(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151176
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/275 20180101AFI20241017BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20241017BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20241017BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241017BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20241017BHJP
【FI】
F21S41/275
F21S41/151
F21S41/143
F21Y115:10
F21W102:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064343
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
(57)【要約】
【課題】照射パターンのボケを抑制することが可能な車両用前照灯を提供する。
【解決手段】車両用前照灯は、左右方向に配置された複数の光源と、複数の光源の前方に配置され、光を前方に出射する光源側レンズと、光源側レンズの前方に配置され、光源側レンズから照射された光を車両前方に照射する投影レンズとを備え、光源側レンズは、複数の光源からの光が入射する入射面を有し、入射面には、投影レンズの光軸から左右方向に外れた位置に、上下方向に延びる溝部が少なくとも1つ配置され、溝部は、複数の光源からの光を光軸側に屈折させる傾斜部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に配置された複数の光源と、
複数の前記光源の前方に配置され、光を前方に出射する光源側レンズと、
前記光源側レンズの前方に配置され、前記光源側レンズから照射された前記光を車両前方に照射する投影レンズと
を備え、
前記光源側レンズは、複数の前記光源からの光が入射する入射面を有し、
前記入射面には、前記投影レンズの光軸から左右方向に外れた位置に、上下方向に延びる溝部が少なくとも1つ配置され、
前記溝部は、複数の前記光源からの光を前記光軸側に屈折させる傾斜部を有する
車両用前照灯。
【請求項2】
前記溝部は、前記光軸に沿った光軸方向から見て、前記入射面のうちそれぞれの前記光源に対向する部分の少なくとも一部を空けるように配置される
請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記溝部は、前記光軸に沿った光軸方向から見て、左右方向に隣り合う前記光源同士の間に前記傾斜部が位置するように配置される
請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記溝部は、左右方向に間隔を空けて複数配置される
請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記溝部は、前記光軸の左方及び右方の両側に配置される
請求項4に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記溝部は、前記光軸に対して左右方向の車両外側に複数配置される
請求項4に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記光軸の左方に配置される前記溝部の数と、前記光軸の右方に配置される前記溝部の数とが異なる
請求項6に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記光源側レンズは、前記入射面に入射した光が出射する出射面を有し、
前記出射面は、前記光軸が通過する中央部から左右方向の両端にかけて背面側に湾曲する湾曲部を有する
請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
前記溝部は、前記光軸に沿った光軸方向から見て、前記湾曲部に重なる部分に配置される
請求項8に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の複数の光源の点灯状態を個別に制御して車両前方にADB配光パターンを形成する車両用前照灯が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような車両用前照灯においては、複数の光源からの光が投影レンズの中心に対して左右方向に離れた位置に入射した場合、投影レンズで照射される照射パターンにボケが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、照射パターンのボケを抑制することが可能な車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用前照灯は、左右方向に配置された複数の光源と、複数の前記光源の前方に配置され、光を前方に出射する光源側レンズと、前記光源側レンズの前方に配置され、前記光源側レンズから照射された前記光を車両前方に照射する投影レンズとを備え、前記光源側レンズは、複数の前記光源からの光が入射する入射面を有し、前記入射面には、前記投影レンズの光軸から左右方向に外れた位置に、上下方向に延びる溝部が少なくとも1つ配置され、前記溝部は、