IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人滋賀医科大学の特許一覧

<>
  • 特開-医療装置 図1
  • 特開-医療装置 図2
  • 特開-医療装置 図3
  • 特開-医療装置 図4
  • 特開-医療装置 図5
  • 特開-医療装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151178
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20241017BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
A61B17/02
A61B17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064346
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 篤司
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA12
4C160FF45
(57)【要約】
【課題】被手術者の体への侵襲を小さく抑えつつ手術器具2の通路3の断面積を拡大させることの可能な医療装置1を提供する。
【解決手段】本発明の医療装置は、被手術者の体内に押し込まれる管体4を備える。管体4は、手術器具の通路を構成する空洞3を有しており、管体4には、当該管体4の長手方向に延びる折線A1,A2,A3,A4が形成されている。管体4に力Fを加えることで、折線A1,A2,A3,A4の各々における管体4の屈曲角度が変わって空洞3の断面積が拡大する管体4の変形を生じさせることが可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被手術者の体内に押し込まれる管体を備え、
前記管体は、手術器具の通路を構成する空洞を有しており、
前記管体には、当該管体の長手方向に延びる複数の折線が形成されており、
前記管体に力を加えることで、各前記折線における前記管体の屈曲角度が変わって前記空洞の断面積が拡大する前記管体の変形を生じさせることの可能な医療装置。
【請求項2】
前記管体は、横断面が2つの折線によって側縁が構成された扁平な環状を呈する初期状態から、前記2つの折線が接近するように前記管体に力が加えられることで、各前記折線における前記管体の屈曲角度が変わって前記空洞の断面積が拡大する変形を生じさせることが可能である請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記2つの折線が接近するように前記管体の力を加える加力手段をさらに備える請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記管体には、前記管体の長手方向に延びる4以上の折線が形成されており、
前記管体は、1以上の前記折線で谷折りとされ、残りの前記折線で山折りとされる初期状態から、前記管体の内面に圧力が加えられることで、各前記折線における前記管体の屈曲角度が変わって前記空洞の断面積が拡大する変形を生じさせることが可能である請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
被手術者の体内に押し込まれる管体を備え、
前記管体は、手術器具の通路を構成する空洞を有するものであって、可塑性材料から形成されており、
前記管体は、横断面が楕円形或いは円形を呈する初期状態から、前記管体の内面に圧力が加えられることで、前記空洞の断面積が拡大する変形を生じさせることが可能である医療装置。
【請求項6】
前記管体内に挿入されるバルーンをさらに備え、
前記管体の初期状態から、前記バルーン内に気体を導入して前記バルーンを膨張させて前記管体の内面に圧力を加えることで、前記空洞の断面積が拡大する前記管体の変形を生じさせることが可能である請求項4又は5に記載の医療装置。
【請求項7】
被手術者の体内に押し込まれる管体を備え、
前記管体は、手術器具の通路を構成する空洞を有するものであって、熱可塑性材料から形成されており、
前記管体に熱を加えることで、前記空洞の断面積が拡大する前記管体の変形を生じさせることの可能な医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具の通路を形成するために使用される医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳の障害部分に対する手術器具の使用を可能とするために、障害部分に通じる手術器具の通路を形成することが行われており、特許文献1には上記の通路を形成する方法が開示されている。当該特許文献1の方法では、小直径の第1の消息子を脳内に押し込むことで細い通路を形成し、その後、第1の消息子を撤退させて、当該第1の消息子よりも大径の第2の消息子を通路に押し込むことで通路を拡大させ、その後、第2の消息子を撤退させて、当該第2の消息子よりも大径の第3の消息子を通路に押し込むことで通路をさらに拡大させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53-142080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示される方法では、消息子の押し込み及び撤退の回数が複数回に及ぶことで脳への侵襲が大きく、少なからず脳損傷が生じる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、被手術者の体への侵襲を小さく抑えつつ手術器具の通路の断面積を拡大させることの可能な医療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1.被手術者の体内に押し込まれる管体を備え、
前記管体は、手術器具の通路を構成する空洞を有しており、
前記管体には、当該管体の長手方向に延びる複数の折線が形成されており、
前記管体に力を加えることで、各前記折線における前記管体の屈曲角度が変わって前記空洞の断面積が拡大する前記管体の変形を生じさせることの可能な医療装置。
【0008】
項2.
