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特開2024-151213解析方法、プログラムおよび半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151213
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】解析方法、プログラムおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241017BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241017BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L29/78 658L
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 658H
H01L29/78 655D
H01L29/78 655B
H01L29/78 657D
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064437
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄佑
(57)【要約】
【課題】半導体装置の不良率を精度よく解析できることが好ましい。
【解決手段】同一の前記設定範囲に含まれる複数の測定グループの第1特性および第2特性の代表値を示す分布代表値を複数の設定範囲について取得し、分布代表値と第1不純物の濃度との関係を曲線部分を含む第1近似線で近似することで、設定範囲の値と分布代表値との関係を示す関係情報を生成する関係情報生成段階と、測定分布および関係情報に基づいて、複数の仮想的な半導体装置の第1特性および第2特性をシミュレートして、測定分布よりも第1特性および第2特性のサンプルが広い範囲に分布した仮想分布を生成する仮想分布生成段階と、仮想分布における不良率を算出する不良率算出段階とを備える解析方法を提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に第1不純物を含み、且つ、前記半導体基板に荷電粒子線が照射された半導体装置の不良率を解析する解析方法であって、
前記第1不純物の濃度と前記荷電粒子線の照射量とが設定範囲に含まれる測定グループの複数の前記半導体装置の第1特性および第2特性の測定値を取得する測定値取得段階と、
前記測定グループにおける前記第1特性および前記第2特性の前記測定値の分布を示す測定分布を生成する測定分布生成段階と、
同一の前記設定範囲に含まれる複数の前記測定グループの前記第1特性および前記第2特性の代表値を示す分布代表値を複数の前記設定範囲について取得し、前記分布代表値と前記第1不純物の濃度との関係を曲線部分を含む第1近似線で近似することで、前記設定範囲の値と前記分布代表値との関係を示す関係情報を生成する関係情報生成段階と、
前記測定分布および前記関係情報に基づいて、複数の仮想的な前記半導体装置の前記第1特性および前記第2特性をシミュレートして、前記測定分布よりも前記第1特性および前記第2特性のサンプルが広い範囲に分布した仮想分布を生成する仮想分布生成段階と、
前記仮想分布における不良率を算出する不良率算出段階と
を備える解析方法。
【請求項2】
前記第1近似線は、前記第1不純物の濃度を増加させた場合に、前記分布代表値の上限値または下限値に収束する
請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記第1近似線は、前記第1不純物の濃度を横軸とし、前記分布代表値を縦軸として、前記第1不純物の濃度を増加させた場合に、下側に凸の波形と、上側に凸の波形が順番に現れる形状を有する
請求項2に記載の解析方法。
【請求項4】
前記第1近似線は、下式で表される
y=((A-A)/(1+(x/x))+A
ただしyは前記分布代表値であり、xは前記第1不純物の濃度であり、A、A、x、pはそれぞれ実数である
請求項3に記載の解析方法。
【請求項5】
前記関係情報生成段階において、前記分布代表値と前記荷電粒子線の照射量との関係を、前記第1近似線とは異なる形状の第2近似線で近似することで、前記関係情報を生成する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項6】
前記第2近似線は直線である
請求項5に記載の解析方法。
【請求項7】
前記関係情報生成段階において、前記分布代表値が存在する前記設定範囲の個数が設定値以下の場合に、前記分布代表値と前記第1不純物の濃度との関係を直線で近似し、前記分布代表値が存在する前記設定範囲の個数が前記設定値より大きい場合に、前記分布代表値と前記第1不純物の濃度との関係を前記第1近似線で近似する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項8】
前記仮想分布生成段階は、前記測定分布における前記第1特性および前記第2特性の共分散に基づいて前記仮想分布を生成する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項9】
前記仮想分布生成段階において、前記設定範囲ごとに、対応する前記測定分布の前記共分散を用いて前記仮想分布を生成する
請求項8に記載の解析方法。
【請求項10】
前記仮想分布生成段階において、複数の前記設定範囲に対して、共通の前記共分散を用いて前記仮想分布を生成する
請求項8に記載の解析方法。
【請求項11】
同一の前記設定範囲に対応する複数の前記測定グループの、前記第1特性および前記第2特性のグループ代表値を前記測定グループごとに取得し、前記グループ代表値の分布を示す測定グループ分布を生成する測定グループ分布生成段階を更に備え、
前記関係情報生成段階において、それぞれの前記設定範囲における前記測定グループ分布に基づいて、前記分布代表値を取得する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項12】
前記仮想分布生成段階において、前記測定グループの前記設定範囲と同一の前記設定範囲に対する前記仮想分布を生成する
請求項11に記載の解析方法。
【請求項13】
前記測定グループ分布に基づいて、前記測定グループの前記設定範囲と同一の前記設定範囲に対する複数の仮想グループを生成する仮想グループ生成段階を更に備え、
前記仮想分布生成段階において、前記複数の仮想グループのそれぞれの前記グループ代表値を基準に前記測定分布を適用して前記仮想分布を生成する
請求項12に記載の解析方法。
【請求項14】
前記仮想分布生成段階において、それぞれの前記設定範囲に対する前記仮想分布を生成し、
前記不良率算出段階において、それぞれの前記設定範囲に対応する前記仮想分布を用いて、それぞれの前記設定範囲に対する前記不良率を算出する
請求項11に記載の解析方法。
【請求項15】
前記関係情報に基づいて、前記測定グループ分布とは異なる前記設定範囲に対する仮想グループ分布を生成する仮想グループ分布生成段階を更に備え、
前記仮想分布生成段階において、それぞれの前記設定範囲に対応する前記仮想グループ分布を用いて、それぞれの前記設定範囲に対する前記仮想分布を生成し、
前記不良率算出段階において、前記仮想グループ分布に対応する前記設定範囲の前記不良率を算出する
請求項14に記載の解析方法。
【請求項16】
それぞれの前記測定グループ分布の形状を示す形状情報を取得する形状情報取得段階を更に備え、
前記仮想グループ分布生成段階において、前記形状情報に更に基づいて、前記仮想グループ分布を生成する
請求項15に記載の解析方法。
【請求項17】
前記不良率算出段階において、前記設定範囲ごとに、前記第1特性および前記第2特性のそれぞれに対する前記不良率を算出する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項18】
前記不良率算出段階において、それぞれの前記設定範囲において、前記第1特性の前記不良率および前記第2特性の前記不良率のうち高いほうを、それぞれの前記設定範囲の前記不良率とする
請求項17に記載の解析方法。
【請求項19】
前記不良率算出段階において、前記半導体基板における前記第1不純物の濃度と前記荷電粒子線の照射量とが、それぞれの前記設定範囲となる確率と、それぞれの前記設定範囲における前記不良率とを乗算した値に基づいて、前記半導体装置の平均不良率を算出する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項20】
前記半導体装置の製造に用いる前記半導体基板における前記第1不純物の濃度と、前記半導体装置が有するべき特性とに基づいて前記荷電粒子線の照射量を決定する半導体装置設計段階と、
前記半導体装置設計段階で決定した前記荷電粒子線の照射量に基づいて、前記半導体装置の平均不良率を算出する平均不良率算出段階と
を更に備える請求項19に記載の解析方法。
【請求項21】
前記第1不純物は炭素であり、前記荷電粒子線はヘリウムイオンである
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項22】
コンピュータに請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法を実行させるためのプログラム。
【請求項23】
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析方法で算出した、それぞれの前記設定範囲における前記不良率に基づいて、前記半導体装置の製造に用いる前記半導体基板に対する前記荷電粒子線の照射量を決定する半導体装置設計段階と、
前記半導体装置設計段階で決定した前記照射量の前記荷電粒子線を前記半導体基板に照射する半導体装置製造段階と
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項24】
過去に製造した半導体装置の測定データから生成された、半導体基板の第1不純物の濃度、および、前記半導体基板に対する荷電粒子線の照射量の組み合わせに対する目標特性の関係を示す過去情報と、製造に用いる前記半導体基板の前記第1不純物の濃度とに基づいて、製造に用いる前記半導体基板に対する前記荷電粒子線の照射量を決定し、
決定した前記照射量の前記荷電粒子線を前記半導体基板に照射して、前記半導体装置を製造し、
前記過去情報は、前記第1不純物の濃度と前記目標特性との関係を、曲線部分を含む第1近似線で近似することで生成される
半導体装置の製造方法。
【請求項25】
前記過去情報と、製造に用いる前記半導体基板に第1の照射量で前記荷電粒子線を照射したときの前記目標特性の値を、製造に用いる前記半導体基板の前記第1不純物の濃度に基づいて推定する
請求項24に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項26】
前記目標特性の値の推定結果に応じて、製造に用いる前記半導体基板に対する前記荷電粒子線の照射量を決定する
請求項25に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析方法、プログラムおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体装置が形成された半導体基板に対して、ヘリウムイオン等の荷電粒子を照射することでキャリアの再結合中心を形成し、キャリアのライフタイムを調整する技術が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
特許文献1 特開2019-121657号公報
