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特開2024-151193ガラスインターポーザ及びガラスインターポーザの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151193
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ガラスインターポーザ及びガラスインターポーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/15 20060101AFI20241017BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241017BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20241017BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L23/14 C
H05K1/02 C
H05K1/11 H
H05K1/11 N
H05K3/40 E
H05K3/40 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064403
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】391012729
【氏名又は名称】株式会社ミクロ技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】吉川 実
(72)【発明者】
【氏名】玉置 勝也
【テーマコード(参考)】
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB12
5E317BB13
5E317BB14
5E317BB15
5E317BB22
5E317BB25
5E317CC17
5E317CC25
5E317CD21
5E317GG16
5E338AA02
5E338AA03
5E338AA18
5E338BB14
5E338BB19
5E338BB25
5E338EE32
(57)【要約】
【課題】ガラスインターポーザの構成において基板となるガラス材と配線部の導電性材料以外の材料を使用せず、製造が簡便であり導電性の良好なガラスインターポーザ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板を複数積層し接合してなり、ガラス基板は、ガラス基板の主面の所定位置に形成される複数の配線用凹部と、配線用凹部に形成されガラス基板を貫通する複数の微細貫通孔と、配線用凹部及び微細貫通孔に配置される導電性材料からなる配線部とを備え、微細貫通孔のそれぞれは、2つの半球状の窪部からなり半球状の曲面部位同士を接合した形状であり、配線用凹部に配置される配線部の上面部は、ガラス基板の主面より1~50μm低い位置の配置であり、ガラス基板同士の接合が真空下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を複数積層し接合してなるガラスインターポーザであって、
前記ガラス基板は、
前記ガラス基板の主面の所定位置に形成される複数の配線用凹部と、
前記配線用凹部に形成され前記ガラス基板を貫通する複数の微細貫通孔と、
前記配線用凹部及び前記微細貫通孔に配置される導電性材料からなる配線部とを備え、
前記微細貫通孔のそれぞれは、2つの半球状の窪部からなり前記半球状の曲面部位同士を接合した形状であり、
前記配線用凹部に配置される配線部の上面部は、前記ガラス基板の主面より1~50μm低い位置の配置であり、
前記ガラス基板同士の接合が真空下である
ことを特徴とするガラスインターポーザ。
【請求項2】
前記ガラス基板の厚さは、10~100μmである請求項1に記載のガラスインターポーザ。
【請求項3】
前記微細貫通孔の半球状の窪部の半径は前記ガラス基板の厚さの2/3~3/4である請求項1に記載のガラスインターポーザ。
【請求項4】
前記導電性材料が金属の微粒子を含有する導電樹脂ペーストである請求項1に記載のガラスインターポーザ。
