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特開2024-151277施設計画支援システム、施設計画支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151277
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】施設計画支援システム、施設計画支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20241017BHJP
   E04H 3/14 20060101ALI20241017BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20241017BHJP
【FI】
G06F30/13
E04H3/14 C
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064531
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】591219393
【氏名又は名称】株式会社梓設計
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】永廣 正邦
(72)【発明者】
【氏名】日比 淳
(72)【発明者】
【氏名】片山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 秀格
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 功樹
(72)【発明者】
【氏名】荻原 久幸
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146BA02
5B146DA03
5B146DE06
5B146DG05
5B146EC04
5B146FA02
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】複数の観客席が配置される観客席領域と、観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設の建築的要素に基づき、観客席領域における複数の観客席の配置を計画することを可能とする。
【解決手段】施設計画支援システム1は、複数の観客席Sが配置される観客席領域SRと、観客席Sから観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域FRと、を備える施設Iにおいて、観客席領域SRの計画を支援し、施設Iの建築的要素に基づき、観客席領域SRを所定間隔で分割する基準線を設定する基準線設定手段20と、観客席Sの仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する観客席設定手段50と、観客席領域SRにおいて、複数の基準線間に、観客席パラメータが設定された複数の観客席Sを等間隔で配置する観客席配置手段70と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムにおいて、
前記観覧対象領域と前記観客席領域の配置情報を取得する配置情報取得手段と、
前記施設の建築的要素に基づき、前記観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定する基準線設定手段と、
前記観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する観客席設定手段と、
前記観客席領域において、複数の前記基準線間に、前記観客席パラメータが設定された複数の前記観客席を等間隔で配置する観客席配置手段と、を備えることを特徴とする施設計画支援システム。
【請求項2】
前記観客席領域の仕様を示す数値である観客席領域パラメータを設定する観客席領域設定手段を、更に備え、
前記観客席配置手段は、前記観客席領域において、前記観客席領域パラメータに基づき、複数の前記観客席の配置を調整することを特徴とする請求項1に記載の施設計画支援システム。
【請求項3】
前記観客席領域に配置する複数の前記観客席の数である観客席数の指定を受け付ける観客席数指定受付手段を、更に備え、
前記観客席配置手段は、前記観客席領域において、指定された前記観客席数に基づき、複数の前記観客席の配置を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の施設計画支援システム。
【請求項4】
複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムが実行する方法であって、
前記観覧対象領域と前記観客席領域の配置情報を取得するステップと、
前記施設の建築的要素に基づき、前記観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定するステップと、
前記観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定するステップと、
前記観客席領域において、複数の前記基準線間に、前記観客席パラメータが設定された複数の前記観客席を等間隔で配置するステップと、を含むことを特徴とする施設計画支援方法。
【請求項5】
複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムを、
前記観覧対象領域と前記観客席領域の配置情報を取得する配置情報取得手段、
前記施設の建築的要素に基づき、前記観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定する基準線設定手段、
前記観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する観客席設定手段、
