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特開2024-151222制御装置、電池性能推定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151222
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】制御装置、電池性能推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20241017BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241017BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241017BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241017BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20241017BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
G01R31/396
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064452
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 忠大
(72)【発明者】
【氏名】磯部 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】小松 貢平
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA21
2G216CB34
2G216CD03
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CB13
5G503EA08
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS20
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】電池パックの性能が劣化した場合の対処にかかるコストを抑制する。
【解決手段】制御装置10はモジュール情報管理部110と性能情報出力部120とを備える。モジュール情報管理部110は、複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定し、電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成して不揮発メモリ30に記憶させる。性能情報出力部120は、不揮発メモリ30に記憶されているモジュール情報に基づいて、電池パックの性能を示す性能情報を出力する。電池パック20に含まれる複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、モジュール情報管理部110は、モジュール情報において、当該少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新し、性能情報出力部120は、当該少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて性能情報を更新する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定して電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成し、当該モジュール情報を不揮発メモリに記憶させるモジュール情報管理手段と、
前記不揮発メモリに記憶されている前記モジュール情報に基づいて、前記複数の電池モジュールを含んで構成される電池パックの性能を示す性能情報を出力する性能情報出力手段と、を備え、
前記複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、
前記モジュール情報管理手段は、前記モジュール情報において、前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新し、
前記性能情報出力手段は、前記少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて前記性能情報を更新する、
制御装置。
【請求項2】
前記電池モジュールの劣化状態は、State of Health(SOH)またはState of Resistance(SOR)により表される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記モジュール情報管理手段は、
電池モジュール毎に、当該電池モジュールを構成する複数のセルの各々について劣化状態を推定し、
前記複数のセルの各々について推定された劣化状態に基づいて、劣化が進行している順に所定数のセルを特定し、
当該特定した所定数のセルの劣化状態を示す情報を、前記電池モジュールの劣化状態を示す情報として前記モジュール情報に含める、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定数は、前記電池モジュールに含まれる前記複数のセルの直列数の20%以下である、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記所定数は1である、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記モジュール情報管理手段は、
