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特開2024-151150アスコルビン酸誘導体又はその塩、及びこれらを配合した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151150
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】アスコルビン酸誘導体又はその塩、及びこれらを配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/62 20060101AFI20241017BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241017BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C07D307/62 CSP
A61K8/67
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064299
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000147213
【氏名又は名称】株式会社成和化成
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正人
(72)【発明者】
【氏名】本田 匡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 匡宏
(72)【発明者】
【氏名】岩木 伸穏
(72)【発明者】
【氏名】富山 愛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 咲紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD512
4C083AD532
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE12
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】美白作用、コラーゲン産生促進作用、保湿作用等のアスコルビン酸が元来有する優れた機能を有するとともに、長期間の保存でも安定で、変色、変臭、活性低下等が少ない、新規なアスコルビン酸誘導体又はその塩、並びにそれらを含有する化粧料を提供する。
【解決手段】アスコルビン酸の2位又は3位の水酸基の水素の一方が、HO-C(CH-CH-、又はHO-CH-C(CH-であり、他方がR-CH(CHOH)-、R-CH(OH)-CH-(Rは、H,アルキル基、アルケニル基又はフェニル基)で置換されているアスコルビン酸誘導体又はその塩、並びにそれらのアスコルビン酸誘導体を含有する化粧料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表わされることを特徴とするアスコルビン酸誘導体又はその塩。
【化1】
[式中、
及びRの一方が、HO-C(CH-CH-、又はHO-CH-C(CH-であり、他方がR-CH(CHOH)-、R-CH(OH)-CH-であり、 R及びRは、H、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、又はフェニル基である]
【請求項2】
請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体又はその塩を配合したことを特徴とする化粧料。
【請求項3】
前記アスコルビン酸誘導体又はその塩の配合量が、1から20質量%であることを特徴とする請求項2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の原料等として好適に用いられるアスコルビン酸誘導体又はその塩に関し、更に、前記アスコルビン酸誘導体又はその塩を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸は、安全かつ有用な抗酸化物質であり、優れた美白作用などを有する化合物として知られているが、一方、光、熱、酸化に対して不安定であり、化粧品分野での利用が妨げられていた。そこで、アスコルビン酸より経時安定性が向上したものとして、種々のアスコルビン酸誘導体又はその塩が提案されており、美白用の皮膚外用剤への配合(特許文献1、特許文献2)や、化粧料への配合(特許文献3)が提案されている。
【0003】
しかしながら、前記のアスコルビン酸誘導体及びその塩の多くは、経時により着色や臭いを発生する等の問題があり、その経時安定性はなお不十分であり、また生体内での活性の持続も短期的でありその改善が望まれている。
【0004】
本発明者らはこれらの課題を解決したアスコルビン酸誘導体を提案している(特許文献4)が更なる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-221611号公報
【特許文献2】特開2005-060239号公報
【特許文献3】特開平1-228978号公報
【特許文献4】特許第4681670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、美白作用、保湿作用などのアスコルビン酸が元来有する優れた作用を有するとともに、経時による変色、変臭、活性低下等が少ないとの高い安定性に加え、さらに優れた生理活性効果を有するアスコルビン酸誘導体又はその塩、及びこれらを配合した化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、下記式(I)で示される新規なアスコルビン酸誘導体又はその塩は、美白作用、保湿作用などの作用に優れるとともに、安定で経時による変色、変臭、活性低下などが少ないことに加え、ヒアルロン酸産生促進効果などの優れた生理活性効果を有していることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
【0008】
本発明は、下記の一般式(I)で表わされることを特徴とするアスコルビン酸誘導体又はその塩を提供する(請求項1)。
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、R及びRの一方が、HO-C(CH-CH-、又はHO-CH-C(CH-であり、他方がR-CH(CHOH)-、又はR-CH(OH)-CH-であり、R及びRは、H、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、又はフェニル基である。]