前記管体は、横断面が2つの折線によって側縁が構成された扁平な環状を呈する初期状態から、前記2つの折線が接近するように前記管体に力が加えられることで、各前記折線における前記管体の屈曲角度が変わって前記空洞の断面積が拡大する変形を生じさせることが可能である項1に記載の医療装置。
【0009】
項3.前記2つの折線が接近するように前記管体の力を加える加力手段をさらに備える項2に記載の医療装置。
【0010】
項4.前記管体には、前記管体の長手方向に延びる4以上の折線が形成されており、
前記管体は、1以上の前記折線で谷折りとされ、残りの前記折線で山折りとされる初期状態から、前記管体の内面に圧力が加えられることで、各前記折線における前記管体の屈曲角度が変わって前記空洞の断面積が拡大する変形を生じさせることが可能である項1に記載の医療装置。
【0011】
項5.被手術者の体内に押し込まれる管体を備え、
前記管体は、手術器具の通路を構成する空洞を有するものであって、可塑性材料から形成されており、
前記管体は、横断面が楕円形或いは円形を呈する初期状態から、前記管体の内面に圧力が加えられることで、前記空洞の断面積が拡大する変形を生じさせることが可能である医療装置。
【0012】
項6.前記管体内に挿入されるバルーンをさらに備え、
前記管体の初期状態から、前記バルーン内に気体を導入して前記バルーンを膨張させて前記管体の内面に圧力を加えることで、前記空洞の断面積が拡大する前記管体の変形を生じさせることが可能である項4又は5に記載の医療装置。
【0013】
項7.被手術者の体内に押し込まれる管体を備え、
前記管体は、手術器具の通路を構成する空洞を有するものであって、熱可塑性材料から形成されており、
前記管体に熱を加えることで、前記空洞の断面積が拡大する前記管体の変形を生じさせることの可能な医療装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療装置によれば、被手術者の体への侵襲を小さく抑えつつ手術器具の通路の断面積を拡大させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る医療装置を示す図であり、(A)は医療装置1の側面図、(B)は医療装置1の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る医療装置が備える管体によって、脳の障害部分に通じる通路を形成した状態を示す斜視図である。
図3】通路を拡大するために管体に生じさせる塑性変形を示す断面図である。
図4】(A),(B),(C)は、それぞれ通路を拡大するために変形例の管体に生じさせる塑性変形を示す断面図である。
図5】(A),(B)は、それぞれ通路を拡大するために変形例の管体に生じさせる塑性変形を示す断面図である。
図6】(A),(B)は、それぞれ通路を拡大するために変形例の管体に生じさせる塑性変形を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る医療装置1を示す図であり、図1(A)は医療装置1の側面図、図1(B)は医療装置1の断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る医療装置1によって手術器具2の通路3を形成した状態を示す斜視図である。図3は、手術器具2の通路3を拡大するために医療装置1の管体4に生じさせる変形を示す断面図である。
【0018】
本発明の実施形態に係る医療装置1は、手術器具2の通路3を形成するために使用される。医療装置1は、被手術者の体内に押し込まれる管体4を備える。管体4は、樹脂或いは金属から形成されるものであり、手術器具2の通路3を構成する空洞を有する(以下では、「管体4の空洞」の符号として、「通路3」の符号3を適宜使用する)。管体4の両端には空洞3の開口が形成される。以下では、脳の障害部分5に通じる手術器具2の通路を管体4の空洞3によって構成する場合について説明する。。
【0019】
