(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151270
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】垂直多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B25J9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064519
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】井田 信也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洸基
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707BS12
3C707BS13
3C707CY36
3C707NS12
(57)【要約】
【課題】省スペースでアームを動かすことができ、汎用性があり、低コストの垂直多関節ロボットを提供する。
【解決手段】垂直多関節ロボット100は、据付面109に設置される基台108と、据付面に平行となるように基台に支持された第1軸110と、第1軸によって回動する旋回フレーム112と、旋回フレームに第1軸と直交方向に支持された第2軸114と、第2軸によって回動する下アーム116と、下アームの第2軸とは反対側の端部に第2軸と平行に支持された第3軸118と、第3軸によって回動する連結アーム130と、連結アームに第2軸及び前記第3軸に直交方向に支持された第4軸134と、第4軸によって回動する保持アーム132とを有する上アーム120と、を備え、第2軸、下アーム、第3軸および上アームは、第1軸によって据付面に対して略垂直方向の円運動が可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
据付面に設置される基台と、
前記据付面に平行となるように前記基台に支持された第1軸と、
前記第1軸によって回動する旋回フレームと、
前記旋回フレームに前記第1軸と直交方向に支持された第2軸と、
前記第2軸によって回動する下アームと、
前記下アームの前記第2軸とは反対側の端部に前記第2軸と平行に支持された第3軸と、
前記第3軸によって回動する連結アームと、前記連結アームに前記第2軸及び前記第3軸に直交方向に支持された第4軸と、前記第4軸によって回動する保持アームとを有する上アームと、
を備え、
前記第2軸、前記下アーム、前記第3軸および前記上アームは、前記第1軸によって前記据付面に対して略垂直方向の円運動が可能であることを特徴とする垂直多関節ロボット。
【請求項2】
前記旋回フレームは、前記第2軸が前記第1軸より上方に位置し、前記下アーム前面が上方を向く姿勢で前記第1軸に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアームを備えた垂直多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
基板を搬送するロボットとしては、従来はスカラロボット(水平多関節ロボット)が採用される場合が多い(例えば特許文献1)。スカラロボットは、一般的には水平方向に動作する2軸~3軸と、上下方向に動作する1軸を備えている。スカラロボットは使い方が限定されている場合が多いため、一般的には各用途に合った専用機を設計することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述したような専用機を設計するということは、用途が限られるため垂直多関節ロボットの標準機(汎用機)と比較すると製造コストが高くなる。また、汎用のスカラロボットを使用しようとした場合、動作範囲エリアを拡大するために、直動の走行装置も必要になる場合が多く、設備のコストが高くなる。よって、コスト面と広い動作範囲を考慮し、汎用的な垂直多関節ロボットを用いて基板搬送を行うことも考えられる。垂直多関節ロボットは、一般的には垂直方向に回動する3軸~6軸と、水平方向に旋回する1軸とを備えている。
【0005】
ところが一般的な垂直多関節ロボットを用いて基板を搬送させようとした場合、ラックなどのレイアウト(配置)が狭い状況で各関節(軸)を回転させたとき、アームと周辺のラックやステージが干渉してしまう可能性がある。例えば、第2アーム(第3軸と第4軸の間のアーム)が第1軸の上方にあるとき、マニピュレータを右(左)に旋回させる(第1軸を回転させる)と第3軸が左(右)に旋回することになるため、第3軸近傍がラックなどの周辺設備に衝突してしまう。また基板を乗せるためのマニピュレータは面積が大きくなるため、マニピュレータとアームが干渉しやすく、可動範囲が狭くなってしまうという問題がある。
【0006】
なお垂直多関節ロボットを、床置きではなく、壁掛けや傾斜設置にして第1軸が回転した際に第2アームが後方に出ないようにすることで、干渉を回避することが考えられる。しかしその場合には、設置用の架台が大きくなりユーザ設備に干渉してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、省スペースでアームを動かすことができ、汎用性があり、低コストの垂直多関節ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる垂直多関節ロボットの代表的な構成は、据付面に設置される基台と、据付面に平行となるように基台に支持された第1軸と、第1軸によって回動する旋回フレームと、旋回フレームに第1軸と直交方向に支持された第2軸と、第2軸によって回動する下アームと、下アームの第2軸とは反対側の端部に第2軸と平行に支持された第3軸と、第3軸によって回動する連結アームと、連結アームに第2軸及び前記第3軸に直交方向に支持された第4軸と、第4軸によって回動する保持アームとを有する上アームとを備え、第2軸、下アーム、第3軸および上アームは、第1軸によって据付面に対して略垂直方向の円運動が可能であることを特徴とする。