複数の前記光源からの光を前記光軸側に屈折させる傾斜部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照射パターンのボケを抑制することが可能な車両用前照灯を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、光源側レンズの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、光源側レンズの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、光源側レンズの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、光源側レンズの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、光源側レンズの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、光源側レンズの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、車両用前照灯の動作の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、車両用前照灯の動作の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、車両用前照灯の動作の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、車両用前照灯によるADBパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用前照灯の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。また、本実施形態において、正面側及び背面側の各方向は、例えば車両に搭載された状態(車両搭載状態)における方向であるとする。例えば、車両の前部(フロント)に搭載された状態では、前方が正面方向(正面側)であり、後方が背面方向(背面側)である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯100の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、車両用前照灯100は、複数の光源10と、光源側レンズ20と、投影レンズ30とを備える。車両用前照灯100は、複数の光源10の点灯及び消灯を個別に制御することで、車両前方にADB配光パターンを形成する。車両用前照灯100は、車両の前部の左右に配置される。本実施形態では、車両の右側に配置される車両用前照灯100を例に挙げて説明する。なお、車両の左側に配置される車両用前照灯は、例えば本実施形態に係る車両用前照灯100と左右対称の構成である。
【0012】
複数の光源10は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の半導体型素子である。複数の光源10は、左右方向に並んだ状態で配置される。本実施形態では、例えば12個の光源10が左右方向に並んでいる。複数の光源10の左右方向のピッチについては、特に限定されず、例えばすべて同一であってもよいし、すべて異なってもよいし、少なくとも2つのピッチが同一であってもよい。
【0013】
複数の光源10の1つは、投影レンズ30の光軸AX上に配置される。左右方向に隣り合う光源10同士の間隔については、光源10により異なってもよい。また、光軸AXの左側に配置される光源10の数が、光軸AXの右側に配置される光源10の数よりも多くなっている。複数の光源10は、発光面11が車両前方に向けられている。複数の光源10は、配線等が形成された不図示の基板に実装される。当該基板は、ヒートシンク等の支持部材に支持される。
【0014】
光源側レンズ20は、複数の光源10の前方に配置される。
図2から
図7は、光源側レンズ20の一例を示す図である。
図2は斜め前方から見た図、
図3は上方から見た図、
図4は後方から見た図、
図5は
図4のA-A断面に沿った構成を示す図である。
図6は、
図3のうち投影レンズ30の光軸AXに対して左側の構成を拡大して示す図である。
図7は、
図3のうち投影レンズ30の光軸AXに対して右側の構成を拡大して示す図である。
図1から
図7に示すように、光源側レンズ20は、入射面21と、出射面22とを有する。
【0015】
入射面21は、複数の光源10からの光が入射する。入射面21は、縦断面視(
図5参照)において、上下方向の中央部が光源10側に突出するように湾曲している。
【0016】
入射面21は、溝部24を有する。溝部24は、投影レンズ30の光軸AXから左右方向に外れた位置に配置される。本実施形態において、溝部24は、複数配置され、例えば光軸AXに対して左右方向の車両内側(左方)に4つ、車両外側(右方)に2つ配置される。すなわち、光軸AXに対して左右方向の車両内側の方が光軸AXに対して左右方向の車両外側よりも溝部24の数が多くなっている。本実施形態では、車両用前照灯100が車両の右側に配置される構成であり、光軸AXに対して車両外側である右側に配置される光源10の数よりも光軸AXに対して車両内側である左側に配置される光源10の数の方が多い。したがって、当該構成に対応するように、溝部24の数は、光軸AXの左側の方が光軸AXの右側よりも多くなっている。このように、光軸AXの左側に配置される溝部24の数と、光軸AXの右側に配置される溝部24の数とが異なる構成とすることができる。