【0011】
一般式(I)で表わされるアスコルビン酸誘導体又はその塩は、アスコルビン酸や従来のアスコルビン酸誘導体より、経時安定性が優れており、室温以上の高温環境下で数週間保存しても高い残存率が維持され、臭いの発生や着色の問題も抑制されている。
【0012】
一般式(I)で表わされる本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩は、グリセリルアスコルビン酸等の従来のアスコルビン酸誘導体と比べて、優れたメラニン生成抑制効果、コラーゲン産生促進効果やヒアルロン酸産生促進効果を有する。
【0013】
本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩を化粧料に配合することにより、美白作用や保湿作用などに優れかつ長期間の保存でも安定し、高い生理活性を有する化粧料を得る事ができる。そこで、本発明は、前記本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩を配合することを特徴とする化粧料を提供する(請求項2)。又、前記本発明の効果は化粧料中に1から20質量%配合した場合に特に発揮されるので、本発明は、さらに、前記本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩の配合量が1から20質量%である化粧料を提供する(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の前記一般式(I)で示されるアスコルビン酸又はその塩は、美白作用、保湿作用等のアスコルビン酸誘導体が元来有する優れた機能を有するとともに、長期間の保存でも安定で、経時による変色、変臭、活性低下等が少ないものであり、かつメラニン生成抑制効果、コラーゲン産生促進効果、ヒアルロン酸産生促進効果などの高い生理活性を有する。従って、この化合物を皮膚外用剤や毛髪化粧料などの化粧料に配合することにより、美白作用や保湿作用などに優れかつ長期間の保存でも安定し、高い生理活性を有する化粧料を得る事ができる。本発明の化粧料は、この美白作用や保湿作用などに優れるとともに長期間の保存でも安定し、高い生理活性を有する化粧料(美白化粧料や保湿化粧料など)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、HO-C(CH-CH-又はHO-CH-C(CH-は、「ヒドロキシイソブチル基」と表す。又、ヒドロキシイソブチルアスコルビン酸とは、アスコルビン酸が有する各水酸基の酸素のいずれかの酸素にヒドロキシイソブチル基が結合したものを言うが、本発明のアスコルビン酸誘導体は、ヒドロキシイソブチルアスコルビン酸の中でも2位又は3位にヒドロキシイソブチル基が結合したものである。
【0016】
一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体の具体例としては、以下に示す化合物を挙げることができるが、本発明の範囲は以下に示すものに限定されない。
【0017】
なお、以下の例示において、
2-ヒドロキシアルキル基とは、R-CH(OH)-CH-(Rはアルキル基を示す。)で表される1-アルキル-2-ヒドロキシエチル基を示し、
2-ヒドロキシアルケニル基とは、R-CH(OH)-CH-(Rはアルケニル基を示す。)で表される1-アルケニル-2-ヒドロキシエチル基を示す。
また、アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等を示し、
アルケニル基とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソブテニル基、クロチル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等を示す。
【0018】
(1)3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシアルキル)アスコルビン酸、例えば、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシエチルベンゼン)アスコルビン酸;
(2)3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(1-アルキル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、例えば、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(1-メチル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(1-エチル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(1-オクチル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(1-テトラデシル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(1-フェニル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸;
【0019】
(3)2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシアルキル)アスコルビン酸、例えば、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシエチルベンゼン)アスコルビン酸;
(4)2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(1-アルキル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、例えば、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(1-メチル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(1-エチル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(1-オクチル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(1-テトラデシル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(1-フェニル-2-ヒドロキシエチル)アスコルビン酸。
