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  • 特開-水系液体化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151187
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】水系液体化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20241017BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241017BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241017BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/81
A61K8/46
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064382
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 藍
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AB381
4C083AB382
4C083AB442
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD352
4C083BB25
4C083BB26
4C083CC01
4C083CC14
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】穂筆を有する塗布部を備えたアイライナー、アイシャドー、眉毛にラインを描くアイブローなどの塗布具に好適に搭載することができると共に、発色が良く輝度感に優れる水系液体化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の水系液体化粧料は、少なくとも、(a)下記A群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料を0.01~10質量%と、(b)染料と、(c)アクリル系共重合体を固形分量で1~20質量%と、(d)水とを含有し、穂筆から構成される塗布部を有する塗布具に搭載されることを特徴とする。
A群:セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(a)下記A群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料を0.01~10質量%と、(b)染料と、(c)アクリル系共重合体を固形分量で1~20質量%と、(d)水とを含有し、穂筆から構成される塗布部を有する塗布具に搭載されることを特徴とする水系液体化粧料。
A群:セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン
【請求項2】
更に増粘剤を含むことを特徴とする請求項1記載の水系液体化粧料。
【請求項3】
前記増粘剤がデキストリン類及び/又は増粘性多糖類であることを特徴とする請求項2記載の水系液体化粧料。
【請求項4】
25℃、ずり速度191.5s-1(50rpm)で測定した粘度が15.0mPa・s以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の水系液体化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色が良く輝度感に優れる水系液体化粧料に関し、更に詳しくは、穂筆を有する塗布部を備えたアイライナー、アイシャド、眉毛にラインを描くアイブローなどの塗布具に好適に使用することができる水系液体化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、肌や眉毛などの被塗布面上に光輝性の塗膜を形成させようとする水系液体化粧料では、光輝性を発揮する板状顔料(光輝性顔料)を含有することが一般的に行われている。
【0003】
これまでの板状顔料を含有する水系液体化粧料やその塗布具等としては、例えば、
1) 高い輝度を有しつつ、筆ペンタイプのアイライナーとして使用可能な水系化粧料を提供するために、(a)平均粒子径10~100μmの光輝性顔料、(b)アクリル系樹脂エマルション、および(c)シリカ、粘度鉱物、パルミトイルジペプチド、セルロース、セルロースナノファイバーおよびキサンタンガムからなる群から選択される増粘剤を含んでなる水系化粧料であって、前記水系化粧料において、前記成分(c)の含有量が0.1~0.35質量%であり、25℃における粘度が5~30mPa・sである水系化粧料(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
2) 耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と滑らかな書き味を有し、さらに保存安定性が良好な水系アイライナー組成物を提供するために、光輝性顔料、カーボンブラック、微生物由来の多糖類、揮発性アルコール、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを組み合わせて配合する水系アイライナー組成物(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
