(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151215
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】切屑回収システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20241017BHJP
G05B 19/4063 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B23Q11/00 R
G05B19/4063 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064441
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】久保 自然
【テーマコード(参考)】
3C011
3C269
【Fターム(参考)】
3C011BB22
3C011BB25
3C269AB01
3C269BB12
3C269EF36
3C269MN07
3C269MN21
3C269MN27
3C269MN40
3C269PP03
3C269QE34
3C269SA37
(57)【要約】
【課題】生産効率の低下を防止すると共に、安価で切屑回収も容易に可能となる切屑回収システムを提供する。
【解決手段】切屑回収システムSは、切屑収納容器3と、切屑量検出器4及び切屑量監視部14と、複数の所定の切屑回収予定時刻と、NCプログラム等を記憶するデータベース11と、予想切屑量をNCプログラムごとに算出する予想切屑量算出部13と、各切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要か否かを判断する回収判断部16とを備え、回収判断部16は、切屑回収予定時刻に到達すると、切屑量検出器4及び切屑量監視部14により検出された切屑量と、次の切屑回収予定時刻への到達までに使用するNCプログラムに基づいて予想切屑量算出部13により算出された予想切屑量とを合算し、その合算値と切屑量閾値とを比較して、合算値が切屑量閾値を越えている場合に、到達した切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要と判断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械において加工により発生した切屑を受ける切屑収納容器と、
前記切屑収納容器に堆積した切屑量を検出する切屑量検出手段と、
前記切屑収納容器を回収する又は前記切屑収納容器から切屑を回収するタイミングである複数の所定の切屑回収予定時刻と、加工に使用するNCプログラムと、前記NCプログラムの使用予定時刻と、切屑回収の要否を判断するための切屑量閾値とを記憶する記憶手段と、
加工に伴い発生すると予想される切屑の量である予想切屑量を前記NCプログラムごとに算出する予想切屑量算出手段と、
各前記切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要か否かを判断する回収判断手段と、を備え、
前記回収判断手段は、前記切屑回収予定時刻に到達すると、前記切屑量検出手段により検出された切屑量と、次の前記切屑回収予定時刻への到達までに使用する前記NCプログラムに基づいて前記予想切屑量算出手段により算出された前記予想切屑量と、を合算し、その合算値と前記切屑量閾値とを比較して、前記合算値が前記切屑量閾値を越えている場合に、到達した前記切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要と判断することを特徴とする切屑回収システム。
【請求項2】
前記予想切屑量算出手段は、前記NCプログラムを過去に使用した際に前記切屑量検出手段により検出された過去の切屑量又は、前記NCプログラムを用いたシミュレーションにより計算された切屑量に基づいて前記予想切屑量を算出することを特徴とする請求項1に記載の切屑回収システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、加工に使用した前記NCプログラムの動作時間と動作中の平均主軸負荷とを記憶しており、
