(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151223
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】制御装置、電池性能推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20241017BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241017BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241017BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20241017BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241017BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20241017BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
H02J7/00 X
G01R31/389
G01R31/382
G01R31/385
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064453
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 忠大
(72)【発明者】
【氏名】森 雄章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴仁
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA21
2G216BA41
2G216BA51
2G216BA71
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB10
5G503CB11
5G503EA05
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】「使用可能電力量」という観点で電池の性能を精度よく推定する技術を提供する。
【解決手段】制御装置10は、取得部110および算出部120を備える。取得部110は、第1時点における電池パック20の容量および第1時点における電池パック20の抵抗上昇値を取得する。算出部120は、第1時点における電池パック20の容量、初期状態の電池パック20の放電電圧である基準放電電圧、および、第1時点における電池パック20の抵抗上昇値を用いて、第1時点における電池パック20の使用可能電力量を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時点における電池パックの容量および前記第1時点における前記電池パックの抵抗上昇値を取得する取得手段と、
前記第1時点における前記電池パックの前記容量、初期状態の前記電池パックの放電電圧である基準放電電圧、および、前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値を用いて、前記第1時点における前記電池パックの使用可能電力量を算出する算出手段と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値と前記基準放電電圧とに基づいて、前記第1時点における前記電池パックの放電電圧を推定し、
当該推定した前記第1時点における前記電池パックの前記放電電圧を用いて、前記第1時点における前記使用可能電力量を算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記算出手段は、
抵抗上昇値を変数とし且つ放電電圧をy切片とする一次関数を所定の記憶領域から読み出し、
前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値と、前記基準放電電圧と、を読み出した前記一次関数に適用することによって、前記第1時点における前記電池パックの前記放電電圧を算出する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記使用可能電力量に基づいて、前記電池パックに接続された電気駆動製品の動作の目安となる情報を出力装置に出力する出力手段を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
少なくとも一つのコンピュータが、
第1時点における電池パックの容量および前記第1時点における前記電池パックの抵抗上昇値を取得し、
前記第1時点における前記電池パックの前記容量、初期状態の前記電池パックの放電電圧である基準放電電圧、および、前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値を用いて、前記第1時点における前記電池パックの使用可能電力量を算出する、