3) なめらかにのび広がり、発色、光沢感に優れ化粧効果が高く、肌への付着性が良好で化粧持続性に優れ、かつ保存安定性にも優れる水系メイクアップ化粧料を提供するために、(A)水性アルカリ増粘型ポリマーエマルション、(B)顔料、(C)光輝性粉体、(D)エタノール溶解型皮膜形成剤、(E)アルカリを含有し、上記(B)成分として少なくともカーボンブラックを含有する水系メイクアップ化粧料(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
4) 少ない量の光輝性を有する板状顔料を含有する液体化粧料組成物を穂筆などの塗布部を有する塗布具に充填して、肌などの被塗布面上に塗布しても、板状顔料は重なることなく鮮明な光輝性の塗膜が容易に得られる液体化粧料組成物を提供するために、少なくともセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサンの群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料を0.01~10質量%と、層状粘土鉱物粒子を0.05~5質量%と、アクリル系共重合体を固形分量で1~20質量%と、水とを含有し、穂筆を有する塗布部を備えた塗布具に充填されることを特徴とする液体化粧料組成物(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~4の板状顔料を含有する水系液体化粧料にあっては、発色などを良くするために顔料や層状の粘度鉱物などを配合すると板状顔料の輝度感を損なうなどの課題がある。一方で、着色板状顔料で発色しようとすると十分な発色が得られないのが現状である。また、板状顔料同士が重なった状態のまま描線上に存在すると、輝度感の低下を招くなどの課題がある。更に、穂筆を有する塗布部を備えた直液式等のアイライナー、アイシャドーなどに上記特許文献1~3の水系液体化粧料を搭載(充填)した場合、吐出が不十分であったり、筆記性(塗布性)が不良となったりするなどの課題が未だあるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-131500号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2007-153744号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2017-114803号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2021-14412号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の課題や現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、穂筆を有する塗布部を備えたアイライナー、アイシャドー、眉毛にラインを描くアイブローなどの塗布具に好適に搭載することができると共に、発色が良く輝度感に優れる水系液体化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、少なくとも、特定物性となる化合物を表面に被覆された所定量の板状顔料と、染料と、所定量のアクリル系共重合体と水とをそれぞれ含有せしめ、穂筆から構成される塗布部を備えた塗布具に搭載することにより、上記目的の水系液体化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明の水系液体化粧料は、少なくとも、(a)下記A群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料を0.01~10質量%と、(b)染料と、(c)アクリル系共重合体を固形分量で1~20質量%と、(d)水とを含有し、穂筆から構成される塗布部を有する塗布具に搭載されることを特徴とする。
A群:セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン
前記水系液体化粧料には、更に増粘剤を含むことが好ましい。
前記増粘剤がデキストリン類及び/又は増粘性多糖類であることが好ましい。
前記水系液体化粧料は、25℃、ずり速度191.5s-1(50rpm)で測定した粘度が15.0mPa・s以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、穂筆を有する塗布部を備えたアイライナー、アイシャドー、眉毛にラインを描くアイブローなどの塗布具に好適に搭載することができると共に、発色が良く輝度感に優れる水系液体化粧料が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)及び(b)は本発明の水系液体化粧料を充填する塗布具の実施形態の一例を示す穂筆から構成される塗布部を有する塗布具の斜視図と縦断面図である。
図2】(a)及び(b)は、比較例に用いるペン型塗布部の一例を示す図面であり、(a)は正面図、(b)は(a)のX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