特許文献2 特開2009-188336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の不良率を精度よく解析できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体基板に第1不純物を含み、且つ、前記半導体基板に荷電粒子線が照射された半導体装置の不良率を解析する解析方法を提供する。上記解析方法においては、前記第1不純物の濃度と前記荷電粒子線の照射量とが設定範囲に含まれる測定グループの複数の前記半導体装置の第1特性および第2特性の測定値を取得する測定値取得段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法においては、前記測定グループにおける前記第1特性および前記第2特性の前記測定値の分布を示す測定分布を生成する測定分布生成段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法においては、同一の前記設定範囲に含まれる複数の前記測定グループの前記第1特性および前記第2特性の代表値を示す分布代表値を複数の前記設定範囲について取得し、前記分布代表値と前記第1不純物の濃度との関係を曲線部分を含む第1近似線で近似することで、前記設定範囲の値と前記分布代表値との関係を示す関係情報を生成する関係情報生成段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法においては、前記測定分布および前記関係情報に基づいて、複数の仮想的な前記半導体装置の前記第1特性および前記第2特性をシミュレートして、前記測定分布よりも前記第1特性および前記第2特性のサンプルが広い範囲に分布した仮想分布を生成する仮想分布生成段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法においては、前記仮想分布における不良率を算出する不良率算出段階を備えてよい。
【0005】
上記いずれかの解析方法において、前記第1近似線は、前記第1不純物の濃度を増加させた場合に、前記分布代表値の上限値または下限値に収束してよい。
【0006】
上記いずれかの解析方法において、前記第1近似線は、前記第1不純物の濃度を横軸とし、前記分布代表値を縦軸として、前記第1不純物の濃度を増加させた場合に、下側に凸の波形と、上側に凸の波形が順番に現れる形状を有してよい。
【0007】
上記いずれかの解析方法において、前記第1近似線は、下式で表されてよい。
y=((A-A)/(1+(x/x))+A
ただしyは前記分布代表値であり、xは前記第1不純物の濃度であり、A、A、x、pはそれぞれ実数である。
【0008】
上記いずれかの解析方法において、前記関係情報生成段階において、前記分布代表値と前記荷電粒子線の照射量との関係を、前記第1近似線とは異なる形状の第2近似線で近似することで、前記関係情報を生成してよい。
【0009】
上記いずれかの解析方法において、前記第2近似線は直線であってよい。
【0010】
上記いずれかの解析方法において、前記関係情報生成段階において、前記分布代表値が存在する前記設定範囲の個数が設定値以下の場合に、前記分布代表値と前記第1不純物の濃度との関係を直線で近似し、前記分布代表値が存在する前記設定範囲の個数が前記設定値より大きい場合に、前記分布代表値と前記第1不純物の濃度との関係を前記第1近似線で近似してよい。
【0011】
上記いずれかの解析方法において、前記仮想分布生成段階は、前記測定分布における前記第1特性および前記第2特性の共分散に基づいて前記仮想分布を生成してよい。
【0012】
上記いずれかの解析方法において、前記仮想分布生成段階において、前記設定範囲ごとに、対応する前記測定分布の前記共分散を用いて前記仮想分布を生成してよい。
【0013】
上記いずれかの解析方法において、前記仮想分布生成段階において、複数の前記設定範囲に対して、共通の前記共分散を用いて前記仮想分布を生成してよい。
【0014】
上記いずれかの解析方法においては、同一の前記設定範囲に対応する複数の前記測定グループの、前記第1特性および前記第2特性のグループ代表値を前記測定グループごとに取得し、前記グループ代表値の分布を示す測定グループ分布を生成する測定グループ分布生成段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法の前記関係情報生成段階において、それぞれの前記設定範囲における前記測定グループ分布に基づいて、前記分布代表値を取得してよい。
【0015】
上記いずれかの解析方法の前記仮想分布生成段階において、前記測定グループの前記設定範囲と同一の前記設定範囲に対する前記仮想分布を生成してよい。
【0016】
上記いずれかの解析方法においては、前記測定グループ分布に基づいて、前記測定グループの前記設定範囲と同一の前記設定範囲に対する複数の仮想グループを生成する仮想グループ生成段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法の前記仮想分布生成段階において、前記複数の仮想グループのそれぞれの前記グループ代表値を基準に前記測定分布を適用して前記仮想分布を生成してよい。
【0017】
上記いずれかの解析方法の前記仮想分布生成段階において、それぞれの前記設定範囲に対する前記仮想分布を生成してよい。上記いずれかの解析方法の前記不良率算出段階において、それぞれの前記設定範囲に対応する前記仮想分布を用いて、それぞれの前記設定範囲に対する前記不良率を算出してよい。
【0018】
上記いずれかの解析方法においては、前記関係情報に基づいて、前記測定グループ分布とは異なる前記設定範囲に対する仮想グループ分布を生成する仮想グループ分布生成段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法の前記仮想分布生成段階において、それぞれの前記設定範囲に対応する前記仮想グループ分布を用いて、それぞれの前記設定範囲に対する前記仮想分布を生成してよい。上記いずれかの解析方法の前記不良率算出段階において、前記仮想グループ分布に対応する前記設定範囲の前記不良率を算出してよい。
【0019】
上記いずれかの解析方法においては、それぞれの前記測定グループ分布の形状を示す形状情報を取得する形状情報取得段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法の前記仮想グループ分布生成段階において、前記形状情報に更に基づいて、前記仮想グループ分布を生成してよい。
【0020】
上記いずれかの解析方法の前記不良率算出段階において、前記設定範囲ごとに、前記第1特性および前記第2特性のそれぞれに対する前記不良率を算出してよい。
【0021】
上記いずれかの解析方法の前記不良率算出段階において、それぞれの前記設定範囲において、前記第1特性の前記不良率および前記第2特性の前記不良率のうち高いほうを、それぞれの前記設定範囲の前記不良率としてよい。
【0022】
上記いずれかの解析方法の前記不良率算出段階において、前記半導体基板における前記第1不純物の濃度と前記荷電粒子線の照射量とが、それぞれの前記設定範囲となる確率と、それぞれの前記設定範囲における前記不良率とを乗算した値に基づいて、前記半導体装置の平均不良率を算出してよい。
【0023】
上記いずれかの解析方法においては、前記半導体装置の製造に用いる前記半導体基板における前記第1不純物の濃度と、前記半導体装置が有するべき特性とに基づいて前記荷電粒子線の照射量を決定する半導体装置設計段階を備えてよい。上記いずれかの解析方法においては、前記半導体装置設計段階で決定した前記荷電粒子線の照射量に基づいて、前記半導体装置の平均不良率を算出する平均不良率算出段階を備えてよい。
【0024】
上記いずれかの解析方法において、前記第1不純物は炭素であり、前記荷電粒子線はヘリウムイオンであってよい。
【0025】
本発明の第2の態様においては、コンピュータに第1の態様に係る解析方法を実行させるためのプログラムを提供する。
【0026】
本発明の第3の態様においては、第1の態様に係る解析方法で算出した、それぞれの前記設定範囲における前記不良率に基づいて、前記半導体装置の製造に用いる前記半導体基板に対する前記荷電粒子線の照射量を決定する半導体装置設計段階と、前記半導体装置設計段階で決定した前記照射量の前記荷電粒子線を前記半導体基板に照射する半導体装置製造段階とを備える半導体装置の製造方法を提供する。
【0027】
本発明の第4の態様においては、半導体装置の製造方法を提供する。上記製造方法においては、過去に製造した半導体装置の測定データから生成された、半導体基板の第1不純物の濃度、および、前記半導体基板に対する荷電粒子線の照射量の組み合わせに対する目標特性の関係を示す過去情報と、製造に用いる前記半導体基板の前記第1不純物の濃度とに基づいて、製造に用いる前記半導体基板に対する前記荷電粒子線の照射量を決定してよい。上記何れかの製造方法においては、決定した前記照射量の前記荷電粒子線を前記半導体基板に照射して、前記半導体装置を製造してよい。上記何れかの製造方法において、前記過去情報は、前記第1不純物の濃度と前記目標特性との関係を、曲線部分を含む第1近似線で近似することで生成されてよい。
【0028】
上記何れかの製造方法において、前記過去情報と、製造に用いる前記半導体基板に第1の照射量で前記荷電粒子線を照射したときの前記目標特性の値を、製造に用いる前記半導体基板の前記第1不純物の濃度に基づいて推定してよい。
【0029】
上記何れかの製造方法において、前記目標特性の値の推定結果に応じて、製造に用いる前記半導体基板に対する前記荷電粒子線の照射量を決定してよい。
【0030】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】半導体装置100の概要を説明する断面図である。
図2】半導体基板10の炭素濃度と、オン時の飽和電圧Vceとの関係の一例を示す図である。
図3】半導体装置100の特性どうしの関係を示す図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る解析方法における、測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006の一例を説明する図である。
図5】解析方法における仮想分布生成段階S1018および不良率算出段階S1022の一例を示す図である。
図6図5における領域210を拡大した図である。
図7】それぞれの測定グループにおける第1特性(Eoff)のグループ代表値220の分布例を示す図である。
図8】解析方法の一つの実施形態を示すフローチャートである。
図9】測定グループ分布生成段階S1008の一例を説明する図である。
図10】関係情報生成段階S1010を説明する図である。
図11】グループ分布取得段階S1014を説明する図である。
図12】仮想グループ生成段階S1016および仮想分布生成段階S1018を説明する図である。
図13】不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。
図14】不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。
図15】不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。
図16】それぞれの設定範囲の発生確率Rijを示す図である。
図17】解析方法の他の実施例を説明する図である。
図18A】測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006の一例を説明する図である。
図18B】測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006の他の例を説明する図である。
図19】測定グループ分布生成段階S1008の一例を説明する図である。
図20】関係情報生成段階S1010を説明する図である。
図21】グループ分布取得段階S1014を説明する図である。
図22】仮想グループ生成段階S1016、仮想分布生成段階S1018、判定段階S1020および不良率算出段階S1022を説明する図である。
図23】不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。
図24】解析方法の他の例を示す図である。
図25】半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。
図26】半導体装置100の製造数と、不良率の推移との関係を示す図である。
図27】関係情報240の他の例を示す図である。
図28】第1近似線401の一例を説明する図である。
図29】第1近似線401の実施例を示す図である。