【0020】
本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩は諸種の方法により製造することができる。例えば、アスコルビン酸に対してイソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールを反応させることにより、アスコルビン酸の2位又は3位に結合する酸素に、ヒドロキシイソブチル基を導入し、2-O-又は3-O-ヒドロキシイソブチルアスコルビン酸を合成する。その後、公知の手段により、2位又は3位に結合する他の酸素に、ヒドロキシアルキル化などを行うことで本発明のアスコルビン酸誘導体が得られる。まず、アスコルビン酸の2位又は3位に結合する酸素にヒドロキシアルキル化などを行い、その後、イソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールを反応させて本発明の化合物を得ても良い。
【0021】
すなわち、一般式(I)で表わされるアスコルビン酸誘導体は、例えば、アスコルビン酸にイソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールを反応させて得られるR又はRの一方がHO-C(CH-CH-又はHO-CH-C(CH-である化合物に、特定構造のアルキレンオキシド、アルケニルオキシド、スチレンオキシドなどを反応させることにより得ることができるし、または、アスコルビン酸に特定構造のアルキレンオキシド、アルケニルオキシド、スチレンオキシドなどをR又はRの一方に反応させて得られる化合物に、イソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールを反応させても得ることができる。
【0022】
本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩の製造において、ヒドロキシイソブチル基を導入する化合物としては、前記のように、例えば、イソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールが挙げられるが特に限定されない。ハロゲン化tert-ブチルアルコールとしては、例えば、フッ素化tert-ブチルアルコール、塩化tert-ブチルアルコール、臭化tert-ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0023】
アスコルビン酸又はヒドロキシアルキル化したアスコルビン酸と、イソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールとの反応では、エーテル化の反応条件の相違により、主に2位の水酸基がエーテル化する場合と、主に3位の水酸基がエーテル化する場合がある。主に2位の水酸基がエーテル化する場合は、Rが、HO-C(CH-CH-であるものとHO-CH-C(CH-であるものとの混合物が生じる場合もあり、主に3位の水酸基がエーテル化する場合は、Rが、HO-C(CH-CH-であるものとHO-CH-C(CH-であるものとの混合物が生じる場合もある。
【0024】
本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩の製造に使用するイソブチレンオキシド又はハロゲン化tert-ブチルアルコールの使用量に特に制限はないが、アスコルビン酸1モルに対して0.8~1.5モルであることが好ましく、1.0~1.2モルであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の製造におけるヒドロキシイソブチル基を導入する反応は、各種溶媒中で行うことができる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、等の低級アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、N―メチルピロリドン又はそれらの混合溶媒等を挙げることができ、特に制限はない。
反応温度は特に制限ないが、30~100℃の範囲が好ましく、50~90℃の範囲がさらに好ましく、60℃~90℃の範囲が特に好ましい。
【0026】
反応溶媒のpHは特に制限はないが、前記アスコルビン酸誘導体又はその塩の製造において、アスコルビン酸構造の3位にヒドロキシイソブチル基を導入する場合は、酸性条件下が好ましく、特にpH2~6が好ましく、前記アスコルビン酸誘導体又はその塩の製造において、アスコルビン酸構造の2位にヒドロキシイソブチル基を導入する場合は、アルカリ性条件下が好ましく、特にpH8~11が好ましい。
【0027】
反応時のpH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0028】
前記のようにして合成したヒドロキシイソブチルアスコルビン酸に対して、アルキレンオキシド、アルケニルオキシド、スチレンオキシド、ハロゲン化ヒドロキシアルキル、ハロゲン化ヒドロキシアルケニル、ハロゲン化ベンジルアルコール、ハロゲン化フェネチルアルコールなどによりヒドロキシアルキル化などを行うことにより請求項1のアスコルビン酸誘導体又はその塩を得ることができる。
【0029】
アルキル化、アルケニル化、フェニル化などに使用するアルキレンオキシド、アルケニルオキシド、スチレンオキシドなどの使用量には特に制限はないが、ヒドロキシイソブチルアスコルビン酸1モルに対して0.8~2.0モルであることが好ましい。
【0030】
アルキレンオキシド、アルケニルオキシド、スチレンオキシドなどの反応は、ヒドロキシイソブチレン基を導入する反応と同様の溶媒、反応温度、pHで行うことができる。
なお、まず、アスコルビン酸の2位又は3位に結合する酸素にヒドロキシアルキル化などを行い、その後、他の酸素に、ヒドロキシイソブチル基を導入する場合も、それぞれの反応は、前記と同様な条件で行うことができる。
【0031】
前記のようにして製造される本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂等の樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、抽出、蒸留、結晶化等の手段により精製することができる。
【0032】
本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩は、皮膚外用剤や毛髪化粧料などの各種化粧料の成分として好適に用いられる。又、食品の添加剤、飼料等としても利用できる。