管体4には、第一折線A1、第二折線A2、第三折線A3、及び第四折線A4が、この順番で、管体4の周方向に形成されている。第一折線A1、第二折線A2、第三折線A3、及び第四折線A4は、いずれも管体4の長手方向に延びるように形成されており、管体4の周方向における第一折線A1と第二折線A2との間の第一幅H1と、管体4の周方向における第二折線A2と第三折線A3との間の第二幅H2と、管体4の周方向における第三折線A3と第四折線A4との間の第三幅H3と、管体4の周方向における第四折線A4と第一折線A1との間の第四幅H4とが、等しい長さとされる。そして図3の最上段に示すように、管体4の初期状態において、管体4は、横断面が第一折線A1及び第三折線A3によって側縁が構成された扁平な環状を呈するものとされる。上記の管体4の初期状態とは、管体4が被手術者の体内に押し込まれるときの状態を意味する。なお本願において、折線とは、管体4への加力或いは加熱によって生じる「管体4の変形」の折り目となる線状の部分を意味する。当該折線は、例えば、「管体4における他の範囲(すなわち管体4における折線以外の範囲)」に比して機械的強度が小さい管体4の部分である。当該機械的強度が小さい管体4の部分からなる折線としては、例えば、上記の「管体4における他の範囲」に比して厚さが薄い管体4の部分や、上記の「管体4における他の範囲」を構成する管壁部同士を接続する「可撓性樹脂からなる管体4の部分」があげられる。また上記の厚さが薄い部分からなる折線としては、切削或いはくさび形加工などの加工等が施されることでU字状或いはV字状等の断面を呈する管体4の部分があげられる。
【0020】
手術の際には、小刀等の切削具によって被手術者の頭蓋骨10に開口11が形成された後、上記の初期状態にある管体4が開口11から被手術者の大脳皮質12内に押し込まれる。この際には、初期状態にある管体4の先端が脳の障害部分5に至るように管体4を大脳皮質12内に押し込むことが行われる。ついで図3に示すように、上記の管体4の初期状態(図3の最上段の状態)から、第一折線A1と第三折線A3とが接近するように管体4に力Fを加えることで、折線A1,A2,A3,A4の各々における管体4の屈曲角度が変わって空洞3の断面積が拡大する管体4の変形が生じる。そして当該断面積が拡大した空洞3に通される手術器具2によって、脳の障害部分5に対する処置が行われる。手術器具2として例えば内視鏡が使用される。
【0021】
なお管体4は、初期状態において、横断面が第二折線A2及び第四折線A4によって側縁が構成された扁平な環状を呈するものとされてもよい。この場合、上記の管体4の初期状態から、第二折線A2と第四折線A4とが接近するように管体4に力が加えられることで、折線A1,A2,A3,A4の各々における管体4の屈曲角度が変わって空洞3の断面積が拡大する管体4の変形が生じる。
【0022】
また管体4の横断面が2つの折線A,A(第一折線A1及び第三折線A3、或いは第二折線A2及び第イ四折線)によって側縁が構成された扁平な環状とされる管体4の初期状態から、2つの折線A,Aが接近するように管体4に力Fを加えることは、例えば、手術者が、上記の2つの折線A,Aが接近するように手術者の手で管体4を加圧することにより行われる。或いは、2つの折線A,A(第一折線A1及び第三折線A3、或いは第二折線A2及び第四折線A4)のうち、一方の折線A(第一折線A1或いは第二折線A2)に沿って延びる第一棒材と、他方の折線A(第三折線A3或いは第四折線A4))に沿って延びる第二棒材とを、人力で接近させることで、上記のように管体4に力を加えてもよい。この場合、例えば、第一棒材及び第二棒材は、これらの一端側が管体4から延び出るように管体4に取り付けられる。そして手術者が第一棒材及び第二棒材の一端側を手で掴んで、第一棒材と第二棒材とが接近させることで、上記のように管体4に力Fが加えられる。
【0023】