図30】第1近似線401の実施例を示す図である。
図31】第1近似線401の実施例を示す図である。
図32】第1近似線401の実施例を示す図である。
図33】第1近似線401の各実施例の、測定データに対する適合度を評価した結果を示す図である。
図34】解析方法の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0033】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0034】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0035】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。N型およびP型は、第1導電型および第2導電型の一例である。N型が第1導電型、P型が第2導電型であってよく、P型が第1導電型、N型が第2導電型であってもよい。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0036】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0037】
図1は、半導体装置100の概要を説明する断面図である。半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80の少なくとも一方を含む。トランジスタ部70は、例えばIGBTであるがこれに限定されない。ダイオード部80は、例えばトランジスタ部70と逆並列に接続される還流ダイオード(FWD)であるがこれに限定されない。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を含むRC-IGBT(Reverse Conducting-IGBT)である。
【0038】
本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10は、チョクラルスキー法(CZ法)、磁場印加型チョクラルスキー法(MCZ法)、フロートゾーン法(FZ法)のいずれかで製造されたインゴットから切り出された基板であってよい。
【0039】
半導体基板10の全体には、炭素が含まれる場合がある。炭素は、例えばインゴットの製造時において意図的または意図せずに添加される不純物である。半導体基板10における炭素濃度は、例えば0atoms/cm以上、0.6×1016atoms/cm以下であるがこれに限定されない。
【0040】
半導体基板10は、上面21および下面23を有する。上面21および下面23は、対向して配置された2つの主面である。層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、窒化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを接続するコンタクトホール54が設けられている。
【0041】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。エミッタ電極52は、後述するエミッタ領域12およびベース領域14と接触してよい。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0042】
半導体基板10は、N-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれに設けられている。
【0043】
半導体基板10の上面21側には、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が設けられている。ゲートトレンチ部40はゲート電圧が印加されてゲート電極として機能し、ダミートレンチ部30はゲート電圧が印加されず、ゲート電極として機能しない。本明細書では、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30をトレンチ部と称する場合がある。トレンチ部は、半導体基板10の上面21からドリフト領域18まで深さ方向に設けられている。
【0044】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、所定の配列方向において所定の間隔で配置された1つ以上のトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0045】
各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面21である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0046】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【0047】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0048】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0049】
蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0050】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P-型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられていてもよい。
【0051】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれにおいて、ドリフト領域18よりも下面23側にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0052】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。
【0053】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。カソード領域82のドナー濃度は、ドリフト領域18のドナー濃度より高い。コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0054】
各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達している。エミッタ領域12および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通して、ドリフト領域18に到達している。
【0055】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられた溝状のゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0056】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0057】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されてよい。
【0058】
本例の半導体基板10には、キャリアのライフタイムを調整する再結合中心19が形成されている。図1においては再結合中心19をバツ印で模式的に示している。再結合中心19は、例えば空孔欠陥である。再結合中心19は、ヘリウムイオン、プロトン、電子等の荷電粒子を半導体基板10に照射することで形成される。
【0059】
再結合中心19は、深さ方向において局所的に形成されてよい。この場合、ヘリウムイオン等の荷電粒子を半導体基板10の所定の深さに注入することで、再結合中心19を形成できる。再結合中心19の濃度(/cm)は、荷電粒子線の照射量(/cm)により制御できる。再結合中心19は、図1に示すように半導体基板10の上面21側に形成されてよく、下面23側に形成されてもよい。また、再結合中心19は、半導体基板10の深さ方向の全体に渡って形成されてもよい。この場合、電子等の荷電粒子を、半導体基板10を貫通するように照射する。
【0060】
また、再結合中心19は、上面21と平行な面内において局所的に形成されてよい。この場合、ヘリウムイオン等の荷電粒子を、マスク等を用いて当該面内に選択的に照射する。例えば再結合中心19は、ダイオード部80の領域に選択的に形成されてよい。再結合中心19は、トランジスタ部70の領域に形成されてもよい。また再結合中心19は、ダイオード部80およびトランジスタ部70の両方に形成されてもよい。
【0061】
再結合中心19を形成することで、半導体装置100の特性を調整できる。例えば再結合中心19を形成することで、キャリアのライフタイムを調整できる。これに伴い、半導体装置100のターンオフ時のスイッチング時間を調整でき、ターンオフ時の損失等を調整できる。また、再結合中心19を形成することで、半導体装置100がオン状態のときの飽和電圧Vce_sat(本明細書では、単にVceと称する場合がある)が変化し、オン損失が変化する。これらの特性は、再結合中心19の濃度(/cm)により変動する。すなわちこれらの特性は、半導体基板10に照射する荷電粒子線の単位面積当たりの照射量(/cm)により変動する。また半導体基板10の炭素濃度(/cm)によって再結合中心19のできやすさが変化するので、半導体装置100の特性は、半導体基板10の炭素濃度によっても変動する。
【0062】
半導体装置100が良品であるか不良品であるかを、半導体装置100の上記特性によって判定する場合がある。上述したように、半導体装置100の特性は、半導体基板10の炭素濃度および荷電粒子線の照射量に応じて変化する。半導体装置100の設計および製造においては、半導体基板10の炭素濃度および荷電粒子線の照射量の組み合わせに対して、半導体装置100の不良率がどの程度になるかを精度よく推定できることが好ましい。
【0063】
図2は、半導体基板10の炭素濃度と、オン時の飽和電圧Vceとの関係の一例を示す図である。図2における一つのプロットは、半導体装置100の1つのロットに対応している。各プロットは、当該ロットに含まれる複数の半導体装置100の炭素濃度の平均と、飽和電圧Vceの平均との関係を示している。
【0064】
図2に示すように、半導体基板10の炭素濃度が同一であっても、ロット間の飽和電圧Vceは、ばらつきを有する。図2の各プロットは、炭素濃度以外の設計パラメータは同一である。例えば、半導体基板10に注入する不純物の濃度および荷電粒子線の照射量の設定値は同一である。ただし、製造ばらつき等により、これらのパラメータの設定値が同一であっても、飽和電圧Vce等の特性にはばらつきが生じてしまう。なお図2では飽和電圧Vceを示しているが、半導体装置100のキャリアライフタイム等の他の特性も同様である。このため、例えば図2に示した分布を線形回帰分析等により直線等で近似しても、炭素濃度および荷電粒子線の照射量の組み合わせに対して、半導体装置100の不良率がどの程度になるのかを見積もることが困難である。
【0065】
図3は、半導体装置100の特性どうしの関係を示す図である。図3においては、25℃(本明細書および図面においては、25℃を室温またはRTと称する場合がある)および175℃におけるトランジスタ部70(IGBT)のターンオフ損失Eoffと飽和電圧Vceとの関係、ならびに、25℃および175℃におけるダイオード部80(Diode)の順方向電圧Vfと逆回復損失Errとの関係を示している。なお、それぞれの分布図において、一つのプロットは、半導体装置100の1つのロットに対応している。また、それぞれのプロットにおける炭素濃度および荷電粒子線の照射量等の製造パラメータの設定値は同一である。
【0066】
図2に示したように、炭素濃度および荷電粒子線の照射量が同一であっても、それぞれの特性値にはばらつきが生じる。このため図3に示すように、各プロットは二次元的に分布する。これらのプロットに対して、例えば範囲200の内側を良品、外側を不良品として判別する場合がある。図3に示すように、範囲200の形状が五角形、六角形等の多角形の形状になると、上述した線形回帰分析では、半導体装置100の不良率を精度よく見積もることが難しくなる。
【0067】
