(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151255
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B60T8/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064491
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】小菅 拓真
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA09
3D246BA02
3D246CA02
3D246DA01
3D246EA03
3D246EA05
3D246EA11
3D246GA04
3D246GB37
3D246GB40
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA25A
3D246HA43A
3D246HA65A
3D246HA86B
3D246HA91B
3D246JB47
3D246JB48
(57)【要約】
【課題】ドライバに不安感が与えられることを抑制する。
【解決手段】制御装置20は、車両1の挙動を制御する制御装置20であって、車両1の減速度を制御する制御部を備え、制御部は、車両1が減速している状況下において、車両1のシフトポジションが、車両1の駆動源(例えば、エンジン11および走行用モータ12)と車両1の駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジションから駆動輪がロックされていない状態で駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジションに切り替えられた場合に、車両1の減速度を車両1のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度に対して自動で嵩上げする自動減速度制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の挙動を制御する制御装置(20)であって、
前記車両(1)の減速度(D)を制御する制御部(22)を備え、
前記制御部(22)は、前記車両(1)が減速している状況下において、前記車両(1)のシフトポジションが、前記車両(1)の駆動源(11、12)と前記車両(1)の駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジションから前記駆動輪がロックされていない状態で前記駆動源(11、12)と前記駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジションに切り替えられた場合に、前記車両(1)の減速度(D)を前記車両(1)のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度(D)に対して自動で嵩上げする自動減速度制御を実行する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部(22)は、前記自動減速度制御において、前記車両(1)の減速度(D)を、前記シフトポジションが前記第1ポジションから前記第2ポジションに切り替えられた時の減速度(D)である目標減速度(D1)に近づくように制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部(22)は、前記自動減速度制御において、前記車両(1)の減速度(D)を上限減速度以下に制御する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部(22)は、前記車両(1)が減速している状況下において、前記シフトポジションが前記第1ポジションから前記第2ポジションに切り替えられた場合において、前記ブレーキ操作が行われている場合に、前記自動減速度制御を実行する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部(22)は、前記車両(1)が減速している状況下において、前記シフトポジションが前記第1ポジションから前記第2ポジションに切り替えられた場合において、前記車両(1)の速度が基準速度より高い場合に、前記自動減速度制御を実行する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部(22)は、前記自動減速度制御の実行中に、前記ブレーキ操作が解除された場合に、前記自動減速度制御を終了する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部(22)は、前記自動減速度制御の実行中に、前記車両(1)が停止した場合に、前記自動減速度制御を終了する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部(22)は、前記自動減速度制御の実行中に、前記シフトポジションが前記第2ポジションから前記第1ポジションに切り替えられた場合に、前記自動減速度制御を終了する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項9】
車両(1)の挙動を制御する制御方法であって、
制御装置(20)の制御部(22)が、前記車両(1)の減速度(D)を制御し、