ことを含む電池性能推定方法。
【請求項6】
少なくとも一つのコンピュータを、
第1時点における電池パックの容量および前記第1時点における前記電池パックの抵抗上昇値を取得する取得手段、
前記第1時点における前記電池パックの前記容量、初期状態の前記電池パックの放電電圧である基準放電電圧、および、前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値を用いて、前記第1時点における前記電池パックの使用可能電力量を算出する算出手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の性能を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
充電可能な電池は様々な用途で利用されている。充放電可能な電池の性能は、当該電池の状態に基づいて推定することができる。
【0003】
充放電可能な電池の性能を推定する技術の一例が、下記特許文献1および特許文献2に開示されている。特許文献1には、電池セルの電圧および電流に基づいて算出される第1電力量収支と、電池セルの電流および内部抵抗に基づいて算出される第2電力量収支と、を用いて、電池セルに蓄積される電力量を算出する技術が開示されている。また、特許文献2には、蓄電池の内部抵抗を用いて放電時における電圧降下を算出し、その電圧降下とSOC-OCV曲線とに基づいて、入出力可能な電力量を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/128811号
【特許文献2】国際公開第2017/076141号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の性能は、例えば、電池の劣化状態を示すState of Health(SOH)という指標によって表される。一般的には、電池のSOHは、初期状態、すなわちBegin of Life(BOL)時の容量に対して、劣化後の容量を計測または予測することにより算出される。例えば、ある電池のBOL時の容量が「100Ah」であり、劣化後の容量が「80Ah」である場合、SOHは、「(80Ah/100Ah)×100」という計算から、「80%」と算出される。
【0006】
電池が劣化すると、その電池の容量が低下するだけでなく、その電池の内部抵抗値も上昇する。つまり、電池の劣化が進行するほど、放電時の内部抵抗値による電圧降下量が増加し、電池の出力電圧が低下する。ここで、電池の使用可能電力量は、電池の容量に電池の出力電圧を乗算することにより得られる。そのため、電池の使用可能電力量の観点で算出される劣化度合いは、電池の容量の観点で算出される劣化度合いよりも大きくなる。
【0007】
本発明の目的の一つは、「使用可能電力量」という観点で電池の性能を精度よく推定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
第1時点における電池パックの容量および前記第1時点における前記電池パックの抵抗上昇値を取得する取得手段と、
前記第1時点における前記電池パックの前記容量、初期状態の前記電池パックの放電電圧である基準放電電圧、および、前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値を用いて、前記第1時点における前記電池パックの使用可能電力量を算出する算出手段と、
を備える制御装置が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、
少なくとも一つのコンピュータが、
第1時点における電池パックの容量および前記第1時点における前記電池パックの抵抗上昇値を取得し、
前記第1時点における前記電池パックの前記容量、初期状態の前記電池パックの放電電圧である基準放電電圧、および、前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値を用いて、前記第1時点における前記電池パックの使用可能電力量を算出する、
ことを含む電池性能推定方法が提供される。
【0010】
本発明の一態様によれば、
少なくとも一つのコンピュータを、
第1時点における電池パックの容量および前記第1時点における前記電池パックの抵抗上昇値を取得する取得手段、
前記第1時点における前記電池パックの前記容量、初期状態の前記電池パックの放電電圧である基準放電電圧、および、前記第1時点における前記電池パックの前記抵抗上昇値を用いて、前記第1時点における前記電池パックの使用可能電力量を算出する算出手段、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、「使用可能電力量」という観点で電池の性能を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る制御装置の使用環境を例示する図である。
【
図2】第1実施形態に係る制御装置の機能構成を例示する図である。
【
図3】集積回路のハードウエア構成を例示する図である。
【