【0033】
本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩を各種化粧料へ配合する場合の配合量は、1%~20質量%が好ましく、3%~10質量%の範囲が特に好ましい。1%質量未満の場合は、ヒアルロン酸産生促進効果等、本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩が有する効果を十分示せない場合が多く、一方、20質量%を超える場合は、配合量に見合った効果が望めない場合が多い、また剤系を壊す恐れがある。
【0034】
本発明の化粧料には、この必須成分の他に、通常用いられる成分、例えば、油性原料、界面活性剤、保湿剤、高分子化合物、酸化防止剤、美白剤、薬剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、タンパク質、タンパク質加水分解物又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、pH調整剤、防腐剤等を適宜配合することができる。なお、本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩は、保湿剤としても効果を発揮するが、本発明の化粧料には、他の保湿剤も適宜配合することができる。
【0035】
油性原料、界面活性剤、他の保湿剤、高分子化合物、酸化防止剤、他の美白剤、他の薬剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、タンパク質、タンパク質加水分解物又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、pH調整剤、防腐剤等としては、特開2022-028125号公報に記載されているものと同様なものを挙げることができる。
【0036】
本発明の化粧料の剤系は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、ゲル系、粉末分散系、水-油二層系等いずれも可能であり、目的とする製品に応じて上記一般式(I)で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩と上記任意配合成分とを配合して製造することができる。
【実施例0037】
次に、本発明を実施するための具体的な形態を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例により限定されるものではない。なお、実施例に先立って、実施例や比較例で使用する本発明のアスコルビン酸誘導体の製造例を合成例として示す。
【0038】
合成例1 2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコ内に、水(10.5mL)、DMF(5mL)、アスコルビン酸(10.0g)、水酸化ナトリウム(2.50g)、イソブチレンオキシド(4.50g)を加え、60℃条件下4時間攪拌を行った。反応終了後、5mol/L塩酸を加え、pHを酸性とした。減圧下にて濃縮を行い、イソプロパノールを加えた後、ろ過を行い、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(10.1g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=10/0~6/4混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(8.83g)を得た。
【0039】
得られた生成物について、質量分析、1H-NMR、13C-NMR測定を行い、これらの測定結果より、この生成物は、下記構造式で表される2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸であることが確認された。
【0040】
【化2】
【0041】
なお、この構造式においては、炭素原子、及び該炭素原子に結合する水素原子は省略されている。例えば、この式における1、2、4、6、7の位置は炭素であり、5の位置はCH基であり、3、9の位置はCH基であり、8の位置はCH基である。以下の構造式においてもこの式と同様に、水素原子や炭素原子を省略して表す。
【0042】
なお、以下に示す合成例でも、得られた生成物について、質量分析、1H-NMR、及び13C-NMR測定を行い、その測定結果より、各生成物は、各合成例において示す構造式又は化合物名で表されるアスコルビン酸誘導体であることが確認されている。合成例で得られた生成物についての、質量分析、1H-NMR及び13C-NMRの測定結果は、表1~3に示す。
【0043】
合成例2 3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコ内に、DMF(50mL)、アスコルビン酸(10.0g)、トリエチルアミン(1.72g)、イソブチレンオキシド(4.50g)を加え、90℃条件下3時間攪拌を行った。反応終了後、減圧下にて濃縮を行い、イソプロパノールを加えた後、ろ過を行い、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(8.21g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=10/0~6/4混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(7.42g)を得た。
【0044】
【化3】
【0045】
合成例3 2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例1で得られた2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(2.28g)、トリエチルアミン(0.19g)、DMF(9.2ml)、エポキシプロパン(0.64g)を加え、80℃条件下23時間攪拌を行った。反応終了後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(5.35g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=10/0~10/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸(0.17g)を得た。
【0046】
【化4】
【0047】
