(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151260
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】抗SARS-CoV-2抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20241017BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241017BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241017BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064507
(22)【出願日】2023-04-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516255448
【氏名又は名称】株式会社Epsilon Molecular Engineering
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 佑太
(72)【発明者】
【氏名】河野 響
(72)【発明者】
【氏名】片山 飛鳥
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA42
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】SARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)に結合する抗体を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有するCDR1~3を含む構造ドメインを1つ以上有する、SARS-CoV-2に結合する抗体であって、たとえばVHH等の単一ドメイン抗体、構造ドメインの1又は複数と該構造ドメインとは抗原特異性の異なる構造ドメインの1又は複数を連結した多量体等である抗体、及び該抗体をコードする核酸を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)から選択されるCDR1~3を含む構造ドメインを1つ以上有する、SARS-CoV-2に結合する抗体。
(a)GRTFSDYDMG(配列番号1)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、SITSGGSTK(配列番号2)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びHDYFYVDNWESY(配列番号3)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(b)GFTFSRYDMS(配列番号4)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWNGGSTY(配列番号5)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLDWLQWDWAY(配列番号6)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(c)GFTFSSYAMT(配列番号7)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びGQHHQELQHWYAWDY(配列番号9)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(d)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AITWNGGSTY(配列番号11)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLQDHNSVLADAY(配列番号12)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(e)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWSGDSTH(配列番号13)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGEIDGLEENDY(配列番号14)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(f)GFTFSDYAMG(配列番号15)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGQNKEHVGKRIEDY(配列番号16)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
【請求項2】
N-タンパク質に結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
単一ドメイン抗体又はその多量体である、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
単一ドメイン抗体がVHHである、請求項3記載の抗体。
【請求項5】
単一ドメイン抗体の多量体が、前記構造ドメインを複数連結した多量体である請求項3記載の抗体。
【請求項6】
単一ドメイン抗体の多量体が、前記構造ドメインの1又は複数と、該構造ドメインとは抗原特異性の異なる構造ドメインの1又は複数を連結した多量体である請求項3記載の抗体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の抗体をコードする核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
SARSコロナウイルス-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2,;SARS-CoV-2)は、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)やMERSコロナウイルス(MERS-CoV)と同様ベータコロナウイルス属に属し、急性呼吸器疾患(COVID-19)の原因となるSARS関連コロナウイルスである。2019年に中国湖北省武漢市付近で発生が初めて確認され、その後、COVID-19の世界的流行(パンデミック)を引き起こしている。
【0003】
SARS-CoV-2は、そのウイルスゲノムは29,903塩基程度で、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。また、ウイルス粒子(ビリオン)は、50~200nmほどの大きさである。一般的なコロナウイルスと同様に、スパイクタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、内在性膜タンパク質、エンベロープタンパク質として知られる4つのタンパク質と、RNAより構成されている。このうちヌクレオカプシドタンパク質がRNAと結合してヌクレオカプシドを形成し、脂質と結合したスパイクタンパク質、内在性膜タンパク質、エンベロープタンパク質がその周りを取り囲んでエンベロープを形成する(非特許文献1、2)。
【0004】
SARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質(以下、Nタンパク質)は、SARS-CoV-2のRNAゲノムに結合するタンパク質である。ウイルスゲノムのフォールディング・ウイルスタンパク質のアセンブリ・ウイルスの出芽といったウイルス粒子形成に関与するほか、宿主細胞の応答を抑制する機能があることが報告されている(非特許文献3)。
SARS-CoV-2のNタンパク質は、そのウイルスを構成するタンパク質の中で最も数の多いタンパク質の一つであることが報告されており(非特許文献4)、Nタンパク質の数は、SARS-CoV-2の表面に露出しているスパイクタンパク質よりも遥かに多いため、SARS-CoV-2の抗原検査では、特に検出感度の点において、標的分子として好ましいタンパク質である。
また、SARS-CoV-2のNタンパク質は、感染細胞内で主に発現するタンパク質の一つであり、強い免疫原性を示す。2002年11月より流行したSARS-CoVのNタンパク質に対するELISA法では、高い特異性で感染初期と見られる患者も診断できたことが報告されている(非特許文献5)。
【0005】
そして、近年のSARS-CoV-2により引き起こされる新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて、イムノクロマト法を原理とした抗原検査の如く、POCT(Point of Care Testing:簡易迅速検査)の必要性が以前にも増して高まっている。イムノクロマト法では、予め用意された金コロイドやラテックス粒子等と結合した抗体(以下、標識抗体と呼ぶ)と被検体中に含まれる抗原が複合体を形成しながら毛細管現象によりニトロセルロース膜上を移動し、予めニトロセルロース膜上に固相化された抗体(以下、捕捉抗体と呼ぶ)が抗原-標識抗体複合体と結合することで呈色することを利用した免疫測定法である。現在、市販されているイムノクロマトキットの殆どはマウスやウサギ等に由来するモノクローナル、又はポリクローナルIgG抗体が用いられている。
【0006】
一方、ラクダ科動物の血清中から見いだされた重鎖抗体は、通常の抗体(IgG抗体など)が重鎖と軽鎖の2つの可変領域で抗原と結合するのに対し、1つの可変領域のみで結合活性と抗原特異性を示す。この抗体の可変領域はVHH(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain antibody) と呼ばれ、抗原に結合できる免疫グロブリンフラグメントとしては最も低分子量(通常の抗体(IgG抗体など)の10分の1程度)とされる(非特許文献6)。
VHHはIgG抗体と同等の結合活性を示しながらも、(1)IgG抗体と比較して分子量が10分の1程度であり、従来の抗体では結合できない新規のエピトープが期待されること、(2)IgG抗体とは異なり、可逆性の高いタンパク質構造をもち、熱や圧に対して優れた耐性を示すこと、(3)IgG抗体とは異なり、酵母や細菌等の微生物を用いた生産が可能であること、等の特徴をもつ。さらに、(4)VHHは、cDNAディスプレイ法やファージディスプレイ法等の試験管内の抗体選抜技術との親和性が非常に高く、マウスやウサギ等への免疫によって得られるIgG抗体と比較して、より短期間に開発することが可能である。
【0007】
また、検査薬の開発においても、VHHの優位性は明らかである。特に、VHHが有する特性から、(1)VHHは粒子やニトロセルロース膜に高密度に固相化することが可能であり、より多くのパラトープを基材上に提示することができること、(2)VHHはタンパク質としての安定性に優れており、製品のより優れた保存安定性が期待できること、(3)VHHは微生物によって大量かつ安価に生産可能であるため、製造原価をより低減させることが出来ること、(4)VHHはイムノクロマト法において非特異的反応の原因となりうるFc領域を有さないこと、がIgG抗体と比較して優位であると考えられる。
