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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151194
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】液封ブッシュ製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/14 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
F16F13/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064406
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047CA01
3J047CC02
3J047FA04
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】より簡単に液封ブッシュを得ることができる液封ブッシュ製造方法を、提供する。
【解決手段】液封ブッシュ製造方法は、液封ブッシュ1を製造するための、液封ブッシュ製造方法であって、加硫成形により液無しブッシュ1’を得る、加硫工程と、液無しブッシュに作動液5を注入する、作動液注入工程と、を含み、液無しブッシュは、内筒2と、外筒3と、内筒及び外筒どうしを連結する本体ゴム4と、を備え、本体ゴムの内周面は、軸線方向両側において内筒の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合された、一対の接合部41と、一対の接合部どうしの間を延在しているとともに、内筒に対して接合されていない、非接合部42と、を有しており、作動液注入工程では、液無しブッシュにおける本体ゴムの非接合部と内筒との間の隙間Gに作動液を注入し、隙間を作動液で膨らませることによって液室6を形成して、液封ブッシュを得る。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液封ブッシュを製造するための、液封ブッシュ製造方法であって、
加硫成形により液無しブッシュを得る、加硫工程と、
前記液無しブッシュに作動液を注入する、作動液注入工程と、
を含み、
前記液無しブッシュは、
内筒と、
外筒と、
前記内筒及び前記外筒どうしを連結する本体ゴムと、
を備え、
前記本体ゴムの内周面は、
軸線方向両側において前記内筒の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合された、一対の接合部と、
前記一対の接合部どうしの間を延在しているとともに、前記内筒に対して接合されていない、非接合部と、
を有しており、
前記作動液注入工程では、前記液無しブッシュにおける前記本体ゴムの前記非接合部と前記内筒との間の隙間に前記作動液を注入し、前記隙間を前記作動液で膨らませることによって液室を形成して、液封ブッシュを得る、液封ブッシュ製造方法。
【請求項2】
前記外筒は、前記外筒を径方向に貫通する外筒貫通穴を有しており、
前記作動液注入工程では、前記隙間が前記作動液で膨らませられる間、前記本体ゴムのうち前記外筒貫通穴に面する部分が、前記作動液によって前記外筒貫通穴内へ押し出される、請求項1に記載の液封ブッシュ製造方法。
【請求項3】
前記外筒貫通穴は、
周方向において互いから離間された、一対の広幅穴部と、
前記一対の広幅穴部どうしを連結するとともに、前記一対の広幅穴部よりも軸線方向の幅が狭い、狭幅穴部と、
を有し、
前記作動液注入工程では、前記本体ゴムのうち前記一対の広幅穴部に面する部分と前記内筒との間で、一対の主液室が形成され、前記本体ゴムのうち前記狭幅穴部に面する部分と前記内筒との間で、前記一対の主液室どうしを連通するオリフィスが形成される、請求項2に記載の液封ブッシュ製造方法。
【請求項4】
前記内筒の外周面は、外周側へ向かって突出するバルジ形状をなすバルジ形状部を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の液封ブッシュ製造方法。
【請求項5】
前記本体ゴムの前記一対の接合部は、前記内筒の前記外周面のうち前記バルジ形状部を除く部分及び/又は前記内筒の前記軸線方向端面に対して、全周にわたって接合されており、
前記本体ゴムの前記非接合部は、前記内筒の前記バルジ形状部に対して接合されていない、請求項4に記載の液封ブッシュ製造方法。
【請求項6】
前記作動液注入工程の後に、前記外筒貫通穴にスペーサ部材を嵌め込み、それによって前記外筒貫通穴を塞ぐ、スペーサ部材嵌め込み工程を、さらに含む、請求項2又は3に記載の液封ブッシュ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液封ブッシュ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内筒とリングとそれらの間のゴムとを一体に加硫成形し、それに液室をシールするための部材を嵌合させ、その後、それらを外筒に挿入する等して、液封ブッシュを製造する方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-231884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液封ブッシュ製造方法は、複雑であり、簡単化の余地があった。