合成例4 2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシブチル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例1で得られた2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(2.28g)、トリエチルアミン(0.19g)、DMF(9.2ml)、エポキシブタン(0.80g)を加え、80℃条件下23時間攪拌を行った。反応終了後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(4.93g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=10/0~10/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシブチル)アスコルビン酸(0.18g)を得た。
【0048】
【化5】
【0049】
合成例5 2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例1で得られた2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(1.99g)、炭酸水素ナトリウム(0.14g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.77g)、DMF(30ml)、エポキシデカン(1.63g)を加え、90℃条件下18時間攪拌を行った。反応終了後、イオン交換水と酢酸エチルを加え、分液操作を行った。酢酸エチル層を回収し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(2.09g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=10/0/0~5/5/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸(0.11g)を得た。
【0050】
【化6】
【0051】
合成例6 2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例1で得られた2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(2.28g)、トリエチルアミン(0.19g)、DMF(9.2ml)、エポキシヘキサデカン(2.65g)を加え、80℃条件下18時間攪拌を行った。反応終了後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(3.81g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=10/0/0~5/5/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビン酸(0.55g)を得た。
【0052】
【化7】
【0053】
合成例7 2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシエチルベンゼン)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例1で得られた2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(2.28g)、トリエチルアミン(0.19g)、DMF(9.2ml)、スチレンオキシド(1.32g)を加え、80℃条件下18時間攪拌を行った。反応終了後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(3.49g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、ヘキサン/酢酸エチル/メタノール=10/0/0~5/5/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシエチルベンゼン)アスコルビン酸(0.65g)を得た。
【0054】
【化8】
【0055】
合成例8 3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例2で得られた3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(1.28g)、ジアザビシクロウンデセン(0.15g)、DMAc(5.0ml)、エポキシプロパン(0.35g)を加え、65℃条件下16時間攪拌を行った。反応終了後、5mol/L塩酸を用いて中和した後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(0.72g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=10/0~6/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシプロピル)アスコルビン酸(0.38g)を得た。
【0056】
【化9】
【0057】
合成例9 3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシブチル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例2で得られた3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(1.28g)、ジアザビシクロウンデセン(0.15g)、DMAc(5.0ml)、エポキシブタン(0.43g)を加え、65℃条件下16時間攪拌を行った。反応終了後、5mol/L塩酸を用いて中和した後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(1.76g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=10/0~8/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシブチル)アスコルビン酸(0.27g)を得た。
【0058】
【化10】
【0059】