【0008】
しかしながら、イムノクロマト法等の抗原検査法にVHHを用いることには課題がある。可変領域のみからなるVHHは、(1)IgG抗体と比較して低分子量であるため、基材への物理的な吸着性能が低いこと、(2)基材への固相化時に受けるタンパク質変性効果により、結合活性が低下しやすいこと、(3)IgG抗体とは異なり、VHHはFc領域を持たないため、基材へのランダムな吸着において配向性の制御が困難であること、が知られている。このような理由から、VHHを捕捉抗体として用いた場合、結合活性が低下しやすいことが課題となる。すなわち、イムノクロマト法において、VHHを捕捉抗体として用いた場合、高感度に抗原を検出することが難しいことが知られている。
【0009】
この課題に対して、非特許文献7ではコンジュゲーションパッドに標識抗体としてのVHH及びビオチン標識化されたVHHの2種類の抗体を含ませておき、そしてニトロセルロース膜上にはビオチンに対して結合活性を示すストレプトアビジンを固相化する方法が用いられている。すなわち、ニトロセルロース膜上で、標識抗体―抗原―ビオチン化VHHの複合体を形成させ、その複合体をストレプトアビジンにより捕捉する方法である(従来技術1)。
【0010】
また、非特許文献8では標識抗体にVHHを用いており、捕捉抗体としては予め用意されたビオチン化VHH―ストレプトアビジン複合体をニトロセルロース膜上に固相化する方法が用いられている。すなわち、ニトロセルロース膜におけるVHHの固相化をストレプトアビジンとニトロセルロース膜間の相互作用に依存させる方法である(従来技術2)。
【0011】
また、非特許文献9ではIgG抗体が抗原を認識するための最小単位であるVHとVLから構成される可変領域をペプチドリンカーで結合した単鎖可変領域フラグメントを、セルロース膜を用いたイムノクロマト法における捕捉抗体として用いている。単鎖可変領域フラグメントを捕捉抗体として用いた場合では検出感度に課題があるが、セルロース膜に対して結合する炭水化物結合モジュールを用いることで解決している(従来技術3)。すなわち、単鎖可変領域フラグメントと炭水化物結合モジュールを連結することにより、セルロース膜上の当該単鎖可変領域フラグメントの固定化量及び配向性が制御され、捕捉抗体として用いられた単鎖可変領域フラグメントの結合活性が向上したことを報告している。
【0012】
従来技術1及び従来技術2に関して、VHHをビオチン修飾する必要があり、多くの場合、アミンカップリング法等の化学的修飾法が用いられる。しかしながら、アミンカップリング法ではVHHの部位特異的な修飾が難しいため、しばしば結合活性の低下を招くことが知られている。また、ビオチン修飾やストレプトアビジンを利用することは作業工程やコスト面において、好ましい方法でない。特に、ストレプトアビジンはアビジン以外のビタミン類とも結合する。そのようなビタミン類が被検体中に含まれている場合、ストレプトアビジンを捕捉抗体の一部として用いることは、競合による阻害を受けることで、捕捉抗体としての機能が低下することが課題となる。
【0013】
従来技術3に関して、VHHに基材への吸着モジュールを連結する方法は、基材への固相化量、配向性、吸着時のタンパク質変性効果の回避の点から優れた方法である。しかしながら、用いられる基材毎に吸着モジュールを探す必要があり、汎用性に優れたものを見つけることは困難である。また、VHHに連結させる吸着モジュールの種類によっては、微生物による生産が困難になる場合もあることが課題である。また、非特許文献4に記載される当該炭水化物結合モジュールはニトロセルロース膜に対する結合活性を示さないことが記されており、従来技術3は捕捉抗体を固相化する基材としてセルロース膜に限定された抗体の固相化方法となる。
【0014】
したがって、従来技術1~3で用いられている方法を用いずとも、イムノクロマト法において抗原を高感度に検出可能なVHHの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature. 2020 Mar;579(7798):270-273.
【非特許文献2】A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature. 2020 Mar;579(7798):265-269.
【非特許文献3】The Coronavirus Nucleocapsid Is a Multifunctional Protein. Viruses. Volume 6、Issue 8、August 2014、Pages 2991-3018.
【非特許文献4】The SARS-CoV nucleocapsid protein: A protein with multifarious activities. Infection, Genetics and Evolution. Volume 8、July 2008、Pages 397-405.
【非特許文献5】Diagnosis of Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS) by Detection of SARS Coronavirus Nucleocapsid Antibodies in an Antigen-Capturing Enzyme-Linked Immunosorbent Assay. Journal of Clinical Microbiology. Volume 41、No. 12、December 2003、Pages 5781-5782.
【非特許文献6】The Therapeutic Potential of Nanobodies. BioDrugs. Volume 34、November 2019、Pages 11-26.
【非特許文献7】Development of a Nanobody-Based Lateral Flow Immunoassay for Detection of Human Norovirus. mSphere. 2016;1:e00219-16.
【非特許文献8】Development of a Nanobody-based lateral flow assay to detect active Trypanosoma congolense infections. Sci Rep. 2018;8:9019.
【非特許文献9】Carbohydrate binding module-fused antibodies improve the performance of cellulose-based lateral flow immunoassays. Sci Rep. 2021;11:7880.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、SARS-CoV-2のNタンパク質に特異的に結合し、SARS-CoV-2のNタンパク質を検出することが可能な抗体を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らはSARS-CoV-2のNタンパク質に結合するVHHを得るべく検討した結果、特定のアミノ酸数を有するCDR1~3をコンストラクトに含むVHHライブラリーから、cDNAディスプレイ法によるスクリーニングにより、SARS-CoV-2のNタンパク質に対して反応性の高いクローンを得ることに成功し、これがイムノクロマト法に適する抗SARS-CoV-2抗体となり得ることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)から選択されるCDR1~3を含む構造ドメインを1つ以上有する、SARS-CoV-2に結合する抗体。
(a)GRTFSDYDMG(配列番号1)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、SITSGGSTK(配列番号2)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びHDYFYVDNWESY(配列番号3)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(b)GFTFSRYDMS(配列番号4)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWNGGSTY(配列番号5)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLDWLQWDWAY(配列番号6)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(c)GFTFSSYAMT(配列番号7)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びGQHHQELQHWYAWDY(配列番号9)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(d)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AITWNGGSTY(配列番号11)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLQDHNSVLADAY(配列番号12)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(e)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWSGDSTH(配列番号13)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGEIDGLEENDY(配列番号14)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(f)GFTFSDYAMG(配列番号15)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGQNKEHVGKRIEDY(配列番号16)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
2)1)の抗体をコードする核酸。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、反応性の高い抗SARS-CoV-2 Nタンパク質抗体を提供することができる。当該抗体はイムノクロマト法に用いられる抗体として有用であることから、SARS-CoV-2の迅速な検出、すなわちSARS-CoV-2感染症である急性呼吸器疾患(COVID-19)の簡易迅速診断に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】枯草菌で生産したHisタグ付きVHHをSDS-PAGEに供した結果。