図4】第1実施形態に係る制御装置の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。
【
図5】Ahベースの劣化度合い(Ah-SOH)を算出する手法を例示的に説明するために利用する図である。
【
図6】電池パックの基準抵抗値を示すマップ情報を例示する図である。
【
図7】第2実施形態に係る制御装置の機能構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、特に説明する場合を除き、各ブロック図において、各ブロックは、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表している。また、図中の矢印の向きは、情報の流れ等を分かり易くするためのものに過ぎず、特に説明のない限り通信の方向(一方向通信/双方向通信)を限定しない。
【0014】
・概要
図1は、本開示に係る制御装置10の使用環境を例示する図である。
図1に例示される使用環境において、制御装置10は電池パック20と接続されている。
【0015】
電池パック20は、図示しない電気駆動製品に取り付けられ、当該電気駆動製品の動力源として機能する。電池パック20は、通常、複数のセル又は1以上の電池モジュールを含んで構成されている。セルは、電池としての機能を単独で有する最小の構成単位である。電池モジュールは、複数のセルを組み合わせてパッケージ化された構成単位である。電池パック20は、充放電回路、保護回路および冷却機構等(いずれも図示せず)を含んでいてもよい。
【0016】
制御装置10は、電池パック20の使用可能電力量を算出する機能を少なくとも備える。制御装置10により算出される電池パック20の使用可能電力量は、例えば、電池パック20から電気駆動機器への電力供給を制御するときに活用される。
【0017】
なお、制御装置10は、Battery Management System(BMS)としての機能を兼ね備えていてもよい。或いは、制御装置10は、既存のBMSに取り付けることによって当該BMSの機能を拡張する装置であってもよい。また、制御装置10は、電池パック20の一構成要素として、電池パック20に組み込まれていてもよい。
【0018】
以下、いくつかの実施形態を例示し、本開示に係る制御装置10について説明する。
【0019】
・第1実施形態
図2は、第1実施形態に係る制御装置10の機能構成を例示する図である。
図2に例示される制御装置10は、取得部110および算出部120を備える。
【0020】
取得部110は、第1時点における電池パック20の容量と、第1時点における電池パック20の抵抗上昇値とを取得する。ここで「第1時点」は、BOLの時点を除く、任意の時点である。また、「抵抗上昇値」は、電池パック20の基準抵抗値(具体的には、BOL時の内部抵抗値)から抵抗値がどの程度上昇しているかを示す数値である。
【0021】
算出部120は、第1時点における電池パック20の容量、第1時点における電池パック20の抵抗上昇値、および、初期状態の電池パック20の放電電圧を用いて、第1時点における電池パック20の使用可能電力量を算出する。特に限定されないが、ここでの計算に用いられる「放電電圧」は、例えば、IEC62660-1などの規格書において規定される「公称電圧(定格充電後、定格放電した際の平均電圧)」である。また、以下の説明において、「初期状態の電池パック20の放電電圧」を「基準放電電圧」とも表記する。算出部120により実行される処理の具体例については後述する。
【0022】
図3は、集積回路40のハードウエア構成を例示する図である。本図において制御装置10の取得部110および算出部120は、集積回路40を用いて実装されている。
【0023】
集積回路40は、例えばSystem On Chip(SoC)である。集積回路40は、バス402、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412を有する。
【0024】
バス402は、プロセッサ404、メモリ406、ストレージデバイス408、入出力インタフェース410、及びネットワークインタフェース412が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ404などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0025】
プロセッサ404は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。
【0026】
メモリ406は、Random Access Memory(RAM)などを用いて実現される主記憶装置である。
【0027】
ストレージデバイス408は、Read Only Memory(ROM)やフラッシュメモリなどを用いて実現される補助記憶装置である。
【0028】
入出力インタフェース410は、集積回路40(制御装置10)に入出力機器を接続するためのインタフェースである。例えば、キーボードやタッチパネルといった入力機器や、ディスプレイやスピーカーといった出力機器などが、入出力インタフェース410を介して集積回路40(制御装置10)に接続される。