図4は、本発明の一つの実施形態に係る解析方法における、測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006の一例を説明する図である。本例の解析方法は、半導体基板10に第1不純物を含み、且つ、半導体基板10に荷電粒子線が照射された半導体装置100の不良率を解析する。第1不純物は、例えば炭素、酸素または窒素等であるがこれに限定されない。荷電粒子線は、例えばヘリウムイオン、水素イオンまたは電子線であるがこれに限定されない。本例では第1不純物が炭素であり、荷電粒子線がヘリウムイオンである。
【0068】
測定値取得段階S1002においては、複数の半導体装置100の第1特性および第2特性の測定値を取得する。測定値取得段階S1002において半導体装置100の特性を測定してよく、既に測定されている測定値を取得してもよい。第1特性および第2特性は互いに相関を有する特性であることが好ましい。第1特性および第2特性は互いにトレードオフとなる特性であってよい。第1特性および第2特性は、図3において説明した、25℃または175℃におけるトランジスタ部70のターンオフ損失Eoff、25℃または175℃におけるトランジスタ部70の飽和電圧Vce、25℃または175℃におけるダイオード部80の順方向電圧Vf、および、25℃または175℃におけるダイオード部80の逆回復損失Errのうちのいずれか2つであってよい。図4の例では、第1特性および第2特性は、室温における飽和電圧Vce_RTおよび室温におけるターンオフ損失Eoff_RTである。なお本明細書および図面において温度を特定せずに、飽和電圧、ターンオフ損失のように各特性を説明した場合、室温における特性を指す。室温とは、例えば15℃以上30℃以下のいずれかの温度でよく、一例として、27℃であってよい。
【0069】
測定値取得段階S1002においては、半導体基板10における単位体積当たりの炭素濃度と、半導体基板10の単位面積当たりのヘリウムイオンの照射量とが、予め定められた設定範囲に含まれている複数の半導体装置の特性の測定値を取得する。炭素濃度およびヘリウムイオンの照射量は、製造条件変数の一例である。測定値取得段階S1002で用いるそれぞれの半導体装置100の炭素濃度は、実際の半導体基板10の炭素濃度を測定した値を用いてよく、半導体基板10の製造者が定めた炭素濃度の仕様値を用いてもよい。また、測定値取得段階S1002で用いるヘリウムイオンの照射量は、半導体基板10に実際に照射したヘリウムイオンの照射量の設定値を用いてよい。
【0070】
測定値取得段階S1002においては、製造条件変数としての炭素濃度およびヘリウム照射量が同等の複数の半導体装置100の測定値を取得する。測定値取得段階S1002においては、1つの測定グループに含まれる複数の半導体装置100の炭素濃度およびヘリウム照射量が同等となるように、設定範囲の幅が定められている。解析方法では、図13等に示すように、1つまたは複数の設定範囲に対して不良率を算出する。それぞれの設定範囲は、炭素濃度の範囲およびヘリウム照射量の範囲が、他の設定範囲と重複しないように設定されてよい。より具体的には、隣り合う3つの設定範囲において、炭素濃度の範囲の中心値が0.05×1016/cm、0.1×1016/cm、0.15×1016/cmのように0.05×1016/cmずつ増加する場合、それぞれの設定範囲における炭素濃度の範囲の大きさも0.05×1016/cmであってよい。この例におけるそれぞれの設定範囲における炭素濃度の範囲は、0.025×1016/cm~0.075×1016/cm、0.075×1016/cm~0.125×1016/cm、0.125×1016/cm~0.175×1016/cmであってよい。
【0071】
測定分布生成段階S1004では、1つの測定グループにおける第1特性および第2特性(本例では飽和電圧Vce、ターンオフ損失Eoff)の測定値の分布を示す測定分布208を生成する。測定分布生成段階S1004では、図4に示すように、第1特性および第2特性を2つの軸とした散布図を生成してよい。図4における一つのプロット202が、一つの半導体装置100を示している。測定分布生成段階S1004では、図4に示すように、第1特性(Vce)の分布204および第2特性(Eoff)の分布206を生成してよい。分布204および分布206はヒストグラムをガウス分布で近似した分布である。分布204においてピークを示す第1特性の値をVcとし、分布206においてピークを示す第2特性の値をEcとする。近似する統計分布はガウス分布(正規分布)に限らず、対数正規分布、二項分布、ポアソン分布、カイ2乗分布、t分布など、特性や目的に応じた周知の統計分布を用いてよい。
【0072】
形状情報取得段階S1006では、測定分布208の形状を示す形状情報を取得する。形状情報取得段階S1006では、測定分布208における第1特性および第2特性の共分散を示す形状情報を生成してよい。形状情報取得段階S1006では、測定分布208の分布の長軸ベクトルと短軸ベクトルとを示す形状情報を生成してよい。本例の形状情報取得段階S1006は、第1特性および第2特性の分散共分散行列を生成する。分散共分散行列は、数1であらわされる。σは第1特性の分布204の標準偏差、σは第2特性の分布206の標準偏差、σ12は第1特性および第2特性の共分散である。
【数1】
【0073】
図5は、解析方法における仮想分布生成段階S1018および不良率算出段階S1022の一例を示す図である。仮想分布生成段階S1018においては、測定分布208に基づいて、複数の仮想的な半導体装置100の第1特性および第2特性をシミュレートして、測定分布208よりも第1特性および第2特性のサンプルが広い範囲に分布した仮想分布308を生成する。
【0074】
仮想分布生成段階S1018においては、分布204および分布206における代表値を用いて、第1特性および第2特性を2つの軸とする平面における基準点301を決定してよい。代表値は、例えば分布204および分布206がピークを示す値VcおよびEcであるが、代表値はこれに限定されない。代表値は、第1特性の軸における分布204の位置、および、第2特性の軸における分布206の位置が特定できるものであればよい。
【0075】
仮想分布生成段階S1018においては、基準点301に対して、測定分布208の形状に応じた分布を適用することで、測定分布208よりも広い範囲にサンプルが分布した仮想分布308を生成する。例えば仮想分布308における第1特性(Eoff)の分布304および第2特性(Vce)の分布306は、分布204および分布206のテール部分をより外側まで広げた分布であってよい。
【0076】
仮想分布生成段階S1018においては、測定分布208の共分散を示す情報(例えば分散共分散行列)を考慮して、2変数正規分布となる各サンプル点をシミュレーションにより生成する。一例として仮想分布生成段階S1018においては、分散、共分散、平均値等のパラメータから形成される仮想分布をもとに、モンテカルロシミュレーションを行う。仮想分布生成段階S1018においては、測定分布208よりもサンプル数が多い仮想分布308を生成してよい。これにより、仮想分布308は、測定分布208よりも広い範囲にサンプルが分布しやすくなる。
【0077】
不良率算出段階S1022では、仮想分布308に含まれる各サンプル点が、所定の範囲200内か否かを判定する。そして、範囲200外に存在するサンプル点を不良サンプルとして、不良率を算出する。不良率の定義は、不良数を製造数で除した値である。図5においては、仮想分布308を楕円で模式的に示しているが、仮想分布308は多数のサンプル点の集合である。
【0078】
図6は、図5における領域210を拡大した図である。図6では、仮想分布308のサンプル点302を黒丸で示している。不良率算出段階S1022では、範囲200外に存在するサンプル点302を不良サンプルと判定する。本例によれば、測定分布208よりも広い範囲の仮想分布308を生成して不良率を算出する。このため、比較的にサンプル数が少ない測定分布208からでも、精度よく不良率を算出できる。
【0079】
図4から図6においては、一つの設定範囲における不良率の算出方法を説明した。解析方法においては、複数の設定範囲における不良率を算出してよい。この場合、ある設定範囲における測定分布208の形状(例えば分散共分散行列)を、他の設定範囲の仮想分布308に適用してもよい。また解析方法は、複数の測定グループの測定値を用いて、それぞれの設定範囲における不良率を算出してもよい。
【0080】
図7は、それぞれの測定グループにおける第1特性(Eoff)のグループ代表値220の分布例を示す図である。上述したように、一つの測定グループは、炭素濃度および荷電粒子の照射量が所定の設定範囲内である複数の半導体装置100を含む。なお、同一の設定範囲に対しても、複数の測定グループが存在する場合がある。測定グループは、製造時期、製造ロット、またはその他の指標でグループ分けされてよい。図7以降においては第1特性のグループ代表値220を用いて処理内容を説明する場合があるが、第2特性(Vce)のグループ代表値についても図7等で説明する処理と同様の処理を行う。
【0081】
グループ代表値220は、測定グループ内におけるそれぞれの半導体装置100の第1特性の平均値を用いてよい。ただしグループ代表値220は、平均値に限定されない。グループ代表値220は、当該測定グループの測定分布208の、第1特性の軸上における位置を規定できるものであればよい。例えばグループ代表値220は、分布204がピークを示す第1特性の値Ecであってもよい。
【0082】
図7に示すように、グループ代表値220は、製造条件変数としての炭素濃度およびヘリウム照射量の全ての組み合わせに対しては存在せずに、特定の炭素濃度およびヘリウム照射量の組み合わせに対して存在する場合がある。つまり、炭素濃度およびヘリウム照射量を2つの軸とする平面を複数の設定範囲に分割した場合に、グループ代表値220が存在する設定範囲と、グループ代表値220が存在しない設定範囲とがある。測定グループは、過去に製造した半導体装置100の集合であってよい。この場合、製造に用いていない炭素濃度およびヘリウム照射量の組み合わせに対しては、測定グループが存在しないのでグループ代表値220が得られていない。本例の解析方法では、グループ代表値220が得られていない設定範囲についても、不良率を推定する。
【0083】
図8は、解析方法の一つの実施形態を示すフローチャートである。解析方法は、準備段階S1050および処理段階S1060を備える。準備段階S1050は、測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004、形状情報取得段階S1006、測定グループ分布生成段階S1008および関係情報生成段階S1010を備える。
【0084】
測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006は、図4において説明した測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006と同様である。本例では、グループ代表値220が存在する、少なくとも一つの設定範囲に対して測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006を実行する。グループ代表値220が存在する複数または全ての設定範囲に対して測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006を実行してもよい。
【0085】
図9は、測定グループ分布生成段階S1008の一例を説明する図である。測定グループ分布生成段階S1008では、同一の設定範囲230に対応する複数の測定グループの、第1特性および第2特性のグループ代表値220を測定グループごとに取得する。例えば図7に示すように、炭素濃度C1およびヘリウム照射量He1の組み合わせを含む設定範囲230に属するグループ代表値220を抽出する。
【0086】
測定グループ分布生成段階S1008では、同一の設定範囲230に属するグループ代表値220の分布を示す測定グループ分布222を生成する。本例の測定グループ分布222は、グループ代表値220のヒストグラムをガウス分布で近似した分布である。
【0087】