【0005】
この発明は、より簡単に液封ブッシュを得ることができる液封ブッシュ製造方法を、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕液封ブッシュを製造するための、液封ブッシュ製造方法であって、
加硫成形により液無しブッシュを得る、加硫工程と、
前記液無しブッシュに作動液を注入する、作動液注入工程と、
を含み、
前記液無しブッシュは、
内筒と、
外筒と、
前記内筒及び前記外筒どうしを連結する本体ゴムと、
を備え、
前記本体ゴムの内周面は、
軸線方向両側において前記内筒の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合された、一対の接合部と、
前記一対の接合部どうしの間を延在しているとともに、前記内筒に対して接合されていない、非接合部と、
を有しており、
前記作動液注入工程では、前記液無しブッシュにおける前記本体ゴムの前記非接合部と前記内筒との間の隙間に前記作動液を注入し、前記隙間を前記作動液で膨らませることによって液室を形成して、液封ブッシュを得る、液封ブッシュ製造方法。
これにより、より簡単に液封ブッシュを得ることができる。
【0007】
〔2〕前記外筒は、前記外筒を径方向に貫通する外筒貫通穴を有しており、
前記作動液注入工程では、前記隙間が前記作動液で膨らませられる間、前記本体ゴムのうち前記外筒貫通穴に面する部分が、前記作動液によって前記外筒貫通穴内へ押し出される、〔1〕に記載の液封ブッシュ製造方法。
これにより、より簡単に液室を膨らませることができる。
【0008】
〔3〕前記外筒貫通穴は、
周方向において互いから離間された、一対の広幅穴部と、
前記一対の広幅穴部どうしを連結するとともに、前記一対の広幅穴部よりも軸線方向の幅が狭い、狭幅穴部と、
を有し、
前記作動液注入工程では、前記本体ゴムのうち前記一対の広幅穴部に面する部分と前記内筒との間で、一対の主液室が形成され、前記本体ゴムのうち前記狭幅穴部に面する部分と前記内筒との間で、前記一対の主液室どうしを連通するオリフィスが形成される、〔2〕に記載の液封ブッシュ製造方法。
これにより、一対の主液室とそれらを連通するオリフィスとを形成することができる。
【0009】
〔4〕前記内筒の外周面は、外周側へ向かって突出するバルジ形状をなすバルジ形状部を有している、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の液封ブッシュ製造方法。
この場合、軸直方向の変位に対して、より高いバネ剛性を発揮することができる。
【0010】
〔5〕前記本体ゴムの前記一対の接合部は、前記内筒の前記外周面のうち前記バルジ形状部を除く部分及び/又は前記内筒の前記軸線方向端面に対して、全周にわたって接合されており、
前記本体ゴムの前記非接合部は、前記内筒の前記バルジ形状部に対して接合されていない、〔4〕に記載の液封ブッシュ製造方法。
この場合、こじり方向の変位に対するバネ剛性を、より低減することができる。
【0011】
〔6〕前記作動液注入工程の後に、前記外筒貫通穴にスペーサ部材を嵌め込み、それによって前記外筒貫通穴を塞ぐ、スペーサ部材嵌め込み工程を、さらに含む、〔2〕又は〔3〕に記載の液封ブッシュ製造方法。
これにより、液封ブッシュを外部の筒状部材に圧入する際に液封ブッシュの外筒が変形するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、より簡単に液封ブッシュを得ることができる液封ブッシュ製造方法を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る液封ブッシュ製造方法における加硫工程を説明するための図面であり、加硫工程により得られる液無しブッシュを概略的に示す、軸線方向断面図である。
図2図1の液無しブッシュを、図1とは異なる断面により示す、軸線方向断面図である。
図3図1の液無しブッシュを径方向に見たときの様子を概略的に示す側面図である。
図4図3の液無しブッシュを、図3とは異なるアングルから径方向に見たときの様子を概略的に示す、側面図である。
図5図1の内筒における接合部及び非接合部について説明するための図面である。
図6図6(a)は加硫工程直後における液無しブッシュを概略的に示す軸線方向断面図であり、図6(b)は図6(a)の状態の後に液無しブッシュが冷めた状態を概略的に示す軸線方向断面図であり、図6(c)は図6(b)の状態の後に絞り工程を行った後の液無しブッシュを概略的に示す軸線方向断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る液封ブッシュ製造方法における作動液注入工程を説明するための図面であり、図1図4の液無しブッシュに対して作動液注入工程を行うことにより得られた液封ブッシュを概略的に示す、軸線方向断面図である。
図8図7の液封ブッシュを、図7とは異なる断面により示す、軸線方向断面図である。
図9図7の液封ブッシュを径方向に見たときの様子を概略的に示す側面図である。
図10図9の液封ブッシュを、図9とは異なるアングルから径方向に見たときの様子を概略的に示す、側面図である。
図11図9の状態の後にスペーサ部材嵌め込み工程を行った後の液封ブッシュを径方向に見たときの様子を概略的に示す側面図である。