【請求項5】
請求項1に記載のガラスインターポーザの製造方法であって、
前記配線部の配置に際し、前記導電性材料が微量吐出機により前記ガラス基板に形成された前記配線用凹部内及び前記微細貫通孔内に充填される
ことを特徴とするガラスインターポーザの製造方法。
【請求項6】
前記ガラス基板同士の真空下の接合に際し、前記ガラス基板同士は常温下において接合、または前記ガラス基板同士は常温ないし200℃の加熱下において接合される請求項4に記載のガラスインターポーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスインターポーザ及びガラスインターポーザの製造方法に関し、特に製造が簡便であり導電性の良好なガラスインターポーザ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装される各種のメモリ、CPU、GPU等の半導体素子は、電気的接続用の端子を有する。その接続用端子のピッチと、半導体素子と電気的に接続される回路基板の接続部のピッチは、通常、数倍から数十倍程度異なる。そのため、半導体素子と回路基板を電気的に接続するため、インターポーザと称される接続のための仲介用基板が使用される。インターポーザの一方の面に半導体素子が実装され、他方の面に回路基板が接続される。
【0003】
インターポーザの材質としては、有機樹脂材料が使用されてきた。しかしながら、半導体素子の処理能力の向上、高度集積化に対応するため、インターポーザの微細な配線形成が求められている。しかしながら、従来の有機樹脂材料を使用したインターポーザでは、樹脂の吸湿、温度による伸縮が大きく微細配線への対応は困難であった。
【0004】
そこで、現在では有機樹脂材料の問題に対処するべく、ケイ素(シリコン)、ガラスを基材に用いたインターポーザが開発されている。これらの無機材料によると吸湿の影響が少なく、また、半導体素子との熱膨張率が近似し、温度による伸縮の影響は軽減されている。
【0005】
ただし、ケイ素(シリコン)を基材に用いたインターポーザは表面保護の必要性があり、材料、加工経費等が高価である。このことから、現在、ガラス製のインターポーザが趨勢である(特許文献1、2等参照)。
【0006】
ところが、従前のガラス製のインターポーザの場合、ガラス以外の材料の部材層を有しており、依然として配線の微細化は容易ではない。またガラスと他の材料との熱膨張率の相違から反り等の変形不良のおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-046361号公報
【特許文献2】特開2019-044212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その後、発明者は鋭意検討を重ねた結果、ガラス製のインターポーザにおいて、基板となるガラス材と配線部の導電性材料以外の材料を用いないガラスインターポーザを開発するに至った。
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、ガラスインターポーザの構成において基板となるガラス材と配線部の導電性材料以外の材料を使用せず、製造が簡便であり導電性の良好なガラスインターポーザ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、実施形態のガラスインターポーザは、ガラス基板を複数積層し接合してなり、ガラス基板は、ガラス基板の主面の所定位置に形成される複数の配線用凹部と、配線用凹部に形成されガラス基板を貫通する複数の微細貫通孔と、配線用凹部及び微細貫通孔に配置される導電性材料からなる配線部とを備え、微細貫通孔のそれぞれは、2つの半球状の窪部からなり半球状の曲面部位同士を接合した形状であり、配線用凹部に配置される配線部の上面部は、ガラス基板の主面より1~50μm低い位置の配置であり、ガラス基板同士の接合が真空下であることを特徴とする。
【0011】
さらに、ガラスインターポーザにおいて、ガラス基板の厚さは10~100μmであることとしてもよい。
【0012】
さらに、ガラスインターポーザにおいて、微細貫通孔の半球状の窪部の半径はガラス基板の厚さの2/3~3/4であることとしてもよい。