【0009】
上記の旋回フレームは、第2軸が前記第1軸より上方に位置し、下アーム前面が上方を向く姿勢で第1軸に支持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、省スペースでアームを動かすことができ、汎用性があり、低コストの垂直多関節ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における垂直多関節ロボットの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の垂直多関節ロボットの可動範囲を説明する図である。
【
図3】
図1の垂直多関節ロボットの動作を示す図である。
【
図4】
図3に後続する垂直多関節ロボットの動作を示す図である。
【
図5】
図1の垂直多関節ロボットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態における垂直多関節ロボット100の全体構成を示す斜視図である。垂直多関節ロボット100は、産業用ロボットであって、例えば
図3に示す基板(ワーク102)をラック104A、104Bに収納したり、ワーク102をラック104A、104Bからステージ106に搬送したりする場合に用いられる。
【0014】
垂直多関節ロボット100は、簡潔に説明すると、一般的な垂直多関節ロボットの第1軸の回動方向が異なり、下アームおよび上アームの主動作範囲を上方にしたものである。垂直多関節ロボット100は、例えば6軸ロボットであり、基台108と、第1軸110と、旋回フレーム112と、第2軸114と、下アーム116と、第3軸118と、上アーム120とを備える。なお後述するが、上アーム120は、連結アーム130と、第4軸134と、保持アーム132とを有し、全体として第3軸118および第4軸134によって回動する。
【0015】
基台108は、工場などの床に設置されている。基台108の側面122にはハーネスが接続されるコネクタ124が取り付けられている。なおコネクタ124は、ハーネスの引き出し方向を考慮して基台108の他の側面126、128にも取り付けることができる。
【0016】
第1軸110は、基台108を床に設置した際、据付面109に対して平行な方向(以下、水平方向と称す)に支持されている。旋回フレーム112は、第1軸110によって回動する。第2軸114は、旋回フレーム112に第1軸110と直交方向に支持されている。下アーム116は、第2軸114によって回動する。換言すれば、第2軸114の回動方向は、下アーム116と第1軸110とがなす角度が変化する方向である。第3軸118は、下アーム116の第2軸114とは反対側の端部である先端129に第2軸114と平行に支持されている。
【0017】
上アーム120は、連結アーム130と、第4軸134と、保持アーム132とを有し、全体として第3軸118および第4軸134によって回動する。連結アーム130は、第3軸118を介して下アーム116に対して回転可能に連結されている。保持アーム132は、保持アーム132の長手方向に延びる第4軸134を介して、連結アーム130に対して第4軸134の周りにひねるように回転可能に連結されている。
【0018】
また保持アーム132の先端部136には、第5軸138および第6軸140を介してエンドエフェクタとしてのハンド142が装着されている。ハンド142はワーク102(基板等)を載置する。第5軸138および第6軸140は、保持アーム132の先端部136に第4軸134と直交方向に支持されている。これによりハンド142は、ラック104A、104B(
図3参照)に収納されたワーク102に対して自由な挿入姿勢を保持できる。
【0019】
このように垂直多関節ロボット100は、第1軸110を水平方向に配置して、旋回フレーム112が据付面109に対して略垂直方向に回動するようにしている。これにより第2軸114以降の軸およびアームが、第1軸110によって据付面109に対して略垂直方向の円運動が可能である。
【0020】
図2は
図1の垂直多関節ロボット100の可動範囲を説明する図であって、
図2(a)は本実施形態にかかる垂直多関節ロボット100の可動範囲Aを説明する図、
図2(b)は従来(通常)の垂直多関節ロボット200の可動範囲Bを説明する図である。
【0021】
まず
図2(b)を参照する。従来の垂直多関節ロボット200は、基台202に支持された第1軸204が据付面109に対して垂直軸であり、旋回フレーム206が第1軸204によって据付面109と平行な面内において回動する。そして垂直多関節ロボット200は、下アーム208および上アーム210が第1軸204に対して垂直方向に回動可能である。尚、
図2(b)において上アーム210の先端に取り付けられたマニピュレータが移動可能な範囲を可動範囲Bとして図示している。
【0022】
可動範囲Bは、第2軸、第3軸の可動範囲およびアームの長さによって決定される。ここで、垂直多関節ロボット200の図示左側の可動範囲Aは、ロボットが広い動作領域を確保できるエリアである。この領域を主動作範囲と称し、主動作範囲の向く方向をロボットの前面と称する。
【0023】
次に
図2(a)を参照する。本実施形態にかかる垂直多関節ロボット100の可動範囲Aは、第1軸110が水平軸であることから、
図2(b)に示した可動範囲Bを90度倒したものになる。比較のために、
図2(b)には可動範囲Bと重ねて
図2(a)の可動範囲Aを破線で示している。
【0024】
