重要ノードを相互に紐付けて記憶している(図7参照)。アプローチ対象イベント、メッセージ及び想定対応者は、予めデータベースとして与えられる。それらに紐づく重要ノードは、アプローチ対象イベントを含むネットワークにおける重要ノードとして重要ノード特定部136によって抽出される。省エネ情報データベース124のアプローチ対象イベント及びメッセージに対して、想定対応者は、端末装置30の入力部32を介して追記、削除等の編集作業を行い得る。
【0027】
エネルギー使用量レポート125は、センシングを行う生活空間又はオフィス空間におけるエネルギー使用量の時系列グラフである(図11参照)。測定対象のエネルギー使用量レポート125だけでなく、測定対象に対する比較対象のエネルギー使用量レポート125が記憶部12に格納されてもよい。
【0028】
演算部13は、テキスト化処理部130、全体ネットワーク生成部131、ノード特徴量抽出部132、ノード分類部133、ノード・エッジ剪定部134、変容対象ネットワーク特定部135、重要ノード特定部136、エネルギー使用量レポート比較部137、ネットワーク差分特定部138及び重要ノード類似度算出部139を備える。これらは、各処理の主体となるプログラムである。なお、“剪定”とは本来、植物の不要な枝等を刈り取ることである。本実施形態は、全体ネットワーク122の不要な部分を削除するものであるので、“剪定”という語をそのまま使用する。
【0029】
テキスト化処理部130は、テキスト化ルール120に基づき、センサ情報に対してクラス分類、時系列分析、算術演算、比較演算、論理演算、音声認識、画像認識等のアルゴリズムを適用することによって、特定のセンサ値をテキスト化する。テキスト化処理部130は、テキスト化に際し、単一の種類のセンサ情報の処理結果を使用してもよいし、2種類以上のセンサ情報の処理結果を使用してもよい。
【0030】
テキスト化処理部130は、例えば、ドアセンサ及び指向性を持つ人感センサを組み合わせることで“退室”又は“入室”のうち、いずれのイベントテキストを生成するかを分類・判断する。また、テキスト化処理部130は、センサ値又はその分類結果に紐づいたテキスト化ルール120に基づきテキスト化を行ってもよい。
【0031】
全体ネットワーク生成部131は、動作/稼働/状態コーパス121内の各イベントテキストをノードとし、それらの時系列的な遷移関係をエッジとする有向グラフである全体ネットワークを生成する。ある2つのノード間の遷移回数が複数回にのぼる場合、全体ネットワーク生成部131は、遷移回数をエッジの太さ(重み)として表現する。全体ネットワーク生成部131は、全体ネットワーク122を、一日分の動作/稼働/状態コーパス121から生成してもよいし、数日分の動作/稼働/状態コーパス121から生成してもよい。また、数日分の動作/稼働/状態コーパス121から全体ネットワーク122を生成する場合、全体ネットワーク生成部131は、出現回数が任意の閾値以下であるノード又はエッジを全体ネットワークから削除してもよい。
【0032】
ノード特徴量抽出部132は、ノードを構成する単語の特徴量に基づき、ノード特徴量を抽出する。具体的には、ノード特徴量抽出部132は、まず、動作/稼働/状態コーパス121内の単語を、カウントベースの手法(単語の共起行列を次元削減する手法)又はWord2Vec等の単語分散表現を獲得する推論ベースの手法によって単語ベクトル化する。ノード特徴量抽出部132は、次に、全体ネットワーク122における各ノードを構成する単語ベクトルの合成値又は平均値として、ノード特徴量を抽出する。
【0033】
ノード分類部133は、ノード同士の特徴量の類似度に基づき、ノードを複数のクラスタに分類する。つまり、動作/稼働/状態コーパス121上で意味の類似度が大きいノード同士は、同じクラスタに分類されやすく、意味の類似度が小さいノード同士は、異なるクラスタに分類されやすい。したがって、各クラスタは、測定対象の個人又は集団において関連性の高い意味を持つ人の動作、設備若しくは機器の稼働、又は、環境の状態から構成される。ノード分類部133は、測定対象の特定のトピックのクラスタ数を、Elbow法、Silhouette法等によって決定してもよい。
【0034】
ノード・エッジ剪定部134は、各クラスタn(n=1,2,・・・,N)に分類されたノードを含む部分ネットワーク123を全体ネットワーク122から生成する。具体的には、ノード・エッジ剪定部134は、クラスタnに含まれるノードnに対して出入りのないエッジ、及び、ノードnと隣接しないノードを全体ネットワーク122から削除することで、クラスタnの部分ネットワーク123を生成する。
【0035】
変容対象ネットワーク特定部135は、生成された部分ネットワーク123及び省エネ情報データベース124を照合し、複数の部分ネットワーク123のうち、測定対象の個人、集団、設備又は機器による省エネのための行動変容に影響するものを特定する。ここで特定された部分ネットワーク123は、“変容対象ネットワーク”とも呼ばれる。