本発明の水系液体化粧料は、少なくとも、(a)下記A群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料を0.01~10質量%と、(b)染料と、(c)アクリル系共重合体を固形分量で1~20質量%と、(d)水とを含有し、穂筆から構成される塗布部を有する塗布具に搭載されることを特徴とするものである。
A群:セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン
【0015】
本発明に用いる板状顔料は、光輝性を有し、少なくとも上記A群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料であり、例えば、パール顔料、アルミニウムフレーク顔料(アルミニウム粉顔料)、金属または金属酸化物コーティングガラスフレーク、及びアルミコーティングポリエステルフィルムなどの板状顔料に、少なくとも上記A群から選ばれる化合物を上記板状顔料の表面に被覆したものが挙げられる。
【0016】
本発明における上記A群から選ばれる化合物は、高分子であるセルロース(酸化セルロース、発酵セルロース等)、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサンから選ばれる少なくとも1種(各単独で又は2種以上の組み合わせ、以下同様)を用いることができる。
この化合物を上記板状顔料の表面に被覆する方法等としては、例えば、1)上記A群から選ばれる化合物の少なくとも1種と板状顔料を混合した水スラリー状物をスプレードライヤーにて噴霧乾燥させ、板状顔料表面に上記A群から選ばれる化合物を接着させる方法(以下、「製法1」という)、2)酸性、あるいは塩基性水溶液に可溶な物質をpH調整して水に溶かし、酸・あるいは塩基で不溶化の方向にpHを傾け、板状顔料表面に上記A群から選ばれる化合物の少なくとも1種を析出させる方法(以下、「製法2」という)により行うことができる。
この上記A群から選ばれる化合物の表面被覆量は、少なすぎるとハードケーキ抑制による再分散性の効果が得られず、一方、多すぎるとパール感(光輝性)が減少するだけでなく、パール表面が点接触にならず面接触になり再分散性の効果が得られなくなる。そのため、上記A群から選ばれる化合物の表面被覆量は、板状顔料の表面被覆率(表面処理時の質量%から算出)として、0.1~10%とし、好ましくは、0.5~8%、更に好ましくは、1~7%の範囲とすることが望ましい。
【0017】
具体的に用いる板状顔料としては、例えば、市販品であるアルミフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク(商品名「メタシャイン」等)、金属酸化物被覆マイカ(商品名「Lumina」等)などの板状顔料に上記A群から選ばれる化合物を表面に被覆処理したもの、また、上記A群から選ばれる化合物を表面にした板状顔料の市販品があれば、それらを用いることができる。
用いる被覆した板状顔料の平滑面の粒子径としては、一般的には粒子径が大きい程輝度感が高いが、本発明の効果を好適に発揮せしめる点から、5μm~100μm程度とすることが好ましい。
本発明(実施例を含む)において、「粒子径」又は後述する「平均粒子径」は、動的光散乱法〔粒径アナライザー FPAR-1000、大塚電子社製〕により測定し算出した値をいう。
本発明で用いる上記で得られるA群から選ばれる化合物で被覆された板状顔料は、電子顕微鏡(×35000倍)で観察した表面に上記化合物の結晶物を確認することができる。
なお、本発明における上記A群から選ばれる化合物を表面に被覆した板状顔料と、未被覆の板状顔料の区別の方法として、未被覆の板状顔料を配合した系では再分散性が得られないが、上記A群から選ばれる化合物を板状粒子の表面被覆に使用した系では良好な再分散性を得られることが確認できる。
【0018】
本発明において、上記A群から選ばれる化合物に被覆された板状顔料の含有量は、水系液体化粧料全量に対して、製品使用時に十分な光輝性と隠蔽力を得るため、0.01~10質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)を含有することが好ましく、更に好ましくは、0.5~5%とすることが望ましい。
この被覆処理した板状顔料の含有量が0.01%未満であると、光輝性に乏しくなり、一方、10%を越えると、板状顔料が高濃度であれば必然的に輝度感が高くなるうえ、高価となるので、本発明の構成とする意味が薄れ、また、塗布を進めると塗布性の低下乃至塗布不良になりやすく、好ましくない。なお、未表面処理の板状顔料ではハードケーキ化が促進するものとなる。
【0019】
本発明に用いる染料は、上記(a)成分の板状顔料の輝度感を損なうことなく、水系液体化粧料の発色を更に向上させるために用いるものであり、例えば、C.I.HC Blue 2,15、C.I.HC Red 1,3,7,11,13、C.I.HC Yellow 2,4,5,9,11,13、C.I.HC Orange 1,2、C.I.HC Violet 1、2,4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールや、酸性染料である赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色 106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色206号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色 