(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151261
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】パターン成形装置及びパターン成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/04 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064508
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 光明
(72)【発明者】
【氏名】深田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】萩原 明彦
【テーマコード(参考)】
4F209
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AC03
4F209AC05
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG03
4F209AG05
4F209PA03
4F209PB02
4F209PC05
4F209PJ06
4F209PJ11
4F209PN09
4F209PQ01
(57)【要約】
【課題】パターン成形における残膜を抑制する。
【解決手段】パターン成形装置100は、ベースフィルム1を繰り出す繰出ロール11とベースフィルム1を巻き取る巻取ロール12とを有する搬送部10と、搬送部10によって搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する樹脂供給部と、パターンを構成する凹部21及び凸部22が外周に形成され樹脂5が供給されたベースフィルム1の表面に接触することでパターンをベースフィルム1に転写するモールドロール20と、モールドロール20の内側に設けられモールドロール20を通じてベースフィルム1に光を照射して樹脂5を硬化させるランプ35と、ベースフィルム1上に未硬化の状態で残留した樹脂5をベースフィルム1から除去する除去部40と、を備え、モールドロール20の凸部22の先端には、光を遮断する遮光部24が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材にパターンを成形するパターン成形装置であって、
前記基材を繰り出す繰出ロールと前記基材を巻き取る巻取ロールとを有する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記基材の表面に硬化性樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成され前記硬化性樹脂が供給された前記基材の表面に接触することで前記パターンを前記基材に転写するモールドロールと、
前記モールドロールの内側に設けられ前記モールドロールを通じて前記基材に光を照射して前記硬化性樹脂を硬化させる硬化部と、
前記基材上に未硬化の状態で残留した前記硬化性樹脂を前記基材から除去する除去部と、を備え、
前記モールドロールの前記凸部の先端には、光を遮断する遮光部が設けられる、
パターン成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン成形装置であって、
前記基材の表面に前記パターンを転写した前記モールドロールの前記凸部に付着した未硬化の前記硬化性樹脂を前記モールドロールから除去するロール清掃部をさらに備える、
パターン成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン成形装置であって、
前記モールドロールの前記凸部の先端には、前記モールドロールの径方向内側に向けて窪む窪み部が形成され、
前記遮光部は、前記凸部の前記窪み部内に充填されて前記モールドロールと一体化されている、
パターン成形装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のパターン成形装置であって、
前記モールドロールの回転に伴って前記モールドロールの前記凸部の先端に前記遮光部を順次塗布する遮光部供給部をさらに備える、
パターン成形装置。
【請求項5】
シート状の基材にパターンを成形するパターン成形方法であって、
繰出ロールから巻取ロールへと搬送される前記基材の表面に硬化性樹脂を供給する供給工程と、
前記パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成されるモールドロールを回転させながら前記基材の表面に押し付けて前記パターンを前記基材に転写する転写工程と、
前記モールドロールが押し付けられた前記基材上の前記硬化性樹脂に向けて前記モールドロールを通じて光を照射して前記基材上の前記硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記基材上に未硬化の状態で残留した前記硬化性樹脂を前記基材から除去する除去工程と、を含み、
前記硬化工程では、前記モールドロールの前記凸部の先端に設けられる遮光部によって、前記凸部が押し付けられる前記硬化性樹脂への光の照射を遮断する、
