(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151207
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】バタフライ弁
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20241017BHJP
F16K 1/22 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F16K47/02 E
F16K1/22 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064429
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】593031986
【氏名又は名称】株式会社大和鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】人見 宏宗
【テーマコード(参考)】
3H052
3H066
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA12
3H052CC01
3H052EA02
3H066AA02
3H066BA03
(57)【要約】
【課題】キャビテーションの発生を抑制しうるバタフライ弁を提供すること。
【解決手段】バタフライ弁1は、中空部を水が流れる流路4とする筒状の弁箱2と、流路4に弁棒5を中心に回動可能に配置された弁体6とを備える。弁箱2の周壁部3に、流路4に大気が流入するキャビテーション抑制用大気流入管8が、周壁部3をその外周面3a側から流路4側に貫通するとともに大気流入管8の吐出口8cが流路4側に突出して設けられている。大気流入管8の吐出口8cの開口形状が下流方向Dに延びた形状である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を水が流れる流路とする筒状の弁箱と、前記流路に弁棒を中心に回動可能に配置された弁体とを備えたバタフライ弁であって、
前記弁箱の周壁部の内周面に、前記流路に大気が流入するキャビテーション抑制用大気流入管の吐出口が前記流路側に突出して設けられており、
前記大気流入管の前記吐出口の開口形状が下流方向に延びた形状であるバタフライ弁。
【請求項2】
前記大気流入管の前記吐出口が下流側に傾斜した向きに配置されている請求項1記載のバタフライ弁。
【請求項3】
前記大気流入管の前記吐出口は、前記大気流入管の前記吐出口側の管端部がその軸線に対して傾斜して切断されて形成されている請求項2記載のバタフライ弁。
【請求項4】
前記大気流入管は、前記弁体の前記周壁部をその外周面側から前記流路側に前記流路の中心線Pに対して略垂直な方向に貫通している請求項1~3のいずれかに記載のバタフライ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、工水、温泉水、農水等の水に対して使用されるバタフライ弁に関する。
【0002】
ここで、本明細書及び特許請求の範囲では、「下流側」及び「下流方向」とは、それぞれ水の流れ方向における下流側及び下流方向を意味し、「上流側」及び「上流方向」とは、それぞれ水の流れ方向における上流側及び上流方向を意味する。
【0003】
さらに、「ノズル側」とは、弁体が全閉位置から開き方向へ回動する場合、弁棒を境とし下流側へ回動する弁体の半部が存在する側を意味し、「オリフィス側」とは、弁体が全閉位置から開き方向へ回動する場合、弁棒を境とし上流側へ回動する弁体の半部が存在する側を意味する。
【背景技術】
【0004】
一般に給水管等の配管内を流れる水の流量を弁により制御(調節)する際に、弁箱内における弁の開口部の下流側近傍では流体の圧力変化に伴いキャビテーションが発生することがある。キャビテーションが発生すると、衝撃音や振動が生じたり弁や配管に壊食(エロージョン)等の損傷を与えたりするという問題が生じる。
【0005】
各種弁の中でも特にバタフライ弁はキャビテーションが発生し易い。そこでバタフライ弁においてキャビテーションの発生を抑制するため、キャビテーションをもたらす圧力低下領域に大気を流入させる方法が提案されている。具体的には、弁箱の周壁部のノズル側半周部におけるその半周長位置を境としその両側に位置する二つの1/4周部のうち少なくとも一方に、圧力低下領域に大気が流入する複数の大気流入孔が周方向に並んで設けられたバラフライ弁が特開2004-36705号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、バタフライ弁では圧力低下領域は弁体の開度の増減に伴い移動する。そのため、弁体の開度によってはキャビテーションの発生を抑制できないことがあった。