201号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色403号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号など、更に、BASIC RED 1、BASIC RED 2、BASIC RED 22、BASIC RED 46、BASIC RED 76、BASIC RED 118、BASIC YELLOW 11、BASIC YELLOW 28、BASIC YELLOW 57、BASIC BLUE 3、BASIC BLUE 6、BASIC BLUE 7、BASIC BLUE 9、BASIC BLUE 26、BASIC BLUE 41、BASIC BLUE 99、BASIC GREEN 1、BASIC GREEN 4、BASIC BROWN 4、BASIC BROWN 16、BASIC BROWN 17、BASIC ORANGE 1、BASIC ORANGE 2、BASIC VIOLET 1、BASIC VIOLET 3、BASIC VIOLET 4、BASIC VIOLET 10、BASIC VIOLET 11、BASIC VIOLET 14、BASIC VIOLET 16などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下、同様)が挙げられる。
【0020】
上述の染料の中で、例えば、各染料の単独選択の他、赤色系染料、黄色系染料、青色染料等とを好適に組み合わせることにより、様々な色への調色も可能となり、アイライナー、アイシャドー、眉毛にラインを描くアイブローなどに最適な配色を選択、調製することができ、板状顔料の輝度感を損なうことなく、相乗的に発色感を更に向上せしめることができものとなる。
好ましい染料としては、染着性が抑制される点、安全性が比較的高い点から、酸性染料の使用が望ましい。
これらの染料の(合計)含有量は、上記(a)成分の板状顔料の輝度感を損なうことなく、水系液体化粧料の発色を更に向上させる点から、水系液体化粧料全量に対して、0.001~30%含有することが好ましく、更に好ましくは、0.01~10%とすることが望ましい。
この染料の含有量を0.001%以上とすることにより、上記(a)成分の板状顔料の輝度感を損なうことなく、水系液体化粧料の発色を更に向上させることができ、一方、30%以下とすることにより、溶解性を良好とすることができる。
【0021】
本発明に用いる(d)成分のアクリル系共重合体は、更なる固着性と分散安定性の点から用いるものであり、例えば、アクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツコポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウム、アクリル樹脂アルカノールアミン液、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体、シリコーン変性アクリル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸共重合体のうち、少なくとも一種を含むものが挙げられる。
特に、本発明に使用するアクリル系共重合体は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、固着性を向上させる点から、アクリルアルキル共重合体又はアクリレーツコポリマーなどが好ましい。
【0022】
用いることができるアクリル酸アルキル共重合体としては、例えば、市販品であるDAITOSOL 5000STY、DAITOSOL 5000AD、DAITOSOL 5000SJ、DAITOSOL 4000SJT、DAITOSOL 5500GM、DAITOSOL 5000PO(以上、大東化成工業社製)、ヨドゾールGH34F、ヨドゾールGH800F(以上、ヌーリオン・ジャパン社製)、ビニゾール1086DB、ビニゾール1087FT、ビニゾール1089HT、ビニゾール1012JC、ビニゾール1013JH、ビニゾール2140L、ビニゾール2140LH、ビニゾール1086WP、ビニゾール1087FT、ビニゾール1089HT(以上、大同化成工業社製)、Luvimer 100P(以上、BASFジャパン社製)、AMPHOMER HC(以上、ヌーリオン・ジャパン社製)、SYNTRAN EX149PE、SYNTRAN 5402(インターポリマー社製)などを挙げることができる。
【0023】
これらのアクリル系共重合体の含有量は、水系液体化粧料全量に対して、固形分量で1~20%とすることが好ましく、より好ましく、1~10%とすることが望ましい。
このアクリル系共重合体の含有量を1%以上とすることにより、本発明の効果を発揮することができ、一方、20%以下とすることにより、好適な増粘作用を発揮せしめ、塗布部からの吐出性、良好な塗布等が行うことができることとなる。
【0024】
本発明の水系液体化粧料では、塗布性、保存安定性、上述の板状顔料の更なる沈降抑制などの点から、増粘剤を含有することが好ましい。
用いることができる増粘剤としては、後述するように、水系液体化粧料の粘度を好適なものとし上記含有効果を発揮せしめるために好ましく用いるものであり、デキストリン類及び/又は増粘性多糖類を用いることが好ましい。
【0025】