パターン成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン成形装置及びパターン成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材の表面にパターンを成形するインプリント技術として、特許文献1には、フィルム基材上に樹脂材料を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、基材上に形成された樹脂材料の塗膜に転写ロールを押し付けて転写ロールの凹凸パターンを塗膜に転写し、塗膜を硬化させる転写工程と、を含むものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるパターン成形方法では、予め基材に塗布された凹凸形成材料(硬化性樹脂)の膜に転写ロールを押し付けて硬化性樹脂を流動させることで、基材にパターンを転写する構成である。このため、転写ロールの凸部と基材との間で挟み込まれる樹脂材料が硬化した状態で基材上に残存することで残膜が生じる。残膜が生じると、残膜を除去するためのアッシング工程等が必要となり、これによって多くの工数やコストを要する。よって、インプリント技術においては、残膜を低減することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、基材上の残膜を低減することができるパターン成形装置及びパターン成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、パターン成形装置は、基材を繰り出す繰出ロールと基材を巻き取る巻取ロールとを有する搬送部と、搬送部によって搬送される基材の表面に硬化性樹脂を供給する樹脂供給部と、パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成され硬化性樹脂が供給された基材の表面に接触することでパターンを基材に転写するモールドロールと、モールドロールの内側に設けられモールドロールを通じて基材に光を照射して硬化性樹脂を硬化させる硬化部と、基材上に未硬化の状態で残留した硬化性樹脂を基材から除去する除去部と、を備え、モールドロールの凸部の先端には、光を遮断する遮光部が設けられる。
【0007】
また、本発明のある態様によれば、パターン成形方法は、繰出ロールから巻取ロールへと搬送される基材の表面に硬化性樹脂を供給する供給工程と、パターンを構成する凹部及び凸部が外周に形成されるモールドロールを回転させて基材の表面に順次押し付けてパターンを基材に転写する転写工程と、モールドロールが押し付けられた基材上の硬化性樹脂に向けてモールドロールを通じて光を照射して基材上の硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、基材上に未硬化の状態で残留した硬化性樹脂を基材から除去する除去工程と、を含み、硬化工程では、モールドロールの凸部の先端に設けられる遮光部によって、凸部が押し付けられる硬化性樹脂への光の照射を遮断する。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、凸部の先端に遮光部が設けられるため、パターンを転写する際にモールドロールの凸部と基材との間で硬化性樹脂が残存しても、モールドロールの内側から照射される光は遮光部によって遮断されて当該硬化性樹脂には照射されない。よって、モールドロールの凸部と基材との間の硬化性樹脂は未硬化の状態のまま基材上に残留する。未硬化状態の硬化性樹脂は、硬化した状態と比較して容易に除去できるため、基材上の未硬化の硬化性樹脂を除去することで、基材上に残膜が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るパターン成形装置の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るパターン成形装置のブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態にパターン成形装置のモールドロールの凸部周辺を示す拡大図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る遮光部を形成する第1の方法の手順を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る遮光部の形成する第2の方法の手順を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る除去部の第1の変形例を示す構成図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る除去部の第2の変形例を示す構成図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るパターン成形装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るパターン成形装置100及びパターン成形方法について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0011】
まず、
図1を参照して、パターン成形装置100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、パターン成形装置100は、いわゆるロールツーロール式であって、シート状の基材としてのベースフィルム1の一面(フィルム面)に、紫外線(UV)硬化性樹脂(以下、単に「樹脂」とも称する。)5によってパターン2を成形する装置である。以下では、
図1の上下方向を鉛直方向としてパターン成形装置100について説明する。以下の説明において、特に断りのない限り、「上」及び「下」は、鉛直方向の上下、つまり、図面中の上下方向を指すものとする。
【0013】
ベースフィルム1は、平面状のフィルム面が所定長さに亘って連続する樹脂フィルムである。なお、以下では、パターン2を形成する樹脂5が一体化したベースフィルム1を「パターンフィルム3」とも称する。
【0014】
パターン成形装置100は、
図1に示すように、ベースフィルム1を長手方向に搬送する搬送部10と、所定のパターン2を構成する凹部21及び凸部22が外周に形成されるモールドロール20と、モールドロール20を回転駆動する駆動部としての電動モータ23と、モールドロール20との間にベースフィルム1が挿入される押付ロール25と、パターンフィルム3をモールドロール20から剥離する剥離ロール26と、ベースフィルム1のフィルム面に樹脂5を供給する樹脂供給部としての塗工ダイ30と、モールドロール20の凹部21に供給されてモールドロール20の回転に伴いベースフィルム1上の樹脂5を硬化させベースフィルム1と一体化させる硬化部としてのランプ35と、パターン成形装置100を制御するコントローラ70(