測定グループ分布生成段階S1008では、測定グループ分布222の分布代表値を取得する。一例として分布代表値は、測定グループ分布222がピークとなる第1特性の値(Eoff_pm)であるが、これに限定されない。分布代表値は、測定グループ分布222の第1特性の軸上における位置を規定できる値であればよい。分布代表値は、測定グループ分布222の平均値であってもよい。
【0088】
また、測定グループ分布生成段階S1008では、測定グループ分布222の形状を示す形状情報を取得してよい。形状情報は、例えば測定グループ分布222の標準偏差σmであるが、これに限定されない。形状情報は、例えば上述のような統計分布、あるいは分布を特徴づけることが可能な分布を仮定し、フィッティングさせた場合のフィッティング・パラメータなど、分布の形状を再現できる情報であればよい。測定グループ分布生成段階S1008においては、グループ代表値220が存在する複数の設定範囲230に対して、分布代表値および形状情報を取得する。
【0089】
図10は、関係情報生成段階S1010を説明する図である。関係情報生成段階S1010は、設定範囲の値(例えば、設定範囲における炭素濃度の中央値およびヘリウム照射量の中央値)と、分布代表値(Eoff_pm)との関係を示す関係情報240を生成する。関係情報240は、これらの関係を示す複数のサンプル点にフィッティングさせた回帰平面であってよい。当該サンプル点は、設定範囲の炭素濃度の値、ヘリウム照射量の値、および、分布代表値で定まる3次元空間の点である。関係情報240は、任意の設定範囲における分布代表値の近似値を示す。
【0090】
関係情報生成段階S1010においては、設定範囲の値(製造条件変数である炭素濃度およびヘリウム照射量)と、測定グループ分布222の形状情報(σm)との関係を示す関係情報を更に生成してよい。当該関係情報は、任意の設定範囲における形状情報の近似値を示す。
【0091】
関係情報生成段階S1010においては、設定範囲の値(炭素濃度およびヘリウム照射量)と、測定分布208の形状を示す情報(例えば分散共分散行列の各要素)との関係を示す関係情報を更に生成してよい。当該関係情報は、任意の設定範囲における測定分布208の形状の近似値を示す。
【0092】
図8に示したように、処理段階S1060は、設定範囲決定段階S1012、グループ分布取得段階S1014、仮想グループ生成段階S1016、仮想分布生成段階S1018および不良率算出段階S1022を備える。設定範囲決定段階S1012においては、不良率を算出すべき設定範囲を選択する。
【0093】
図11は、グループ分布取得段階S1014を説明する図である。グループ分布取得段階S1014では、選択された設定範囲320における仮想グループ分布322を取得する。設定範囲320は、測定グループ分布222が存在する設定範囲とは異なる設定範囲であってよく、測定グループ分布222が存在する設定範囲と同一の設定範囲であってもよい。設定範囲320に測定グループのグループ代表値220が存在する場合、当該設定範囲320に対する処理においては、仮想グループ分布322に代えて、測定グループ分布222を用いてもよい。
【0094】
グループ分布取得段階S1014では、関係情報240から、設定範囲320における分布代表値(Eoff_pm)の近似値を取得する。同様に、設定範囲320における形状情報(σm)の近似値を取得する。グループ分布取得段階S1014では、取得した分布代表値で示される第1特性軸上の位置に、形状情報(σm)で示される形状の仮想グループ分布322を生成する。仮想グループ分布322は、標準偏差σmを有するガウス分布であってよい。グループ分布取得段階S1014では、第1特性および第2特性の両方に対して、仮想グループ分布322を生成する。仮想グループ分布322は、それぞれの設定範囲320において、測定グループが存在した場合に想定される、グループ代表値の仮想的な分布である。
【0095】
図12は、仮想グループ生成段階S1016および仮想分布生成段階S1018を説明する図である。仮想グループ生成段階S1016においては、それぞれの設定範囲320に対して、仮想グループ分布322に基づいて複数の仮想グループを生成する。仮想グループ生成段階S1016においては、測定グループが存在しない設定範囲と、測定グループと同一の設定範囲のいずれに対しても、複数の仮想グループを生成してよい。
【0096】
仮想グループ生成段階S1016では、第1特性の仮想グループ分布322-1と、第2特性の仮想グループ分布322-2とで示される、第1特性および第2特性の各値の出現確率に応じて、それぞれの仮想グループのグループ代表値(Eoff_a、Vce_a)を決定する。つまり、仮想グループ生成段階S1016で生成する複数の仮想グループのグループ代表値の分布は、仮想グループ分布322と同様になる。
【0097】
仮想グループ生成段階S1016では、第1特性および第2特性のグループ代表値を、それぞれの仮想グループ分布322に基づいて独立して決定してよい。他の例では、仮想グループ生成段階S1016では、形状情報取得段階S1006で取得した形状情報に更に基づいて、第1特性および第2特性のグループ代表値の組み合わせを決定してもよい。例えば仮想グループ生成段階S1016では、形状情報取得段階S1006で取得した分散共分散行列を用いて、第1特性および第2特性のグループ代表値の組み合わせを生成してもよい。これにより、第1特性および第2特性の相関を考慮し、且つ、それぞれの仮想グループ分布322における出現確率を考慮して、仮想グループのグループ代表値を決定できる。複数の仮想グループのグループ代表値の第1特性および第2特性を軸とする散布図における形状が、測定分布208の形状と相似するように、それぞれの仮想グループのグループ代表値を決定してよい。
【0098】
仮想分布生成段階S1018では、仮想グループ生成段階S1016で生成したそれぞれの仮想グループに対して、図5において説明した仮想分布308を生成する。つまり、仮想グループのグループ代表値(Eoff_a、Vce_a)を基準点301として、仮想分布308を適用する。仮想分布生成段階S1018では、モンテカルロシミュレーションを用いて、所定数(例えば5000個)のサンプルを含む仮想分布308を生成してよい。仮想分布308の形状は、測定分布208における第1特性および第2特性の共分散を示す情報(例えば分散共分散行列)に基づいて決定できる。上述したように、第1特性および第2特性の共分散を示す情報は、設定範囲ごとに定められてよい。この場合、図11において説明したように、それぞれの設定範囲と共分散との関係を示す関係情報を生成してよい。また、複数の設定範囲に対して共通の共分散情報を用いてもよい。例えば、代表として選択した一つの設定範囲における測定分布208から、共通の共分散情報を生成してよく、複数の設定範囲における測定分布208を統合した統合分布から、共通の共分散情報を生成してもよい。設定範囲のうち、測定グループの個数が最も多い設定範囲を、上述した代表として選択してよい。
【0099】
判定段階S1020では、予め定められた個数の仮想グループに対して、仮想グループ生成段階S1016および仮想分布生成段階S1018の処理を行ったかを判定する。処理した仮想グループの個数が所定数に達していない場合、仮想グループ生成段階S1016において新たな仮想グループを生成し、仮想分布生成段階S1018において仮想分布308を生成する。
【0100】
処理した仮想グループの個数が所定数(例えば1000回)に達した場合、不良率算出段階S1022において、それぞれの設定範囲に対応する仮想分布を用いて、当該設定範囲における不良率を算出する。なお、不良率算出段階S1022においては、仮想分布生成段階S1018において仮想分布308を生成するごとに、その仮想分布308における不良率を算出してよい。不良率算出段階S1022は、算出した不良率の平均値を算出して、当該設定範囲における不良率としてよい。他の例では、仮想分布生成段階S1018において新たな仮想分布308を生成するごとに、当該仮想グループに対して既に生成した仮想分布308と統合した統合分布を生成してもよい。不良率算出段階S1022は、統合分布における不良率を算出してもよい。
【0101】
判定段階S1024では、不良率を算出すべき全ての設定範囲に対して不良率を算出したかを判定する。不良率を算出していない設定範囲が存在する場合、設定範囲決定段階S1012において新たな設定範囲を選択して、S1014以降の処理を行う。全ての設定範囲に対して不良率を算出した場合、処理を終了する。
【0102】
本例によれば、測定グループが存在する設定範囲とは異なる設定範囲に対しても仮想分布を生成できる。このため、測定グループが存在しない設定範囲に対しても、精度よく不良率を推定できる。また、測定グループの設定範囲と同一の設定範囲に対しても、仮想グループ分布を設定し、仮想分布を生成する。これにより、当該設定範囲に対しても、サンプル数を増やして精度よく不良率を推定できる。
【0103】
図1から図12において説明した例では、第1特性および第2特性を用いて不良率を解析したが、第3特性を更に用いて不良率を解析してもよい。第3特性は例えばリーク電流Icesである。この場合、数1で示す第1特性および第2特性の共分散に代えて、第1特性、第2特性および第3特性の共分散を用いる。また、図5および図12においては、2次元の仮想分布308を用いているが、3つの特性を解析する場合、第1特性、第2特性および第3特性の各軸を有する3次元の仮想分布308を用いる。他の処理は、図1から図12において説明した例と同様である。また、4つ以上の特性を用いて不良率を解析してもよい。
【0104】
図13は、不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。不良率算出段階S1022は、製造条件変数である炭素濃度およびヘリウム照射量の組み合わせで定まる設定範囲ごとに不良率Xijを算出する。iは炭素濃度の範囲を示しており、jはヘリウム照射量の範囲を示している。不良率算出段階S1022は、図13に示すマトリクス形状の表を生成してよい。図13におけるそれぞれのマスが、設定範囲に対応している。なお図13においては、第1特性(Eoff)による不良率を示しているが、不良率算出段階S1022では、設定範囲ごとに、第1特性および第2特性のそれぞれに対する不良率を算出する。
【0105】
図14は、不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。図14は、それぞれの設定範囲における、第2特性に対する不良率Yijを示している。
【0106】
図15は、不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。本例の不良率算出段階S1022では、第1特性の不良率の表と、第2特性の不良率の表とを統合した統合不良率の表を生成する。本例においても、それぞれの設定範囲に対する統合不良率Zijを算出している。本例では、それぞれの設定範囲において、第1特性の不良率Xijと、第2特性の不良率Yijのうち高いほう(すなわち不良と判定される確率が高いほう)を、それぞれの設定範囲の統合不良率Zijとしてよい。
【0107】
図16は、それぞれの設定範囲の発生確率Rijを示す図である。設定範囲の発生確率Rijとは、製造条件変数としての半導体装置100の製造に用いる半導体基板10における炭素濃度と、半導体装置100の製造工程におけるヘリウムイオンの照射量とが、それぞれの設定範囲となる確率を示す。なお、製造工程におけるヘリウムイオンの照射量は、設定値に対する誤差が小さい。このため、ヘリウムイオンの照射量の設定値を含まない設定範囲の発生確率は0に設定してよい。半導体基板10の炭素濃度の確率分布は、半導体基板10の製造者から供給されてよく、過去の測定値から生成してもよい。
【0108】
不良率算出段階S1022では、それぞれの設定範囲において、不良率(例えばZij)と発生確率Rijとを乗算した値を算出してよい。また、不良率算出段階S1022では、不良率および発生確率とを乗算した値を積算することで、当該半導体基板10を用い、且つ、当該ヘリウムイオンの照射量で半導体装置100を製造した場合の、半導体装置100の平均不良率を算出してよい。
【0109】