本実施形態の医療装置1によれば、管体4を被手術者の体内に押し込んだ後に、管体4に力を加えることで、手術器具2の通路をなす空洞3の断面積を拡大させることができる。これにより、管体4の押し込みを一回行うだけで手術器具2の通路(空洞3)の断面積を拡大させることが可能であり、上記特許文献1のように、管体4の押し込みを複数回行うことを要しない。このため、被手術者の体への侵襲を小さく抑えつつ手術器具2の通路3の断面積を拡大させることができる。
【0024】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々改変できる。
【0025】
例えば、上記実施形態では、第一幅H1と上記の第三幅H3とが、第一距離L1とされ、第三幅H3と第四幅H4とが、第一距離L1よりも小さな第二距離L2とされてもよい。或いは、第一幅H1、第二幅H2、第三幅H3、及び第四幅H4の全てが異なる距離とされてもよい。以上の場合も、管体4は、初期状態において、横断面が第一折線A1及び第三折線A3によって側縁が構成された扁平な環状、或いは、横断面が第二折線A2及び第四折線A4によって側縁が構成された扁平な環状を呈するものとされる。そして上記管体4の初期状態から、上記2つの折線A,A(第一折線A1及び第三折線A3、或いは第二折線A2及び第四折線A4)が接近するように管体4に力Fが加えられることで、折線A1,A2,A3,A4の各々における管体4の屈曲角度が変わって空洞3の断面積が拡大する管体4の変形が生じる。
【0026】
なお管体4の初期状態において、管体4を半周分同士が接近した扁平な形状にするために、第一~第四幅H1,H2,H3,H4を等しい距離とすること、或いは、第一及び第三幅H1,H3を上記の第一距離L1とし、第二及び第四幅H2,H4を上記の第二距離L2とすることが好ましい。
【0027】
また管体4の長手方向に延びるように管体4に形成される折線Aの数は、上記実施形態に示した4に限定されず、4以外の複数とされ得る(図4(A)には、2つの折線Aを管体4に形成する例を示し、図4(B)には、5つの折線Aを管体4に形成する例を示し、図4(C)には、6つの折線Aを管体4に形成する例を示す)。
【0028】
上記のように折線Aの数が4以外の複数とされる場合も、管体4は、初期状態において、横断面が2つの折線A,Aによって側縁が構成された扁平な環状を呈するものとされて、当該管体4の初期状態から、2つの折線A,Aが接近するように管体4に力Fを加えることで、折線Aの各々における管体4の屈曲角度が変わって空洞3の断面積が拡大する管体4の変形が生じる。
【0029】
なお管体4の横断面を扁平な形状にすることを容易にする観点から、管体4に形成する折線Aの数を複数とすることが好ましい。またこの場合には、管体4の周方向に隣り合う2つの折線A,Aの間の幅を等しい距離にすることがより好ましい。このようにすることで、管体4の初期状態において、管体4を半周分同士が接近した扁平な形状にすることができる(図4(A),図4(C))。
【0030】
また上記実施形態では、人力で2つの折線A,Aが接近するように管体4に力Fを加える例を示したが、医療装置1が、2つの折線A,Aが接近するように管体4に力Fを加える加力手段(図示せず)を備えてもよい。この場合、例えば、加力手段は、モーター等の動力源と、動力源が発生する動力によって2つの折線A,Aが接近するように管体4に力Fを加える加力部材とを備えるものとされる。加力部材は、例えば、管体4に取り付けられる第一及び第二棒材によって構成される。この場合、2つの折線A,Aのうち、一方の折線に沿って第二棒材が延び、他方の折線に沿って第二棒材が延びるように、第一及び第二棒材が管体4に取りけられる。そして動力源が発生する動力によって第一棒材と第二棒材とがこれらが接近する方向に動くことで、2つの折線A,Aが接近するように管体4に力Fが加えられる。
【0031】