【0008】
本発明は上述した技術背景に鑑みてなされたもので、本発明の目的はキャビテーションの発生を確実に抑制しうるバタフライ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
1) 中空部を水が流れる流路とする筒状の弁箱と、前記流路に弁棒を中心に回動可能に配置された弁体とを備えたバタフライ弁であって、
前記弁箱の周壁部の内周面に、前記流路に大気が流入するキャビテーション抑制用大気流入管の吐出口が前記流路側に突出して設けられており、
前記大気流入管の前記吐出口の開口形状が下流方向に延びた形状であるバタフライ弁。
【0011】
2) 前記大気流入管の前記吐出口が下流側に傾斜した向きに配置されている前項1記載のバタフライ弁。
【0012】
3) 前記大気流入管の前記吐出口は、前記大気流入管の前記吐出口側の管端部がその軸線に対して傾斜して切断されて形成されている前項1又は2記載のバタフライ弁。
【0013】
4) 前記大気流入管は、前記弁体の前記周壁部をその外周面側から前記流路側に前記流路の中心線Pに対して略垂直な方向に貫通している前項1~3のいずれかに記載のバタフライ弁。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以下の効果を奏する。
【0015】
前項1では、キャビテーション抑制用大気流入管の吐出口の開口形状が下流方向に延びた形状であることから、大気流入管の吐出口は、キャビテーションをもたらす圧力低下領域に向けて吐出口から大気を吐出可能な領域が増大している。そのため、圧力低下領域に大気を確実に流入させることができて、キャビテーションの発生を確実に抑制することができる。
【0016】
前項2では、大気流入管の吐出口が下流側に傾斜した向きに配置されていることにより、圧力低下領域に向けて大気流入管の吐出口から大気を更に確実に流入させることができて、キャビテーションの発生を更に確実に抑制することができる。
【0017】
前項3では、大気流入管の吐出口が、大気流入管の吐出口側の管端部がその軸線に対して傾斜して切断されて形成されていることにより、大気流入管の吐出口を容易に傾斜状に形成することがきる。
【0018】
前項4では、大気流入管が弁体の周壁部を流路の中心線に対して略垂直な方向に貫通しているので、大気流入管が弁箱の周壁部を流路の中心線に対して斜め方向に貫通している場合に比べて周壁部に大気流入管を貫通状に設けるための穿孔加工等の加工作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るバタフライ弁を給水管に介設した状態で示す概略正面図である。
【
図4】
図4は同バタフライ弁の弁箱の周壁部におけるオリフィス側半周部の内周面を下流側から見た概略斜視図である。
【
図5】
図5は同バタフライ弁の弁箱の周壁部におけるノズル側半周部の内周面を下流側から見た概略斜視図である。
【
図8】
図8は大気流入管の吐出口側の管端部を切断する前の状態の斜視図である。
【
図9】
図9は同大気流入管の吐出口の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るバタフライ弁1は、例えば、配水槽、減圧水槽などの貯水槽(図示せず)への給水量を制御するためのものであり、例えば貯水槽への給水管20に介設されている。同図中の矢印「D」は給水管20内を流れる水の流れ方向を示している。
【0022】
図2に示すように、バタフライ弁1は、中空部を水が流れる流路4とする略円筒状の弁箱2と、流路4を横断状に貫通して設けられた弁棒5と、流路4に配置された略円板状の弁体6とを備えている。弁体6は弁棒5を中心に回動可能になるように弁棒5に固定状態に取り付けられている。また、弁箱2の周壁部3の内周面3bにおける上流側の端縁部には略円環状の止水用シート9が周方向の全周に亘って設けられている。
【0023】
弁箱2及び弁体6の材料は限定されるものではなく、その材料として鋳鉄、鋳鋼、銅合金、アルミニウム合金などが用いられる。
【0024】
このバタフライ弁1はいわゆる二重偏心形のものである。すなわち、バタフライ弁1の弁棒5は弁体6(詳述すると弁体6におけるシート9とのシール位置T)に対して下流側に偏心し且つ流路4の中心線Pに対してオリフィス側に偏心して配置されている。なお同図において、符号「s1」は弁体6のシール位置Tに対する弁棒5の偏心量を示し、符号「s2」は流路4の中心線Pに対する弁棒5の偏心量を示している。
【0025】
バタフライ弁1が二重偏心形のものであるから、同心形のバタフライ弁や弁棒が弁体に対して下流側に偏心した一偏心形バタフライ弁に比べて、低い締め切りトルクと高いシール性を有しているし、シート9の長寿命化を図ることができる。