図2参照)と、を備える。
【0015】
搬送部10は、ベースフィルム1を繰り出す繰出ロール11と、繰出ロール11から繰り出されるベースフィルム1を巻き取る巻取ロール12と、繰出ロール11と巻取ロール12との間で搬送されるベースフィルム1を支持する複数のガイドロール13と、を有する。
【0016】
繰出ロール11及び巻取ロール12は、それぞれ電動モータ(図示省略)によって中心軸を中心として回転駆動される(図中矢印参照)。繰出ロール11の中心軸と巻取ロール12の中心軸とは、互いに平行に設けられる。繰出ロール11から繰り出されるベースフィルム1を巻取ロール12によって巻き取ることで、繰出ロール11と巻取ロール12との間でベースフィルム1が長手方向に搬送される。繰出ロール11と巻取ロール12とを回転させる電動モータは、撓みが生じないよう所定の張力を付与しながらベースフィルム1を一定速度で搬送するようにコントローラ70によって制御される。以下では、繰出ロール11側を搬送方向の「上流」、巻取ロール12側を搬送方向の「下流」として説明する。
【0017】
複数のガイドロール13には、繰出ロール11と巻取ロール12との間で搬送されるベースフィルム1が掛け回される。複数のガイドロール13は、ベースフィルム1の搬送に伴って従動回転する。複数のガイドロール13によって、ベースフィルム1の搬送経路が形成される。
【0018】
モールドロール20の中心軸は、繰出ロール11及び巻取ロール12の中心軸と平行に設けられる。モールドロール20の円筒状の外周面には、ベースフィルム1に成形するパターン2を構成する凹部21及び凸部22が形成される。モールドロール20の下部には、繰出ロール11から巻取ロール12に搬送されるベースフィルム1が巻きかけられる。
【0019】
また、モールドロール20は、光透過性(透光性)、より具体的には紫外線透過性を有する材質によって形成される。モールドロール20には、ランプ35を収容する収容孔20aが形成される。モールドロール20の内側に設けられるランプ35が発する光(紫外線)は、モールドロール20を通過してモールドロール20の内側から外側へ向けて照射される。
【0020】
図3に示すように、モールドロール20の凸部22の先端には、モールドロール20の径方向の内側(
図3中上側)に向けて窪む窪み部22aが形成される。窪み部22aは、モールドロール20の軸方向において凸部22の全域にわたって形成される。また、窪み部22aは、モールドロール20の周方向において凸部22の全域にわたって形成される。
【0021】
凸部22の窪み部22aには、ランプ35が照射する光を遮光する遮光性を有した遮光部24が設けられる。遮光部24によって、凸部22の先端とベースフィルム1との間で挟み込まれる樹脂5に対するランプ35からの紫外線が遮断される。
【0022】
遮光部24は、例えば、銀(Ag)ナノインクや銀ペーストといった原料をモールドロール20の凸部22に形成される窪み部22aに塗布(充填)し、固化させることで固形の膜としてモールドロール20に一体化される。
【0023】
窪み部22aは、モールドロール20の中心軸に垂直な断面において、略半円状(すり鉢状)に形成される。言い換えると、窪み部22aは、曲面によって形成される。これにより、後述するロール清掃部50による樹脂5の拭き取り等の際にモールドロール20の周方向(
図3中左右方向)の力(せん断力)が遮光部24に作用しても、せん断力が曲面によって分散される。このため、本実施形態によれば、凸部22の先端に窪み部22aが形成されず平坦である場合と比較して、窪み部22aからの遮光部24の離脱を抑制することができる。なお、窪み部22aは、必須のものではなく、凸部22の先端は窪み部22aが設けられず、略平坦に形成されてもよい。
【0024】
ここで、
図4及び
図5を参照して、遮光部24の形成方法について説明する。例えば、遮光部24は、
図4に示す第1の方法や、
図5に示す第2の方法によって形成することができる。
【0025】
図4に示す第1の方法では、まず、フィルム等のベース部材B1に遮光部24の原料M1を塗布する(
図4(a))。次に、予めパターンが形成されたモールドロール20の先端の凸部22をベース部材B1に塗布された原料M1に接触させ凸部22に原料M1を付着させる(
図4(b))。そして、凸部22の先端の原料M1を乾燥または焼成することで固化させてモールドロール20の先端に固着した遮光部24を形成する(
図4(c))。
【0026】
また、
図5に示す第2の方法では、モールドロール20と共に遮光部24が形成される。具体的には、まず、
図5(a)に示すように、モールドロール20のパターンに対応するパターンが形成されたモールド型Mo(例えばNi電鋳モールド型)に対して、モールド型Moの凹部の底部のみに遮光部24の原料M1を設ける。そして、モールドロール20のベースとなるロールベース部材B2(例えばフィルム)にモールドロール20を構成する紫外線硬化樹脂であるロール原料M2を塗布し(
図5(b))、ロール原料M2をモールド型Moに押し付けてパターンを転写する(
図5(c))。この状態でロール原料M2に対して紫外線を照射して硬化させてモールドロール20を形成する。ロール原料M2が硬化してモールドロール20が成形されるのに伴い、モールド型Moの凹部の底部にある原料M1がモールドロール20に固着される。そして、モールドロール20をモールド型Moから離型させ、モールドロール20の凸部22の先端に付着した原料M1を乾燥または焼成させる(
図5(d))。原料M1が固化することで、モールドロール20の先端に遮光部24が固着して形成される。この方法では、モールドロール20を紫外線によって硬化させる際に遮光部24の原料M1との密着性が高まるため、遮光部24がモールドロール20から離脱しにくく、遮光部24の耐久性を高めることができる。
【0027】
以上のような方法によって、モールドロール20の先端に遮光部24を形成することができる。なお、遮光部24の形成方法は、上記のものに限定されず、任意の方法によって形成することができる。