前記観客席領域において、複数の前記基準線間に、前記観客席パラメータが設定された複数の前記観客席を等間隔で配置する観客席配置手段、として機能させることを特徴とするプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システム、施設計画支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、空間座標における観覧施設に関する施設情報が入力される施設情報入力部と、判定ライン算出部と、サイトライン判定部と、表示部とを備え、判定ライン算出部は、舞台側に位置し、空間座標に対応させた舞台空間座標で示される点と、客席側に位置し、空間座標に対応させた客席空間座標で示される点と、を通る直線である判定ラインを、施設情報に基づいて算出し、サイトライン判定部は、評価対象となる客席に着座した観客の目の高さと、評価対象となる客席における判定ラインの高さとを比較し、評価対象となる客席からの舞台の観やすさを判定する観覧施設評価システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-39540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の観客席が配置される観客席領域と、観客席から観客に観覧される観覧対象(例えば、野球等のスポーツや、コンサート、映画等)が行われる観覧対象領域(例えば、フィールド、舞台、スクリーン等)と、を備える施設(例えば、スタジアム、アリーナ、ホール、映画館等)において、観客席から観覧対象領域の観やすさを判定するには、そもそも、観客席領域において複数の観客席が配置された計画(例えば、2Dや3Dの設計情報等)が必要である。
【0005】
このような施設における観客席領域の計画は、当該施設の建築的要素(物理的・構造的要素等)に基づき計画する必要がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、複数の観客席が配置される観客席領域と、観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設の建築的要素に基づき、観客席領域における複数の観客席の配置を計画することが可能な施設計画支援システム、施設計画支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムにおいて、
前記観覧対象領域と前記観客席領域の配置情報を取得する配置情報取得手段と、
前記施設の建築的要素に基づき、前記観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定する基準線設定手段と、
前記観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する観客席設定手段と、
前記観客席領域において、複数の前記基準線間に、前記観客席パラメータが設定された複数の前記観客席を等間隔で配置する観客席配置手段と、を備えることを特徴とする施設計画支援システム。
【0008】
(1)の発明では、複数の観客席が配置される観客席領域と、観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムは、配置情報取得手段と、基準線設定手段と、観客席設定手段と、観客席配置手段と、を備える。
配置情報取得手段は、観覧対象領域と観客席領域の配置情報を取得する。
基準線設定手段は、施設の建築的要素に基づき、観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定する。
観客席設定手段は、観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する。
観客席配置手段は、観客席領域において、複数の基準線間に、観客席パラメータが設定された複数の観客席を等間隔で配置する。
【0009】
ここで、施設の建築的要素には、施設自体の全体計画、意匠、構造、施工性が含まれる。観客席領域を所定間隔で分割する基準線は、このような施設の建築的要素を総合的に考慮して設定・変更される。
【0010】
(1)の発明によれば、このような基準線に基づき、観客席パラメータが設定された複数の観客席を配置できる。
したがって、複数の観客席が配置される観客席領域と、観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設の建築的要素に基づき、観客席領域における複数の観客席の配置を計画できる。
【0011】
また、施設の計画においては、頻繁に建築的要素が変更され、これに伴い、基準線の位置や間隔も変更される。
(1)の発明によれば、基準線に基づき、観客席パラメータが設定された複数の観客席を配置できる。これにより、例えば、ある時点における基準線に基づく観客席の配置計画があったとしても、その後、変更された基準線に基づき、観客席を再配置できるので、計画中、頻繁に行われる施設自体の建築的要素の変更に応じて、観客席の配置を容易に変更できる。
【0012】
(2) 前記観客席領域の仕様を示す数値である観客席領域パラメータを設定する観客席領域設定手段を、更に備え、
前記観客席配置手段は、前記観客席領域において、前記観客席領域パラメータに基づき、複数の前記観客席の配置を調整することを特徴とする(1)に記載の施設計画支援システム。
【0013】
(2)の発明では、施設計画支援システムは、更に、観客席領域設定手段を備える。
観客席領域設定手段は、観客席領域の仕様を示す数値である観客席領域パラメータを設定する。
そして、観客席配置手段は、観客席領域において、観客席領域パラメータに基づき、複数の観客席の配置を調整する。
【0014】
ここで、観客席領域の仕様は、例えば、観客席領域に設けられる設備の位置や寸法を示す情報である。観客席領域に設けられる設備としては、縦通路や、ボマトリーや、搬入口等がある。
【0015】
(2)の発明によれば、このような観客席領域の仕様に基づき、複数の観客席の配置を調整できる。これにより、観客席領域の仕様を検討する際、観客席領域の仕様の試行錯誤に応じて、観客席の配置を容易に調整できる。
【0016】
(3) 前記観客席領域に配置する複数の前記観客席の数である観客席数の指定を受け付ける観客席数指定受付手段を、更に備え、
前記観客席配置手段は、前記観客席領域において、指定された前記観客席数に基づき、複数の前記観客席の配置を調整することを特徴とする(1)又は(2)に記載の施設計画支援システム。
【0017】
(3)の発明では、施設計画支援システムは、更に、観客席数指定受付手段を備える。
観客席数指定受付手段は、観客席領域に配置する複数の観客席の数である観客席数の指定を受け付ける。
そして、観客席配置手段は、観客席領域において、指定された観客席数に基づき、複数の観客席の配置を調整する。
【0018】
(3)の発明によれば、例えば、ユーザの操作により指定された観客席の数に基づき、観客席領域における複数の観客席の配置を調整できる。これにより、観客席領域に配置する複数の観客席の数を検討する際、観客席の数の試行錯誤に応じて、観客席の配置を容易に調整できる。
【0019】
(4) 複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムが実行する方法であって、