【0029】
ネットワークインタフェース412は、集積回路40(制御装置10)を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えばLocal Area Network(LAN)、Wide Area Network(WAN)、Controller Area Network(CAN)などを含む。なお、ネットワークインタフェース412を介して通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0030】
ストレージデバイス408は、制御装置10の各種機能に対応するプログラムモジュールを記憶している。ストレージデバイス408は、少なくとも、本開示において説明する取得部110の機能に対応するプログラムモジュールと、算出部120の機能に対応するプログラムモジュールとを記憶している。プロセッサ404は、ストレージデバイス408から読み出したプログラムモジュールをメモリ406上に展開して実行することにより、そのプログラムモジュールに対応する機能を実現する。例えば、プロセッサ404は、取得部110に対応するプログラムモジュールをメモリ406上に読み出して実行することで、本開示において説明される取得部110の機能を実現する。また例えば、プロセッサ404は、算出部120に対応するプログラムモジュールをメモリ406上に読み出して実行することで、本開示において説明される算出部120の機能を実現する。このプロセッサ404の動作は、本開示に含まれる実施形態において共通である。
【0031】
集積回路40(制御装置10)のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、制御装置10の各機能に対応するプログラムモジュールはメモリ406に格納されてもよい。この場合、集積回路40(制御装置10)は、ストレージデバイス408を備えていなくてもよい。
【0032】
以下、図を用いて、第1実施形態に係る制御装置10の動作例について説明する。
図4は、第1実施形態に係る制御装置10の動作を例示的に説明するためのフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、例えば、電池パック20の充電が終了した時点で実行される。
【0033】
まず、取得部110は、第1時点(本フローチャートに示す処理を実行する時点)における電池パック20の容量を取得する(S102)。例えば、取得部110は、電池パック20の初期容量(BOL時点の電池パック20の容量)に、第1時点におけるAhベースの劣化度合い(Ah-SOH)を乗算することにより、第1時点における電池パック20の容量を算出できる。
【0034】
ここでAhベースの劣化度合い(Ah-SOH)を算出する手法について、別の図を用いて説明する。
図5は、Ahベースの劣化度合い(Ah-SOH)を算出する手法を例示的に説明するために利用する図である。
図5の例において、時刻t1は、充電電流の供給が開示された時点を示す。また、
図5の例において、時刻t2は、充電電流の供給が終了した時点を示す。また、
図5の例において、時刻t3は、充電後の電池パック20の開放電圧が安定したと判断される時点を示す。ここで、取得部110は、以下に示す数式を用いて、電池パック20に関するAhベースの劣化度合い(Ah-SOH)を算出できる。
【数1】
【0035】
例えば、電池パック20の初期容量、時刻t1から時刻t2の間で増加した電池パック20の容量、時刻t1における電池パック20のState of Charge(SOC)、および、時刻t3における電池パック20のSOCが、それぞれ、「100Ah」、「40Ah」、「50%」、および「100%」であったとする。この場合、取得部110は、上記数式から、第1時点における電池パック20のAhベースの劣化度合い(Ah-SOH)を「80%」と算出できる。この結果、取得部110は、電池パック20の初期容量「100Ah」に、第1時点における電池パック20のAhベースの劣化度合い(Ah-SOH)「80%」を乗算し、第1時点における電池パック20の容量を「80Ah」と算出できる。
【0036】
図4のフローチャートに戻り、取得部110は、第1時点(本フローチャートに示す処理を実行する時点)における電池パック20の抵抗上昇値を取得する(S104)。
【0037】
一例として、取得部110は、電池パック20の基準抵抗値を示すマップ情報(例:
図6)と、充電電流を流した時の電圧上昇値とから、第1時点における抵抗上昇値を特定することができる。
図6は、電池パック20の基準抵抗値を示すマップ情報を例示する図である。
図6に例示されるマップ情報は、温度毎およびSOC(State of Charge)毎に電池パック20の基準抵抗値を定義している。このようなマップ情報は、例えば、メモリ406やストレージデバイス408など、取得部110がアクセス可能な記憶領域に予め記憶される。なお、電池パック20の基準抵抗値を示すマップ情報は、