図12図11の液封ブッシュを、図11とは異なるアングルから径方向に見たときの様子を概略的に示す、側面図である。
図13図11図12のスペーサ部材を概略的に示す斜視図である。
図14図11図12の状態の後に外部の筒状部材に圧入された液封ブッシュを、外部の筒状部材とともに概略的に示す、軸線方向断面図である。
図15図14の液封ブッシュと外部の筒状部材とを、図14とは異なる断面により示す、軸線方向断面図である。
図16図14の液封ブッシュと外部の筒状部材とを、図14のA-A線に沿った断面により示す、軸直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る液封ブッシュ製造方法によって得られる液封ブッシュは、例えば、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)に用いられると好適であり、例えば、車両のサスペンション装置のリンク機構(サスペンションアーム等)に用いられると好適である。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る液封ブッシュ製造方法の実施形態を例示説明する。
【0015】
図1図16は、本発明の一実施形態に係る液封ブッシュ製造方法を説明するための図面である。本実施形態の液封ブッシュ製造方法は、例えば図14図16に示すような液封ブッシュ1を製造するために使用されるものである。図14図16の例の液封ブッシュ1は、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)に好適に用いられるように構成されており、例えば、車両のサスペンション装置のリンク機構(サスペンションアーム等)に好適に用いられるように構成されている。より、具体的に、図14図16の例の液封ブッシュ1は、外部の筒状部材A1(例えば、車両のサスペンション装置のサスペンションアームA(図16)の筒状部材A1)の内周面に圧入されるように、構成されている。図14図16の例の液封ブッシュ1の軸線方向は、略水平方向となるように指向される。
ただし、本明細書で説明する各例の液封ブッシュ1は、上述した用途以外の任意の用途に用いられてもよい。また、液封ブッシュ1の軸線方向は、任意の方向に指向されてよい。
【0016】
本実施形態の液封ブッシュ製造方法は、少なくとも、加硫工程と、作動液注入工程と、を含む。
加硫工程では、加硫成形により液無しブッシュ1’(図1図4)を得る。
作動液注入工程では、液無しブッシュ1’に作動液5を注入し、それにより、液封ブッシュ1(図7図10)を得る。液封ブッシュ1は、液無しブッシュ1’に作動液5が封入された構造を有している。したがって、液無しブッシュ1’の構成は、特に断りが無い限り、液封ブッシュ1も同様に備えている。
以下、これらについてより詳細に説明する。
なお、本明細書では、液無しブッシュ1’や液封ブッシュ1を単に「ブッシュ(1’、1)」と呼ぶ場合がある。
また、本明細書では、各図面に示すブッシュ1’、1の向きを理解しやすくするために、各図面に示すように、ブッシュ1’、1に固定されたXYZ直交座標系を定義する。X軸は、ブッシュ1’、1の中心軸線O3に平行である。また、本明細書では、各図面に示すように、Y軸方向における一方側を「Y軸方向第1側(Y1)」といい、Y軸方向における他方側を「Y軸方向第2側(Y2)」という。
【0017】
本明細書では、ブッシュ1’、1について説明する際、便宜のため、特に断りが無い限りは、各図面に示すように、ブッシュ1’、1に入力が加わっておらず、ブッシュ1’、1が静止した、通常の状態にあるときの構造について、説明するものとする。
【0018】
図1図4は、加硫工程により得られる液無しブッシュ1’を概略的に示している。図1は、液無しブッシュ1’を、中心軸線O3を通るとともにXZ平面に平行な断面により概略的に示す、軸線方向断面図である。図2は、図1の液無しブッシュ1’を、中心軸線O3を通るとともにXY平面に平行な断面により示す、軸線方向断面図である。図3は、図1の液無しブッシュ1’をY軸方向第1側Y1からY軸方向第2側Y2へ向かって径方向に見たときの様子を概略的に示す側面図である。図4は、図3の液無しブッシュ1’を、Y軸方向第2側Y2からY軸方向第1側Y1へ向かって径方向に見たときの様子を概略的に示す、側面図である。
液無しブッシュ1’は、内筒2と、外筒3と、本体ゴム4と、を備えている(図1図4)。液無しブッシュ1’における本体ゴム4の内周面は、一対の接合部41と、非接合部42と、を有している(図1図2)。
【0019】
内筒2を構成する材料としては、例えば、金属、及び/又は、樹脂等が挙げられる。
【0020】
外筒3は、内筒2の外周側に位置している。内筒2は外筒3と同軸に配設されており、言い換えれば、内筒2の中心軸線O2は、外筒3の中心軸線O3と一致している。
【0021】
本明細書では、外筒3の中心軸線O3を、ブッシュ1’、1の中心軸線O3とみなすものとする。また、本明細書では、特に断りが無い限り、ブッシュ1’、1の中心軸線O3に平行な方向を、「軸線方向」といい、軸線方向においてブッシュ1’、1の中心から遠い側を「軸線方向外側」といい、軸線方向においてブッシュ1’、1の中心に近い側を「軸線方向内側」といい、ブッシュ1’、1の中心軸線O3に垂直な方向を、「軸直方向」といい、ブッシュ1’、1の中心軸線O3に近い側を「内周側」といい、ブッシュ1’、1の中心軸線O3から遠い側を「外周側」といい、ブッシュ1’、1の中心軸線O3を中心とする周方向を「周方向」といい、ブッシュ1’、1の中心軸線O3を中心とする径方向を「径方向」という。