【0017】
なお、溝部24は、1つであってもよい。また、本実施形態において、溝部24は、光軸AXの左方及び右方の両側に配置されるが、この構成に限定されない。例えば、光軸AXの左方及び右方の一方にのみ溝部24が配置された構成であってもよい。また、例えば、光軸AXに対して左右方向の車両外側(右方)には、溝部24が配置されなくてもよい。
【0018】
複数の溝部24は、左右方向に間隔を空けて配置される。溝部24は、上下方向に延びている。溝部24の幅は、上下方向についてほぼ均一となっている。複数の溝部24は、左右方向の幅が互いに異なってもよい。
【0019】
各溝部24は、左右方向の両側から中央部にかけて深さが徐々に深くなるように、上面視(
図3参照)においてV状に形成される。溝部24は、傾斜部25及び接続部26を有する。傾斜部25及び接続部26は、例えば断面においては直線状であり、光軸AXに垂直な平面に対して傾斜して設けられる。1つの溝部24において、傾斜部25が左右方向の一方に設けられ、接続部26が左右方向の他方に設けられる。
【0020】
傾斜部25は、複数の光源10からの光を光軸AX側に屈折させる形状に形成される。例えば、光軸AXに対して左方に配置される溝部24のうち、左右方向の左側端部に配置される溝部24以外の溝部24は、傾斜部25が右方に向けて前方に傾くように形成される。また、左右方向の左側端部に配置される溝部24は、傾斜部25が左方に向けて前方に傾くように形成される。以下、傾斜部25を区別する場合、光軸AXに対して左方に配置される溝部24において、左右方向の左側端部に配置される溝部24の傾斜部25を傾斜部25bと表記し、それ以外の溝部24の傾斜部25を傾斜部25aと表記する(
図6等参照)。
【0021】
また、光軸AXに対して右方に配置される溝部24は、傾斜部25が左方に向けて前方に傾くように形成される。ただし、左右方向の右側端部に配置される溝部24は、傾斜部25が右方に向けて前方に傾くように形成される。以下、傾斜部25を区別する場合、光軸AXに対して右方に配置される溝部24において、左右方向の右側端部に配置される溝部24の傾斜部25を傾斜部25dと表記し、それ以外の溝部24の傾斜部25を傾斜部25cと表記する(
図7等参照)。
【0022】
1つの溝部24において、傾斜部25及び接続部26は、それぞれ入射面21との境界部分が丸みを帯びた形状を有している。また、傾斜部25と接続部26との境界部分が丸みを帯びた形状を有している。
【0023】
光軸AXに沿った光軸方向から見て、各溝部24は、入射面21のうちそれぞれの光源10に対向する部分の少なくとも一部を空けるように配置される。換言すると、複数の光源10は、光軸方向から見て、少なくとも一部が、左右方向に隣り合う溝部24同士の間の入射面21に対向する位置に配置される。また、各溝部24は、光軸方向から見て、左右方向に隣り合う光源10同士の間に傾斜部25が位置するように配置される。
【0024】
出射面22は、入射面21から入射した光が出射する。出射面22は、
図3等に示すように、左右方向の中央に配置される中央部22aと、左右方向の両側に配置される湾曲部22bとを有する。中央部22aは、光軸AXが通過する。中央部22aは、例えばシリンドリカル状であり、上方から見た状態において前方の端部が直線状である。
【0025】
湾曲部22bは、中央部22aから左右方向の両端にかけて背面側に湾曲するように形成される。上記した溝部24は、例えば光軸AXに沿った光軸方向から見て、湾曲部22bに対応する部分に配置することができる。また、出射面22は、縦断面視(
図5参照)において、上下方向の中央部から上下の両側にかけて背面側に湾曲するように形成される。出射面22全体として、中央部22a及び左右の湾曲部22bは、無段差で、接線が連続し曲率が連続した形状となっている。
【0026】
本実施形態では、投影レンズ30の光軸AXの右側よりも左側の方が、光源10が左右方向で広い範囲に亘って設けられている。このため、当該光源10の配置に対応するように、右側の湾曲部22bは、左側の湾曲部22bを左右対称にした形状に対して、右端の一部をカットした形状となっている。したがって、左側の湾曲部22bの方が、右側の湾曲部22bよりも広い範囲に亘って設けられている。なお、左右の湾曲部22bは、それぞれ中央部22aから左右方向の左方及び右方に向けて等しい曲率で湾曲した形状となっている。
【0027】
光源側レンズ20には、取り付け部23が設けられる。取り付け部23は、光源側レンズ20の左右方向の両側に配置される。取り付け部23は、例えばネジ等の不図示の固定部材を介して取り付けられる。
【0028】
投影レンズ30は、光源側レンズ20の前方に配置される。投影レンズ30は、不図示の保持部等に保持される。投影レンズ30は、入射面31及び出射面32を有する。入射面31は、光源側レンズ20からの光が入射する。出射面32は、入射面31から入射した光を車両前方に出射して、ADBパターンを形成する。
【0029】
次に、上記のように構成された車両用前照灯100の動作を説明する。
図8から
図10は、車両用前照灯100の動作の一例を示す図である。
図9及び
図10は、
図8の一部を拡大して示している。なお、
図9及び
図10は、水平面に平行な断面に沿った構成を示している。
【0030】
車両用前照灯100の複数の光源10を点灯させることにより、発光面11から光が放射される。複数の光源10のうち、光軸AXに沿った光軸方向から見て出射面22の中央部22aに対応する範囲に配置される光源10からの光L1は、