【0026】
給水管20は、バタフライ弁1に対して上流側及び下流側にそれぞれ配置される流入管21及び流出管22を備えている。そして、流入管21と流出管22との間にバタフライ弁1を挟んだ状態で流入管21のフランジ部21aと流出管22のフランジ部22aとがボルト-ナット(図示せず)により締結されており、これにより流入管21及び流出管22がそれぞれバタフライ弁1の流路4の入口及び出口に接続されている。さらに、流出管22の下流側の端部は貯水槽に向かって延びており、その流出口が貯水槽内に配置されている。
【0027】
また
図3に示すように、バタフライ弁1の弁棒5の一端部は弁箱2の外側に突出しており、当該一端部には図示しない弁体開閉操作用部材(例:操作ハンドル、操作ギヤ)が接続される。
【0028】
図2及び3に示すように、弁箱2の周壁部3には、流路4に大気が流入する複数のキャビテーション抑制用大気流入孔7が周壁部3を貫通して穿設されている。周壁部3において、各大気流入孔7の貫通方向は流路4の中心線Pに対して略垂直な方向である。
【0029】
大気流入孔7は、流路4におけるキャビテーションをもたらす圧力低下領域に周壁部3の外側に存在する大気が流入することによりキャビテーションの発生を抑制するためのものである。大気流入孔7の横断面形状は円形状であり、その直径は大気流入孔7の長さ方向において一定である。大気流入孔7の直径は限定されるものではなく、例えば、流路4の口径に対して1/300~1/30倍の範囲に設定される。
【0030】
本実施形態では、各大気流入孔7には、流路4に大気が流入するキャビテーション抑制用大気流入管8が、弁箱2の周壁部3をその外周面3a側から流路4側に流路4の中心線Pに対して略垂直な方向に貫通するとともに大気流入管8の吐出口8cが周壁部3の内周面3bから流路4側に突出した状態に接続されている。この接続状態では、大気流入管8の吐出口8cは周壁部3の内周面3bに流路4側に突出して設けられている。具体的には、このように接続された状態になるように各大気流入孔7に大気流入管8が水密状態に挿入配置されている。
【0031】
大気流入管8の横断面形状は円形状であり、本実施形態では大気流入管8(詳述するとその中空部)が大気流入孔7を構成している。
【0032】
大気流入管8の材料は限定されるものではなく、その材料として例えば弁箱2の材料と同じ材料が用いられてもよいし異なる材料が用いられてもよく、具体的には大気流入管8として金属管(例:鉄管、鋼管、銅合金管、アルミニウム合金管)、樹脂パイプ(例:フッ素樹脂パイプ)などが用いられる。樹脂パイプは耐圧性を有するもの(例:耐圧樹脂パイプ)であることが好ましい。
【0033】
図1に示すように、大気流入管8の吸入口側の端部は弁箱2の外側に延びており、この吸入口に逆止め弁10が大気の吸入方向への流れを許容する向きに設けられている。だだし本発明では、逆止め弁10は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0034】
次に、弁箱2の周壁部3における大気流入孔7(大気流入管8)の配置位置について以下に詳しく説明する。
【0035】
図1~3に示すように、弁箱2の周壁部3は略半円筒状のノズル側半周部3Aと略半円筒状のオリフィス側半周部3Bとから構成されている。
図3に示すように、弁棒5は水平状に配置されており、ノズル側半周部3Aは弁棒5の下側にオリフィス側半周部3Bは弁棒5の上側にそれぞれ配置されている。なお、
図3中の符号「Ha」はノズル側半周部3Aの半周長位置を示し、符号「Hb」はオリフィス側半周部3Bの半周長位置を示している。
【0036】
また、弁体6は略半円板状のノズル側半部6Aと略半円板状のオリフィス側半部6Bとから構成されている。ノズル側半部6Aは弁棒5の下側にオリフィス側半部6Bは弁棒5の上側にそれぞれ配置されている。
【0037】
図3、5及び7に示すように、弁箱2の周壁部3のノズル側半周部3Aには3つ以上の大気流入孔7(大気流入管8)が設けられており、具体的には大気流入孔7の数は6つである。また
図3、4及び6に示すように、オリフィス側半周部3Bには3つ以上の大気流入孔7(大気流入管8)が設けられており、具体的には大気流入孔7の数は3つである。
【0038】
このように、オリフィス側半周部3Bに設けられる大気流入孔7の数はノズル側半周部3Aに設けられる大気流入孔7の数よりも少なくなっており、これにより、大気流入孔7によるキャビテーションの発生抑制効果を維持しつつ大気流入孔7を周壁部3に設けるための穿孔加工等の加工作業を極力減らすことができる。そのためバタフライ弁1の製造コストの引下げを図りうる。
【0039】