【0022】
本体ゴム4は、ゴムから構成されている。本体ゴム4を構成するゴムは、例えば、自己潤滑ゴム等、摩擦係数の低いゴムであってもよい。本体ゴム4は、径方向における内筒2と外筒3との間に位置している。本体ゴム4は、内筒2及び外筒3どうしを連結している。本体ゴム4は、内筒2と外筒3との間を全周にわたって延在しており、ひいては、筒状をなしている。
【0023】
本体ゴム4の外周面は、外筒3の内周面と接触している部分において、外筒3の内周面に対して接合されていると、好適である。本体ゴム4と外筒3との間の接合は、例えば、加硫接着、及び/又は、接着剤を介した接着等、任意の手法でなされたものでよい。
【0024】
上述のように、本体ゴム4の内周面は、一対の接合部41と、非接合部42と、を有している(図1図2)。
【0025】
本体ゴム4の内周面における一対の接合部41は、ブッシュ1’の軸線方向中心(外筒3の軸線方向中心と同じ軸線方向位置。)に対する軸線方向両側に位置しており、それぞれ内筒2の外周面に対して全周にわたって接合されている(図1図2)。
なお、本明細書で説明する各例においては、図1図2の例のように一対の接合部41のそれぞれが内筒2の外周面のみに対して接合されている場合に限られず、図示は省略するが、一対の接合部41のそれぞれが、内筒2の軸線方向端面のみに対して接合されていてもよいし、あるいは、内筒2の外周面及び軸線方向端面の両方に対して接合されていてもよい。
【0026】
本体ゴム4の内周面における非接合部42は、一対の接合部41どうしの間を延在している(図1図2)。非接合部42は、内筒2(具体的には、内筒2の外周面)に対して、接合されていない。非接合部42は、内筒2(具体的には、内筒2の外周面)と径方向に対向している。非接合部42は、内筒2(具体的には、内筒2の外周面)に対して接触していてもよいし接触していなくてもよい。非接合部42は、ブッシュ1’の軸線方向中央に位置しており、ブッシュ1’の軸線方向中心上に位置している。非接合部42は、全周にわたって延在していると、好適である。液無しブッシュ1’において、本体ゴム4の非接合部42と内筒2との間の隙間Gは、ほぼ又は完全につぶれた状態であってもよい。
【0027】
図1図2図5に示すように、本明細書では、内筒2の表面のうち、本体ゴム4の接合部41に対して接合されている部分を「接合部21」といい、本体ゴム4の非接合部42に対して接合されていないが非接合部42と対向する部分を「非接合部22」という。接合部21は、図の例において、内筒2の外周面に位置している。
なお、本明細書で説明する各例においては、図1図2図5の例のように内筒2の外周面がブッシュ1’の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置する一対の接合部21とその間の非接合部22とを有している場合に限られず、図示は省略するが、内筒2の軸線方向両端面がブッシュ1’の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置する一対の接合部21を有するとともに、内筒2の外周面が非接合部22を有していてもよいし、あるいは、内筒2の外周面及び軸線方向両端面の両方がブッシュ1’の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置する一対の接合部21を有するとともに、内筒2の外周面が非接合部22を有していてもよい。
【0028】
接合部41、21における本体ゴム4と内筒2との間の接合は、例えば、加硫接着、及び/又は、接着剤を介した接着等、任意の手法でなされたものでよい。
接合部41、21、非接合部42、22を形成する手法の例については、後にさらに詳しく説明する。
【0029】
例えば、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により液無しブッシュ1’を加硫成形すると、好適である。
【0030】
加硫工程の後における作動液注入工程においては、液無しブッシュ1’における本体ゴム4の非接合部42と内筒2の非接合部22との間の隙間Gに作動液5を注入し、隙間Gを作動液5で膨らませることによって液室6を形成して、液封ブッシュ1を得る(図7図10)。
図7図10は、作動液注入工程(及び後述の栓挿入工程)の後に得られる液封ブッシュ1を概略的に示している。図7は、液封ブッシュ1を、中心軸線O3を通るとともにXZ平面に平行な断面により概略的に示す、軸線方向断面図である。図8は、図7の液封ブッシュ1を、中心軸線O3を通るとともにXY平面に平行な断面により示す、軸線方向断面図である。図9は、図7の液封ブッシュ1をY軸方向第1側Y1からY軸方向第2側Y2へ向かって径方向に見たときの様子を概略的に示す側面図である。図10は、図9の液封ブッシュ1を、Y軸方向第2側Y2からY軸方向第1側Y1へ向かって径方向に見たときの様子を概略的に示す、側面図である。