【0028】
図1に示すように、電動モータ23は、中心軸を中心としてモールドロール20を回転駆動する。電動モータ23は、搬送部10によるベースフィルム1の搬送速度にモールドロール20の回転速度が同期するようにコントローラ70によって制御される。電動モータ23は、モールドロール20を回転させることで、モールドロール20の外周の凸部22及び凹部21を、ベースフィルム1のフィルム面に順次接触させる。これにより、ベースフィルム1のフィルム面上の樹脂5にモールドロール20の外周のパターンが転写される。
【0029】
押付ロール25は、その中心軸がモールドロール20の中心軸と平行となるように、モールドロール20に隣接して設けられる。押付ロール25は、その中心軸を中心として回転可能に設けられ、外周面にはモールドロール20の上流側にあるベースフィルム1が巻きかけられる。ベースフィルム1は、押付ロール25とモールドロール20の間に挿入され、押付ロール25の外周面は、ベースフィルム1を挟んでモールドロール20の外周面に対向する。よって、押付ロール25は、巻きかけられたベースフィルム1の搬送(移動)により自由回転する。
【0030】
また、押付ロール25は、アクチュエータ(図示省略)によって、モールドロール20に対して進退するように構成される。つまり、アクチュエータによって押付ロール25とモールドロール20との中心軸間距離を調整できる。本実施形態では、押付ロール25は、アクチュエータによって
図1中左右方向に移動可能である。これにより、ベースフィルム1に対するモールドロール20の密着力が調整される。アクチュエータの作動は、コントローラ70によって制御される。
【0031】
剥離ロール26は、その中心軸がモールドロール20の中心軸と平行となるように、モールドロール20に隣接して設けられる。剥離ロール26は、その中心軸を中心として回転可能に設けられ、外周面にはモールドロール20の下流側にあるベースフィルム1が巻きかけられる。ベースフィルム1は、剥離ロール26とモールドロール20の間に挿入され、剥離ロール26の外周面は、ベースフィルム1を挟んでモールドロール20の外周面に対向する。剥離ロール26は、巻きかけられたベースフィルム1の搬送(移動)によって自由回転する。
【0032】
また、剥離ロール26は、アクチュエータ(図示省略)によって、モールドロール20に対して進退するように構成される。つまり、アクチュエータによって剥離ロール26とモールドロール20との中心軸間距離を調整できる。本実施形態では、剥離ロール26は、アクチュエータによって
図1中左右方向に移動可能である。パターンフィルム3は、剥離ロール26によって案内されることで樹脂5と共にモールドロール20から剥離される。
【0033】
ランプ35は、紫外線を照射可能な光源であり、例えば、LEDランプが利用される。ランプ35の作動は、コントローラ70によって制御される。ランプ35は、モールドロール20とベースフィルム1との接触部分(
図1では、モールドロール20の下部)に向けて紫外線を照射するように、モールドロール20内に設けられる。ランプ35から発せられる紫外線は、透光性を有するモールドロール20を通じて、モールドロール20の凸部22及び凹部21が転写されたベースフィルム1上の樹脂5に対して照射される。これにより、ベースフィルム1上の樹脂5が硬化して、ベースフィルム1に一体化(固着)される。なお、ランプ35は、LEDランプに限定されるものではなく、紫外線を照射可能なものであれば、その他のものでもよい。
【0034】
塗工ダイ30は、モールドロール20の上流のベースフィルム1に樹脂5を塗工可能な位置に配置される。塗工ダイ30は、ベースフィルム1のフィルム面に供給する未硬化の樹脂5を吐出して、ベースフィルム1のフィルム面に樹脂5の膜を形成する。塗工ダイ30は、公知の構成を採用できるため、詳細な図示及び具体的な説明は省略する。塗工ダイ30の作動は、コントローラ70によって制御される。
【0035】
また、パターン成形装置100は、パターンフィルム3上に未硬化の状態で残留した樹脂5をパターンフィルム3上から除去する除去部40と、ベースフィルム1の表面にパターンを転写したモールドロール20の凸部22に付着した未硬化の樹脂5をモールドロール20から除去するロール清掃部50と、をさらに備える。
【0036】
除去部40は、パターンフィルム3が浸漬される洗浄液Lを貯留する貯留部41と、貯留部41の洗浄液Lに浸漬され貯留部41から取り出されたパターンフィルム3に対してエアを吹き付けるエアナイフ43と、エアナイフ43によってエアが吹き付けられたパターンフィルム3を乾燥させる乾燥部44と、を有する。
【0037】
パターンフィルム3の搬送経路は、樹脂5が固着されたのちに貯留部41の洗浄液Lに浸漬されるように、ガイドロール13によって形成される。貯留部41に貯留される洗浄液Lは、水または溶剤である。溶剤としては、例えば、炭化水素類溶剤(シクロヘキサンなど)、グリコールエーテル類溶剤(PGMEなど)、アルコール類溶剤(エタノール、IPAなど)、ケトン類溶剤(アセトン、MEK、MIBKなど)、エステル類溶剤(酢酸メチル、酢酸エチルなど)といったものを利用することができる。未硬化の樹脂5が残留したパターンフィルム3を洗浄液Lに浸漬することで、未硬化の樹脂5が洗浄液Lに溶けだして除去される、または、洗浄液Lによって軟化させることができる。未硬化の樹脂5を軟化させることで、後のエアナイフ43による樹脂5の除去が容易となる。
【0038】
エアナイフ43は、気体供給源(図示省略)から供給される圧縮空気を吐出するノズルである。本実施形態では、エアナイフ43は、ベースフィルム1を挟むようにして一対設けられる。これにより、ベースフィルム1の裏表両面に対してエアを噴射することができる。貯留部41の洗浄液Lに浸漬された後のパターンフィルム3にエアナイフ43からエアが噴射されることで、ベースフィルム1に残留した樹脂5及びベースフィルム1に付着した洗浄液Lが除去される。なお、エアナイフ43の数および配置する位置は、本実施形態のものに限定されない。例えば、エアナイフ43は、2対以上設けられてもよい。