なお本発明ではオリフィス側大気流入孔7B(オリフィス側大気流入管8B)の数は3つ以上であることが好ましいがこれに限定されるものではなく、1つ以上でもよい。オリフィス側大気流入孔7B(オリフィス側大気流入管8B)の数が例えば1つである場合、この大気流入孔7B(大気流入管8B)は弁箱2の周壁部3のオリフィス側半周部3Bの半周長位置Hbに設けられることが好ましい。
【0040】
ここで、説明の便宜上及び大気流入孔7(大気流入管8)の配置位置を理解し易くするため、
図4及び5では弁体6及びシート9は図示省略されおり、
図6及び7では大気流入管8は図示省略されている。
【0041】
また以下では、説明の便宜上、ノズル側半周部3Aに設けられた大気流入孔7(大気流入管8)をノズル側大気流入孔7A(ノズル側大気流入管8A)とし、オリフィス側半周部3Bに設けられた大気流入孔7(大気流入管8)をオリフィス側大気流入孔7B(オリフィス側大気流入管8B)とする。さらに以下では、文中に特に明示する場合を除き、「大気流入孔7」の語は「大気流入管8」を含む意味で用いられる。
【0042】
本実施形態のような二重偏心形のバタフライ弁1では、ノズル側半周部3A及びオリフィス側半周部3Bにおいて、キャビテーションをもたらす圧力低下領域の位置は弁体6の開度(弁開度)の増減に伴い移動する。このことを
図2を参照して以下に説明する。
【0043】
同図において、実線の弁体6は全閉位置に配置されており、二点鎖線の弁体6は全閉位置から僅かに開き方向に回動した位置に配置されており、三点鎖線の弁体6は更に開き方向に回動した位置に配置されている。
【0044】
実線で示した全閉位置の弁体6が全閉位置から僅かに開き方向に回動した状態、即ち二線鎖線の弁体6の位置では、キャビテーションをもたらす圧力低下領域は、弁体6のノズル側半部6Aの先端部(即ちノズル側半周部3Aの半周長位置Haに対応する位置、
図3参照)の下流側近傍に形成される。そして、弁体6の開度が増大するのに伴い、この圧力低下領域は、弁体6のノズル側半部6Aの先端部の下流側近傍から互いに反対向きの周方向に対してそれぞれ下流側に斜め方向にずれていく。
【0045】
そこで、
図3、5及び7に示すように、ノズル側半周部3Aにおいて、ノズル側大気流入孔7Aは、ノズル側半周部3Aの半周長位置Haと、当該半周長位置Haから互いに反対向きの周方向に対してそれぞれ下流側に斜め方向に並んだ位置とに配設されている。このようにノズル側大気流入孔7Aがノズル側半周部3Aに配設されることにより、ノズル側半周部3Aにおいて弁体6の開度の増減に伴い移動する圧力低下領域に大気を確実に流入させることができ、そのため弁体6のノズル側半部6Aの外周部の下流側近傍に発生するキャビテーションを確実に抑制できる。
【0046】
さらに、
図7に示すように、ノズル側半周部3Aにおけるノズル側大気流入孔7Aの配設位置は全て下流方向にずれており、換言すると、ノズル側半周部3Aにおけるノズル側大気流入孔7Aの下流方向の配置位置が全て異なる位置になるようにノズル側大気流入孔7Aがノズル側半周部3Aに配設されている。これにより、ノズル側大気流入孔7Aをノズル側半周部3Aに設けるための穿設加工等の加工作業を確実に減らすことができるし、弁体6のノズル側半部6Aの外周部の下流側近傍に発生するキャビテーションを更に確実に抑制できる。
【0047】
また
図3、4及び6に示すように、オリフィス側半周部3Bにおいて、オリフィス側大気流入孔7Bは、オリフィス側半周部3Bの半周長位置Hbと、当該半周長位置Hbから互いに反対向きの周方向に対してそれぞれ下流側に斜め方向に並んだ位置とに配設されている。このようにオリフィス側大気流入孔7Bがオリフィス側半周部3Bに配設されることにより、オリフィス側半周部3Bにおいて弁体6の開度の増減に伴い移動する圧力低下領域に大気を確実に流入させることができ、そのため弁体6のオリフィス側半部6Bの外周部の下流側近傍に発生するキャビテーションを確実に抑制できる。
【0048】
さらに、
図6に示すように、オリフィス側半周部3Bにおけるオリフィス側大気流入孔7Bの配設位置は全て下流方向にずれており、換言すると、オリフィス側半周部3Bにおけるオリフィス側大気流入孔7Bの下流方向の配置位置が全て異なる位置になるようにオリフィス側大気流入孔7Bがオリフィス側半周部3Bに配設されている。これにより、オリフィス側大気流入孔7Bをオリフィス側半周部3Bに設けるための穿設加工等の加工作業を確実に減らすことができるし、弁体6のオリフィス側半部6Bの外周部の下流側近傍に発生するキャビテーションを更に確実に抑制できる。
【0049】
次に、大気流入管8の構成について以下に説明する。
【0050】
図2に示すように、各大気流入管8は上述したように流路4の中心線Pに対して略垂直な方向に配置されている。
【0051】