作動液注入工程を行うにあたっては、事前に、液無しブッシュ1’に注入穴Hを形成しておく(図2図4)。注入穴Hは、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gと液無しブッシュ1’の外部とを連通する。注入穴Hは、図2図4に示す例のように、当該隙間Gと液無しブッシュ1’の外部との間において、液無しブッシュ1’の外筒3及び本体ゴム4を通るものであってもよい。この場合、事前に注入穴Hを形成する手法としては、任意でよいが、例えば、予め外筒3の対応箇所に貫通穴を形成しておくとともに、射出工程及び加硫工程中に使用される金型に、注入穴Hを形成するための突起を設けておくものが、挙げられる。
作動液注入工程においては、外部から、注入穴Hを介して、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gに、作動液5を注入する(図7図8)。隙間Gを作動液5で膨らませることによって形成される液室6は、液封ブッシュ1における本体ゴム4の非接合部42と内筒2の非接合部22とによって区画され、作動液5によって充填されたものとなる。
作動液注入工程においては、圧力を加えながら作動液5を注入すると、好適である。
【0031】
作動液5は、例えば、エチレングリコール、シリコンオイル等からなる。
【0032】
作動液注入工程の後、栓挿入工程を行うと、好適である。
栓挿入工程を行う場合は、図8図10に示すように、栓Pを液封ブッシュ1の外部から注入穴Hに挿入することにより、注入穴Hを塞ぐ。これにより、作動液5が外部に漏れ出るのを防ぐことができる。
ただし、作動液注入工程の後、注入穴Hは、その他の手法によって塞がれてもよい。
【0033】
本実施形態においては、上述のように、加硫工程において、本体ゴム4の内周面に軸線方向両側の一対の接合部41とその間の非接合部42とを有する液無しブッシュ1’を得て、その後の作動液注入工程において、液無しブッシュ1’における本体ゴム4の非接合部42と内筒2の非接合部22との間の隙間Gに作動液5を注入し、隙間Gを作動液5で膨らませることによって液室6を形成して、液封ブッシュ1を得る。本体ゴム4における非接合部42の両側の一対の接合部41は、全周にわたって内筒2に接合されているので、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gひいては液室6は、その両側の一対の接合部41によってシールされた密閉空間となる。したがって、隙間Gひいては液室6をシールするためのさらなる部材を要さずに、作動液5が本体ゴム4と内筒2との間から漏れ出るのを抑制できる。よって、当該さらなる部材を組み付ける工程等が不要となるので、より簡単に液封ブッシュ1を得ることができる。また、液封ブッシュ1の部品点数を低減できる。よって、時間的・費用的コストの低減が可能となる。
また、本実施形態においては、上述のように、液封ブッシュ1において、本体ゴム4が、軸線方向両側の一対の接合部41において、内筒2に対して全周にわたって接合されているとともに、一対の接合部41どうしの間における非接合部42においては、内筒2に対して接合されていない(図7図8)。したがって、内筒2が外筒3に対してねじり方向(内筒2が外筒3に対して周方向に回転する場合の方向)又はこじり方向(内筒2の中心軸線O2が外筒3の中心軸線O3に対して傾く場合の方向)に変位する際には、本体ゴム4が、軸線方向両側の一対の接合部21において内筒2上に固定されていつつも、その間の非接合部22において、内筒2に対して比較的自由に動くことができる。そのため、ねじり方向又はこじり方向の変位をする間、本体ゴム4のうち一対の接合部41の近傍部分は、バネ剛性に寄与するものの、本体ゴム4のうち非接合部42の近傍部分は、バネ剛性にほとんど又は全く寄与しない。よって、仮に本体ゴム4が内筒2に対して本体ゴム4の全面にわたって接合されている場合に比べて、本体ゴム4が内筒2に対して接合されている部分の面積が小さいので、その分、ねじり方向及びこじり方向の剛性を低減でき、ひいては、内筒2が外筒3に対してねじり方向やこじり方向に揺動しやすくなる。これにより、車両のサスペンション装置用の液封ブッシュとしての性能を向上できる。
また、本明細書で説明する各例においては、本体ゴム4の非接合部42の存在は、軸直方向の変位に対しては影響を与えないため、本体ゴム4は、内筒2が外筒3に対して軸直方向に変位する際に、仮に本体ゴム4が内筒2に対して本体ゴム4の全面にわたって接合されている場合と同等以上の高いバネ剛性を発揮することができ、ひいては、車両のサスペンション装置用の液封ブッシュとして良好な性能を発揮できる。
【0034】
液無しブッシュ1’における接合部41及び非接合部42の形成は、加硫工程において行うと、好適である。
加硫工程において接合部41及び非接合部42を形成する手法の1つは、つぎのとおりである。まず、加硫工程の前における接着剤塗布工程において、内筒2の表面のうち非接合部22となる部分にマスキングをした上で、内筒2の表面のうち接合部21となる部分に接着剤を塗布する。これにより、内筒2の表面のうち非接合部22となる部分には接着剤が塗布されないようにする。その後、マスキングは除去する。その後、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により液無しブッシュ1’を加硫成形する。この場合、加硫工程中において、本体ゴム4が、内筒2の表面のうち接着剤が塗布された部分に接合され、そこで、接合部41が形成されるとともに、内筒2の表面のうちマスキングされていた(すなわち、接着剤が塗布されなかった)部分には接合されず、そこで、非接合部42が形成される。