【
図2】Sandwich ELISA法によるHisタグ付きPN4及びHisタグ付きPN10及びHisタグ付きPN27及びHisタグ付きPN44及びHisタグ付きPN46及びHisタグ付きPN63のSARS-CoV-2のNタンパク質に対する結合活性の評価。
【
図3】Direct ELISA法によるHisタグ付きPN4及びHisタグ付きPN10及びHisタグ付きPN27及びHisタグ付きPN44及びHisタグ付きPN46及びHisタグ付きPN63のコロナウイルス属のNタンパク質に対する結合特異性の評価。
【
図4】標識抗体及び捕捉抗体にHisタグ付きVHHを用いたイムノクロマトの構築可否の検討試験。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のSARS-CoV-2に結合する抗体(以下、「本発明の抗体」と称する)は、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)から選択されるCDR1~3を含む構造ドメインを1つ以上有する、SARS-CoV-2に結合する抗体である。
(a)GRTFSDYDMG(配列番号1)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、SITSGGSTK(配列番号2)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びHDYFYVDNWESY(配列番号3)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(b)GFTFSRYDMS(配列番号4)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWNGGSTY(配列番号5)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLDWLQWDWAY(配列番号6)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(c)GFTFSSYAMT(配列番号7)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びGQHHQELQHWYAWDY(配列番号9)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(d)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AITWNGGSTY(配列番号11)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLQDHNSVLADAY(配列番号12)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(e)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWSGDSTH(配列番号13)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGEIDGLEENDY(配列番号14)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(f)GFTFSDYAMG(配列番号15)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGQNKEHVGKRIEDY(配列番号16)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
【0022】
SARS-CoV-2は、急性呼吸器疾患(COVID-19)の原因となる、SARS関連コロナウイルスであり、そのウイルスゲノムは29,903塩基程度の一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。本発明の抗体は、SARS-CoV-2に結合する抗体であるが、詳細には、SARS-CoV-2のNタンパク質に結合する抗体である。
【0023】
本発明の抗体の構造ドメインは、CDR1、CDR2及びCDR3の3つのCDRを有する。CDR(Complementarity Determining Region;相補性決定領域)とは、配列可変な抗原認識部位又はランダム配列領域を含み、超可変領域とも云われる。本発明の抗体の構造ドメインにおいて、3つのCDRは、N末端側からCDR1、CDR2、CDR3の順で存在する。
【0024】
なお、SARS-CoV-2に対する結合能は、当業者に公知の方法、例えばELISA、イムノクロマト法、等温滴定カロリメトリー法、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、平衡乖離定数KD等を用いた方法によって評価できる。
【0025】
本発明の抗体の構造ドメインは、CDR1、CDR2、CDR3の両端にフレームワーク領域を有するものであってもよい。フレームワーク領域とは、抗体分子の可変領域において相補性決定領域を除く領域であり、保存性の高い領域を指す。
すなわち、本発明の構造ドメインは、一態様として、第1フレームワーク領域(FR1)、CDR1、第2フレームワーク領域(FR2)、CDR2、第3フレームワーク領域(FR3)、CDR3及び第4フレームワーク領域(FR4)をこの順に有するものが挙げられる。
構造ドメインにおけるフレームワーク領域のアミノ酸配列としては以下で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
【0026】
FR1:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号17)
FR2:
WYRQAPGKGLEWVA(配列番号18)
WFRQAPGKGREFVA(配列番号19)
WFRQAPGKGREGVA(配列番号20)
FR3:
YADSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAA(配列番号21)
YAESVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAA(配列番号22)
YADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAV(配列番号23)
YAESVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAA(配列番号24)
FR4:
WGQGTLVTVSS(配列番号25)
【0027】
配列番号17~25で示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるフレームワーク領域としては、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるフレームワーク領域が挙げられる。
【0028】
ここで、アミノ酸配列の同一性とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントしたときに両方の配列において同一のアミノ酸残基が存在する位置の数の全長アミノ酸残基数に対する割合(%)をいう。配列の同一性は、例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のBLAST(Basic Local Alignment Search Toolを用いて解析を行なうことにより算出できる。
【0029】
本発明の抗体のうち、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号1で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号2で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号3で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号18で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号21で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号26)を有する抗体、及びCDR1が配列番号4で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号5で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号6で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号19で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号22で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号27)を有する抗体、及びCDR1が配列番号7で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号8で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号9で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号19で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号23で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号28)を有する抗体、及びCDR1が配列番号10で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号11で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号12で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号20で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号21で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号29)を有する抗体、及びCDR1が配列番号10で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号13で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号14で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号20で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号21で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号30)を有する抗体、及びCDR1が配列番号15で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号8で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号16で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号20で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号24で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号31)を有する抗体はそれぞれ、後述する実施例においてcDNAディスプレイ法によるスクリーニングにより得られた、SARS-CoV-2に反応性の高いクローン(配列番号26がPN4、配列番号27がPN10、配列番号28がPN27、配列番号29がPN44、配列番号30がPN46、配列番号31がPN63である。)であり、好適な抗SARS-CoV-2抗体である。
