(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151209
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】タイヤ負荷荷重推定装置及びタイヤ負荷荷重推定方法
(51)【国際特許分類】
G01G 19/02 20060101AFI20241017BHJP
G01G 9/00 20060101ALI20241017BHJP
G01L 17/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G01G19/02 Z
G01G9/00
G01L17/00 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064432
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 光吉
(72)【発明者】
【氏名】沖田 誠悟
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA12
2F055BB20
2F055CC60
2F055EE31
2F055FF49
2F055GG49
(57)【要約】
【課題】タイヤの負荷荷重を高精度に推定可能なタイヤ負荷荷重推定装置及びタイヤ負荷荷重推定方法が提供される。
【解決手段】タイヤ負荷荷重推定装置(10)は、車両(20)に装着されたタイヤの画像データを取得する画像データ取得部(131)と、タイヤの区分を示す情報を取得するタイヤ区分情報取得部(132)と、タイヤの内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得するタイヤ内圧情報取得部(133)と、タイヤの区分に応じた、タイヤの画像と変形量との関係を示す第1のモデルを用いて、画像データに基づいてタイヤの変形量を判定する変形量判定部(135)と、タイヤの区分に応じた、タイヤの変形量と内圧と負荷荷重との関係を示す第2のモデルを用いて、判定されたタイヤの変形量及びタイヤ内圧情報に基づいて、タイヤの負荷荷重を推定する荷重推定部(136)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤの画像データを取得する画像データ取得部と、
前記タイヤの区分を示す情報を取得するタイヤ区分情報取得部と、
前記タイヤの内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得するタイヤ内圧情報取得部と、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの画像と変形量との関係を示す第1のモデルを用いて、前記画像データに基づいて前記タイヤの変形量を判定する変形量判定部と、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの変形量と内圧と負荷荷重との関係を示す第2のモデルを用いて、判定された前記タイヤの変形量及び前記タイヤ内圧情報に基づいて、前記タイヤの負荷荷重を推定する荷重推定部と、を備える、タイヤ負荷荷重推定装置。
【請求項2】
前記第2のモデルは、前記タイヤについて複数の内圧及び複数の負荷荷重を組み合わせた条件で変形量を測定する試験の試験データに基づいて生成される、請求項1に記載のタイヤ負荷荷重推定装置。
【請求項3】
少なくとも装着される前記タイヤの数を含む前記車両の情報である車両情報を取得する車両情報取得部と、
推定された負荷荷重及び前記車両情報に基づいて、前記車両の総重量又は積載量を推定する重量推定部と、を備える、請求項1又は2に記載のタイヤ負荷荷重推定装置。
【請求項4】
推定された前記車両の総重量又は積載量が所定値を超える場合に通知を行う通知部を備える、請求項3に記載のタイヤ負荷荷重推定装置。
【請求項5】
前記画像データ取得部は、所定の負荷荷重を有する前記タイヤを撮影した前記画像データである基準画像データを取得し、
前記変形量判定部は、前記タイヤの区分に応じた前記第1のモデルを用いて、前記基準画像データに基づいて前記タイヤの変形量を判定し、
前記タイヤ内圧情報取得部は、前記タイヤの区分に応じた前記第2のモデルを用いて、前記基準画像データに基づく前記タイヤの変形量及び前記所定の負荷荷重に基づいて、前記タイヤの内圧を算出する、請求項1又は2に記載のタイヤ負荷荷重推定装置。
【請求項6】
車両に装着されたタイヤの画像データを取得することと、
前記タイヤの区分を示す情報を取得することと、