加硫工程において接合部41及び非接合部42を形成する他の手法は、つぎのとおりである。まず、加硫工程の前における接着シート貼り付け工程において、内筒2の表面のうち接合部21となる部分に接着シートを貼り付ける。このとき、内筒2の表面のうち非接合部22となる部分には接着シートが貼り付けられないようにする。その後、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により液無しブッシュ1’を加硫成形する。この場合、加硫工程中において、本体ゴム4が、内筒2の表面のうち接着シートが貼り付けられた部分に接合され、そこで、接合部41が形成されるとともに、内筒2の表面のうち接着シートが貼り付けられなかった部分には接合されず、そこで、非接合部42が形成される。なお、この接着シートとしては、例えば、特許第4681634号に記載されたものを採用してもよい。
加硫工程において接合部41及び非接合部42を形成するさらに他の手法は、つぎのとおりである。まず、加硫工程前における表面加工工程において、内筒2の表面のうち接合部21となる部分に、レーザーによる表面加工を施し、それにより、内筒2の当該部分に、多数の微小溝を形成する。内筒2の表面のうち非接合部22となる部分には、表面加工を施さない。その後、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により液無しブッシュ1’を加硫成形する。この場合、加硫工程中において、本体ゴム4が、内筒2の表面のうち表面加工が施された部分における微小溝に入り込み、アンカー効果によって、当該部分に接合され、そこで、接合部41が形成されるとともに、内筒2の表面のうち表面加工が施されなかった部分には接合されず、そこで、非接合部42が形成される。なお、この表面加工としては、例えば、特開2020-116862号公報、特許第6489908号に記載されたものを採用してもよい。
ただし、接合部41及び非接合部42を形成する手法としては、上記のもの以外のものを用いてもよい。
【0035】
図6(a)は、加硫工程直後における液無しブッシュ1’を概略的に示す軸線方向断面図であり、図6(b)は、図6(a)の状態の後に液無しブッシュ1’が冷めた状態を概略的に示す軸線方向断面図である。図6(a)~図6(b)に示すように、加硫工程の後、液無しブッシュ1は、冷めるに従って、本体ゴム4が徐々に収縮する。その間、本体ゴム4の非接合部42と内筒2の非接合部22との間の隙間Gが拡大し得る。
【0036】
加硫工程の後、かつ、作動液注入工程の前に、絞り工程(図6(c))を行ってもよい。図6(c)は、加硫工程の後に液無しブッシュ1’が冷めた状態(図6(b))の後に絞り工程を行った後の液無しブッシュ1’を概略的に示す軸線方向断面図である。
絞り工程においては、外筒3を径方向内側へ絞ることにより、外筒3を縮径させる。これにより、本体ゴム4が圧縮された状態となり、本体ゴム4の剛性が高くなるので、本体ゴム4の耐久性を向上できる。
絞り工程(図6(c))によって、本体ゴム4の非接合部42と内筒2の非接合部22との間の隙間Gが縮小し得る。
ただし、絞り工程は行わなくてもよい。
【0037】
ブッシュ1’、1においては、図1図4等に示すように、外筒3は、外筒3を径方向に貫通する外筒貫通穴33を有していると、好適である。
この場合、作動液注入工程では、本体ゴム4の非接合部42と内筒2の非接合部22との間の隙間Gが作動液5で膨らませられる間、本体ゴム4のうち外筒貫通穴33に面する部分43が、作動液5によって外筒貫通穴33内へ向かって外周側へと押し出される(図7図10)。これにより、より簡単に隙間Gひいては液室6を膨らませることができ、また、液室6内の液量を増大することが可能となる。
なお、本明細書において、「本体ゴム4のうち外筒貫通穴33に面する部分43」とは、本体ゴム4のうち、径方向において外筒貫通穴33に対向する部分における、全厚分(すなわち、径方向における外周面から内周面までにわたる部分)を指している。
より簡単に作動液5によって隙間Gひいては液室6を膨らませられるようにする観点から、図7図8の例のように、本体ゴム4のうち外筒貫通穴33に面する部分43における内周面の少なくとも一部(好適には、全体)が、非接合部42を構成していると、好適である。この場合、本体ゴム4のうち外筒貫通穴33に面する部分43が、径方向において外筒貫通穴33と非接合部42との間に位置することとなるので、径方向に比較的変位しやすくなり、ひいては、より簡単に隙間Gひいては液室6を膨らませることができ、また、液室6内の液量を増大することが可能となる。また、液室6が、外筒貫通穴33の内周側に形成されやすくなるので、液室6を所期したとおりの位置(外筒貫通穴33の内周側)に形成しやすくなる。隙間Gのうち外筒貫通穴33の内周側に位置しない部分(すなわち、軸線方向及び周方向において外筒貫通穴33が占める領域を除く領域内に位置する部分)は、比較的膨らみにくいので、そこでは実質的に液室6は形成されにくく、ほとんど又は完全に閉じた状態に維持され得る。
同様の観点から、外筒貫通穴33は、図1図4等に示すように、外筒3の軸線方向中心上に位置していると、好適である。
【0038】
ブッシュ1’、1においては、図1図4図16等に示すように、外筒貫通穴33は、周方向の一部のみにわたって延在していると、好適である。
この場合、作動液5を注入するための注入穴Hは、図4図16に示すように、ブッシュ1’、1のうち、周方向において外筒貫通穴33が占める領域を除く領域内に設けられていてもよい。