前記制御部(22)は、前記車両(1)が減速している状況下において、前記車両(1)のシフトポジションが、前記車両(1)の駆動源(11、12)と前記車両(1)の駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジションから前記駆動輪がロックされていない状態で前記駆動源(11、12)と前記駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジションに切り替えられた場合、前記車両(1)の減速度(D)を前記車両(1)のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度(D)に対して自動で嵩上げする自動減速度制御を実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、車輪に生じさせる制動力を制御して車両の減速度を制御するための装置として、例えば、液圧制御ユニットが設けられている。例えば、特許文献1に開示されているように、液圧制御ユニット内の流路には、複数の弁とポンプとが設けられており、各弁およびポンプの動作が制御されることによって、車両の減速度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行中の車両には、エンジンブレーキ、または、走行用モータによる回生ブレーキ等の駆動源に起因する制動力も作用している。また、車両のシフトポジションとして、駆動源と駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジション(例えば、Dレンジ)と、駆動輪がロックされていない状態で駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジション(例えば、Nレンジ)とがある。ここで、走行中の車両において、ドライバによる誤操作または意図的な操作によって、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられる場合がある。このように、走行中の車両において、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた場合、駆動源に起因する制動力が突然作用しなくなり、車両の減速度の大きな変化によってドライバに不安感が与えられるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、ドライバに不安感が与えられることを抑制することが可能な制御装置および制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、制御装置は、車両の挙動を制御する制御装置であって、車両の減速度を制御する制御部を備え、制御部は、車両が減速している状況下において、車両のシフトポジションが、車両の駆動源と車両の駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジションから駆動輪がロックされていない状態で駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジションに切り替えられた場合に、車両の減速度を車両のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度に対して自動で嵩上げする自動減速度制御を実行する。
【0007】
上記課題を解決するために、制御方法は、車両の挙動を制御する制御方法であって、制御装置の制御部が、車両の減速度を制御し、制御部は、車両が減速している状況下において、車両のシフトポジションが、車両の駆動源と車両の駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジションから駆動輪がロックされていない状態で駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジションに切り替えられた場合、車両の減速度を車両のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度に対して自動で嵩上げする自動減速度制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドライバに不安感が与えられることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両の減速度の推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
<車両の構成>
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の構成について説明する。
【0012】
図1は、車両1の概略構成を示す模式図である。
図1に示されるように、車両1は、エンジン11と、走行用モータ12と、動力伝達機構13と、液圧制御ユニット14と、ブレーキペダル15と、ブレーキセンサ16と、シフトチェンジ装置17と、シフトポジションセンサ18と、車輪速センサ19と、制御装置20とを備える。
【0013】
車両1は、駆動源としてエンジン11および走行用モータ12を備えるハイブリッド車両であり、本発明に係る車両の一例に相当する。ただし、本発明に係る車両は、以下の例に限定されず、例えば、駆動源としてエンジン11のみを備えるエンジン車両であってもよく、駆動源として走行用モータ12のみを備える電気車両であってもよい。
【0014】
エンジン11は、ガソリン等の燃料を用いて動力を生成して出力する。エンジン11から出力される動力は、動力伝達機構13を介して車両1の駆動輪に伝達される。
【0015】
走行用モータ12は、バッテリに蓄電される電力を用いて動力を生成して出力する。走行用モータ12から出力される動力は、動力伝達機構13を介して車両1の駆動輪に伝達される。
【0016】
動力伝達機構13は、駆動源(つまり、エンジン11および走行用モータ12)から出力された動力を駆動輪に伝達する。動力伝達機構13には、変速機およびクラッチ等の装置が設けられている。動力伝達機構13は、これらの装置を用いて、駆動輪に伝達される動力の回転数および回転方向を変化させることができる。また、動力伝達機構13は、駆動源と駆動輪との間で動力が伝達可能な状態と、駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能な状態とを切り替えることができる。
【0017】