【0036】
重要ノード特定部136は、グラフ理論に基づき、変容対象ネットワークにおける重要度が最も高いノードを重要ノードとして抽出する。例えば、重要ノードは、変容対象ネットワークにおいて最も次数中心性が高い(そのノードにエッジを介して連結されている他のノードの数が多い)ノードである。
【0037】
エネルギー使用量レポート比較部137は、異なる2つ以上の測定対象のエネルギー使用量レポート125を比較し、エネルギー使用量の差分が閾値以上に異なっていた時間帯を特定する。
【0038】
ネットワーク差分特定部138は、当該特定した時間帯におけるエネルギー使用量の差分の要因になったと推定される、2つの測定主体の部分ネットワーク123を特定する。ネットワーク差分特定部138は、それらの部分ネットワーク123間におけるノードの差分又はエッジの差分に基づき、例えば、グラフ編集距離のアルゴリズムを使用して、よりエネルギー使用量が少なかった測定対象においてのみ観測された(又は観測されなかった)イベントテキストを特定する。
【0039】
重要ノード類似度算出部139は、センサ情報により生成されたイベントテキストと、既に記憶部12に格納されているアプローチ対象イベントに対する重要ノードとの類似度を、両ノードに紐づくノード特徴量に基づき算出する。類似度の算出方法としては、例えばWord2Vecにより算出されたべクトル同士の内積を取る等の演算を行う方法がある。重要ノード類似度算出部139は、さらに、算出された類似度が設定した閾値以上であるか否かを判定する。
【0040】
〈実施例1〉
以下では、オフィス内の人に対して省エネを提案する場合における、省エネ行動変容支援装置10の情報処理を具体的に説明する。実施例1を図3図9を使用して説明する。
【0041】
図3は、実施例1における省エネ行動変容支援装置の処理のフローチャートである。
図4は、実施例1における動作/稼働/状態コーパス121の例である。
図5は、実施例1における全体ネットワーク122の例である。
図6は、実施例1におけるノード分類の例である。
図7は、実施例1における省エネ情報データベース124の例である。
図8は、実施例1における部分ネットワーク123の例である。
図9は、実施例1における端末装置30の表示部31に通知されるメッセージの例である。
【0042】
図3のフローチャートを説明する。図3のフローチャートを開始する前提として、情報入力部110は、マイクロホン、人感センサ、ドアセンサ、窓開閉センサ、照度センサ、二酸化炭素濃度センサ、入退室管理端末、スマートプラグ、エレベータ稼働状況センサ等からの情報が、省エネ行動変容支援装置10に入力されるのを受け付ける。
【0043】
ステップS101において、テキスト化処理部130は、センサ値からイベントテキストを生成する。テキスト化処理部130は、テキスト化ルール120に基づき、センサ値が省エネに関連のある特定のイベントを示したと判定した時刻にのみ、イベントテキストを生成する。
【0044】
例えば、朝の特定の時間内に入退室管理端末が検知した入室人数が1~5人であった場合、テキスト化処理部130は、“朝,1~5人,入室”というイベントテキストを生成する。人体にとって適切な二酸化炭素濃度の上限が1000ppmであり、昼の特定の時間内に二酸化炭素濃度センサが検知した二酸化炭素濃度が1000ppm以下であったとする。この場合、テキスト化処理部130は、“昼,二酸化炭素,1000ppmまで低下”というイベントテキストを生成する。
【0045】
ステップS102において、テキスト化処理部130は、自身が生成したイベントテキストを動作/稼働/状態コーパス121に格納する。
ステップS103おいて、全体ネットワーク生成部131は、動作/稼働/状態コーパス121から、全体ネットワーク122を生成する。
ステップS104において、全体ネットワーク生成部131は、自身が生成した全体ネットワーク122を記憶部12に格納する。
【0046】
ステップS105において、ノード特徴量抽出部132は、動作/稼働/状態コーパス121に基づきノード特徴量を抽出する。
ステップS106において、ノード分類部133は、ノード特徴量に基づきノードを分類する。実施例1においては、ノード分類部133は、ビル設備(空調、照明、エレベータ等)の使われ方、いつ(朝、昼、夜等)等に基づいて、ノードを3つのクラスタに分類する。3つのクラスタは、例えば、“始業前クラスタ”(図6左上)、“操業中(昼休み)クラスタ”(図6中央下)及び“定時後(残業)クラスタ”(図6右上)である。
【0047】
ステップS107において、ノード・エッジ剪定部134は、ノード分類部133が生成した各クラスタn(n=1,2,・・・,N)に対して、部分ネットワーク123を抽出するためのN回のループ処理を開始する。
ステップS108において、ノード・エッジ剪定部134は、クラスタnに含まれるノード等を残し、他を削除することによって全体ネットワーク122を剪定し、クラスタnについての部分ネットワーク123を生成する。