前記予想切屑量算出手段は、前記過去の切屑量に基づいて前記予想切屑量を算出する場合で、且つ使用する前記NCプログラムについて前記記憶手段に前記過去の切屑量が記憶されていない場合、過去の前記切屑回収予定時刻間に動作した全ての前記NCプログラムにおけるそれぞれの前記動作時間と前記平均主軸負荷との乗算値の総和に対する、使用する前記NCプログラムにおける前記動作時間と前記平均主軸負荷との乗算値の割合と、前記過去の前記切屑回収予定時刻間に前記切屑量検出手段により検出された前記全ての前記NCプログラムの動作による切屑量とに基づいて、前記予想切屑量を算出することを特徴とする請求項2に記載の切屑回収システム。
【請求項4】
前記工作機械から前記切屑収納容器へ切屑を搬送する切屑搬送装置と、
前記切屑搬送装置を制御する搬送装置制御部と、をさらに備え、
前記搬送装置制御部は、前記切屑回収予定時刻において前記切屑搬送装置を停止させ、且つ前記切屑量検出手段によって検出された切屑量が前記切屑量閾値以上になったときに前記切屑搬送装置を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の切屑回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械による加工に伴って発生した切屑を回収するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産工場での工作機械の切削加工において、素材から削り取られた材料は、一般にチップバケットや切屑受けのような切屑収納容器へ、工作機械から直接または切屑搬送装置を用いて回収される。切屑収納容器へ回収される切屑は、切屑収納容器から溢れると工場床面へ散らばってしまい、工場環境が悪化する原因となる。そのため、一般的には作業者が定期的または切屑収納容器内の切屑量を確認して切屑収納容器内の切屑を回収し、切屑収納容器内の切屑を空にすることで切屑収納容器から切屑が溢れることを防止している。
一方、切屑回収時に切屑搬送装置が動作していると、搬送された切屑が工場床面へ散らばってしまう問題を解決する技術がすでに公開されている。例えば特許文献1には、切屑搬送装置の排出口の下部にシャッター付きのシューターが設けられて、切屑量が所定量に達すると無人搬送車が切屑収納容器を回収し、回収中はシャッターが閉じて切屑が工場床面へ散らばらないようにする技術が公開されている。
また、生産現場では切屑の効率的な回収が求められている。例えば特許文献2には、連結が可能な切屑収納容器の技術が公開されている。ここでは機械毎に設定された切屑排出量から満杯となる時間を基に台車の回収ルートを決めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-166260号公報
【特許文献2】特許第5473120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な方法では定期的に切屑回収を行う場合、切屑が切屑収納容器に十分に堆積していない状態でも回収してしまうため、無駄な回収時間が発生し、生産効率が低下する。
しかし、特許文献1の発明によれば、切屑量を監視する手段を持つため、切屑収納容器内に切屑が十分に堆積した状態で回収可能となり、生産効率の低下を防止することができる。特許文献2の発明も、切屑収納容器が満杯の状態で回収することを前提にしているため、効率的な切屑回収を少ない労力で且つ短時間に行うことができる。
ところが、切屑量が堆積した容器や台車を回収するために無人搬送車を使用しているため、電力消費が大きくなり、コストの増加に繋がる。かといって重量の大きい容器や台車を人力で回収するとなると作業者に大きな負担となってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、生産効率の低下を防止すると共に、安価で切屑回収も容易に可能となる切屑回収システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、切屑回収システムであって、工作機械において加工により発生した切屑を受ける切屑収納容器と、
前記切屑収納容器に堆積した切屑量を検出する切屑量検出手段と、
前記切屑収納容器を回収する又は前記切屑収納容器から切屑を回収するタイミングである複数の所定の切屑回収予定時刻と、加工に使用するNCプログラムと、前記NCプログラムの使用予定時刻と、切屑回収の要否を判断するための切屑量閾値とを記憶する記憶手段と、
加工に伴い発生すると予想される切屑の量である予想切屑量を前記NCプログラムごとに算出する予想切屑量算出手段と、
各前記切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要か否かを判断する回収判断手段と、を備え、