【0013】
さらに、ガラスインターポーザにおいて、導電性材料が金属の微粒子を含有する導電樹脂ペーストであることとしてもよい。
【0014】
すなわち、実施形態のガラスインターポーザの製造方法は、配線部の配置に際し、導電性材料が微量吐出機によりガラス基板に形成された配線用凹部内及び微細貫通孔内に充填されることを特徴とする。
【0015】
さらに、ガラスインターポーザの製造方法において、ガラス基板同士の真空下の接合に際し、ガラス基板同士は常温下において接合、またはガラス基板同士は常温ないし200℃の加熱下において接合されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガラスインターポーザによると、ガラス基板を複数積層し接合してなり、ガラス基板は、ガラス基板の主面の所定位置に形成される複数の配線用凹部と、配線用凹部に形成されガラス基板を貫通する複数の微細貫通孔と、配線用凹部及び微細貫通孔に配置される導電性材料からなる配線部とを備え、微細貫通孔のそれぞれは、2つの半球状の窪部からなり半球状の曲面部位同士を接合した形状であり、配線用凹部に配置される配線部の上面部は、ガラス基板の主面より1~50μm低い位置の配置であり、ガラス基板同士の接合が真空下であるため、基板となるガラス材と配線部の導電性材料以外の材料を使用せず、製造が簡便であり導電性の良好なガラスインターポーザを得ることができる。
【0017】
また、本発明のガラスインターポーザの製造方法によると、配線部の配置に際し、導電性材料が微量吐出機によりガラス基板に形成された配線用凹部内及び微細貫通孔内に充填されるため、製造が簡便かつ安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のガラスインターポーザの実装状態を示す概略断面図である。
図2】ガラスインターポーザとして積層されるガラス基板の(A)微細貫通孔の断面模式図、(B)配線部の断面模式図である。
図3】ガラスインターポーザとして積層される他の形態のガラス基板の(A)微細貫通孔の断面模式図、(B)配線部の断面模式図である。
図4】ガラス基板の製造工程を示す(A)第1断面模式図、(B)第2断面模式図、(C)第3断面模式図である。
図5】ガラス基板の製造工程を示す(A)第4断面模式図、(B)第5断面模式図、(C)第6断面模式図である。
図6】ガラス基板の配線部の形成を示す(A)第1模式図、(B)第2模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態のガラスインターポーザは、主に、回路基板に実装される各種のメモリ、CPU、GPU等の半導体素子と、当該回路基板とを電気的に配線接続するための中継用の基板となる部材である。特に、ガラスインターポーザ自体はガラスと配線のための導電性材料のみにより形成されているため、樹脂等の熱膨張率の異なる材料を備えず、使用時の熱曝露に伴う変形が軽減される。
【0020】
図1は実施形態のガラスインターポーザ1の実装状態を示す概略断面図である。ガラスインターポーザ1は複数枚のガラス基板2(積層用ガラス配線基板)が積層されて互いに接合して一体化している。図示では、ガラスインターポーザ1の直下にベース基板3が配置され、当該ベース基板3にはベース基板側配線4、接続パッド5が設けられている。ベース基板3には電子機器の回路基板、プリント基板等(図示せず)が配置され、電気的に接続されている。また、ガラスインターポーザ1の直上には各種のメモリ、CPU、GPU等の半導体素子(図示せず)が装着される。
【0021】
ガラスインターポーザ1の各ガラス基板2には、当該ガラス基板2を厚さ方向に貫通する複数の配線部8が配置される。そして、ガラス基板2を積層した際に、ガラス基板2の配線部8は積層方向に沿って接合可能となる。結果、電子機器の回路基板からガラスインターポーザ1に装着される半導体素子までは電気的に接続される。
【0022】