図6の例に限定されない。例えば、マップ情報は、温度およびSOCのいずれか一方と電池パック20の基準抵抗値とを紐付けて記憶する情報であってもよい。また例えば、マップ情報は、温度およびSOC以外の他のファクターと電池パック20の基準抵抗値とを紐付けて記憶する情報であってもよい。また、マップ情報は、温度、SOCおよびその他のファクターの組み合わせと、電池パック20の基準抵抗値とを紐付けて記憶する情報であってもよい。
【0038】
ここで、第1時点における電池パック20のSOCおよび周囲の温度が、それぞれ、50%および25℃であったとする。この場合、取得部110は、
図6に例示されるマップから、「1.1mohm」を基準抵抗値として特定できる。また、充電開始時の電池パック20の開放電圧が3.7Vであり、50Aの充電電流を流したときに電池パック20の電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)が3.8Vに上昇したとする。この場合、取得部110は、充電電流の値と電圧の上昇値とを基に電池パック20のDCR(Direct Current Resistance)を算出できる。ここで挙げた例では、取得部110は、「(3.8V-3.7V)/50A」という計算から、電池パック20のDCRを「2.0mohm」と導き出せる。そして、取得部110は、導き出されたDCRと、
図6に例示されるようなマップから特定される基準抵抗値と、に基づいて、電池パック20の抵抗上昇値を算出できる。例えば、取得部110は、基準抵抗値に対するDCRの割合、すなわち電池パック20のSOR(State of Resistance)を、電池パック20の抵抗上昇値を示す指標として算出することができる。ここで挙げた例では、取得部110は、「(2.0mohm/1.1mohm)×100」という計算から、「SOR:181.8%」という値を、電池パック20の抵抗上昇値として算出することができる。
【0039】
また、
図6に例示されるようなマップの代わりに、充電開始時の電圧、DCRおよび温度等をパラメータ入力として、電池パック20の抵抗上昇値を算出する関数が利用されてもよい。この場合、抵抗上昇値を算出するための関数が、メモリ406やストレージデバイス408等の取得部110がアクセス可能な記憶領域に予め格納される。取得部110は、その記憶領域に記憶される関数に対して、充電開始時の電圧、DCRおよび温度等といったパラメータを入力することで、電池パック20の抵抗上昇値を算出することができる。
【0040】
また、他の一例として、取得部110は、Ahベースの劣化度合いと抵抗上昇値との関係を定義する情報を用いて、電池パック20の抵抗上昇値を特定してもよい。この場合、Ahベースの劣化度合いと抵抗上昇値との関係を定義する情報は、理論上の計算或いは実験データに基づいて生成することができる。また、Ahベースの劣化度合いと抵抗上昇値との関係を定義する情報は、テーブル形式の情報であってもよいし、関数であってもよい。
【0041】
そして、算出部120は、電池パック20の使用可能電力量を算出する(S106)。例えば、算出部120は、次のような手順で、電池パック20の使用可能電力を算出することができる。
【0042】
まず、算出部120は、S104の処理において算出された第1時点における電池パック20の抵抗上昇値と、初期状態の電池パック20の放電電圧(基準放電電圧)と、に基づいて、第1時点における電池パック20の放電電圧を推定する。例えば、算出部120は、電池パック20の抵抗上昇値および電池パック20の基準放電電圧をそれぞれ変数およびy切片とする一次関数を用いて、第1時点における電池パック20の放電電圧を推定することができる。この一次関数は、電池パック20の劣化を加速させる試験(例えば、電池パック20の充放電を意図的に繰り返す、電池パック20の推奨使用温度の範囲外の環境下で電池パック20を放置する、など)において得られる実測値を基に求められる。そのほかにも、この一次関数は、内部抵抗の上昇を疑似的に再現したうえで、初期状態の電池パック20を実際に放電させる、或いは、シミュレーションを行うことで得られる数値に基づいて求めることができる。この場合において、回路に追加する抵抗値に応じて、「電池パック20の内部抵抗が上昇した状態」として任意の状態が再現される。例えば、「電池パック20の基準抵抗値×20%」の抵抗を回路内に追加(当該抵抗を電池パック20と直列接続)した場合、「SOR:120%」の状態が再現される。なお、一時関数の求め方は、ここで例示した手法に限定されない。求められた一次関数は、例えば、メモリ406やストレージデバイス408などの、算出部120がアクセス可能な記憶領域に予め記憶される。
【0043】
算出部120は、記憶領域から一次関数を読み出して、第1時点における電池パック20の放電電圧を推定する。具体的には、算出部120は、初期状態の電池パック20の放電電圧(基準放電電圧)を、読み出した一次関数のy切片として設定する。ここで、初期状態の電池パック20の放電電圧(基準放電電圧)の数値は、例えばメモリ406やストレージデバイス408といった、算出部120がアクセス可能な記憶領域に予め記憶されている。また、算出部120は、S104の処理において算出された第1時点における電池パック20の抵抗上昇値を、一時関数の変数に代入する。この結果として、算出部120は、第1時点における電池パック20の抵抗上昇値に対応する、電池パック20の放電電圧を算出できる。