前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報の更新において、当該少なくとも一つの電池モジュールの劣化状態を所定値に設定する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項7】
少なくとも一つのコンピュータが、
複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定して電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成し、当該モジュール情報を不揮発メモリに記憶させ、
前記不揮発メモリに記憶されている前記モジュール情報に基づいて、前記複数の電池モジュールを含んで構成される電池パックの性能を示す性能情報を出力し、
前記複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、
前記モジュール情報において、前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新し、
前記少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて前記性能情報を更新する、
ことを含む電池性能推定方法。
【請求項8】
少なくとも一つのコンピュータを、
複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定して電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成し、当該モジュール情報を不揮発メモリに記憶させる手段、
前記不揮発メモリに記憶されている前記モジュール情報に基づいて、前記複数の電池モジュールを含んで構成される電池パックの性能を示す性能情報を出力する手段、
前記複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、
前記モジュール情報において、前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新する手段、
前記少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて前記性能情報を更新する手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の性能を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
充電可能な電池は様々な用途で利用されている。充放電可能な電池の性能は、当該電池の状態に基づいて推定することができる。
【0003】
充放電可能な電池の性能を推定する技術の一例が、下記特許文献1に開示されている。特許文献1は、複数のバッテリモジュールの各々についてモジュール状態を算出し、当該複数のバッテリモジュールを含んで構成される電池パックの性能を、算出された複数のモジュール状態の中の最小値に基づいて決定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-004955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力で駆動する製品の動力源として、複数の充放電可能な電池を組み合わせた電池パックが利用されている。そのような電池パックの需要は年々高まってきており、その結果、電池パックのコストが増加してきている。電池パックの性能は使用回数や時間の経過といった様々な要因で低下し、最終的に電池パックは寿命を迎えるため、いずれかのタイミングで電池パックは交換しなければならない。電池パックの交換にかかるコストを低下させる技術が望まれる。
【0006】
本発明の目的の一例は、電池パックの性能が劣化した場合の対処にかかるコストを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定して電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成し、当該モジュール情報を不揮発メモリに記憶させるモジュール情報管理手段と、
前記不揮発メモリに記憶されている前記モジュール情報に基づいて、前記複数の電池モジュールを含んで構成される電池パックの性能を示す性能情報を出力する性能情報出力手段と、を備え、
前記複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、
前記モジュール情報管理手段は、前記モジュール情報において、前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新し、
前記性能情報出力手段は、前記少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて前記性能情報を更新する、
制御装置が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、
少なくとも一つのコンピュータが、
複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定して電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成し、当該モジュール情報を不揮発メモリに記憶させ、
前記不揮発メモリに記憶されている前記モジュール情報に基づいて、前記複数の電池モジュールを含んで構成される電池パックの性能を示す性能情報を出力し、
前記複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、