また図5に示すように、管体4に形成される折線Aには、管体4の初期状態において、管体4の内側に凸となる谷折りにされる折線A10と、管体4の外側に凸となる山折りにされる折線A11が形成されてもよい。この場合、管体4の長手方向に延びる4以上の折線Aが管体4に形成されて、管体4は、初期状態において、1以上の折線A10で谷折りとされ、残りの折線A11で山折りとされた形状を呈するものとされる(図5(A)は、管体4の初期状態において、管体4が、1つの折線A10で谷折りとされ、3つの折線A11で山折りとされる例を示す。図5(B)は、管体4の初期状態において、管体4が、2つの折線A10で谷折りとされ、4つの折線A11で山折りとされる例を示す)。上記の場合、医療装置1は、当該管体4の初期状態から、管体4の内面に圧力Fが加えられることで、折線A10,A11の各々における管体4の屈曲角度が変わって、空洞3の断面積が拡大する管体4の変形を生じる。
【0032】
また管体が可塑性材料(例えば可塑性を有する金属又は樹脂)から形成される場合には、図6(A)に示すように、管体4は、初期状態において、横断面が楕円形を呈するものとされてよく、図6(B)に示すように、管体4は、初期状態において、横断面が円形を呈するものとされてよい。上記の場合、医療装置1は、管体4の初期状態から、管体4の内面に圧力Fを加えることで、空洞3の断面積が拡大する管体4の変形を生じるものとされる。なお図6(B)は、管体4の初期状態から、一の方向(図6の左右方向に相当)への圧力Fを管体4に加えることで管体4の横断面を楕円形に変形させた後、一の方向と直交する二の方向(図6の上下方向に相当)への圧力Fを管体4に加えることで、管体4の横断面を断面積が大きな円形に変形させる例を示している。
【0033】
図5及び図6に示した例のように、管体4の内面に圧力を加える場合には、医療装置1は、管体4の空洞に挿入されるバルーン(図示せず)を備えていてもよい。この場合、管体4の初期状態から、バルーン内に気体を導入してバルーンを膨張させることで、バルーンによって管体4の内面に圧力が加えられて、空洞3の断面積が拡大する管体4の変形が生じる。なお図6(B)に示すように管体4の横断面を変形させることは、例えば、気体の導入によって一の方向(図6の左右方向)に膨らむ領域と、気体の導入によって二の方向(図6の上下方向)に膨らむ領域とを備えたバルーンを使用することで実現され得る。
【0034】
なお、バルーンが使用される場合には、例えば、バルーンと管体との間の空間に医療器具を通すことが行われる。或いは、管体の空洞からバルーンを抜き出した後に管体の空洞に医療器具が通されてもよい。
【0035】
また図1図4に示した例においても、管体4の初期状態から、管体4の内面に圧力Fを加えることで、空洞3の断面積が拡大する管体4の変形を生じさせてもよい。また上記の圧力を加えるために、医療装置1が、管体4の空洞に挿入されるバルーン(図示せず)を備えるものとして、管体4の初期状態から、バルーン内に気体を導入してバルーンを膨張させることで、当該バルーンによって管体4の内面に圧力を加えて、上記管体4の変形を生じさせてもよい。
【0036】
また図5及び図6に示した例では、管体4の外側から管体4に力Fを加えることで、空洞3の断面積が拡大する管体4の変形を生じさせてもよい。
【0037】
また上記の例では、管体4に力Fを加えることで管体4の変形を生じさせる例を示したが、管体4の初期状態から、管体4に熱を加えることで、空洞3の断面積が拡大する管体4の変形を生じさせるようにしてもよい。この場合、管体4は、ニッケルチタン合金等の熱可塑性材料から形成されて、管体への通電等により管体に熱を加えることが行われる。
【0038】
また上記実施形態では、脳の障害部分5に通じる手術器具2の通路を形成する場合を説明したが、本発明の医療装置は、人体の様々な箇所で手術器具の通路を形成するために適用できる。また通路(管体の空洞)に通される手術器具も、内視鏡に限定されず、様々な手術器具とされ得る。
【符号の説明】
【0039】
1 医療装置
2 手術器具
3 手術器具の通路(管体の空洞)
4 管体
A,A1,A2,A3,A4 折線
図1
図2
図3
図4
図5
図6