液圧制御ユニット14は、車両1に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。液圧制御ユニット14は、各車輪に生じる制動力を制御することによって、車両1に生じる制動力を制御する。なお、液圧制御ユニット14を含むブレーキシステム10の詳細については、後述する。
【0018】
ブレーキペダル15は、ドライバによるブレーキ操作において用いられる。ブレーキ操作では、ブレーキペダル15がドライバにより踏み込まれる。後述されるように、液圧制御ユニット14は、基本的には、ドライバによるブレーキペダル15の操作量に応じた制動力を各車輪に生じさせる。
【0019】
ブレーキセンサ16は、ドライバによるブレーキペダル15の操作量を検出する。なお、ドライバによるブレーキ操作力を補助する電動ブースターが設けられない場合には、後述するマスタシリンダ32の圧力を検出するセンサの検出結果に基づいて、ブレーキ操作の有無を判断できる。ゆえに、その場合には、ブレーキセンサ16は省略され得る。
【0020】
シフトチェンジ装置17は、車両1のシフトポジションを切り替えるための装置である。車両1のドライバは、例えば、シフトチェンジ装置17に設けられるシフトレバーを用いた操作を行うことによって、シフトポジションを切り替えることができる。
【0021】
車両1のシフトポジションは、例えば、Dレンジ、Rレンジ、NレンジおよびPレンジの中から選択可能となっている。Dレンジでは、ドライバによるアクセル操作に伴って車両1を前進させる方向の動力が駆動輪に伝達される。Rレンジでは、ドライバによるアクセル操作に伴って車両1を後進させる方向の動力が駆動輪に伝達される。NレンジおよびPレンジでは、動力が駆動輪に伝達されない状態となる。Nレンジでは、駆動輪がロックされず、Pレンジでは、駆動輪がロックされる。
【0022】
DレンジおよびRレンジは、駆動源と駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジションの一例に相当する。Nレンジは、駆動輪がロックされていない状態で駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジションの一例に相当する。ただし、車両1を前進させる方向の動力が駆動輪に伝達される第1ポジションの名称は、Dレンジ以外の名称であってもよい。また、車両1を後進させる方向の動力が駆動輪に伝達される第1ポジションの名称は、Rレンジ以外の名称であってもよい。また、第2ポジションの名称は、Nレンジ以外の名称であってもよい。
【0023】
シフトポジションセンサ18は、車両1のシフトポジションを検出する。
【0024】
車輪速センサ19は、各車輪に設けられ、各車輪の車輪速を検出する。
【0025】
制御装置20は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。制御装置20は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。なお、制御装置20が複数に分かれる場合、以下で説明する各種機能が複数の装置に分担されるので、例えば、後述する制御部22の一部の機能と他の一部の機能とが別々の装置により分担されてもよい。
【0026】
図2は、制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示されるように、制御装置20は、例えば、取得部21と、制御部22とを備える。
【0027】
取得部21は、車両1内の各装置から情報を取得する。例えば、取得部21は、ブレーキセンサ16、シフトポジションセンサ18および車輪速センサ19から情報を取得する。なお、取得部21は、後述するマスタシリンダ32の圧力を検出するセンサが設けられる場合、当該センサからも情報を取得できる。なお、本明細書において、情報の取得には、情報の抽出または生成(例えば、演算)等が含まれ得る。
【0028】
制御部22は、車両1内の各装置の動作を制御する。制御部22は、例えば、エンジン11、走行用モータ12、動力伝達機構13および液圧制御ユニット14の動作を制御する。例えば、制御部22は、ドライバによるアクセル操作の操作量に基づいて、エンジン11および走行用モータ12の動作を制御する。また、例えば、制御部22は、車両1のシフトポジションに基づいて、動力伝達機構13の各クラッチの開閉動作を制御する。
【0029】
ここで、
図3を参照して、車両1のブレーキシステム10の概略構成について説明する。
図3は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。
図3に示されるように、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット14と、ブレーキペダル15と、倍力装置31と、マスタシリンダ32と、リザーバ33と、ブレーキ装置34と、車輪35とを備える。
【0030】
車両1は、4つの車輪35を有しており、各車輪35に設けられるブレーキ装置34によって、各車輪35が制動される。そして、各車輪35に生じる制動力が液圧制御ユニット14によって制御される。
図3では、理解を容易にするために、ブレーキシステム10うち、前輪および後輪のうちの一方に関連する部分のみが示されており、前輪および後輪のうちの他方に関連する部分の図示は省略されている。なお、車両1の車輪35の数は、4つ以外であってもよい。
【0031】
倍力装置31は、ブレーキペダル15と接続されており、ブレーキペダル15の踏力を増幅する。マスタシリンダ32は、倍力装置31と接続されており、ブレーキペダル15と連動して往復動するピストンを内蔵し、ブレーキ操作の操作量に応じた液圧を生じさせる。リザーバ33は、マスタシリンダ32に付設されており、ブレーキ液を貯留する。
【0032】
液圧制御ユニット14は、ブレーキ液の流路が形成される基体14aを備える。液圧制御ユニット14の基体14aに、マスタシリンダ32および各ブレーキ装置34がそれぞれ接続されている。液圧制御ユニット14の基体14aのブレーキ液の流路は、ブレーキ装置34のホイールシリンダと接続されている。ブレーキ装置34のホイールシリンダにおけるブレーキ液の液圧に応じた制動力が車輪35に生じる。