前記回収判断手段は、前記切屑回収予定時刻に到達すると、前記切屑量検出手段により検出された切屑量と、次の前記切屑回収予定時刻への到達までに使用する前記NCプログラムに基づいて前記予想切屑量算出手段により算出された前記予想切屑量と、を合算し、その合算値と前記切屑量閾値とを比較して、前記合算値が前記切屑量閾値を越えている場合に、到達した前記切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要と判断することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記予想切屑量算出手段は、前記NCプログラムを過去に使用した際に前記切屑量検出手段により検出された過去の切屑量又は、前記NCプログラムを用いたシミュレーションにより計算された切屑量に基づいて前記予想切屑量を算出することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記記憶手段は、加工に使用した前記NCプログラムの動作時間と動作中の平均主軸負荷とを記憶しており、
前記予想切屑量算出手段は、前記過去の切屑量に基づいて前記予想切屑量を算出する場合で、且つ使用する前記NCプログラムについて前記記憶手段に前記過去の切屑量が記憶されていない場合、過去の前記切屑回収予定時刻間に動作した全ての前記NCプログラムにおけるそれぞれの前記動作時間と前記平均主軸負荷との乗算値の総和に対する、使用する前記NCプログラムにおける前記動作時間と前記平均主軸負荷との乗算値の割合と、前記過去の前記切屑回収予定時刻間に前記切屑量検出手段により検出された前記全ての前記NCプログラムの動作による切屑量とに基づいて、前記予想切屑量を算出することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記工作機械から前記切屑収納容器へ切屑を搬送する切屑搬送装置と、
前記切屑搬送装置を制御する搬送装置制御部と、をさらに備え、
前記搬送装置制御部は、前記切屑回収予定時刻において前記切屑搬送装置を停止させ、且つ前記切屑量検出手段によって検出された切屑量が前記切屑量閾値以上になったときに前記切屑搬送装置を停止させる制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、無駄な切屑回収及び切屑量の確認作業がなくなることで、生産効率が向上する。さらに切屑回収手段を無人搬送車に限定しないため、無人搬送車を導入するよりも安価にシステムを運用することが可能である。さらに、切屑回収の要否を判断する切屑量閾値を設定できるため、人力で回収する場合は作業者の身体能力と相談でき、誰にでも回収が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】切屑回収システムの動作制御のフローチャートである。
【
図4】切屑回収システムの動作制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、切屑回収システムSの機械構成図の一例を示している。工作機械1には、切屑搬送装置2が備えられている。切屑搬送装置2から排出される切屑は、切屑搬送装置2の切屑排出口下部に配置されたチップバケットの形態を持つ切屑収納容器3に堆積する。
切屑収納容器3には、切屑量検出器4が設けられている。切屑量検出器4によって切屑収納容器3内の切屑量は監視されており、あらかじめ設定された切屑回収予定時刻に切屑の回収が必要と判断された場合に、切屑回収手段5によって切屑収納容器3を回収する。本実施形態において、切屑回収手段5は無人搬送車である。また、本実施形態における切屑量とは、切屑の重量を示しているが、体積が検知できることが望ましい。
【0010】
図2は、切屑回収システムSの機能ブロック図の一例を示している。切屑回収システムSは、データベース11と、搬送タイミング導出部12と、予想切屑量算出部13と、切屑量監視部14と、搬送装置制御部15と、回収判断部16と、生産管理システム17とを備えている。
データベース11には、生産に使用するNCプログラムと、各NCプログラムの動作時間と、各NCプログラムの動作で発生すると予想される切屑量である予想切屑量と、各NCプログラムの動作での平均主軸負荷と、生産過程における各NCプログラムの使用予定時刻と、切屑収納容器3から切屑を回収する切屑回収予定時刻と、切屑搬送装置2のコンベアが工作機械1内を1周するために必要なコンベア回転時間と、切屑収納容器3から切屑が溢れないかを判断するための切屑量閾値と、過去の生産実績とが保存されている。