【0039】
乾燥部44は、エアナイフ43で除去しきれなかったベースフィルム1上の洗浄液Lを蒸発させる乾燥炉である。乾燥部44は、室内雰囲気が加熱された加熱室(図示省略)を有し、ベースフィルム1を通過させることで洗浄液Lを蒸発させて除去する。なお、これに代えて、乾燥部44は、加熱されたエアをベースフィルム1に吹き付けて洗浄液Lを除去する構成でもよい。また、乾燥部44を設けなくてもよい。
【0040】
ロール清掃部50は、モールドロール20の回転に伴いモールドロール20の凸部22に順次接触するシート状のロールクリーナ51と、ロールクリーナ51が掛け回されるニップロール52と、ロールクリーナ51を搬送するクリーナ繰出ロール53及びクリーナ巻取ロール54と、を有する。
【0041】
ロールクリーナ51は、長手方向に延びるシート状の不織布である。ロールクリーナ51の幅は、モールドロール20の幅(軸方向寸法)以上に形成される。
【0042】
ニップロール52は、ロールクリーナ51を挟んでモールドロール20に対向し、モールドロール20と共にロールクリーナ51を挟持するように設けられる。ロールクリーナ51がニップロール52に掛け回されることで、モールドロール20の凸部22が回転に伴ってロールクリーナ51に接触する。これにより、未硬化の樹脂5に押し付けられることでモールドロール20の凸部22に付着した樹脂5をロールクリーナ51により拭き取る(除去する)ことができる。
【0043】
クリーナ繰出ロール53及びクリーナ巻取ロール54は、搬送部10における繰出ロール11及び巻取ロール12と同様に、それぞれ電動モータ(図示省略)によって中心軸を中心として回転駆動される。クリーナ繰出ロール53の中心軸とクリーナ巻取ロール54の中心軸とは、互いに平行であって、繰出ロール11及び巻取ロール12と平行に設けられる。クリーナ繰出ロール53から繰り出されるロールクリーナ51をクリーナ巻取ロール54によって巻き取ることで、ロールクリーナ51においてモールドロール20に接触する接触部(接触面)が更新される。これにより、ロールクリーナ51による樹脂5の除去性能の低下を抑制することができる。
【0044】
クリーナ繰出ロール53及びクリーナ巻取ロール54は、ロールクリーナ51に撓みが生じないようにコントローラ70によって制御される。クリーナ繰出ロール53及びクリーナ巻取ロール54は、ロールクリーナ51を連続的に搬送するように制御されてもよいし、搬送と停止とを繰り返す(間欠的に搬送する)ように制御されてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、ロールクリーナ51の搬送方向は、モールドロール20の回転方向に沿った方向である。ロールクリーナ51をモールドロール20の回転方向に抗する方向に搬送すると、搬送時のモールドロール20との摩擦によってロールクリーナ51の損耗が生じやすい。また、この場合には、繰出ロール11及び巻取ロール12を駆動する電動モータのモータ容量も大きくする必要がある。ロールクリーナ51の搬送方向をモールドロール20の回転方向に沿った方向とすることで、ロールクリーナ51の損耗を抑制し、電動モータのモータ容量を抑制することができる。
【0046】
ニップロール52は、クリーナ繰出ロール53及びクリーナ巻取ロール54と中心軸が平行に設けられる。ニップロール52は、ロールクリーナ51の搬送に伴って従動回転する。
【0047】
コントローラ70は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ70は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。コントローラ70は、少なくとも、各実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ70は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0048】
コントローラ70は、以下に説明するパターン成形方法を実行可能となるように、パターン成形装置100の各構成の作動を制御する。
【0049】
次に、パターン成形装置100により実行されるパターン成形方法について説明する。
【0050】
本実施形態に係るパターン成形方法は、繰出ロール11から巻取ロール12へと搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する供給工程と、パターンを構成する凹部21及び凸部22が外周に形成されるモールドロール20を回転させながらベースフィルム1の表面に押し付けてパターンをベースフィルム1に転写する転写工程と、モールドロール20が押し付けられたベースフィルム1上の樹脂5に向けてモールドロール20を通じて紫外線を照射してベースフィルム1上の樹脂5を硬化させる硬化工程と、モールドロール20からベースフィルム1を剥離する剥離工程と、ベースフィルム1上に未硬化の状態で残留した樹脂5をベースフィルム1から除去する除去工程と、モールドロール20の凸部22に付着した未硬化の樹脂5を除去するロール清掃工程と、を含む。以下、各工程について具体的に説明する。
【0051】
[供給工程]
供給工程では、搬送部10の繰出ロール11及び巻取ロール12をそれぞれ駆動する電動モータを所定の方向に所定の速度で回転させ、ベースフィルム1を所定の搬送速度で搬送する。また、電動モータ23を回転させ、モールドロール20を所定の回転方向に所定の速度で回転させる。モールドロール20の回転速度は、搬送部10によるベースフィルム1の搬送速度に対応するような速度に設定される。つまり、モールドロール20を駆動する電動モータは、ベースフィルム1の搬送速度に対応するように、搬送部10と同期するように制御される。
【0052】
また、搬送部10によって搬送されるベースフィルム1のフィルム面(モールドロール20に臨む面)に対して、塗工ダイ30により樹脂5を連続的に塗工する。これにより、モールドロール20に臨むベースフィルム1の一面には、所定の膜厚を有する樹脂5の膜が形成される。