前記観覧対象領域と前記観客席領域の配置情報を取得するステップと、
前記施設の建築的要素に基づき、前記観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定するステップと、
前記観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定するステップと、
前記観客席領域において、複数の前記基準線間に、前記観客席パラメータが設定された複数の前記観客席を等間隔で配置するステップと、を含むことを特徴とする施設計画支援方法。
【0020】
(5) 複数の観客席が配置される観客席領域と、前記観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設において、前記観客席領域の計画を支援する施設計画支援システムを、
前記観覧対象領域と前記観客席領域の配置情報を取得する配置情報取得手段、
前記施設の建築的要素に基づき、前記観客席領域を所定間隔で分割する基準線を設定する基準線設定手段、
前記観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する観客席設定手段、
前記観客席領域において、複数の前記基準線間に、前記観客席パラメータが設定された複数の前記観客席を等間隔で配置する観客席配置手段、として機能させることを特徴とするプログラム。
【0021】
このような(4)及び(5)の発明によれば、(1)の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の観客席が配置される観客席領域と、観客席から観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域と、を備える施設の建築的要素に基づき、観客席領域における複数の観客席の配置を計画することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムの概要を説明する図である。
図2図1において破線で囲んだ部分Aを拡大した図である。
図3】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムの機能構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける基準線を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける断面情報を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席パラメータを説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席領域パラメータを説明する図である。
図8図4において破線で囲んだ部分Bを拡大した図である。
図9】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席カウント画面の一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席視認性評価画面の一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る施設計画支援システムに実行される施設計画支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
【0025】
〈実施形態〉
[施設計画支援システムの概要]
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムの概要を説明する図である。
施設計画支援システムの概要について説明する。
本発明の実施形態に係る施設計画支援システムは、複数の観客席Sが配置される観客席領域SRと、観客席Sから観客に観覧される観覧対象(例えば、野球等のスポーツや、コンサート、映画等)が行われる観覧対象領域FR(例えば、フィールド、舞台、スクリーン等)と、を備える施設I(例えば、スタジアム、アリーナ、ホール、映画館等)において、観客席領域SRの計画(例えば、企画設計、実施設計等)を支援する。具体的には、施設計画支援システムは、施設Iに設置される多様な要素に基づき、観客席領域SRに観客席Sを配置する。
【0026】
図1は、施設計画支援システムにより観客席領域SRの計画を支援する施設Iにおける観覧対象領域FRと観客席領域SRの全体を示す図である。
図2は、図1において破線で囲んだ部分Aを拡大した図である。
【0027】
施設計画支援システムは、観覧対象領域FRと観客席領域SRの配置情報を取得する。本実施形態において、配置情報とは、例えば、観覧対象領域FRの寸法(観覧対象領域FRの形状や、観覧対象領域FRの中心からフォーカルラインFLまでの距離)や、観覧対象領域FRの中心から観客席領域SRの最前列までの寸法等の平面計画を示す情報である。
【0028】
また、施設計画支援システムは、図1に示すように、取得した観覧対象領域FRと観客席領域SRの配置情報に対して、施設の建築的要素に基づき、観客席領域SRを所定間隔で分割する基準線(例えば、図1に示す例では、メイン基準線MG)を設定する。本実施形態において、施設の建築的要素には、施設の全体計画、意匠、構造、施工性が含まれる。観客席領域を所定間隔で分割する基準線は、このような施設の建築的要素を総合的に考慮して設定・変更可能である。
【0029】
また、施設計画支援システムは、観客席領域SRに配置する観客席Sの仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する。本実施形態において、観客席Sの仕様とは、例えば、観客席Sの種類(例えば、一般席、車椅子席、VIP席等)に応じた座幅、席間隔等の寸法である。
【0030】
そして、施設計画支援システムは、図2に示すように、観客席領域SRにおいて、複数の基準線間に、観客席パラメータが設定された複数の観客席を等間隔で配置する。
【0031】
このような施設計画支援システムによれば、基準線に基づき、観客席パラメータが設定された複数の観客席Sを配置できる。
したがって、複数の観客席Sが配置される観客席領域SRと、観客席Sから観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域FRと、を備える施設Iの建築的要素に基づき、観客席領域SRにおける複数の観客席Sの配置を計画できる。
【0032】
また、施設Iの計画においては、頻繁に建築的要素が変更され、これに伴い、基準線の位置や間隔も変更される。