図8に示すように、入射面21から光源側レンズ20に入射し、出射面22から前方に出射される。この光L1は、投影レンズ30の入射面31から入射し、出射面32から出射され、車両前方にADBパターンの少なくとも一部を形成する。
【0031】
また、複数の光源10のうち、出射面22の左側の湾曲部22bに対応する範囲に配置される光源10からの光は、
図8に示すように、一部の光L2が、左右方向に並ぶ溝部24の間の入射面21から入射し、一部の光L3が、溝部24の傾斜部25aから入射する。また、例えば左端に配置される光源10から出射される光は、例えば一部の光L4が溝部24の傾斜部25bから入射し、一部の光L5が左端の溝部24よりも左側に位置する入射面21(以下、入射面21の左端部21aと表記する)から入射する。
【0032】
入射面21から入射した光L2は、例えば出射面22の中央部22aから出射され、投影レンズ30の入射面31に到達する。
【0033】
溝部24の傾斜部25aから入射した光L3は、傾斜部25aにより光軸AX側に屈折され、出射面22の中央部22a又は湾曲部22bから出射される。この光L3は、傾斜部25aが設けられない場合の光L3a(
図8及び
図9に一点鎖線で示す)よりも、投影レンズ30の入射面31の光軸AX側に到達する。
【0034】
溝部24の傾斜部25bから入射した光L4は、傾斜部25bにより光軸AX側に屈折されて出射面22の湾曲部22bから出射される。この光L4は、傾斜部25bが設けられない場合の光L4a(
図8及び
図9に一点鎖線で示す)に比べて、光軸AXとの間でなす角度が小さくなるように屈折されて、投影レンズ30の入射面31の光軸AX側に到達する。
【0035】
入射面21の左端部21aから入射した光L5は、出射面22の湾曲部22bから光軸AX側に屈折された状態で出射され、投影レンズ30の入射面31に到達する。湾曲部22bが形成されない場合、左端部の入射面21から入射する光L5a(
図8及び
図9に一点鎖線で示す)は、光源側レンズ20の側部から出射され、投影レンズ30には到達しない。これに対して、湾曲部22bが形成されることで、左端部の入射面21から入射した光L5は、出射面22の湾曲部22bにより光軸AX側に屈折されて出射されるため、投影レンズ30の入射面31に到達する。このため、光の利用効率が高くなる。
【0036】
また、複数の光源10のうち、出射面22の右側の湾曲部22bに対応する範囲に配置される光源10からの光は、
図8及び
図9に示すように、一部の光L6が、左右方向に並ぶ溝部24の間の入射面21から入射する。また、一部の光L7が、溝部24の傾斜部25cから入射する。また、例えば左端に配置される光源10から出射される光は、例えば一部の光L8が溝部24の傾斜部25dから入射し、一部の光L9が右端の溝部24よりも右側に位置する入射面21(以下、入射面21の右端部21bと表記する)から入射する。
【0037】
入射面21から入射した光L6は、例えば出射面22の中央部22aから出射され、投影レンズ30の入射面31に到達する。
【0038】
溝部24の傾斜部25bから入射した光L7は、傾斜部25cにより光軸AX側に屈折され、出射面22の中央部22a又は湾曲部22bから出射される。この光L7は、傾斜部25cが設けられない場合の光L7a(
図8及び
図10に一点鎖線で示す)よりも、投影レンズ30の入射面31の光軸AX側に到達する。
【0039】
溝部24の傾斜部25dから入射した光L8は、傾斜部25dにより光軸AX側に屈折されて出射面22の湾曲部22bから出射される。この光L8は、傾斜部25dが設けられない場合の光L8a(
図8及び
図10に一点鎖線で示す)に比べて、光軸AXとの間でなす角度が小さくなるように屈折されて、投影レンズ30の入射面31の光軸AX側に到達する。
【0040】
入射面21の右端部21bから入射した光L9は、出射面22の湾曲部22bから光軸AX側に屈折された状態で出射され、投影レンズ30の入射面31に到達する。湾曲部22bが形成されない場合、右端部の入射面21から入射する光L9a(
図8及び
図10に一点鎖線で示す)は、光源側レンズ20の側部から出射され、投影レンズ30には到達しない。これに対して、湾曲部22bが形成されることで、右端部の入射面21から入射した光L9は、出射面22の湾曲部22bにより光軸AX側に屈折されて出射されるため、投影レンズ30の入射面31に到達する。このため、光の利用効率が高くなる。
【0041】
図11は、車両用前照灯によるADBパターンの一例を示す図である。
図11において、H-H線は水平線を示し、V-V線は鉛直方向に平行な線(以下、鉛直線と表記する)を示す。上記のように入射面31に到達した光L1~光L9は、入射面31から入射し、出射面32から出射されて、車両前方にADBパターンPを形成する。
図11に示すように、ADBパターンPは、光源10に対応するパターンP1~P12が左右方向に一部重複しつつ並んだ状態で配置される。ADBパターンPの中央領域PAは、光源側レンズ20の中央領域20A(
図11参照)により形成される。ADBパターンPの左側領域PBは、光源側レンズ20の左側領域20B(
図11参照)により形成される。ADBパターンPの右側領域PCは、光源側レンズ20の右側領域20C(