【0033】
液圧制御ユニット14の基体14aには、ブレーキ液の流路として、主流路41と、副流路42と、供給流路43とが形成されている。主流路41は、マスタシリンダ32のブレーキ液をブレーキ装置34のホイールシリンダに流通させる。副流路42は、ブレーキ装置34のホイールシリンダのブレーキ液を逃がす。供給流路43は、マスタシリンダ32のブレーキ液を副流路42に供給する。
【0034】
また、液圧制御ユニット14の基体14aには、各車輪35に生じる制動力を制御するためのコンポーネントとして、込め弁(EV)51、弛め弁(AV)52、第1弁(USV)53、第2弁(HSV)54、アキュムレータ55、ポンプ56およびモータ57が設けられている。
【0035】
主流路41は、マスタシリンダ32と、ブレーキ装置34のホイールシリンダとを連通する。主流路41は、第1主流路41aと、2つの第2主流路41bとを含む。第1主流路41aは、マスタシリンダ32と接続される。2つの第2主流路41bは、第1主流路41aから分岐して各ブレーキ装置34と接続される。第1主流路41aには、第1弁53が設けられる。第2主流路41bには、込め弁51が設けられる。
【0036】
副流路42は、主流路41における込め弁51よりブレーキ装置34側と、主流路41における込め弁51よりマスタシリンダ32側、かつ、第1弁53よりブレーキ装置34側とを連通する。副流路42は、2つの第1副流路42aと、第2副流路42bとを含む。各第1副流路42aは、主流路41における込め弁51よりブレーキ装置34側と接続される。第2副流路42bは、2つの第1副流路42aの合流箇所と、主流路41における込め弁51よりマスタシリンダ32側、かつ、第1弁53よりブレーキ装置34側とを接続する。第1副流路42aには、弛め弁52が設けられる。第2副流路42bには、第1副流路42a側から順に、アキュムレータ55およびポンプ56が設けられる。
【0037】
ポンプ56は、モータ57によって駆動され、ブレーキ液を第1副流路42a側から吸引し主流路41側に吐出する。例えば、ポンプ56は、往復動するプランジャポンプである。ポンプ56のプランジャが、モータ57の出力軸に設けられる偏心カムにより間欠的に押圧されることによって往復動する。それにより、ポンプ56によるブレーキ液の圧送が行われる。
【0038】
供給流路43は、主流路41における第1弁53よりマスタシリンダ32側と副流路42におけるポンプ56の吸引側とを連通する。供給流路43には、第2弁54が設けられる。
【0039】
込め弁51は、例えば、非通電状態で開放され、通電状態で閉鎖される電磁弁である。弛め弁52は、例えば、非通電状態で閉鎖され、通電状態で開放される電磁弁である。第1弁53は、例えば、非通電状態で開放され、通電状態で閉鎖される電磁弁である。第2弁54は、例えば、非通電状態で閉鎖され、通電状態で開放される電磁弁である。これらの弁およびモータ57の動作が制御されることによって、各車輪35に生じる制動力が制御される。
【0040】
通常時(具体的には、ドライバによるブレーキ操作に応じた制動力を車輪35に生じさせるように設定している時)には、制御部22は、込め弁51を開放し、弛め弁52を閉鎖し、第1弁53を開放し、第2弁54を閉鎖する。それにより、マスタシリンダ32からブレーキ装置34のホイールシリンダへ、副流路42および供給流路43を介さずに、主流路41のみを介して、ブレーキ液が流動する状態となる。その状態で、ブレーキペダル15が踏み込まれると、マスタシリンダ32のピストンが押し込まれてホイールシリンダのブレーキ液の液圧が増加し、車輪35に制動力が付与される。
【0041】
<制御装置の動作>
図4および
図5を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置20の動作について説明する。
【0042】
上記のように、車両1は、駆動源として、エンジン11および走行用モータ12を備える。走行中の車両1には、液圧制御ユニット14による制動力に加え、エンジンブレーキ、および、回生ブレーキによる制動力も作用する。エンジンブレーキは、エンジン11が駆動輪に連れ回されることに起因して車両1に制動力が作用する現象である。回生ブレーキは、車輪の運動エネルギを用いて走行用モータ12が発電を行うことに起因して車両1に制動力が作用する現象である。なお、走行用モータ12により発電された電力はバッテリへ供給され、バッテリが充電される。
【0043】
ここで、走行中の車両1において、ドライバによる誤操作または意図的な操作によって、シフトポジションが第1ポジション(例えば、Dレンジ)から第2ポジション(例えば、Nレンジ)に切り替えられる場合がある。このように、走行中の車両1において、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた場合、駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となり、駆動源に起因する制動力(具体的には、エンジンブレーキ、および、回生ブレーキによる制動力)が突然作用しなくなる。それにより、車両1の減速度の大きな変化が生じ、ドライバに不安感が与えられるおそれがある。そこで、本実施形態では、このような不安感がドライバに与えられることを抑制するために、制御部22は、自動減速度制御を実行可能となっている。自動減速度制御は、後述されるように、車両1の減速度を車両1のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度に対して自動で嵩上げする制御である。
【0044】
図4は、制御装置20が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4におけるステップS101は、
図4に示される制御フローの開始に対応する。