【0053】
[転写工程]
供給工程により樹脂5が塗布されたベースフィルム1は、押付ロール25とモールドロール20の間を通過する。この際、ベースフィルム1の樹脂5には、モールドロール20の外周が押し付けられる。これにより、ベースフィルム1とモールドロール20の凸部22によって挟み込まれた樹脂5がモールドロール20の凹部21を充填するようにして流動する。このようにして、モールドロール20の外周の凸部22及び凹部21に対応するパターンがベースフィルム1上の樹脂5に転写される。回転に伴ってモールドロール20の外周が順次ベースフィルム1上の樹脂5に押し付けられることで、ベースフィルム1上には、長手方向に連続するパターンが形成される。
【0054】
[硬化工程]
硬化工程では、まず、ランプ35を点灯させる。パターンが転写されたベースフィルム1がモールドロール20を挟んでランプ35と対向する位置まで移動すると、ベースフィルム1上の樹脂5は、ランプ35からの紫外線が照射されて硬化し、ベースフィルム1に固着される。このようにして、モールドロール20の外周を搬送されるベースフィルム1上の樹脂5が、ベースフィルム1に対して順次一体化される。
【0055】
ここで、転写工程では、モールドロール20の凹部21に充填されず、ベースフィルム1とモールドロール20の凸部22との間で挟持されたままベースフィルム1上に樹脂5が残留することがある(
図3参照)。これに対し、本実施形態では、モールドロール20の凸部22の先端にランプ35からの紫外線を遮断する遮光部24が設けられる。よって、ベースフィルム1とモールドロール20の凸部22との間に残留する樹脂5(ベースフィルム1上のパターンにおいて凹部21となる位置にある樹脂5)に対しては、ランプ35からの紫外線を遮光部24によって遮断して紫外線を照射させない。このため、硬化工程においては、モールドロール20の凹部21に充填される樹脂5(ベースフィルム1上のパターンで凸部22となる樹脂5)だけにランプ35からの紫外線を照射してベースフィルム1上で硬化させる。ベースフィルム1とモールドロール20の凸部22との間の樹脂5は、紫外線の照射が遮断されるため未硬化の状態でベースフィルム1上に残留する。
【0056】
[剥離工程]
硬化工程で樹脂5が固着されたベースフィルム1(パターンフィルム3)は、剥離ロール26によってモールドロール20から離間するように案内(転向)されることでモールドロール20の外周から剥離される。
【0057】
[除去工程]
モールドロール20から剥離されたパターンフィルム3は、貯留部41に向けて搬送されて洗浄液Lに浸漬される。洗浄液Lに浸漬されることで、パターンフィルム3上に残留した未硬化の樹脂5が除去または軟化される。
【0058】
洗浄液Lから取り出されたパターンフィルム3には、エアナイフ43からエアが吐出される。これにより、洗浄液Lによって軟化された樹脂5及び付着していた洗浄液Lがエアによって除去される。
【0059】
このようにして、パターンフィルム3上に残留していた未硬化の樹脂5が除去される。未硬化の樹脂5が除去されたパターンフィルム3は、乾燥部44によって洗浄液Lを確実に除去したのちに、巻取ロール12によって巻き取られる。
【0060】
[ロール清掃工程]
モールドロール20は、ベースフィルム1が剥離されると、回転に伴ってロールクリーナ51に接触する。ベースフィルム1の剥離に伴ってモールドロール20に付着した未硬化の樹脂5が、モールドロール20の凸部22からロールクリーナ51によって除去される。未硬化の樹脂5が除去された凸部22は、モールドロール20の回転に伴って再びベースフィルム1上の樹脂5に押し付けられてパターンを転写する。
【0061】
以上のようにして、ベースフィルム1のフィルム面には、パターン2が成形され、パターンフィルム3が得られる。
【0062】
また、本実施形態では、ランプ35からの紫外線が遮光部24によって遮断されるため、モールドロール20の凸部22とベースフィルム1との間に挟まれた樹脂5は未硬化の状態でベースフィルム1上に残留する。樹脂5が未硬化の状態で残留するため、洗浄液Lへの浸漬やエアナイフ43によるエアの噴射等によって比較的容易にベースフィルム1から除去することができる。よって、パターンフィルム3上での残膜の発生を抑制でき、その後のアッシング工程が不要となることで製造工数やコストを削減することができる。
【0063】
別の観点からいうと、ベースフィルム1上に残留した未硬化の樹脂5をパターン成形装置100内の構成(除去部40)によって除去できるため、パターン成形装置100とは別にアッシング装置を必要とせず、製造工数やコストを削減することができる。
【0064】
また、本実施形態では、遮光部24は、モールドロール20の凸部22の先端に設けられる窪み部22a内に固形状の膜として設けられる。これにより、遮光部24が窪み部22aに対してモールドロール20の周方向に係止されるため、除去部40によってモールドロール20の凸部22から未硬化の樹脂5を拭き取る際にモールドロール20の周方向に沿ったせん断力に対する耐久性を確保することができる。よって、窪み部22aからの遮光部24の脱落(剥離)を抑制することができる。
【0065】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたり、以下の変形例と他の実施形態とを組み合わせたりすることも可能である。また、各変形例において、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0066】
上記実施形態では、除去部40は、洗浄液Lが貯留される貯留部41と、エアを噴出するエアナイフ43と、を有する。
【0067】
これに対し、除去部40は、
図6に示すように、洗浄液L内に浸漬される超音波洗浄機45を有していてもよい。これによれば、ベースフィルム1上に残留した未硬化の樹脂5を効率よく除去することができる。また、これに伴い洗浄液Lへのベースフィルム1の浸漬時間を短くすることができるため、生産速度の向上や貯留部41の小型化による省スペース化を図ることもできる。