【0030】
本発明の抗体は、上記の構造ドメインを少なくとも1つ有するものであればその形態は限定されず、単一ドメイン抗体や、単一ドメイン抗体が複数結合した多量体(例えば二量体)であり得る。多量体には、本発明の構造ドメインが複数連結した多量体の他、当該構造ドメインの1又は複数と、当該構造ドメインとは抗原特異性の異なる他の構造ドメインの1又は複数が連結した多量体が含まれる。
単一ドメイン抗体は、単一の可変領域(抗原結合ドメイン)で抗原に特異的に結合する性質を有する抗体を指す。単一ドメイン抗体には,可変領域が重鎖の可変領域のみからなる抗体(重鎖単一ドメイン抗体)、可変領域が軽鎖の可変領域のみからなる抗体(軽鎖単一ドメイン抗体)が含まれる。ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ、アルパカなど)で同定された重鎖抗体であるVHH、軟骨魚類(例えばサメ)由来の重鎖抗体であるVNAR等が単一ドメイン抗体の一種として知られており、本発明においてはVHHが好ましい。
また、本発明の抗体はヒト化されていてもよい。ヒト化された抗体は、ヒトに投与することが可能であるため、医薬として応用することができる。
【0031】
本発明の抗体の作製方法は特に限定されず、当該技術分野における公知技術により容易に作製することができる。例えば、ペプチド固相合成法とネイティブ・ケミカル・リゲーション(Native Chemical Ligation;NCL)法を組み合わせて作製することや遺伝子工学的に作製することができるが、本発明の抗体をコードする核酸をコドン最適化などの工程を経ることにより宿主細胞における目的の抗体の発現に最適化された人工遺伝子を設計し、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞に導入し、組換え抗体として産生させる方法が好ましい。
【0032】
組換え抗体として産生において使用される宿主細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌、カビ、動物細胞、植物細胞、バキュロウイルス/昆虫細胞又は酵母細胞等が挙げられる。 抗体を発現させるための発現用ベクターは、各種宿主細胞に適したベクターを用いることができる。発現ベクターとしては、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のベクター;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のベクター;pHY300PLK等の大腸菌と枯草菌で共用することができるシャトルベクター;pSH19、pSH15等の酵母由来ベクター;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。
これらの発現ベクターは、各々のベクターに適した、複製開始点、選択マーカー及びプロモーターを有しており、必要に応じて、エンハンサー、転写集結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位及びポリアデニル化シグナル等を有していてもよい。さらに、発現ベクターには、発現したポリペプチドの精製を容易にするため、FLAGタグ、Hisタグ、HAタグ及びGSTタグなどを融合させて発現させるための塩基配列が挿入されていてもよい。
【0033】
発現させた本発明の抗体を培養菌体又は培養細胞から抽出する際には、培養後、公知の方法で菌体又は培養細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/又は凍結融解などによって菌体又は細胞を破壊したのち、遠心分離や濾過により、可溶性抽出液を取得する。得られた抽出液から、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて目的の抗体を取得することができる。
公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法又は等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0034】
本発明の抗体は、SARS-CoV-2のNタンパク質に結合することから、これを、SARS-CoV-2を含有するか、又は含有する可能性のある被験試料と接触させることによって、当該試料中にSARS-CoV-2が存在すること、あるいは存在しないことを確認できる。
具体的には、本発明の抗体を用いたSARS-CoV-2の検出は、本発明の抗体と、被験試料とを接触させ、本発明の抗体と前記被験試料中のSARS-CoV-2との結合体を形成させる工程と、前記結合体中のSARS-CoV-2を検出する工程、を備えてなる。
また、本発明の抗体は、血清中のウイルス特異的抗体の検出において、固定化した被験試料(血清)中に含まれる抗SARS-CoV-2抗体(例えば血清抗体)に対して、SARS-CoV-2のNタンパク質を含む抗原の一部を添加して結合させ、当該結合体状態にあるSARS-CoV-2抗原の存在を確認する抗体として使用することもできる。
【0035】
被験試料としては、気管スワブ、鼻腔拭い液,咽頭拭い液、鼻腔洗浄液、鼻腔吸引液、鼻汁鼻かみ液、唾液、痰、血液、血清、尿、糞便、組織、細胞、組織又は細胞の破砕物等の生体試料の他、ウイルスが付着している可能性のある固体表面、例えばドアノブ、便器等から採取された試料が挙げられる。被験試料は、Nタンパク質への結合の点から、被験試料中のウイルスを界面活性剤等を含む溶液で溶解し、当該溶液中で抗体と結合させるのが好ましい。抗体は固相に固定されていてもよく、固相に固定されていなくてもよい。
上記の結合体中のSARS-CoV-2を検出する工程は、例えば、上記の結合体に、結合体中の本発明の抗体とは異なるエピトープを認識する、抗SARS-CoV-2抗体を反応させることにより行うことができる。或いは、ホモジニアスアッセイにより、液相中で上記の結合体中のSARS-CoV-2を検出してもよい。
【0036】
また、本発明の抗体はSARS-CoV-2検出用キットの構成成分となり得る。特に、本発明の抗体はイムノクロマト法(ラテラルフローアッセイ)に用いられる捕捉抗体又は標識抗体として有用であることから、ラテラルフローアッセイにおけるストリップの構成成分として好適である。当該キットは、SARS-CoV-2感染症(COVID-19)の診断薬として、またSARS-CoV-2感染症治療薬の開発用のツールとして使用可能である。
当該検出キットは、本発明の抗SARS-CoV-2抗体の他、検出に必要な試薬及び器具、例えば本発明の抗体を認識する抗体又は本発明の抗体とは異なるエピトープを認識するNタンパク質抗体、固相担体、緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を含むことができる。
当該検出キットにおいて、本発明の抗体は固相に固定されていてもよい。固相としては、例えば、ビーズ、膜、反応容器の側面や底面、スライドガラス等の板状基板、イムノプレート等のウェル基板、ラテラルフローアッセイにおけるストリップ等が挙げられ、本発明の抗体が直接的又は間接的に固定される。
【0037】
また、本発明の抗体は、細胞膜透過性ペプチドを導入する等して細胞内に移行させることで、SARS-CoV-2のNタンパク質に結合し、細胞内でのウイルスの複製を阻害することが考えられる。したがって、本発明の抗体は、哺乳動物に投与し、SARS-CoV-2感染症の予防又は治療するための医薬として利用することも可能である。哺乳動物としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタ等が挙げられるが、ヒトが好ましい。
本発明の抗体を医薬として用いる場合には、その態様は、経口、非経口のいずれでもよく、適宜、周知の薬学的に許容可能な無毒性の担体、希釈剤と組み合わせて用いることができる。非経口投与としては、典型的には注射剤が挙げられるが、噴霧剤等と共に吸入による投与も可能である。
【0038】
斯かる医薬において、その組成物中における本発明の抗体の含有量は適宜調整できる。
また、斯かる医薬は、本発明の抗体として、有効量を1週間に1~数回程度の間隔で患者に投与することにより適用することができる。この場合の投与方法としては、好適には静脈注射、点滴等が挙げられる。
【0039】
本発明においては上述した実施形態に関し、さらに以下の態様が開示される。
<1>以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)から選択されるCDR1~3を含む構造ドメインを1つ以上有する、SARS-CoV-2に結合する抗体。
(a)GRTFSDYDMG(配列番号1)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、SITSGGSTK(配列番号2)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びHDYFYVDNWESY(配列番号3)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(b)GFTFSRYDMS(配列番号4)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWNGGSTY(配列番号5)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLDWLQWDWAY(配列番号6)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(c)GFTFSSYAMT(配列番号7)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びGQHHQELQHWYAWDY(配列番号9)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(d)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AITWNGGSTY(配列番号11)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLQDHNSVLADAY(配列番号12)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(e)RSIFSGNAMG(配列番号10)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISWSGDSTH(配列番号13)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGEIDGLEENDY(配列番号14)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