前記モジュール情報において、前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新し、
前記少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて前記性能情報を更新する、
ことを含む電池性能推定方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、
少なくとも一つのコンピュータを、
複数の電池モジュールの各々の劣化状態を推定して電池モジュール毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成し、当該モジュール情報を不揮発メモリに記憶させる手段、
前記不揮発メモリに記憶されている前記モジュール情報に基づいて、前記複数の電池モジュールを含んで構成される電池パックの性能を示す性能情報を出力する手段、
前記複数の電池モジュールの少なくとも一つが交換されたことに応じて、
前記モジュール情報において、前記少なくとも一つの電池モジュールに対応する情報を更新する手段、
前記少なくとも一つの電池モジュール以外の電池モジュールに対応する情報に基づいて前記性能情報を更新する手段、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池パックの性能が劣化した場合の対処にかかるコストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る制御装置の使用環境を例示する図である。
図2】第1実施形態に係る制御装置の機能構成を例示する図である。
図3】集積回路のハードウエア構成を例示する図である。
図4】第1実施形態に係る制御装置の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る制御装置の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。
図6】S112およびS114の処理の具体的な流れを説明するための図である。
図7】S112およびS114の処理の具体的な流れを説明するための図である。
図8】第2実施形態に係る制御装置の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。
図9】処理対象の電池モジュールに含まれる複数のセルの各々について劣化状態を推定した結果の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、特に説明する場合を除き、各ブロック図において、各ブロックは、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表している。また、図中の矢印の向きは、情報の流れ等を分かり易くするためのものに過ぎず、特に説明のない限り通信の方向(一方向通信/双方向通信)を限定しない。
【0013】
・概要
図1は、本開示に係る制御装置10の使用環境を例示する図である。図1に例示される使用環境において、制御装置10は電池パック20と接続されている。
【0014】
電池パック20は、図示しない電気駆動製品に取り付けられ、当該電気駆動製品の動力源として機能する。電池パック20は、2つまたはそれ以上の電池モジュール22を含んで構成される。電池モジュール22は、複数のセルを組み合わせてパッケージ化された構成単位である。セルは、電池としての機能を単独で有する最小の構成単位である。また図示されていないが、電池パック20は、充放電回路、保護回路および冷却機構等の他の構成要素を含んでいてもよい。
【0015】
制御装置10は、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22の各々の劣化状態を管理する機能と、電池モジュール22毎の劣化状態に基づいて電池パック20の性能を推定する機能と、を少なくとも備える。前者の機能は、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22の各々の劣化状態を推定し、電池モジュール毎の劣化状態を示す情報(以下、「モジュール情報」とも表記)を生成し、生成したモジュール情報を所定の記憶領域に記憶させる機能である。また、後者の機能は、所定の記憶領域に記憶されたモジュール情報に基づいて、電池パック20の性能を示す情報(以下、「性能情報」とも表記)を出力する機能である。
【0016】
なお、制御装置10は、Battery Management System(BMS)としての機能を兼ね備えていてもよい。或いは、制御装置10は、既存のBMSに取り付けることによって当該BMSの機能を拡張する装置であってもよい。また、制御装置10は、電池パック20の一構成要素として、電池パック20に組み込まれていてもよい。
【0017】
以下、いくつかの実施形態を例示し、本開示に係る制御装置10について説明する。
【0018】
・第1実施形態
図2は、第1実施形態に係る制御装置10の機能構成を例示する図である。図2に例示される制御装置10は、不揮発メモリ30とともに、モジュール情報管理部110および性能情報出力部120を備える。
【0019】
モジュール情報管理部110は、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22の各々の劣化状態を推定する。また、モジュール情報管理部110は、複数の電池モジュール22の各々の劣化状態を推定結果に基づいて、電池モジュール22毎の劣化状態を示すモジュール情報を生成する。また、モジュール情報管理部110は、生成したモジュール情報を、所定の記憶領域、例えば、図中の不揮発メモリ30などに記憶させる。なお、不揮発メモリ30は、制御装置10の外部に備えられていてもよい。例えば、不揮発メモリ30は、電池パック20の内部に備えられていてもよいし、電池パック20を管理するBMS(図示せず)の内部に備えられていてもよい。