前記タイヤの内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得することと、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの画像と変形量との関係を示す第1のモデルを用いて、前記画像データに基づいて前記タイヤの変形量を判定することと、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの変形量と内圧と負荷荷重との関係を示す第2のモデルを用いて、判定された前記タイヤの変形量及び前記タイヤ内圧情報に基づいて、前記タイヤの負荷荷重を推定することと、を含む、タイヤ負荷荷重推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ負荷荷重推定装置及びタイヤ負荷荷重推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像解析によって車両の積載量を推定する技術が開発されている。例えば特許文献1は、撮影されたタイヤ画像に基づき、タイヤの変形量から車両の過積載を判定する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、荷重が大きくなるほど変形判定量が大きくなることから、変形判定量が判定基準値を超過することで過積載を判定する。そのため、特許文献1の技術は正確な積載量を推定するものでない。ここで、撮影されたタイヤ画像に基づき、高精度に積載量が推定できればタイヤの状態を把握でき、タイヤの管理に役立てることができる。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤの負荷荷重を高精度に推定可能なタイヤ負荷荷重推定装置及びタイヤ負荷荷重推定方法を提供することにある。ここで、タイヤの負荷荷重とは、タイヤに負荷をかける荷重である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定装置は、
車両に装着されたタイヤの画像データを取得する画像データ取得部と、
前記タイヤの区分を示す情報を取得するタイヤ区分情報取得部と、
前記タイヤの内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得するタイヤ内圧情報取得部と、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの画像と変形量との関係を示す第1のモデルを用いて、前記画像データに基づいて前記タイヤの変形量を判定する変形量判定部と、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの変形量と内圧と負荷荷重との関係を示す第2のモデルを用いて、判定された前記タイヤの変形量及び前記タイヤ内圧情報に基づいて、前記タイヤの負荷荷重を推定する荷重推定部と、を備える。
この構成により、タイヤの区分に応じた、タイヤの変形量と内圧とに基づくタイヤの負荷荷重の高精度な推定が可能になる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記第2のモデルは、前記タイヤについて複数の内圧及び複数の負荷荷重を組み合わせた条件で変形量を測定する試験の試験データに基づいて生成される。
この構成により、第2のモデルは、タイヤの内圧に変化があっても、正しく変形量と負荷荷重との関係を示すことができる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
少なくとも装着される前記タイヤの数を含む前記車両の情報である車両情報を取得する車両情報取得部と、
推定された負荷荷重及び前記車両情報に基づいて、前記車両の総重量又は積載量を推定する重量推定部と、を備える。
この構成により、車両情報を用いて、正確に車両の総重量又は積載量を推定することができる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(3)において、
推定された前記車両の総重量又は積載量が所定値を超える場合に通知を行う通知部を備える。
この構成により、例えば運転者又は車両の管理者に、車両に積載した荷物を減らすなどの適切な対応を取らせることができる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記画像データ取得部は、所定の負荷荷重を有する前記タイヤを撮影した前記画像データである基準画像データを取得し、
前記変形量判定部は、前記タイヤの区分に応じた前記第1のモデルを用いて、前記基準画像データに基づいて前記タイヤの変形量を判定し、