図4におけるステップS111は、
図4に示される制御フローの終了に対応する。
図4に示される制御フローは、自動減速度制御が実行されておらず、かつ、車両1のシフトポジションが第1ポジションになっている時に開始される。また、
図4に示される制御フローは、例えば、当該制御フローの終了後に、車両1のシフトポジションが第1ポジションになっている場合に再度開始される。
【0045】
図4に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、制御部22は、車両1が減速しているか否かを判定する。例えば、制御部22は、車輪速センサ19の検出結果に基づいて取得される車両1の速度の履歴に基づいて、車両1が減速しているか否かを判定できる。
【0046】
車両1が減速していないと判定された場合(ステップS102/NO)、ステップS102が繰り返される。一方、車両1が減速していると判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進む。
【0047】
ステップS102でYESと判定された場合、ステップS103において、制御部22は、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられたか否かを判定する。例えば、制御部22は、シフトポジションセンサ18の検出結果に基づいて、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられたか否かを判定できる。
【0048】
車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられたと判定されなかった場合(ステップS103/NO)、ステップS102に戻る。一方、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられたと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS104に進む。
【0049】
ステップS103でYESと判定された場合、ステップS104において、制御部22は、車両1のドライバによるブレーキ操作が行われているか否かを判定する。例えば、制御部22は、ブレーキセンサ16の検出結果に基づいて、ドライバによるブレーキ操作が行われているか否かを判定できる。なお、制御部22は、ブレーキセンサ16に替えて、マスタシリンダ32の圧力を検出するセンサの検出結果に基づいて、ドライバによるブレーキ操作が行われているか否かを判定してもよい。
【0050】
ドライバによるブレーキ操作が行われていないと判定された場合(ステップS104/NO)、ステップS102に戻る。一方、ドライバによるブレーキ操作が行われていると判定された場合(ステップS104/YES)、ステップS105に進む。
【0051】
ステップS104でYESと判定された場合、ステップS105において、制御部22は、車両1の速度が基準速度より高いか否かを判定する。例えば、制御部22は、車輪速センサ19の検出結果に基づいて取得される車両1の速度に基づいて、車両1の速度が基準速度より高いか否かを判定できる。
【0052】
ステップS105の基準速度は、例えば、Nレンジを経由するDレンジとRレンジとの間での切り替えが行われる状況(例えば、駐車場に車両1を駐車する状況等)になっているか否かを適切に判断し得る速度に設定される。車両1の速度が基準速度より低い場合が、駐車場に車両1を駐車する状況等になっている場合に相当する。
【0053】
車両1の速度が基準速度より低いと判定された場合(ステップS105/NO)、ステップS102に戻る。一方、車両1の速度が基準速度より高いと判定された場合(ステップS105/YES)、ステップS106に進む。
【0054】
ステップS105でYESと判定された場合、ステップS106において、制御部22は、自動減速度制御を実行する。上述したように、自動減速度制御は、車両1の減速度を車両1のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度に対して自動で嵩上げする制御である。なお、ドライバによるブレーキ操作に依存する減速度は、自動減速度制御が実行されていない通常時に液圧制御ユニット14により生じる減速度であって、ドライバによるブレーキ操作の操作量に応じた減速度に相当する。
【0055】
図5は、車両1の減速度Dの推移の一例を示す図である。
図5では、横軸に時点Tを取り、車両1の減速度Dの推移が示されている。
図5の例では、時点T1以前において、車両1が一定の減速度D1で減速している。ここで、時点T1以前において、車両1のシフトポジションはDレンジとなっている。そして、時点T1において、車両1のシフトポジションがDレンジからNレンジに切り替えられることに伴って、自動減速度制御が実行される。
【0056】
図5では、時点T1で自動減速度制御が実行されない場合の減速度Dの推移が二点鎖線により示されている。時点T1で自動減速度制御が実行されない場合、時点T1において、車両1のシフトポジションがDレンジからNレンジに切り替えられることに伴って、駆動源に起因する制動力(具体的には、エンジンブレーキ、および、回生ブレーキによる制動力)が突然作用しなくなる。それにより、ドライバによるブレーキ操作の操作量に応じた制動力が液圧制御ユニット14によって生じる状態は維持されるものの、二点鎖線により示されるように、車両1の減速度Dが大きく減少し、ドライバに不安感が与えられるおそれがある。一方、本実施形態では、上述したように、時点T1で自動減速度制御が実行される。なお、以下では、電動ブースターが設けられない場合等の例として、供給流路43を利用して自動減速度制御が行われる例を説明する。ただし、電動ブースターが設けられる場合には、騒音や振動を抑制する観点で、後述されるように、電動ブースターを利用して自動減速度制御が行われることが好ましい。
【0057】