【0020】
性能情報出力部120は、不揮発メモリ30に記憶されているモジュール情報に基づいて、電池パック20の性能を示す性能情報を出力する。性能情報出力部120から出力される性能情報は、特に制限されないが、例えば、電池パック20全体としての劣化状態や電池パック20全体の使用可能電力量などを示す情報である。
【0021】
本開示に係る制御装置10において、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22のうちの少なくとも一つが交換された場合、モジュール情報管理部110および性能情報出力部120はそれぞれ以下に説明する動作を実行する。
【0022】
モジュール情報管理部110は、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22のうちの少なくとも一つが交換されたことに応じて、モジュール情報を更新する。具体的には、モジュール情報管理部110は、モジュール情報において、当該少なくとも一つの電池モジュール22に対応する情報を更新する。
【0023】
性能情報出力部120は、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22のうちの少なくとも一つが交換されたことに応じて更新されたモジュール情報を用いて、電池パック20の性能情報を更新する。具体的には、性能情報出力部120は、当該少なくとも一つの電池モジュール22以外の電池モジュール22に対応する情報に基づいて、電池パック20の性能情報を更新する。
【0024】
図3は、集積回路40のハードウエア構成を例示する図である。本図において制御装置10のモジュール情報管理部110および性能情報出力部120は、集積回路40を用いて実装されている。
【0025】
集積回路40は、例えばSystem On Chip(SoC)である。集積回路40は、バス402、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412を有する。
【0026】
バス402は、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ404などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0027】
プロセッサ404は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。
【0028】
メモリ406は、Random Access Memory(RAM)などを用いて実現される主記憶装置である。
【0029】
ストレージデバイス408は、Read Only Memory(ROM)やフラッシュメモリなどを用いて実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス408は、図2に例示される不揮発メモリ30として機能し得る。
【0030】
入出力インタフェース410は、集積回路40(制御装置10)に入出力機器を接続するためのインタフェースである。例えば、キーボードやタッチパネルといった入力機器や、ディスプレイやスピーカーといった出力機器などが、入出力インタフェース410を介して集積回路40(制御装置10)に接続される。
【0031】
ネットワークインタフェース412は、集積回路40(制御装置10)を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えばLocal Area Network(LAN)、Wide Area Network(WAN)、Controller Area Network(CAN)などを含む。なお、ネットワークインタフェース412を介して通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0032】
ストレージデバイス408は、制御装置10の各種機能に対応するプログラムモジュールを記憶している。ストレージデバイス408は、少なくとも、本開示において説明するモジュール情報管理部110の機能に対応するプログラムモジュールと、性能情報出力部120の機能を対応するプログラムモジュールとを記憶している。プロセッサ404は、ストレージデバイス408から読み出したプログラムモジュールをメモリ406上に展開して実行することにより、そのプログラムモジュールに対応する機能を実現する。例えば、プロセッサ404は、モジュール情報管理部110に対応するプログラムモジュールをメモリ406上に読み出して実行することで、本開示において説明されるモジュール情報管理部110の機能を実現する。また例えば、プロセッサ404は、性能情報出力部120に対応するプログラムモジュールをメモリ406上に読み出して実行することで、本開示において説明される性能情報出力部120の機能を実現する。このプロセッサ404の動作は、本開示に含まれる実施形態において共通である。
【0033】
集積回路40(制御装置10)のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、制御装置10の各機能に対応するプログラムモジュールはメモリ406に格納されてもよい。この場合、集積回路40(制御装置10)は、ストレージデバイス408を備えていなくてもよい。
【0034】
以下、図を用いて、第1実施形態に係る制御装置10の動作例について説明する。図4および図5は、第1実施形態に係る制御装置10の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。