可動範囲Aからわかるように、垂直多関節ロボット100は、その主動作範囲がロボットの上側となっていて、仰向けで設置された状態である。これにより、旋回フレーム112は、第2軸114が第1軸110より上方に位置し、下アーム前面116aが上方を向く姿勢で第1軸110に支持されていることになる。なお第2軸114は、第1軸110の真上に(乗るように)位置してもよい。
【0025】
さらに垂直多関節ロボット100において、下アーム前面116aが上方を向くとは、換言すれば、下アーム116に対する上アーム120の可動範囲が広い方(すなわちロボットの前面)が据付面109とは反対側(すなわち上方)を向いていることをいう。一方、
図2(b)に示す従来の垂直多関節ロボット200の下アーム前面208aは、前方を向いている。
【0026】
また主動作範囲をロボットの上側とすることで、垂直多関節ロボット100は、上アーム120、下アーム116が伸びた姿勢で動作することが多くなる。また第2軸114が第1軸110より上方にあることで、この姿勢で、第1軸110を回転しても振り子のように動作し(
図3および
図4参照)、下アーム116の先端129が後方に飛び出して干渉することが無いので、狭いレイアウトに設置可能となる。
【0027】
図3は、
図1の垂直多関節ロボット100の動作を示す図である。
図4は、
図3に後続する垂直多関節ロボット100の動作を示す図である。ここでは、ラック104A、104Bおよびステージ106のレイアウト(配置)が狭い状況において、ラック104Aに収納されたワーク102をステージ106に搬送する動作を説明する。
【0028】
垂直多関節ロボット100は、第2軸114以降の軸およびアームが、第1軸110によって据付面109に対して略垂直方向の円運動が可能である。そこで、旋回フレーム112を矢印Cに示す方向に回動させて、下アーム116および上アーム120をラック104Aに接近させ、さらに第2軸114以降の軸を適宜回転させる。これにより、上アーム120に装着されたハンド142をワーク102の下に挿入し、ワーク102をハンド142に載置させることができる。
【0029】
続いて
図4に示すように、旋回フレーム112を矢印Dに示す方向に回動させて、下アーム116および上アーム120をステージ106に接近させ、さらに第2軸114以降の軸を適宜回転させる。これにより、上アーム120に装着されたハンド142をステージ106上に移動させて、ワーク102をステージ106まで搬送することができる。
【0030】
なお垂直多関節ロボット100は、ラック104Aに収納されたワーク102をステージ106に搬送するだけでなく、ラック104Bからステージ106にワーク102を搬送したり、ラック104A、104B間でワーク102を搬送したりすることができる。
【0031】
ここで、旋回フレーム112を矢印C、Dに回動させたとき、第2軸114以降の軸およびアームは第1軸110よりも据付面109(ここでは床面)に対して上方に位置している。したがって、ハンド142を矢印C、Dの一方に旋回させたときに、第3軸118近傍が振り子のように動作し、下アーム116の先端129が後方に飛び出して干渉することが無い。このため、第3軸118近傍がラック104A、104Bおよびステージ106などの周辺設備に衝突してしまうおそれがない。したがって、垂直多関節ロボット100によれば、広い動作領域を確保しつつ省スペースのレイアウトで各アームを動かすことができる。
【0032】
また垂直多関節ロボット100では、第1軸110のみを水平方向に配置して、旋回フレーム112が略垂直方向に回動する構成を採用しているため、第2軸114以降の軸およびアームは、既存の垂直多関節構造ロボットの構造をそのまま利用することができる。このため、垂直多関節ロボット100によれば、部品共通化により製造原価を抑え安価で、保守性も良く製造し易い。
【0033】
図5は、
図1の垂直多関節ロボット100の変形例を示す図である。変形例の垂直多関節ロボット100Aは、7軸ロボットであり、第6軸140によって回動するハンド142に加え、第6軸140と同軸の第7軸144によって回動する第2のハンド146が上アーム120に装着されている。
【0034】
これにより垂直多関節ロボット100Aでは、省スペースで各アームを動かすことができるだけでなく、エンドエフェクタとして2つのハンド142、146を用いることでサイクルタイムを短縮することができる。
【0035】
なお垂直多関節ロボット100、100Aは、スカラ型ロボットより広い動作範囲を有するため、走行装置を用いることなく複数のラック間でワークを搬送することもでき、設備全体のコスト低減が可能となる。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は基板搬送用途に限定されないことは言うまでもない。本発明は、狭いレイアウトでのハンドリングやローディング用途でも使用できる汎用性のある垂直多関節構造ロボットである。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、複数のアームを備えた垂直多関節ロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100、100A、200…垂直多関節ロボット、102…ワーク、104A、104B…ラック、106…ステージ、108、202…基台、109…据付面、110、204…第1軸、112、206…旋回フレーム、114…第2軸、116、208…下アーム、116a、208a…下アーム前面、118…第3軸、120、210…上アーム、122、126、128…基台の側面、124…コネクタ、129…下アームの先端、130…連結アーム、132…保持アーム、134…第4軸、136…保持アームの先端部、138…第5軸、140…第6軸、142、146…ハンド、144…第7軸