図11参照)により形成される。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る車両用前照灯100は、左右方向に配置された複数の光源10と、複数の光源10の前方に配置され、光を前方に出射する光源側レンズ20と、光源側レンズ20の前方に配置され、光源側レンズ20から照射された光を車両前方に照射する投影レンズ30とを備え、光源側レンズ20は、複数の光源10からの光が入射する入射面21を有し、入射面21には、投影レンズ30の光軸AXから左右方向に外れた位置に、上下方向に延びる溝部24が少なくとも1つ配置され、溝部24は、複数の光源10からの光を光軸AX側に屈折させる傾斜部25を有する。
【0043】
この構成によれば、複数の光源10からの光が光源側レンズ20の入射面21のうち投影レンズ30の光軸AXに対して左右方向に離れた位置に入射する場合、一部の光が溝部24の傾斜部25により光軸AX側に屈折される。このため、溝部24及び傾斜部25が設けられない構成に比べて、光源側レンズ20から出射される光を投影レンズ30の光軸AX側に到達させることができる。このように、投影レンズ30のうち左右方向で光軸AXの近傍を使用して照射パターンを形成することができるため、収差の影響が大きい外周部分の使用を抑えつつ照射パターンを形成できる。これにより、照射パターンのボケを抑制することができる。例えば、投影レンズ30の出射面32の曲率を小さくする場合、収差の影響が大きい外周部分の使用を抑えることができるため、中心から左右方向に離れた位置に形成される照射パターンにおいてボケを抑制することができる。
【0044】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、溝部24は、光軸AXに沿った光軸方向から見て、入射面21のうちそれぞれの光源10に対向する部分の少なくとも一部を空けるように配置される。この構成によれば、それぞれの光源10に対向する部分の少なくとも一部に入射面21を配置することで、光源10から正面に進行して当該入射面21に入射する光を投影レンズ30の入射面31の所定の部分に到達させることができる。このため、照射パターンのボケを確実に抑制できる。
【0045】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、溝部24は、光軸AXに沿った光軸方向から見て、左右方向に隣り合う光源10同士の間に傾斜部25が位置するように配置される。この構成によれば、光源10から左右の斜め方向に向かう光を傾斜部25により光軸AX側に確実に屈折させることができる。
【0046】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、溝部24は、左右方向に間隔を空けて複数配置される。この構成によれば、複数の溝部24で光を屈折することより、光源側レンズ20から出射される光を投影レンズ30の光軸AX側に到達させることができる。
【0047】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、溝部24は、光軸AXの左方及び右方の両側に配置される。この構成によれば、入射面21のうち光軸AXの左方及び右方の両側に到達する光を溝部24により屈折することで、光源側レンズ20から出射される光を投影レンズ30の光軸AX側により確実に到達させることができる。
【0048】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、溝部24は、光軸AXに対して左右方向の車両外側に複数配置される。この構成によれば、入射面21のうち光軸AXに対して左右方向の車両外側に到達する光を溝部24により屈折することで、光源側レンズ20から出射される光を投影レンズ30の光軸AX側により確実に到達させることができる。
【0049】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、光軸AXの左方に配置される溝部24の数と、光軸AXの右方に配置される溝部24の数とが異なる。この構成によれば、例えば車両用前照灯100が車両の左側、右側のいずれに配置されるか等の条件に応じて、光軸AXの左方及び右方に配置される溝部24の数を柔軟に設定することができる。
【0050】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、光源側レンズ20は、入射面21に入射した光が出射する出射面22を有し、出射面22は、光軸AXが通過する中央部22aから左右方向の両端にかけて背面側に湾曲する湾曲部22bを有する。この構成によれば、出射面22の左右方向の両側に到達する光を、湾曲部22bにより光軸AX側に屈折した状態で出射することができる。これにより、湾曲部22bが設けられない構成に比べて、出射面22に到達するより多くの光を投影レンズ30に到達させることができる。これにより、光の利用効率を高めることができる。
【0051】
本実施形態に係る車両用前照灯100において、溝部24は、光軸AXに沿った光軸方向から見て、湾曲部22bに重なる部分に配置される。この構成によれば、入射面21側において溝部24で屈折されて湾曲部22bに到達する光を、湾曲部22bにより光軸AX側に湾曲することができるため、光を投影レンズ30の光軸AX近傍により確実に到達させることができる。
【0052】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0053】
AX…光軸、10…光源、11…発光面、20…光源側レンズ、21,31…入射面、21a…左端部、21b…右端部、22,32…出射面、22a…中央部、22b…湾曲部、23…取り付け部、24…溝部、25,25a,25b,25c,25d…傾斜部、26…接続部、30…投影レンズ、100…車両用前照灯