自動減速度制御が開始されると、制御部22は、例えば、込め弁51を開放し、弛め弁52を閉鎖し、第1弁53を閉鎖し、第2弁54を開放する。それにより、マスタシリンダ32からブレーキ装置34のホイールシリンダへ、供給流路43および副流路42を介して、ブレーキ液が流動する状態となる。その状態で、制御部22は、モータ57を稼働させてポンプ56を駆動する。それにより、ブレーキ装置34のホイールシリンダのブレーキ液の液圧が上昇し、車輪35に付与される制動力が上昇し、車両1の減速度Dがドライバによるブレーキ操作に依存する減速度D(例えば、
図5中で二点鎖線により示される減速度D)に対して自動で嵩上げされる。
【0058】
ここで、制御部22は、自動減速度制御において、車両1の減速度Dを、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時の減速度Dである目標減速度D1に近づくように制御する。このように、以下では、減速度D1を目標減速度D1とも呼ぶ。例えば、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時に、その時の減速度Dが制御装置20の記憶素子に記憶され、制御部22は、当該減速度Dを参照できる。ただし、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時は、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時点T1と厳密に一致せず、時点T1に対して多少ずれた時点であってもよい。
【0059】
例えば、制御部22は、制御量である減速度Dが目標値である目標減速度D1に近づくようにフィードバック制御(例えば、PID制御)を行う。それにより、
図5で実線により示されるように、時点T1以降において、車両1の減速度Dは、目標減速度D1の近傍に維持される。ゆえに、時点T1以降において、車両1の減速度Dが大きく減少することが抑制され、ドライバに不安感が与えられることが抑制される。なお、自動減速度制御の開始後において、ドライバによるブレーキ操作の操作量が増大することに伴って減速度Dが目標減速度D1を超えた場合には、ドライバによる要求減速度を優先し、自動での減速度Dの嵩上げや引き下げは行われない。ドライバによるブレーキ操作の操作量の減少に伴って減速度Dが目標減速度D1を再び下回った場合には、減速度Dが目標減速度D1に近づくように自動で減速度Dの嵩上げが行われる。
【0060】
なお、ブレーキシステム10における信号異常等に起因して減速度Dが過度に大きくなること(つまり、急ブレーキが発生すること)を抑制する観点では、制御部22は、自動減速度制御において、車両1の減速度Dを上限減速度以下に制御することが好ましい。上限減速度は、例えば、急ブレーキが発生を抑制しつつ、減速度Dが過度に制限されないような大きさに設定される。
【0061】
また、自動減速度制御における減速度Dの変化率は、例えば、ドライバに大きな不安感が与えられない程度の大きさに設定されることが好ましい。ゆえに、制御部22は、自動減速度制御により車両1に生じる減速度Dの変化率を、ドライバに大きな不安感が与えられない程度の大きさに予め設定された変化率に制御することが好ましい。
【0062】
なお、上記では、自動減速度制御において、供給流路43を利用してブレーキ装置34のホイールシリンダのブレーキ液の液圧を上昇させる例を説明した。ただし、自動減速度制御は、ドライバによるブレーキ操作力を補助する電動ブースターによって行われてもよい。例えば、制御部22は、自動減速度制御において、電動ブースターを利用してマスタシリンダ32の液圧を上昇させることによって、ブレーキ装置34のホイールシリンダのブレーキ液の液圧を上昇させてもよい。
【0063】
図4のステップS106の次に、ステップS107において、制御部22は、車両1のドライバによるブレーキ操作が解除されたか否かを判定する。例えば、制御部22は、マスタシリンダ32の圧力を検出するセンサの検出結果に基づいて、ドライバによるブレーキ操作が解除されたか否かを判定できる。なお、制御部22は、ブレーキセンサ16の検出結果に基づいて、ドライバによるブレーキ操作が解除されたか否かを判定してもよい。
【0064】
ドライバによるブレーキ操作が解除されていないと判定された場合(ステップS107/NO)、ステップS108に進む。一方、ドライバによるブレーキ操作が解除されたと判定された場合(ステップS107/YES)、ステップS110に進む。ステップS110において、制御部22は、自動減速度制御を終了し、
図4に示される制御フローは終了する。
【0065】
ステップS107でNOと判定された場合、ステップS108において、制御部22は、車両1が停止したか否かを判定する。例えば、制御部22は、車輪速センサ19の検出結果に基づいて取得される車両1の速度に基づいて、車両1が停止したか否かを判定できる。制御部22は、例えば、車両1の速度が0km/hに対して僅かに大きい速度より低くなった場合に、車両1が停止したと判定する。
【0066】
車両1が停止していないと判定された場合(ステップS108/NO)、ステップS109に進む。一方、車両1が停止したと判定された場合(ステップS108/YES)、ステップS110に進む。ステップS110において、制御部22は、自動減速度制御を終了し、
図4に示される制御フローは終了する。
【0067】
ステップS108でNOと判定された場合、ステップS109において、制御部22は、車両1のシフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられたか否かを判定する。例えば、制御部22は、シフトポジションセンサ18の検出結果に基づいて、車両1のシフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられたか否かを判定できる。
【0068】