前記タイヤ内圧情報取得部は、前記タイヤの区分に応じた前記第2のモデルを用いて、前記基準画像データに基づく前記タイヤの変形量及び前記所定の負荷荷重に基づいて、前記タイヤの内圧を算出する。
この構成により、タイヤの内圧を計測する装置からの情報が得られない場合でも、精度良く内圧を算出することができる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定方法は、
車両に装着されたタイヤの画像データを取得することと、
前記タイヤの区分を示す情報を取得することと、
前記タイヤの内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得することと、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの画像と変形量との関係を示す第1のモデルを用いて、前記画像データに基づいて前記タイヤの変形量を判定することと、
前記タイヤの区分に応じた、前記タイヤの変形量と内圧と負荷荷重との関係を示す第2のモデルを用いて、判定された前記タイヤの変形量及び前記タイヤ内圧情報に基づいて、前記タイヤの負荷荷重を推定することと、を含む。
この構成により、タイヤの区分に応じた、タイヤの変形量と内圧とに基づくタイヤの負荷荷重の高精度な推定が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、タイヤの負荷荷重を高精度に推定可能なタイヤ負荷荷重推定装置及びタイヤ負荷荷重推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定装置を含むタイヤ負荷荷重推定システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤ負荷荷重推定システムの構成例を示す別の図である。
【
図3】
図3は、第1のモデルについて説明するための図である。
【
図4】
図4は、第2のモデルについて説明するための図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定装置及びタイヤ負荷荷重推定方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0015】
図1及び
図2は、本実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定装置10を含むタイヤ負荷荷重推定システムの構成例を示す図である。
図1はタイヤ負荷荷重推定装置10の内部構成例を含むブロック図である。
図2はタイヤ負荷荷重推定システムの全体構成を示す。
【0016】
タイヤ負荷荷重推定装置10は、車両20に装着されるタイヤ30の負荷荷重を推定する装置である。タイヤ30の負荷荷重とは、タイヤ30に負荷をかける荷重である。負荷荷重がかかるとタイヤ30は変形する。本実施形態において、タイヤ30の負荷荷重とは、特に記載がない限り1本のタイヤ30にかかる負荷荷重を意味する。車両20に装着されるタイヤ30の本数と1本当たりの負荷荷重から、例えば車両20の総重量が算出可能である。タイヤ負荷荷重推定装置10は、さらに車両20の総重量又は積載量が上限である所定値を超える場合に警告などの通知を行うことができる。本実施形態において、通知先は車両20の運行を管理する運行管理装置60であるが、これに限定されない。通知先は、例えば車両20の運転者が所有するスマートフォンなどの携帯端末機器を含んでよい。
【0017】
ここで、タイヤ負荷荷重推定装置10を含むタイヤ負荷荷重推定システムは、複数車両(車両20及び他車)を管理する。車両20は、このような複数車両の1つである。
【0018】
タイヤ負荷荷重推定装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、画像データ取得部131と、タイヤ区分情報取得部132と、タイヤ内圧情報取得部133と、変形量判定部135と、荷重推定部136と、を備える。また、制御部13は、車両情報取得部134と、重量推定部137と、を備えてよい。また、制御部13は、通知部138を備えてよい。タイヤ負荷荷重推定装置10は、ハードウェア構成として、例えばサーバのようなコンピュータであってよいし、ラップトップ又はタブレットのような小型のコンピュータであってよい。タイヤ負荷荷重推定装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0019】
タイヤ負荷荷重推定装置10は、ネットワーク40で接続される運行管理装置60とともに、タイヤ負荷荷重推定システムを構成してよい。ネットワーク40は、例えばインターネットである。また、ネットワーク40は、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。タイヤ負荷荷重推定システムは、さらにタイヤ30を撮影して画像データを出力する撮像装置を備えて構成されてよい。