施設計画支援システムによれば、基準線に基づき、観客席パラメータが設定された複数の観客席Sを配置できる。これにより、例えば、ある時点における基準線に基づく観客席Sの配置計画があったとしても、その後、変更された基準線に基づき、観客席Sを再配置できるので、計画中、頻繁に行われる施設自体の建築的要素の変更に応じて、観客席Sの配置を容易に変更できる。
【0033】
[施設計画支援システムの機能構成]
次に、施設計画支援システムの機能構成について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【0034】
施設計画支援システム1は、配置情報取得手段10と、基準線設定手段20と、断面情報取得手段30と、立体形状生成手段40と、観客席設定手段50と、観客席領域設定手段60と、観客席配置手段70と、観客席数指定受付手段80と、観客席視認性表示手段90と、記憶手段100と、ディスプレイで構成される表示手段110と、キーボードやマウス等のユーザの操作を受け付ける入力装置で構成される入力手段120と、を備える。
【0035】
配置情報取得手段10は、ユーザによる入力手段120の操作により、観覧対象領域FRと観客席領域SRの配置情報を取得し、記憶手段100に記憶する。
詳細には、配置情報取得手段10は、観覧対象領域FR内に配置され、観覧対象(例えば、野球やサッカー等)が行われるフィールドの外形を示すライン(以下、「フォーカルライン」ともいう。)データ(2D図面データ)や、観客席領域SRの外形を示すラインデータ(2D図面データ)や、フィールドの幅と奥行き寸法を示す数値データや、フィールドの中心から観客席領域(例えば、スタンド等)SRの最前列までの距離を示す数値データや、フィールドの中心からフォーカルラインまでの距離を示す数値データや、フォーカルラインから観客席領域(例えば、スタンド等)SRの最前列までの距離を示す数値データを、配置情報として取得する。なお、配置情報取得手段10は、フィールドの外形をフォーカルラインとして取得してもよい。
【0036】
また、配置情報取得手段10は、観客席領域SRの外形を示すデータ(例えば、オーバル型、オクタゴン型等の多角形型等)を、配置情報として取得してもよい。この場合、配置情報取得手段10は、例えば、ユーザによる入力手段120の操作により、観客席領域SRの外形を示すデータを変更(例えば、オーバル型からオクタゴン型への変更)する指示を受け付けてもよい。施設計画支援システム1は、例えば、オーバル型の観客席領域SRに観客席Sを配置した後、オクタゴン型へ変更する指示を受け付けた場合、オクタゴン型の観客席領域SRに観客席Sを再配置してもよい。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける基準線を説明する図である。
基準線設定手段20は、ユーザによる入力手段120の操作により、施設Iの建築的要素に基づき、観客席領域SRを所定間隔で分割する基準線を設定し、基準線毎に各基準線を識別する基準線識別情報を対応付けて記憶手段100に記憶する。基準線は、観覧対象領域FRと観客席領域SRとの境界線に対して直交し、観客席領域SR側に延び、メイン基準線MGと、サブ基準線SGとが含まれる。
【0038】
メイン基準線MGは、例えば、施設Iの全体計画、意匠、構造、施工性から決定される。例えば、メイン基準線MGは、施設Iの構造体である柱を配置する基準となる通り芯である。
【0039】
サブ基準線SGは、互いに隣接するメイン基準線MGの間に配置される。即ち、メイン基準線MGが施設Iの通り芯で設定された場合、サブ基準線SG上には、施設Iの柱は配置されない。このため、サブ基準線SGは、後述する観客席領域に設けられる設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等)を配置する基準となる。
【0040】
また、基準線設定手段20は、観客席領域SRの階層(例えば、1階席、2階席等)毎に、メイン基準線MGとサブ基準線SGとをそれぞれ設定してもよい。
【0041】
図5は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける断面情報を説明する図である。
断面情報取得手段30は、断面情報入力画面(図5に示す例では、下段の数値入力欄)を表示手段110に表示し、ユーザによる入力手段120の操作により、断面情報を取得し、記憶手段100に記憶する。
【0042】
断面情報には、GL→FP(H)、ドライバー→FP(D)、C値(H)、段数(I)、GL→1段目(H)、FP→1断目視点(D)、段床奥行(D)、背面→視点(D)、視点高さ(H)、躯体手摺(H)、金属手摺+躯体手摺(H)、手摺奥行(D)等が含まれる。
【0043】
GL→FP(H)は、図5中Aに示すとおり、GL(グランドライン)からフォーカルポイントまでの高さを示す数値情報である。
【0044】
フォーカルポイントは、ユーザにより、観覧対象領域FR内に設定され、観客席に着席した観客の注視点である。また、フォーカルポイントは、観客席に着席した観客の視点から観覧対象領域FR側に延びるサイトラインの端点となる。
【0045】
ドライバー→FP(D)は、図5中Bに示すとおり、ドライバー(段床1段目の観覧対象領域FR側端部)からフォーカルポイントまでの距離を示す数値情報である。
【0046】
C値(H)は、図5中Cに示すとおり、ある段の視点(例えば、3段目のサイトラインSL3の終点)から、次の上の段のサイトライン(例えば、4段目のサイトラインSL4)までの高さを示す数値情報である。
【0047】
段数(I)は、図5中Dに示すとおり、観客席領域SRの段数を示す数値情報である。
【0048】
GL→1段目(H)は、図5中Eに示すとおり、GL(グランドライン)から1段目の段床までの高さを示す数値情報である。
【0049】
FP→1段目視点(D)は、図5中Fに示すとおり、フォーカルポイントから、1段目の視点までの高さを示す数値情報である。
【0050】
段床奥行(D)は、図5中Gに示すとおり、各段床の奥行の寸法を示す数値情報である。
【0051】
背面→視点(D)は、図5中Hに示すとおり、ある段の背面(観覧対象領域FRと反対側端部)から、当該段の視点までの距離を示す数値情報である。
【0052】
視点高さ(H)は、図5中Iに示すとおり、ある段の段床から、当該段の視点までの高さを示す数値情報である。
【0053】
躯体手摺(H)は、図5中Jに示すとおり、段床から、躯体で形成する手摺の天端までの高さを示す数値情報である。
【0054】
金属手摺+躯体手摺(H)は、図5中Kに示すとおり、段床から、躯体手摺の上に設けられる金属手摺の天端までの高さを示す数値情報である。
【0055】