車両1のシフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられていないと判定された場合(ステップS109/NO)、ステップS107に戻る。一方、車両1のシフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられたと判定された場合(ステップS109/YES)、ステップS110に進む。ステップS110において、制御部22は、自動減速度制御を終了し、
図4に示される制御フローは終了する。
【0069】
上記では、
図4を参照して、制御装置20が行う処理例を説明した。ただし、制御装置20が行う処理は、上記で説明した処理例に対して変更が加えられた処理であってもよい。
【0070】
例えば、
図4の例では、自動減速度制御の実行条件に関し、車両1が減速しているとの条件(ステップS102/YES)と、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられたとの条件(ステップS103/YES)と、ドライバによるブレーキ操作が行われているとの条件(ステップS104/YES)と、車両1の速度が基準速度より高いとの条件(ステップS105/YES)との全てが満たされた場合に自動減速度制御が実行される。ただし、自動減速度制御は、少なくとも、車両1が減速しているとの条件(ステップS102/YES)と、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられたとの条件(ステップS103/YES)とが満たされた場合に実行されればよい。つまり、
図4のフローチャートからステップS104およびステップS105の一方、または、ステップS104およびステップS105の両方が省略されてもよい。
【0071】
なお、
図4のフローチャートからステップS104が省略される場合において、ドライバによるブレーキ操作が行われていない状況下で自動減速度制御が実行されることがある。この場合、ドライバによるブレーキ操作に依存する減速度Dは、液圧制御ユニット14による制動力が生じていない状況における減速度Dに相当し、制御部22は、自動減速度制御において、液圧制御ユニット14による制動力を自動で生じさせることによって、車両1の減速度Dを自動で嵩上げする。なお、この場合においても、上述したように、自動減速度制御の開始後において、ドライバによるブレーキ操作の操作量が増大することに伴って減速度Dが目標減速度D1を超えた場合には、自動での減速度Dの嵩上げや引き下げは行われない。
【0072】
また、例えば、
図4の例では、自動減速度制御の終了条件に関し、ドライバによるブレーキ操作が解除されたとの条件(ステップS107/YES)と、車両1が停止したとの条件(ステップS108/YES)と、車両1のシフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられたとの条件(ステップS109/YES)とのいずれか1つが満たされた場合に自動減速度制御が終了する。ただし、
図4のフローチャートからステップS107、ステップS108およびステップS109のうちの任意の一部の処理が省略されてもよい。また、
図4のフローチャートからステップS107、ステップS108およびステップS109の全ての処理が省略され、他の終了条件(例えば、ドライバによる特定操作が行われたとの条件等)が採用されてもよい。
【0073】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置20の効果について説明する。
【0074】
制御装置20は、車両1の減速度Dを制御する制御部22を備える。そして、制御部22は、車両1が減速している状況下において、車両1のシフトポジションが、車両1の駆動源と車両1の駆動輪との間で動力が伝達可能となる第1ポジション(上記の例では、DレンジまたはRレンジ)から駆動輪がロックされていない状態で駆動源と駆動輪との間で動力が伝達不可能となる第2ポジション(上記の例では、Nレンジ)に切り替えられた場合に、車両1の減速度Dを車両1のドライバによるブレーキ操作に依存する減速度Dに対して自動で嵩上げする自動減速度制御を実行する。それにより、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時点(
図5の例では、時点T1)以降において、車両1の減速度Dが大きく減少することを抑制でき、ドライバに不安感が与えられることを抑制できる。
【0075】
特に、上記の例のように、駆動源としてエンジン11および走行用モータ12を備えるハイブリッド車両である車両1においては、ドライバに不安感が与えられることを抑制する上記の効果がより有効である。例えば、ハイブリッド車両には、エンジン車両と比べて、回生ブレーキによる制動力が作用する分だけ、駆動源に起因する制動力が大きい。ゆえに、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた場合において、突然作用しなくなる駆動源に起因する制動力が大きい。よって、ハイブリッド車両では、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた場合において、ドライバに不安感が与えられることを抑制する上記の効果(つまり、自動減速度制御による効果)が特に有効である。
【0076】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、自動減速度制御において、車両1の減速度Dを、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時の減速度Dである目標減速度(
図5の例では、減速度D1)に近づくように制御する。それにより、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時点(
図5の例では、時点T1)以降における車両1の減速度Dの変化量をより効果的に低減できるので、ドライバに不安感が与えられることがより効果的に抑制される。
【0077】