過去の生産実績として、過去の生産によって発生した切屑量、NCプログラム履歴、過去のNCプログラムの動作時間、過去のNCプログラム平均主軸負荷、過去の切屑回収時刻が保存されている。NCプログラムの予想切屑量、NCプログラムの動作時間、NCプログラム平均主軸負荷は、過去の生産実績から記録又は保存された値である。
生産過程におけるNCプログラム使用予定時刻、切屑回収予定時刻、コンベア回転時間、切屑量閾値は、あらかじめ設定される値である。データベース11は、本開示の記憶手段の一例である。
【0011】
搬送タイミング導出部12は、切屑回収中の切屑の工場床面への落下を防止することを目的として、切屑搬送装置2の動作タイミング及び停止タイミングを決定する。切屑搬送装置2の動作タイミングは、切屑回収予定時刻からコンベア回転時間を減算した時刻として決定する。停止タイミングは、切屑回収予定時刻として決定する。
予想切屑量算出部13は、各NCプログラムにより発生する予想切屑量を算出する。予想切屑量は、過去の生産実績により算出される。予想切屑量算出部13は、本開示の予想切屑量算出手段の一例である。
切屑量監視部14は、切屑収納容器3に設けられた切屑量検出器4によって切屑収納容器3に堆積した切屑量を測定しており、切屑量がデータベース11に保存された切屑量閾値を超過しないかの判断を行う。切屑量検出器4及び切屑量監視部14は、本開示の切屑量検出手段の一例である。
搬送装置制御部15は、切屑搬送装置2の動作タイミング及び停止タイミングと、切屑量監視部14の判断結果を基に、切屑搬送装置2の制御を行う。
回収判断部16は、データベース11の切屑量閾値と、切屑回収予定時刻における切屑収納容器3内の切屑量と当該切屑回収予定時刻の次回の切屑回収予定時刻までに動作するNCプログラムの予想切屑量との合算値と、を比較して、切屑回収の要否を判断する。回収判断部16は、本開示の回収判断手段の一例である。
【0012】
データベース11は、工場内に設置した専用のサーバで作成されたり、クラウドサービスなどのインターネットを介した方法で作成されたりして構築される。
搬送タイミング導出部12、予想切屑量算出部13、切屑量監視部14、搬送装置制御部15、回収判断部16は、工作機械1のNC装置10に構築される。NC装置10は、CPU及びCPUに接続されたメモリを含んで構成され、それらにより工作機械1及び切屑回収システムSの運転制御が実現される。但し、これらの機能部の一部又は全部は、工作機械1の外部に設けたコンピュータに構築してもよい。
生産管理システム17は、工場全体の切屑搬送装置2及びNC装置10の動作状況及び切屑回収状況を監視、記録している。
【0013】
以下、切屑回収システムSの運転制御を、
図3及び
図4のフローチャートに基づいて説明する。この運転制御は、NC装置10のCPUに接続されたメモリを含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラムによって実行される。
まず、ステップ(以下「S」と表記する)-1において、データベース11にアクセスし、切屑回収予定時刻と、コンベア回転時間とを取得する。
次に、S-2で、搬送タイミング導出部12にて、切屑回収予定時刻からコンベア回転時間を減算した時刻を切屑搬送装置2の動作タイミング、切屑回収予定時刻を切屑搬送装置2の停止タイミングとして導出し、設定する。
次に、S-3で、予想切屑量算出部13により予想切屑量を算出する。この算出の詳細については後述する。
次に、S-4で生産が開始されると、S-5で予定されたNCプログラムがスタートする。
【0014】
次に、S-6で、S-2にて設定された切屑搬送装置2の動作タイミングになったことが確認されると、S-7で切屑搬送装置2を動作させる。
次に、切屑搬送装置2が動作している間に、S-8で、切屑量監視部14にて切屑収納容器3の切屑量が切屑量閾値を超過したか否かを判定する。ここで切屑量が切屑量閾値を超えたと判定すれば、S-9でエラーを発信して切屑搬送装置2を停止させると共に、エラーを生産管理システム17へ記録して関係者へ報知する。ここで切屑回収手段5によって切屑収納容器3を回収してもよい。
一方、S-8の判定で切屑量が切屑量閾値を超えていなければ、S-10で、切屑搬送装置2の停止タイミング、すなわち切屑回収予定時刻になったか否かを判定する。ここでまだ切屑搬送装置2の停止タイミングでなければ、S-8へ戻り、切屑搬送装置2の停止タイミングになるまでS-8からS-10までをループする。そして、切屑搬送装置2の停止タイミングになったら、S-11で切屑搬送装置2を停止させる。