ステップS109において、ノード・エッジ剪定部134は、部分ネットワーク123を記憶部12に格納する。
ステップS110において、ノード・エッジ剪定部134は、N回のループ処理を終了する。
【0048】
ステップS111において、変容対象ネットワーク特定部135は、省エネ情報データベース124(図7)の各項番のアプローチ対象イベントが含まれる部分ネットワーク123(変容対象ネットワーク)を特定する。図7における“項番1”のアプローチ対象イベントに対する変容対象ネットワークは、“始業前ネットワーク”(図8)である。
【0049】
ステップS112において、重要ノード特定部136は、変容対象ネットワークから重要ノードを特定する。図8では、次数中心性に基づき、“始業前ネットワーク”の重要ノードとして、“朝,1~5人,入室”(図8の太線のノード)が特定される。
【0050】
ステップS113において、情報出力部111は、省エネ情報データベース124に基づき、想定対応者の端末装置30(例えば、社用スマートフォン)の表示部31に、アプローチ対象イベントに紐づくメッセージを表示する(図9参照)。図9では、情報出力部111は、測定期間中の朝に、1~5人の人数で入室してきた人を特定し、その人の端末装置30に、メッセージ“冷房時は設定温度を1℃高めに設定すると、約10%の節電効果が得られます。”を送信する。
【0051】
〈実施例2〉
以下では、同じビル内の2つのオフィスを比較するメッセージを使用して、より使用エネルギーが多かったオフィスに行動の変容を促す場合における、省エネ行動変容支援装置10の情報処理を具体的に説明する。実施例2を図10図14を使用して説明する。
【0052】
図10は、実施例2における省エネ行動変容支援装置の処理のフローチャートである。
図11は、実施例2におけるエネルギー使用量レポート125の例である。
図12は、実施例2におけるネットワーク差分特定部138の処理例である。
図13は、実施例2における端末装置30の表示部31に通知されるメッセージの例である。
図14は、実施例2における省エネ情報データベース124の更新例である。
【0053】
図10のフローチャートを説明する。図10のフローチャートは、実施例1のフローチャート(図3)のステップS111~S113を、ステップS114~S118に置き換えたものである。図10のステップS101~ステップS110の処理は、実施例1と同様である。
【0054】
ステップS114において、エネルギー使用量レポート比較部137は、測定対象のオフィスのエネルギー使用量レポート125を、同じビル内のエネルギー使用量がより低かったオフィスのエネルギー使用量レポート125と比較する(図11参照)。そして、エネルギー使用量レポート比較部137は、エネルギー使用量の差分が所定の閾値以上になっている時間帯を特定する。図11において、エネルギー使用量レポート比較部137は、オフィスBでのエネルギー使用量からオフィスAでのエネルギー使用量を減算した差分が閾値以上であった時間帯が“12:00~13:00”であったことを特定する。
【0055】
ステップS115において、ネットワーク差分特定部138は、ステップS114で特定された時間帯におけるオフィスAの部分ネットワーク123及びオフィスBの部分ネットワーク123を特定する(図12参照)。なお、特定された2つの部分ネットワーク123は、変容対象ネットワークでもある。
【0056】
ステップS116において、ネットワーク差分特定部138は、ステップS115において特定された2つの部分ネットワーク123に対して、グラフ編集距離等のアルゴリズムを使用して、両者の部分ネットワーク間の差分となるノード及びエッジを特定する。
【0057】
ネットワーク差分特定部138は、具体的に以下のことを特定する。
・オフィスAにおいて、“昼,照明,OFF”のノード(太線のノード)が“昼,10~20人,退室”のノードと“昼,10~20人,入室”のノードとの間に存在すること(図12左図)。
・オフィスBにおいて、“昼,10~20人,退室”のノードと“昼,10~20人,入室”のノードとの間に他のノードが存在しないこと(図12右図)。
つまり、ネットワーク差分特定部138は、“オフィスAでは、昼休みに社員がオフィス外に出ている間、消灯されていた”ことを特定する。
【0058】
ステップS117において、ネットワーク差分特定部138は、例えばオフィスBを利用する人の端末装置30に、メッセージ“同じビル内でより使用電力の低いオフィスAでは、下記を実施しています。”を表示するとともに、自身が抽出したノード及びエッジの情報(例えばイベントテキスト)を表示する(図13参照)。
【0059】
ステップS118において、ネットワーク差分特定部138は、自身が特定・表示した情報で省エネ情報データベース124を更新する(図14参照)。図14では、アプローチ対象イベントとして“照明,OFF”が、メッセージとして“同じビル・・・”が、重要ノードとして“昼,10~20人,退室”が省エネ情報データベース124に追加される。