手摺奥行(D)は、図5中Lに示すとおり、躯体で形成する手摺の厚さを示す数値情報である。
【0056】
また、断面情報には、段床高さを含んでもよい。段床高さは、ある階の段床と次の階の段床との高さを示す数値情報である。C値を基準として、段床高さを算出した場合、段床高さがミリ単位となってしまい施工性が悪くなる場合がある。そこで、段床高さを施工が容易になる数値とし、C値より段床高さを優先してもよい。
【0057】
断面情報取得手段30は、取得した断面情報に基づき、観客席領域SRの断面のフロアラインFLを生成し、記憶手段100に記憶する。
【0058】
また、断面情報取得手段30は、断面情報入力画面において、ユーザによる入力手段120の操作により、置き段SSの断面情報を取得し、記憶手段100に記憶する。置き段の断面情報には、「max rise size」、「max steps」、「thread size」が含まれる。
【0059】
置き段SSは、段床の段差が所定寸法以上の場合、後述する縦通路に設けられる補助的な階段である。
「max rise size」は、置き段SSの蹴上げ寸法の最大値を示す数値情報である。
「max steps」は、ある段と次の段との1つの段差に設けられる置き段SSの最大の段数を示す数値情報である。
「thread size」は、置き段SSの踏面の奥行寸法を示す数値情報である。
【0060】
図3に戻って、立体形状生成手段40は、断面情報取得手段30が生成したフロアラインFLを、配置情報取得手段10が取得した観客席領域SR(図4参照)と観覧対象領域FR(図4参照)との境界線(観客席領域SRの内側の線)に沿って回転することで、フロアラインFLの軌跡によって形成される立体形状を、観客席領域SRの立体モデルとして取得し、記憶手段100に記憶する。このような観客席領域SRの立体モデルは、基準線設定手段20が設定した基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)とともに、表示手段110に表示される。
【0061】
また、立体形状生成手段40は、観客席領域SRの立体モデルにおいて、予め設定された所定値(例えば、500mm等)を超えた段差が生じた部分に、断面情報取得手段30が取得した手摺に関する断面情報に基づき生成した手摺のモデルを配置する。
【0062】
図6は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席パラメータを説明する図である。
観客席設定手段50は、観客席の仕様を示す数値である観客席パラメータを設定する。具体的には、観客席設定手段50は、観客席パラメータを設定する観客席パラメータ設定画面(図6に示す例では、下段の数値入力欄)を表示手段110に表示し、ユーザによる入力手段120の操作により、観客席パラメータを取得し、記憶手段100に記憶する。
【0063】
観客席パラメータには、「Seat X」、「Seat Y」、「Min Space」、「Side Clr.」、「Max Seats」が含まれる。
【0064】
「Seat X」は、図6に示すとおり、観客席Sの幅(観覧対象領域FRに向かう方向と直交する方向)の寸法を示す数値情報である。
【0065】
「Seat Y」は、図6に示すとおり、観客席Sの奥行(観覧対象領域FRに向かう方向)の寸法を示す数値情報である。
【0066】
「Min Space」は、図6に示すとおり、ある観客席Sと、観覧対象領域FRに向かう方向と直交する方向においてある観客席Sと隣接する別の観客席Sとの間隔の最小値を示す数値情報である。なお、観客席設定手段50は、「Min Space」の代わりに、ある観客席Sの中心と、観覧対象領域FRに向かう方向と直交する方向においてある観客席Sと隣接する別の観客席Sとの中心との距離を示す数値情報を取得してもよい。
【0067】
「Side Clr.」は、例えば、壁際に配置された観客席Sから壁までの距離の最小値を示す数値情報である。
【0068】
「Max Seats」は、ある基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)と他の基準線間や、ある縦通路と他の縦通路間に、配置する観客席Sの数の最大値を示す数値情報である。
【0069】
また、観客席設定手段50は、観客席Sの種類(例えば、一般席、車椅子席、VIP席、ファミリー席、カップル席等)毎に、観客席パラメータを設定してもよい。この場合、観客席設定手段50は、観客席Sの種類に応じて、図6に示す観客席パラメータ以外の観客席パラメータを取得してもよい。
【0070】
また、観客席設定手段50は、各観客席Sに設けることが可能な付属設備(例えば、テーブル、肘掛け、カップホルダ等)の位置や寸法を示す数値情報を観客席パラメータとして設定してもよい。
【0071】
また、観客席設定手段50は、観客席パラメータにおいて、例えば、ユーザにより設定された観客席Sのカテゴリー(例えば、外野席、内野席等)を設定してもよい。即ち、本実施形態によれば、観客席Sのカテゴリー(例えば、外野席、内野席等)毎に、観客席Sの種類や、付属設備の有無等を設定してもよい。
【0072】
観客席領域設定手段60は、観客席領域の仕様を示す数値である観客席領域パラメータを設定する。観客席領域の仕様には、観客席領域SRに設けられる設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等)が含まれる。
【0073】
図7は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席領域パラメータを説明する図である。図7に示す例における観客席領域パラメータは、観客席領域の仕様の一例である縦通路のパラメータである。
【0074】
図7の上段に示す図は、表示手段110において、立体形状生成手段40が生成した観客席領域SRの立体モデルに、基準線設定手段20が設定した基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)が配置された操作画面の一例を示している。
【0075】
観客席領域設定手段60は、例えば、操作画面において、ユーザによる入力手段120の操作により、あるサブ基準線SG(図7に示す例では、基準線識別情報が0のサブ基準線SG)が選択された場合、観客席領域パラメータ入力画面(図7に示す例では、中段の数値入力欄)を表示手段110に表示し、ユーザによる入力手段120の操作により、観客席領域パラメータ(図7に示す例では、縦通路)を取得し、記憶手段100に記憶する。
【0076】
縦通路のパラメータには、「スパン」、「下段」、「上段」、「下段幅」、「上段幅」、「開口脇通路幅」、「偏心」が含まれる。