【0020】
運行管理装置60は、車両20を含む複数車両の運行状態を管理する装置である。車両20は例えばトラックであってよいが、特定の種類に限定されない。本実施形態において、運行管理装置60によって管理される複数車両(車両20を含む)は、運送に用いられるトラックであるとする。車両20は、2本の車軸を有する2軸車に限定されず、例えば3軸車、4軸車又はさらに多くの車軸を有する多軸車であってよい。また、車両20は、複輪を有するものであってよい。また、本実施形態において、運行状態は荷物の積載量が適切であることを含む。
【0021】
車両20は、ネットワーク40に接続してデータの送受信が可能な車載装置を備えてよい。本実施形態において、車両20はネットワーク40に接続可能な車載通信装置を備える。また、車両20は、装着しているタイヤ30の状態に関する情報である装着タイヤ情報を検出する検出装置70を備える。タイヤ負荷荷重推定装置10は、例えば車載通信装置及びネットワーク40を介して、検出装置70によって検出される装着タイヤ情報を取得できる。
【0022】
検出装置70はセンサを備える装置又はシステムであって装着タイヤ情報を生成する。検出装置70は、1つであってよいし、複数であってよい。本実施形態において、検出装置70は、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)を含む。検出装置70は、タイヤ空気圧監視システム以外の装置又はシステムを含んでよい。ここで、検出装置70に含まれる装置又はシステムは公知の構成であってよい。
【0023】
タイヤ空気圧監視システムは、車両20に取付けられたタイヤ30の内圧を監視する。タイヤ空気圧監視システムは、例えばタイヤ30の内部に設置されたセンサと、センサの検出値に基づいて空気圧(タイヤ30の内圧)を算出し、出力するプロセッサと、センサの検出値などを記憶するメモリと、を備えて構成されてよい。センサは圧力センサを含んでよい。本実施形態において、タイヤ空気圧監視システムは、装着タイヤ情報として、車両20に取付けられたタイヤ30の内圧の情報を、車載通信装置を介してタイヤ負荷荷重推定装置10に出力する。ただし、タイヤ空気圧監視システムは、タイヤ30の内圧の情報を、車載通信装置を介することなく、タイヤ負荷荷重推定装置10に直接的に出力する構成であってよい。
【0024】
また、
図2に示すように、タイヤ負荷荷重推定装置10はネットワーク40を介して、車両20に装着されたタイヤ30の画像データを取得することができる。タイヤ30の画像データは、撮像装置がタイヤ30を撮影することによって生成される。撮像装置は、例えば車両20に荷物を積載する場所に設置されたカメラであってよい。また、撮像装置は車両20の管理者又は運転者が所有するスマートフォンなどの携帯端末機器のカメラであってよい。
【0025】
以下、タイヤ負荷荷重推定装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば有線又は無線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0026】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ又は光メモリなどであるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばタイヤ負荷荷重推定装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してタイヤ負荷荷重推定装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0027】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の計算において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の計算の結果及び中間データを記憶してよい。
【0028】
本実施形態において、記憶部12は、変形量判定部135によるタイヤ30の変形量の判定で用いられる第1のモデルを記憶する。また、本実施形態において、記憶部12は、荷重推定部136によるタイヤ30の負荷荷重の推定で用いられる第2のモデルを記憶する。また、記憶部12は、車両20から取得されたタイヤ内圧情報、運行管理装置60から取得されたタイヤ30の区分を示す情報及び車両20の情報である車両情報を記憶してよい。