液室6による振動減衰効果を向上する観点から、図1図4図16等に示す例のように、外筒貫通穴33(ひいては液室6)は、中心軸線O3の周りにおいて、90°以上の角度範囲にわたって延在していると好適であり、180°以上の角度範囲にわたって延在しているとより好適であり、例えば、300°以上の角度範囲にわたって延在しているとより好適である。
【0039】
ブッシュ1’、1においては、図1図4等に示すように、外筒貫通穴33は、一対の広幅穴部331と、狭幅穴部332と、を有するものであってもよい。
一対の広幅穴部331は、周方向において互いから離間されている。図の例において、一対の広幅穴部331は、外筒貫通穴33の周方向両端部に位置している。
狭幅穴部332は、一対の広幅穴部331どうしを連結するとともに、一対の広幅穴部331のそれぞれよりも軸線方向の幅が狭い。
外筒貫通穴33がこのように構成されている場合、作動液注入工程では、一対の主液室61と、一対の主液室61どうしを連通するオリフィス62と、を有する、液室6が形成されることができる(図7図10)。より具体的には、本体ゴム4のうち一対の広幅穴部331に面する部分431と内筒2の非接合部22との間で、一対の主液室61が形成され、本体ゴム4のうち狭幅穴部332に面する部分432と内筒2の非接合部22との間で、オリフィス62が形成される。オリフィス62は、一対の主液室61のそれぞれよりも軸線方向の幅が狭い。
これにより、一対の主液室61とそれらを連通するオリフィス62とを形成することができる。ひいては、オリフィス62内を行き来する作動液5の流動抵抗による振動減衰効果を発揮することができる。また、オリフィス62内の液共振により所定の周波数での動特性を得ることができる。
一対の広幅穴部331(ひいては、一対の主液室61)どうしは、軸線方向の幅が、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。
ただし、外筒貫通穴33の形状は、任意でよく、例えば、外筒貫通穴33は、周方向に沿う全長にわたって軸線方向の幅が一定であってもよい。
【0040】
外筒3が外筒貫通穴33を有する場合、作動液注入工程の後、スペーサ部材嵌め込み工程(図11図12)を行うと、好適である。
図11は、作動液注入工程を行った状態(図9)に対してスペーサ部材嵌め込み工程を行った後の液封ブッシュ1をY軸方向第1側Y1からY軸方向第2側Y2へ向かって径方向に見たときの様子を概略的に示す側面図である。図12は、図11の液封ブッシュ1を、Y軸方向第2側Y2からY軸方向第1側Y1へ向かって径方向に見たときの様子を概略的に示す、側面図である。図11図12の状態での液封ブッシュ1の軸線方向断面図、軸直方向断面図は、図14図16に示すものとほぼ同様になる。
スペーサ部材嵌め込み工程では、外筒3の外筒貫通穴33にスペーサ部材7を嵌め込み、それによって外筒貫通穴33を塞ぐ。これにより、外筒3のうち外筒貫通穴33によって欠けた部分の強度を、スペーサ部材7によって補填することができる。よって、液封ブッシュ1を外部の筒状部材A1(例えば、車両のサスペンション装置のサスペンションアームA(図16)の筒状部材A1)に圧入する際に液封ブッシュ1の外筒3が変形するのを効果的に抑制できる。
図14図16は、スペーサ部材嵌め込み工程を行った後の液封ブッシュ1を外部の筒状部材A1(例えば、車両のサスペンション装置のサスペンションアームA(図16)の筒状部材A1)に圧入した後の状態を示している。図14は、液封ブッシュ1と外部の筒状部材A1とを、中心軸線O3を通るとともにXZ平面に平行な断面により概略的に示す、軸線方向断面図である。図15は、図14の液封ブッシュ1と外部の筒状部材A1とを、中心軸線O3を通るとともにXY平面に平行な断面により示す、軸線方向断面図である。図16は、図14の液封ブッシュ1と外部の筒状部材A1とを、図14のA-A線に沿った断面により示す、軸直方向断面図である。
スペーサ部材7は、外筒3の外筒貫通穴33の形状にほぼ一致する形状及び寸法を有していると、好適である。すなわち、スペーサ部材嵌め込み工程では、外筒貫通穴33のほぼ全体がスペーサ部材7によって埋まると、好適である。
本例において、スペーサ部材7は、図13に示すように、周方向の一部のみにわたって延在しており、略C字型をなしている。また、本例において、スペーサ部材7は、一対の広幅スペーサ部71と、狭幅スペーサ部72と、を有している。一対の広幅スペーサ部71は、スペーサ部材7の周方向両端部に位置している。狭幅スペーサ部72は、一対の広幅スペーサ部71どうしを連結しているとともに、軸線方向の幅が一対の広幅スペーサ部71よりも狭い。一対の広幅スペーサ部71は、外筒貫通穴33の一対の広幅穴部331に嵌め込まれ、狭幅スペーサ部72は、外筒貫通穴33の狭幅穴部332に嵌め込まれるように、構成されている。
スペーサ部材7は、弾性を有する材料で構成されていると好適であり、例えば、金属又は樹脂で構成されていると、好適である。これにより、スペーサ部材嵌め込み工程において、スペーサ部材7をいったん広げた(拡径した)状態で外筒貫通穴33に嵌め込み、嵌め込み後、スペーサ部材7を復元により縮径させることができるので、より簡単にスペーサ部材嵌め込み工程を行うことができる。
ただし、スペーサ部材嵌め込み工程は行わなくてもよい。
【0041】