用いることができるデキストリン類は、一般的に、デンプン又はグリコーゲンを加水分解して低分子量化することによって得られる炭水化物であることができる。デキストリン類は、α-グルコースがα-(1→4)又はα-(1→6)グリコシド結合により重合した分子構造を有することができる。
本発明において、「デキストリン類」は、α-グルコース単位が直鎖状又は分岐鎖状に結合している非環状デキストリン、及びα-グルコース単位が環状に結合している環状デキストリン、並びにこれらの混合物からなる群より選択されるデキストリンを意味するものである。
【0026】
非環状デキストリンとしては、デキストロース当量(DE値)が0超、1以上、3以上、5以上、7以上、又は10以上であり、かつ100未満、80以下、60以下、40以下、30以下、20以下、17以下、又は15以下であるデキストリンを用いることができる。
環状デキストリンとしては、分子中のグルコース単位の数が5個以上、6個以上、又は7個以上であり、かつ20個以下、15個以下、又は10個以下の環状デキストリンを用いることができる。
かかる環状デキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリン等の非置換環状デキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、及びマルトシルシクロデキストリン等の置換環状デキストリン等を用いることができる。
用いることができるデキストリン類としては、例えば、市販品である103デキストリン(東海デキストリン株式会社製)、セルデックスSL-20(日本食品化工株式会社製)などを挙げることができる。
【0027】
用いることができる増粘性多糖類としては、例えば、キサンタンガム、サクシノグリカン、グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、ダイユータンガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、ペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガムおよびローカストビーンガムなどが挙げられる。これらのうち、キサンタンガム、サクシノグリカンおよびダイユータンガムが好ましい。市販品は、例えば、キサンタンガム(KELZAN AR;三晶社製)、サクシノグリカン(レオザンSH;Solvay社製)およびダイユータンガム(KELCO-VIS DG-F;三晶社製)などである。前記増粘性多糖類は、単独で、または二種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
本発明における上記各増粘剤の含有量は、後述するように、水系液体化粧料の好適な粘度範囲に調整して本発明の効果を発揮できる含有量であれば良く、水系液体化粧料全量に対して、好適な量で調整される。
【0029】
本発明の水系液体化粧料には、上記各成分の他、残部は溶媒となる水(精製水、イオン交換水、蒸留水、純水等)で調製される。
更に、本発明の水系液体化粧料には、保湿剤、防菌剤、また、消泡剤、無機顔料や有機顔料、結晶セルロース、粘度鉱物、界面活性剤、水溶性有機溶剤などを分散系に支障をもたらさず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
用いることができる保湿剤としては、例えば、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の水に可溶なグリコール類が挙げられる。
これらの保湿剤の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは、1~30%、更に好ましくは、5~20%の範囲で使用される。
【0030】
用いることができる防菌剤としては、パラベン類、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノキシエタノールなどが挙げられる。なお、本発明の防菌剤には防腐剤を含むものであり、防腐剤であるパラベン類としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル等を適宜量用いることができる。
また、用いることができる消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(シメチコン)が挙げられる。このポリジメチルシロキサンは、末端がトリメチルシロキシ単位でブロックされメチル化された線状シロキサンポリマーの混合物からなるシリコーン油であり、市販品として、KS-66(信越シリコーン社製)などを適宜量用いることができる。
【0031】
本発明において、更に鮮やかな発色を得るために、上記被覆処理板状顔料、染料の他に、有機顔料、ALレーキ顔料を配合せしめて、更に鮮やかな色調とすることができる。
また、本発明において、水系液体化粧料のpHは、皮膚刺激抑制の点から、6~9の範囲とすることが好ましい。なお、pHの調整は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリエタノールアミン、L-アルギニン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いることができ、特に好ましいものは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールによりpH調整することが望ましい。