【0077】
「スパン」は、縦通路を配置するサブ基準線SGの基準線識別情報である。観客席領域設定手段60は、操作画面においてユーザにより選択されたサブ基準線SGに対応付けられている基準線識別情報を「スパン」として取得してもよいし、観客席領域パラメータ入力画面の「スパン」の欄に入力された数値を「スパン」として取得してもよい。
【0078】
「下段」は、観客席領域SRの段床において、縦通路の最下段となる段数を示す数値情報である。
【0079】
「上段」は、観客席領域SRの段床において、縦通路の最上段となる段数を示す数値情報である。
【0080】
「下段幅」は、「下段」における縦通路の幅(サブ基準線SGと直交する方向の幅)の寸法を示す数値情報である。
【0081】
「上段幅」は、「上段」における縦通路の幅(サブ基準線SGと直交する方向の幅)の寸法を示す数値情報である。
【0082】
「開口脇通路幅」は、図7下段に示すように、サブ基準線SG上に開口(例えば、ボマトリーや搬入口)を設けてあった場合に、当該開口の脇に設ける通路の幅(サブ基準線SGと直交する方向の幅)の寸法を示す数値情報である。
【0083】
「偏心」は、サブ基準線SGから縦通路の中心までの距離を示す数値情報である。図7に示す例では、「偏心」は0であり、サブ基準線SGに縦通路の中心が配置されることを示している。
【0084】
観客席領域設定手段60は、縦通路と同様に、ボマトリー、搬入口等のパラメータを取得してもよい。
【0085】
また、観客席領域設定手段60は、定常的に設けられる設備に限らず、仮設的(可動可能)な設置物(広告、カメラ、ピンスポット、仮設席等)のパラメータを設定してもよい。このような観客席領域パラメータを設定することで、特定のイベントでのみ配置される設備も踏まえて、視認性を確認できる。
【0086】
また、立体形状生成手段40は、観客席領域設定手段60により設定された観客席領域パラメータに基づく設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等)のモデルを生成し、観客席領域SRの立体モデルに、生成した設備のモデルを配置する。
【0087】
また、立体形状生成手段40は、観客席領域設定手段60により観客席領域パラメータとして縦通路が設定された場合、観客席領域SRの立体モデルに配置された縦通路となる部分において、予め設定された所定値(例えば、180mm等)を超えた段差が生じた部分に、自動的に断面情報取得手段30が取得した置き段に関する断面情報に基づき生成した置き段のモデルを配置する。例えば、立体形状生成手段40は、置き段の断面情報(「max rise size」、「max steps」、「thread size」)に基づき、縦通路の段差を数等分にすることが可能な置き段のモデルを生成する。
【0088】
観客席配置手段70は、観客席領域SRにおいて、複数の基準線間に、観客席パラメータが設定された複数の観客席Sを等間隔で配置する。詳細には、観客席配置手段70は、記憶手段100を参照して、立体形状生成手段40が生成した観客席領域SRの立体モデルにおいて、各段毎に、基準線設定手段20が設定した2つの基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)間に、観客席設定手段50が設定した観客席Sの観客席パラメータに基づき、当該観客席Sを等間隔に配置する。
【0089】
具体的には、観客席配置手段70は、例えば、ユーザが指定した2つの基準線間(スパン)における、各段の観覧対象領域FR側(下側)において、観客席パラメータの「Seat X」が示す幅を有する観客席Sが、「Min Space」が示す距離や隣接する観客席Sとの中心間距離以上離れて隣接するように、「Max Seats」が示す数値以下の数の観客席Sを、等間隔で配置する。これにより、図2に示すように、観客席領域SRに複数の観客席Sを配置できる。
【0090】
ここで、2つの基準線が平行であれば、各段の2つの基準線間の幅は、観覧対象領域FR側(下側)も上側も同じである。一方、観客席領域SRのコーナー部分は、基準線が放射状に延びているため、2つの基準線間の幅は、観覧対象領域FR側(下側)が狭く、上側が広くなっている。本実施形態によれば、観客席配置手段70は、各段で狭くなっている観覧対象領域FR側(下側)を基準に、複数の観客席Sを、等間隔で配置するので、観客席領域SRのコーナー部分でも、観客席Sを適切に配置できる。
【0091】
また、観客席配置手段70は、観客席Sに設けることが可能な付属設備に応じて、観客席Sを等間隔に配置する。例えば、付属設備の一例である左右一方にのみ設けられる肘掛けは、スパンの端部に配置された観客席Sにだけ左右に設けられる。このため、当該スパンでは、観客席Sの数より肘掛けの数が1つ多くなる。このような場合、観客席配置手段70は、観客席Sの数がXであった場合、肘掛けの数をX+1として、スパン間に肘掛け付きの観客席Sを均等に配置する。
【0092】
また、観客席配置手段70は、観客席領域SRにおいて、観客席領域パラメータに基づき、複数の観客席の配置を調整する。詳細には、観客席配置手段70は、記憶手段100を参照して、立体形状生成手段40が生成した観客席領域SRの立体モデルにおいて、各段毎に、観客席領域設定手段60が設定した2つの設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等)間に、観客席設定手段50が設定した観客席Sの観客席パラメータに基づき、当該観客席Sを等間隔に配置する。
【0093】
図8は、図4において破線で囲んだ部分Bを拡大した図である。
図8に示す例では、観客席領域設定手段60が設定した2つの縦通路GWの間に配置された複数の観客席Sを示している。
この場合、観客席配置手段70は、観客席領域設定手段60が設定した2つの縦通路GW間(2つの縦通路GWの互いに対向する側面(基準線に沿って延びる面))における、各段の観覧対象領域FR側(下側)において、観客席パラメータの「Seat X」が示す幅を有する観客席Sが、「Min Space」が示す距離や隣接する観客席Sとの中心間距離以上離れて隣接するように、「Max Seats」が示す数値以下の数の観客席Sを、等間隔で配置する。
【0094】
図3に戻って、観客席数指定受付手段80は、観客席領域SRに配置する複数の観客席Sの数である観客席数の指定を受け付ける。
【0095】
図9は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席カウント画面の一例を示す図である。