ブッシュ1’、1においては、図1図2図5等に示すように、内筒2の外周面は、外周側へ向かって突出するバルジ形状をなすバルジ形状部23を有していると、好適である。この場合、本体ゴム4の内周面のうち、内筒2のバルジ形状部23と接触する部分は、バルジ形状部23に適合するように外周側へ窪んだ凹形状をなすこととなる。バルジ形状部23は、環状をなすように全周にわたって延在していると、好適である。
内筒2の外周面がバルジ形状部23を有している場合、本体ゴム4の軸直方向の厚さが、本体ゴム4のうち軸直方向においてバルジ形状部23に対向する部分において、比較的薄くなるので、その分、本体ゴム4が、内筒2の軸直方向の相対変位に対して、より高いバネ剛性を発揮することができる。
内筒2の外周面は、図5に示す例のように、バルジ形状部23と、軸線方向におけるバルジ形状部23の両側に位置するとともにバルジ形状をなしていない、一対の非バルジ形状部24と、を有していてもよい。非バルジ形状部24は、例えば、図5の例のように、軸線方向に沿って直線状(例えば、円筒形状)に構成されていると、好適である。
あるいは、図示は省略するが、内筒2の外周面は、バルジ形状部23のみを有していてもよい。
【0042】
ブッシュ1’、1においては、上述のように内筒2の外周面がバルジ形状部23を有する場合、図1図2図5等に示すように、本体ゴム4の一対の接合部41は、内筒2の外周面のうちバルジ形状部23を除く部分(すなわち、非バルジ形状部24)及び/又は内筒2の軸線方向端面に対して、全周にわたって接合されており、本体ゴム4の非接合部42は、内筒2のバルジ形状部23の一部又は全部に対して接合されていない(すなわち、バルジ形状部23の一部又は全部が非接合部22をなす)と、好適である。
この場合、液封ブッシュ1において、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が、内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22の周りで、よりスムーズに動きやすくなる。よって、こじり方向の変位に対するバネ剛性を、より低減することができる。
【0043】
上述のように内筒2の外周面がバルジ形状部23を有する場合、バルジ形状部23のなすバルジ形状は、外周側へ突出した形状である限り、任意の形状であってよい。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、図1図2図5等に示すように、曲面形状をなす部分を含むと、好適である。この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が、内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22の周りで、よりスムーズに動きやすくなる。バルジ形状部23のなすバルジ形状は、曲面形状のみからなるものでもよい。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、図1図2図5等に示すように、角張りのない形状であると、好適である。この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が、内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22の周りで、よりスムーズに動きやすくなる。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、図1図2図5等に示すように、液封ブッシュ1の軸線方向中心に向かうほど徐々に外周側へ向かう形状であると、好適である。この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が、内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22の周りで、よりスムーズに動きやすくなる。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、例えば、球面形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る液封ブッシュ製造方法によって得られる液封ブッシュは、例えば、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)に用いられると好適であり、例えば、車両のサスペンション装置のリンク機構(サスペンションアーム等)に用いられると好適である。
【符号の説明】
【0045】
1:液封ブッシュ(ブッシュ)、
1’:液無しブッシュ(ブッシュ)、
2:内筒、 21:接合部、 22:非接合部、 23:バルジ形状部、 24:非バルジ形状部、 25:内筒内周部、 26:内筒外周部、
3:外筒、33:外筒貫通穴、 331:広幅穴部、 332:狭幅穴部、
4:本体ゴム、 41:接合部、 42:非接合部、 43:外筒貫通穴に面する部分、 431:広幅穴部に面する部分、 432:狭幅穴部に面する部分、
5:作動液、
6:液室、 61:主液室、 62:オリフィス、
7:スペーサ部材、 71:広幅スペーサ部、 72:狭幅スペーサ部、
H:注入穴、
O2:内筒の中心軸線、 O3:外筒の中心軸線(ブッシュの中心軸線)、
G:隙間、
P:栓、
A:サスペンションアーム、 A1:筒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16