図17は、解析方法の他の実施例を説明する図である。図2から図16において説明した実施例では、半導体装置100の特性として、第1特性および第2特性(例えばターンオフ損失Eoffと、オン時の飽和電圧Vce)を用いている。本例では、半導体装置100の特性として、1つの特性を用いる。本例で用いる特性は、ターンオフ損失Eoffまたはオン時の飽和電圧Vceのいずれかであってよく、他の特性であってもよい。本例では、半導体装置100のリーク電流Icesの特性を用いて、半導体装置100の不良率を解析する。なお、図1から図16において説明した例においても、第1特性および第2特性のいずれかを、リーク電流Icesに置き換えてもよい。
【0110】
リーク電流Icesは、ゲート電極(例えばゲート導電部44)と、エミッタ電極52とを電気的に短絡した状態(つまりトランジスタ部70をオフにした状態)で、コレクタ電極24とエミッタ電極52に所定の電圧を印加したときの、コレクタ電極24とエミッタ電極52の間に流れる電流である。当該所定の電圧は、半導体装置100が有するべき特性に応じて定められる仕様値であってよく、半導体装置100の定格電圧であってよく、他の電圧であってもよい。
【0111】
図17は、半導体基板10の炭素濃度とリーク電流Icesとの関係の一例を示している。図17の丸印のプロットが測定値を示し、実線の曲線が近似曲線を示している。図17に示すように、リーク電流Icesは炭素濃度に応じて変動する。また、リーク電流Icesは、半導体基板10に対する荷電粒子線(例えばヘリウム)の照射量に応じても変動する。このため、炭素濃度および荷電粒子線の照射量の2つ変数に応じて、リーク電流Icesがどのように変動するかを解析することで、炭素濃度および荷電粒子線の照射量に対するリーク電流Icesの不良率を精度よく解析できる。また、リーク電流Icesの不良率を許容範囲内とするには、炭素濃度および荷電粒子線の照射量をどのように設定すべきかを精度よく解析できる。
【0112】
1つの特性に基づいて半導体装置100の不良率を解析する場合も、解析方法の処理手順は、図8に示したフローチャートと同様である。本例では、図8に示したフローチャートに基づいて、解析方法を説明する。フローチャートの各段階における処理内容は、特に説明する場合を除き、図1から図16において説明したいずれかの例と同様であってよい。また、図1から図16において説明した実施例の各段階においても、図17以降において説明する各段階の内容を少なくとも部分的に適用してもよい。
【0113】
図18Aは、測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006の一例を説明する図である。測定値取得段階S1002においては、複数の半導体装置100の1つの特性(本例ではリーク電流Ices)の測定値を取得する。当該測定値は、室温(RT)での測定値であってよく、室温より高い高温環境(HT)での測定値であってよく、室温より低い低温環境(LT)での測定値であってもよい。本例では、高温環境(例えば175℃)におけるリーク電流Icesの測定値を示している。
【0114】
測定値取得段階S1002においては、半導体基板10における単位体積当たりの炭素濃度と、半導体基板10の単位面積当たりのヘリウムイオンの照射量との少なくとも一方が、予め定められた設定範囲に含まれている複数の半導体装置の特性の測定値を取得する。測定値取得段階S1002では、炭素濃度およびヘリウムイオンの照射量の両方が、それぞれの設定範囲内に含まれている半導体装置の測定値を取得してもよい。つまり測定値取得段階S1002においては、製造条件変数としての炭素濃度およびヘリウム照射量が同等の複数の半導体装置100の測定値を取得してよい。測定値取得段階S1002では、製造条件変数が同等の1つまたは複数のロットに含まれる複数の半導体装置100の特性を測定してよい。
【0115】
測定分布生成段階S1004では、1つの測定グループにおける特性(本例ではリーク電流Ices)の測定値の分布を示す測定分布205を生成する。本例のリーク電流Icesの測定値は、最小値Iminから最大値Imaxまでの間に分布している。測定分布205は横軸をリーク電流Ices、縦軸をサンプル数(頻度)としたヒストグラムであってよい。ヒストグラムの縦軸は、リーク電流Icesの各値が発生する確率密度を示してもよい。確率密度は、リーク電流Icesの各値の頻度を、総頻度で除算した値である。測定分布生成段階S1004では、図18Aに示すように、ヒストグラムを近似した分布207を生成してよい。分布207は、ヒストグラムを左右対称または非対称な正規分布で近似した曲線であってよく、他の曲線で近似したものであってもよい。分布207においてピークを示す特性の値をIcとする。
【0116】
形状情報取得段階S1006では、測定分布205の形状を示す形状情報を取得する。形状情報取得段階S1006では、測定分布205におけるリーク電流Icesの各値の発生確率を取得してよい。形状情報取得段階S1006では、測定分布205を近似した分布207の形状情報を取得してもよい。分布207は、リーク電流Icesの各値の確率密度関数に相当する。形状情報取得段階S1006では、分布207を示す確率密度関数を取得してよく、分布207の平均値、分散、歪度、尖度、標準偏差のうちの少なくとも一つの情報を取得してもよい。形状情報は、これらの情報に限定されない。形状情報は、分布207の形状を再現できる情報であればよい。
【0117】
図18Bは、測定値取得段階S1002、測定分布生成段階S1004および形状情報取得段階S1006の他の例を説明する図である。図18Aに示すように、リーク電流Icesのヒストグラムは、低電流側にピークが偏った形状になる場合がある。図8に示す各段階においては、リーク電流Ices等の特性の測定値をそのまま用いてよく、測定値を所定の演算式で換算し、換算した測定値を用いてもよい。
【0118】
測定分布生成段階S1004では、リーク電流Icesの測定値を所定の演算式で換算し、換算した測定値の測定分布205を生成してよい。当該演算式は、換算した測定値の測定分布205が、正規分布に近づくような式であってよい。本例の測定分布生成段階S1004は、リーク電流Icesの測定値xを、測定値ln(x)に換算した対数正規分布を用いる。lnは自然対数である。測定分布生成段階S1004では、換算した測定値の測定分布205を近似した分布207を生成してよい。分布207は、測定分布205を正規分布で近似した曲線であってよい。
【0119】
形状情報取得段階S1006では、測定分布205の形状を示す形状情報を取得する。形状情報取得段階S1006では、測定分布205におけるリーク電流Icesの各値の発生確率を取得してよい。形状情報取得段階S1006では、測定分布205を近似した分布207の形状情報を取得してもよい。本例の形状情報取得段階S1006では、分布207を示す確率密度関数f(x)を取得する。確率密度関数f(x)は、下式で表される対数正規分布である。
【数2】
ただし、xはリーク電流Icesの測定値(mA)であり、lnは自然対数である。σは、測定分布205の標準偏差に相当し、μは平均値に相当する。確率密度関数f(x)と、測定分布205との誤差を最小化するように、数2におけるσおよびμを決定する。これにより、分布207を示す確率密度関数f(x)を取得できる。また、換算した測定値を用いることで、測定分布205を正規分布で近似しやすくなり、確率密度関数f(x)を精度よく算出できる。
【0120】
図19は、測定グループ分布生成段階S1008の一例を説明する図である。本例の測定グループ分布生成段階S1008は、対象となる特性がリーク電流Icesである点を除き、図9において説明した測定グループ分布生成段階S1008と同様の処理を行う。
【0121】
本例の測定グループ分布生成段階S1008では、測定グループ分布222の分布代表値として、測定グループ分布222がピークとなる特性の値(Ices_pm)を取得するが、分布代表値はこれに限定されない。分布代表値は、測定グループ分布222の特性値の軸上における位置を規定できる値であればよい。また、測定グループ分布生成段階S1008では、測定グループ分布222の形状を示す形状情報を取得してよい。形状情報は、図9の例と同様に標準偏差σmであってよく、他の情報であってもよい。測定グループ分布生成段階S1008においても、図18Bの例と同様に、換算後の測定値を用いてよい。他の段階においても同様である。
【0122】
図20は、関係情報生成段階S1010を説明する図である。本例の関係情報生成段階S1010は、対象となる特性がリーク電流Icesである点を除き、図10において説明した測定グループ分布生成段階S1008と同様の処理を行う。関係情報生成段階S1010では、設定範囲の値(炭素濃度およびヘリウム照射量)と、分布代表値(例えばIces_pm)との関係を示す関係情報240を取得する。
【0123】
図21は、グループ分布取得段階S1014を説明する図である。本例のグループ分布取得段階S1014は、対象となる特性がリーク電流Icesである点を除き、図11において説明したグループ分布取得段階S1014と同様の処理を行う。グループ分布取得段階S1014では、選択された設定範囲320における仮想グループ分布322を取得する。
【0124】
図22は、仮想グループ生成段階S1016、仮想分布生成段階S1018、判定段階S1020および不良率算出段階S1022を説明する図である。仮想グループ生成段階S1016においては、それぞれの設定範囲320に対して、仮想グループ分布322に基づいて複数の仮想グループを生成する。仮想グループ生成段階S1016においては、測定グループが存在しない設定範囲と、測定グループと同一の設定範囲のいずれに対しても、複数の仮想グループを生成してよい。
【0125】
仮想グループ生成段階S1016では、仮想グループ分布322で示される、特性の測定値の出現確率に応じて、それぞれの仮想グループのグループ代表値(Ices_a)を決定する。つまり、仮想グループ生成段階S1016で生成する複数の仮想グループのグループ代表値の分布は、仮想グループ分布322と同様になる。
【0126】
仮想分布生成段階S1018では、仮想グループ生成段階S1016で生成したそれぞれの仮想グループに対して、図5において説明した仮想分布を生成する。ただし本例では、対象とする特性は1つなので、仮想分布として、図5に示す分布306(または分布304)を生成する。仮想分布生成段階S1018では、仮想グループのグループ代表値(Ices_a)を、当該特性の軸における基準点として、仮想の分布306を適用する。仮想分布生成段階S1018では、モンテカルロシミュレーションを用いて、所定数(例えば5000個)のサンプルを含む分布306を生成してよい。仮想分布生成段階S1018では、測定分布205または分布207における各測定値の発生確率(例えば確率密度関数f(x))に応じて、それぞれのリーク電流Icesの仮想の測定値をランダムに生成することで分布306を生成できる。分布306の形状は、測定分布205または分布207と同様の形状になる。
【0127】
上述したように、当該特性分布の形状情報(つまり各測定値の発生確率)は、設定範囲ごとに定められてよい。また、複数の設定範囲に対して共通の形状情報を用いてもよい。例えば、代表として選択した一つの設定範囲における分布207から、共通の形状情報を生成してよく、複数の設定範囲における分布207を統合した統合分布から、共通の形状情報を生成してもよい。設定範囲のうち、測定グループの個数が最も多い設定範囲を、上述した代表として選択してよい。
【0128】
判定段階S1020では、予め定められた個数の仮想グループに対して、仮想グループ生成段階S1016および仮想分布生成段階S1018の処理を行ったかを判定する。処理した仮想グループの個数が所定数に達していない場合、仮想グループ生成段階S1016において新たな仮想グループを生成し、仮想分布生成段階S1018において仮想の分布306を生成する。仮想分布生成段階S1018では、仮想グループ毎に生成した分布306を統合して、一つの分布306を生成する。これにより、測定分布205よりも広い範囲にサンプルが分布した仮想の分布306を取得できる。図22の例では、分布306におけるリーク電流Icesの最小値(ln(Imin'))は、測定分布205の最小値(ln(Imin'))より小さく、分布306におけるリーク電流Icesの最大値(ln(Imax'))は、測定分布205の最大値(ln(Imax'))より大きい。