観客席数指定受付手段80は、観客席領域SRに、観客席配置手段70によって配置された観客席Sの種類毎の観客席数をカウントし、カウントした結果を示す観客席カウント画面を表示手段110に表示する。このように、観客席数指定受付手段80は、観客席配置手段70によって配置された観客席Sの種類毎の観客席数をカウントする観客席数カウント手段としても機能する。
【0096】
観客席数指定受付手段80は、更に、隣接する観客席Sの間隔(隣接する観客席Sの中心間距離)毎に、観客席数をカウントする。
【0097】
図9に示す例において、観客席数指定受付手段80は、観客席配置手段70によって配置された観客席Sの種類(「General Seats」(一般席)、「VIP」(VIP席)、「車いす」(車椅子席))毎に、隣接する観客席Sの中心間距離(450mmより狭い、450mm以上470mmより狭い、470mm以上475mmより狭い、475mm以上500mmより狭い、500mm以上550mmより狭い、550mm以上600mmより狭い、600mm以上)毎に、観客席数をカウントし、観客席カウント画面に表示している。
【0098】
また、観客席数指定受付手段80は、観客席Sの間隔(隣接する観客席Sの中心間距離)毎に、それぞれ異なる色を対応付け、観客席カウント画面において、観客席Sの間隔(隣接する観客席Sの中心間距離)毎の欄を色分けしてもよい。
【0099】
また、観客席配置手段70は、観客席領域SRの立体モデルに配置した観客席Sに、観客席Sの間隔(隣接する観客席Sの中心間距離)毎に、観客席数指定受付手段80が対応付けた色を付してもよい。これにより、ユーザは、観客席Sが配置された観客席領域SRの立体モデルを見るだけで、観客席Sの間隔を一覧的に確認することができる。そして、ユーザは、例えば、観客席Sの間隔が、所定値(例えば、450mm)より狭くなっているスパン(2つの基準線間や、2つの縦通路間)における観客席数を減らす調整をすることも可能となる。
【0100】
なお、図9に示す例において、観客席数指定受付手段80は、観客席Sの種類毎の観客席数をカウントし、観客席Sの種類毎の観客席数を観客席カウント画面に表示している。しかしながら、これに限らず、観客席数指定受付手段80は観客席Sのカテゴリー毎の観客席数をカウントし、観客席Sのカテゴリー毎の観客席数を観客席カウント画面に表示してもよい。
【0101】
また、観客席数指定受付手段80は、ユーザが、観客席Sの種類毎やカテゴリー毎の観客席数を入力するための観客席数指定画面を表示手段110に表示してもよいし、上述の観客席カウント画面において、観客席Sの種類毎やカテゴリー毎の観客席数の入力(指定)を受け付けてもよい。この場合、観客席数指定受付手段80は、観客席領域SRの立体モデルにおけるユーザの操作に基づき、観客席Sの種類やカテゴリーを変更するエリア(観客席S)の指定を受け付けてもよい。
【0102】
観客席数指定受付手段80が、観客席数指定画面や観客席カウント画面において、観客席Sの種類毎やカテゴリー毎の観客席数の入力を受け付けた場合、観客席配置手段70は、観客席領域SRにおいて、入力(指定)された観客席数に基づき、観客席領域SRの立体モデルにおいて、複数の観客席Sの配置を調整する。
【0103】
図3に戻って、観客席視認性表示手段90は、観客席配置手段70が、観客席領域SRの立体モデルに配置した観客席S毎に、観客席Sから観覧対象領域FRの視認性について評価し、評価に応じた態様で、観客席領域SRの立体モデルに配置された観客席Sを表示する観客席視認性評価画面を表示手段110に表示する。
【0104】
図10は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムにおける観客席視認性評価画面の一例を示す図である。
【0105】
詳細には、観客席視認性表示手段90は、観客席領域SRの立体モデルに配置した観客席S毎に、各観客席Sの視点から、配置情報取得手段10が取得したフォーカルラインFLの視認可能な範囲を示す視認性評価値を算出する。観客席視認性表示手段90は、フォーカルラインFLの視認可能な範囲が広いほど、より高い視認性評価値を算出する。
【0106】
観客席視認性表示手段90は、観客席視認性評価画面において、視認性評価値に応じた色や、色の明度で観客席Sを表示する。また、観客席視認性表示手段90は、観客席視認性評価画面において、観客席領域SRに配置された設備(例えば、手摺、ボマトリーや搬入口の壁等)により、フォーカルラインFLの一部が視認できない観客席S(サイトラインが遮られている観客席S)を特別の色や、特別の色の明度で観客席Sを表示する。
【0107】
なお、観客席視認性表示手段90は、図10に示す例では、観客席視認性評価画面を3Dで表示しているが、観客席視認性評価画面を、2D(例えば、平面図等)で表示してもよいし、算出した視認性評価値を所定の態様(例えば、最も視認性が高い状態を100%とし、視認性評価値に応じた%表示)を表示してもよい。
【0108】
観客席視認性評価画面を2Dで表示することで、例えば、スポーツ施設において、手摺、袖壁、VIPルームなどの壁面、照明・音響、大型映像装置、ポール、防球ネット、支柱、屋根等により、平面的な視認性が悪化するケースの確認ができる。
【0109】
上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて1つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置や端末に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置(記憶手段)に格納されたコンピュータプログラム(例えば、基幹ソフトや上述の各種処理をCPUに実行させるアプリ等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータプログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータプログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0110】
[施設計画支援処理]
次に、本システムにより実行される施設計画支援処理について説明する。以下の処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
図11は、本発明の実施形態に係る施設計画支援システムに実行される施設計画支援処理を示すフローチャートである。
【0111】
ステップS1において、配置情報取得手段10は、ユーザによる入力手段120の操作により、観覧対象領域FRと観客席領域SRの配置情報を取得し、記憶手段100に記憶する。