さらに、各大気流入管8の吐出口8cの開口形状は当該吐出口8cに垂直な方向から見て下流方向Dに延びた形状であり、具体的には下流方向Dに延びた楕円形状である。詳述すると、大気流入管8の吐出口8cは流路4の中心線Pに対して垂直な向きではなく下流側に傾斜した向きに配置されている。
【0052】
大気流入管8の吐出口8cは次のようにして形成されたものである。
【0053】
まず、
図8に示すような横断面円形状の大気流入管8を準備する。この大気流入管8の内径及び外径はその軸線Q方向において一定であり、また大気流入管8の吐出口側の管端部8dの端面は軸線Qに対して略垂直に形成されている。次いで、この大気流入管8の吐出口側の管端部8dを切断予定線(二点鎖線で示す)Cに沿って軸線Qに対して傾斜角θで傾斜して切断する。これにより、
図9に示すように、大気流入管8の吐出口8cが軸線Qに対して傾斜して形成されて、吐出口8cの開口形状が円形状から楕円形状になり、吐出口8cの開口面積が管端部8dを切断する前よりも増大する。
【0054】
このように大気流入管8の吐出口側の管端部8dを切断することにより、大気流入管8の吐出口8cを容易に傾斜状に形成することがきる。
【0055】
次いで、大気流入管8を、その吐出口8cが下流側に傾斜する向きになるように弁箱2の周壁部3の外周面3a側から大気流入孔7に挿入し、大気流入孔7に対して水密状態に且つ抜出可能に固定する。これにより大気流入管8が大気流入孔7に接続される。
【0056】
図2に示すように、弁体6が全閉位置から開き方向に回動する際には、弁体6のノズル側半部6Aの先端部はノズル側大気流入管8Aの吐出口8cの先端近傍を下流方向Dに通過する。この際に弁体6のノズル側半部6Aの先端部の下流側近傍に生じる圧力低下(即ちベンチュリー効果による負圧)によってノズル側大気流入管8Aの吐出口8cから大気が吸い込まれて圧力低下領域に吐出される。
【0057】
ここで、ノズル側大気流入管8Aの吐出口8cの開口形状が下流方向Dに延びた形状であることから、ノズル側大気流入管8Aの吐出口8cは、圧力低下領域に向けて吐出口8cから大気を吐出可能な領域が増大している。そのため、圧力低下領域に大気を確実に流入させることができて、キャビテーションの発生を確実に抑制することができる。
【0058】
さらに、ノズル側大気流入管8Aの吐出口8cが下流側に傾斜した向きに配置されているので、圧力低下領域に向けてノズル側大気流入管8Aの吐出口8cから大気を更に確実に流入させることができる。吐出口8cの傾斜角θ(
図9参照)は限定されるものではないが、好ましくはθが20°~70°の範囲であることがよい。
【0059】
オリフィス側大気流入管8Bの吐出口8cについても、ノズル側大気流入管8Aの吐出口8cと同じような作用を奏する。
【0060】
本実施形態のバタフライ弁1によれば、大気流入孔7(大気流入管8)が弁箱2の周壁部3を流路4の中心線Pに対して略垂直な方向に貫通しているので、大気流入孔7が弁箱2の周壁部3を流路4の中心線Pに対して斜め方向に貫通している場合に比べて周壁部3に大気流入孔7を設けるための穿孔加工等の加工作業を容易に行うことができる。
【0061】
また、大気流入管8の外径がその軸線Q方向において一定であるから、大気流入管8を大気流入孔7に弁箱2の周壁部3の外周面3a側から容易に挿入配置することができるし、またバタフライ弁1をメンテナンスする際にも大気流入管8を大気流入孔7から容易に抜出することができてメンテナンス作業を容易に行える。
【0062】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態ではバタフライ弁は二重偏心形のものであるが、本発明ではバタフライ弁は二重偏心形のものであることに限定されるものではなく、その他に同心形、一偏心形、三重偏心形、四重偏心形などであってもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態ではキャビテーション抑制用大気流入管8が弁箱2の周壁部3のノズル側半周部3Aとオリフィス側半周部3Bとにそれぞれ設けられているが、本発明では大気流入管8はノズル側半周部3Aとオリフィス側半周部3Bのうち少なくとも一方に設けられていればよい。両方の半周部3A、3Bのうち一方だけに大気流入管8が設けられる場合は、大気流入管8はノズル側半周部3Aに設けられることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、上水、下水、工水、農水、温泉水、海水等の水に対して使用されるバタフライ弁に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1:バタフライ弁 2:弁箱
3:周壁部 3A:ノズル側半周部
3B:オリフィス側半周部 4:流路
8:大気流入管 8A:ノズル側大気流入管
8B:オリフィス側大気流入管 8c:吐出口
8d:管端部 D:水の流れの下流方向