【0029】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、タイヤ負荷荷重推定装置10の全体の動作を制御する。
【0030】
ここで、タイヤ負荷荷重推定装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。タイヤ負荷荷重推定装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、制御部13を画像データ取得部131、タイヤ区分情報取得部132、タイヤ内圧情報取得部133、車両情報取得部134、変形量判定部135、荷重推定部136、重量推定部137及び通知部138として機能させる。
【0031】
画像データ取得部131は、車両20に装着されたタイヤ30の画像データを取得する。タイヤ30の画像データは、タイヤ30が撮影された画像のデータである。タイヤ30の画像は、タイヤ30の側面が撮影された画像であってよいし、タイヤ30の正面(接地面側)が撮影された画像であってよい。
【0032】
タイヤ区分情報取得部132は、タイヤ30の区分を示す情報であるタイヤ区分情報を取得する。タイヤ30の区分は、例えばタイヤサイズ、ロードインデックス、商品名などによる区分を含むが、タイヤ30の負荷に対する変形の特性を分類するものであればよく、これらに限定されない。例えば同じ1つの区分に属するタイヤ30は、同じ負荷荷重に対して、同じように変形する。
【0033】
タイヤ内圧情報取得部133は、タイヤ30の内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得する。本実施形態において、タイヤ内圧情報はタイヤ空気圧監視システムによって生成されて、タイヤ内圧情報取得部133が取得する。別の例として、タイヤ内圧情報取得部133は、タイヤ30の内圧を求めるための情報を取得して、タイヤ30の内圧を推定(算出)することによって、タイヤ内圧情報を取得してよい。
【0034】
車両情報取得部134は、少なくとも車両20に装着されるタイヤ30の数を含む車両20の情報である車両情報を取得する。また、車両情報は、車体重量(車両20自体の重量)、車軸のそれぞれの装着タイヤ数又は重量などの情報を含んでよい。
【0035】
変形量判定部135は、タイヤ30の区分に応じた第1のモデルを用いて、画像データに基づいてタイヤ30の変形量を判定する。第1のモデルは、タイヤ30の画像と変形量との関係を示す。変形量判定部135は、タイヤ30の区分毎に用意された複数の第1のモデルから、タイヤ区分情報に基づいて1つを選択する。第1のモデルは、例えば画像データを入力すると、タイヤ30の変形量を出力するモデルであってよい。タイヤ30の変形量は、例えば負荷荷重のないタイヤ30の基準形状からのたわみ量であってよい。たわみ量は、タイヤ30の縦方向(上下方向)についての縦たわみ量及びタイヤ30の幅方向(車両20進行方向で見た場合の左右方向)についての幅たわみ量を含むが、両方又はどちらか一方であってよい。変形量判定部135は、例えば第1のモデルに、対象のタイヤ30を撮影した画像データを入力し、出力されたたわみ量をタイヤ30の変形量と判定する。
【0036】
図3は第1のモデルについて説明するための図である。第1のモデルは、変形量判定部135がタイヤ30の変形量を判定する処理を実行する前に、例えばタイヤ負荷荷重推定装置10又は別のコンピュータによって生成されて、記憶部12に記憶される。本実施形態において、第1のモデルは、たわみ量が測定されて既知であるタイヤ30の画像データを学習用データ(教師データ)として用いる機械学習によって生成される。例えば
図3の上の図のように、タイヤ30に負荷荷重を与えた状態で縦たわみ量が測定されて、その状態のタイヤ30の側面が撮影されて画像データに含められる。また、例えば
図3の下の図のように、タイヤ30に負荷荷重を与えた状態で幅たわみ量が測定されて、その状態のタイヤ30の正面が撮影されて画像データに含められる。画像データに測定されたたわみ量が紐づけられて(ラベルとして付されて)、学習用データとして用いられる。つまり、本実施形態において、第1のモデルは、画像データを入力すると、タイヤ30の変形量を出力する機械学習モデル(学習済みモデル)である。機械学習の手法は、例えば畳み込みニューラルネットワーク、ランダムフォレストなどが用いられてよいが、特定の手法に限定されない。
【0037】