【0129】
処理した仮想グループの個数が所定数(例えば1000回)に達した場合、不良率算出段階S1022において、それぞれの設定範囲に対応する仮想分布を用いて、当該設定範囲における不良率を算出する。不良率算出段階S1022では、リーク電流Icesの仮想の分布306において、リーク電流Icesが所定の参照値Irefより大きくなる割合を、不良率として算出してよい。本例の参照値はln(Iref)である。不良率算出段階S1022は、分布306を近似した近似分布307を算出してよい。近似分布307は、分布306との誤差が最小となるようにフィッティングさせた正規分布であってよく、他の形状の分布であってもよい。不良率算出段階S1022は、近似分布307において、リーク電流Icesが所定の参照値Irefより大きくなる割合を、不良率として算出してよい。
【0130】
図8に示した判定段階S1024では、不良率を算出すべき全ての設定範囲に対して不良率を算出したかを判定する。不良率を算出していない設定範囲が存在する場合、設定範囲決定段階S1012において新たな設定範囲を選択して、S1014以降の処理を行う。全ての設定範囲に対して不良率を算出した場合、処理を終了する。
【0131】
本例によれば、測定グループが存在する設定範囲とは異なる設定範囲に対しても仮想分布を生成できる。このため、測定グループが存在しない設定範囲に対しても、精度よく不良率を推定できる。また、測定グループの設定範囲と同一の設定範囲に対しても、仮想グループ分布を設定し、仮想分布を生成する。これにより、当該設定範囲に対しても、サンプル数を増やして精度よく不良率を推定できる。
【0132】
図23は、不良率算出段階S1022で生成する不良率の一例を示す図である。不良率算出段階S1022は、製造条件変数である炭素濃度およびヘリウム照射量の組み合わせで定まる設定範囲ごとに不良率Wijを算出する。iは炭素濃度の範囲を示しており、jはヘリウム照射量の範囲を示している。不良率算出段階S1022は、図23に示すマトリクス形状の表を生成してよい。図23におけるそれぞれのマスが、設定範囲に対応している。不良率算出段階S1022は、複数の特性(例えば、Eoff、Vce、Icesのうちの少なくとも2つ)について、図23に示す不良率の表を生成してよい。不良率算出段階S1022では、図14において説明したように、複数の表を統合して、それぞれの設定範囲の不良率を算出してもよい。
【0133】
図24は、解析方法の他の例を示す図である。解析方法は、不良率解析段階S1102、半導体装置設計段階S1104および平均不良率算出段階S1106を備える。不良率解析段階S1102における処理は、図1から図23において説明した解析方法と同様である。つまり不良率解析段階S1102では、それぞれの設定範囲における不良率を算出する。
【0134】
半導体装置設計段階S1104では、半導体装置100の製造に用いる半導体基板10における炭素濃度と、半導体装置100が有するべき特性とに基づいてヘリウムイオンの照射量を決定する。例えば半導体装置設計段階S1104では、半導体装置100が有するべきキャリアライフタイムの値に応じて、ヘリウムイオンの照射量を決定する。半導体基板10の炭素濃度は、半導体基板10の製造者から供給される情報であってよく、半導体基板10を測定することで取得してもよい。
【0135】
平均不良率算出段階S1106では、半導体装置設計段階S1104で決定したヘリウムイオンの照射量に基づいて、半導体装置100の平均不良率を算出する。例えば平均不良率算出段階S1106では、図16において説明したように、決定したヘリウムイオンの照射量を含まない設定範囲の発生確率を0に設定して、平均不良率を算出してよい。このような処理により、ヘリウムイオンの照射量を変更する場合に、変更後の半導体装置100の不良率を見積もることができる。
【0136】
また解析方法は、半導体装置100の製造に用いる半導体基板10における炭素濃度と、それぞれの設定範囲における不良率とに基づいて、ヘリウムイオンの照射量の許容範囲を決定する半導体装置設計段階を備えてもよい。この場合、半導体装置100の平均不良率として許容される値が設定されてよい。半導体装置設計段階では、ヘリウムイオンの照射量をある値に設定した場合に、図24において説明した平均不良率が許容値以下となるような、ヘリウムイオンの照射量の設定値の許容範囲を提示してよい。
【0137】
図25は、半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。製造方法は、不良率解析段階S1202、半導体装置設計段階S1204および半導体装置製造段階S1206を備える。不良率解析段階S1202は、図1から図24において説明した解析方法と同様である。
【0138】
半導体装置設計段階S1204は、それぞれの設定範囲における不良率に基づいて、半導体装置100の製造に用いる半導体基板10に対するヘリウムイオンの照射量を決定する。半導体装置設計段階S1204は、図24において説明した半導体装置設計段階と同様であってよい。
【0139】
半導体装置製造段階S1206では、半導体装置設計段階S1204で決定した照射量のヘリウムイオンを半導体基板10に照射する。また半導体装置製造段階S1206では、図1において説明した半導体装置100の各部材を形成する。このような方法により、不良率を精度よく推定して半導体装置100を設計して製造できる。
【0140】
図26は、半導体装置100の製造数と、不良率の推移との関係を示す図である。参考例においては、製造した半導体装置100に不良が発生した場合に、当該情報を製造工程にフィードバックすることで、不良の発生を抑制する。この場合、半導体装置100の製造数が一定以上になると、フィードバックの精度が向上して不良率が徐々に減少する。
【0141】
これに対して実施例に係る解析方法を用いることで、仮想的な半導体装置100の特性を多数生成して不良率を解析できる。このため、ヘリウムイオンの照射量等のパラメータを適切に設定しやすくなり、不良の発生の抑制を加速できる。
【0142】
図27は、関係情報240の他の例を示す図である。本例の関係情報240は、曲面の部分を有する。関係情報240は、半導体基板10に含まれる第1不純物(本例では炭素)の濃度と、測定グループ分布222(例えば図9参照)の分布代表値との関係が、曲線部分を含む近似線で近似されている。つまり、ヘリウムイオンの照射量の少なくとも1つの値において、炭素濃度軸および分布代表値軸の二次元の直交座標系で示される関係情報240が、曲線部分を含む第1近似線401で示される。
【0143】
図13等において説明したように、ヘリウムイオンの照射量が取り得る範囲は、複数の設定範囲に分割される。ヘリウムイオンの照射量のそれぞれの設定範囲において、関係情報240における炭素濃度と分布代表値との関係が、曲線部分を含む第1近似線401で示されてよい。それぞれの設定範囲における第1近似線401の形状は異なっていてよく、同一であってもよい。炭素濃度と分布代表値との関係を曲線で近似することで、関係情報240をより精度よく算出でき、半導体装置100の不良率をより精度よく解析できる。
【0144】
本例の関係情報生成段階S1010においては、同一の設定範囲に含まれる複数の測定グループの第1特性および第2特性の代表値を示す分布代表値を複数の設定範囲について取得し、分布代表値と炭素濃度との関係を曲線部分を含む第1近似線401で近似することで、設定範囲の値と分布代表値との関係を示す関係情報240を生成する。他の段階における処理は、図1から図26において説明した処理と同様である。例えば仮想分布生成段階S1018において、本例の関係情報240が用いられる。
【0145】
関係情報240において、半導体基板10に照射されるヘリウムイオンの照射量と、分布代表値との関係は、第1近似線401とは異なる形状の第2近似線402で近似されてよい。近似線の形状とは、近似線を示す関数の次数であってよい。例えば分布代表値をyとし、炭素濃度をxとして、第1近似線401をy=f(x)とする。また、ヘリウムイオンの照射量をzとして、第2近似線402をy=g(z)とする。f(x)におけるxの次数と、g(z)におけるzの次数は異なっていてよい。第2近似線402は、直線(すなわちg(z)におけるzの次数が1)であってもよい。図13等において説明したように、炭素濃度が取り得る範囲は、複数の設定範囲に分割される。炭素濃度のそれぞれの設定範囲において、関係情報240におけるヘリウムイオンの照射量と、分布代表値との関係が直線の第2近似線402で示されてよい。それぞれの設定範囲における第2近似線402の傾きは異なっていてよく、同一であってもよい。
【0146】
図28は、第1近似線401の一例を説明する図である。本例では、第1特性または第2特性の分布代表値をyとし、炭素濃度(/cm)をxとする。第1近似線401は、炭素濃度を増加させた場合に、分布代表値の上限値または下限値に収束してよい。図28の例の第1近似線401は、分布代表値の上限値Aに収束する。つまり第1近似線401で示される分布代表値yは、炭素濃度xを無限大まで増加させた場合に、上限値Aを超えない範囲で上限値Aに近づく。第1近似線401で示される分布代表値yは、炭素濃度xを無限大まで増加させた場合に上限値Aに飽和すると表現される場合もある。
【0147】
第1近似線401は、炭素濃度xを横軸とし、分布代表値yを縦軸として炭素濃度を増加させた場合に、下側に凸の波形404と、上側に凸の波形403が順番に現れる形状を有してよい。縦軸の上側とは、分布代表値yが増加する側であり、下側とは分布代表値yが減少する側である。図28に示すように、第1近似線401が上限値Aに収束する場合、炭素濃度xを増加させる方向において波形404の次に波形403が現れてよい。第1近似線401が下限値に収束する場合、炭素濃度xを増加させる方向において波形403の次に波形404が現れてよい。波形404と波形403との間には、第1近似線401の二階微分y(2)が0となる点(x1,y1)が配置されている。
【0148】
第1近似線401は、下の式(1)で表されてよい。
y=((A-A)/(1+(x/x))+A・・・(1)
ただしyは分布代表値であり、xは炭素濃度であり、A、A、x、pはそれぞれ実数である。関係情報生成段階S1010では、分布代表値と炭素濃度との関係に最もよくフィッティングするように各数値A、A、x、pを定めることで、第1近似線401を決定してよい。第1近似線401は、ロジスティック関数であってよい。ロジスティック関数は例えば式(1)で示される。本明細書では、式(1)で示される関数をロジスティック関数と称する場合がある。第1近似線401が上限値に収束する場合、式(1)のyの値はAに収束する。つまり式(1)のyの上限値はAとなる。第1近似線401が下限値に収束する場合、式(1)のyの値はAに収束する。つまり式(1)のyの下限値はAとなる。第1近似線401が上限値および下限値のいずれに収束するかに応じて、式(1)の各項の符号が変化してよい。式(1)で示す第1近似線401は、各パラメータによって、下側に凸の波形404と、上側に凸の波形403の一方だけを有する場合がある。図28に示した第1近似線401では、波形404と波形403の間には変曲点があらわれる。これに対して、第1近似線401の始点または終点に当該変曲点が配置されるようなパラメータでは、第1近似線401は、波形403および波形404のうちの一方だけを有する。
【0149】
図29は、第1近似線401の実施例を示す図である。図29における黒丸は、分布代表値の測定データを示している。本例において分布代表値は、オン時の飽和電圧Vce_satである。実施例1は対数関数の第1近似線401で近似した例であり、実施例2はロジスティック関数の第1近似線401で近似した例であり、実施例3は直線の第1近似線401で近似した例である。
【0150】