【0068】
また、除去部40は、
図7に示すように、ベースフィルム1を洗浄液Lに浸漬させることに代えて、洗浄液Lをベースフィルム1に向けて噴出する液体ノズル46と、噴射された洗浄液Lを受けるトレイ47と、を備えていてもよい。この場合には、洗浄液Lにベースフィルム1を浸漬させる場合と比較して、装置の省スペース化を図ることができる。なお、
図7に示す変形例に対して、
図6に示す超音波洗浄機45の構成を適用してもよい。
【0069】
また、エアナイフ43は、洗浄液Lから取り出された直後のパターンフィルム3に対してエアを噴射することが望ましい。このため、エアナイフ43の位置及び噴射角度を調整する調整機構を設けることも好適である。
【0070】
(第2実施形態)
次に、
図8を参照して、第2実施形態に係るパターン成形装置200及びパターン成形方法について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0071】
第1実施形態に係るパターン成形装置100では、遮光部24は、モールドロール20の凸部22の先端に予め設けられている。第1実施形態では、モールドロール20の凸部22に付着した未硬化の樹脂5を除去する際に遮光部24が除去されないように、遮光部24はモールドロール20と一体化される。
【0072】
これに対し、第2実施形態では、遮光部は、モールドロール20の凸部22の先端に予め設けられるものではなく、モールドロール20の回転に伴って塗布及び除去が繰り返されることで、モールドロール20の外周に設けられる。以下、具体的に説明する。
【0073】
図8に示すように、第2実施形態に係るパターン成形装置200は、遮光部を除く上記第1実施形態の構成に加えて、モールドロール20の回転に伴ってモールドロール20の凸部22の先端に遮光部を順次塗布する遮光部供給部60をさらに備える。遮光部供給部60の作動もコントローラ70によって制御される。
【0074】
本実施形態では、遮光部は、第1実施形態のように焼成されて固体状の膜ではなく、固体となる前の液体状態としてモールドロール20の外周に供給される(以下、遮光部を「遮光液24a」とも称する)。遮光部供給部60は、遮光部としての遮光液24aを吐出するディスペンサ61と、ディスペンサ61が吐出する遮光液24aが外周に供給され遮光液24aをモールドロール20の外周に塗布する供給ロール62と、供給ロール62の外周の余分な遮光液24aを除去するドクターブレード63と、を有する。
【0075】
ディスペンサ61は、供給ロール62の外周に向けて遮光液24aを連続して滴下するように構成される。ディスペンサ61は、供給ロール62の中心軸の直上の位置から図中右方向にずれて配置されることで、供給ロール62の最上部からモールドロール20の回転方向の前方側(図中右側)へ周方向にずれた位置に樹脂5を滴下するように構成される。
【0076】
供給ロール62は、中心軸がモールドロール20と平行となるように設けられる円柱状のロール(いわゆるアニックスロール)である。供給ロール62は、コントローラ70によって一定の速度で回転するように制御される。供給ロール62は、外周に塗布される遮光液24aを、ベースフィルム1から離間した位置にあるモールドロール20の凸部22の先端に付着させるようにして設けられる。本実施形態では、供給ロール62は、モールドロール20に対して鉛直方向の上方に設けられ、ロール清掃部50によって未硬化の樹脂5が除去されたモールドロール20の凸部22に対して遮光液24aを塗布するように構成される。
【0077】
ドクターブレード63は、先端が供給ロール62の外周面に対して接触またはわずかに隙間を開けるようにして設けられる。供給ロール62の外周とドクターブレード63との間に形成される空間に対して、ディスペンサ61から遮光液24aが供給される。ディスペンサ61から吐出された遮光液24aのうち余分な分がディスペンサ61によって供給ロール62の外周から掻き取られて、供給ロール62の外周には適用の遮光液24aが塗布される。
【0078】
次に、第2実施形態に係るパターン成形方法について説明する。
【0079】
第2実施形態のパターン成形方法は、第1実施形態のパターン成形方法に加えて、遮光液24aをモールドロール20の凸部22に供給する遮光部供給工程をさらに含む。
【0080】
遮光部供給工程では、供給ロール62の外周とドクターブレード63との間の空間にディスペンサ61から遮光液24aが連続的に滴下される。滴下された遮光液24aの内の余分な分はドクターブレード63によって掻き取られて、適量の遮光液24aが供給ロール62の外周に塗布される。
【0081】
供給ロール62の回転に伴って供給ロール62の外周に塗布された遮光液24aがモールドロール20の凸部22に接触し、遮光液24aが凸部22の先端に塗布される。
【0082】
このようにして凸部22の先端に遮光液24aが塗布されたモールドロール20は、転写工程においてベースフィルム1上の樹脂5に押し付けられ、上記実施形態と同様にベースフィルム1上の樹脂5にパターンが転写される。
【0083】
モールドロール20の凸部22に塗布された遮光液24aは、ベースフィルム1に押し付けられる際に乾燥して固体状となっていてもよいし、液状のままであってもよい。いずれの場合であっても、モールドロール20の凸部22とベースフィルム1との間に挟まれる樹脂5に対するランプ35からの紫外線を遮光液24aによって遮断できるため、上記第1実施形態の遮光部と同様の作用効果を奏する。
【0084】
モールドロール20の凸部22に塗布された遮光液24aは、剥離工程によってモールドロール20とベースフィルム1とが剥離されたのち、ロール清掃工程によって凸部22に付着した未硬化の樹脂5とともに除去される。その後、モールドロール20の回転に伴って新たな遮光液24aが遮光部供給部60によってモールドロール20の凸部22に供給される。また、遮光液24aは、ベースフィルム1上に残留しても、除去部40に除去工程によって未硬化の樹脂5とともにベースフィルム1から除去される。