荷重推定部136は、タイヤ30の区分に応じた第2のモデルを用いて、変形量判定部135によって判定されたタイヤ30の変形量及びタイヤ内圧情報に基づいて、タイヤ30の負荷荷重を推定する。第2のモデルは、タイヤ30の変形量と内圧と負荷荷重との関係を示す。荷重推定部136は、タイヤ30の区分毎に用意された複数の第2のモデルから、タイヤ区分情報に基づいて1つを選択する。第2のモデルは、例えばタイヤ30の変形量に対する負荷荷重を表す、内圧毎の関数(特性曲線)の集合で構成されてよい。
図4は第2のモデルについて説明するための図である。例えば荷重推定部136は、タイヤ30の内圧が500kPaであって、変形量が「a」である場合に、
図4の関数を用いて、タイヤ30の負荷荷重が「La」であると推定する。荷重推定部136では、タイヤ30の区分に応じた、タイヤ30の変形量と内圧とに基づくタイヤ30の負荷荷重の高精度な推定が可能である。ここで、第2のモデルは、タイヤ30の変形量と内圧と負荷荷重との関係を示すものであれば、関数に限定されない。また、第2のモデルが関数(特性曲線)の集合で構成される場合に、直接的に特性曲線が得られていない内圧について、近い値の特性曲線を用いる補間が行われてよい。
図4の例において、タイヤ30の内圧が300kPa~450kPaの間の値である場合に、300kPaの関数(Fa)と450kPaの関数(Fb)とを用いて、α×Fa+(1-α)×Fbで示される関数が生成されてよい。ここでαは、タイヤ30の内圧に応じて定められる0~1の間の係数である。
【0038】
第2のモデルは、荷重推定部136がタイヤ30の負荷荷重を推定する処理を実行する前に、例えばタイヤ負荷荷重推定装置10又は別のコンピュータによって生成されて、記憶部12に記憶される。本実施形態において、第2のモデルは、タイヤ30の変形量に対する負荷荷重を表す、内圧毎の関数(特性曲線)の集合で構成される。第2のモデルは、タイヤ30について複数の内圧及び複数の負荷荷重を組み合わせた条件で変形量を測定する試験の試験データに基づいて生成されてよい。第2のモデルがこのような試験データに基づいて生成されることによって、第2のモデルはタイヤ30の内圧に変化があっても、正しく変形量と負荷荷重との関係を示すことができる。
【0039】
重量推定部137は、荷重推定部136によって推定された負荷荷重及び車両情報に基づいて、車両20の総重量又は積載量を推定する。本実施形態において車両20はトラックである。車両20の総重量は、車体重量と、積載している荷物の重量である積載量との合計である。換言すると、車両20の積載量は、総重量から車体重量を減算することによって算出される。上記のように、車両情報は、車体重量、車軸のそれぞれの装着タイヤ数又は重量などの情報を含む。重量推定部137は、例えば荷重推定部136によって推定されるタイヤ30の1本当たりの負荷荷重に、車両情報から得られる車両20の装着タイヤ数を乗じることによって、車両20の総重量を推定してよい。重量推定部137は、車両情報を用いて、正確に車両20の総重量又は積載量を推定することができる。
【0040】
通知部138は、重量推定部137によって推定された車両20の総重量又は積載量が所定値を超える場合に通知を行う。積載量についての所定値は、例えば車両20の過積載を判定するために、積載量の上限値であってよい。総重量についての所定値は、積載量の上限値に車体重量を加えた値であってよい。通知は、例えば車両20が過積載の状態であることの警告(過積載警告)であってよいし、荷物を減らすなどの対応を求めるメッセージであってよい。上記のように、通知先は運行管理装置60であってよいし、車両20の運転者が所有する携帯端末機器であってよい。このような通知によって、例えば運転者又は車両20の管理者に、車両20に積載した荷物を減らすなどの適切な対応を取らせることができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定装置10が実行するタイヤ負荷荷重推定方法を例示するフローチャートである。
【0042】
画像データ取得部131は、車両20に装着されたタイヤ30の画像データを取得する(ステップS1)。
【0043】
タイヤ区分情報取得部132は、タイヤ30の区分を示す情報であるタイヤ区分情報を取得する(ステップS2)。
【0044】
タイヤ内圧情報取得部133は、タイヤ30の内圧の情報であるタイヤ内圧情報を取得する(ステップS3)。
【0045】
変形量判定部135は、タイヤ30の区分に応じた第1のモデルを用いて、画像データに基づいてタイヤ30の変形量を判定する(ステップS4)。
【0046】
荷重推定部136は、タイヤ30の区分に応じた第2のモデルを用いて、変形量判定部135によって判定されたタイヤ30の変形量及びタイヤ内圧情報に基づいて、タイヤ30の負荷荷重を推定する(ステップS5)。
【0047】