(f)GFTFSDYAMG(配列番号15)で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、AISRNGGSTY(配列番号8)で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及びLGQNKEHVGKRIEDY(配列番号16)で示されるアミノ酸配列からなるCDR3
<2>N-タンパク質に結合する、<1>の抗体。
<3>単一ドメイン抗体又はその多量体である、<1>又は<2>の抗体。
<4>単一ドメイン抗体がVHHである、<3>の抗体。
<5>単一ドメイン抗体の多量体が、前記構造ドメインを複数連結した多量体である<3>の抗体。
<6>単一ドメイン抗体の多量体が、前記構造ドメインの1又は複数と、該構造ドメインとは抗原特異性の異なる構造ドメインの1又は複数を連結した多量体である請求項3記載の抗体。
【0040】
<7>構造ドメインが、第1フレームワーク領域(FR1)、CDR1、第2フレームワーク領域(FR2)、CDR2、第3フレームワーク領域(FR3)、CDR3及び第4フレームワーク領域(FR4)をこの順に有するものである、<1>~<6>のいずれかの抗体。
<8>FR1~FR4が以下のアミノ酸配列からなる、<7>の抗体。
FR1:配列番号17で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
FR2:配列番号18、19又は20で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
FR3:配列番号21、22、23又は24で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
FR4:配列番号25で示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
<9>FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号1で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号2で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号3で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号18で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号21で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号26)を有する、<7>の抗体。
<10>FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号4で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号5で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号6で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号19で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号22で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号27)を有する、<7>の抗体。
<11>FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号7で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号8で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号9で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号19で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号23で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号28)を有する、<7>の抗体。
<12>FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号10で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号11で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号12で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号20で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号21で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号29)を有する、<7>の抗体。
<13>FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号10で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号13で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号14で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号20で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号21で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号30)を有する、<7>の抗体。
<14>FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4がこの順で連結され、CDR1が配列番号15で示されるアミノ酸配列、CDR2が配列番号8で示されるアミノ酸配列、CDR3が配列番号16で示されるアミノ酸配列であり、FR1が配列番号17で示されるアミノ酸配列、FR2が配列番号20で示されるアミノ酸配列、FR3が配列番号24で示されるアミノ酸配列、FR4が配列番号25で示されるアミノ酸配列である構造ドメイン(配列番号31)を有する、<7>の抗体。
【0041】
<15><1>~<14>のいずれかの抗体をコードする核酸。
【実施例0042】
(実施例1)新型コロナウイルスNタンパク質に結合するVHHのスクリーニング
<材料と方法>
1.スクリーニングの標的分子
標的分子としてSARS-CoV-2(2019-nCoV)Nucleocapsid-His Recombinant Protein(Hisタグ付きNタンパク質、Sino Biological)を用いた。
【0043】
2.cDNAディスプレイの合成
(1)初期DNAライブラリーの合成
人工合成VHHライブラリーであるPharmaLogicalライブラリー(PLライブラリー)であるPL_Upright6-Y,PL_Upright12-Y, PL_Upright6-V,PL_Upright12-V, PL_Roll_12, PL_Roll_15を鋳型DNAとして、PCR増幅を行った。PCR用溶液の組成は500μL反応スケールに調製した。テストチューブ1本あたり、鋳型DNAとして150μLの各VHHライブラリーと7.5μLの20μM Newleftプライマー(5’―GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGG―3’、配列番号32)、7.5μLの20μM NewYtag_for_polyA_cnvk-linkerプライマー(5’―TTTCCACGCCGCCCCCCGTCCT―3’、配列番号33)、250μL 2×PrimeSTAR MAX(タカラバイオ)、85μLのH2Oを添加した。PCRは98℃で1分間の後、98℃で10秒間、60℃で5秒間、72℃で10秒間を5サイクル、そして72℃で1分間の条件で行った。PCR産物の精製はAgencourt AMPure XP(Beckman Coulter)を用いた。1μLのPCR産物あたり等量のビーズを加え、ピペッティングして混合し、2分間静置した後に上清を除去し、400μLの70%エタノールを用いてビーズを3回洗浄した。ビーズを風乾させた後、500μLのNuclease Free Water(NFW)を添加してビーズを懸濁させ、上清を回収した。その後、吸光度測定(A260/A280)によりDNA濃度を定量した。
【0044】
(2)in vitro転写
T7 RiboMAX Express Large Scale RNA Production System(Promega)を用いた。25μLのRiboMAX(商標) Express T7 2×Buffer,10pmolのPCR産物、5μLのEnzyme Mixを混合し,37℃で30分間インキュベートした。続いて、5μLのRQ1 RNase-Free DNaseを添加し、37℃で15分間インキュベートした。転写産物の精製はRNAClean XP(Beckman Coulter)を用いた。1μLの転写産物あたり1.8μLのビーズを加え、ピペッティングによる混合後、5分間静置した。磁性プレート上で透明になるまで静置した後、上清を除去した。200μLの70%エタノールを添加し、30秒静置した後、上清を除去した。このエタノール洗浄は3回行った。上清の除去後、磁気プレート上で10分間静置し、ビーズを風乾させた。チューブを磁気プレートから下ろし、300μLのNFWを添加後、ピペッティングによりビーズを懸濁し5分静置した。チューブを磁気プレート上で1分間静置した後、上清を回収した。精製後、NanoPad DS-11FX(DeNovix)によりRNAを定量した。
【0045】
(3)mRNAとピューロマイシンリンカーの連結