ガラスインターポーザ1を構成するガラス基板2には、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、石英ガラス等のガラス材が使用され、フロート法等により、薄板状物として製造される。ガラス基板2の厚さは10ないし100μmの範囲であることが好ましい。ガラス基板2の厚さが増えると、ガラスインターポーザ1自体の導電性が低下する。加えて、後述のエッチングの処理により微細貫通孔6を形成する際、微細貫通孔6の上下の面積が大きくなる。そのため、ガラス基板2の表面に展開可能な配線のための領域が減少することになる。すると、ガラスインターポーザ1の面積を大きくしなければならず、回路の設計を大きくする必要がある。そこで、ガラス基板2には、回路設計の小型化と導電性の観点から薄層のガラス板(ガラスシート)が使用される。
【0023】
ガラスインターポーザ1において、ガラス基板2同士は互いに積層され接合するため、ガラス基板2の表面は極力平滑であることが望ましい。前述のとおりガラス板はフロート法により製造されるため、表面の平滑さ(凹凸の程度)は10ないし100nm程度である。なお、表面の平滑性の調整のため、別途表面研磨をすることができる。研磨には、通常酸化セリウムの研磨剤(微粒子)が使用される。
【0024】
図2はガラスインターポーザ1を構成するガラス基板2の1枚の部分拡大断面模式図である。ガラス基板2の主面11(第1面)の所定位置には複数の配線用凹部7が形成される。同時にガラス基板2の主面11(第1面)と反対側の従面12(第2面)の所定位置には複数の配線用凹部7が形成される。ここでいう所定位置とは、ガラス基板2における配線形成予定位置である。そして、ガラス基板2に複数の微細貫通孔6が形成される。各微細貫通孔6は主面11(第1面)の配線用凹部7と従面12(第2面)の配線用凹部7とを接続し、各微細貫通孔6は当該ガラス基板2を主面11から従面12にかけて貫通する。図2(A)はガラス基板2に微細貫通孔6が形成された状態の断面模式図である。図示に都合上、微細貫通孔6は1箇所のみの表示としている。
【0025】
主面11及び従面12の配線用凹部7と微細貫通孔6には導電性材料9が配置(充填)される。そこで、配線部8において、ガラス基板2の主面11(第1面)と従面12(第2面)との間の導電性は確保される。図2(B)は配線部8付近を拡大して示す断面模式図である。図示に都合上、微細貫通孔6と配線部8は1箇所のみの表示としている。そして、1枚目のガラス基板2の従面12に、2枚目のガラス基板2の主面11が積層されて接合されると1枚目のガラス基板2の従面12の配線用凹部7に2枚目のガラス基板2の主面11の配線用凹部7が接合し、複数枚のガラス基板2での導電性が確保される(図1参照)。
【0026】
ガラス基板2に形成される微細貫通孔6のそれぞれは2つの半球状の窪部6kを組み合わせてなり、半球状の窪部6kの曲面部位同士を接合した形状として形成される。微細貫通孔6は、縦断面視においておおよそ数字の「8」に近似した形状である。そして、半球状の窪部6kの開口部6p側に配線用凹部7が形成される。配線用凹部7は他のガラス基板2との積層時の導電性を確保するため、つまり配線用凹部7同士が接触可能な大きさである。
【0027】
配線部8に使用される導電性材料9は、銅、銀、金、白金、ニッケル、鉛等の金属の微粒子を含有する導電樹脂ペーストであることが好ましい。また、導電樹脂ペーストはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、各種有機溶剤を主剤とし、当該主剤中に重量割合において60ないし90重量%の比率で金属の微粒子が分散されている。この導電樹脂ペーストは、導電樹脂インクを含む。配線部8の形成に際しては、後述の製造方法の説明から理解されるように樹脂塗材の塗工の手法が使用される。むろん、従前の金属のめっきの手法が採用される場合もある。そこで、導電性材料9として、金属の微粒子を含有する塗材は配線用凹部7と微細貫通孔6に注入される。配線用凹部7と微細貫通孔6は金属の微粒子を含有する塗材により満たされ、金属の微粒子が導電材として作用する。
【0028】
ここで、配線用凹部7に配置される配線部8の上面部15は、ガラス基板2の主面11(及び従面12)よりも、1ないし50μm低い位置の配置である。前述のとおり、配線部8は導電性材料9により形成される。そこで、ガラスインターポーザ1の使用環境における発熱から導電性材料9の樹脂成分及び金属微粒子は熱膨張すると考えられる。