【0112】
ステップS2において、基準線設定手段20は、ユーザによる入力手段120の操作により、施設Iの建築的要素に基づき、観客席領域SRを所定間隔で分割する基準線を設定し、基準線毎に各基準線を識別する基準線識別情報を対応付けて記憶手段100に記憶する。
【0113】
ステップS3において、断面情報取得手段30は、断面情報入力画面(例えば、図5下段の数値入力欄)を表示手段110に表示し、ユーザによる入力手段120の操作により、断面情報を取得し、取得した断面情報に基づき、観客席領域SRの断面のフロアラインFLを生成し、記憶手段100に記憶する。
【0114】
ステップS4において、立体形状生成手段40は、ステップS3で断面情報取得手段30が生成したフロアラインFLを、ステップS1で配置情報取得手段10が取得した観客席領域SR(図4参照)と観覧対象領域FR(図4参照)との境界線(観客席領域SRの内側の線)に沿って回転することで、フロアラインFLの軌跡によって形成される立体形状を、観客席領域SRの立体モデルとして取得し、記憶手段100に記憶する。
【0115】
ステップS5において、観客席設定手段50は、観客席パラメータを設定する観客席パラメータ設定画面(例えば、図6下段の数値入力欄)を表示手段110に表示し、ユーザによる入力手段120の操作により、観客席パラメータを取得し、記憶手段100に記憶する。
【0116】
ステップS6において、観客席領域設定手段60は、観客席領域の仕様(観客席領域SRに設けられる設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等))を示す数値である観客席領域パラメータを設定する。また、本ステップにおいて、立体形状生成手段40は、観客席領域設定手段60により設定された観客席領域パラメータに基づく設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等)のモデルを生成し、観客席領域SRの立体モデルに、生成した設備のモデルを配置する。
【0117】
ステップS7において、観客席配置手段70は、記憶手段100を参照して、ステップS4で立体形状生成手段40が生成した観客席領域SRの立体モデルにおいて、各段毎に、ステップS2で基準線設定手段20が設定した2つの基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)間に、ステップS5で観客席設定手段50が設定した観客席Sの観客席パラメータに基づき、当該観客席Sを等間隔に配置する(図2参照)。
【0118】
または、ユーザの操作に応じて、本ステップにおいて、観客席配置手段70は、記憶手段100を参照して、ステップS4で立体形状生成手段40が生成した観客席領域SRの立体モデルにおいて、各段毎に、ステップS6で観客席領域設定手段60が設定した2つの設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等)の間に、ステップS5で観客席設定手段50が設定した観客席Sの観客席パラメータに基づき、当該観客席Sを等間隔に配置する(図8参照)。
【0119】
以上の説明では、観客席領域SRが1つの層である場合を例に説明したが、施設Iでは、観客席領域SRが複数層(1層スタンド、2層スタンド等)で構成される場合がある。このような場合、施設計画支援システム1は、各層毎に上記処理を実行してもよい。このように、複数層の処理を行うことで、平面的な基準線だけでなく、断面的な層(1層スタンド、2層スタンド等)の各断面において、観客席領域SRの検証や、観客席Sのカウントができる。また、1層目の計画によって、構造的な負荷を考慮した2層目の計画が容易になり、構造的な合理性も決まってくるので、施設計画がスムーズになる。
【0120】
このような施設計画支援システム1によれば、施設の建築的要素に基づく基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)に基づき、観客席パラメータが設定された複数の観客席Sを配置できる。
したがって、複数の観客席Sが配置される観客席領域SRと、観客席Sから観客に観覧される観覧対象が行われる観覧対象領域FRと、を備える施設Iの建築的要素に基づき、観客席領域SRにおける複数の観客席Sの配置を計画できる。
【0121】
また、施設計画支援システム1によれば、基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)に基づき、観客席パラメータが設定された複数の観客席Sを配置できる。これにより、例えば、ある時点における基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)に基づく観客席Sの配置計画があったとしても、その後、変更された基準線(メイン基準線MG・サブ基準線SG)に基づき、観客席Sを再配置できるので、計画中、頻繁に行われる施設I自体の建築的要素の変更に応じて、観客席Sの配置を容易に変更できる。
【0122】
また、施設計画支援システム1によれば、観客席領域SRの仕様(観客席領域SRに設けられる設備(縦通路、ボマトリー、搬入口等))に基づき、複数の観客席Sの配置を調整できる。これにより、観客席領域SRの仕様を検討する際、観客席領域SRの仕様の試行錯誤に応じて、観客席Sの配置を容易に調整できる。
【0123】
また、施設計画支援システム1によれば、例えば、ユーザの操作により指定された観客席Sの数に基づき、観客席領域SRにおける複数の観客席Sの配置を調整できる。これにより、観客席領域SRに配置する複数の観客席Sの数を検討する際、観客席Sの数の試行錯誤に応じて、観客席Sの配置を容易に調整できる。
【0124】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施形態及び応用例の内容に限定されないことはいうまでもない。上記実施形態及び変形に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者にとって明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0125】
1 施設計画支援システム
10 配置情報取得手段
20 基準線設定手段
30 断面情報取得手段
40 立体形状生成手段
50 観客席設定手段
60 観客席領域設定手段
70 観客席配置手段
80 観客席数指定受付手段
90 観客席視認性表示手段
100 記憶手段
110 表示手段
120 入力手段


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11