合成例10 3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例2で得られた3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(1.28g)、ジアザビシクロウンデセン(0.15g)、DMAc(5.0ml)、エポキシデカン(0.94g)を加え、80℃条件下16時間攪拌を行った。反応終了後、5mol/L塩酸を用いて中和した後、イオン交換水と酢酸エチルを加え、分液操作を行った。酢酸エチル層を回収し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(1.39g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=100/0~20/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸(0.30g)を得た。
【0060】
【化11】
【0061】
合成例11 3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例2で得られた3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(1.28g)、ジアザビシクロウンデセン(0.15g)、DMAc(5.0ml)、エポキシヘキサデカン(1.44g)を加え、80℃条件下16時間攪拌を行った。反応終了後、5mol/L塩酸を用いて中和した後、イオン交換水とヘキサン、酢酸エチルを加え、分液操作を行った。ヘキサン、酢酸エチル層を回収し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(2.10g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=100/0~40/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビン酸(0.30g)を得た。
【0062】
【化12】
【0063】
合成例12 3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシエチルベンゼン)アスコルビン酸の合成
ナスフラスコに、合成例2で得られた3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)アスコルビン酸(1.28g)、ジアザビシクロウンデセン(0.15g)、DMAc(5.0ml)、スチレンオキシド(0.74g)を加え、80℃条件下16時間攪拌を行った。反応終了後、5mol/L塩酸を用いて中和した後、イオン交換水とヘキサン、酢酸エチルを加え、分液操作を行った。ヘキサン、酢酸エチル層を回収し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮を行った。得られた残渣(2.31g)をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール=100/0~40/1混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、下記構造式で示される3-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-2-O-(2-ヒドロキシエチルベンゼン)アスコルビン酸(0.48g)を得た。
【0064】
【化13】
【0065】
合成例1~12で得られた生成物の質量分析をLCMS-2020(島津製作所株式会社製)により行った。その測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
合成例1~12で得られた生成物の1H-NMRをJNM-ECS400(日本電子株式会社製)により行った。その測定結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
合成例1~12で得られた生成物の13C-NMRをJNM-ECS400(日本電子株式会社製)により行った。その測定結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
試験例1[メラニン生成抑制効果]
美白効果の試験として、B16メラノーマ4A5細胞のテオフィリン誘発メラニン産生に対する作用の評価を、下記の手順により、本発明のアスコルビン酸誘導体について行った。同様な評価を、比較として、公知化合物であるアスコルビン酸誘導体についても行った。その結果を表4に示す。
【0072】
(1)B16マウス メラノーマ4A5細胞を、8.0×10cells/wellの細胞密度で48ウェルプレートに播種した。
(2)10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地(SIGMA社製、以下D-MEMと略記する。)にて24時間培養後、テオフィリン(終濃度1mmol/L)、及び所定の濃度の試料を含有した10%ウシ胎児血清含有D-MEMに交換した。
(3)試料共存下で3日間培養後、アスピレーターを用いて培地を除去し、蒸留水を添加後超音波により細胞を破砕した。
(4)その後、タンパク量を、BCA protein assay kit(PIERCE社製)を用いて定量し、又、メラニンの生成量を、アルカリ可溶化法にて測定した。細胞破砕液に終濃度1mol/Lとなるように水酸化ナトリウムを添加して加熱溶解(60℃、30分)後、マイクロプレートリーダーを用いて405nmの吸光度を測定した。メラニン量は、合成メラニン(SIGMA)を標準品として作成した検量線から算出した。タンパク量でメラニン量を除することにより単位タンパクあたりのメラニン量を算出した。
(5)メラニン生成抑制率は、次式から算出した。
メラニン生成抑制率(%)=[1-(A-B)/(C-B)]×100
[式中、Aは、試料添加時の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)、Bは、normal群の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)、Cはcontrol群の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)を示す。]
【0073】
試料を10mmol/L以下の濃度で測定したときのメラニン生成抑制率を下記のように表記した。なお、測定はN=4で行った。
<20% :±
20-40% :+
40-60% :++
60-100%:+++
【0074】
【表4】
【0075】
表4の結果は、本発明のアスコルビン酸誘導体は、公知のアスコルビン酸誘導体、即ち、2-O-グリセリルアスコルビン酸や3-O-グリセリルアスコルビン酸と同等以上の美白効果を有することを示している。