【0029】
仮に、導電性材料9が配線用凹部7に配置される配線部8の上面部15をガラス基板2の主面11(及び従面12)と同等の高さとすると、導電性材料9の熱膨張により、配線用凹部7または微細貫通孔6から漏出する可能性がある。また、漏出した導電性材料9がガラス基板2同士の隙間に浸入してガラス基板2同士の密着性を低下させる可能性がある。そのため、意図的に配線用凹部7に配置される配線部8の上面部15は、ガラス基板2の主面11(及び従面12)よりも、低い位置とされ、ガラスインターポーザ1の組み立てに際してちょうど互いに接合するように導電性材料9の量は調整される。
【0030】
ここで、ガラス基板2の微細貫通孔6の半球状の窪部6kにおいて、窪部6kを球と見立てたときの半径Rは、ガラス基板2の厚さの2/3ないし3/4の範囲に規定される。図2に開示の形態では、窪部6kを球と見立てたときの中心はガラス基板2内に存在する。窪部6kの半径Rがガラス基板2の厚さTの半分程度のとき、ガラス基板2の主面11及び従面12に形成される窪部6kは互いに接触せず、微細貫通孔6の意味をなさない。また、窪部6kの半径Rを大きく過ぎると、微細貫通孔6の形成に時間を要し生産性が低下する。つまり、半球状の窪部6kは、その半球状の曲面部位同士が適度に接触し合って連通し、充填された導電性材料9が主面11から従面12にかけて貫通可能であればよい。
【0031】
さらに、図3はガラスインターポーザとして積層される他の形態のガラス基板2の断面模式図である。図3(A)のとおり、図示のガラス基板2では、窪部6kを球と見立てたときの半球状の窪部6kの中心がガラス基板2の外側に存在する。図示から把握されるように、微細貫通孔6の窪部6kの形状は比較的自由であり、必ずしも厳密でなくてもよい。当該形態のガラス基板2であっても図3(B)のとおり、微細貫通孔6への配線部8の配置は可能である。むろん、窪部6kの半径Rは、図2の場合と同様にガラス基板2の厚さの2/3ないし3/4の範囲に規定される。
【0032】
図1のガラスインターポーザ1において、個々のガラス基板2の接合は、真空下で行われる。ガラスの特性として、同種のガラスが面接触すると接合しやすくなることが経験上知られている。そこで、ガラスインターポーザ1の製造時、個々のガラス基板2は真空チャンバ(図示せず)内に搬入され、同真空チャンバ内において個々のガラス基板2同士は積層される。なお、真空度は実生産を加味した数値に調整される。真空状態とすると、ガラス基板2の主面11及び従面12付近の窒素、酸素等の分子が減少してガラス基板2のガラス質そのものが露出するため、空気中よりも接合しやすくなる。特にガラス基板2の表面の平滑さ(凹凸の程度)は10ないし100nmであるとしても、真空状態によりガラス基板2同士の密着性は向上するため、接合は強固となりやすい。
【0033】
さらに、真空下での接合に際し、ガラス基板2同士は常温下の接合としてもよく、または、ガラス基板2同士は常温ないし200℃の加熱下の接合としてもよい。加熱を伴うことにより、微弱ながらガラス基板2の表面同士の反応性を高めることができる。なお、加熱はガラス材の溶融目的ではないため、ガラス点移転等の温度よりは温和である。
【0034】
図4ないし図6の断面模式図を用い、ガラスインターポーザ1を構成する個々のガラス基板2の製造方法を説明する。図示の製造方法は一例であり、必ずしも図示に限定はされない。
【0035】
図4(A)よりガラス基板2となる薄層のガラス板(ガラスシート)が用意され、図4(B)のとおり、配線形成予定位置を除く部位にフォトレジスト、クロムマスク等の保護部20が形成される。配線形成予定位置は露出部21である。そして、図4(C)のとおり、フォトレジストの処理を施していない部位、つまり配線形成予定位置となる露出部21に対してエッチングが行われる。エッチングでは、ガラス基板2が、例えばフッ酸及び塩酸の混合酸液と接触することにより、混合酸液に直接曝露されるガラス基板2のガラス質は腐食、溶解する。エッチングにより、ガラス基板2のガラス質が局所的に溶解することにより所定の深さの除去部22が形成される。この除去部22が配線用凹部7となる。
【0036】