【0015】
その後、S-12で、S-5からS-11までに動作したNCプログラム履歴と、各NCプログラム動作時間と、現在の切屑収納容器3の切屑量と、NCプログラム平均主軸負荷とを過去の生産実績としてデータベース11へ記録する。
記録が完了したら、S-13で、回収判断部16が、現在の切屑収納容器3に堆積している切屑量を取得し、S-14で、次回の切屑回収予定時刻までに動作するNCプログラムを予測し、S-15で、予測したNCプログラムに基づいて予想切屑量算出部13により算出される予想切屑量と、現在の切屑収納容器3に堆積している切屑量とを合算し、S-16で、合算値とデータベース11内の切屑量閾値とを比較する。
ここで合算値が切屑量閾値未満であれば、切屑回収が不必要であるとし、S-17で、切屑回収が不必要との情報を生産管理システム17へ記録し、切屑回収手段5へ報知する。一方、合算値が切屑量閾値以上であれば、切屑回収が必要であるとし、S-18で、切屑回収が必要との情報を生産管理システム17へ記録し、切屑回収手段5へ報知して回収を実行する。その後、S-19で、動作予定のNCプログラムがまだあるかを判定し、NCプログラムがあればS-5へ戻る。NCプログラムがなければS-20で生産を終了する。
【0016】
S-3で算出される予想切屑量は、過去の生産実績から算出する値であり、具体的には、過去の各切屑回収時刻間に動作したNCプログラムの動作時間と平均主軸負荷との乗算値の割合を計算し、切屑回収時刻間の全ての切屑量に乗算値の割合を乗算して計算する。この計算方法を
図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、S-31でデータベース11にアクセスし、生産計画に使用するNCプログラム情報を取得する。
次に、S-32で、フローチャート内で予想切屑量を計算していないNCプログラムを選択し、S-33でフローチャート内の変数Nを1に設定する。
次に、S-34で、データベース11に記憶されている前回の切屑回収時刻から次回(前回の次という意味)の切屑回収時刻までの間に、選択したNCプログラムが動作した際の未確認の切屑回収時刻が存在するか否かを判別する。ここで未確認の切屑回収時刻の存在を確認すれば、S-35で、未確認の切屑回収時刻での予想切屑量を計算する。ここで計算式を以下に表記する。
【0017】
前回の切屑回収時刻から次回の切屑回収時刻までの間に動作したNCプログラムをNCa(1≦a≦A(A≧1))、NCプログラムの動作時間をTa、NCプログラム動作中の平均主軸負荷をFa、前回の切屑回収時刻から次回の切屑回収時刻までの間に動作した全NCプログラムによる切屑量をWとして、NCaによるこの切屑回収時刻での予想切屑量Waを以下のように計算する。
【0018】
【0019】
計算が完了したら、S-36で、Nに1を加算し、S-37で、選択したNCプログラムについて確認していない切屑回収時刻があるか否かを確認する。ここで未確認の切屑回収時刻がまだある場合は、S-34に戻る。未確認の切屑回収時刻がない場合は、S-38で、以下の式によりWaの平均値Wa’を計算し、これをNCaによる予想切屑量とする。
【0020】
【0021】
次に、S-39で、他に選択していないNCプログラムが存在するか否かを確認し、未選択のNCプログラムがあれば、S32に戻り、ない場合はS-40で計算を終了する。
S-34にて、未確認の切屑回収時刻が存在しなければ、S-39へ移行する。
なお、S-32で予想切屑量を計算していないNCプログラムが選択されても、S-34で未確認の切屑回収時刻が存在しない場合、予想切屑量は、当該NCプログラムにおいて切屑回収予定時刻間で検出された過去の切屑量となる。
【0022】
上記形態の切屑回収システムSは、工作機械1において加工により発生した切屑を受ける切屑収納容器3と、切屑収納容器3に堆積した切屑量を検出する切屑量検出器4及び切屑量監視部14と、切屑収納容器3を回収するタイミングである複数の所定の切屑回収予定時刻と、加工に使用するNCプログラムと、NCプログラムの使用予定時刻と、切屑回収の要否を判断するための切屑量閾値とを記憶するデータベース11と、を備える。
また、切屑回収システムSは、予想切屑量をNCプログラムごとに算出する予想切屑量算出部13と、各切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要か否かを判断する回収判断部16と、を備える。