【0035】
制御装置10は、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22の少なくとも一つが交換されたか否かを監視している(S102)。一例として、制御装置10は、各電池モジュール22について取得可能なメタデータ、例えば、各電池モジュール22の個体識別情報等を含むデータに基づいて電池モジュール22が交換されたか否かを判定することができる。具体的には、不揮発メモリ30に記憶されているモジュール情報の中で管理されている個体識別番号の少なくとも一つに代えて新たな個体識別番号が検知された場合に、制御装置10は複数の電池モジュール22の少なくとも一つが交換されたことを検知できる。
【0036】
電池モジュール22の交換が検知されなかった場合(S102:NO)、以下で説明するS104からS110の処理が実行される。なお、S104からS110の処理は任意のタイミングで実行される。例えば、S104からS110の処理は、メモリ406等に予め記憶されたスケジュール情報が示すタイミングで実行されてもよいし、電池パック20の通電が終了したタイミングで実行されてもよい。
【0037】
まず、モジュール情報管理部110は、複数の電池モジュール22の各々について、劣化状態を推定する(S104)。電池モジュール22の劣化状態は、特に限定されないが、例えばState of Health(SOH)やState of Resistance(SOR)といった指標値によって表される。この場合、モジュール情報管理部110は、電池モジュール22の劣化状態を推定する手法として、既知の様々な手法を利用できる。
【0038】
そして、モジュール情報管理部110は、S104の処理において推定された複数の電池モジュール22の各々の劣化状態に基づいて、不揮発メモリ30に記憶されているモジュール情報を生成または更新する(S106)。具体的には、不揮発メモリ30にモジュール情報が記憶されていない場合、モジュール情報管理部110は、S104の処理において推定された複数の電池モジュール22の各々の劣化状態に基づいてモジュール情報を新規に生成し、当該生成したモジュール情報を不揮発メモリ30に記憶させる。一方、不揮発メモリ30にモジュール情報が既に記憶されている場合、モジュール情報管理部110は、S104の処理において推定された複数の電池モジュール22の各々の劣化状態に基づいて、不揮発メモリ30に記憶されているモジュール情報を更新する。
【0039】
性能情報出力部120は、S106の処理で生成または更新されたモジュール情報に基づいて、電池パック20の性能情報を生成または更新する(S108)。具体的には、S106の処理で新規にモジュール情報が生成された場合、性能情報出力部120は、当該モジュール情報に基づいて電池パック20の性能情報を新規に生成する。生成された性能情報は、所定の記憶領域、例えば不揮発メモリ30に記憶される。一方、S106の処理でモジュール情報が更新された場合、性能情報出力部120は、更新されたモジュール情報に基づいて、既に記憶されている電池パック20の性能情報を更新する。
【0040】
ここで、電池パック20の性能は、複数の電池モジュール22の中で最も劣化した電池モジュール22に依存する。そのため、複数の電池モジュール22の劣化状態がSOHで表される場合、性能情報出力部120は、好ましくは、複数の電池モジュール22のSOHの中から最低値を特定し、特定したSOHの最低値を電池パック20の性能情報として生成する。また、複数の電池モジュール22の劣化状態がSORで表される場合、性能情報出力部120は、好ましくは、複数の電池モジュール22のSORの中から最大値を特定し、特定したSORの最大値を電池パック20の性能情報として生成する。このようにすることで、電池パック20の性能を適切に示す情報が得られる。
【0041】
そして、性能情報出力部120は、電池パック20の性能情報を出力する(S110)。一例として、性能情報出力部120は、制御装置10の入出力インタフェース410を介して接続されるディスプレイ(図示せず)に、S108の処理で生成又は更新された性能情報を表示させる。他の一例として、性能情報出力部120は、電池パック20の性能情報を利用して処理を実行する他の処理部(図示せず)に、S108の処理で生成又は更新された性能情報を出力してもよい。他の処理部は、制御装置10とは異なる他の装置に備えられた処理部であってもよい。
【0042】
S102の判定処理の説明に戻る。電池モジュール22の交換が検知された場合(S102:YES)、図5に例示されるS112からS116の処理が実行される。
【0043】
まず、モジュール情報管理部110は、モジュール情報において、交換された電池モジュールに対応する情報を更新する(S112)。一例として、モジュール情報管理部110は、以下のように動作する。モジュール情報管理部110は、検知されなくなった電池モジュール22に対応する情報を更新対象の情報として特定する。具体的には、モジュール情報管理部110は、モジュール情報において管理されている複数の個体識別番号の中から、検知されなくなった個体識別番号を特定する。そして、モジュール情報管理部110は、当該個体識別番号に関連付けられる情報を更新対象の情報として特定する。そして、モジュール情報管理部110は、更新対象の情報を、新たに検知された電池モジュール22の情報と置き換える。これにより、不揮発メモリ30に記憶されるモジュール情報が、電池モジュール22の交換後の状態に更新される。電池モジュール22の交換に応じてモジュール情報を更新する処理の具体的な流れについては、別の図を用いて説明する。
【0044】