【0076】
試験例2 [コラーゲン産生促進効果]
正常ヒト皮膚線維芽細胞を、2.5×10cells/wellの細胞密度になるように5%(v/v)のウシ胎児血清含有D-MEMで調製後、96ウェルプレート上で24時間のプレインキュベージョンを行った。培地を除去した後、次に5%(v/v)ウシ胎児血清含有D-MEMで所定の濃度に調製したサンプルを各ウェルに添加した後48時間培養した。培養終了後、上清中の遊離コラーゲン量をELISA法により定量した。なお、測定はN=3で行った。
【0077】
試料を10mmol/L以下の濃度で測定したときのコラーゲン産生量をControl群と比較し、その結果(Control群を100%としたときの%値)を以下の基準に基づき表5に示す。
<100% :±
100-120%:+
120%< :++
【0078】
【表5】
【0079】
表5の結果より、本発明のアスコルビン酸誘導体は、公知のアスコルビン酸誘導体又はその塩、即ち、2-O-グリセリルアスコルビン酸や3-O-グリセリルアスコルビン酸と、同等以上のコラーゲン産生促進効果を有することが明らかである。
【0080】
試験例3 [ヒアルロン酸産生促進効果]
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を、2.5×10cells/wellの細胞密度になるように5%(v/v)のウシ胎児血清含有D-MEMで調製後、96ウェルプレート上で24時間のプレインキュベージョンを行った。培地を除去した後、次に無血清D-MEMで調製したサンプルを各ウェルに添加した後48時間培養した。培養終了後、上清中のヒアルロン酸量をELISA法により定量した。なお、測定はN=3で行った。
【0081】
試料を10mmol/L以下の濃度で測定したときのヒアルロン酸産生量をControl群と比較し、その結果(Control群を100%としたときの%値)を以下の基準に基づき表6に示す。
<100% :±
100-120%:+
120-150%:++
150%< :+++
【0082】
【表6】
【0083】
表6の結果より、本発明のアスコルビン酸誘導体は、2-O-グリセリルアスコルビン酸等の公知のアスコルビン酸誘導体よりも優れたヒアルロン酸産生促進効果を有することが明らかである。
【0084】
試験例4 [安定性試験]
各種試験サンプルの1%水溶液を希水酸化カリウム水溶液でそれぞれpH6に調製し、50mLのスクリュー管に入れ密栓し、50℃にて4週間保管し、HPLC測定(島津製作所製液体クロマトグラフィーを用いた)を行いピーク面積より残存率を求めた。残存率、臭い及び着色度を下記の方法、基準に基づき評価し結果を表7に示す。
【0085】
残存率:
◎ : 90%以上
○ : 80%以上、90%未満
△ : 60%以上、80%未満
× : 20%以上、60%未満
××: 20%未満
【0086】
臭い: 10人のパネラーにより、次の基準で評価した。
3: ほとんど無臭。
2: 少し異臭が感じられる。
1: 強い異臭が感じられる。
この評価結果に基づき、下記の様に分類した。
◎:10人の総合点が25以上
○:10人の総合点が20~24
△:10人の総合点が16~19
×:10人の総合点が15以下
【0087】
着色: 10人のパネラーにより、次の基準で評価した。
3: 調製直後と比較しほとんど変化なし。
2: 調製直後と比較し着色する。
1: 調製直後と比較し強く着色。
この評価結果に基づき、下記の様に分類した。
○:10人の総合点が25以上
△:10人の総合点が16~24
×:10人の総合点が15以下
【0088】
【表7】
【0089】
本発明のアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸よりも50℃で保存した場合の経時安定性に優れており、臭いの発生や着色等がほとんど見られないことを示している。すなわち、表7に示す結果は、本発明のアスコルビン酸誘導体が、優れた美白効果とのアスコルビン酸が元来有する優れた性質を有するとともに、従来のアスコルビン酸誘導体の問題であった経時安定性が向上しており、化粧料の配合材料としてより好適であることを示している。
【0090】
実施例41 クリーム
表8に示す組成の(1)~(5)の油相部の原料、および(6)~(10)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、美白効果に優れたクリームを調製する。なお、表8以後の表中、配合量は質量部を表す。
【0091】
【表8】
【0092】
実施例42 乳液
表9に示す組成の(1)~(9)の油相部の原料、および(10)~(13)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、美白効果に優れた乳液を調製する。
【0093】
【表9】
【0094】
実施例43 乳液
表10に示す組成の(5)~(10)の油相部の原料、および(1)~(4)、(11)~(12)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、美白効果に優れた乳液を調製する。
【0095】
【表10】
【0096】
実施例44 クリーム
表11に示す組成の(1)~(2)の油相部の原料、および(3)~(10)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、クリームを調製する。このクリームは、美白効果に優れた皮膚用化粧料として用いられる。
【0097】
【表11】
【0098】
実施例45 化粧水
表12に示す組成の(1)~(6)の原料を、よく攪拌しながら混合することにより化粧水を調製する。この化粧水は、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシブチル)アスコルビン酸を7質量%含んでいるので、優れた美白効果を有する。
【0099】
【表12】
【0100】
実施例46 クリーム
表13に示す組成の(1)~(6)の油相部を、および(7)~(10)の水相部をそれぞれ70℃に加温溶解する。水相部に油相部を加え予備乳化を行い、ついでホモミキサーで乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却してクリームを調製する。このクリームは、2-O-(2-ヒドロキシイソブチル)-3-O-(2-ヒドロキシデシル)アスコルビン酸を3質量%含んでいるので、優れたメラニン産生抑制効果を有し美白効果に優れた皮膚用化粧料として用いることができる。
【0101】
【表13】