そして、回収判断部16は、切屑回収予定時刻に到達すると、切屑量検出器4及び切屑量監視部14により検出された切屑量と、次の切屑回収予定時刻への到達までに使用するNCプログラムに基づいて予想切屑量算出部13により算出された予想切屑量と、を合算し、その合算値と切屑量閾値とを比較して、合算値が切屑量閾値を越えている場合に、到達した切屑回収予定時刻での切屑の回収が必要と判断する。
【0023】
この構成によれば、無駄な切屑回収及び切屑量の確認作業がなくなることで、生産効率が向上する。さらに切屑回収手段を無人搬送車に限定しないため、無人搬送車を導入するよりも安価にシステムを運用することが可能である。さらに、切屑回収の要否を判断する切屑量閾値を設定できるため、人力で回収する場合は作業者の身体能力と相談でき、誰にでも回収が可能となる。
【0024】
予想切屑量算出部13は、NCプログラムを過去に使用した際に切屑量検出器4及び切屑量監視部14により検出された過去の切屑量により計算された切屑量に基づいて予想切屑量を算出する。よって、過去の生産実績に基づいた正確な予想切屑量が算出可能となる。
予想切屑量算出部13は、過去の切屑量に基づいて予想切屑量を算出する場合で、且つ使用するNCプログラムについてデータベース11に過去の切屑量が記憶されていない場合、過去の切屑回収予定時刻間に動作した全てのNCプログラムにおけるそれぞれの動作時間Taと平均主軸負荷Faとの乗算値の総和に対する、使用するNCプログラムにおける動作時間Taと平均主軸負荷Faとの乗算値の割合と、過去の切屑回収予定時刻間に切屑量検出器4及び切屑量監視部14により検出された全てのNCプログラムの動作による切屑量Wとに基づいて、予想切屑量Waを算出する。
よって、NCプログラムの動作時間Taと平均主軸負荷Faとに基づいて予想切屑量Waが容易に算出できる。
【0025】
工作機械1から切屑収納容器3へ切屑を搬送する切屑搬送装置2と、切屑搬送装置2を制御する搬送装置制御部15と、をさらに備え、搬送装置制御部15は、切屑回収予定時刻において切屑搬送装置2を停止させ、且つ切屑量検出器4及び切屑量監視部14によって検出された切屑量が切屑量閾値以上になったときに切屑搬送装置2を停止させる制御を行う。よって、切屑回収中の切屑の工場床面への落下を好適に防止可能となる。
【0026】
上記形態では、切屑搬送装置及びチップバケットの形態を持つ切屑収納容器が備わっているが、工作機械から排出される切屑が、切屑量監視手段をもつ何かしらの容器に収納される形態であればよい。すなわち、切屑収納容器は切屑受けのような容器で直接切屑を受けるなどの手段を取ってもよいし、切屑搬送装置の有無は問わない。
データベースに記録される情報は、上記形態に限らず適宜追加してもよい。データベースは、例えば工場の内外で複数あってもよい。
上記形態において、予想切屑量は、過去の各切屑回収予定時刻間に動作したNCプログラムの動作時間と平均主軸負荷との乗算値の割合を計算し、全NCプログラムの動作による切屑量に乗算値の割合を乗算して算出したが、本開示においては、NCプログラムの使用によって算出された値であれば、予想切屑量の算出方法は問わない。例えば、上記形態のようにNCプログラムの使用によって発生した切屑量の実測値を基に算出してもよいし、NCプログラムを使用したシミュレーションによって算出される切屑量を基に算出してもよい。また、上記形態では予想切屑量の計算を生産前に実施したが、予想切屑量の計算は生産中にその都度実施してもよい。
【0027】
切屑搬送装置を備える場合、切屑搬送装置の動作タイミング及び停止タイミングの計算は、切屑収納容器からの切屑回収作業中に切屑の搬送を実施しない制御であるならば、その計算方法は問わない。
上記形態において、切屑回収手段は無人搬送車としたが、回収判断手段からの回収要否連絡を受け取ることができるのであれば、例えば通信機器を携帯した作業者でもよく、その形態は問わない。切屑の回収は、切屑収納容器を回収する上記形態に限らず、切屑収納容器から切屑をその場で回収する形態であってもよい。
切屑回収予定時刻の間には複数のNCプログラムがあってもよいし、1つのNCプログラムであっても当該NCプログラムについて切屑回収の要否を判断すればよい。
【符号の説明】
【0028】
S・・切屑回収システム、1・・工作機械、2・・切屑搬送装置、3・・切屑収納容器、4・・切屑量検出器、5・・切屑回収手段、11・・データベース、12・・搬送タイミング導出部、13・・予想切屑量算出部、14・・切屑量監視部、15・・搬送装置制御部、16・・回収判断部、17・・生産管理システム。