そして、性能情報出力部120は、交換されていない電池モジュール22に対応する情報に基づいて、電池パック20の性能情報を更新する(S114)。例えば、性能情報出力部120は、S112の処理で対象として特定されなかった電池モジュール22に対応する情報を、交換されていない電池モジュール22に対応する情報として特定する。そして、性能情報出力部120は、そのように特定した情報に基づいて、電池パック20の性能情報を更新する。電池モジュール22の交換に応じて電池パック20の性能を更新する処理の具体的な流れについては、別の図を用いて説明する。
【0045】
そして、性能情報出力部120は、S114の処理において更新した電池パック20の性能情報を出力する(S116)。この処理は、図4のS110の処理と同様である。
【0046】
図6および図7は、S112およびS114の処理の具体的な流れを説明するための図である。図6には、複数の電池モジュール22の少なくとも一つが交換される前のモジュール情報が例示されている。図7には、複数の電池モジュール22の少なくとも一つが交換された後のモジュール情報が例示されている。図6および図7の例では、電池パック20は、それぞれ異なる個体識別番号を有する5つの電池モジュール22を含んで構成されている。
【0047】
まず、モジュール情報管理部110によるモジュール情報の更新処理の流れを説明する。一例として、個体識別番号が「ID005」である電池モジュール22が、図7に例示されるように、個体識別番号が「ID006」である電池モジュール22に交換されたとする。この場合、図6に例示されるモジュール情報の中で個体識別番号が「ID005」である電池モジュール22が検知されなくなるため、モジュール情報管理部110は、個体識別番号「ID005」に関連する情報、具体的には、図6に例示されるモジュール情報のうち一番下の行の情報を更新対象の情報として特定する。そして、モジュール情報管理部110は、更新対象の情報として特定した情報を図7に例示されるように更新する。
【0048】
ここで、モジュール情報管理部110は、交換された電池モジュール22、すなわち、個体識別番号が「ID006」である電池モジュール22の劣化状態を所定値に設定する。特に限定されないが、図7の例では、モジュール情報管理部110は、交換された電池モジュール22の劣化状態として、「SOH:100%」を設定している。交換される電池モジュール22は、通常、新品または新品同様の状態であると考えられることから、モジュール情報管理部110は、新品または新品同様の値(例えば、98%以上の値)を交換された電池モジュール22の情報として設定すればよい。また、交換される電池モジュール22は、通常、新品または新品同様の状態であると考えられることから、電池パック20の性能は、交換直後の電池モジュール22にそれほど大きな影響を受けないと言える。そのため、交換された電池モジュール22について設定される情報の精度は、それほど高くなくてもよい。仮に交換直後に設定される情報の精度が低くかったとしても、その後に実行されるモジュール情報の更新処理(例えば、図4のS104の処理)によって、各電池モジュール22に関する情報の精度が保たれる。
【0049】
次に、性能情報出力部120による電池パック20の性能情報の更新処理の流れを説明する。まず、モジュール情報として図6に例示されるような情報が不揮発メモリ30に記憶されている場合、性能情報出力部120は、例えば、劣化状態の最低値(SOH:81%)を電池パック20の性能情報として出力することができる。その後、ある電池モジュール22が交換されたことによって、図7に例示されるようにモジュール情報が更新された場合、性能情報出力部120は、交換されなかった電池モジュール22に対応する情報を用いて、電池パック20の性能情報を更新する。具体的には、性能情報出力部120は、個体識別番号「ID005」以外の個体識別番号を有する電池モジュール22に関する情報を、電池パック20の性能情報を更新するために使用する情報として特定する。図7の例では、性能情報出力部120は、個体識別番号「ID001」から個体識別番号「ID004」の4つの電池モジュール22に関する情報を、処理対象の情報として特定する。ここで、特定された4つの電池モジュール22の中で個体識別番号「ID002」に対応する電池モジュール22の劣化状態が最低値(SOH:85%)を示している。この場合、性能情報出力部120は、電池パック20の性能情報を交換前の状態(SOH:81%)から交換後の状態(SOH:85%)に更新する。
【0050】
第1実施形態に係る制御装置10の作用および効果について例示する。本実施形態によれば、電池パック20に含まれる複数の電池モジュール22の少なくとも一つが交換された場合、交換された電池モジュール22に対応する情報が更新されるとともに、交換された電池モジュール22以外の電池モジュール22に対応する情報を用いて電池パック20の性能を示す性能情報が更新される。このような構成を採用することにより、電池パック20の性能が劣化した場合において当該劣化の原因となっている電池モジュール22のみを交換する、といった運用が可能となる。電池モジュール22単位での交換を可能とすることで電池パック20全体を交換する場合よりもコストを削減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、電池パック20の性能情報を生成するために利用する情報が、当該電池パック20に含まれる電池モジュール22単位で記憶される。これにより、電池パック20の性能を示すデータの容量を削減することができる。電池パック20の性能を示すデータの容量を削減することにより、例えば、そのようなデータを電池パック20内のROMなどで管理する場合に低容量のROMが利用可能となる。すなわち、そのような場合には、電池パック20の製造コストを低下させる効果も期待できる。