20μLの0.25M Tris-HCl(pH7.5)、20μLの1M NaCl、100pmolの(2)で調製したmRNA、100pmolのcnvK riboG linkerを混合し、NFWで100μLになるように反応液を調製した。アニーリングはProFlex PCR System(Life technologies)を用いて、90℃で2分間、70℃で1分間、25℃で30秒、4℃でインキュベートの条件で行った。Ramp rateは0.1℃/秒に設定した。続いて、Handheld UV Lamp,6W、UVGL-58、254/365nm、100V(Analytik jena US、An Endress+Hauser Company)を用いて波長365nmの紫外線を5分間照射した。mRNA-リンカー連結体は使用するまで遮光し、氷冷した。
【0046】
(4)無細胞翻訳
mRNA-リンカー連結体からのmRNA-VHH連結体の合成にはPUREfrex(登録商標) 1.0(ジーンフロンティア)を用いた。12μLのNUCLEASE FREE WATER、37.5μLのPurefrex Solution 1(ジーンフロンティア)、3.75μLのPurefrex Solution 2(ジーンフロンティア)、3.75μLのPurefrex Solution 3(ジーンフロンティア)、18μLのmRNA-リンカー連結体を混合した。この反応液を37℃で15分間インキュベートした後、36μLのIVV formation buffer(3M KCl,1M MgCl2)混合液を加え、さらに37℃で20分間反応させることで、mRNA-VHH連結体を合成した。
【0047】
(5)ストレプトアビジン磁性体ビーズへの固定化
60μLのDynabeads My One Streptavidin C1 (Thermo Fisher Scientific)に60μLの2×Binding buffer(20mM Tris-HCl、2M NaCl、0.2% Tween 20、2mM EDTA,pH8)を添加し、1分間ピペッティングすることで懸濁させた。磁気プレート上で1分間静置し、上清を捨てた。この洗浄は2回行った。75μLのmRNA-VHH連結体、75μLの2xBinding buffer、洗浄済みのストレプトアビジン磁性体ビーズと混合し、室温で30分間インキュベートした。磁性プレート上で1分間静置した後、上清を除去した。200μLのBinding buffer(10mM Tris-HCl、1M NaCl、0.1% Tween 20、1mM EDTA,pH8)を添加し、1分間ピペッティングした後、上清を除去した。この洗浄は2回行った。
【0048】
(6)逆転写反応
55.5μLのNuclease Free Water、15μLの5×RT Buffer(ニッポンジーン)、1.5μLのGeneAce Reverse Transcriptasee(200U/μL)(ニッポンジーン)を混合した。上記の反応液にストレプトアビジン磁性体ビーズ上に固定化されたmRNA-VHH連結体を添加し、42℃、30分間インキュベートすることで逆転写反応を行うことで、cDNA-VHH連結体を合成した。
【0049】
(7)ビーズからの切り出し
ストレプトアビジン磁性体ビーズ上に固定化されたcDNA-VHH連結体に対して、His-tag wash buffer(20mM Sodium phosphate、500mM NaCl、5mM Imidazole、0.05% Tween 20、pH7.4)を添加し、1分間ピペッティングすることで懸濁させた。磁気プレート上で1分間静置し、上清を捨てた。続いて、30μLの10U RNase T1(Thermo Fisher Scientific)含有His-tag wash bufferを添加し、1分間ピペッティングすることで懸濁させた後、37℃で15分間静置することでcDNA-VHH連結体を溶出させた。
【0050】
(8)精製
30μLのHis Mag Sepharose Ni Beads(GE Health Care)を磁気プレート上で1分間静置し、上清を捨てた後、His-tag wash bufferで再懸濁した。この洗浄操作は2回行った。cDNA-VHH連結体の溶出液とHis Mag Sepharose Ni Beads懸濁液を混合し、室温で30分間インキュベートした後、磁気プレート上で1分間静置し、上清を捨てた。200μLのHis-tag wash bufferを添加し、1分間ピペッティングすることで懸濁させた。磁気プレート上で1分間静置し、上清を捨てた。この洗浄操作は2回行った。10μLのHis-tag elution buffer(20mM Sodium phosphate、500mM NaCl、250mM Imidazole、0.05% Tween 20、pH7.4)を添加し、室温で15分間インキュベートすることでcDNA-VHH連結体を溶出した。
【0051】
3.セレクション
(1)標的分子の固相化とブロッキング
標的分子として、SARS-CoV-2 (2019-nCoV) Nucleocapsid-His Recombinant Protein(Hisタグ付きNタンパク質、Sino Biological)を本研究では使用した。Nunc-ImmunoTM Plate II(Thermo Fisher Scientific)の各ウェルにPBSで濃度調製した標的分子を固相化した。具体的には、セレクションラウンド1(R1)では50μg/mL,R2では10μg/mL(R2),R3以降のラウンドでは1μg/mLに調製した標的因子を100μLずつ添加して、4℃で一晩インキュベートした。ピペットを用いて標的因子を除去した後、5%スキムミルク/PBSTを添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、丁寧にスキムミルク/PBSTを除去した。最後に、HBST(20mM HEPES,500mM NaCl,0.02% Tween20)を200μL添加して除去する操作(洗浄)を3回繰り返した。
【0052】
(2)セレクションラウンド1(R1)におけるスクリーニング手順
R1では合成した200pmolのcDNA-VHH連結ライブラリ―に、35μLのHBT(20mM HEPES,0.02% Tween20)と40μLのHBSTを加えた100μLのライブラリー溶液を用いた。標的分子の固相化が完了したウェルにライブラリー溶液を添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、ライブラリー溶液を丁寧に除去した。次に、HBST(20mM HEPES,500mM NaCl,0.02% Tween20)を200μLを添加して除去する操作(洗浄)を6回繰り返した。最後に、100mMのTris(hydroxymethyl)aminomethane(pH11)を100μL添加して、丁寧に10回ピペッティングした後に常温で10分インキュベートした。その後、再度丁寧に10回ピペッティングし、溶出液を新しいチューブに回収した。
【0053】
(3)R2以降におけるスクリーニング手順
合成したcDNA-VHH連結ライブラリ―に、35μLのHBT(20mM HEPES,0.02% Tween20)と40μLのHBSTを加えて、100μLになるように調製した。R2では9pmol,R3以降では18pmolのライブラリ―溶液を用いた。R2以降では、予め各ウェルに100μLの5%スキムミルク/PBSTを加えて常温で1時間インキュベートしたのち、200μLのHBSTで3回洗浄することで、ウェルのブロッキングを行った。ブロッキングしたウェルにライブラリー溶液を添加し、常温で30分間インキュベートした。この操作によりブロッキング剤親和性のVHHクローンの除去を行った。その後、標的分子の固相化が完了したウェルにライブラリ―溶液を添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、ライブラリー溶液を丁寧に除去した。次に、HBST(20mM HEPES,500mM NaCl,0.02% Tween20)を200μL添加して除去する操作(洗浄)を6回繰り返した。最後に、100mMのTris(hydroxymethyl)aminomethane(pH11)を100μL添加して丁寧に10回ピペッティングした後、常温で10分インキュベートした。その後、再度丁寧に10回ピペッティングし、溶出液を新しいチューブに回収した。
【0054】
(4)PCR増幅
R1では全量、R2では半量、R3以降では1/4量のセレクション後の溶出液をPCRに供した。1PCRチューブあたり25μLのKAPA Hifi Hotstart Ready Mix(×2)(KAPA biosystems), 1.5μLの10μM Forward primer(5’―GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTC―3’,配列番号34),1.5μLの10μM Reverse primer(5’-TTTCCACGCCGCCCCCCGTCCT―3’,配列番号35),12.5μLのcDNA-VHH連結体、9.5μLのNFWを混合し調製した。ProFlex PCR system(Life technologies)を用いて、95℃で2分,[98℃で20秒,68℃で15秒,72℃で20秒]を22サイクル(R1)又は28サイクル(R2以降)、72℃で5分間の条件のPCRを行った。次に、PCR産物の精製をAgencourt AMPue XP(Beckman Coulter)を用いて行った。1μLのPCR産物あたり1.8μLのビーズを加えて、ピペッティングによる混合後に5分間静置した。磁気プレート上で透明になるまで静置したのち、上清を除去した。次に、1mLの70%エタノールを加えて30秒間静置したのち、上清を除去した。この操作は2回繰り返した。上清を除去後、磁気プレート上で3分間静置し、ビーズを風乾させた。チューブを磁気プレートから下ろし、45μLのNFWでよく懸濁したのち、5分間静置した。最後に、磁気プレート上で1分間静置したのち、上清を回収した。次のroundに進む場合には、精製したDNAを用いてin vitro転写を行い、cDNAディスプレイの合成、セレクションと操作を進めた。
【0055】
4.VHH候補配列の抽出
(1)PCR産物の定量と濃度調製
PicoGreen(商標) dsDNA reagent kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてPCR産物の定量を行った。定量値に従い、各サンプルの濃度を100ng/mLに調製した。
【0056】
(2)シーケンスライブラリーの調製