【0032】
また、本発明における水系液体化粧料の粘度は、高すぎると穂筆(筆穂)から吐出せず、低すぎると描線がにじみ使用することが難しくなる。そのため、粘度は、25℃において、ずり速度191.5s-1のときの粘度が15mPa・s以下、好ましくは、2~10mPa・sの範囲とすることが望ましい。
上記各粘度範囲内とすることにより、流量が確保され、にじまずラインが描きやすく、塗りやすいものとなる。
また、上記粘度範囲の調整は、上記被覆処理板状顔料、染料、水、更に、アクリル系共重合体などを好適な含有量となるように組み合わせることにより、また、好適な撹拌条件・分散条件等により調整することができる。
【0033】
本発明の水系液体化粧料は、上述した各成分を上記各範囲の含有量等で混合分散機、例えば、ビーズミル、ホモミキサー、ディスパー、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。
【0034】
このように構成される本発明の水系液体化粧料は、塗布部が穂筆(穂首)から構成される塗布具に収容して好適に使用することができる。
なお、塗布部が繊維を樹脂等で固めたものや、繊維同士を融着した、いわゆるペン芯タイプの塗布部を備えた塗布具では、塗布により板状顔料を塗布面上にスライドできるが、塗布液を掻き取ってしまうため、結果輝度感の上昇の効果が薄くなり、塗布性が劣ることとなる。
用いることができる塗布具としては、例えば、図1に示す、上記構成の液体化粧料組成物が内蔵される塗布具が挙げられる。
本発明の水系液体化粧料を搭載した液体化粧料塗布具としては、例えば、図1(a)に示すように、先軸210と該先軸210の後部側の軸本体212とが嵌合する軸体214とを有し、図1(b)に示すように、軸体214の前部に枚葉部が軸方向に複数配列された態様の櫛歯状に形成されたコレクター216が配置され、軸体214内の後部の収容空間214a内に上述の液体化粧料組成物が収容されるタイプのコレクター式の塗布具である。
【0035】
前記軸体214の後部の軸本体212は、内部が連通し前後に開口したパイプ状に形成されている。前記軸体の後部でもある軸本体212の後部には、尾栓214bが嵌合して軸本体212の後部が閉鎖されており、該尾栓214bの前端とコレクター216後端とで挟まれた軸体214内空間(軸本体212内空間でもある)が収容空間214aになっている。
この収容空間214a内には、中綿等の含浸体を配置せず、直接塗布液が収容されており、また、該塗布液の撹拌をするための撹拌体(ボール等)214cが配置されている。
【0036】
先軸210、軸本体212、コレクター216、キャップ等は樹脂成形品とすることができる。また、撹拌体214cは、金属製、樹脂製等のボール材を用いることができる。
前記コレクター216は、先軸210及び軸本体212によって覆われて保持される構造である。
そして、先軸210の前端部の開口から、先細のテーパ状を呈した筆体からなる塗布部218が突出しており、その塗布部218を覆うキャップが前記先軸210に着脱自在に嵌合する構造である。前記先軸210はほぼ円錐側面形状を呈して先細く形成されており、該先軸210の先端角度は、塗布部218の先端角度と略同角度に形成することが望ま
しい。
【0037】
塗布部218は、樹脂繊維、天然繊維束、樹脂製多孔質体から構成されるなる先細の筆体(穂筆)である。塗布部218は、後端部がフランジ状に拡径しており、この拡径した箇所が先軸210内に係合して抜け止めされている。
【0038】
中空の先細く形成された先軸210の内部には、筆記部218の後方に蛇腹状のコレクター216が配設されており、このコレクター216の中空部内に中芯222が貫通して配置されている。中芯222は、樹脂繊維束、天然繊維束、樹脂製多孔質体等の毛管部材から構成できる。
中芯222においては、コレクター216の後端部から軸体214の収容空間214a内に中芯222が突出していない(図1(b)参照)。コレクター216の後端面に中芯222の後端面がほぼ一致している。中芯222を一致させることで、収容空間214a内に中芯222の後端が突出することがなく、収容空間214a内の容積を確保することができる。また、収容空間214a内に中芯222の後端が突出することがないので、攪拌体214cを収容空間214a内に設けた場合、攪拌体214cが収容空間214a内で動いても中芯222に衝突せず中芯222を変形させることないので、十分に塗布液を浸透することができる。
【0039】
上記形態の液体化粧料塗布具では、本発明の水系液体化粧料であるリキッドアイライナーやリキッドアイシャドの液体化粧料塗布具を例にして説明したが、これに限られるものではなく、眉毛にラインを描くアイブロー塗布具、肌にラインを描くことにも適用することができる。
また、上記形態の液体化粧料塗布具の液押圧機構として、図1に示す、回転式繰出タイプとなる塗布具を用いたが、ノック式繰出タイプとなる液体化粧料塗布具を用いても良いものである。
【0040】
このように構成される本発明の水系液体化粧料が少ない量の光輝性を有する板状顔料を含有する液体化粧料組成物であっても、穂筆などの塗布部を有する塗布具に搭載して、肌などの被塗布面上に塗布しても、板状顔料の光輝感を損なうことなく発色も良くなる点については下記の作用効果等によるものと推測される。