【0044】
そして、算出部120は、第1時点における電池パック20の放電電圧を用いて、第1時点における電池パック20の使用可能電力量を算出する。具体的には、算出部120は、「第1時点における電池パック20の容量×第1時点における電池パック20の放電電圧」という計算により、第1時点における電池パック20の使用可能電力を算出できる。
【0045】
本実施形態の作用および効果を例示する。本実施形態の制御装置10によれば、初期状態(BOL時点)における電池パック20の放電電圧(例えば、公称電圧)と、対象とする時点における電池パック20の抵抗上昇値とにより、当該時点にける電池パック20の放電電圧が算出される。そして、当該時点における電池パック20の容量と、当該時点における電池パック20の放電電圧とにより、電池パック20の使用可能電力量が算出される。すなわち、電池パック20の劣化に伴い増加する内部抵抗による電力ロスを考慮して、電池パック20の使用可能電力量を精度よく算出できる。
【0046】
制御装置10は、上述の処理で算出した電池パック20の使用可能電力量を、電池パック20の性能を示す情報として出力できる。一例として、制御装置10は、電池パック20の使用可能電力量を、電池パック20を動力源として動作する電気駆動機器のディスプレイなどに出力してもよい。また、制御装置10は、上述の処理で算出した電池パック20の使用可能電力量が、初期状態(BOL時点)における電池パック20の使用可能電力量に占める割合を算出してもよい。ここで算出される割合は、「使用可能電力量」の観点における電池パック20の劣化度合い、すなわち、Whベースの劣化度合い(Wh-SOHとも称する)を示す。
【0047】
・第2実施形態
本実施形態は、以下で説明する点を除き、第1実施形態の構成と同様の構成を有する。
【0048】
図7は、第2実施形態に係る制御装置10の機能構成を例示する図である。
図7に例示される制御装置10は、出力部130を更に備える。出力部130は、算出部120により算出される使用可能電力量に基づいて、電池パック20を動力源として使用する電気駆動製品30の動作の目安となる情報を出力装置(例えば、電気駆動製品30に備えられるディスプレイ32)に出力する。
【0049】
例えば、出力部130は、算出部120により算出される電池パック20の使用可能電力量そのもの(例えば、「残電力量:XX[KWh]」や「残電力量:XX[%]」といった表示)を、ディスプレイ32に出力してもよい。また、例えば、出力部130は、算出部120より算出される電池パック20の使用可能電力量と電気駆動製品30の消費電力とに基づいて、電気駆動製品30の動作可能時間を算出してディスプレイ32に出力してもよい。例えば、電気駆動製品30が電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)等である場合、出力部130は、例えばCAN(Controller Area Network)を介して電気駆動製品30の単位時間当たりの消費電力量を取得できる。そして、出力部130は、電気駆動製品30の単位時間当たりの消費電力量と電池パック20の使用可能電力量とに基づいて、電気駆動製品30の動作可能時間を算出する。また、出力部130は、電気駆動製品30の単位時間当たりの消費電力量と電池パック20の使用可能電力量とに基づいて、電気駆動製品30の航続可能距離を算出してもよい。そして、出力部130は、電気駆動製品30の動作の目安となる情報(例えば、「動作可能時間:XX[Hour]」や「航続可能距離:XX[Km]」といった表示)を、ディスプレイ32に出力する。
【0050】
なお、出力部130は、ディスプレイ32に限らず、図示しないスピーカーといった他の出力装置を介して、電気駆動製品30の動作の目安となる情報を出力してもよい。この場合、出力部130は、ディスプレイ32に表示されるような情報を音声情報として生成し、その音声情報を図示しないスピーカーを介して出力する。
【0051】
本実施形態によれば、第1実施形態において算出された電池パック20の使用可能電力量を基に、その電池パック20を動力源として使用する電気駆動製品30の動作に関する精度の高い情報をユーザに提供できる。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0053】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 制御装置
110 取得部
120 算出部
130 出力部
20 電池パック
40 集積回路
402 バス
404 プロセッサ
404 メモリ
406 メモリ
408 ストレージデバイス
410 入出力インタフェース
412 ネットワークインタフェース