1st PCRを行った。反応液は1サンプルあたり12.5μLのKAPA HiFi HotStart Ready Mix(2X)(Kapa biosystems)、0.5μLの10μM Forward primer、0.5μLの10μM Reverse primer、2.5μLの前段落記載のPCR産物、9μLのNFWを混合し調製した。プライマーは5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGNNNNATGGAAGTACAATTAGTTGAATCTGGTGGTGGGCTTG-3’(配列番号36)と5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGNNNNTGAAGAGACTGTCACCAACGTGCCTTG-3’(配列番号37)を用いた。PCRは95℃で3分間の後、98℃で20秒間、62℃で15秒間、72℃で20秒を16サイクル、そして72℃で5分間の条件で行った。PCR産物の精製はAgencourt AMPure XP(Beckman Coulter)を用いた。1μLのPCR産物あたり1.8μLのビーズを加え、ピペッティングによる混合後、5分間静置した。磁性プレート上で透明になるまで静置した後、上清を除去した。200μLの70%エタノールを添加し、30秒静置した後、上清を除去した。このエタノール洗浄は2回行った。上清の除去後、磁気プレート上で5分間静置し、ビーズを風乾させた。チューブを磁気プレートから下ろし、20μLのNFWを添加後、ピペッティングによりビーズを懸濁し5分静置した。チューブを磁気プレート上で1分間静置した後、上清を回収した。
続いて、Index PCRを行った。反応液は1サンプルあたり12.5μLのKAPA HiFi HotStart Ready Mix(2X)(Kapa biosystems)、1μLの10μM Forward index primer(Nextera XT Index Kit v2、Illumina)、1μLの10μM Reverse index primer(Nextera XT Index Kit v2、Illumina)、2.5μLのテンプレートDNA、8μLのNFWを混合し調製した。PCRは95℃で3分間の後、98℃で20秒間、55℃で15秒間、72℃で30秒を8サイクル、そして72℃で5分間の条件で行った。PCR産物の精製はAgencourt AMPure XP(Beckman Coulter)を用いた。ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりPCR産物のサイズを確認後、Quant-iT PicoGreen dsDNA Assay Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてPCR産物の定量を行い、以下の式(1)に従ってモル濃度を算出した。得られた定量値に基づき、NFWで希釈することで4nMに調製した。
DNA濃度[ng/μL]/(660[g/mol]×550[bp])×106=DNA濃度[nM]・・・(1)
【0057】
(3)シーケンス
4nMライブラリーを使用する際の推奨プロトコルに従って調製した。変性・希釈済みのサンプルライブラリーの最終濃度は7pMになるように調製した。また、サンプルライブラリー中のPhiX Controlは5%になるように調製した。MiSeq(Illumina)とMiSeq Reagent Nano Kit v2 500 cycle(Illumina)を用いてシーケンスを行った。
【0058】
(4)シーケンスデータからVHHのアミノ酸配列の抽出と重複数の計測
MiSeq Controllerを用いてDemultiplexingされた配列データを解析に供した。シーケンスデータからVHHがコードされている塩基配列領域を抜き出し、アミノ酸配列に翻訳した。その後、各アミノ酸配列と完全に一致したアミノ酸配列数を計測した。その結果、PN4(配列番号26)、PN10(配列番号27)、PN27(配列番号28)、PN44(配列番号29)、PN46(配列番号30)、PN63(配列番号31)の出現頻度が高く、Nタンパク質との親和性が高い抗体として選抜された。
【0059】
PN4(配列番号26)のアミノ酸配列において、1~25番目がFR1(配列番号17)、26~35番目がCDR1(配列番号1)、36~49番目がFR2(配列番号18)、50~58番目がCDR2(配列番号2)、59~97番目がFR3(配列番号21)、98~109番目がCDR3(配列番号3)、110~120番目がFR4(配列番号25)である。
【0060】
PN10(配列番号27)のアミノ酸配列において、1~25番目がFR1(配列番号17)、26~35番目がCDR1(配列番号4)、36~49番目がFR2(配列番号19)、50~59番目がCDR2(配列番号5)、60~98番目がFR3(配列番号22)、99~108番目がCDR3(配列番号6)、109~119番目がFR4(配列番号25)である。
【0061】
PN27(配列番号28)のアミノ酸配列において、1~25番目がFR1(配列番号17)、26~35番目がCDR1(配列番号7)、36~49番目がFR2(配列番号19)、50~59番目がCDR2(配列番号8)、60~98番目がFR3(配列番号23)、99~113番目がCDR3(配列番号9)、109~124番目がFR4(配列番号25)である。
【0062】
PN44(配列番号29)のアミノ酸配列において、1~25番目がFR1(配列番号17)、26~35番目がCDR1(配列番号10)、36~49番目がFR2(配列番号20)、50~59番目がCDR2(配列番号11)、60~98番目がFR3(配列番号21)、99~110番目がCDR3(配列番号12)、109~121番目がFR4(配列番号25)である。
【0063】
PN46(配列番号30)のアミノ酸配列において、1~25番目がFR1(配列番号17)、26~35番目がCDR1(配列番号10)、36~49番目がFR2(配列番号20)、50~59番目がCDR2(配列番号13)、60~98番目がFR3(配列番号21)、99~110番目がCDR3(配列番号14)、109~121番目がFR4(配列番号25)である。
【0064】
PN63(配列番号31)のアミノ酸配列において、1~25番目がFR1(配列番号17)、26~35番目がCDR1(配列番号15)、36~49番目がFR2(配列番号20)、50~59番目がCDR2(配列番号8)、60~98番目がFR3(配列番号24)、99~113番目がCDR3(配列番号16)、109~124番目がFR4(配列番号25)である。
【0065】
(実施例2)プロテアーゼ欠損組換え枯草菌によるVHHの生産
(1)VHH生産用プラスミドの構築
実施例1により取得されたPN4(配列番号26),PN10(配列番号27),PN27(配列番号28),PN44(配列番号29),PN46(配列番号30),PN63(配列番号31)の生産を行った。本実施例で合成される各VHHのアミノ酸配列は、そのC末端側にリンカー配列(配列番号38)を介したHisタグ配列(配列番号39)を付与した。これにより合成されるVHHをHisタグ付きPN4(配列番号40)、Hisタグ付きPN10(配列番号41)、Hisタグ付きPN27(配列番号42)、Hisタグ付きPN44(配列番号43)、Hisタグ付きPN46(配列番号44)、Hisタグ付きPN63(配列番号45)と呼ぶ。これら配列番号40~45で示されるVHHをHisタグ付きVHHと総称する。これらHisタグ付きVHHを合成するためにまず、pHY300PLKをベースとして作製された組換えプラスミドpHY-S237(特開2014-158430)をテンプレートとし、5’-GATCCCCGGGAATTCCTGTTATAAAAAAAGG-3’(配列番号46)と5’-ATGATGTTAAGAAAGAAAACAAAGCAG-3’(配列番号47 )のプライマーセットとPrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(TaKaRa社製)を用いたPCRによりプラスミド配列を増幅した。Bacillus subtilis 168株のゲノムをテンプレートとし、5’-GAATTCCCGGGGATCTAAGAAAAGTGATTCTGGGAGAG-3’(配列番号48)と5’-CTTTCTTAACATCATAGTAGTTCACCACCTTTTCCC-3’(配列番号49)のプライマーセットを用いたPCRによりspoVG遺伝子由来のプロモーターDNAを増幅した。得られたプロモーターDNAを、In-Fusion HD Cloning Kit(Takara社製)を用いてプラスミド配列に組み込み、spoVGプロモーターと連結されたVHH発現用プラスミドを構築した。Genescript社のGenPlusクローニングによって、Hisタグ付きVHHの配列を、先に構築したVHH発現用プラスミドの配列番号50と配列番号51の間に組み込む形で、Hisタグ付きVHH発現用プラスミドを合成した。構築したプラスミドは下記(2)に示す手順に従って、Bacillus subtilis 874株から、特開2006-174707号に記載されている方法に従って、8種の細胞外プロテアーゼ遺伝子(epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprE)を欠損させ、さらに特許第4336082に記載されている方法に従い、胞子形成に関与するsigF遺伝子を欠損させることにより得られた株(Dpr8ΔsigF)に導入した。
【0066】
(2)組換え枯草菌の作製
枯草菌株への上記プラスミド導入は、以下に示すプロトプラスト法によって行った。枯草菌の培養は96穴ディープウェルプレートで行った。0.8mLのLB液体培地を入れたウェル中に、グリセロールを含む溶液中でストックしておいた枯草菌を植菌し、30℃、1,500r/minにて一晩振とう培養した。次に、培養液8μLを新鮮な0.8mLのLB液体培地に植菌し、30℃、1,500r/minで約2時間振とう培養した。培養終了後、この培養液を2mLチューブに回収し、12,000rpmで5分間遠心し、上清を除去した。4mg/mLのリゾチーム(SIGMA)を含む500μLのSMMPを加えて、得られたペレットを懸濁させ、このチューブを37℃で1時間インキュベートした。
【0067】
インキュベート終了後、このチューブを3,500rpmで10分間遠心し、上清を除去した。400μLのSMMPをこのチューブに加え、得られたペレットを懸濁させて懸濁液とした。別のチューブに得られた懸濁液33μLを加え、そこに上記のようにして作製した各プラスミドを加えて混合し、さらに100μLの40%PEGを添加し、ボルテックスして混合液とした。この混合液に350μLのSMMPを加えて転倒混和し、30℃、2時間インキュベートした。その後、あらかじめ準備しておいたDM3寒天培地を含むプレートの寒天培地上に、インキュベート後の培養液を200μL塗布し、30℃にて2~3日間インキュベートし、組換え枯草菌を得た。
【0068】
(3)VHHの産生
(2)で作製した組換え枯草菌を、50ppmのテトラサイクリンを含むLB培地1mLに植菌し、30℃で一晩振とう培養を行うことで、前培養液を得た。前培養液を96穴ディープウェルプレートの各ウェルに入れた1mLの2×L-mal培地に1%接種し、30℃で72時間振とう培養した。培養終了時に全ての培養物を15mLチューブに回収し、4℃、7,500rpmにて5分間遠心し、上清を回収した。回収した上清中に含まれる各VHHには、Ni-NTAアガロースビーズ(富士フィルム和光純薬)を用い、キットに添付されたプロトコルに従って精製した。精製時の溶出液としては、30mMのイミダゾールを含むPBSを用いた。