図5(A)では、除去部22に対してさらにエッチングが継続され、ガラス基板2のガラス質の溶解が進行している様子である。図5(B)のように、除去部22からさらにガラス基板2の内部側に腐食が入り込むことによって半球状の窪部6kが形成される。そして、ガラス基板2の主面11及び従面12からそれぞれ形成される窪部6kは、ガラス基板2の厚さ方向の中央部分において接触し主面11から従面12にかけての貫通し、微細貫通孔6が形成される。図5(C)では、フォトレジスト、クロムマスク等の保護部20がレーザ照射等により除去、分解、洗浄され、当初のガラス基板2の主面11及び従面12が露出した状態となる。
【0037】
レーザをガラス基板2の穿設に使用する場合、照射位置の制御から細かく、高密度に微細貫通孔6の形成が可能である。これに対し、図4及び図5のガラス基板2における微細貫通孔6の形成によると、炭酸ガスレーザ等の加工機器を用いることなく、ガラス材のエッチングのみにより微細貫通孔6の形成が可能である。結果、製造に要する装置類の設備投資を抑制することができる。また、微細貫通孔6はエッチングにより形成される窪部6k同士の接合により形成されるため、微細貫通孔6はガラス基板2の主面11から従面12にかけておおむねまっすぐに形成可能である。このため、レーザによるガラス基板2の穿設と同程度の密度による微細貫通孔6の形成が可能である。
【0038】
図6の模式図は、ガラス基板2に形成された微細貫通孔6に対する導電性材料9、具体的には導電樹脂ペーストの充填の様子を示す。実施形態にあっては、配線部8の配置に際し、導電性材料9が微量吐出機30によりガラス基板2に形成された配線用凹部7内及び微細貫通孔6内に充填される。
【0039】
図6(A)では、微量吐出機30としてマイクロシリンジ31が使用され、導電樹脂ペーストはマイクロシリンジ31に貯留され、当該マイクロシリンジ31から配線用凹部7及び微細貫通孔6内に所定量ずつ吐出される。図示ではガラス基板2の主面11側にマイクロシリンジ31を配置している。これに加えて、ガラス基板2の主面11側と従面12側の両方にマイクロシリンジが配置され、導電樹脂ペーストは双方のマイクロシリンジから吐出させてもよい。
【0040】
図6(B)では、インクジェットプリンタ等の印刷機に用いられる噴出機36(インクジェット機構)が使用される。インクタンク等(図示せず)に貯留された導電樹脂ペーストは噴出機36から所定量ずつ吐出されて配線用凹部7及び微細貫通孔6に吹き付けられる。むろん、噴出機36はガラス基板2の主面11側と従面12側の両方に配置してもよい。
【0041】
導電樹脂ペーストの粘度、流動性は溶媒量に応じて調整が可能であるため、金属の微粒子を含有しているとしても、微量吐出機30からの吐出は可能である。また、微細貫通孔6は半球状の窪部6kを重ねた形状であるため、微細貫通孔6の内表面積はレーザによる穿設により形成される円筒体よりも大きくなる。そのため、導電樹脂ペーストの表面張力により導電樹脂ペーストは微細貫通孔6の内部に広がりやすいと考えられる。
【0042】
さらに、微細貫通孔6への配線部8の配置に際しては、公知の電解めっき等のめっきの手法も用いないため、めっきしない部分の保護膜の設置と剥離の必要はない。また、めっき液等の廃液処理の負担が軽減される。
【0043】
その後、微細貫通孔6及び配線用凹部7に配線部8が配置された複数枚のガラス基板2は、配線用凹部7の位置を確認しながらそれぞれ正確に積層される。複数枚のガラス基板2同士の積層は、真空チャンバ内等の真空下において行われる。なお、積層は常温としても、常温ないし200℃までの加熱下において行われることとしてもよい。複数枚のガラス基板2同士は真空下の積層を通じて相互に密着して接合する。
【符号の説明】
【0044】
1 ガラスインターポーザ
2 ガラス基板
3 ベース基板
4 ベース基板側配線
5 接続パッド
6 微細貫通孔
6k 窪部
7 配線用凹部
8 配線部
9 導電性材料
11 主面(第1面)
12 従面(第2面)
15 上面部
20 保護部
21 露出部
22 除去部
30 微量吐出機
31 マイクロシリンジ
36 噴出機
R 窪部の半径
T ガラス基板の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6