【0085】
このように、モールドロール20に対する遮光液24aの塗布と除去とを繰り返すことで、常に一定量(一定の厚さ)の遮光液24aをモールドロール20の外周に供給できる。これにより、モールドロール20の凸部22とベースフィルム1との間の未硬化の樹脂5に対する紫外線を遮断すると共に、遮光液24aの量が過多となることで除去部40によって遮光液24aを完全に除去できずにベースフィルム1(パターンフィルム3)上に残留することも抑制される。
【0086】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、ランプ35からの紫外線が遮光部24によって遮断され、モールドロール20の凸部22とベースフィルム1との間に挟まれた樹脂5は未硬化の状態でベースフィルム1上に残留する。樹脂5が未硬化の状態で残留するため、洗浄液Lへの浸漬やエアナイフ43によるエアの噴射等によって比較的容易にベースフィルム1から除去することができる。よって、パターンフィルム3上での残膜の発生を抑制でき、その後のアッシング工程が不要となることで製造工数やコストを削減することができる。
【0087】
また、本実施形態では、モールドロール20の回転に伴って遮光液24aの塗布及び除去を繰り返すため、所定量の遮光液24aをより確実にモールドロール20の外周に供給することができ、残膜の発生を抑制したパターンフィルム3を安定して製造することができる。
【0088】
なお、詳細な図示は省略するが、第2実施形態のモールドロール20も、上記第1実施形態と同様に窪み部22aを有していてもよいし、窪み部22aを有していなくてもよい。
【0089】
以下、各実施形態の作用効果について説明する。
【0090】
シート状のベースフィルム1にパターンを成形するパターン成形装置100,200は、ベースフィルム1を繰り出す繰出ロール11とベースフィルム1を巻き取る巻取ロール12とを有する搬送部10と、搬送部10によって搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する樹脂供給部と、パターンを構成する凹部21及び凸部22が外周に形成され樹脂5が供給されたベースフィルム1の表面に接触することでパターンをベースフィルム1に転写するモールドロール20と、モールドロール20の内側に設けられモールドロール20を通じてベースフィルム1に光を照射して樹脂5を硬化させるランプ35と、ベースフィルム1上に未硬化の状態で残留した樹脂5をベースフィルム1から除去する除去部40と、を備え、モールドロール20の凸部22の先端には、光を遮断する遮光部24,24aが設けられる。
【0091】
シート状のベースフィルム1にパターンを成形するパターン成形方法は、繰出ロール11から巻取ロール12へと搬送されるベースフィルム1の表面に樹脂5を供給する供給工程と、パターンを構成する凹部21及び凸部22が外周に形成されるモールドロール20を回転させながらベースフィルム1の表面に押し付けてパターンをベースフィルム1に転写する転写工程と、モールドロール20が押し付けられたベースフィルム1上の樹脂5に向けてモールドロール20を通じて光を照射してベースフィルム1上の樹脂5を硬化させる硬化工程と、ベースフィルム1上に未硬化の状態で残留した樹脂5をベースフィルム1から除去する除去工程と、を含み、硬化工程では、モールドロール20の凸部22の先端に設けられる遮光部24,24aによって、凸部22が押し付けられる樹脂5への光の照射を遮断する。
【0092】
これらの構成では、凸部22の先端に遮光部24,24aが設けられるため、パターンを転写する際にモールドロール20の凸部22とベースフィルム1との間で樹脂5が残存しても、モールドロール20の内側から照射される光は遮光部24,24aによって遮断されて当該樹脂5には照射されない。よって、モールドロール20の凸部22とベースフィルム1との間の樹脂5は未硬化の状態のままベースフィルム1上に残留する。未硬化状態の樹脂5は、硬化した状態と比較して容易に除去できるため、ベースフィルム1上の未硬化の樹脂5を除去することで、ベースフィルム1上に残膜が生じることを抑制することができる。
【0093】
また、パターン成形装置100,200は、ベースフィルム1の表面にパターンを転写したモールドロール20の凸部22に付着した未硬化の樹脂5をモールドロール20から除去するロール清掃部50をさらに備える。
【0094】
この構成では、モールドロール20に樹脂5が残留することによるパターンの転写の成形精度の低下を抑制することができる。
【0095】
また、パターン成形装置100は、モールドロール20の凸部22の先端には、モールドロール20の径方向内側に向けて窪む窪み部22aが形成され、遮光部24は、凸部22の窪み部22a内に充填されてモールドロール20と一体化されている。
【0096】
この構成では、遮光部24は、モールドロール20と一体化されて予め形成されるため、モールドロール20を交換するだけで新たな設備等を導入することなく既存の設備に対しても容易に導入することができる。
【0097】
また、パターン成形装置200は、モールドロール20の回転に伴ってモールドロール20の凸部22の先端に遮光部24を順次塗布する遮光部供給部60をさらに備える。
【0098】
この構成では、モールドロール20が繰り返しベースフィルム1に押し付けられても、モールドロール20の先端に遮光部24を順次供給する構成であるため、より確実に凸部22の先端に遮光部24を供給することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0100】
100 パターン成形装置
200 パターン成形装置
1 ベースフィルム(基材)
2 パターン
10 搬送部
11 繰出ロール
12 巻取ロール
20 モールドロール
21 凹部
22 凸部
22a 窪み部
24 遮光部
24a 遮光液(遮光部)
30 塗工ダイ(樹脂供給部)
35 ランプ(硬化部)
40 除去部
50 ロール清掃部
60 遮光部供給部