【0069】
(4)SDS-PAGEによる確認
2μLの各Hisタグ付きVHHの水溶液(共に1mg/mL)、2.5μLのNuPAGE(商標)LDS Sample Buffer(4×)(Thermo Fisher Scientific)、1μLのNuPAGE(商標)Sample Reducing Agent (10×)(Thermo Fisher Scientific)、4.5μLのH
2Oを混合し、100℃で加熱した。その後、10μLのサンプル溶液をゲルのウェルにアプライした。分子量マーカーとして、5μLのNovex(商標)Sharp Pre-stained Protein Standard(Thermo Fisher Scientific)もゲルのウェルにアプライした。ゲルはNuPAGE(商標)10%,Bis-Tris,1.0mm,Mini Protein Gel,12-well(Thermo Fisher Scientific)を用いた。泳動用緩衝液にはNuPAGE(商標)MES SDS Running Buffer(20×)(Thermo Fisher Scientific)を水で20倍希釈して調製した緩衝液を用いた。XCell SureLock(商標)ミニセル電気泳動システム(Thermo Fisher Scientific)を泳動槽として用い、PowerEase(商標)90W Power Supply(Thermo Fisher Scientific)に接続して200Vの電圧で40分間電気泳動を行った。その後、ゲルをGelCode(商標)Blue Stain Reagent(Thermo Fisher Scientific)を用いて染色し、目的タンパク質のバンドの有無を確認した。結果を
図1に示すが、いずれのサンプルも15kDa付近にバンドが確認でき、各Hisタグ付きVHHが生産出来ていることが確認された。
【0070】
(実施例3)Sandwich ELISA法によるVHHの結合活性評価
Nunc-Immuno(商標)PlateII(Thermo Fisher Scientific)の各ウェルに、PBSで20μg/mLに調製した各Hisタグ付きVHHを100μLずつ添加し、室温で1時間インキュベートし固相化を行った。その後、ピペットを用いて丁寧にVHH溶液を除去したのち、200μLのPBSTを添加し、ピペットで丁寧に除去する操作(洗浄)を3回繰り返した。次に、各ウェルに200μLの5%スキムミルク/PBST(0.05% Tween20含有PBS)を添加し、室温で1時間インキュベートし、ブロッキングを行った。ピペットを用いて丁寧にスキムミルク/PBSTを除去したのち、洗浄の操作を3回繰り返した。SARS-CoV-2 Nucleocapsid-Fc fusion protein(Fcタグ付きNタンパク質,InvivoGen)を希釈用buffer(20mM Tris-HCl,500mM NaCl,0.05% Tween20)で0,10,100, 1000ng/mLに調製した。各ウェルに調製済みのNタンパク質を100μL添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、ピペットを用いて丁寧に標的タンパク質溶液を除去し、洗浄の操作を3回繰り返した。Goat pAb to Hu IgG(HRP)(Abcam)をそれぞれPBSTで1/5,000希釈したものを検出抗体として、各ウェルに100μL添加した。室温で1時間インキュベートした後、ピペットを用いて丁寧に抗体を除去したのち、洗浄の操作を3回繰り返した。発光基質として、OPDタブレット(Thermo Fisher Scientific)をStable Peroxide Substrate buffer(Thermo Fisher Scientific)に溶解したものを調製し、各ウェルに100μL添加した。その後、室温かつ遮光条件で30分間インキュベートし、450nmの吸光度をGloMax(登録商標) Explorer System(Promega)を用いて測定した。
【0071】
ELISAの結果を
図2に示すが、Hisタグ付きPN4,Hisタグ付きPN10,Hisタグ付きPN27,Hisタグ付きPN44,Hisタグ付きPN46,Hisタグ付きPN63のいずれもがSARS-CoV-2のNタンパク質に明瞭な結合活性を示すことが確認された。
【0072】
(実施例4)Direct ELISA法によるVHHの結合特異性の評価
Nunc-Immuno(商標)Plate II(Thermo Fisher Scientific)の各ウェルに、PBSで10μg/mLに調製したSARS-CoV-2, SARS-CoV,MERS-CoV,HCoV-229E,HCoV-NL63,HCoV-HKU1,HCoV-OC43由来のNタンパク質を50μLずつ添加し、4℃で一晩インキュベートし固相化を行った。なお、用いたNタンパク質は表1に示した。その後、ピペットを用いて丁寧にNタンパク質溶液を除去したのち、200μLのPBSTを添加し、ピペットで丁寧に除去する操作(洗浄)を3回繰り返した。次に、各ウェルに200μLの5%スキムミルク/PBSTを添加し、室温で1時間インキュベートし、ブロッキングを行った。ピペットを用いて丁寧にスキムミルク/PBSTを除去したのち、洗浄の操作を3回繰り返した。各Hisタグ付きVHHをPBSTで1μg/mLに調製し、各ウェルに100μL添加した後室温で1時間インキュベートした。その後、ピペットを用いて丁寧に標的タンパク質溶液を除去し、洗浄の操作を3回繰り返した。Peroxidase AffiniPure Goat Anti-Alpaca IgG,VHH domain(Jackson ImmunoResearch)をPBSTで1/5,000希釈したものを検出抗体として、各ウェルに100μL添加した。室温で1時間インキュベートした後、ピペットを用いて丁寧に抗体を除去したのち、洗浄の操作を3回繰り返した。発光基質として、OPDタブレットをStable Peroxide Substrate buffer(Thermo Fisher Scientific)に溶解したものを調製し、各ウェルに100μL添加した。その後、室温かつ遮光条件で30分間インキュベートし、450nmの吸光度をGloMax(登録商標) Explorer Systemを用いて測定した。
【0073】
【0074】
Direct ELISA法の結果を
図3に示すが、Hisタグ付きPN4,Hisタグ付きPN10,Hisタグ付きPN27はSARS-CoV-2のNタンパク質に特異的に結合することが明らかになった。また、Hisタグ付きPN44,Hisタグ付きPN46,Hisタグ付きPN63はSARS-CoVのNタンパク質にも若干の結合活性を示すものの、SARS-CoV-2のNタンパク質に特異的かつ明瞭な結合活性を示すことが確認された。
【0075】
(実施例5)ラテラルフローアッセイ
(1)標識抗体の色素粒子への感作
色素粒子として着色セルロース粒子NanoAct(化学結合型,旭化成)を用いた。添付のプロトコルに沿って、標識抗体の感作を行った。以下に概要を記す。15mL遠沈管に60μLのNanoActを分注し、そこに100mM MES(pH6)を540μL、4wt%のEDCを7.5μL、4wt%のNHSを15μL加え、室温で15分静置してカルボキシル基のエステル化を行った。13,000×gで20分間遠心して上清を除去し、100mM MES(pH6)を600μL加えて超音波処理した。標識抗体として特願2022-065934に記載のEN2及びEN12,国際公開第2022/181550号に記載のCoVHH-N2,本発明のPN4,PN10,PN27,PN46及びPN63のいずれかを60μg加えたのちボルテックスし、37℃で120分間インキュベートした。次に、blocking buffer(1wt% Casein,100mM Boric Acid,pH8.5)を7.2mL加えたのちボルテックスし、37℃で60分間インキュベートした。13,000×gで20分間遠心して上清を除去し、100mM MES(pH6)を600μL加えて超音波処理した。再度13,000×gで15分間遠心して上清を除去し、保存液(33mM Boric Acid,0.2wt% Casein,15wt% Sucrose,pH9.2)を1.3mL加えて超音波処理し、使用時まで4℃で保存した。
【0076】
(2)ハーフストリップの組み立て
5mm×40mmに裁断したHi-Flow Plus HF120(Merck)をニトロセルロースメンブレンとして用いた。5mm×20mmに裁断したCM5(Cytiva)を吸水パッドとして用いた。ニトロセルロースメンブレンと吸水パッドが10mm重なり合うように張り合わせ、バッキングシート(GL-57888,Lohmann)で接着させることで、ハーフストリップを組み立てた。
【0077】
(3)捕捉抗体のニトロセルロースメンブレン膜への固定化
捕捉抗体であるHisタグ付きEN2,Hisタグ付きEN12,Hisタグ付きCoVHH-N2,Hisタグ付きPN4,Hisタグ付きPN10,Hisタグ付きPN27は予め30mMイミダゾールを含むPBS溶液で1mg/mLに調製しておいた。上記(2)で組み立てたストリップの下端から2cmの箇所に、抗体をピペットで1μLスポットした。その後、37℃で20分間乾燥することで固定化を行った。以下では、捕捉抗体を固定化した部位をテストラインと表記する。
【0078】
(4)展開液の調製
まず20mM HEPES,pH7を調製した。終濃度が500mM NaCl,0.5% Tween20となるようにそれぞれを添加してHBST溶液を調製し、展開液として用いた。
【0079】
(5)イムノクロマトの構築可否検討
評価する展開液にFcタグ付きNタンパク質を加えて、10μg/mL希釈した陽性検体を調製した。陰性検体として、Nタンパク質を含まないHBSTを用いた。96穴プレートの1ウェルに、50μLの陽性検体液と20μLの(1)で調製した色素粒子を添加し、ピペッティングでよく混合した。その後、(3)で調製した捕捉抗体固定化メンブレンをウェルに浸漬して、液が流れ切るまで静置した。陽性検体を流した場合にのみ呈色が見られた場合にはイムノクロマトが「構築可能」と、呈色が見られなかった場合には「構築不可」と判定した。
【0080】
各VHHを用いたイムノクロマト構築の可否を
図4に示す。EN2,EN12,CoVHH-N2の3種のVHH同士ではイムノクロマトを構築することが出来なかった。本発明のPN4,PN10,PN27,PN44,PN46,PN63を用いると、10種の組合せ(標識抗体/捕捉抗体: EN12/PN4,CoVHH-N2/PN27,PN10/PN4,PN10/PN27,PN27/PN4,PN44/PN4,PN44/PN27,PN46/PN4,PN46/PN27,PN63/PN27)でイムノクロマトを構築可能になった。つまり、本発明のVHHを採用することで、標識抗体及び捕捉抗体の双方にVHHを用いたイムノクロマトを構築可能になることが確認された。