実施例3では、炭素濃度が比較的に低い領域と、高い領域の両方で、測定データに対する第1近似線401の乖離が大きくなっている。実施例1では、炭素濃度が比較的に低い領域では、測定データと第1近似線401とがよく一致しているが、炭素濃度が比較的に高い領域では、測定データに対する第1近似線401の乖離が大きくなっている。実施例2では、炭素濃度の低い領域から高い領域まで、測定データと第1近似線401とがよく一致している。
【0151】
図30は、第1近似線401の実施例を示す図である。本例において分布代表値は、ダイオード部80の順方向電圧Vfである。図30の各線で示される実施例の関数は、図29と同様である。本例においても、各実施例で図29と同様の傾向が見られた。
【0152】
図31は、第1近似線401の実施例を示す図である。本例において分布代表値は、周囲温度が175℃における、ターンオフ損失Eoff_HTである。図31の各線で示される実施例の関数は、図29と同様である。本例においても、各実施例で図29と同様の傾向が見られた。
【0153】
図32は、第1近似線401の実施例を示す図である。本例において分布代表値は、周囲温度が175℃における、逆回復損失Err_HTである。図32の各線で示される実施例の関数は、図29と同様である。本例においても、各実施例で図29と同様の傾向が見られた。図29から図32に示した第1近似線401では、第1近似線401の始点または終点に変曲点が配置されている。このため、それぞれの第1近似線401は、下側に凸の波形404と、上側に凸の波形403のうちの一方だけを有している。
【0154】
図33は、第1近似線401の各実施例の、測定データに対する適合度を評価した結果を示す図である。本例では、AIC(Akaike's Information Criterion)で、第1近似線401の各実施例の適合度を評価した。AICでは、それぞれの測定データに対するモデル(本例では各実施例)の適合度を、モデル間で相対的に評価する。AIC値が相対的に小さいモデルが、他のモデルよりも、当該測定データに対する適合度が良好であることを示している。
【0155】
図33の例では、図29から図32において示した測定データに加えて、周囲温度が25℃におけるターンオフ損失Eoff_RT、および、周囲温度が25℃における逆回復損失Err_RTの測定データに対しても、各実施例を評価した。図33に示すように、いずれの測定データに対しても、実施例2(ロジスティック関数)が、他の実施例よりも良好なAIC値となった。このため、式(1)で示されるようにロジスティック関数を用いて関係情報240を生成することで、各設定範囲におけるVce等の特性値の分布を精度よくシミュレートでき、不良率を精度よく推定できる。
【0156】
図27に示すように、関係情報生成段階S1010において、分布代表値(例えばEoff)と荷電粒子線(例えばヘリウムイオン)の照射量との関係を、第1近似線401とは異なる形状の第2近似線402で近似することで、関係情報240を生成してよい。第2近似線402は、第1近似線401よりも、炭素濃度の次数(すなわち、式(1)のxの次数p)が小さくてよい。第2近似線402は、直線であってもよい。
【0157】
ヘリウムイオンの照射量が増加すると、半導体基板10に形成される再結合中心19の濃度が、概ね照射量に比例して増加する。再結合中心19の濃度に応じてターンオフ損失等の特性値が変化する。またヘリウムイオンの照射量は、比較的に変動可能な範囲が小さい。例えば、ヘリウムイオンの照射量が小さすぎると、キャリアライフタイムに与える影響がほとんどなくなり、ヘリウムイオンの照射量が大きすぎると、リーク電流等が大きくなりすぎる。比較的に狭い範囲でヘリウムイオンの照射量が変動するので、再結合中心19の濃度に対する特性値の変動は、ほぼ直線で近似できる。このため第2近似線402を直線とすることで、特性値の分布代表値とヘリウムイオンの照射量との関係を精度よく近似できる。
【0158】
一方で、半導体基板10の炭素濃度が変化した場合、図29から図32の測定データに示されるように、各特性値は線形に変化していない。図33に示したように、第1近似線401を、分布代表値の上限値または下限値に収束するような関数、例えば本例のロジスティック関数等の曲線とすることで、特性値の分布代表値と炭素濃度との関係を精度よく近似できる。例えば、図27に示すヘリウム照射量の値に対しては、一例として特性値は線形の関係を有してよい。関係情報240は、所定のヘリウム照射量の値における炭素濃度-電気的特性断面については曲線となり、所定の炭素濃度の値におけるヘリウム照射量-電気的特性断面については直線となるような、曲面であってよい。
【0159】
第1近似線401を、分布代表値の上限値または下限値に収束するような関数とすることで、特性値の分布代表値と炭素濃度との関係を精度よく近似できる理由は、一例として、以下の理由が推定される。半導体装置の電気的特性は、キャリア・ライフタイムの影響を受ける。キャリア・ライフタイムτは、散乱断面積σに反比例する(τ∝1/σ)。一方、半導体基板10に荷電粒子線を照射すると、複数の種類の格子欠陥が生じる。形成される複数の格子欠陥の種類は、空孔が主体の格子欠陥、格子間原子が主体の格子欠陥、導入された不純物が主体の格子欠陥、等である。
【0160】
散乱断面積は、格子欠陥の種類によって異なる値を有する。このため、キャリア・ライフタイムτは、形成される複数の格子欠陥の種類に対して、それぞれの散乱断面積σの影響をうける。このなかで、炭素濃度が影響する格子欠陥に、格子間炭素と格子間酸素の複合欠陥(CiOi欠陥)がある。半導体基板10における炭素濃度が多くなると、CiOi欠陥の濃度が増加する。CiOi欠陥の増加により、散乱断面積σCiOiの値が変化する。
【0161】
炭素濃度が十分低いと、CiOi欠陥の濃度が少なくなり、CiOi欠陥の散乱断面積σCiOiが所定の下限値に収束し、キャリア・ライフタイムが所定の上限値に収束するものと考えられる。一方、炭素濃度が十分高いと、CiOi欠陥の濃度が高くなり、CiOi欠陥の散乱断面積σCiOiが所定の上限値に収束し、キャリア・ライフタイムが所定の下限値に収束すると考えられる。
【0162】
以上のことにより、半導体装置の電気的特性が、炭素濃度に応じて、分布代表値の上限値または下限値に収束するような関数に従うものと考えられる。なお、第1近似線401を、分布代表値の上限値または下限値に収束するような関数とすることで、特性値の分布代表値と炭素濃度との関係を精度よく近似できる理由は、これに限らない。
【0163】
分布代表値が存在する設定範囲の個数が少ない状態(つまり近似対象のサンプル数が少ない状態)で、ロジスティック関数等の曲線を用いて炭素濃度-分布代表値を近似すると、適合度が低くなる場合がある。関係情報生成段階S1010において、分布代表値が存在する設定範囲の個数が所定の設定値以下の場合に、分布代表値と炭素濃度との関係を直線で近似し、分布代表値が存在する設定範囲の個数が設定値より大きい場合に、分布代表値と炭素濃度との関係を曲線の第1近似線401で近似してよい。これにより、近似精度を高めることができる。当該設定値は、設定範囲の全個数のうちの10%の値であってよく、20%の値であってよく、30%の値であってもよい。
【0164】
図25に示したような製造方法に対しても、図27から図33において説明した解析方法を適用できる。本例の半導体装置の製造方法では、過去に製造した半導体装置100の測定データから生成された、半導体基板10の第1不純物の濃度(例えば炭素濃度)、および、半導体基板10に対する荷電粒子線(例えばヘリウムイオン)の照射量の組み合わせに対する目標特性(例えばVce等の特性、または、不良率)の関係を示す過去情報と、製造に用いる半導体基板10の第1不純物の濃度とに基づいて、製造に用いる半導体基板10に対する荷電粒子線の照射量を決定する(S1204)。また、決定した照射量の荷電粒子線を半導体基板10に照射して、半導体装置を製造する(S1206)。本例における過去情報は、第1不純物の濃度と目標特性との関係を、曲線部分を含む第1近似線401で近似することで生成される(S1202)。
【0165】
不良率解析段階S1202では、過去情報と、製造に用いる半導体基板10に第1の照射量で荷電粒子線を照射したときの目標特性の値を、製造に用いる半導体基板の第1不純物の濃度に基づいて推定してよい(例えば、図8のS1016~S1020)。また、目標特性の値の推定結果に応じて、製造に用いる半導体基板10に対する荷電粒子線の照射量を決定してよい(例えば、図25のS1206)。目標特性の値の推定結果とは、例えば図12における仮想分布308であってよく、図13から図16または図23において説明した不良率であってもよい。
【0166】
過去情報は、半導体装置の製造のたびに、内容が更新されてよい。すなわち過去情報A1に基づいて半導体装置α1を製造し、電気的特性a1を取得する。電気的特性a1に基づいて、過去情報A1を新たな過去情報A2に更新する。この新たな過去情報A2に基づいて、半導体装置α2を製造し、電気的特性a2を取得する。電気的特性a2に基づいて、過去情報A2を新たな過去情報A3に更新する。以上のように、過去情報を半導体装置の製造のたびに更新し、更新した新たな過去情報に基づいて次の半導体装置の製造を行ってよい。
【0167】
図34は、解析方法の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200には、コンピュータ2200に図1から図26において説明した解析方法を実行させるためのプログラムがインストールされる。
【0168】
コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る方法または当該方法の段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0169】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0170】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0171】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0172】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0173】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0174】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0175】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0176】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0177】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0178】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0179】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0180】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、19・・・再結合中心、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、30・・・ダミートレンチ部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、100・・・半導体装置、200・・・範囲、202・・・プロット、204・・・分布、205・・・測定分布、206・・・分布、207・・・分布、208・・・測定分布、210・・・領域、220・・・グループ代表値、222・・・測定グループ分布、230・・・設定範囲、240・・・関係情報、301・・・基準点、302・・・サンプル点、304・・・分布、306・・・分布、307・・・近似分布、308・・・仮想分布、320・・・設定範囲、322・・・仮想グループ分布、401・・・第1近似線、402・・・第2近似線、403・・・波形、404・・・波形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34