本発明によれば、少なくとも、(a)上記A群から選ばれる化合物を表面に被覆された板状顔料を0.01~10質量%と、(b)染料と、(c)アクリル系共重合体を固形分量で1~20質量%と、(d)水とを含有し、穂筆から構成される塗布部を有する塗布具に搭載される水系液体化粧料とすることにより、塗布時の力によって穂筆の水系液体化粧料に剪断力が加えられる結果、平板状光輝性顔料がスライドし、平板状光輝性顔料は広く塗り広げられた塗膜が得られることとなり、被塗布面上に、少ない含有量のわりに優れた光輝性を発揮するとともに発色に優れる水系液体化粧料が得られるものと推測される。従って、本発明の水系液体化粧料は、上記作用効果を有するので、アイライナーなどのアイメイク用等に好適に用いることができるものとなる。
【実施例0041】
以下に、本発明について、更に実施例、比較例を参照して詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1~9、比較例1~10〕
下記表1及び2に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各水系液体化粧料を調製した。
上記で得られた実施例1~9及び比較例1~10の各水系液体化粧料について、下記測定方法、各評価方法により、25℃での粘度、輝度感、発色感、固着性について評価した。なお、これらの各水系液体化粧料のpHは、6.5~8.5の範囲であった。
これらの結果を下記表1に示す。
【0043】
〔粘度の測定方法〕
得られた各水系液体化粧料について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(TV-30型粘度計のうち、ELD型粘度計、標準コーンプレート、トキメック社製)を用いて所定のずり速度(50rpm:191.5S-1)における粘度を測定した。
【0044】
〔輝度感、発色感の評価方法〕
下記表1に示す、各配合組成の水系液体化粧料と、図1図2にそれぞれ示す穂首、ペン芯を有する各塗布具との組み合わせにより、各塗布具を作製して、下記試験方法で輝度感、発色感、固着性について評価した。
図1の各実施例等に用いる穂首は、φ0.05~0.3mmのポリブチレンテレフタレート製樹脂繊維を束ねものから構成される先細の筆体(穂筆)である。図2の比較例に用いるペン芯は、ポリアセタール樹脂(POM)を押出し成形等の工程を経て得られるものである。このペン芯10は、図2(a)及び(b)に示すように、断面放射状の内部溝のインク通路11を軸線方向に連続形成して有する外径3.0mmのPOMから構成され、先端部となる塗布部12がジェットコーン形状を呈した全体が概略砲弾形状に切削形成されており、さらに、下記表1の各配合組成の水系液体化粧料を弁機構を有する塗布具本体(図示せず)に取り付けられ、この塗布具本体内の化粧料通路に導入する孔(図示せず)をペン芯後端部10aとペン芯側面部10bとに形成したものであり、液体化粧料は塗布操作により塗布部から塗布される構成となるものである。
これらの穂首やペン芯を有する各実施例及び比較例の水系液体化粧料を充填した各塗布具を用いて、肌に塗布し、目視で観察して下記評価基準にて輝度感、発色感について官能評価した。
【0045】
輝度感の評価基準:
◎:輝度感が高い。
○:輝度感がある。
△:輝度感が低い。
×:輝度感がほぼない。
【0046】
発色感の評価基準:
◎:発色が非常に良い。
○:発色が良い。
△:発色が悪い。
×:ほぼ発色していない。
【0047】
〔固着性の評価方法〕
上記穂首やペン芯を有する各実施例及び比較例の水系液体化粧料を充填した各塗布具を用いて、目の際に塗布し、4時間後に目視で観察して下記評価基準にて固着性について官能評価した。
固着性の評価基準:
◎:初期と描線の輝度感や発色がほとんど変わらない。
○:初期と描線の輝度感や発色があまり変わらない。
△:初期より輝度感や発色が大きく落ちる。
×:ほぼ描線が残っていない。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1中の*1~*11は、下記のとおりである。
*1:(製造例1)MT1030PS(日本板硝子社製)に結晶セルロース〔(セオラスRC-591、旭化成社製)〕をスプレードライで表面処理したもの、平滑面の平均粒子径:30μm、表面被覆率2%
*2:(製造例2)MT1080PS(日本板硝子社製)に結晶セルロース〔(セオラスRC-591、旭化成社製)〕をスプレードライで表面処理したもの、平滑面の平均粒子径:80μm、表面被覆率2%
*3:MT1030PS(日本板硝子社製:表面未処理)、平滑面の平均粒子径10~70μm
*4:ベンガラN0.216P、大東化成工業社製
*5:ヨドゾールGH800F、ヌーリオン・ジャパン社製、固形分量45%、表1の数値は固形分量で記載。
*6:Beaute by Roquette CD102、Roquette Freres社製
*7:ケルトロール、MP五協フード&ケミカル社製
*8:セオラスRC-N30、旭化成社製
*9:クニピアF、クニミネ工業社製
*10:AMP、クエン酸
*11:フェノキシエタノールSP、四日市合成社製
【0050】
上記表1の結果から明らかなように、本発明をサポートする実施例1~9は、本発明の範囲外となる比較例1~10に較べ、輝度感、発色感、固着性に優れる水系液体化粧料であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の水系液体化粧料は、リキッドアイライナー、リキッドアイシャド、眉毛にラインを描くアイブローなどに好適に使用することができる。
図1
図2