【0060】
以上のようなエネルギー使用量レポート125の比較に基づく提案は、異なるオフィス間で行われてもよいし、同じオフィスの異なる日付間で行われてもよい。
【0061】
〈実施例3〉
以下では、アプローチ対象イベントに対する重要ノードが既に特定されたオフィスにおいて、新たに省エネ行動変容に効果のある関連イベントを特定する場合における、省エネ行動変容支援装置10の情報処理を具体的に説明する。実施例3を図15図17を使用して説明する。
【0062】
図15は、実施例3における省エネ行動変容支援装置の処理のフローチャートである。
図16は、実施例3における重要ノード類似度算出部139の処理例である。
図17は、実施例3における端末装置30の表示部31に通知されるメッセージの例である。
【0063】
図15のフローチャートを説明する。図15のフローチャートは、実施例1のフローチャート(図3)のステップS113以降を、ステップS119~ステップS123に置き換えたものである。図15のステップS101~ステップS112の処理は、実施例1と同様である。
【0064】
ステップS119において、テキスト化処理部130は、ステップS101と同様の処理により、オフィスにおけるイベントテキストを生成する。
ステップS120において、テキスト化処理部130は、ステップS102と同様の処理により、イベントテキストを動作/稼働/状態コーパス121に格納する。
【0065】
ステップS121において、重要ノード類似度算出部139は、センサ情報により生成されたイベントテキストと、既に省エネ情報データベース124に格納されている重要ノードとの類似度を、両イベントテキストに紐づくノード特徴量に基づき算出する。
【0066】
図16に注目する。“夕方,10~20人,退室”が、アプローチ対象イベント“照明,OFF”に対する重要ノードとして既に省エネ情報データベース124に格納されている。重要ノード類似度算出部139は、“夕方,10~20人,退室”と、ステップS119において生成されたイベントテキスト“夕方,20~30人,退室”との類似度を、これらの特徴量に基づき算出する。重要ノード類似度算出部139は、同様に、“夕方,10~20人,退室”と、ステップS119において生成されたイベントテキスト“昼,5~10人,会議”との類似度を、これらの特徴量に基づき算出する。
【0067】
ステップS122において、重要ノード類似度算出部139は、算出された重要ノードとの類似度が所定の閾値以上であることを確認する。つまり、重要ノード類似度算出部139は、“夕方,10~20人,退室”との類似度が所定の閾値以上であるすべてのイベントテキストを保持してステップS123に進む。重要ノード類似度算出部139は、そのようなイベントテキストが存在しない場合、処理を終了する(フローとしては図示せず)。
【0068】
ステップS123において、重要ノード類似度算出部139は、重要ノードに紐づくアプローチ対象イベントに関するメッセージ(図17参照)を、“夕方,20~30人,退室”の主体の端末装置30の表示部31に表示する。
【0069】
本実施形態の省エネ行動変容支援装置の効果は、以下の通りである。
(1)省エネ行動変容支援装置は、主体とその行動をノードとするネットワークを生成することができる。
(2)省エネ行動変容支援装置は、省エネのための行動変容を促すメッセージを表示することができる。
(3)省エネ行動変容支援装置は、ノード間に関係性のあるネットワークを生成することができる。
(4)省エネ行動変容支援装置は、省エネのための競争意識をサービス利用者に与えることができる。
(5)省エネ行動変容支援装置は、幅広いサービス利用者に行動変容を促すことができる。
【0070】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0071】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。省エネ行動変容支援装置10の各種情報は、クラウド上に存在していてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 省エネ行動変容支援装置
11 入出力部
12 記憶部
13 演算部
20 通信ネットワーク
30 端末装置
31 表示部
32 入力部
40 センサ群
110 情報入力部
111 情報出力部
120 テキスト化ルール
121 動作/稼働/状態コーパス
122 全体ネットワーク
123 部分ネットワーク
124 省エネ情報データベース
125 エネルギー使用量レポート
130 テキスト化処理部
131 全体ネットワーク生成部
132 ノード特徴量抽出部
133 ノード分類部
134 ノード・エッジ剪定部
135 変容対象ネットワーク特定部
136 重要ノード特定部
137 エネルギー使用量レポート比較部
138 ネットワーク差分特定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17