特に、車両1のシフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられる時点の前後において、車両1の走行路の勾配が大きく変化する場合であっても、車両1の減速度Dの変化量をより効果的に低減できる。例えば、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられる前の走行路が平坦路であり、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた後の走行路が降坂路である場合において、シフトチェンジ後に降坂路を走行する車両1に十分な減速度Dを作用させることができる。また、例えば、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられる前の走行路が降坂路であり、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた後の走行路が平坦路である場合において、シフトチェンジ後に平坦路を走行する車両1の減速度Dが過度に大きくなることを抑制できる。
【0078】
ただし、自動減速度制御における制御部22による減速度Dの制御方法は、上記の例に限定されない。例えば、制御部22は、自動減速度制御において、車両1の減速度Dを上記の例とは異なる目標減速度に近づくように制御してもよい。なお、そのような目標減速度は、例えば、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた時の減速度Dよりも小さくてもよく、大きくてもよい。また、例えば、制御部22は、自動減速度制御において、車両1の減速度Dを、ドライバによるブレーキ操作に依存する減速度Dに対して所定の値だけ大きくなるように制御してもよく、ドライバによるブレーキ操作に依存する減速度Dに対して所定の倍率を乗じた値になるように制御してもよい。
【0079】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、自動減速度制御において、車両1の減速度Dを上限減速度以下に制御する。それにより、ブレーキシステム10における信号異常等に起因して減速度Dが過度に大きくなること(つまり、急ブレーキが発生すること)を抑制することができる。
【0080】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、車両1が減速している状況下において、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた場合において、ブレーキ操作が行われている場合に、自動減速度制御を実行する。それにより、ドライバが車両1を減速させる意思を有している場合に限り、自動減速度制御を実行することができる。ゆえに、自動減速度制御が実行されることによって、ドライバの意図に反して大きな減速度Dが車両1に生じることを抑制できる。
【0081】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、車両1が減速している状況下において、シフトポジションが第1ポジションから第2ポジションに切り替えられた場合において、車両1の速度が基準速度より高い場合に、自動減速度制御を実行する。それにより、駐車場に車両1を駐車する状況等において、DレンジとRレンジとの間での切り替えに伴いシフトポジションがNレンジになる際に、自動減速度制御が不要に実行されることを抑制できる。
【0082】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、自動減速度制御の実行中に、ブレーキ操作が解除された場合に、自動減速度制御を終了する。それにより、ドライバが車両1の減速を終了する意思を有している場合に、自動減速度制御を終了することができるので、そのような場合に自動減速度制御が不要に実行されることを抑制できる。
【0083】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、自動減速度制御の実行中に、車両1が停止した場合に、自動減速度制御を終了する。それにより、車両1が停止した場合に、自動減速度制御が不要に実行され、車両1に大きな制動力が不要に生じる状況を抑制できる。
【0084】
好ましくは、制御装置20では、制御部22は、自動減速度制御の実行中に、シフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられた場合に、自動減速度制御を終了する。それにより、シフトポジションが第2ポジションから第1ポジションに切り替えられ、駆動源に起因する制動力の回復に伴って、自動減速度制御を終了させることができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0086】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0087】
また、例えば、上記で説明した制御装置20による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、および、ソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、情報処理装置の内部または外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
10 ブレーキシステム
11 エンジン(駆動源)
12 走行用モータ(駆動源)
13 動力伝達機構
14 液圧制御ユニット
15 ブレーキペダル
16 ブレーキセンサ
17 シフトチェンジ装置
18 シフトポジションセンサ
19 車輪速センサ
20 制御装置
21 取得部
22 制御部
31 倍力装置
32 マスタシリンダ
33 リザーバ
34 ブレーキ装置
35 車輪
41 主流路
42 副流路
43 供給流路
51 込め弁
52 弛め弁
53 第1弁
54 第2弁
55 アキュムレータ
56 ポンプ
57 モータ
D 減速度
D1 目標減速度