【0052】
・第2実施形態
第2実施形態に係る制御装置10は、以下で説明する点を除き、上述の第1実施形態と同様の構成を有する。
【0053】
本実施形態の制御装置10は、図2に示すような機能構成を有する。但し、本実施形態のモジュール情報管理部110は、各電池モジュール22の劣化状態を推定する際、以下のように動作する。まず、モジュール情報管理部110は、各電池モジュール22を構成する複数のセルの各々について劣化状態を推定する。そして、モジュール情報管理部110は、複数のセルの各々について推定された劣化状態に基づいて、劣化が進行している順に所定数のセルを特定する。そして、モジュール情報管理部110は、特定された所定数のセルの劣化状態を示す情報を、対応する電池モジュール22の劣化状態を示す情報としてモジュール情報に含める。
【0054】
ここで「所定数」は、各電池モジュール22に含まれるセルの総数よりも小さい数値として、任意の数値を設定できる。なお、「所定数」が小さくなるほど、モジュール情報の情報量が小さくなる。一例として、「所定数」は、「各電池モジュール22に含まれる複数のセルの直列数の20%またはそれ以下の数値」として設定される。他の一例として、「所定数」は「1」に設定される。この場合、モジュール情報の情報量を削減する効果については、前者のケースにおける効果よりも後者のケースにおける効果のほうが大きくなる。
【0055】
以下、図を用いて、第2実施形態に係る制御装置10の動作例について説明する。図8は、第2実施形態に係る制御装置10の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートにおいて、各電池モジュール22の劣化状態を推定する処理の具体例が示されている。本図に示される処理は、例えば第1実施形態に置いて説明した図4のS104および図5のS112において、処理対象の電池モジュール22毎にそれぞれ実行される。
【0056】
まず、モジュール情報管理部110は、処理対象の電池モジュール22に含まれる複数のセルの各々の劣化状態を推定する(S202)。なお、モジュール情報管理部110は、既知の手法により、複数のセルの各々の劣化状態を推定できる。例えば、モジュール情報管理部110は、複数のセルの各々の電圧値や電流値および電池パック20の使用環境における温度(内部温度や雰囲気温度)等を入力情報として用いて、複数のセルの各々のSOHやSORを推定することができる。
【0057】
次に、モジュール情報管理部110は、処理対象の電池モジュール22に含まれる複数のセルの各々について推定された劣化状態に基づいて、所定数のセルを特定する(S204)。例えば、処理対象の電池モジュール22に30個のセルが含まれており、S202の処理の結果として図9に示すような結果が得られたとする。なお、図9の例では、劣化の進行度合いの昇順で複数のセルの劣化状態に関する情報を並べた状態が描かれている。モジュール情報管理部110は、図9に示されるような結果に基づいて、所定数のセルを特定する。例えば、「所定数」が「電池モジュール22に含まれる電池モジュール22の総数の10%」である場合、モジュール情報管理部110は、上から3つのセルを「所定数のセル」として特定する。また例えば、「所定数」が「1」である場合、モジュール情報管理部110は、一番上のセルを「所定数のセル」として特定する。なお、「所定数」に関する情報は、メモリ406やストレージデバイス408といった、モジュール情報管理部110がアクセス可能な記憶領域に予め記憶されている。モジュール情報管理部110は、当該記憶領域に記憶されている情報を参照することによって、「所定数」を認識できる。
【0058】
そして、モジュール情報管理部110は、S204で特定された「所定数のセル」の劣化状態を、処理対象の電池モジュール22の劣化状態を示す情報としてモジュール情報に含める(S206)。例えば、「所定数のセル」として1つのセルが特定されている場合、モジュール情報管理部110は、当該1つのセルの劣化状態を、処理対象の電池モジュール22の劣化状態としてモジュール情報に含める。図9に例示される状態において1つのセルが「所定数のセル」として特定されるケースでは、モジュール情報管理部110は、1番上のセルの劣化状態(SOH:80%)を、処理対象の電池モジュール22の劣化状態を示す情報としてモジュール情報に含める。また、「所定数のセル」として2以上のセルが特定されている場合、モジュール情報管理部110は、それら2以上のセルの劣化状態を、処理対象の電池モジュール22の劣化状態としてモジュール情報に含める。図9に例示される状態において3つのセルが「所定数のセル」として特定されるケースでは、モジュール情報管理部110は、上位3つのセルの劣化状態(それぞれ、SOH:80%、SOH:82%、SOH:82%)を、処理対象の電池モジュール22の劣化状態としてモジュール情報に含める。
【0059】
第2実施形態に係る制御装置10によっても、第1実施形態で説明したような作用および効果が得られる。
【0060】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0061】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 制御装置
110 モジュール情報管理部
120 性能情報出力部
20 電池パック
22 電池モジュール
30 不揮発メモリ
40 集積回路
402 バス
404 プロセッサ
406 メモリ
408 ストレージデバイス
410 入出力インタフェース
412 ネットワークインタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9