車両情報取得部134は、少なくとも車両20に装着されるタイヤ30の数を含む車両20の情報である車両情報を取得する(ステップS6)。
【0048】
重量推定部137は、荷重推定部136によって推定された負荷荷重及び車両情報に基づいて、車両20の総重量又は積載量を推定する(ステップS7)。
【0049】
通知部138は、重量推定部137によって推定された車両20の総重量又は積載量が所定値を超える場合に(ステップS8のYes)、通知を行う(ステップS9)。例えば所定値が積載量の上限値であって、通知は過積載警告であってよい。
【0050】
通知部138は、重量推定部137によって推定された車両20の総重量又は積載量が所定値以下であれば(ステップS8のNo)、通知を行わない。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ負荷荷重推定装置10及びタイヤ負荷荷重推定方法は、上記の構成及び工程によって、タイヤ30の負荷荷重を高精度に推定可能である。
【0052】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0053】
例えばタイヤ内圧情報取得部133は、車両20からタイヤ内圧情報を受け取ることに代えて、タイヤ30の内圧を求めるための情報を取得して、タイヤ30の内圧を推定(算出)することによって、タイヤ内圧情報を取得してよい。このとき、例えば画像データ取得部131は、所定の負荷荷重を有するタイヤ30を撮影した画像データである基準画像データを取得する。また、変形量判定部135は、タイヤ30の区分に応じた第1のモデルを用いて、基準画像データに基づいてタイヤ30の変形量を判定する。そして、タイヤ内圧情報取得部133は、タイヤ30の区分に応じた第2のモデルを用いて、基準画像データに基づくタイヤ30の変形量及び所定の負荷荷重に基づいて、タイヤ30の内圧を算出する。再び
図4を参照すると、タイヤ内圧情報取得部133は、変形量が「b」であって、タイヤ30の負荷荷重が「Lb」である場合に、これらの交点からタイヤ30の内圧が450kPaであると推定する。このように、荷重推定部136が負荷荷重を推定するために用いる第2のモデルを利用して、タイヤ内圧情報取得部133はタイヤ内圧情報を取得することができる。ここで、基準画像データを取得する際のタイヤ30の所定の負荷荷重は、例えば車体重量を装着されたタイヤ30の本数で割った値であってよい。また、所定の負荷荷重は、例えば自動車検査証に記載されている車軸毎の重量を、車軸毎のタイヤ30の装着本数で割った値であってよい。つまり、車両20が荷物を積んでおらず、車両情報から得られる車体重量である場合に、基準画像データとしてタイヤ30が撮影されてよい。この場合に、車軸のそれぞれの重量の情報を用いて、タイヤ30のそれぞれの所定の負荷荷重がさらに正確に求められてよい。第2のモデルを用いてタイヤ30の内圧を算出することによって、例えばタイヤ30の内圧を計測する装置からの情報が得られない場合でも、精度良く内圧を得ることができる。
【0054】
例えば
図1及び
図2に示されるタイヤ負荷荷重推定装置10及びタイヤ負荷荷重推定システムの構成は一例であって、
図1及び
図2の構成に限定されるものでない。例えばタイヤ負荷荷重推定システムは、タイヤ負荷荷重推定装置10と運行管理装置60とが一体化された構成であってよい。また、タイヤ負荷荷重推定システムは、第1のモデル及び第2のモデルを生成するモデル生成装置(別のコンピュータ)をさらに備える構成であってよい。
【0055】
例えばタイヤ区分情報は、画像データのタイヤ30の側面の文字情報から取得されるタイヤ30の商品名を含んでよい。つまり、タイヤ区分情報は運行管理装置60からの取得に限定されない。また、車両20が複輪を有する場合に、そのうちの1本のタイヤ30の負荷荷重を用いて計算によって(2倍にして)、総重量などの推定が行われてよい。また、通知部138は、タイヤ30の内圧が基準値(車両指定空気圧)を下回る場合にも警告を発してよい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0056】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0057】
10 タイヤ負荷荷重推定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
20 車両
30 タイヤ
40 ネットワーク
60 運行管理装置
70 検出装置
131 画像データ取得部
132 タイヤ区分情報取得部
133 タイヤ内圧情報取得部
134 車両情報取得部
135 変形量判定部
136 荷重推定部
137 重量推定部
138 通知部